(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】SCN9Aアンチセンスオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220128BHJP
A61K 38/03 20060101ALI20220128BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20220128BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220128BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220128BHJP
C07K 4/00 20060101ALI20220128BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20220128BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
C12N15/113 140Z
A61K38/03
A61K38/10
A61K38/16
A61P25/04
A61P43/00 111
C07K4/00 ZNA
C07K7/08
C07K14/00
(21)【出願番号】P 2019514220
(86)(22)【出願日】2017-05-24
(86)【国際出願番号】 IB2017000751
(87)【国際公開番号】W WO2018051175
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-05-19
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519043383
【氏名又は名称】オリパス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュン,シン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ダラム
(72)【発明者】
【氏名】チョー,ボンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,カンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,フンシク
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-518770(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0087436(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0273857(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
A61K 38/00-38/58
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と21との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも
11マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、
[(5'→3')UUGUUUUUGCGUAAGUACUU]の標的プレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的プレmRNA配列と部分的に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは
、ヒドリ
ド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]
、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル
、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル
、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは
、置換若しくは非置換のアミ
ノ基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
の少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IV:
【化2】
によって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアルキル基から選択され; 及び
L
1
、L
2
及びL
3
は、塩基性アミノ基を、核酸塩基対合を担う核酸塩基部分に接続する式V:
【化3】
によって表される共有結合リンカーであり;
Q
1
及びQ
m
は、置換又は非置換のメチレン(-CH
2
-)基であり、及びQ
m
は、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2
、Q
3
、…、及びQ
m-1
は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、並びに置換若しくは非置換のアミノ基[-N(H)-、又は-N(置換基)-]から選択され; 及び
mは、1と16との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも
11マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも
5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアルキル基から選択され;
Q
1及びQ
mは、メチレン基であり、及びQ
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2、Q
3、…、及びQ
m-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と10との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と18との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも
11マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R
1、R
3、及びR
5は、ヒドリド基であり、R
2、R
4、及びR
6は、独立して、ヒドリド、又は置換若しくは非置換のアルキル基を表し;
Q
1及びQ
mは、メチレン基であり、及びQ
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2、Q
3、…、及びQ
m-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と10との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と16との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも
11マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、ヒドリド基であり;
Q
1及びQ
mは、メチレン基であり、及びQ
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2、Q
3、…、及びQ
m-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と10との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と16との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも
11マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、ヒドリド基であり;
Xは、ヒドリド基であり;
Yは、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、ヒドリド基であり;
L
1は、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-、-CH
2-O-(CH
2)
2-、-CH
2-O-(CH
2)
3-、-CH
2-O-(CH
2)
4-、又は-CH
2-O-(CH
2)
5-を表し、右端は、塩基性アミノ基に直接結合しており; 及び
L
2及びL
3は、独立して、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-、-(CH
2)
3-O-(CH
2)
2-、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
3-、-(CH
2)
2-、-(CH
2)
3-、-(CH
2)
4-、-(CH
2)
5-、-(CH
2)
6-、-(CH
2)
7-、及び-(CH
2)
8-から選択され、右端は、塩基性アミノ基に直接結合している、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項6】
以下:
に提供されるペプチド核酸誘導体の群から選択される、請求項1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
A、G、T、及びCは、それぞれ、アデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)は、それぞれ、式VI、式VII、式VIII、式IX、及び式X
【化4】
によって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
p及びqは、整数であり; 及び
N末端置換基及びC末端置換基の略語は、以下に具体的に記載される通りであり: 「Fmoc-」は、「[(9-フルオレニル)メチルオキシ]カルボニル-」基の略語であり; 「Fethoc-」は、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」基の略語であり; 「Ac-」は、「アセチル-」基の略語であり; 「ベンゾイル-」は、「ベンゼンカルボニル-」基の略語であり; 「Piv-」は、「ピバリル-」基の略語であり; 「Me-」は、「メチル-」基の略語であり; 「n-プロピル-」は、「1-(n-プロピル)-」基の略語であり; 「H-」は、「ヒドリド-」基の略語であり; 「p-トルエンスルホニル」は、「(4-メチルベンゼン)-1-スルホニル-」基の略語であり; 「-Lys-」は、アミノ酸残基「リジン」の略語であり; 「-Val-」は、アミノ酸残基「バリン」の略語であり; 「-Leu-」は、アミノ酸残基「ロイシン」の略語であり; 「-Arg-」は、アミノ酸残基「アルギニン」の略語であり; 「-Gly-」は、アミノ酸残基「グリシン」の略語であり; 「[N-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」は、「[N-1-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」基の略語であり; 「ベンジル-」は、「1-(フェニル)メチル-」基の略語であり; 「フェニル-」は、「フェニル-」基の略語であり; 「Me-」は、「メチル-」基の略語であり; 「-HEX-」は、「6-アミノ-1-ヘキサノイル-」基の略語であり、「FAM-」は、「5又は6-フルオレセイン-カルボニル-(異性体混合物)」基の略語であり、及び「-NH
2」は、非置換の「-アミノ」基の略語である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
請求項1
~6のいずれか1項に記載のペプチド核酸誘導体
又はその薬学的に許容可能な塩を含む、Na
v1.7活性を伴う疼痛又は症状を治療する
ための医薬組成物。
【請求項8】
請求項1
~6のいずれか1項に記載のペプチド核酸誘導体
又はその薬学的に許容可能な塩を含む、慢性疼痛を治療する
ための医薬組成物。
【請求項9】
請求項1
~6のいずれか1項に記載のペプチド核酸誘導体
又はその薬学的に許容可能な塩を含む、神経障害性疼痛を治療する
ための医薬組成物。
【請求項10】
Na
v
1.7活性を伴う疼痛又は症状の治療のための医薬の製造における、請求項1~6のいずれか1項に記載のペプチド核酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項11】
慢性疼痛の治療のための医薬の製造における、請求項1~6のいずれか1項に記載のペプチド核酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項12】
神経障害性疼痛の治療のための医薬の製造における、請求項1~6のいずれか1項に記載のペプチド核酸誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電位開口型ナトリウムチャネルNav1.7サブタイプによって媒介される疼痛及び障害の治療のためのSCN9AプレmRNAを標的とするペプチド核酸誘導体に関し、2016年9月16日に出願された米国仮出願第62/395,814号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
電位開口型ナトリウムチャネル(VGSC)は、α及びβサブユニットで構成される膜貫通タンパク質である。VGSCは、ナトリウムイオンが細胞膜を横断するための出入り口として機能する。ナトリウムチャネル活性は、α-サブユニットによって生じる。VGSCサブタイプは、α-サブユニットのサブタイプに従って定義される。今日までに、少なくとも10個のサブタイプのVGSC、すなわち、Nav1.1、Nav1.2、…、Nav1.9、及びNaxがある。
【0003】
各VGSCサブタイプは、異なるαサブユニットを有し、その発現の組織に応じて生物学的機能を示すように運命付けられている。例えば、Nav1.2サブタイプは、中枢ニューロンで発現される。Nav1.2は、てんかんと関連があるようである[非特許文献1(Human Mol. Genet. vol 24(5), 1459-1468 (2015))]。Nav1.5サブタイプは、心筋細胞において豊富に発現される。Nav1.5の阻害は、QT延長症候群及び突然死を引き起こし得る[非特許文献2(Handbook Exp. Pharmacol. vol 221, 137-168 (2014))]。Nav1.7サブタイプは、後根神経節において豊富に発現される。Nav1.7活性の上方制御は、先端紅痛症を引き起こす[非特許文献3(J. Med. Genet. vol 41, 171-174 (2004))]。一方、遺伝的にNav1.7活性を欠いている人(SCN9Aチャネル病)は、激しい疼痛を感じない(それらの個体は、他の感覚機能において正常であることが見出されたが)[非特許文献4(Nature vol 444, 894-898 (2006))]。
【0004】
テトロドトキシン(TTX)は、フグに見出される神経毒である。TTXは、極めて有毒であり、その腹腔内LD50は、マウスにおいて10μg/Kgである[非特許文献5(Toxins vol 6, 693-755 (2014))]。TTXの経口摂取は、唇及び舌の感覚異常、唾液分泌亢進、発汗、頭痛、振戦、麻痺、チアノーゼ、発作、協調不能、下痢、腹痛、低血圧、呼吸困難、心臓不整脈、昏睡などを引き起こし得る。TTXは、VGSCサブタイプの活性部位に非特異的に結合することによって、そのような有害作用を誘導することが知られている。したがって、VGSCサブタイプの非特異的阻害は、重篤な有害事象を招く危険な治療選択肢であると考えられている。
【0005】
【0006】
リドカインは、非特異的VGSC阻害剤であり、局所麻酔薬として広く使用されている。静脈内投与すると、リドカインは、望ましくない副作用、例えば、筋攣縮、嘔吐、不規則な心拍、眠気などを誘導し得る。そのような副作用は、VGSCサブタイプの非特異的阻害によるものと考えられている。しかし、リドカインによるNav1.5の阻害は、心室頻拍を治療するのに有用であろう。それにもかかわらず、リドカインの全身投与は、ナトリウムチャネルサブタイプの非特異的阻害から生じる有害事象のために、慢性疼痛の治療には望ましくないと考えられている。
【0007】
SCN9Aチャネル病: SCN9A(ナトリウムチャネルサブタイプ9A)遺伝子は、VGSCサブタイプNav1.7のα-サブユニットをコードする。激しい疼痛を感じないが他の感覚機能では正常な、極めて少数の個体が存在する。そのような個体は、非機能的Nav1.7サブタイプをコードするように変異したSCN9A遺伝子を有することが見出された[非特許文献4(Nature vol 444, 894-898 (2006))]。これは、SCN9Aチャネル病と呼ばれている。ヒトSCN9Aチャネル病の行動表現型は、SCN9Aノックアウトマウスでかなりよく再現される[非特許文献6(PLoS One 9(9): e105895 (2014))]。したがって、Nav1.7サブタイプの選択的阻害は、慢性疼痛を安全に治療するのに有用であろう。
【0008】
Nav1.7選択的小分子阻害剤: VGSCの生理学的機能を反映して、VGSCサブタイプの活性部位は、それらの3D構造において類似している。小分子阻害剤を用いて活性部位を直接標的化することによる、Nav1.7サブタイプの選択的阻害は、非常に難しいであろう。リドカイン及びテトロドトキシンは、VGSCサブタイプのそのような非選択的阻害の良い例である。
【0009】
Nav1.5に優先して適度な選択性(約8倍)を有するNav1.7阻害剤は、Nav1.8選択的阻害剤を同定するための200,000個の化合物のライブラリーを用いたハイスループットスクリーンキャンペーンにより同定された[非特許文献7(J. Gen. Physiol. vol 131(5), 399-405 (2008))]。以下に提供される1-ベンザゼピン-2オン誘導体は、電気生理学的アッセイによって、適度なNav1.7選択性(約8倍)を有して、Nav1.5に優先してNav1.7を選択的に阻害することが見出された。
【0010】
【0011】
今日まで、いくつかのNav1.7選択的小分子阻害剤が開示されており、いくつかはヒト患者において評価された。例えば、フナピド(XEN-402/TV-45070)は、少数の先端紅痛症患者で評価された[非特許文献8(Pain vol 153, 80-85 (2012))]。フナピドは鎮痛活性を示したが、登録患者の比較的大部分において、フナピドは、治療関連の及び用量制限の有害事象、例えば、めまい及び傾眠を示した。CNS有害事象は、フナピドのNav1.7選択性が、慢性疼痛を安全に治療するのに十分なほど高くないかもしれないことを示唆する。
【0012】
【0013】
ラクサトリジン(Raxatrigine)(CNV1014802/GSK-1014802)は、Nav1.7及び他のVGSCサブタイプを阻害する。しかし、ラクサトリジンは、ナトリウムチャネルの不活性状態を選択的に安定化することによって、ナトリウムチャネルの機能活性を阻害すると言われている。ラクサトリジンはCNSにおいてナトリウムチャネルを阻害するが、治療用量において忍容性良好であると言われている[非特許文献9(The Pharmaceutical J. 11 Mar. 2016. Nav1.7: a new channel for pain treatment)]。三叉神経痛患者における第IIa相臨床試験では、おそらく登録被験体数に対する限られた効力のため、投与スケジュールは、主要な治療エンドポイントを著しく満たすことができなったが、ラクサトリジン150mg TIDは忍容性良好であった[非特許文献10(J. M. Zakrzewska et al. Lancet Neurol. Published Online Feb 16, 2017, http://dx.doi.org/10.1016/S1472-4422(17) 30005-4)]。
【0014】
PF-05089771は、11nMのIC50を有するNav1.7選択的阻害剤である。PF-05089771は、Nav1.7の不活性型を安定化すると報告された[非特許文献11(Biophysical J. vol 108(2) Suppl., 1573a-1574a (2015))]。治療的可能性のあるPF-05089771は、先端紅痛症又は親知らず抜歯後の歯痛の患者において評価された。PF-05089771の薬物動態分析は、神経障害性疼痛の標的組織における低薬物濃度が、ヒト患者におけるその乏しい鎮痛活性についての可能性のある説明であり得ることを示唆した[非特許文献12(Clin. Pharmacokinet. vol 55(7), 875-87 (2016))]。
【0015】
Nav1.7選択的小分子阻害剤は、構造的側面から再考された[非特許文献13(Bioorg. Med. Chem. Lett. vol 24, 3690-3699 (2014))]。そのようなNav1.7選択的阻害剤の分子サイズは、VGSCサブタイプの非選択的阻害剤であるリドカインよりかなり大きい傾向がある。Nav1.7選択性は、阻害剤の分子サイズを大きくすることによって改善された。各Nav1.7選択的阻害剤は、Nav1.7タンパク質内の異なるドメインに結合すると考えられ、結合ドメインは、阻害剤の化学構造に応じて変わる。皮肉なことに、Nav1.7選択的阻害剤の鎮痛効力は強くなく、SCN9Aチャネル病を有する人における所見からの期待に応えることができなかった[非特許文献14(Expert Opin. Ther. Targets vol 20(8), 975-983 (2016))]。
【0016】
他の種類のNav1.7選択的阻害剤: タランチュラ毒ペプチドProTx-IIは、他のVGSCサブタイプに優先してNav1.7を選択的に阻害することが見出された。しかし、この毒は、急性炎症性疼痛の動物モデルにおいて弱い鎮痛活性を示した[非特許文献15(Mol. Pharmacol. vol 74, 1476-1484 (2008))]。毒ペプチドの電気生理学が、VGSCの各サブタイプを豊富に発現するように操作されたHEK-293細胞において評価されたことを考慮すると、ProTx-IIは、Nav1.7を発現する初代神経細胞においてNav1.7の活性部位に結合しないかもしれない可能性がある。
【0017】
ムカデ毒から単離された46マーのペプチドであるSsm6aは、他のVGSCサブタイプに優先してNav1.7を選択的に阻害することが見出された。Nav1.7のIC50は、Nav1.7を過剰発現するように操作されたHEK-293細胞において0.3nMであることが観察された。ムカデ毒ペプチドは、急性炎症性疼痛モデルであるマウスホルマリン試験においてモルヒネに匹敵する鎮痛効力を示した。この46マーペプチドはまた、ラットDRG細胞においてナトリウム電流を抑制した。この毒ペプチドは強い血清安定性を示したが、鎮痛活性はほんの数時間続いた[非特許文献16(Proc. Nat. Acad. Sci. USA vol 110(43), 17534-17539 (2013))]。
【0018】
SVmab1は、各VGSCサブタイプを過剰発現しているHEK-293細胞において他のVGSCサブタイプに優先してNav1.7を選択的に標的とするモノクローナル抗体である。SVmab1は、HEK-293細胞において30nMのIC50で、Nav1.7によって誘発されるナトリウム電流を選択的に阻害した。このモノクローナル抗体は、マウスホルマリン試験における静脈内(50mg/Kgにおける)又はくも膜下(10μg、すなわち約0.5mg/Kg)投与時に著しい鎮痛活性を示した。2つの投与経路の鎮痛効能の違いに基づき、脊髄又はCNSにおけるNav1.7の阻害は、ホルマリン試験に対する鎮痛活性にとって重要であるはずである[非特許文献17(Cell vol 157(6), 1393-1404 (2014))]。
【0019】
リボソームタンパク質合成: 遺伝情報は、DNA(2-デオキシリボース核酸)中にコードされる。DNAは、転写されて、核においてプレmRNA(プレメッセンジャーリボ核酸)を産生する。プレmRNAのイントロンは、酵素的にスプライスアウトされ、mRNA(メッセンジャーリボ核酸)をもたらし、次いで、これがサイトゾル区画に移動する。サイトゾルでは、リボソームと呼ばれる翻訳機構の複合体が、mRNAに結合し、mRNAに沿ってコードされた遺伝情報をスキャンしながらタンパク質合成を行う[非特許文献18(Biochemistry vol 41, 4503-4510 (2002)); 非特許文献19(Cancer Res. vol 48, 2659-2668 (1988))]。
【0020】
アンチセンスオリゴヌクレオチド: 配列特異的様式で(すなわち、相補的に)RNA又はDNに結合するオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)と呼ばれる。ASOは、mRNA又はプレmRNAに強く結合し得る。
【0021】
mRNAに強く結合するASOは、サイトゾルにおけるmRNAに沿ったリボソームによるタンパク質合成を中断し得る。その標的タンパク質のリボソームタンパク質合成を阻害するために、ASOは、サイトゾル内に存在する必要がある。
【0022】
プレmRNAに強く結合するASOは、プレmRNAのスプライシングプロセスに干渉し得る。ASOは、スプライシングプロセスを変えるために、及びその結果としてエクソンスキッピングを誘導するために、核内に存在すべきである。
【0023】
非天然オリゴヌクレオチド: DNA又はRNAオリゴヌクレオチドは、内因性ヌクレアーゼによる分解を受けやすく、それらの治療的有用性を制限する。今日までに、多くの種類の非天然オリゴヌクレオチドが、開発され、集中的に研究されている[非特許文献20(Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33, 533-540 (2006))]。それらのいくつかは、DNA又はRNAと比較して、拡張された代謝安定性を示す。以下に提供されるのは、いくつかの代表的な非天然オリゴヌクレオチドの化学構造である。そのようなオリゴヌクレオチドは、DNA又はRNAがするように、相補的核酸に予想通りに結合する。
【0024】
【0025】
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド: ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(PTO)は、モノマーあたり、骨格のホスフェートの酸素原子の1つが、硫黄原子で置換されているDNA類似体である。そのような小さな構造変化は、PTOを、ヌクレアーゼによる分解に対して比較的抵抗性にした[非特許文献21(Ann. Rev. Biochem. vol 54, 367-402 (1985))]。
【0026】
PTOとDNAとの間の骨格の構造的類似性を反映して、それらは両方とも、ほとんどの哺乳動物細胞種において細胞膜にあまり浸透しない。しかし、DNAのためのトランスポーター(複数可)を豊富に発現しているいくつかの種類の細胞については、DNA及びPTOは、良好な細胞浸透を示す。全身投与されたPTOは、肝臓及び腎臓に容易に分布することが知られている[非特許文献22(Nucleic Acids Res. vol 25, 3290-3296 (1997))]。
【0027】
インビトロでのPTOの細胞浸透を容易にするために、リポフェクションが一般に行われている。しかし、リポフェクションは、細胞膜を物理的に変化させ、潜在的に細胞毒性を引き起こし、したがって、慢性的治療的使用に対して理想的ではないであろう。
【0028】
過去30年にわたって、アンチセンスPTO及びPTOの変異体は、がん、免疫学的障害、代謝性疾患などを治療するために臨床的に評価されている[非特許文献18(Biochemistry vol 41, 4503-4510 (2002)); 非特許文献20(Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33, 533-540 (2006))]。そのようなアンチセンス薬物候補の多くは、部分的にはPTOの乏しい細胞浸透のために、首尾よく開発されていない。乏しい細胞浸透を克服するために、治療活性のためにはPTOを高用量で投与する必要がある。しかし、PTOは、用量制限毒性、例えば、凝固時間の増加、補体活性化、尿細管性腎症、クッパー細胞活性化、及び免疫刺激、例えば、脾腫、リンパ過形成、単核細胞浸潤を示すことが知られている[非特許文献20(Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33, 533-540 (2006))]。
【0029】
多くのアンチセンスPTOは、肝臓又は腎臓からの大幅な寄与を有する疾患に対して適切な臨床活性を示すことが見出されている。ミポメルセンは、LDLコレステロール輸送に関与するタンパク質であるアポB-100の合成を阻害するPTO類似体である。ミポメルセンは、おそらく肝臓へのその優先的な分布により、アテローム性動脈硬化症患者の特定の集団において適切な臨床活性を示した[非特許文献23(Circulation vol 118(7), 743-753 (2008))]。ISIS-113715は、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP1B)の合成を阻害するPTOアンチセンス類似体であり、II型糖尿病患者において治療活性を示すことが見出された[非特許文献24(Curr. Opin. Mol. Ther. vol 6, 331-336 (2004))]。
【0030】
ロックド核酸: ロックド核酸(LNA)では、RNAの骨格リボース環は、RNA又はDNAに対する結合親和性を増加させるように構造的に拘束されている。したがって、LNAは、高親和性のDNA又はRNA類似体と見なしてもよい[非特許文献25(Biochemistry vol 45, 7347-7355 (2006))]。しかし、LNAはまた、乏しい細胞浸透を示す。
【0031】
ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド: ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)では、DNAの骨格ホスフェート及び2-デオキシリボースは、それぞれ、ホスホロアミダイト及びモルホリンに置き換えられている[非特許文献26(Appl. Microbiol. Biotechnol. vol 71, 575-586 (2006))]。DNA骨格は負に帯電しているが、PMO骨格は帯電していない。したがって、PMOとmRNAとの間の結合は、骨格間の静電反発力がなく、DNAとmRNAとの間の結合よりも強い傾向がある。PMOはDNAと構造的に非常に異なるので、PMOは、DNA又はRNAを認識する肝臓トランスポーター(複数可)によって認識されないであろう。しかし、PMOは、哺乳動物細胞膜を容易には浸透しない。
【0032】
ペプチド核酸: ペプチド核酸(PNA)は、単位骨格としてN-(2-アミノエチル)グリシンを有するポリペプチドであり、Nielsen博士及び同僚らによって発見された[非特許文献27(Science vol 254, 1497-1500 (1991))]。原型PNAの化学構造及び略書した専門語を、以下に提供する図面によって説明する。
【0033】
【0034】
DNA及びRNAと同様に、PNAは、相補的核酸に選択的に結合する[非特許文献28(Nature (London) vol 365, 566-568 (1992))]。相補的核酸への結合において、PNAのN末端は、DNA又はRNAの「5'末端」と同等であると見なされ、PNAのC末端は、DNA又はRNAの「3'末端」と同等であると見なされる。
【0035】
PMOと同様に、PNA骨格は帯電していない。したがって、PNAとRNAとの間の結合は、DNAとRNAとの間の結合よりも強い傾向がある。PNAは化学構造においてDNAと著しく異なるので、PNAは、DNAを認識する肝臓トランスポーター(複数可)によって認識されず、DNA又はPTOの組織分布プロファイルとは異なる組織分布プロファイルを示すであろう。しかし、PNAも哺乳動物細胞膜にあまり浸透しない(非特許文献29(Adv. Drug Delivery Rev. vol 55, 267-280, 2003))。
【0036】
【0037】
PNAの膜透過性を改善するための修飾核酸塩基: 共有結合したカチオン性脂質又はその同等物を有する修飾核酸塩基を導入することによって、PNAは、哺乳動物細胞膜に対して高度に透過性にされた。そのような修飾核酸塩基の化学構造は上に提供されている。シトシン、アデニン、及びグアニンのそのような修飾核酸塩基は、それぞれ、グアニン、チミン、及びシトシンと予想通りに、相補的にハイブリダイズすることが見出された[特許文献1(PCT Appl. No. PCT/KR2009/001256); 特許文献2(EP2268607); 特許文献3(US8680253)]。
【0038】
そのような修飾核酸塩基のPNAへの組み込みは、リポフェクションの状況を真似る。リポフェクションによって、オリゴヌクレオチド分子は、リポフェクタミンなどのカチオン性脂質分子で包まれ、そのようなリポフェクタミン/オリゴヌクレオチド複合体は、裸のオリゴヌクレオチド分子と比較して、かなり容易に膜を浸透する傾向がある。
【0039】
良好な膜透過性に加えて、それらのPNA誘導体は、相補的核酸に対して超強力な親和性を示すことが見出された。例えば、4~5個の修飾核酸塩基を11~13マーのPNA誘導体に導入すると、相補的DNAとの二重鎖形成の際に、20℃以上のTm増加が容易にもたらされた。そのようなPNA誘導体は、一塩基ミスマッチに対して非常に敏感である。一塩基ミスマッチは、修飾塩基の種類及びPNA配列に応じて、融点(Tm)における11~22℃の低下をもたらした。
【0040】
低分子干渉RNA(siRNA): 低分子干渉RNA(siRNA)は、20~25塩基対の二本鎖RNAを指す[非特許文献30(Microbiol. Mol. Biol. Rev. vol 67(4), 657-685 (2003))]。siRNAのアンチセンス鎖は、なんらかの方法でタンパク質と相互作用して、「RNA誘導サイレンシング複合体」(RISC)を形成する。次いで、RISCは、siRNAのアンチセンス鎖に相補的なmRNAの特定の部分に結合する。RISCと複合体を形成したmRNAは、切断を受ける。したがって、siRNAは、その標的mRNAの切断を触媒的に誘導し、mRNAによるタンパク質発現を阻害する。RISCは、その標的mRNA内の完全相補的配列に常に結合するわけではなく、これは、siRNA療法のオフターゲット効果に関する懸念を提起する[非特許文献31(Nature Rev. Drug Discov. vol 9, 57-67 (2010))]。DNA又はRNA骨格を有するオリゴヌクレオチドの他のクラスと同様に、siRNAは、乏しい細胞透過性を有し、したがって、適切に製剤化又は化学的に修飾されて良好な膜透過性を示さない限り、乏しいインビトロ又はインビボ治療活性を示す傾向がある。
【0041】
SCN9A siRNA: 先行技術は、ヒトSCN9A mRNAのエクソン8内の19マー配列[(5'→3')GAUUAUGGCUACACGAGCU]を標的とするsiRNAを開示した[特許文献4(US8183221)]。くも膜下注入時に、このsiRNAは、神経障害性疼痛及び炎症性疼痛の動物モデルにおいて治療活性を示すと主張された。このsiRNAは、ラットDRG細胞においてNav1.7発現を下方制御すると言われた。
【0042】
スプライシング: DNAは、転写されて、核においてプレmRNA(プレメッセンジャーリボ核酸)を産生する。次いで、
図17の図に概略的に要約されるように、プレmRNAは、「スプライシング」と総称される一連の複雑な反応によるイントロンの削除後に、mRNAにプロセシングされる[非特許文献32(Ann. Rev. Biochem. 72(1), 291-336 (2003)); 非特許文献33(Nature Rev. Mol. Cell Biol. 6(5), 386-398 (2005)); 非特許文献34(Nature Rev. Mol. Cell Biol. 15(2), 108-121 (2014))]。
【0043】
スプライシングは、プレmRNAとスプライシングアダプター因子との間の「スプライスソームE複合体」(すなわち、初期スプライスソーム複合体)を形成することによって開始される。「スプライスソームE複合体」では、U1は、エクソンNとイントロンNの接合部に結合し、U2AF35は、イントロンNとエクソン(N+1)の接合部に結合する。したがって、エクソン/イントロン又はイントロン/エクソンの接合部は、初期スプライスソーム複合体の形成にとって重要である。「スプライスソームE複合体」は、U2とのさらなる複合体化時に、「スプライスソームA複合体」に進化する。「スプライスソームA複合体」は、近隣のエクソンを隣接させるために、イントロンを削除又はスプライスアウトする一連の複雑な反応を受ける。
【0044】
スプライシングのアンチセンス阻害: 核において、ASOは、プレmRNA内の特定の位置に強く結合し、プレmRNAのmRNAへのスプライシングプロセスに干渉し、標的エクソンを欠くmRNA(単数又は複数)を産生し得る。そのようなmRNAは、「スプライスバリアント」と呼ばれ、全長mRNAによってコードされるタンパク質よりも短いタンパク質をコードする。
【0045】
原則として、スプライシングは、「スプライスソームE複合体」の形成を阻害することによって中断し得る。ASOが(5'→3')エクソン-イントロンの接合部、すなわち、「5'スプライス部位」に強く結合する場合、ASOは、プレmRNAとU1因子との間の複合体形成、及びしたがって「スプライスソームE複合体」の形成を遮断する。同様に、ASOが(5'→3')イントロン-エクソンの接合部、すなわち、「3'スプライス部位」に強く結合する場合、「スプライスソームE複合体」は形成できない。
【0046】
SCN9AプレmRNAスプライシングのアンチセンス阻害: 今日まで、SCN9AプレmRNAの選択的スプライシングを誘導するSCN9A ASOの事例は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【文献】PCT Appl. No. PCT/KR2009/001256
【文献】EP2268607
【文献】US8680253
【文献】US8183221
【非特許文献】
【0048】
【文献】Human Mol. Genet. vol 24(5), 1459-1468 (2015)
【文献】Handbook Exp. Pharmacol. vol 221, 137-168 (2014)
【文献】J. Med. Genet. vol 41, 171-174 (2004)
【文献】Nature vol 444, 894-898 (2006)
【文献】Toxins vol 6, 693-755 (2014)
【文献】PLoS One 9(9): e105895 (2014)
【文献】J. Gen. Physiol. vol 131(5), 399-405 (2008)
【文献】Pain vol 153, 80-85 (2012)
【文献】The Pharmaceutical J. 11 Mar. 2016. Nav1.7: a new channel for pain treatment
【文献】J. M. Zakrzewska et al. Lancet Neurol. Published Online Feb 16, 2017, http://dx.doi.org/10.1016/S1472-4422(17) 30005-4
【文献】Biophysical J. vol 108(2) Suppl., 1573a-1574a (2015)
【文献】Clin. Pharmacokinet. vol 55(7), 875-87 (2016)
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【文献】Adv. Drug Delivery Rev. vol 55, 267-280, 2003)
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【文献】Nature Rev. Mol. Cell Biol. 15(2), 108-121 (2014)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0049】
発明の概要
本発明は、式I:
【0050】
【化7】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と21との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的プレmRNA配列と部分的に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、独立して、デューテリド(deuterido)、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH
2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも4つは、独立して、核酸塩基部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0051】
式Iの化合物は、ヒトSCN9AプレmRNAの選択的スプライシングを誘導し、「エクソン4」を欠くSCN9A mRNAスプライスバリアント(複数可)を生じ、疼痛、又はNav1.7活性を伴う症状を治療するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1A】式Iのペプチド核酸誘導体について選択可能な天然及び非天然核酸塩基の例。
【
図2A】式Iのペプチド核酸誘導体について選択可能な置換基の例。
【
図3】天然又は修飾核酸塩基を有するPNAモノマーについての化学構造。
【
図5A】「(N→C)Fethoc-TA(5)A-A(5)TA(5)-CGC(1O2)-AA(5)A-A(5)A-NH
2」の化学構造。
【
図5B】「(N→C)Fethoc-AG(5)C-A(5)CT-TA(5)C-GC(1O2)A-A(5)AA(2O2)-A-Lys-NH
2」の化学構造。
【
図6】本発明のPNA誘導体を合成するために使用されるFmoc-PNAモノマーの化学構造。
【
図7A-B】
図7(A)及び(B)は、それぞれ、HPLC精製の前及び後の「ASO4」のC
18逆相HPLCクロマトグラムを示す。
【
図8】C
18逆相クロマトグラフィーによる精製後の「ASO4」のESI-TOF質量スペクトル。
【
図9A-B】
図9(A). 0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO9」で処理したPC3細胞のSCN9AネステッドPCR産物の電気泳動分析。
図9(B). それぞれ「エクソン4」(上)及び「エクソン4~5」(下)のスキッピングに割り当てられたPCR産物バンドについてのサンガー配列決定データ。
【
図10A-B】
図10(A). 0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO9」で処理したPC3細胞で得られたSCN9AネステッドqPCRデータ(標準誤差によるエラーバー)。
図10(B). 0(陰性対照)、100、又は1,000zMの「ASO9」で処理したPC3細胞において得られたコロナ(CoroNa)アッセイデータ。
【
図11A-B】
図11(A). 0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO4」で処理したPC3細胞におけるSCN9AネステッドqPCRデータ(標準誤差によるエラーバー)。
図11(B). 0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO5」で処理したPC3細胞におけるSCN9AネステッドqPCRデータ(標準誤差によるエラーバー)。
【
図11C】0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO1」で処理したPC3細胞におけるSCN9AネステッドqPCRデータ(標準誤差によるエラーバー)。
【
図11D】0(陰性対照)、10、又は100zMの「ASO6」で処理したPC3細胞におけるSCN9AネステッドqPCRデータ(標準誤差によるエラーバー)。
【
図11E】0(陰性対照)、10、又は100zMの「ASO10」で処理したPC3細胞におけるSCN9AネステッドqPCRデータ(標準誤差によるエラーバー)。
【
図12A-B】
図12(A). 0(陰性対照)、100、又は1,000zMの「ASO10」と共に30時間インキュベートした後のPC3細胞におけるコロナアッセイによる平均細胞内蛍光のトレース。
図12(B). 0(陰性対照)、100、又は1,000zMの「ASO6」と共に30時間インキュベートした後のPC3細胞におけるコロナアッセイによる平均細胞内蛍光のトレース。
【
図12C-D】
図12(C). 0(陰性対照)、100、又は1,000zMの「ASO4」と共に30時間インキュベートした後のPC3細胞におけるコロナアッセイによる平均細胞内蛍光のトレース。
図12(D). 0(陰性対照)、100、又は1,000zMの「ASO5」と共に30時間インキュベートした後のPC3細胞におけるコロナアッセイによる平均細胞内蛍光のトレース。
【
図13】0(陰性対照)、3、又は10pmole/Kgの「ASO1」を皮下投与したSDラットにおけるSNL(L6切断を伴うL5結紮)で誘導された異痛症の逆転(標準誤差によるエラーバー)。
【
図14】0(陰性対照)、0.01、0.1、1、又は10pmole/Kgの「ASO5」を皮下投与した、又はプレガバリン30mg/Kg(陽性対照)を経口投与したラットにおけるDPNPによって誘導された異痛症の逆転(標準誤差によるエラーバー)。
【
図15】「ASO9」又は「ASO10」100pmole/Kg、又はビヒクルのみを皮下投与したラットにおけるDPNPによって誘導された異痛症の逆転(標準誤差によるエラーバー)。
【
図16】0(陰性対照)又は100pmole/Kg、TID(1日3回)の「ASO9」を皮下に受けたSDラットにおけるSNL(L5/L6結紮)によって誘導された異痛症の逆転。
【
図17】プレmRNAは、「スプライシング」と総称される一連の複雑な反応によるイントロンの削除後に、mRNAにプロセシングされる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の説明
本発明は、式I:
【0054】
【化8】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と21との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的プレmRNA配列と部分的に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、独立して、デューテリド、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH
2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも4つは、独立して、核酸塩基部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0055】
式Iの化合物は、ヒトSCN9AプレmRNAの選択的スプライシングを誘導し、「エクソン4」を欠くSCN9A mRNAスプライスバリアント(複数可)を生じ、疼痛、又はNav1.7活性を伴う症状を治療するのに有用である。
【0056】
「nは10と21との間の整数である」という記載は、文字通り、nが11、12、13、14、15、16、17、18、19、及び20の整数の群から選択可能な整数であることを表す。
【0057】
式Iの化合物は、[NCBI参照配列: NC_000002.12]のヒトSCN9A遺伝子から転写されたヒトSCN9AプレmRNAの「エクソン4」の5'スプライス部位に強く結合する。エクソン及びイントロンの番号は、SCN9A mRNA転写物に応じて変わり得るが、「エクソン4」由来の20マー及び「イントロン4」由来の20マーからなる40マーのSCN9AプレmRNA配列は、[(5'→3')UUUGUCGUCAUUGUUUUUGC-GUAAGUACUUUCAGCUUUUU]と読む。40マーのプレmRNA配列の提供は、ヒトSCN9AプレmRNA内の標的5'スプライスを明白に定義しようとするものである。
【0058】
あるいは、40マーのプレmRNA配列は、[(5'→3')UUUGUCGUCAUUGUUUUUGC┃guaaguacuuucagcuuuuu]と表してもよく、エクソン及びイントロンの配列は、それぞれ「大」文字及び「小」文字で表され、エクソンとイントロンとの間の接合部は「┃」で印を付ける。したがって、本発明において式Iの化合物を記載するために採用された[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのプレmRNA配列は、代わりに、[(5'→3')UUUUUGC┃guaagua]と表してもよい。
【0059】
式Iの化合物は、ヒトSCN9AプレmRNA内の「エクソン4」の標的5'スプライス部位に強く結合し、化合物の標的エクソンを含む「スプライスソーム初期複合体」の形成に干渉する。本発明の化合物は「エクソン4」を含む「スプライスソーム初期複合体」の形成を立体的に阻害するので、SCN9A「エクソン4」は、スプライスアウト又は削除されて、「エクソン4」を欠くSCN9A mRNAスプライスバリアント(単数又は複数)を生じる。結果として、本発明の化合物は、SCN9A「エクソン4」のスキッピングを誘導すると言われる。得られたSCN9A mRNAスプライスバリアント(複数可)は、全長Nav1.7タンパク質によって発現されるNav1.7機能活性(すなわち、ナトリウムイオンチャネル活性)を欠くNav1.7タンパク質(複数可)をコードする。
【0060】
式Iの化合物は、先行技術[PCT/KR2009/001256]に例示されているように、相補的DNAに強く結合する。式IのPNA誘導体と、その全長相補的DNA又はRNAとの間の二重鎖は、水性緩衝液中で確実に測定するには高すぎるTm値を示す。緩衝溶液は、Tm測定中に沸騰してなくなる傾向がある。式IのPNA化合物は、より短い長さ、例えば10マーの相補的DNAとの高いTm値を依然としてもたらす。
【0061】
高い結合親和性のために、本発明のPNA誘導体は、「エクソン4」の5'スプライス部位と11マーほどの小さい相補的重複であっても、細胞においてSCN9A「エクソン4」のスキッピングを強力に誘導する。
【0062】
式Iの化合物は、完全な相補性を有する標的SCN9AプレmRNA配列に対して非常に強い親和性を有する。式Iの化合物が標的SCN9AプレmRNA配列と1つ又は2つのミスマッチを有する場合でさえも、PNA化合物は、依然として標的プレmRNA配列に強く結合することができ、スプライシングプロセスを中断する。式Iの化合物と、標的SCN9AプレmRNA配列との間の親和性が、ミスマッチ(複数可)にもかかわらず、十分に強いためである。例えば、式Iの14マーのPNA誘導体は、本発明において[(5'→3')UUUUUGC┃guaagua]の14マーのSCN9AプレmRNA配列と12マーのみの相補的重複を有し、14マー配列との2つのミスマッチにもかかわらず、SCN9A「エクソン4」のスキッピングを誘導する。それにもかかわらず、他の遺伝子(複数可)由来のプレmRNA配列との交差反応性を回避するために、標的プレmRNA配列と多すぎるミスマッチを有することは望ましくないであろう。
【0063】
式IのPNA誘導体中の天然又は非天然核酸塩基の化学構造は、
図1(A)~(C)に例示されている。本発明の天然(慣習的に「天然に存在する」と表現される)又は非天然(慣習的に「天然に存在しない」と表現される)核酸塩基は、
図1(A)~(C)に提供される核酸塩基を含むが、これらに限定されない。そのような非天然核酸塩基の提供は、式Iの化合物について許容可能な核酸塩基の多様性を説明しようとするものであり、したがって、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。当業者は、式IのPNA化合物内の特定の位置について、非天然核酸塩基の変形が可能である(そのような変形が、標的プレmRNA配列との相補性の条件を満たす限り)ことを容易に理解し得る。
【0064】
式IのPNA誘導体を記載するために採用された置換基は、
図2(A)~(E)に例示されている。
図2(A)は、置換又は非置換のアルキル基の例を提供する。置換若しくは非置換のアルキルアシル、並びに置換若しくは非置換のアリールアシル基が、
図2(B)に例示されている。
図2(C)は、置換若しくは非置換のアルキルアミノ、置換若しくは非置換のアリールアミノ、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル若しくはアリールスルホニル、並びに置換若しくは非置換のアルキルホスホニル若しくはアリールホスホニル基の例を示す。
図2(D)は、置換又は非置換のアルキルオキシカルボニル又はアリールオキシカルボニル、置換又は非置換のアルキルアミノカルボニル又はアリールアミノカルボニル基の例を提供する。
図2(E)には、置換若しくは非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルオキシチオカルボニル、並びに置換若しくは非置換のアリールオキシチオカルボニル基の例が提供される。そのような例示的置換基の提供は、式Iの化合物について許容可能な置換基の多様性を説明しようとするものであり、したがって、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。当業者は、PNAオリゴヌクレオチド配列が、N末端又はC末端における置換基を超えて、標的プレmRNA配列へのPNAオリゴヌクレオチドの配列特異的結合の最重要因子であることを容易に理解し得る。
【0065】
式IのPNA化合物は、良好な細胞透過性を有し、先行技術[PCT/KR2009/001256]において例示されているように、「裸の」オリゴヌクレオチドとして処理された場合、細胞内に容易に送達されることができる。したがって、本発明の化合物は、「裸の」オリゴヌクレオチドとして式Iの化合物で処理した細胞において、SCN9AプレmRNAにおける「エクソン4」のスキッピングを誘導して、SCN9A「エクソン4」を欠くSCN9A mRNAスプライスバリアント(複数可)を生じる。「裸のオリゴヌクレオチド」としての式Iの化合物で処理した細胞は、化合物処理のない細胞よりも、低いレベルの全長SCN9A mRNAを発現し、したがって、低いNav1.7機能活性を示す。
【0066】
式Iの化合物は、意図される治療的又は生物学的活性のために、標的組織への全身送達を増加させるための侵襲的製剤を必要としない。通常、式Iの化合物は、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)又は生理食塩水に溶解され、標的細胞(たいていは神経細胞)において所望の治療的(すなわち、鎮痛性)又は生物学的活性を誘発するために全身投与される。本発明の化合物は、全身的治療活性を誘発するために、多量に又は侵襲的に製剤化される必要はない。
【0067】
式Iの化合物は、「裸のオリゴヌクレオチド」としての全身投与時に、神経細胞又は組織におけるNav1.7発現を阻害する。したがって、化合物は、疼痛、又はNav1.7の過剰発現を伴う障害を安全に治療するのに有用である。
【0068】
式IのPNA誘導体は、薬学的に許容可能な酸又は塩基と組み合わせて使用してもよく、薬学的に許容可能な酸又は塩基としては、限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、メタンスルホン酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0069】
式IのPNA化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能なアジュバントと組み合わせて対象に投与することができ、薬学的に許容可能なアジュバントとしては、限定されないが、クエン酸、塩酸、酒石酸、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、重炭酸ナトリウム、蒸留水、防腐剤(複数可)などが挙げられる。
【0070】
本発明の化合物は、1nmole/Kg以下の治療的又は生物学的に有効な用量で対象に全身投与することができ、この用量は、投与スケジュール、対象の症状又は状況などに応じて変わるであろう。
【0071】
好ましいのは、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と21との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的プレmRNA配列と部分的に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、独立して、ヒドリド基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも3つは、独立して、式II、式III、又は式IV:
【0072】
【化9】
によって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアルキル基から選択され; 及び
L
1、L
2及びL
3は、塩基性アミノ基を、核酸塩基対合を担う核酸塩基部分に接続する式V:
【0073】
【化10】
によって表される共有結合リンカーであり;
Q
1及びQ
mは、置換又は非置換のメチレン(-CH
2-)基であり、及びQ
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2、Q
3、…、及びQ
m-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、並びに置換若しくは非置換のアミノ基[-N(H)-、又は-N(置換基)-]から選択され; 及び
mは、1と16との間の整数である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0074】
興味深いのは、式IのPNAオリゴマー、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、12と20との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的プレmRNA配列と部分的に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、アミノカルボニル[NH2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアルキル基から選択され;
Q1及びQmは、置換又は非置換のメチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素、並びにアミノ基から選択され; 及び
mは、1と11との間の整数である、
PNAオリゴマー、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0075】
特に興味深いのは、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、12と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアルキル基から選択され;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と10との間の整数である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0076】
非常に興味深いのは、式IのPNAオリゴマー、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、12と18との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R3、及びR5は、ヒドリド基であり、R2、R4、及びR6は、独立して、ヒドリド、又は置換若しくは非置換のアルキル基を表し;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と10との間の整数である、
PNAオリゴマー、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0077】
より非常に興味深いのは、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、12と16との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、ヒドリド基であり;
Q1及びQmは、メチレン基であり、及びQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と10との間の整数である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0078】
最も興味深いのは、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、12と16との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であり;
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnは、ヒドリド基であり;
Xは、ヒドリド基であり;
Yは、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、ヒドリド基であり;
L1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)3-、-CH2-O-(CH2)4-、又は-CH2-O-(CH2)5-を表し、右端は、塩基性アミノ基に直接結合しており; 及び
L2及びL3は、独立して、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-(CH2)3-O-(CH2)2-、-(CH2)2-O-(CH2)3-、-(CH2)2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、及び-(CH2)8-から選択され、右端は、塩基性アミノ基に直接結合している、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0079】
具体的に興味深いのは、以下:
【0080】
【0081】
【0082】
に提供される化合物の群から選択される、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
A、G、T、及びCは、それぞれ、アデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)は、それぞれ、式VI、式VII、式VIII、式IX、及び式X
【0083】
【化11】
によって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
p及びqは、整数であり; 及び
N末端置換基及びC末端置換基の略語は、以下に具体的に記載される通りであり: 「Fmoc-」は、「[(9-フルオレニル)メチルオキシ]カルボニル-」基の略語であり; 「Fethoc-」は、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」基の略語であり; 「Ac-」は、「アセチル-」基の略語であり; 「ベンゾイル-」は、「ベンゼンカルボニル-」基の略語であり; 「Piv-」は、「ピバリル-」基の略語であり; 「Me-」は、「メチル-」基の略語であり; 「n-プロピル-」は、「1-(n-プロピル)-」基の略語であり; 「H-」は、「ヒドリド-」基の略語であり; 「p-トルエンスルホニル」は、「(4-メチルベンゼン)-1-スルホニル-」基の略語であり; 「-Lys-」は、アミノ酸残基「リジン」の略語であり; 「-Val-」は、アミノ酸残基「バリン」の略語であり; 「-Leu-」は、アミノ酸残基「ロイシン」の略語であり; 「-Arg-」は、アミノ酸残基「アルギニン」の略語であり; 「-Gly-」は、アミノ酸残基「グリシン」の略語であり; 「[N-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」は、「[N-1-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」基の略語であり; 「ベンジル-」は、「1-(フェニル)メチル-」基の略語であり; 「フェニル-」は、「フェニル-」基の略語であり; 「Me-」は、「メチル-」基の略語であり; 「-HEX-」は、「6-アミノ-1-ヘキサノイル-」基の略語であり、「FAM-」は、「5又は6-フルオレセイン-カルボニル-(異性体混合物)」基の略語であり、及び「-NH
2」は、非置換の「-アミノ」基の略語である、
PNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0084】
図3は、A、G、T、C、C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)と略書されるPNAモノマーの化学構造をまとめて提供する。先行技術[PCT/KR2009/001256]で論じられているように、C(pOq)は、「グアニン」に対するその好ましいハイブリダイゼーションのために、「シトシン」に対応する修飾PNAモノマーと見なされる。A(p)及びA(pOq)は、「チミン」に対するそれらの強い親和性のために、「アデニン」として作用する修飾PNAモノマーと見なされる。同様に、G(p)及びG(pOq)は、「シトシン」とのそれらの生産的な塩基対合のために、「グアニン」と同等の修飾PNAモノマーであると考えられる。
【0085】
図4は、本発明における式IのPNA誘導体のN末端又はC末端を多様化するために使用される置換基についての様々な略語の化学構造を明白に例示する。
【0086】
本発明におけるPNA誘導体の略語を例示するために、「(N→C)Fethoc-TA(5)A-A(5)TA(5)-CGC(1O2)-AA(5)A-A(5)A-NH
2」と略書される14マーPNA誘導体の化学構造は、
図5(A)に提供される。この14マーPNA配列は、SCN9AプレmRNAへの相補的結合について「(5'→3')TAA-ATA-CGC-AAA-AA」のDNA配列と同等である。この14マーPNAは、ヒトSCN9AプレmRNA内の「エクソン4」を含む5'スプライス部位にまたがる[(5'→3')UUGUUUUUGC┃guaaguacuu]の20マー配列内に12マーの相補的重複を有し、相補的塩基対合には、
【0087】
において「太字」及び「下線付き」の印を付け、さらに、「イントロン4」における2つのミスマッチには、引用符表記(" ")で印を付ける。「イントロン5」における2つのミスマッチにもかかわらず、この14マーPNAは、本発明における式Iの化合物についての相補的重複基準、すなわち、以下に提供される基準を満たす:
【0088】
「式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し、式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的プレmRNA配列と部分的に相補的である。」
【0089】
別の例示として、「(N→C)Fethoc-AG(5)C-A(5)CT-TA(5)C-GC(1O2)A-A(5)AA(2O2)-A-Lys-NH
2」と略書される16マーPNA誘導体の化学構造は、
図5(B)に提供される。この16マーPNA配列は、SCN9AプレmRNAへの相補的結合について「(5'→3')AGC-ACT-TAC-GCA-AAA-A」のDNA配列と同等である。この16マーPNAは、ヒトSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUGUUUUUGC┃guaaguacuu]の20マーのプレmRNA配列と15マーの相補的重複を有し、相補的塩基対合には、
【0090】
において「太字」及び「下線付き」の印を付け、さらに、「イントロン4」における単一のミスマッチには、引用符表記(" ")で印を付ける。この16マーPNAは、「イントロン5」における単一のミスマッチにもかかわらず、本発明における式Iの化合物についての相補的重複基準を満たす。
【0091】
「(N→C)Fethoc-AC(1O2)T-TA(5)C-G(6)CA-A(5)AA(5)-AC(1O2)A-A(5)-NH2」の16マーPNA配列は、SCN9AプレmRNAへの相補的結合について「(5'→3')ACT-TAC-GCA-AAA-ACA-A」のDNA配列と同等である。この16マーPNAは、[(5'→3')UUGUUUUUGC┃guaaguacuu]の20マーSCN9AプレmRNA配列に対する完全な(すなわち、16マーの)相補的結合を有し、相補的塩基対合には、
【0092】
において「太字」及び「下線付き」の印を付ける。この16マーPNAは、本発明における式Iの化合物についての相補的重複基準を満たす。
【0093】
「(N→C)Fethoc-TG(6)T-TA(5)A-A(5)TA(5)-CGC(1O2)-AA(5)A-A(5)A-NH2」の17マーPNA配列は、SCN9AプレmRNAへの相補的結合について「(5'→3')TGT-TAA-ATA-CGC-AAA-AA」のDNA配列と同等である。この17マーPNAは、[(5'→3')UUGUUUUUGC┃guaaguacuu]の20マーSCN9AプレmRNA配列と12マーの相補的重複を有し、相補的塩基対合には、
【0094】
において「太字」及び「下線付き」の印を付け、さらに、「イントロン4」における5つのミスマッチには、引用符表記(" ")で印を付ける。この17マーPNAは、上記の14マーPNAのように12マーの相補的重複を有するが、この17マーPNAは、「イントロン5」における5つのミスマッチのために、本発明における式Iの化合物についての相補的重複基準を満たさない。この17マーPNAのようにオリゴマー長に対して多すぎるミスマッチを有することは、潜在的に、SCN9AプレmRNA以外のプレmRNA(複数可)との交差反応性を誘発する可能性があり、したがって、安全上の懸念から回避する必要がある。
【0095】
発明の詳細な説明
PNAオリゴマーを調製するための一般手順
PNAオリゴマーは、わずかであるが適切な改変を加えた先行技術[US6,133,444; WO96/40685]に開示された方法に従って、Fmoc化学に基づく固相ペプチド合成(SPPS)によって合成した。この研究で使用した固体支持体は、PCAS BioMatrix Inc. (Quebec, Canada)から購入したH-Rink Amide-ChemMatrixであった。修飾核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーは、先行技術[PCT/KR 2009/001256]に記載されているように、又はわずかな改変を加えて合成した。修飾核酸塩基を有するそのようなFmoc-PNAモノマー、及び天然に存在する核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーを使用して、本発明のPNA誘導体を合成した。PNAオリゴマーをC18逆相HPLC(0.1%TFAを含む水/アセトニトリル又は水/メタノール)によって精製し、ESI/TOF/MSを含む質量分析法によって特徴付けた。
【0096】
スキーム1は、本発明のSPPSにおいて採用されている典型的なモノマー伸長サイクルを例示しており、合成の詳細は以下のように提供される。しかし、当業者にとって、自動ペプチド合成機又は手動ペプチド合成機上でそのようなSPPS反応を効果的に実行することにおいて、多くのわずかな変形が明らかに可能である。スキーム1の各反応工程は、以下のように簡単に提供される。
【0097】
【0098】
[H-Rink-ChemMatrix樹脂の活性化] 1.5mLの20%ピペリジン/DMF中の0.01mmol(約20mg樹脂)のChemMatrix樹脂を、20分間、ライブラチューブ(libra tube)中でボルテックスし、脱Fmoc溶液をろ過して除いた。樹脂を、連続して、1.5mLの塩化メチレン(MC)、1.5mLのジメチルホルムアミド(DMF)、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、及び1.5mLのMCでそれぞれ30秒間洗浄した。固体支持体上に得られた遊離アミンを、Fmoc-PNAモノマー又はFmoc-保護アミノ酸誘導体のいずれかとのカップリングに供した。
【0099】
[脱Fmoc] 樹脂を、1.5mLの20%ピペリジン/DMF中で7分間ボルテックスし、脱Fmoc溶液をろ過して除いた。樹脂を、連続して、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、及び1.5mLのMCでそれぞれ30秒間洗浄した。固体支持体上に得られた遊離アミンを、直ちにFmoc-PNAモノマーとのカップリングに供した。
【0100】
[Fmoc-PNAモノマーとのカップリング] 固体支持体上の遊離アミンを、Fmoc-PNAモノマーと以下のようにカップリングさせた。0.04mmolのPNAモノマー、0.05mmolのHBTU、及び10mmolのDIEAを、1mLの無水DMF中で2分間インキュベートし、遊離アミンを有する樹脂に添加した。樹脂溶液を1時間ボルテックスし、反応媒体をろ過して除いた。次いで、樹脂を、連続して、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、及び1.5mLのMCでそれぞれ30秒間洗浄した。本発明において使用される修飾核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーの化学構造は、
図6に提供される。
図6に提供される修飾核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーは、例と見なされるべきであり、したがって、本発明の範囲を限定すると見なされるべきではない。当業者は、式IのPNA誘導体を合成するためのFmoc-PNAモノマーにおけるいくつかの変形を容易に理解し得る。
【0101】
[キャッピング] カップリング反応後、1.5mLのキャッピング溶液(DMF中、5%無水酢酸及び6%2,6-ルチジン)中で5分間振盪することによって、未反応遊離アミンをキャッピングした。次いで、キャッピング溶液を、ろ過して除き、連続して、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、及び1.5mLのMCでそれぞれ30秒間洗浄した。
【0102】
[N末端における「Fethoc-」基の導入] 塩基性カップリング条件下で樹脂上の遊離アミンを「Fethoc-OSu」と反応させることによって、「Fethoc-」基をN末端に導入した。「Fethoc-OSu」[CAS番号179337-69-0、C20H17NO5、MW 351.36]の化学構造は、以下のように提供される。
【0103】
【0104】
[樹脂からの切断] 1.5mLの切断溶液(トリフルオロ酢酸中、2.5%トリ-イソプロピルシラン及び2.5%水)中で3時間振盪することによって、樹脂に結合したPNAオリゴマーを樹脂から切断した。樹脂をろ過して除き、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をジエチルエーテルで粉砕し、逆相HPLCによる精製のために、得られた沈殿物をろ過によって回収した。
【0105】
[HPLC分析及び精製] 樹脂から切断した後、PNA誘導体の粗生成物を、0.1%TFAを含有する水/アセトニトリル又は水/メタノール(勾配法)を溶出するC
18逆相HPLCによって精製した。
図7(A)及び
図7(B)は、それぞれ、HPLC精製の前及び後の「ASO4」の例示的HPLCクロマトグラムである。「ASO4」のオリゴマー配列は、表1に提供されるとおりである。
【0106】
式IのPNA誘導体の合成例
本発明におけるPNA誘導体は、上に提供された合成手順に従って又はわずかな改変を加えて調製した。表1は、質量分析法による構造的特徴付けデータと共に、ヒトSCN9A「エクソン4」の5'スプライス部位を標的とするSCN9A ASOの例を提供する。表1におけるSCN9A ASOの提供は、式IのPNA誘導体を例示しようとするものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0107】
【0108】
図7(A)は、「ASO4」の粗生成物を用いて得られたHPLCクロマトグラムである。粗生成物を、C
18逆相(RP)分取(preparatory)HPLCによって精製した。
図7(B)は、「ASO4」の精製した生成物のHPLCクロマトグラムである。「ASO4」の純度は、分取HPLC精製によって著しく改善した。
図8は、「ASO4」の精製した生成物を用いて得られたESI-TOF質量スペクトルを提供する。「ASO4」についての分析データの提供は、本発明において式IのPNA誘導体がどのように精製及び同定されたかを説明しようとするものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0109】
10マーの相補的DNAとの結合親和性
表1におけるPNA誘導体を、N末端又はC末端のいずれかを相補的に標的とする10マーのDNAに対するそれらの結合親和性について評価した。結合親和性を、PNAと、10マーの相補的DNAとの間の二重鎖についてのTm値によって評価した。表1におけるPNA誘導体と、完全に相補的なDNAとの間の二重鎖は、水性緩衝溶液中で確実に測定するには高すぎるTm値を示す。緩衝溶液は、Tm測定中に沸騰してなくなる傾向があるからである。
【0110】
Tm値は、以下のようにUV/Vis分光光度計で測定した。15mLのポリプロピレンファルコンチューブ中の4mLの水性緩衝液(pH7.16、10mMのリン酸ナトリウム、100mMのNaCl)中の4μMのPNAオリゴマー及び4μMの相補的10マーDNAの混合溶液を、90℃で1分間インキュベートし、ゆっくりと周囲温度に冷却した。次いで、溶液を気密キャップを備えた3mLの石英UVキュベットに移し、先行技術[PCT/KR2009/001256]に記載されるUV/可視分光光度計又はわずかな改変を加えて、260nmでTm測定に供した。Tm測定のための10マーの相補的DNAは、Bioneer(www.bioneer.com, Dajeon, Republic of Korea)から購入し、さらに精製することなく使用した。
【0111】
式IのPNA誘導体の観察されたTm値は、10マーのDNAへの相補的結合に関して非常に高く、表2に提供される。例えば、「ASO10」は、
【0112】
において「太字」及び「下線付き」の印を付けたPNAにおけるN末端10マーを標的とする10マーの相補的DNAとの二重鎖について、74.0℃のT
m値を示した。それに対し、「ASO10」は、
【0113】
において「太字」及び「下線付き」の印を付けたPNAにおけるC末端10マーを標的とする10マーの相補的DNAとの二重鎖について、68.6℃のT
mを示した。
【0114】
【0115】
式IのPNA誘導体の生物学的活性の実施例
式IのPNA誘導体を、インビトロ及びインビボでそれらの生物学的活性について評価した。以下に提供される生物学的実施例は、式IのそのようなPNA誘導体の生物学的プロファイルを説明するための例として提供され、したがって、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0116】
実施例1. PC3細胞において「ASO9」によって誘導されるエクソンスキッピング
「ASO9」は、ヒトSCN9AプレmRNA内の「エクソン4」と「イントロン4」の接合部にまたがる
【0117】
の30マー配列において「太字」及び「下線付き」の印を付けた16マーのプレmRNA配列に相補的に結合する。「ASO9」は、「エクソン4」と10マーの重複、及び「イントロン4」と6マーの重複を有する。したがって、「ASO9」は、本発明における式Iの化合物についての相補的重複基準を満たす。
【0118】
PC3細胞がヒトSCN9A mRNAを豊富に発現することが知られていることを考慮して[Br. J. Pharmacol. vol 156, 420-431 (2009)]、「ASO9」を、以下に記載されるように、PC3細胞中のヒトSCN9AプレmRNAの「エクソン4」のスキッピングを誘導するその能力について、SCN9AネステッドRT-PCRによって評価した。
【0119】
[細胞培養及びASO処理] PC3細胞(カタログ番号CRL-1435, ATCC)を、10%FBS、1%ストレプトマイシン/ペニシリン、1%L-グルタミン、及び1%ピルビン酸ナトリウムを補充した5mLのハムF-12K培地を含有する60mm培養皿中で、5%CO2雰囲気下、37℃で増殖させた。次いで、細胞を、0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO9」で18時間処理し、リボソーム翻訳を凍結するために、100μg/mLのシクロヘキサミドでさらに6時間、さらに処理した。
【0120】
[RNA抽出] 全RNAを、「Universal RNA Extraction Kit」(カタログ番号9767, Takara)を用いて、製造業者の説明書に従って、細胞から抽出した。
【0121】
[ワンステップRT-PCRによるcDNA合成] 以下のサイクル条件: 50℃で30分、及び94℃で2分、続いて、94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で2分の40サイクルに従って、Platinum(登録商標)Taqポリメラーゼを用いたSuper Script(登録商標)ワンステップRT-PCRキット(カタログ番号10928-042, Invitrogen)及び遺伝子特異的プライマーのセット[エクソン2_フォワード: (5'→3')CTTTCTCCTTTCAGTCCTCT、及びエクソン9_リバース: (5'→3')CGTCT-GTTGGTAAAGGTTTT]を用いた25μLの逆転写反応において、200ngのRNA鋳型を使用した。
【0122】
[ネステッドPCR増幅] 1μLのcDNA溶液(100倍希釈)を、「エクソン4」のスキッピングを調べるために設計されたプライマーのセット[エクソン3n_フォワード: (5'→3')GGACCAAAAATGTCGAGTATTT、及びエクソン8_リバース: (5'→3')GCTAAGAAGGCCCAGCTGAA]に対するネステッドPCR(カタログ番号K2612, Bioneer)による20μLのPCR増幅に供した。用いたサイクル条件は、95℃で5分、続いて、95℃で30秒、50℃で30秒、及び72℃で1分の35サイクルであった。「エクソン3n_フォワード」の配列は、「エクソン4」の削除を調べるために「エクソン3」と「エクソン5」の接合部を標的とする。
【0123】
[エクソンスキッピング生成物の同定] PCR産物を2%アガロースゲル上で電気泳動分離に供した。標的サイズのバンドを回収し、サンガー配列決定(Sanger Sequencing)によって分析した。「エクソン4」のスキッピングは、10及び100zMでも見られたが、「エクソン4」のスキッピングは、1aMの「ASO9」で処理されたPC3細胞において著しく強かった[
図9(A)参照]。「エクソン4」スキッピングバンドは、
図9(B)に提供されるように、サンガー配列決定によって明白に確認された。
【0124】
実施例2. 「ASO9」で処理したPC3細胞におけるSCN9A mRNAのqPCR
「ASO9」を、以下のように「エクソン4~6」に及ぶエクソン特異的プライマーセットに対するqPCRによって、PC3細胞におけるヒトSCN9A mRNAの発現レベルの変化を誘導するその能力について評価した。
【0125】
[細胞培養及びASO処理] 5mLのF-12K培地を含有する60mm培養皿中で増殖させたPC3細胞を、0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMの「ASO9」と共に24時間インキュベートした(ASO濃度あたり2つの培養皿)。
【0126】
[RNA抽出] 全RNAを、「MiniBEST Universal RNA Extraction Kit」(カタログ番号9767, Takara)を用いて、製造業者の説明書に従って抽出した。
【0127】
[ワンステップRT-PCRによるcDNA合成] 以下のサイクル条件: 50℃で30分、及び94℃で2分、続いて、94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で2分の15サイクルに従って、Platinum(登録商標)Taqポリメラーゼを用いたSuper Script(登録商標)ワンステップRT-PCRキット(カタログ番号10928-042, Invitrogen)を用いた、及びエクソン特異的プライマーのセット[エクソン2_フォワード: (5'→3')CTTTCTCCTTTCAGTCCTCT; 及びエクソン9_リバース: (5'→3')TTGCCTGGTTCTGTTCTT]に対する、20μLの逆転写反応について、200ngのRNA鋳型を使用した。
【0128】
[ネステッドqPCR増幅] cDNA溶液を50倍に希釈した。以下のように特定されるエクソン特異的プライマーセットに対する20μLのリアルタイムPCR反応に、1μLの各希釈cDNA溶液を供した: [エクソン4_フォワード: (5'→3')GTACACTTT-TACTGGAATATATAC; エクソン4_リバース: (5'→3')AATGACGACAAAATCCAGC; エクソン5_フォワード: (5'→3')GTATTTAACAGAATTTGTAAACCT; エクソン5_リバース: (5'→3')CTG-GGATTACAGAAATAGTTTTCA; エクソン6_フォワード: (5'→3')GAAGACAATTGTAGGGGC; エクソン6_リバース: (5'→3')GTCTTCTTCACTCTCTAGGG]。以下のサイクル条件: 95℃で30秒、続いて、95℃で5秒及び60℃で30秒の40サイクルに従って、PCR反応をSYBR Green(Takara, Japan)によって調べた。
【0129】
[qPCR結果] ASO処理細胞の各エクソンレベルを、陰性対照細胞(すなわち、ASO処理なし)のエクソンレベルに対して標準化した。
図10(A)は、qPCR結果を要約する。「エクソン4~6」の発現レベルは、10、100、及び1,000zMでそれぞれ約70%、40%、及び20~30%有意に減少した。用量反応パターンは、「ASO9」によるエクソンスキッピングの間に蓄積された「エクソンイントロン環状RNA(EIciRNA)」におそらく起因する、アーチファクトであり得る[Nature Struc. Mol. Biol. vol 22(3), 256-264 (2015)]。
【0130】
実施例3. 「ASO9」で処理したPC3細胞におけるナトリウム電流の阻害
細胞のナトリウム電流は、通常、パッチクランプによって測定される。ナトリウムイオンが細胞に入ると、細胞内ナトリウムイオンレベルが増加する。細胞内ナトリウムレベルは、ナトリウムイオン感受性色素を用いて調べることができる。「コロナグリーン(CoroNa Green)」は、クラウンエーテル型のナトリウムイオンキレート化剤を有する色素である。ナトリウムイオンをキレート化すると、「コロナグリーン」は緑色蛍光を発する。「コロナグリーン」は、細胞内ナトリウムレベルを間接的に測定するために使用されている。「コロナグリーン」によって測定されたナトリウムレベルは、ナトリウムイオンパッチクランプによって測定されたナトリウムイオン電流とよく相関することが見出された[Proc. Natl. Acad. Sci. USA vol 106(38), 16145-16150 (2009)]。
【0131】
同時に発現される他のSCNサブタイプがあるが、PC3細胞は、ヒトSCN9A mRNA及びナトリウム電流も同様に豊富に発現することが知られている[Br. J. Pharmacol. vol 156, 420-431 (2009)]。したがって、Nav1.7ナトリウムチャネルサブタイプによるナトリウムイオン電流が、PC3細胞における総ナトリウムイオン電流の顕著な部分を占める場合、(機能的に活性な)SCN9A mRNAの下方制御は、PC3細胞におけるナトリウムイオン電流のかなりの低減をもたらし得る。SCN9A mRNAが、Nav1.7ナトリウムチャネルサブタイプをコードすることに留意する。
【0132】
以下に簡単に記載されるように、「ASO9」を、「コロナグリーン」を使用してPC3細胞におけるナトリウムイオン電流を下方制御するその能力について評価した。
【0133】
[細胞培養及びASO処理] PC3細胞を、35mm培養皿中の2mLのF-12K培地中で増殖させ、0zM(陰性対照)、100zM、又は1aMの「ASO9」で処理した。
【0134】
[コロナアッセイ] 30時間後、細胞を2mLのHBSS(ハンクス平衡塩類溶液(Hank's Balanced Salt Solution), カタログ番号14025-092, Life Technologies)で洗浄し、次いで、2mLの新しいHBSSを入れた。次いで、細胞を、37℃にて5μMの「コロナグリーン」(カタログ番号C36676, Life Technologies)で処理した。30分後、細胞を、2mLのHBSSで2回洗浄し、2mLの新しいHBSSを入れた。培養皿を、デジタルビデオカメラを備えたOlympus蛍光顕微鏡に取り付けて、細胞の緑色蛍光画像を連続的に撮影した。細胞を100mMのNaClで急性処理し、次いで、蛍光細胞画像の変化を、3分間にわたってデジタル記録した。フレームあたり約4個の細胞があった。各個々の細胞からの蛍光強度を、秒の分解能で追跡した。個々の細胞からの細胞内蛍光強度のトレースを重ね合わせて、各時点で平均した。各ASO濃度の個々の細胞からのトレースの平均を、ImageJプログラム(バージョン1.50i, NIH)を用いて
図10(B)に提供するようにプロットした。平均蛍光強度トレースを、0(陰性対照)、100、又は1,000zMの「ASO9」で処理した細胞についての個々の細胞内ナトリウム濃度トレースと見なした。
【0135】
[コロナアッセイ結果] 観察された細胞内蛍光強度のトレースを、
図10(B)に要約する。1,000zMの「ASO9」で処理した細胞についての蛍光強度トレースは、ASO処理なしの細胞についてのトレースよりも低い。100秒における平均蛍光強度を比較して、ASO処理によって誘導されたナトリウム電流変化を推定した。ASO処理なしの細胞の平均蛍光強度は、100秒において81.86(任意単位)であった。それに対し、1,000zMの「ASO9」で処理した細胞の平均蛍光強度は、100秒において51.47(任意単位)であった。したがって、1,000zMの「ASO9」との30時間のインキュベーションは、PC3細胞においてナトリウムチャネル活性の37%(スチューデントのt検定によりp値=0.035)の有意な低減を誘導した。PC3細胞が電位開口型ナトリウムチャネル(VGSC)の様々なサブタイプを発現することを考慮すると、37%の減少は、「ASO9」によるNa
v1.7発現の阻害について顕著と見なされる。100zMの「ASO9」で処理したPC3細胞においてナトリウム電流の顕著な減少はなかった。
【0136】
実施例4. 「ASO4」で処理したPC3細胞におけるSCN9A mRNAのqPCR評価
「ASO4」は、ヒトSCN9A mRNA中の「エクソン4」と「エクソン5」の接合部にまたがる14マー配列を相補的に標的とするように当初設計された14マーのSCN9A ASOである。しかし、「ASO4」は、ヒトSCN9AプレmRNA内の「エクソン4」と「イントロン4」の接合部にまたがる
【0137】
の30マーの5'スプライス部位配列における「太字」及び「下線付き」の印を付けた12マーのプレmRNA配列と偶然にも相補的に重複する(引用符記号(" ")で印を付けた「イントロン5」との2つのミスマッチがあるが)。「ASO4」は、「エクソン4」と7マーの重複、及び「イントロン4」と5マーの重複を有する。したがって、「ASO4」は、本発明における式Iの化合物についての相補的重複基準を満たす。
【0138】
「ASO4」を、別段言及がない限り「実施例2」に提供される手順に従って、「エクソン4~6」に及ぶエクソン特異的プライマーセットに対するqPCRによって、ヒトSCN9A mRNAの発現を阻害するその能力について評価した。
【0139】
[ASO処理] 培養皿中の「ASO4」の濃度は、0(陰性対照)、10、100、又は1,000zMであった(用量あたり2つの培養皿)。
【0140】
[qPCR結果]
図11(A)は、「ASO4」で処理したPC3細胞を用いて得られたqPCR結果を提供する。「エクソン4~6」の発現レベルは、10~1,000zMの「ASO4」で24時間処理したPC3細胞において>70%有意に減少した。
【0141】
実施例5. 「ASO5」で処理したPC3細胞におけるSCN9A mRNAのqPCR評価
「ASO5」は、ヒトSCN9A mRNA中の「エクソン4」と「エクソン5」の接合部にまたがる17マー配列を相補的に標的とするように当初設計された17マーのSCN9A ASOである。しかし、「ASO5」は、ヒトSCN9AプレmRNA内の「エクソン4」と「イントロン4」の接合部にまたがる
【0142】
の30マーの5'スプライス部位配列における「太字」及び「下線付き」の印を付けた12マーのプレmRNA配列と偶然にも相補的に重複する(引用符記号(" ")で印を付けた「イントロン5」との5つのミスマッチがあるが)。「ASO5」は、「エクソン4」と7マーの重複、及び「イントロン4」と5マーの重複を有する。したがって、「ASO5」及び「ASO4」は、同程度のSCN9AプレmRNAのと相補的重複を有するが、「ASO5」は、5つのミスマッチのために、本発明における式Iの化合物についての相補的重複基準を満たさない。
【0143】
「ASO5」を、別段言及がない限り「実施例2」に提供される手順に従って、「エクソン4~6」に及ぶエクソン特異的プライマーセットに対するqPCRによって、ヒトSCN9A mRNA(全長)の発現を阻害するその能力について評価した。
【0144】
[qPCR結果]
図11(B)は、「ASO5」で処理したPC3細胞を用いて得られたqPCR結果を提供する。「エクソン4~6」の発現レベルは、10zM、100zM、及び1aMの「ASO5」で処理したPC3細胞において、それぞれ約80%、50%、及び70%有意に減少した。
【0145】
「ASO5」はqPCRによる全長SCN9A mRNAの発現を阻害したが、SCN9AプレmRNAに対する「ASO5」の5つのミスマッチは、かなり多すぎ、他のプレmRNA(複数可)との交差反応性の傾向を増加させる。
【0146】
実施例6. 「ASO1」で処理したPC3細胞におけるSCN9A mRNAのqPCR評価
「Fethoc-」基のN末端置換基は、「ASO1」における「Fmoc-」基で置き換えられているが、「ASO1」は、「ASO4」と同じオリゴヌクレオチド配列を有する14マーのSCN9A ASOである。したがって、「ASO1」は、本発明における式Iの化合物についての相補的重複基準を満たす。
【0147】
「ASO1」を、別段言及がない限り「実施例2」に提供される手順に従って、「エクソン4~6」に及ぶエクソン特異的プライマーセットに対するqPCRによって、ヒトSCN9A mRNA(全長)の発現を阻害するその能力について評価した。
【0148】
[qPCR結果]
図11(C)は、「ASO1」で処理したPC3細胞を用いて得られたqPCR結果を提供する。「エクソン4~6」の発現レベルは、10zM、100zM、及び1aMの「ASO1」で処理したPC3細胞において、それぞれ約85%、50%、及び60%有意に(スチューデントのt検定)減少した。
【0149】
実施例7. 「ASO6」で処理したPC3細胞におけるSCN9A mRNAのqPCR評価
「ASO6」は、ヒトSCN9AプレmRNA内の「エクソン4」と「イントロン4」の接合部にまたがる
【0150】
の30マーの5'スプライス部位配列内の「太字」及び「下線付き」の印を付けたSCN9AプレmRNAとの11マーの相補的重複を有する14マーのSCN9A ASOである。「ASO6」は、「エクソン4」と6マーの重複、及び「イントロン4」と5マーの重複を有する。「ASO6」は、ヒトSCN9AプレmRNAに対して3つのミスマッチを有するので、「ASO6」は、本発明における式Iの化合物についての相補的重複基準を満たさない。
【0151】
「ASO6」を、別段言及がない限り「実施例2」に提供される手順に従って、「エクソン4~6」に及ぶエクソン特異的プライマーセットに対するqPCRによって、ヒトSCN9A mRNA(全長)の発現を阻害するその能力について評価した。PC3細胞を、0(陰性対照)、10zM、及び100zMの「ASO6」とインキュベートしたことに留意する。
【0152】
[qPCR結果]
図11(D)は、「ASO6」で処理したPC3細胞を用いて得られたqPCR結果を提供する。「エクソン4~6」の発現レベルは、10zM及び100zMの「ASO6」で処理したPC3細胞において、約80%有意に(スチューデントのt検定)減少した。
【0153】
「ASO6」は、3つのミスマッチのために本発明における式Iの化合物についての相補的重複基準を満たさないが、「ASO6」のqPCRデータは、SCN9AプレmRNAとの11マーの相補的重複でさえも、PC3細胞においてエクソンスキッピングを誘導するのに十分なほど依然として強いであろうことを示唆する。
【0154】
実施例8. 「ASO10」で処理したPC3細胞におけるSCN9A mRNAのqPCR評価
「ASO10」は、ヒトSCN9A mRNA中の「エクソン4」と「エクソン5」の接合部にまたがる17マー配列を相補的に標的とするように当初設計された17マーのSCN9A ASOである。それにもかかわらず、「ASO10」は、ヒトSCN9AプレmRNA内の「エクソン4」と「イントロン4」の接合部にまたがる
【0155】
の30マーの5'スプライス部位配列における「太字」及び「下線付き」の印を付けた15マーのプレmRNA配列と偶然にも相補的に重複する(引用符記号(" ")で印を付けた「イントロン5」との2つのミスマッチがあるが)。「ASO10」は、「エクソン4」と10マーの重複、及び「イントロン4」と5マーの重複を有する。したがって、「ASO10」は、本発明における式Iの化合物についての相補的重複基準を満たす。
【0156】
「ASO10」を、別段言及がない限り「実施例2」に記載される手順に従って、「エクソン4~6」に及ぶエクソン特異的プライマーセットに対するqPCRによって、ヒトSCN9A mRNA(全長)の発現を阻害するその能力について評価した。PC3細胞を、0(陰性対照)、10zM、及び100zMの「ASO10」とインキュベートしたことに留意する。
【0157】
[qPCR結果]
図11(E)は、「ASO10」で処理したPC3細胞を用いて得られたqPCR結果を提供する。「エクソン4~6」の発現レベルは、10zM及び100zMの「ASO10」で処理したPC3細胞において、それぞれ約60%及び80%有意に(スチューデントのt検定)減少した。
【0158】
実施例9. 「ASO10」で処理したPC3細胞におけるナトリウム電流の阻害
「ASO10」を、別段言及がない限り「実施例3」に記載される手順に従って、「コロナグリーン」を使用して、PC3細胞におけるナトリウム電流を阻害するその能力について評価した。[コロナアッセイ結果] 観察された平均細胞蛍光強度のトレースを、
図12(A)に提供する。1,000zMの「ASO10」で処理した細胞についての平均蛍光強度トレースは、ASO処理なしの細胞についてのトレースよりも低かった。ASO処理なしの細胞の平均細胞蛍光強度は、100秒において130.3(任意単位)であった。それに対し、1,000zMの「ASO10」で処理した細胞の平均細胞蛍光強度は、100秒において89.7(任意単位)であった。したがって、1,000zMの「ASO10」との30時間のインキュベーションは、PC3細胞においてナトリウムチャネル活性を31%有意に(p<0.001)阻害したと推定される。100zMの「ASO10」によって誘導された減少は、30%であった(p<0.001)。
【0159】
実施例10. 「ASO6」で処理したPC3細胞におけるナトリウム電流の阻害
「ASO6」を、別段言及がない限り「実施例3」に提供される手順に従って、「コロナグリーン」を使用して、PC3細胞におけるナトリウム電流を下方制御するその能力について評価した。
【0160】
[コロナアッセイ結果] 観察された細胞蛍光強度のトレースを、
図12(B)に提供する。100及び1,000zMの「ASO6」で処理した細胞についての蛍光強度トレースは、ASO処理なしの細胞についてのトレースと変わらなかった。したがって、「ASO6」との30時間のインキュベーションは、PC3細胞におけるナトリウムチャネル活性の顕著な減少を誘導することができなかった。
【0161】
「ASO6」は、「実施例7」に提供するように全長SCN9A mRNAの発現を阻害したが、「ASO6」は、PC3細胞におけるナトリウム電流を阻害することはできなかった。「ASO6」は、標的プレmRNA配列との3つのミスマッチのために、エクソンスキッピングを誘導するのに十分なほど「エクソン4」の5'スプライス部位に強く結合しないかもしれない。
【0162】
実施例11. 「ASO4」で処理したPC3細胞におけるナトリウム電流の阻害
「ASO4」を、別段言及がない限り「実施例3」に提供される手順に従って、「コロナグリーン」を使用して、PC3細胞におけるナトリウム電流を下方制御するその能力について評価した。
【0163】
[コロナアッセイ結果] 観察された細胞蛍光強度のトレースを、
図12(C)に提供する。100zMの「ASO4」で処理した細胞についての蛍光強度トレースは、ASO処理なしの細胞についてのトレースよりも低かった。ASO処理なしの(すなわち、陰性対照)細胞の平均細胞蛍光強度は、100秒において89.3(任意単位)であった。それに対し、1,000zMの「ASO10」で処理した細胞の平均細胞蛍光強度は、100秒において61.4(任意単位)であった。したがって、1,000zMの「ASO4」との30時間のインキュベーションは、PC3細胞においてナトリウムチャネル活性を31%有意に(p<0.01)減少させたと推定される。しかし、100zMの「ASO4」によって誘導された減少は、統計学的有意性なしに18%にすぎなかった。
【0164】
実施例12. 「ASO5」で処理したPC3細胞におけるナトリウム電流の阻害
「ASO5」を、別段言及がない限り「実施例3」に提供される手順に従って、「コロナグリーン」を使用して、PC3細胞におけるナトリウム電流を阻害するその能力について評価した。
【0165】
[コロナアッセイ結果] 観察された細胞蛍光強度のトレースを、
図12(D)に要約する。100zMの「ASO5」で処理した細胞についての蛍光強度トレースは、ASO処理なしの細胞についてのトレースよりも低かった。ASO処理なしの細胞の平均細胞蛍光強度は、100秒において90.6(任意単位)であった。それに対し、100zMの「ASO5」で処理した細胞の平均細胞蛍光強度は、100秒において60.8(任意単位)であった。したがって、100zMの「ASO5」との30時間のインキュベーションは、PC3細胞においてナトリウムチャネル活性を33%有意に(p<0.01)下方制御したと推定される。
【0166】
しかし、「ASO5」の濃度が100zMから1,000zMに増加するにつれて、平均細胞蛍光強度は、100秒において110.2(任意単位)に増加した。したがって、1,000zMの「ASO5」との30時間のインキュベーションは、PC3細胞においてナトリウムチャネル活性を22%有意に(p<0.05)増加させたと推定される。用量反応パターンは、「ASO5」によるエクソンスキッピングの間に蓄積された「エクソンイントロン環状RNA(EIciRNA)」におそらく起因する、転写上方制御の結果であり得る[Nature Struc. Mol. Biol. vol 22(3), 256-264 (2015)]。
【0167】
実施例13. 脊髄神経結紮におけるL5結紮及びL5/L6結紮
脊髄神経結紮(SNL)は、DRG(後根神経節)において神経障害を誘導し、神経障害性疼痛のモデルとして広く使用されている[Pain vol 50(3), 355-363 (1992)]。しかし、脊髄神経束(複数可)がどのように結紮されるかに応じて、SNLのいくつかの変形があり得る。DRGにおける神経障害の程度及び期間は、神経束がどのように結紮されるかに応じて変わるようである[Pain vol 43(2), 205-218 (1990)]。本発明のために行われた2つのSNL変形のうち、「L5/L6結紮」(すなわち、方法B)は、「L6切断を伴うL5結紮」(すなわち、方法A)よりも重度で長く持続する神経障害を誘導すると考えられる。
【0168】
[方法A: L6切断を伴うL5結紮] 雄性SDラットをゾレチル(zoletil)/ロンプン(rompun)で麻酔した。L5及びL6脊髄神経束(左側)を露出させて、しっかりと結紮し、次いで、L6神経を切断した。最後に、適切な無菌操作に従って筋肉及び皮膚を閉じ、切り取った。
【0169】
[方法B: L5/L6結紮] 雄性SDラットをゾレチル/ロンプンで麻酔した。L5及びL6脊髄神経束(左側)を露出させて、しっかりと結紮した。次いで、適切な無菌操作に従って筋肉及び皮膚を閉じ、切り取った。
【0170】
実施例14. フォン・フレイ(Von Frey)による異痛症の採点
[方法A: 電子式フォン・フレイ] 異痛症を、以下に簡単に記載されるように、電子式フォン・フレイ触覚計[37450 Dynamic Plantar Aesthesiometer, Ugo Basile; 又はモデル番号2390, IITC Inc. Life Sciences]を用いたフォン・フレイ法によって採点した: フォン・フレイ採点用にカスタマイズされたプラスチックケージ中で各動物を30分未満安定化させた後、各動物の結紮後足(結紮側、通常左)を、採点の2つの隣接するラウンド間の数分の間隔で、6回フォン・フレイ採点に供した。動物は採点の最初のラウンドの間に完全には順応していないと考えられたので、最初のラウンドのスコアは捨てた。残りの5つのスコアのうち、最高スコア及び最低スコアは、外れ値として除外した。次いで、残りの3つのスコアの平均を、動物のフォン・フレイスコアと見なした。
【0171】
[方法B: マイクロフィラメントを用いるフォン・フレイ(Touch Test(登録商標))] 異痛症を、「アップ&ダウン法」に従って、マイクロフィラメントのセット(Touch Test(登録商標))を用いて採点した[J Neurosci. Methods vol 53(1), 55-63 (1994)]。
【0172】
実施例15. 「ASO1」によるSNLにより誘導された異痛症の逆転
「ASO1」を、以下に記載されるように、ラットにおいてSNLにより誘発された異痛症を逆転させるその能力について評価した。
【0173】
[SNL手術及び群分け] 0日目に、30匹の雄性SDラットを、L6切断を伴うL5結紮のSNL手術に供した(「実施例13」の方法A)。15日目に、最も低いフォン・フレイスコアを示す18匹のラットを選択し、陰性対照(ASO処理なし)、「ASO1」3pmole/Kg、及び「ASO1」10pmole/Kg群(群あたりN=6)の3つの群に無作為に割り当てた。
【0174】
[ASO投与及びフォン・フレイ採点] 「ASO1」の水性ストック溶液を、PBS中で3nM及び10nM「ASO1」に連続希釈した。各希釈溶液を、16、18、20、22、及び24日目に、ASO処理群の各ラットに1mL/Kgで皮下投与した。フォン・フレイ採点(電子式フォン・フレイによる: 「実施例14」の方法A)を、20、22、24、27、及び29日目に行った。ASOを、20、22、及び24日目にフォン・フレイ採点の後に投与した。フォン・フレイスコアを、陰性対照群に対する統計学的有意性について、スチューデントのt検定によって評価した。
【0175】
[治療活性]
図13は、観察されたフォン・フレイスコアを提供する。ASO処理群の平均フォン・フレイスコアは、20、22、24、及び27日目に陰性対照群より有意に高かった。治療活性は、24日目の最終ASO投与後少なくとも3日間持続した。したがって、「L5結紮」で誘導された異痛症は、3又は10pmole/Kgの「ASO1」を皮下投与したラットにおいて有意に逆転した。
【0176】
実施例16. 糖尿病誘導性末梢神経障害性疼痛(DPNP)の誘導
簡単に説明するように、末梢神経障害性疼痛を、I型糖尿病のラットにおいて誘導した。クエン酸緩衝液(pH6)に溶解したストレプトゾトシンを、体重約200gの雄性SDラットに60mg/Kgで腹腔内投与した[J. Ethnopharmacol. vol 72(1-2), 69-76 (2000)]。末梢神経障害の程度を、フォン・フレイスコアによって評価した。数日間にわたって安定して低いフォン・フレイスコアを示す動物を、SCN9A ASOの治療活性の評価のために選択した。
【0177】
実施例17. DPNPを有するラットにおける「ASO5」による異痛症の逆転
「ASO5」を、以下に記載されるように、ラットにおいてDPNPにより誘導された異痛症を逆転させるその能力について評価した。
【0178】
[DPNPの誘導及び群分け] 「実施例16」に記載されるように、0日目に、雄性SDラットにストレプトゾトシンを腹腔内投与することによって、I型糖尿病を誘導した。10日目に、DPNPを有するラットを、「実施例14」の「方法B」により10日目の個々の動物のフォン・フレイスコアに基づいて、無作為に群分けした(群1~6及び群あたりN=8)。6つの群は、ビヒクルのみ(陰性対照)について「群1」、プレガバリン30mg/Kgについて「群2」、「ASO5」0.01pmole/Kgについて「群3」、「ASO5」0.1pmole/Kgについて「群4」、「ASO5」1pmole/Kgについて「群5」、及び「ASO5」10pmole/Kgについて「群6」である。
【0179】
[ASO処理及びフォン・フレイ採点] 「ASO5」の水性ストック溶液を、DDW(脱イオン蒸留水)中で0.01、0.1、1、及び10nMの「ASO5」に連続希釈した。「ASO5」を、11、13、15、及び17日目に皮下投与した。プレガバリン30mg/Kgを、陽性対照として11及び17日目に経口投与した。フォン・フレイ採点を、「実施例14」に記載される「方法B」により、11、13、15、及び17日目の投与2時間後に行った。最終投与後の治療活性の持続期間を評価するために、フォン・フレイ採点を、20日目にさらに行った。フォン・フレイスコアを、「群1」(ビヒクルのみ、陰性対照)に対するスチューデントのt検定による統計学的有意性について評価した。
【0180】
[治療活性] 観察されたフォン・フレイスコアを、
図14に要約する。ASO処理群のうち、群6、すなわち、「ASO5」10pmole/Kgのみにおいて、異痛症は顕著に(約80%)及び有意に逆転した。治療活性の開始が、11日目に観察されたように数時間と同じくらい速かったことに注目することは興味深い。異痛症は、17日目において「群6」(「ASO5」10pmole/Kg)及び「群2」(プレガバリン30mg/Kg)で同等に逆転した。「群6」の治療活性は、20日目(17日目の最終投与の3日後)にほぼ完全になくなった。
【0181】
実施例18. DPNPを有するラットにおける「ASO9」及び「ASO10」による異痛症の逆転
「ASO9」及び「ASO10」を、別段言及がない限り、「実施例17」に記載される手順に従って、ラットにおいてDPNPによって誘導された異痛症を逆転させるそれらの能力について評価した。
【0182】
[群分け] 10日目に、DPNPを有するラットを、陰性対照(ビヒクル/DDWのみ)、「ASO9」100pmole/Kg、及び「ASO10」100pmole/Kg(群あたりN=8~9)の3つの群に無作為に割り当てた。
【0183】
[ASO処理及びフォン・フレイ採点] ラットに、11、13、15、17、及び19日目に「ASO9」、「ASO10」、又はビヒクルを皮下投与した。フォン・フレイ採点を、11、13、15、17、及び19日目の投与2時間後に行った。最終投与後の治療活性の持続期間を評価するために、フォン・フレイ採点を、21及び23日目にさらに行った。毎日のフォン・フレイスコアの統計学的有意性を、陰性対照群に対してスチューデントのt検定によって評価した。
【0184】
[治療活性] 観察されたフォン・フレイスコアを、
図15に要約する。異痛症は、「ASO9」及び「ASO10」によって顕著に及び有意に逆転した。「ASO9」は、17及び19日目に約75%異痛症を逆転させた。「ASO10」の場合、異痛症は、19日目に約60%まで徐々に逆転した。「ASO9」は、「ASO10」よりもSCN9AプレmRNAとより多くの相補的重複を有し、これは、2つのASOの治療効力の違いを説明することができた。ASOの治療活性は、21日目、すなわち、最終投与の2日後に完全になくなり、数日より短い薬力学的半減期を示唆する。
【0185】
実施例19. 「ASO9」によるSNLにより誘導された異痛症の逆転
「ASO9」を、以下に記載されるように、ラットにおいてSNLにより誘発された異痛症を逆転させるその能力について評価した。
【0186】
[SNL手術及び群分け] 0日目に、雄性SDラットを、「L5/L6結紮」のSNL手術に供した(「実施例13」の「方法B」)。21日目に、12匹のラットを、電子式フォン・フレイによるフォン・フレイスコア(「実施例14」の「方法A」)に基づいて選択し、陰性対照(ASO処理なし)及び「ASO9」100pmole/Kg(群あたりN=6)の2つの群に無作為に割り当てた。
【0187】
[ASO投与及びフォン・フレイ採点] 「ASO9」の水性ストック溶液を、PBS中で100nM「ASO9」に希釈した。ASO溶液又はPBSを、22、23、及び24日目に、08:00時、14:00時、及び21:00時に1日3回、1mL/Kgでラットに皮下投与した。フォン・フレイ採点を、「実施例14」に記載される「方法A」により、22、23、及び24日目の20:00時に行った。フォン・フレイスコアを、2つの群の間の統計学的有意性について、スチューデントのt検定によって評価した。
【0188】
[治療活性] 観察されたフォン・フレイスコアを、
図16に要約する。ASO処理群の平均フォン・フレイスコアは、23及び24日目に陰性対照群より有意に高かった。したがって、100pmole/Kgの「ASO9」の皮下TID投与は、ラットにおいてSNL(L5/L6結紮)で誘導された異痛症を有意に逆転させた。
(付記)
(付記1)
式I:
【化13】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と21との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的プレmRNA配列と部分的に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、独立して、デューテリド(deuterido)、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH
2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され; 及び
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも4つは、独立して、核酸塩基部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
(付記2)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、10と21との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的プレmRNA配列と部分的に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、独立して、ヒドリド基を表し; X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH
2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも3つは、独立して、式II、式III、又は式IV:
【化14】
によって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアルキル基から選択され; 及び
L
1、L
2及びL
3は、塩基性アミノ基を、核酸塩基対合を担う核酸塩基部分に接続する式V:
【化15】
によって表される共有結合リンカーであり;
Q
1及びQ
mは、置換又は非置換のメチレン(-CH
2-)基であり、及びQ
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2、Q
3、…、及びQ
m-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、並びに置換若しくは非置換のアミノ基[-N(H)-、又は-N(置換基)-]から選択され; 及び
mは、1と16との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記3)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と20との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチを有して標的プレmRNA配列と部分的に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、アミノカルボニル[NH
2-C(=O)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアルキル基から選択され;
Q
1及びQ
mは、置換又は非置換のメチレン基であり、及びQ
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2、Q
3、…、及びQ
m-1は、独立して、置換若しくは非置換のメチレン、酸素、並びにアミノ基から選択され; 及び
mは、1と11との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記4)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と19との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、独立して、ヒドリド、並びに置換若しくは非置換のアルキル基から選択され;
Q
1及びQ
mは、メチレン基であり、及びQ
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2、Q
3、…、及びQ
m-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と10との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記5)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と18との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R
1、R
3、及びR
5は、ヒドリド基であり、R
2、R
4、及びR
6は、独立して、ヒドリド、又は置換若しくは非置換のアルキル基を表し;
Q
1及びQ
mは、メチレン基であり、及びQ
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2、Q
3、…、及びQ
m-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と10との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記6)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と16との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、ヒドリド基であり;
X及びYは、独立して、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、ヒドリド基であり;
Q
1及びQ
mは、メチレン基であり、及びQ
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており;
Q
2、Q
3、…、及びQ
m-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され; 及び
mは、1と10との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記7)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、12と16との間の整数であり;
式Iの化合物は、ヒトのSCN9AプレmRNA内の[(5'→3')UUUUUGCGUAAGUA]の14マーのRNA配列と少なくとも10マーの相補的重複を有し;
式Iの化合物は、標的プレmRNA配列と完全に相補的であり;
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、ヒドリド基であり;
Xは、ヒドリド基であり;
Yは、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し;
Zは、置換又は非置換のアミノ基を表し;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、及びシトシンを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され;
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、ヒドリド基であり;
L
1は、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-、-CH
2-O-(CH
2)
2-、-CH
2-O-(CH
2)
3-、-CH
2-O-(CH
2)
4-、又は-CH
2-O-(CH
2)
5-を表し、右端は、塩基性アミノ基に直接結合しており; 及び
L
2及びL
3は、独立して、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-、-(CH
2)
3-O-(CH
2)
2-、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
3-、-(CH
2)
2-、-(CH
2)
3-、-(CH
2)
4-、-(CH
2)
5-、-(CH
2)
6-、-(CH
2)
7-、及び-(CH
2)
8-から選択され、右端は、塩基性アミノ基に直接結合している、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(付記8)
以下:
に提供されるペプチド核酸誘導体の群から選択される、付記1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
A、G、T、及びCは、それぞれ、アデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)は、それぞれ、式VI、式VII、式VIII、式IX、及び式X
【化16】
によって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり;
p及びqは、整数であり; 及び
N末端置換基及びC末端置換基の略語は、以下に具体的に記載される通りであり: 「Fmoc-」は、「[(9-フルオレニル)メチルオキシ]カルボニル-」基の略語であり; 「Fethoc-」は、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」基の略語であり; 「Ac-」は、「アセチル-」基の略語であり; 「ベンゾイル-」は、「ベンゼンカルボニル-」基の略語であり; 「Piv-」は、「ピバリル-」基の略語であり; 「Me-」は、「メチル-」基の略語であり; 「n-プロピル-」は、「1-(n-プロピル)-」基の略語であり; 「H-」は、「ヒドリド-」基の略語であり; 「p-トルエンスルホニル」は、「(4-メチルベンゼン)-1-スルホニル-」基の略語であり; 「-Lys-」は、アミノ酸残基「リジン」の略語であり; 「-Val-」は、アミノ酸残基「バリン」の略語であり; 「-Leu-」は、アミノ酸残基「ロイシン」の略語であり; 「-Arg-」は、アミノ酸残基「アルギニン」の略語であり; 「-Gly-」は、アミノ酸残基「グリシン」の略語であり; 「[N-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」は、「[N-1-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」基の略語であり; 「ベンジル-」は、「1-(フェニル)メチル-」基の略語であり; 「フェニル-」は、「フェニル-」基の略語であり; 「Me-」は、「メチル-」基の略語であり; 「-HEX-」は、「6-アミノ-1-ヘキサノイル-」基の略語であり、「FAM-」は、「5又は6-フルオレセイン-カルボニル-(異性体混合物)」基の略語であり、及び「-NH
2」は、非置換の「-アミノ」基の略語である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
(付記9)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体の投与によって、Na
v1.7活性を伴う疼痛又は症状を治療する方法。
(付記10)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体の投与によって、慢性疼痛を治療する方法。
(付記11)
付記1に記載のペプチド核酸誘導体の投与によって、神経障害性疼痛を治療する方法。
【配列表】