(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】遠位および近位の橈尺関節の再建のためのプロテーゼ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/42 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A61F2/42
(21)【出願番号】P 2019522764
(86)(22)【出願日】2016-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2016076075
(87)【国際公開番号】W WO2018077421
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2019-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】516171908
【氏名又は名称】スウェマック・イノヴェーション・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク・ハンソン
(72)【発明者】
【氏名】ラーシュ・エステル
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・ウルマン
(72)【発明者】
【氏名】ラーシュ・アドルフソン
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02660856(FR,A1)
【文献】特表2015-534893(JP,A)
【文献】米国特許第05938699(US,A)
【文献】特表2013-500841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0282169(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端部に近い尺骨の一部切除後の遠位橈尺関節を再建するためのプロテーゼであって、
前記プロテーゼ(1)は、第1のプロテーゼ部材(2)と、1つまたは複数の固定手段(3)と、第2のプロテーゼ部材(4)とを含み、
前記第1のプロテーゼ部材(2)は、尺骨の前記遠位端部(U1)に固定されるように構成され、
前記固定手段(3)は、尺骨の前記遠位端部を橈骨に不動に固定するために、尺骨の前記遠位端部(U1)を介して前記橈骨(R)内に延びるように構成され、
前記第2のプロテーゼ部材(4)は、前記尺骨の前記遠位端部に近い前記尺骨の一部の切除によって、前記尺骨の前記遠位端部(U1)と空間(US)の近位側の尺骨(U2)との間に画定される空間(US)の近位側の前記尺骨に固定するように構成され、
前記第2のプロテーゼ部材(4)は、前記第1および第2のプロテーゼ部材が互いに対して少なくとも枢動して回転することを可能にする方法で、前記第1のプロテーゼ部材(2)と接合されるために前記空間内に延びるように構成され、
第1のプロテーゼ部材(2)は、ソケット(14)を有するように構成されたソケット部分(6)と、前記尺骨の前記遠位端部(U1)と前記空間の近位側の前記尺骨(U2)との間に画定される前記空間(US)に面する前記尺骨の前記遠位端部(U1)の表面(U1c)におけるキャビティ(CU)内に前記ソケット部分を固定するように構成された取付け部分(7)と、を含み、
前記第2のプロテーゼ部材(4)は、前記尺骨の前記遠位端部(U1)と前記空間の近位側の前記尺骨(U2)との間に画定される前記空間(US)の近位側の前記尺骨(U2)の骨髄キャビティ(MCU)内に固定するように構成された取付け部分(26)と、
前記第2のプロテーゼ部材を前記第1のプロテーゼ部材(2)と接合するために前記空間内に延びるように構成されたヘッド部分(27)であって、前記第1および第2のプロテーゼ部材が互いに対して少なくとも枢動して回転することができるように、前記ソケット部分(6)の前記ソケット(14)に嵌合するボール要素(30)有するようにさらに構成されているヘッド部分(27)と、を含み、
前記ソケット部分(6)の前記ソケット(14)は、前記第1および第2のプロテーゼ部材が人体の前腕の回内および回外に対応する位置の間で動かされるときに、前記第1および第2のプロテーゼ部材(2、4)が
、プロテーゼ(1)の位置ずれまたは弛緩なしに、前記第1および第2のプロテーゼ部材の実質的に長手方向に動くことができるような高さを有し、
および/または
前記第1および第2のプロテーゼ部材が人体の前腕の回内および回外に対応する位置の間で動かされるときに、前記第1および第2のプロテーゼ部材(2、4)が
、プロテーゼ(1)の位置ずれまたは弛緩なしに、前記第1および第2のプロテーゼ部材(2、4)の実質的に長手方向に動くことができるように、前記ヘッド部分(27)の前記ボール要素(30)が前記ソケット部分(6)の前記ソケット(14)に嵌合する
張力は設定されていることを特徴とするプロテーゼ。
【請求項2】
前記第1のプロテーゼ部材(2)の前記取付け部分(7)は、
前記第1のプロテーゼ部材(2)の前記取付け部分
(7)を前記尺骨の前記遠位端部(U1)と前記空間の近位側の前記尺骨(U2)との間に画定される前記空間(US)に面する前記尺骨の前記遠位端部(U1)の表面(U1c)におけるキャビティ(CU)内にねじ込むことによって固定するための雄ねじを有するように少なくとも部分的に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のプロテーゼ。
【請求項3】
前記第1のプロテーゼ部材(2)の前記取付け部分が、ねじ状部(7)として構成され、
前記第1のプロテーゼ部材(2)の前記ソケット部分(6)が、前記ソケット部分を取付けるために前記ねじ状部(7)の穴(10)に挿入可能な取付けピン(9)を有していることを特徴とする、請求項2に記載のプロテーゼ。
【請求項4】
前記ねじ状部(7)の前記穴(10)と前記ソケット部分(6)の前記取付けピン(9)とが、前記ねじ状部の前記ソケット部分を固定するための相補的部分を有するように構成されていることを特徴とする、請求項3に記載のプロテーゼ。
【請求項5】
前記ねじ状部(7)の前記穴(10)が、底部に、前記ソケット部分(6)の前記取付けピン(9)用のスナップ・イン・アタッチメント(17)を備え、
前記ソケット部分(6)の前記取付けピン(9)が、前記ねじ状部(7)の前記穴(10)内の前記スナップ・イン・アタッチメント(17)と係合するスナップ・イン部分(18)を有するように構成されていることを特徴とする、請求項4に記載のプロテーゼ。
【請求項6】
前記ねじ状部(7)の前記穴(10)と前記ソケット部分(6)の前記ソケット(14)を画定する部分(20)とが、前記ねじ状部に対する前記ソケット部分の回転を防止する相補的部分を有するように構成されていることを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載のプロテーゼ。
【請求項7】
前記ねじ状部(7)の前記穴(10)が、前記穴への開口部(12)の内側に、少なくとも1つの凹部(21)を有するように構成され、
前記ソケット部分(6)は、前記ねじ状部に対する前記ソケット部分の回転を防止するために、前記ソケット(14)を画定する部分(20)の外側に、前記ねじ状部(7)の前記穴(10)内の前記凹部(21)と係合する少なくとも1つの突起(22)を有するように構成されていることを特徴とする、請求項6に記載のプロテーゼ。
【請求項8】
前記ねじ状部(7)の前記穴(10)と前記ソケット部分(6)の前記取付けピン(9)とが、前記ソケット部分と前記ねじ状部とを互いに押圧することによって互いに取付けられ得る圧嵌合を規定するように構成されていることを特徴とする、請求項4に記載のプロテーゼ。
【請求項9】
前記ねじ状部(7)の前記穴(10)と前記ソケット部分(6)の前記取付けピン(9)とが、円錐形であることを特徴とする、請求項3~8のいずれか一項に記載のプロテーゼ。
【請求項10】
前記取付けピン(9)を除く前記ソケット部分(6)が、前記ソケット(14)を画定する部分(20)を含み、前記部分がカラー(23)を有するように構成されていることを特徴とする、請求項3~9のいずれか一項に記載のプロテーゼ。
【請求項11】
前記ねじ状部(7)の前記穴(10)への開口部(12)に、尺骨の前記遠位端部(U1)に前記ねじ状部をねじ込むことによって取付けるための駆動器具(I2)の駆動部分(I2a)の凹部への挿入を可能にするように構成された少なくとも1つの凹部(21)が設けられていることを特徴とする、請求項3~10のいずれか一項に記載のプロテーゼ。
【請求項12】
前記ねじ状部(7)の前記穴(10)の底部(13)が、尺骨の前記遠位端部(U1)に前記ねじ状部をねじ込むことによって取付けるための駆動器具(I2)の駆動部分(I2a)の溝への挿入を可能にする前記溝として構成されている、或いは、前記溝を有するように構成されていることを特徴とする、請求項3~11のいずれか一項に記載のプロテーゼ。
【請求項13】
前記第1のプロテーゼ部材(2)の前記ねじ状部(7)が、前記第1のプロテーゼ部材の前記ソケット部分(6)のための前記穴(10)への開口部(12)の周りのカラー(16)を有するように構成され、
前記カラー(16)が雄ねじを有するように構成されていることを特徴とする、請求項3~12のいずれか一項に記載のプロテーゼ。
【請求項14】
前記第2のプロテーゼ部材(4)の前記取付け部分(26)が、
前記第2のプロテーゼ部材(4)の前記取付け部分
(26)を前記尺骨の前記遠位端部(U1)と前記空間の近位側の前記尺骨(U2)との間に画定される空間(US)の近位側の前記尺骨(U2)の骨髄キャビティ(MCU)内にねじ込むことによって固定するための雄ねじを有するように少なくとも部分的に構成されていることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロテーゼ。
【請求項15】
前記第2のプロテーゼ部材(4)の前記取付け部分が、ねじ状部(26)として構成され、前記第2のプロテーゼ部材(4)の前記ヘッド部分(27)が、前記ヘッド部分を取付けるために前記ねじ状部(26)の穴(29)に挿入可能な取付けピン(28)を有していることを特徴とする、請求項14に記載のプロテーゼ。
【請求項16】
前記ねじ状部(26)の前記穴(29)と前記ヘッド部分(27)の前記取付けピン(28)とが、前記ねじ状部の前記ヘッド部分を固定するための相補的な部分を有するように構成されていることを特徴とする、請求項15に記載のプロテーゼ。
【請求項17】
前記第1および第2のプロテーゼ部材(2、4)の取付け部分(7、26)上のねじ山がセルフ・タッピングであることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロテーゼ。
【請求項18】
前記第1のプロテーゼ部材(2)が、前記固定手段(3)用の1つ以上の貫通孔(25)を有するように構成されていることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尺骨の遠位端部に近い部分を切除した後に遠位橈尺関節を再建するためのプロテーゼに関する。
【0002】
本発明はまた、近位端部に近い橈骨の一部の切除後の近位橈尺関節の再建のための前記プロテーゼの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
遠位橈尺骨プロテーゼは、例えば、欧州特許出願公開第1191908号明細書(特許文献1)および米国特許第5108444号明細書(特許文献2)ですでに公知にされている。
【0004】
人体の前腕は2つの主要な骨、すなわち橈骨と尺骨とで構成されています。プロテーゼのない自然な位置では、尺骨の遠位端部と橈骨の遠位端部とは互いに強固に結合されていない。これらの端部は、多かれ少なかれ互いに並んで配置され、小さい尺骨の遠位端部は、三角繊維軟骨複合体(TFC)によって橈骨の遠位端部に対して定位置に保たれる。手首と手を動かすと、尺骨と橈骨とはかなり複雑な動きを実行することができ、言い換えれば、互いに対して高い動きの自由度を有している。尺骨および橈骨は、互いに対して長手方向に動くことができる。尺骨および橈骨は、それらが互いに平行に延びる初期位置(回外)からそれらが互いに交差する位置(回内)になるという意味で、或いは、尺骨がその長手方向軸線の周りを回転し、橈骨が尺骨を中心に回転するという意味で、尺骨および橈骨は、互いに対して回転することができる。尺骨および橈骨、特にその遠位端部で行うことができる運動の種類はそれ自体当業者に知られており、したがって本明細書ではさらに詳細には説明しない。
【0005】
例えば、骨折、病気、先天的異常、手術や外傷による異常など、遠位橈尺関節の再建を必要とし得る多くの理由がある。他の原因は、例えば、骨にかかる圧力による刺激である。
【0006】
尺骨および橈骨の運動の自由度を可能な限り完全に保つために、尺骨の遠位端部を尺骨ヘッド・プロテーゼで置き換え、人工のフィット・バンドを用いて遠位の橈骨に沿ってそれを保持することが知られている。尺骨および橈骨の長手方向の相対運動はこのようにして維持することができるが、関節は安定しない。
【0007】
引用文献1および引用文献2の遠位橈尺関節プロテーゼは、遠位橈骨に対する遠位尺骨の運動の自由度を改善し、それを可能な限り完全に保つための2つの異なる試みである。これにより、遠位橈尺関節プロテーゼは、尺骨の遠位端部を置換すると共に、橈骨の遠位端部を尺骨の残りの部分に機械的に接続するように構成されている。
【0008】
しかしながら、これらの先行技術の遠位橈尺関節プロテーゼの欠点は、三角繊維軟骨複合体(TFCまたはTFCC)が、尺骨の遠位端部で切除されることである。TFCは、手首の尺骨側面を横切る荷重伝達において重要である。TFCは圧縮力を伝達しそして吸収する。とりわけ遠位橈骨と遠位尺骨との間に強固ではあるが柔軟な接続を与えることによって前腕の回転を制御することになるとき、それはまた主要な安定剤となる。遠位橈骨と遠位尺骨との間の接続は、遠位橈尺関節の調和を維持する。靭帯は、その回転のアーチを介して関節を支え、したがって回内および回外に影響を与える。
【0009】
尺骨茎状突起(ulnar styloid)およびその基部に挿入する靱帯を保護しながら、尺骨の遠位端部を部分的に切除するいくつかの技術が記載されている。しかしながら、これらの技術はしばしば正常な関節安定性を回復することに失敗する。
【0010】
TFCおよびその機能、ならびに尺骨の遠位端部全体を保護するための1つの試みは、Sauve-Kapandji技術として知られている。ここでは、尺骨の遠位端部に近い部分を切除し、尺骨の遠位端部を橈骨に不動に固定する。したがって、TFCの機能は維持されるが、その遠位端部の近位側の尺骨の残りの部分は「垂れ下がって」おり、前腕に痛みを伴う不安定性をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第1191908号明細書
【文献】米国特許第5108444号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、三角繊維軟骨複合体(TFC)の実質的な保存、およびその機能の大部分の維持を可能にし、尺骨全体および橈骨全体の互いに対する遠位尺骨および遠位橈骨の運動の自由度をさらに向上させ、そして可能な限りそれを完全に保つように構成された遠位橈尺関節プロテーゼを提供することである。これによって、前腕に対する通常の安定性が実質的に回復される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(請求項に基づき見直す)
これは、請求項1に記載の本発明による第1のプロテーゼ部材と、1つ以上の固定手段と、第2のプロテーゼ部材と、を備える遠位橈尺関節プロテーゼによって達成される。第1のプロテーゼ部材は、尺骨の遠位端部に固定するように構成されている。固定手段は、尺骨の遠位端部を橈骨に不動に固定するために、尺骨の前記遠位端部を介して橈骨内に延びるように構成されている。それによって、第1のプロテーゼ部材も橈骨に固定される。第2のプロテーゼ部材は、尺骨の前記遠位端部に近い尺骨の一部の切除によって画定される空間であって、尺骨の遠位端部と該空間の近位側の尺骨との間に画定される空間の近位側で尺骨に固定するように構成されている。第2のプロテーゼ部材はまた、前記第1および第2のプロテーゼ部材が互いに対して少なくとも枢動および回転することができる方法で第1のプロテーゼ部材と接合されるように、前記空間内に延びるように構成されている。
【0014】
尺骨の遠位端部、したがってTFCを切除しないで、代わりに、尺骨の前記遠位端部に近い尺骨の一部を除去または切除し、本発明のプロテーゼ介して尺骨の残りの部分に前記遠位端部を接続することによって、TFCは保存され、その機能は維持される。第1および第2のプロテーゼ部材を互いに対して少なくとも枢動および回転することができるようにさらに一緒にすることによって、尺骨および橈骨の互いに対する運動の自由度は実質的に無傷である。
【0015】
上記のように、前記プロテーゼは近位橈尺関節の再建にも使用することができ、第1のプロテーゼ部材は橈骨の近位端部に固定するように構成される。固定手段は、第1のプロテーゼ部材も尺骨にロックされるように、橈骨の前記近位端部を尺骨に不動にロックするための橈骨の近位端部を介して、尺骨内に延在するように構成されている。第2のプロテーゼ部材は、橈骨の前記遠位端部に近い橈骨の一部の切除によって画定される空間であって、橈骨の遠位端部と該空間の近位側の尺骨との間に画定される空間の近位側で橈骨に固定するように構成されている。第2のプロテーゼ部材はまた、第1および第2のプロテーゼ部材が、互いに対して少なくとも枢動して回転することを可能にする方法で第1のプロテーゼ部材と接合されるように、前記空間内に延びるように構成されている。
【0016】
これは可能であるが、近位橈尺関節にも遠位橈尺関節と同様の問題が起こり得る。したがって、近位橈尺関節における靱帯およびその機能の大部分を保存し、関節に対する安定性を回復させることができるように、同様の解決策が手近にある。
【0017】
本発明の好ましい実施形態は、添付の従属請求項、以下の説明および図面に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、添付の図面を参照しつつ、その非限定的な実施例によって以下にさらに説明される。
【0019】
【
図1】本発明による遠位橈尺関節の再建のためのプロテーゼにおける第1および第2のプロテーゼ部材の好ましい実施形態の概略側面図である。
【
図2】本発明による遠位橈尺関節の再建のためのプロテーゼにおける第1および第2のプロテーゼ部材の好ましい実施形態の概略断面図である。
【
図3】尺骨の一部の切除中に使用される器具の概略斜視図である。
【
図4】
図1および
図2に示すプロテーゼの第1のプロテーゼ部材の取付け部分における4つの異なる実施形態の概略斜視図である。
【
図5】切除後の第1のプロテーゼ部材の取付け部分を尺骨の遠位端部に固定する間に使用するための器具の概略斜視図である。
【
図6】尺骨の遠位端部に固定した後の第1のプロテーゼ部材の取付け部分の概略断面図である。
【
図7】
図1および
図2に示すプロテーゼの第1のプロテーゼ部材のソケット部分の2つの異なる実施形態における概略斜視図および概略平面図である。
【
図8】第1のプロテーゼ部材の取付け部分への挿入後の第1のプロテーゼ部材のソケット部分の概略断面図である。
【
図9】第2のプロテーゼ部材のヘッド部分をその取付け部分に挿入した後の第2のプロテーゼ部材の概略断面図である。
【
図10a】尺骨の遠位端部および第1のプロテーゼ部材を第1の方法で橈骨に固定し、尺骨および橈骨が互いに対しほぼ平行に延びている(回外)プロテーゼの概略側面図である。
【
図10b】尺骨の遠位端部および第1のプロテーゼ部材を第1の方法で橈骨に固定し、尺骨および橈骨が互いに対しほぼ平行に延びている(回外)プロテーゼの概略平面図である。
【
図10c】尺骨と橈骨が互いに交差している(回内)
図10a、bに示すプロテーゼの概略側面図である。
【
図11】第2の方法で、尺骨の遠位端部および第1のプロテーゼ部材が橈骨に移植された後、および、固定された後のプロテーゼの概略側面図および概略平面図である。
【
図12】第3の方法で、尺骨の遠位端部および第1のプロテーゼ部材が橈骨に移植された後、および、固定された後のプロテーゼの概略側面図および概略平面図である。
【
図13】近位橈尺関節の再建のために、橈骨の近位端部および第1のプロテーゼ部材が移植および固定された後の
図10aに示すプロテーゼの概略側面図である。
【0020】
添付の図面は必ずしも原寸に比例して描かれているわけではなく、本発明のいくつかの特徴の寸法は理解しやすくするために誇張されている場合があることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明をその好ましい実施態様により例示する。しかしながら、この実施形態は、本発明の原理を説明するために含まれており、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するためのものではないことを理解されたい。
【0022】
したがって、すでに上述したように、本発明は、尺骨の遠位端部に近い部分を切除した後の遠位橈尺関節の再建のためのプロテーゼに関する。切除は、例えば、
図3に示される器具I1のような手段によって実行され得る。切除中に尺骨に取付けられる器具I1は、のこぎりSのためのガイドを形成する溝I1aを有するように構成されている。本発明によるプロテーゼのプロテーゼ部材の一例を
図1および
図2に示す。尺骨の切除部分の長さは、好ましくは約5~20mmである。
【0023】
遠位橈尺関節プロテーゼ1は、一般に、第1のプロテーゼ部材2と、1つ以上の固定手段3と、第2のプロテーゼ部材4と、を備える。最も一般的な方法である尺骨の遠位端部U1を切除する代わりに、前記遠位端部は保存され、そして前述したように、その遠位端部に近い尺骨の一部が切除される。尺骨の遠位端部U1の長さは、切除部分の除去後に約15~25mmであり得る。本発明によれば、第1のプロテーゼ部材2は、尺骨の遠位端部U1、前記遠位端部の内側、その外側、或いは、その両方に固定するように構成されている。好ましくはその間の軟骨組織の除去後に、尺骨および橈骨の前記遠位端部を圧縮するために、尺骨の前記遠位端部U1を介して橈骨R内に延びるように、そして、前記遠位骨部を橈骨に不動にロックするように、固定手段3は構成されている。それによって、第1のプロテーゼ部材2も、少なくとも間接的に橈骨に固定される。第2のプロテーゼ部材4は、尺骨の前記遠位端部に近い尺骨の一部の切除によって画定される空間であって、尺骨の遠位端部U1と前記空間の近位側の尺骨の残りの部分U2との間に画定される空間USの近位で尺骨に固定するように構成される。すなわち、言い換えれば、空間は、尺骨の切除された部分に実質的に対応する。第2のプロテーゼ部材4は、近位部の内側、その外側またはその両方の尺骨の近位部U2に固定され得る。第2のプロテーゼ部材4もまた、第1および第2のプロテーゼ部材が互いに対して少なくとも枢動して回転することを可能にするように第1のプロテーゼ部材2と接合されるように前記空間US内に延びるように構成される。それによって、尺骨の遠位端部U1と 尺骨の遠位端部U1と空間USの基端側の尺骨U2との間で、橈骨Rを尺骨の遠位端部U1と空間USの基端側の尺骨U2と一緒にして、実質的に「通常の」回内運動および回外運動を行う。
【0024】
第1のプロテーゼ部材は、その要件を満たすため、且つ、その機能を果たすために、多くの異なる方法で構成され得る。
【0025】
図示した好ましい実施形態では、第1のプロテーゼ部材2は、このために、ソケット部分6と、尺骨の遠位部U1の表面U1aのキャビティCU内に前記ソケット部分を固定するように構成された取付け部分7と、を備える。すなわち、遠位端部の表面は、空間USと前記空間の近位側の尺骨U2とに面する。キャビティCUは、尺骨の表面U1aから尺骨の遠位端部U1にガイド・ワイヤを挿入し、次いでガイド・ワイヤにねじ込まれたドリルによってキャビティを穿孔することによって形成される。尺骨の遠位部分U1の表面U1a内のキャビティCU内への取付け部分7、ひいてはソケット部分6の固定は、様々な方法で達成され得る。例えば、図示された好ましい実施形態では、取付け部分をキャビティにねじ込むことができるように、取付け部分を少なくとも部分的に雄ねじで構成している。ねじはセルフ・タッピングであることが好ましい。固定後、ソケット部分6の一部は、図面に示されるように、尺骨の遠位端部U1と尺骨の近位部U2との間の空間US内に突出し得る。
【0026】
第1のプロテーゼ部材2、すなわちそのソケット部分6およびその取付け部分7は、一体に作られてもよく、或いは、図示した好ましい実施形態のように、別々の部材を構成してもよい。ソケット部分6と取付け部分7とを別々の部材として設けることによって、必要に応じて、前記部材の目的およびその要件に基づいて、前記部材を異なる適切な材料で製造することが可能である。そのため、ソケット部分6は、例えば、PEEK(ポリエーテルケトン)のようなプラスチック材料で、取付け部分7は、例えば、Ti6Al4Vのような金属または金属合金で作成され得る。金属または金属合金は、骨統合をさらに改善するために人体により適合性のある適切な材料で覆われ得る。
【0027】
第1のプロテーゼ部材2の取付け部分は、図示された好ましい実施形態のように、セルフ・タッピングねじ山を有する(遠位)ねじ状部7として構成され得る。ねじ状部7は、尺骨の遠位端部U1のキャビティCUにねじ込まれ(
図6)、ソケット部分6は、ソケット部分を取付ける(
図8)ために、ねじ状部7の穴10に挿入可能な取付けピン9を有し得る。ねじ状部7の穴10は、窪みとして前記部分の中に延びており、それと共に軸方向の中心にある。穴10は、その開口部12から穴の底部13に向かって円錐状に先細になっている形状を有する。円錐性は、穴の長手方向において変化しなくてもよく、または穴の長手方向において変化してもよい。
【0028】
ソケット部分6は、取付けピン9を越えて、くぼみまたはカップ形の凹状の接合部または案内面15を画定するソケット14を備える。取付けピン9は、ソケット14の外側から軸方向に突出する。ピン9は、ソケット14から円錐状に先細になり得る。取付けピン9の形状および大きさ、ならびにねじ状部7の穴10の形状および大きさは、それらが軸方向にそれらを一緒に動かすことによって圧嵌合を形成するように選択され得る。すなわち、そのような接続が、ソケット部分6とねじ状部7とを互いに押圧して取付けるのを可能にしている。ソケット部分6上の取付けピン9の形状および大きさと、ねじ状部7の穴10の形状および大きさとは、以下でより詳細に説明するように、それらが互いに取付けられるように選択され得る。
【0029】
ねじ状部7の直径は、ねじ状部が実質的に全ての関連サイズの遠位端部に適合するように、或いは、前記遠位端部の皮質骨内におけるねじ状部の最大固定を提供するために、尺骨の遠位端部U1の断面積に対して選択される。使用されるべきねじ状部7の直径は、それによって好ましくは6~12mmの間で変動する。4つの異なる直径のねじ状部7が
図4a~
図4dに示されている。遠位ねじ状部7の長さは、例えば、10mm~20mmの間で変化し得る。適切に寸法決めされたねじ状部品7を使用することによって、これらのモーメントは大きな強度が比較的大きな表面にわたって広がることができるので、荷重中に発生するモーメントは最小に保たれる。ソケット部分6内のソケット14のための、特に開口部12から穴10までの十分な空間、すなわち、直径約6mmを有するソケットのための空間は、好ましくは、開口部12の周囲に、10または12mmの直径を有するカラー16と共にすべての前記直径をねじ状部に構成することによって提供される。カラー16は、それが尺骨の前記遠位端部におけるねじ状部7の固定をさらに改善するために、前記カラーも尺骨の遠位端部U1の表面U1aにねじ込むためのねじ山(図示せず)で構成され得る。第一のプロテーゼ部材2の回転は阻止される。ソケット14に嵌合するボール要素の運動中心は、尺骨の遠位端部U1の比較的下方に見られる。これによって、脱臼のリスクが軽減される。
【0030】
ねじ状部7の穴10とソケット部分6の取付けピン9とは、ねじ状部のソケット部分を締結または固定するための相補的な部分で構成されている。
【0031】
特にソケット部分6の種類に応じて、これらの部分は、上に示したように、圧嵌合によってソケット要素とねじ状部7とが互いに取付けられるような圧嵌合を形成するように構成され得る。これは、両方の部材6、7が、例えば、ソケット部分6もプラスチック材料の代わりにCoCrMo合金またはTi6Al4Vでできているような、金属または金属合金で作られている場合に特に当てはまる。
【0032】
ただし、ソケット部分6が、例えば、PEEKのような、炭素繊維で強化され得るプラスチック材料からなる場合、相補的な取付け部分は、上述したように、異なるように構成され得る。PEEKのソケット部分が、図面、特に
図7a~
図7dおよび
図8に示されている。この後者の実施形態では、ねじ状部7の穴10の底部13に、ソケット部分6の取付けピン9用のスナップ・イン・アタッチメント17を設けることができ、この取付けピンは、スナップ・イン・アタッチメントを前記ねじ状部の穴で係合するスナップ・イン部で構成されている。図面から明らかなように、穴10内のスナップ・イン・アタッチメント17は、穴の底部13に近い部分における穴のより小さな延長部によって画定され、取付けピン9上のスナップ・イン部18はフック状の部品として構成されている。図面から、取付けピン9は、穴10内でのスナップ・イン接続を可能にするために、それぞれフック状部を有する4つの部材に分割されていることも明らかである。取付けピン9は、もちろん、4つより少ないかまたは多い部材に分割されてもよく、そのような各部材は、代わりに、2つ以上のフック状部を有してもよい。ソケット部分6の取付けピン9上のフックとして構成されたスナップ・イン部分18は、取付けピンを穴10に挿入する間に一緒にされるが、前記延長部によって画定され、穴の底部13に面する表面19と係合することによって、穴の延長部分内で離れてソケットの後退を防ぐ。
【0033】
ねじ状部7の穴10とソケット14を画定するソケット部分6の部分20もまた、ねじ状部に対する関節式ソケット要素の回転を防止する相補的部分と共に構成されている。
【0034】
図面に示された好ましい実施形態、特に、
図4a~dおよび
図7a~dにおいて、ねじ状部7の穴10は、このために、その開口部12の内側に、少なくとも1つの凹部21を備え、ソケット部分6は、ソケット14を画定する部分20の外側に、ねじ状部の凹部と係合する少なくとも1つの突起22を有する。図面から明らかなように、開口部12から穴10の内側の少なくとも1つの凹部は、内側に沿って均一に分布した多数の凹部21として構成され得る。凹部21の数は変化してもよく、12個より多くても少なくてもよい。図面から、部品20上の少なくとも1つの突起は、前記部分の外側に周方向に均一に分布し、凹部21と実質的に同じ半径の湾曲側面を有する6つの突起22を含み得ることは明らかである。また、突起22の数は変化してもよく、6個より多くても少なくてもよいが、凹部21の数以下である。
【0035】
ソケット部分6は、取付けピン9を除いて、そして、ソケット14を画定し少なくとも1つの突起22を有する部分20を除いて、前記部分上にカラー23を含み得る。金属または金属合金のねじ状部の上に少し突出する、このカラー23の目的は、ソケット部分6がねじ状部7に挿入されたときに、とりわけ、脱臼または離脱の可能性がある金属障害(metalosis)なしに修復することを可能にすることである。したがって、カラー23は、尺骨の遠位端部U1とその近位部分U2との間の空間5内にもわずかな距離だけ突出することになる。
図7aおよび
図7cから明らかなように、カラー23は、以下に説明する理由で高さが異なり得る。手術中にソケット部分6を取り扱うためのツール用の凹部24が、カラー23の外周に設けられ得る。図示される実施形態では、カラー23は、互いに直径方向に対向して配置された2つの凹部24を有する。
【0036】
開口部12の内側のねじ状部7の穴10内の1つまたは複数の凹部21はまた、尺骨の遠位端部U1へのねじ状部のねじ込みによる取付け用の駆動ツールI2の駆動部分I2aの1つまたは複数の前記凹部内への挿入を可能にするために使用され得る。このような駆動器具が
図5に示されている。当然ながら、駆動器具を用いてねじ止めすることによって固定するための1つ以上の他の凹部を有するねじ状部7を構成することが可能であり、駆動器具は、
図5の駆動器具以外のものも設計され得る。しかしながら、
図5の実施形態では、駆動器具I2の駆動部分I2aは、凹部21に嵌合する突起I2bを有するように構成されている。駆動器具I2の細長いシャフトI2dの一端に取付けられた駆動部分の板状部材I2cには、図示された実施形態の凹部21の数に対応する、それより少なくてもよいが多数の凹部21が設けられている。駆動部分I2aを有するシャフト端部とは反対側のシャフトI2dの自由端部は、回転運動生成ツール、例えば、ボール盤、または駆動器具を手動で回転させるためのハンドルと協働するためのハンドルまたはグリップ部分を有するように構成され得る。駆動部分12aを開口部12から穴10に挿入した後、突起I2bを凹部21に係合させた後に駆動器具I2を回転させることにより、ねじ状部7が尺骨の遠位端部U1にねじ込まれて固定され得る。
【0037】
あるいは、ねじ状部の大きさがそれを可能にする場合、穴10の底部13もまた、例えば、六角レンチのような形状の駆動器具を用いてねじ状部をねじ込むことによる取付けのための、例えば、六角形の溝として、或いは、その溝を有するように構成され得る。穴10の底部13の溝は、もちろん他の形状に形成されていてもよく、駆動器具も同様にそうである。
【0038】
第1のプロテーゼ部材と同様に、固定手段もまた、その要件を満たすためおよびその機能を果たすために、多くの異なる方法で構成されると共に配置され得る。
【0039】
図12a、bに図示された実施形態では、1つの固定手段3があるが、例えば、
図10a~cおよび
図11a、bのような2つの固定手段、或いは、さらに3つ以上の固定手段があり得る。2つ以上の固定手段3が使用される場合、それらは遠位端部U1を通って橈骨Rの中へ平行または非平行方向に、すなわち、互いに対してある角度で延び、それによって遠位端部の橈骨への係止を改善する。角度付きまたは交差リンク式固定手段3は、第1のプロテーゼ部材2を橈骨Rに直接的または間接的に係止することができ、さらに、例えば別のインプラントまたは手首用プロテーゼのようなプロテーゼの一部を形成するねじが、例えば、手首関節形成術による橈骨ネジRS1およびソケット部分材SMのように橈骨内に位置している(
図11a、b)場合に使用され得る。したがって、
図11a、bの実施形態は、本発明による手首用プロテーゼと遠位橈尺関節プロテーゼとの同時固定を可能にする。
図11a、bに示されるように、交差リンク式固定手段3はまた、近位方向に斜めに延び得る。固定手段3は、図示された実施形態のように少なくとも橈骨Rに固定するためのねじ付き固定部分を有する骨ねじであってもよく、あるいは骨釘であってもよい。また、例えば、骨ねじの形態の3つの固定手段3が使用され、中間骨ねじは圧縮ねじであってもよく、そして圧縮ねじの両側にある2つの骨ねじはロッキングねじであり得る。
【0040】
あるいは、必要に応じて、固定手段3は、より直接的な方法で、尺骨の遠位端部U1内の第1のプロテーゼ部材2を橈骨Rに係止することもできる(
図12a、b)。このために、第1のプロテーゼ部材2、またはその取付け部分7は、固定手段3のための1つまたは複数の貫通孔25を備えるように構成され得る(特に、
図4a~dおよび
図12a、b参照)。固定手段3を用いて第1のプロテーゼ部材2を橈骨Rにさらに直接的に係止することによって、たとえ、その取付け部7がおねじを有するようにまたはねじ状部として構成されていなくても、前記第1のプロテーゼ部材2が尺骨の遠位端部U1にも固定される。
【0041】
図10a~cおよび
図12a、bの実施形態では、最初に遠位橈尺関節プロテーゼ1を治癒させ、尺骨の遠位端部と橈骨との間に関節固定術を形成させる必要があって、次いで、手首用プロテーゼの固定の準備を始める前に、固定手段3の取り外しが開始され得る。
【0042】
最後に、第2のプロテーゼ部材はまた、その要件を満たすためおよびその機能を果たすために多くの異なる方法で構成され得る。
【0043】
図示された実施形態では、第2のプロテーゼ部材4は、尺骨の遠位端部U1と尺骨の前記近位部との間に画定される空間USの近位側の尺骨U2の骨髄キャビティMCU内に固定するように構成された取付け部分26を含み、すなわち、キャビティは、前記空間と尺骨の遠位部U1の表面U1aとに開口して面する。骨髄キャビティMCU内の取付け部分26のための空間は、空間USに面する表面U2aおよび尺骨の遠位端部U1の表面U1aからガイド・ワイヤを前記骨髄キャビティ内に挿入することによって提供され、次いでガイド・ワイヤ上ねじ切りされたドリルによって骨髄キャビティを拡大する。空間USの近位側の尺骨U2の拡大された骨髄キャビティMCU内における取付け部分26の固定は、種々の方法で達成することができ、例えば、図示された好ましい実施形態では、取付け部分を骨髄キャビティにねじ込むことができるように、取付け部分を少なくとも部分的に雄ねじで構成する。取付け部分26は、拡大された骨髄キャビティMCU内に完全にねじ込まれてもよく、或いは、尺骨の遠位端部U1と尺骨の近位部U2との間の空間US内にいくらか延びてもよい。第2のプロテーゼ部材4はまた、拡大骨髄キャビティMCU内の取付け部分26から尺骨の遠位端部U1と空間の近位側の尺骨U2との間の空間US内に延びるように構成されたヘッド部分27を備える。これを達成するために、第2のプロテーゼ部材4のヘッド部分27は、一端が取付け部分26と一体になっているか、あるいは、その取付けのために、取付け部分26の穴29内に挿入可能な取付けピン28と共に構成され(
図9)、反対側の自由端で、第1および第2のプロテーゼ部材が互いに対して少なくとも枢動して回転し得るように、第1のプロテーゼ部材2のソケット部分6のソケット14に嵌合するボール要素30で構成されている。
【0044】
第2のプロテーゼ部材4、すなわち、その取付け部分26およびヘッド部分27は、示されるように一体的に作られてもよく、または図示される好ましい実施形態のように、別々の部材を構成してもよい。取付け部分26とヘッド部分27とを別々の部材として設けることによって、必要に応じて、部材の目的およびその要件に基づいて、部材を異なる適切な材料で製造することが可能である。従って、取付け部分26は、Ti6Al4Vのような金属又は金属合金で作り、ヘッド部分27は、例えば、CoCrMoのような他の金属又は金属合金で作られ得る。前者の金属または金属合金は、骨統合をさらに改善するために人体により適合する適切な材料で覆われ得る。
【0045】
取付け部分26の穴29は、好ましくはセルフ・タッピングねじ山を有する(近位)ねじ状部品として構成することもでき、第1のねじ状部7の穴10と同様に円錐状に構成されるのが好ましいが、他の適切な方法でも構成され得る。取付け部分/近位ねじ状部26の穴29と嵌合するヘッド部分27の端部は、対応する円錐形状を有する。近位ねじ状部26の長さは、約25~35mmの間が好ましい。
【0046】
第1および第2のプロテーゼ部材2、4の上述の構成はまた、前腕の回内および回外を容易にするために、実質的に前記第1および第2のプロテーゼ部材の長手方向への前記プロテーゼ部材の特定の相対移動を可能にし得る。必要とされる相対運動は、約2~3mmであり、例えば、ソケット部分6ひいてはソケット14を、ボール要素30を収容するのに必要以上に少しだけ高くすることによって、補償され得る。その結果、第1および第2のプロテーゼ部材2、4が、前腕の回内および回外に対応する位置の間を移動する間に、プロテーゼ1の位置ずれまたは弛緩なしに前記部材間の弛みの増大が許容される。これは例えば、ソケット部分6のカラー23の高さを増加させる(
図7c参照)ことによって達成され得る。代替として、またはソケット部分6のやや高いソケット4と組み合わせて、ヘッド部分27のボール要素30が前記ソケットに嵌合する張力を制御することができ、すなわち、前腕が回内と回内との間の位置にある時に、使用されるヘッド部分/ボール要素が有する長さを決定し、回内と回外との間の前腕のいかなる位置においてもソケット14に対して高すぎる圧力を発生させないようにし、それによって、例えば、尺骨の遠位端部と橈骨との間の関節固定術が破損する危険を生じないようにする。
【0047】
ボール要素30は実質的に球形のボール31を含み、前記ガイド面14、32が互いに対してスライドして関節運動をもたらし得るように、ソケット14のガイド面15に嵌合するような形状の凸状のジョイントまたはガイド面32を画定する。ヘッド部分27の取付けピン28はボール要素30から軸方向に延び、この取付けピンは好ましくはソケット部分6上の取付けピン9と対応する円錐形を有するが、他の適当な方法でも構成され得る。ヘッド部分27上の取付けピン28の形状および大きさ、ならびに取付け部分/近位ねじ状部26の穴29の形状および大きさは、それらを軸方向に一緒に動かすことによってソケット要素6と遠位ねじ状部7との間の圧嵌合に対応する圧嵌合を形成するように、選択され得る。ヘッド部分27上の取付けピン28の形状およびサイズ、ならびに近位のねじ状部26の穴29の形状およびサイズは、それらが別の方法で互いに取付けられるように選択され得る。
【0048】
遠位橈尺関節プロテーゼの第1および第2のプロテーゼ部材2、4のそれぞれの部材6、7、26、27をどのようにそしてどのような順序で尺骨の遠位端部U1に、尺骨の遠位端部の近位側の尺骨U2および空間USのそれぞれに対し、取付けるかについてのより詳細な説明、および、互いに対して使用される追加の器具の説明は、ここではしない。
【0049】
本発明の思想および目的から逸脱することなく、本発明を添付の特許請求の範囲内で修正および変更できることは当業者には明らかである。したがって、本発明は、上記のその実施形態によっても、この実施形態を例示する図によっても限定されると見なされるべきではない。そうではなく、本発明の全範囲は、この説明および図面を参照しつつ、添付の特許請求の範囲によって決定されるべきである。したがって、示されるように、固定手段3の数および大きさは変化し、その位置も変わり得る。第1および第2のプロテーゼ部材2、4のサイズおよび/または厚さはまた、示されるように、患者の解剖学的構造に基づいて、そして尺骨の遠位端部U1と近位側の尺骨U2との間の空間USのサイズに基づいて変わり得る。すなわち、尺骨の切除部の大きさ、表面U1a、U2aがどの程度、尺骨の残りの部分の空間に面するか、および、第1および第2のプロテーゼ部材によって係合される前記表面U1a、U2aがどのようにそれらに嵌合するように形作られているか等である。尺骨の遠位端部U1用の第1のプロテーゼ部材2に、その取付け部分7と一体化されているか、または接続用に構成されている別個の部材を構成しているヘッド部分を代替的に設けることは本発明の範囲内である。また、尺骨の遠位端部と尺骨U2との間に画定された空間の近位側の尺骨のための第2のプロテーゼ部材4を、その取付け部分26と一体であるか又は前記取付け部分に接続するように構成された別の部材を構成するソケット部分を有するように設けることも本発明の範囲内である。したがって、示されるように、第1および第2のプロテーゼ部材2、4の接合部または接続部は、多くの異なる方法で構成され得る。プロテーゼ1全体は、例えば、チタンまたはPEEK、或いは骨統合を改善する他の材料で作られ得る。しかしながら、上述したように、プロテーゼ1は、代替的には、例えば、CoCr合金または他の任意の適切な金属またはプラスチック材料ならびに第1および第2のプロテーゼ部材2、4もまた異なる材料で作られ得る。
【0050】
図13に示すように、近位端部に近い橈骨の一部を切除した後の近位橈尺関節の再建のために上記のプロテーゼを使用することも本発明の範囲内である。それによって、第1のプロテーゼ部材2は橈骨の近位端部R1に固定するように構成され、固定手段3は、橈骨の前記近位端部を尺骨Uに不動に固定するために橈骨の前記近位端部R1を介して尺骨U内に延びるように構成されている。第2のプロテーゼ部材4は、橈骨の近位端部に近い橈骨の一部を切除することによって、橈骨の近位端部R1と空間の遠位側の橈骨R2との間に画定される空間RSの遠位側の橈骨に固定するように構成され、さらに、第2のプロテーゼ部材4はまた、第1および第2のプロテーゼ部材が互いに対して少なくとも枢動および回転できるような方法で、第1のプロテーゼ部材2と接合されるように前記空間RS内に延びるように構成されている。
【0051】
したがって、同じプロテーゼが使用されるので、第1のプロテーゼ部材2は、ソケット14を有するように構成されたソケット部分6と、橈骨の近位端部R1と空間の遠位側の橈骨R2との間に画定された空間RSに面する橈骨の近位端部R1の表面R1aのキャビティCR内にソケット部分を固定するように構成された取付け部分7と、をさらに備える。第2のプロテーゼ部材4はまた、橈骨の近位端部R1と空間の遠位側の橈骨R2との間に画定された前記空間RSの遠位橈骨R2の骨髄キャビティMCR内に固定するように構成された取付け部分26と、第2のプロテーゼ部材を第1のプロテーゼ部材2に接合するために前記空間RS内に延在するように構成されたヘッド部分であって、第1および第2のプロテーゼ部材が互いに対し少なくとも枢動および回転することができるように、ソケット部分のソケット14に嵌合するボール要素30を有するようにさらに構成されたヘッド部分27とを備える。
【0052】
したがって、前記第1および第2のプロテーゼ部材が、人体の前腕の回内および回外に対応する位置の間で動かされるとき、プロテーゼの位置ずれまたは弛緩することなしに第1および第2のプロテーゼ部材2、4を上記と同じ方法で互いに対して動かすことももた可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 遠位橈尺関節プロテーゼ
2 第1のプロテーゼ部材
3 固定手段
4 第2のプロテーゼ部材
6 ソケット部分
7 取付け部分、ねじ状部
9 取付けピン
10 穴
12 開口部
13 底部
14 ソケット
15 案内面
17 スナップ・イン・アタッチメント
18 スナップ・イン部
21、24 凹部
22 突起
23 カラー
26 取付け部分
27 ヘッド部分
30 ボール要素
CU キャビティ
I2 駆動器具
I2a 駆動部分
I2b 突起
I2d シャフト
MCU 骨髄キャビティ
U1 遠位端部
U1a 表面
U2 部分
US 空間
R 橈骨
RS 空間
RS1 橈骨ネジ