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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】リン含有化合物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C10M 137/10 20060101AFI20220128BHJP
   C10M 137/04 20060101ALI20220128BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220128BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20220128BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20220128BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C10M137/10 Z
C10M137/04
C10N30:06
C10N30:10
C10N30:12
C10N50:10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019522801
(86)(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 US2017059388
(87)【国際公開番号】W WO2018081822
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】62/415,492
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィット・エドワーズ
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054858(JP,A)
【文献】国際公開第2010/092912(WO,A1)
【文献】米国特許第03259579(US,A)
【文献】特開2016-074657(JP,A)
【文献】特開平08-193088(JP,A)
【文献】特開平11-349974(JP,A)
【文献】特表平04-505033(JP,A)
【文献】特開平06-041161(JP,A)
【文献】特開平10-067993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 10/00- 80/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
またはそのトライボロジー的に許容される塩であって、
式中、Aが、
【化2】
であり、
1はそれぞれ、同一または異なり、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルから、それぞれ独立して選択される、1~3個の置換基で任意選択に置換され、
2およびR3が、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから、それぞれ独立して選択され、
Yが、-R 4 -R 5 -R 6 であり
4が、アルキレンであり、
5が、-C(O)-であり
6が、ヒドロキシまたはアルコキシであり
mが、2~8の整数であり、
1が、R8またはZであり、
2が、R8
【化3】
からなる群から選択され、
8が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルであり、ここで、前記アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルから、それぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意選択に置換され、
Zが、
【化4】
であり、
式中、X2がR8である場合、X1が、Zであり、
式中、W1~W12が、それぞれ独立して、OまたはSであり、W1~W12のうちの少なくとも1つはOである、化合物。
【請求項2】
前記化合物が、式(Ia)の化合物
【化5】
またはそのトライボロジー的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物であって、
1が各々、同一または異なり、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから、独立して選択され、前記アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルから、それぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意選択に置換され、
2が各々、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから独立して選択され、
Yが、-R 4 -R 5 -R 6 であり
4が、アルキレンであり、
5が、-C(O)-であり
6が、ヒドロキシまたはアルコキシであり
2が、R8
【化6】
からなる群から選択され、
8が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルであり、ここで、前記アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルから、それぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意選択に置換され、
Zが、
【化7】
であり、
1~W14が、それぞれ独立して、OまたはSであり、W1~W14のうちの少なくとも1つはOである、化合物。
【請求項3】
1が各々、同一または異なり、C1~C30アルキル、C2~C30アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから、独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルが、C1~C10アルキルおよびC2~C10アルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意選択に置換される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
2が、C1~C10アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
2が、
【化8】
またはR8である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物が、式(II)の化合物、
【化9】
またはそのトライボロジー的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物であって、
式中、Aが、
【化10】
であり、
1は各々、同一または異なり、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから、独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意選択に置換され、
2およびR3がそれぞれ、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから、独立して選択され、
Yが、-R 4 -R 5 -R 6 であり
4が、アルキレンであり、
5が、-C(O)-であり
6が、ヒドロキシまたはアルコキシであり
mが、2~8の整数であり、
1が、R8またはZであり、
2が、R8
【化11】
からなる群から選択され、R8が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルであり、ここで、前記アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意選択に置換され、
Zが、
【化12】
であり、
式中、X2がR8である場合、X1が、Zであり、
式中、W1、W3、W5、W7、W9、およびW11が、それぞれ独立して、OまたはSであり、W1、W3、W5、W7、W9、およびW11のうちの少なくとも1つが、Oである、化合物。
【請求項7】
式(II)の前記化合物が、式(IIa)の化合物、
【化13】
またはそのトライボロジー的に許容される塩である、請求項6に記載の化合物であって、
1は各々、同一または異なり、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから、独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルから、それぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意選択に置換され、
2が、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから選択され、
Yが、-R 4 -R 5 -R 6 であり
4が、アルキレンであり、
5が、-C(O)-であり
6が、ヒドロキシまたはアルコキシであり
2が、R8
【化14】
からなる群から選択され、
8が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルであり、ここで、前記アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニル、それぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意選択に置換され、
Zが、
【化15】
であり、
1、W3、W5、W7、W9、W11、およびW14が、それぞれ独立して、OまたはSであり、W1、W3、W5、W7、W9、W11、およびW14のうちの少なくとも1つが、Oである、化合物。
【請求項8】
1が各々、同一または異なり、C1~C30アルキル、C2~C30アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルが、C1~C10アルキルおよびC2~C10アルケニルから、それぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意選択に置換される、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
2が、C1~C10アルキルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
2が、
【化16】
またはR8である、請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
以下の化合物から選択される、請求項1に記載の化合物。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【請求項12】
請求項1に記載の化合物を含む潤滑剤添加剤組成物。
【請求項13】
潤滑剤組成物であって、
a)基油、および
b)請求項1に記載の化合物を含み、
前記基油が、前記組成物の主要量である、潤滑剤組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の潤滑剤組成物で金属表面を潤滑することを含む、前記可動金属表面を潤滑する方法。
【請求項15】
潤滑剤組成物で機械部品を潤滑することを含む、前記機械部品の可動金属表面間の摩耗を低減する方法であって、潤滑組成物が、
a)主要量の潤滑粘性のある基油、および
b)請求項1に記載の化合物の有効量、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、2016年10月31日に出願された米国仮特許出願第62/415,492号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、耐摩耗添加剤成分として有用なリン含有化合物、このような化合物をそれぞれが含む潤滑剤添加剤組成物、および潤滑剤組成物、ならびにこれらの作製方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、潤滑性組成物の耐摩耗性成分は、アミンおよび/または金属イオンで塩基化される酸性有機ホスフェートを含む。これらの成分は、良好な耐摩耗保護を提供するが、劣ったシール耐久性、低下した酸化安定性、および不十分な腐食防止性を含む他の性能特性が損なわれることがある。リン含有化合物および硫黄含有化合物は、表面を、表面が遭遇する極端な圧力の結果としての磨耗から保護するために、潤滑性流体では必須であると理解されている。結果として、これらの流体は、従来、シール(動的および静的)および黄色金属に有害であった。加えて、このような成分の環境への影響を減らすために、潤滑性流体からアミンおよび金属イオンを除去することに対する規制機関からの圧力が高まっている。これらの増大する環境問題のために、耐摩耗添加剤中のアミンおよび金属イオンの存在は、あまり望ましくないようになっている。したがって、アミンまたは金属イオンをほとんどまたは全く含有しない新規な耐摩耗化合物の開発の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本発明は、式(I)の化合物
【0005】
【化1】
【0006】
またはトライボロジー的に許容されるその塩に関し、
式中、Aは
【0007】
【化2】
【0008】
であり、
はそれぞれ、同一または異なり、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、アルキルおよびアルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
およびRは、それぞれ独立して、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから選択され、
Yは、アルキル、アルコキシアルキル、ベンジル、および-R-R-Rからなる群から選択され、
は、アルキレンであり、
は、結合、アルキレン、-C(O)-、および-C(R)-からなる群から選択され、
は、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキレンオキシ、ヒドロキシ、およびアルコキシからなる群から選択され、
は、ヒドロキシであり、
mは、2~8の整数であり、
は、RまたはZであり、
は、R
【0009】
【化3】
【0010】
からなる群から選択され、
は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルであり、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、アルキルおよびアルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
Zは、
【0011】
【化4】
【0012】
であり、
式中、XがRである場合、Xは、Zであり、
~W12は、それぞれ独立して、OまたはSであり、W~W12のうちの少なくとも1つはOである。
【0013】
第2の態様では、本発明は、式(I)の化合物を含む潤滑剤添加剤組成物を提供する。
【0014】
第3の態様では、本発明は、主要量の潤滑性粘度の油またはそれから調製されたグリース、および少量の式(I)の化合物を含む潤滑剤組成物を提供する。
【0015】
第4の態様では、本発明は、主要量の潤滑性粘度の油またはそれから調製されたグリース、および少量の本発明の潤滑剤添加剤組成物を含む潤滑剤組成物を提供する。
【0016】
第5の態様では、本発明は、本発明の潤滑剤組成物で金属表面を潤滑することを含む、可動金属表面を潤滑する方法を提供する。
【0017】
第6の態様では、本発明は、潤滑性または機能性流体組成物と接触するエラストマーシールの機能寿命を延ばす方法を提供し、この方法は、シールを有効量の本発明の潤滑性組成物と接触させることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に開示される発明は、耐摩耗剤として有用である新規なホスフェートおよびチオホスフェート化合物、ならびにこれらを調製する方法に関する。本発明はまた、これらの化合物を含む潤滑剤添加剤組成物および潤滑剤組成物、ならびにこれらの使用方法も提供する。
【0019】
本発明の化合物は、式(I)の化合物
【0020】
【化5】
【0021】
またはトライボロジー的に許容されるその塩を含み、
式中、Aは、
【0022】
【化6】
【0023】
であり、
はそれぞれ、同一または異なり、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、アルキルおよびアルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
およびRは、それぞれ独立して、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから選択され、
Yは、アルキル、アルコキシアルキル、ベンジル、および-R-R-Rからなる群から選択され、
は、アルキレンであり、
は、結合、アルキレン、-C(O)-、および-C(R)-からなる群から選択され、
は、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキレンオキシ、ヒドロキシ、およびアルコキシからなる群から選択され、
は、ヒドロキシであり、
mは、2~8の整数であり、
は、RまたはZであり、
は、R
【0024】
【化7】
【0025】
からなる群から選択され、Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルであり、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、アルキルおよびアルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
Zは、
【0026】
【化8】
【0027】
であり、
式中、XがRである場合、Xは、Zであり、
~W12は、それぞれ独立して、OまたはSであり、W~W12のうちの少なくとも1つはOである。
【0028】
一実施形態では、Rは、それぞれ、同一または異なり、C-C30アルキル、C-C30アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、C-C10アルキルおよびC-C10アルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換される。
【0029】
別の実施形態では、W~W12のそれぞれは、Oである。特定の実施形態では、W、W、W、およびWは、それぞれOである。さらなる実施形態では、WおよびWは、どちらもSである。別の実施形態では、WおよびWは、どちらもOである。一実施形態では、W~W12の群の少なくとも半分は、Oであり、残りは、Sである。
【0030】
別の実施形態では、Rはそれぞれ、同一または異なり、独立して、C-C10アルキルである。
【0031】
いくつかの実施形態では、mは2~5の整数である。特定の実施形態では、mは、2である。
【0032】
一実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、HおよびC-C10アルキルから選択される。別の実施形態では、Aの例それぞれについて、1つのRは、アルキルであり、RおよびRの残りの例は、Hである。さらなる実施形態では、Rが、アルキルである場合、このアルキルは、C-C10アルキルである。
【0033】
さらなる実施形態では、Xは、
【0034】
【化9】
【0035】
である。
【0036】
別の実施態様では、Xは、Rである。
【0037】
別の実施態様では、Yは、-R-R-Rである。さらなる実施形態では、Yは、-R-R-Rであり、Rは、アルキレンであり、Rは、-C(O)-であり、Rは、ヒドロキシまたはアルコキシである。
【0038】
一実施形態では、Rは、C-C10アルキルである。
【0039】
一実施形態では、Rは、それぞれ独立して、C-C30アルキルから選択される。別の実施形態では、Rは、それぞれ独立して、C-C10アルキルから選択される。別の実施態様では、Rは、それぞれ独立して、C-Cアルキルから選択される。特定の実施形態では、Rはそれぞれ、他のすべてのRと同じである。
【0040】
一実施形態では、Yは、C-C20アルキルである。
【0041】
一実施形態では、本発明は、式(Ia)の化合物
【0042】
【化10】
【0043】
またはトライボロジー的に許容されるその塩を提供し、
はそれぞれ、同一または異なり、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、アルキルおよびアルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
は、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから選択され、
Yは、アルキル、アルコキシアルキル、ベンジル、および-R-R-Rからなる群から選択され、
は、アルキレンであり、
は、結合、アルキレン、-C(O)-、および-C(R)-からなる群から選択され、
は、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキレンオキシ、ヒドロキシ、およびアルコキシからなる群から選択され、
は、ヒドロキシであり、
は、R
【0044】
【化11】
【0045】
からなる群から選択され、
は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルであり、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、アルキルおよびアルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
Zは、
【化12】
【0046】
であり、
~W14は、それぞれ独立して、OまたはSであり、W~W14のうちの少なくとも1つはOである。
【0047】
一実施形態では、Rは、それぞれ、同一または異なり、C-C30アルキル、C-C30アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、C-C10アルキルおよびC-C10アルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換される。
【0048】
別の実施形態では、W~W14のそれぞれは、Oである。
【0049】
別の実施形態では、Rはそれぞれ、同一または異なり、独立して、C-C10アルキルである。
【0050】
一実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、HおよびC-C10アルキルから選択される。別の実施形態では、Aの例それぞれについて、1つのRは、アルキルであり、RおよびRの残りの例は、Hである。さらなる実施形態では、Rが、アルキルである場合、このアルキルは、C-C10アルキルである。
【0051】
さらなる実施形態では、Xは、
【0052】
【化13】
【0053】
である。
【0054】
別の実施態様では、Xは、Rである。
【0055】
別の実施態様では、Yは、-R-R-Rである。さらなる実施形態では、Yは、-R-R-Rであり、Rは、アルキレンであり、Rは、-C(O)-であり、Rは、ヒドロキシまたはアルコキシである。
【0056】
一実施形態では、Rは、C-C10アルキルである。
【0057】
一実施形態では、Rは、それぞれ独立して、C-C30アルキルから選択される。別の実施形態では、Rは、それぞれ独立して、C-C10アルキルから選択される。別の実施態様では、Rは、それぞれ独立して、C-Cアルキルから選択される。特定の実施形態では、Rはそれぞれ、他のすべてのRと同じである。
【0058】
一実施形態では、Yは、C-C20アルキルである。
【0059】
一実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)の化合物
【0060】
【化14】
【0061】
またはトライボロジー的に許容されるその塩であり、
式中、Aは、
【0062】
【化15】
【0063】
であり、
はそれぞれ、同一または異なり、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、アルキルおよびアルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
およびRは、それぞれ独立して、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから選択され、
Yは、アルキル、アルコキシアルキル、ベンジル、および-R-R-Rからなる群から選択され、
は、アルキレンであり、
は、結合、アルキレン、-C(O)-、および-C(R)-からなる群から選択され、
は、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキレンオキシ、ヒドロキシ、およびアルコキシからなる群から選択され、
は、ヒドロキシであり、
mは、2~8の整数であり、
は、RまたはZであり、
は、R
【0064】
【化16】
【0065】
からなる群から選択され、Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルであり、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、アルキルおよびアルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
Zは、
【0066】
【化17】
【0067】
であり、
式中、XがRである場合、Xは、Zであり、
、W、W、W、W、およびW11は、それぞれ独立して、OまたはSであり、W、W、W、W、W、およびW11のうちの少なくとも1つは、Oである。
【0068】
一実施形態では、Rは、それぞれ、同一または異なり、C-C30アルキル、C-C30アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、C-C10アルキルおよびC-C10アルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換される。
【0069】
別の実施形態では、W、W、W、W、W、およびW11は、それぞれOである。
【0070】
別の実施形態では、Rはそれぞれ、同一または異なり、独立して、C-C10アルキルである。
【0071】
いくつかの実施形態では、mは2~5の整数である。特定の実施形態では、mは、2である。
【0072】
一実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、HおよびC-C10アルキルから選択される。別の実施形態では、Aの例それぞれについて、1つのRは、アルキルであり、RおよびRの残りの例は、Hである。さらなる実施形態では、Rが、アルキルである場合、このアルキルは、C-C10アルキルである。
【0073】
さらなる実施形態では、Xは、
【0074】
【化18】
【0075】
である。
【0076】
別の実施態様では、Xは、Rである。
【0077】
別の実施態様では、Yは、-R-R-Rである。さらなる実施形態では、Yは、-R-R-Rであり、Rは、アルキレンであり、Rは、-C(O)-であり、Rは、ヒドロキシまたはアルコキシである。
【0078】
一実施形態では、Rは、C-C10アルキルである。
【0079】
一実施形態では、Rは、それぞれ独立して、C-C30アルキルから選択される。別の実施形態では、Rは、それぞれ独立して、C-C10アルキルから選択される。別の実施態様では、Rは、それぞれ独立して、C-Cアルキルから選択される。特定の実施形態では、Rはそれぞれ、他のすべてのRと同じである。
【0080】
一実施形態では、Yは、C-C20アルキルである。
【0081】
一実施形態では、本発明は、式(IIa)の化合物
【0082】
【化19】
【0083】
またはトライボロジー的に許容されるその塩を供給し、
はそれぞれ、同一または異なり、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、アルキルおよびアルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
は、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから選択され、
Yは、アルキル、アルコキシアルキル、ベンジル、および-R-R-Rからなる群から選択され、
は、アルキレンであり、
は、結合、アルキレン、-C(O)-、および-C(R)-からなる群から選択され、
は、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキレンオキシ、ヒドロキシ、およびアルコキシからなる群から選択され、
は、ヒドロキシであり、
は、R
【0084】
【化20】
【0085】
からなる群から選択され、
は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルであり、ここで、前記アリールおよびアラルキルは、アルキルおよびアルケニルからそれぞれ独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
Zは、
【0086】
【化21】
【0087】
であり、
、W、W、W、W、W11、およびW14は、それぞれ独立して、OまたはSであり、W、W、W、W、W、W11、およびW14のうちの少なくとも1つは、Oである。
【0088】
一実施形態では、式Iの化合物は、以下から選択される。
【0089】
【表1-1】
【0090】
【表1-2】
【0091】
【表1-3】
【0092】
【表1-4】
【0093】
【表1-5】
【0094】
【表1-6】
【0095】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキル」ならびに本明細書で言及される他の基のアルキル部分(例えば、アルコキシ)は、直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素であってもよい。アルキルは、特に明記しない限り、好ましくは1~30個の炭素原子、例えば1~20個の炭素原子、または1~10個の炭素原子を含有し得る。アルキル基の代表例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ネオペンチル、2-エチルヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
本明細書で使用されるとき、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を意味する。特に明記しない限り、アルケニルは、好ましくは、2~30個の炭素原子、例えば2~20個の炭素原子、または2~10個の炭素原子を含み得る。例えば、用語「C-Cアルケニル」は、2~4個の炭素原子を含有するアルケニル基を意味する。アルケニルの代表例としては、エテニル、2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、3-ブテニル、4-ペンテニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、2-メチル-1-ヘプテニル、および3-デセニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
本明細書で使用されるとき、用語「置換」は、1個以上の水素原子が、それぞれ独立して、非水素置換基で置換されていることを指す。
【0098】
本明細書で使用されるとき、用語「アルコキシ」は、酸素原子を介して親分子部分に結合しているアルキル基を指す。
【0099】
本明細書で使用されるとき、用語「アルケニルオキシ」は、酸素原子を介して親分子部分に結合しているアルケニル基を指す。
【0100】
本明細書で使用されるとき、用語「アルコキシアルキル」は、-アルキレン-O-アルキル基を指す。
【0101】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキレン」は、メチレンまたはポリメチレン基、すなわち-(CH-を指し、ここでzは、1から30の正の整数である。
【0102】
本明細書で使用されるとき、用語「シクロアルキル」は、炭素原子および水素原子を含む非芳香族、単環式または多環式環を意味する。シクロアルキル基は、環がこれらの存在によって芳香族にされない限り、環内に1つ以上の炭素-炭素二重結合を有し得る。
【0103】
本明細書で使用されるとき、用語「シクロアルキルアルキル」は、少なくとも1個の炭素からなるアルキレンリンカー基を用いて親分子部分に結合しているシクロアルキル基を意味する。
【0104】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドロキシアルキル」は、R-R-基を指し、ここで、Rは、HO-であり、Rは、アルキレンである。
【0105】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドロキシアルキレンオキシ」は、R-R-R基を指し、ここで、Rは、HO-であり、Rは、アルキレンであり、Rは、-O-である。
【0106】
本明細書で使用されるとき、結合を横切って垂直に引かれるときの記号
【0107】
【化22】
【0108】
は、その基の結合点を示す。結合点は、典型的には、読者が結合点を迅速かつ明確に識別するのを助けるために、より大きい基についてはこの様式でのみ識別されることに留意されたい。
【0109】
本明細書で使用されるとき、句「反応性基」は、置換基の炭素原子を、求核性P-SH基、例えばジチオホスフェート中の硫黄原子に結合することができる、または置換基の炭素原子を、求核性P-OH、例えばホスフェート中の酸素原子に結合することができる、求電子性化学基を指す。このような反応性基は、当業者によって容易に認識される。本発明による好適な反応性基の例としては、ハロゲン化アルキル、トシレート、トリフレートおよびメシレートを含む活性化アルキルアルコール、エポキシド、ならびにアクリレート誘導体が挙げられる。特定の実施形態では、反応性基は、1-ブロモヘキサデカン、ヨウ化メチル、臭化ベンジル、ビニルブチルエーテル、アクリル酸エチル、1,2-エポキシドデカン、アクリル酸、1,2-エポキシデカン、および2-ヒドロキシエチルアクリレートから選択され得る。
【0110】
本明細書で使用されるとき、句「有効量」は、所望の効果を提供するのに十分な量を意味する。例えば、本発明の化合物は、潤滑剤組成物に組み込まれる場合、耐摩耗剤として有用である。したがって、潤滑剤組成物に組み込まれる場合、本発明の化合物の有効量は、本発明の化合物を含まない同じ潤滑剤組成物と比較して、本発明の化合物を含む潤滑剤組成物の耐摩耗特性を向上させる量であり得る。
【0111】
本明細書で使用されるとき、用語「油組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑性組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「完全配合潤滑剤組成物」、および「潤滑剤」は、同義の完全に互換的な用語とみなされ、主要量の基油と少量の添加剤組成物を含む完成した潤滑生成物を指す。本明細書で使用されるとき、「主要量」の基油および「少量」の添加剤組成物への言及は、潤滑性組成物が、全潤滑性組成物の重量%基準で、添加剤組成物の量より多い量の基油を含有することを意味する。特定の実施形態では、主要量の基油は、総潤滑性組成物の50~99.999重量%である。
【0112】
式Iの化合物の多くは、実質的に中性であるが、本発明はまた、式Iの化合物の塩基付加塩も企図する。本質的に酸性である式Iのこれらの化合物のトライボロジー的に許容される塩基塩を調製するための試薬として使用され得る化学塩基は、このような化合物と塩基塩を形成するものである。このような塩基塩としては、アルカリ金属陽イオン(例えば、カリウムおよびナトリウム)およびアルカリ土類金属陽イオン(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)などの陽イオン、アンモニウムまたはN-メチルグルカミン-(メグルミン)などのアミン付加塩、ならびにアルカノールアンモニウムおよびトライボロジー的に許容される有機アミンの他の塩基塩が挙げられるが、これらに限定されず、オクチルアミンおよびオレイルアミンなどのアルキルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、式Iの化合物の塩は、アミン塩ではない。
【0113】
本明細書で使用されるとき、句「トライボロジー的に許容される塩(複数可)」は、特に明記しない限り、本開示の化合物中に存在し得る酸性または塩基性基の塩を含む。当業者によって容易に認識されるように、トライボロジーは、相対運動における相互作用面の設計、摩擦、摩耗、および潤滑を扱う研究を定義する用語である(ベアリングまたはギアにおけるように)。トライボロジー的に許容される塩は、化合物のトライボロジー活性を無効にしたり妨害したりしない塩である。本質的に塩基性である本開示の化合物は、様々な無機酸および有機酸と様々な塩を形成することができる。このような塩基性化合物のトライボロジー的に許容される酸付加塩を調製するために使用され得る酸は、酸付加塩、すなわち、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモエート[すなわち1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)]塩などのトライボロジー的に許容される陰イオンを含有する塩を形成するものである。アミノ基などの塩基性部分を含む本開示の化合物は、上記の酸に加えて、様々なアミンとトライボロジー的に許容される塩を形成し得る。
【0114】
本開示の化合物は、式Iの化合物のすべての立体異性体(例えば、シスおよびトランス異性体)およびすべての光学異性体(例えば、RおよびSエナンチオマー)、特定の位置異性体、ならびにラセミ体、ジアステレオマー、およびこのような異性体の他の混合物が挙げられる。当業者は、このような異性体を容易に想像することができ、異性体は本発明の範囲内に含まれる。
【0115】
本開示の化合物および塩は、エノールおよびイミンの形態、ケトおよびエナミンの形態、ならびに幾何異性体、ならびにこれらの混合物を含む、いくつかの互変異性型で存在し得る。このような互変異性型は、すべて本開示の範囲内に含まれる。1つの互変異性体が記載されていても、本開示は、本化合物のすべての互変異性体を含む。
【0116】
本発明の化合物は、潤滑基油中の添加剤として使用されると企図される。本明細書で使用されるとき、用語「基油」は、American Petroleum Institute(API)カテゴリーグループのグループI-V油によって分類される油、ならびに動物油、植物油(例えばヒマシ油およびラード油)、石油、鉱物油、合成油、および石炭または頁岩由来の油を指す。米国石油協会は、これらの異なるベースストックタイプを次のように分類した:グループI、0.03重量パーセント超の硫黄、および/または90体積パーセント未満の飽和物、80~120の粘度指数;グループII、0.03重量パーセント以下の硫黄、および90体積パーセント以上の飽和物、80~120の粘度指数;グループIII、0.03重量パーセント以下の硫黄、および90体積パーセント以上の飽和物、120超の粘度指数;グループIV、全ポリアルファオレフィン。水素化処理ベースストックおよび触媒的脱ロウベースストックは、これらの低硫黄および芳香族化合物含有量のために、一般にグループIIおよびグループIIIカテゴリーに入る。ポリアルファオレフィン(グループIV基原料油)は、様々なアルファオレフィンから調製された合成基油であり、硫黄および芳香族を実質的に含まない。
【0117】
グループI、II、およびIIIは、鉱物油プロセス原料である。グループIV基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される、真の合成分子種を含有する。多くのグループV基油も真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、および/またはポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油のような天然に存在する油でもあり得る。グループIII基油は、鉱物油に由来するが、これらの流体が受ける厳しい加工のために、それらの物理的特性がPAOのようないくつかの真の合成物に非常に類似することに留意されたい。したがって、グループIII基油由来の油は、業界では合成流体と称されることがあり得る。
【0118】
本発明の化合物は、鉱物油もしくは合成油、動物油、植物油、またはこれらの混合物の形態で基油に添加することができる。一般に、パラフィン系およびナフテン系の両方の鉱物油ならびにそれらの混合物は、潤滑油としてまたはグリース媒体として用いることができる。前述の油のいずれかが基剤として使用されるグリースも考えられる。
【0119】
他の添加剤成分に加えて、本発明の化合物は、潤滑油に添加されて、少なくともSAE90または75W-85の粘度を有する完成した流体を形成することができる。約95~130の粘度指数が好ましい。これらの油の平均分子量は、約250から約800の範囲であり得る。
【0120】
潤滑剤がグリースとして使用される場合、潤滑剤は一般に、所望量の増粘剤、およびグリース配合物に含まれる他の添加剤成分を考慮した後、全グリース組成物のバランスをとるのに十分な量で使用される。増粘剤またはゲル化剤として多種多様な材料を使用することができる。これらは、得られるグリース組成物に所望の粘稠度を付与するのに十分な量のグリース形成量で潤滑ビヒクル中に分散されているカルシウム、またはステアリン酸リチウムまたはヒドロキシステアレートのような通常の金属塩または石鹸を含み得る。グリース配合物に用いることができる他の増粘剤は、表面改質粘土およびシリカなどの非石鹸増粘剤、アリール尿素、カルシウム錯体および類似の材料を含む。一般に、特定の環境内で必要な温度で使用した場合、溶融または溶解しないグリース増粘剤が用いられ得るが、他のすべての点で、グリースを形成するための炭化水素流体を増粘またはゲル化するために通常用いられる任意の材料が、本発明において使用され得る。
【0121】
合成油、またはグリースのためのビヒクルとして使用される合成油が、鉱物油より優先して、または鉱物油と合成油の混合物において所望される場合、様々な合成油が使用され得る。典型的な合成油には、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリデセン、シロキサンおよびシリコーン(ポリシロキサン)が含まれる。
【0122】
本発明は、主要量の潤滑性粘度の油またはそれから調製されたグリース、および少量の本発明の化合物を含む潤滑剤組成物を提供する。本発明の化合物は、潤滑剤組成物中に、全組成物の重量に対して、約0.001%~10%、0.01%~5%、0.01%~1.0%、0.5%~2.0%、および0.015%~約0.5%の量であり得る。いくつかの実施形態では、潤滑性組成物は、約0.01%~0.5%、約0.01~約0.4重量%、または約0.01~約0.3重量%、または約0.01~約0.2重量%含有することができる。
【0123】
上記に述べたように、本発明の化合物は、様々な機械部品および構成要素と共に使用するのに好適な潤滑剤組成物に容易に配合することができる。本発明の化合物を含む潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物がそうであるように、任意に1種以上の他の添加剤成分をさらに含むことができる。以下に開示される添加剤成分のリストは、網羅的なものではなく、本明細書に明示的に開示されていない添加剤成分は、当業者に周知であり、潤滑剤組成物にも含まれ得る。これらに限定するものではないが、本発明の潤滑剤組成物に使用することができる添加剤成分としては、酸化防止剤、追加の耐摩耗剤、腐食防止剤、清浄剤、極圧剤、粘度指数向上剤、および摩擦低減剤が挙げられる。
【0124】
一実施形態では、本発明の潤滑剤組成物は、本発明の化合物、ならびに酸化防止剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、清浄剤、極圧剤、分散剤、粘度指数向上剤、および摩擦調整剤からなる群から選択される少なくとも1種の追加の添加剤組成物を含む。
【0125】
本発明の化合物は、潤滑性粘度の油に直接組み込むことができる。あるいは、本発明の化合物は、他の潤滑剤添加剤と組み合わせて調製されて、潤滑剤添加剤組成物を形成することができる。一般に、潤滑剤添加剤組成物は、最終潤滑剤組成物の総重量に対する、潤滑剤添加剤パッケージの特定の重量%で潤滑性粘度の油にさらに組み込まれるであろう。選択された重量%は、一般に処理率と称され、潤滑剤添加剤組成物を含有する潤滑剤組成物は、一般に完成した流体と称される。
【0126】
一実施形態では、本発明は、本発明の化合物を含む潤滑剤添加剤組成物、および少なくとも1種の追加の添加剤成分を提供する。1種以上の追加の添加剤成分は、酸化防止剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、洗剤、極圧剤、粘度指数向上剤、および摩擦調整剤から選択することができる。
【0127】
酸化防止剤
酸化防止化合物は公知であり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、リン硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、またはそれらの混合物を含む。単一の酸化防止剤または2つ以上の組み合わせを使用することができる。
【0128】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、第二級ブチル基および/または第三級ブチル基を含んでいてもよい。フェノール基は、ヒドロカルビル基および/または第2の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換されていてもよい。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例には、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールまたは4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、または4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールを含む。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールとアルキルアクリレートとから誘導された付加生成物を含むことができ、アルキル基は、約1~約18、または約2~約12、または約2~約8、または約2~約6、または約4の炭素原子を含有し得る。
【0129】
有用な酸化防止剤は、ジアリールアミンおよび高分子量フェノールを含み得る。一実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有することができ、その結果、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて約5重量%以下の酸化防止剤を提供するのに十分な量で存在し得る。いくつかの実施形態では、酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンおよび約0.4~約2.5重量%の高分子量フェノールの混合物であり得る。
【0130】
硫化されて硫化オレフィンを形成することができる好適なオレフィンの例は、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセンまたはこれらの混合物を含む。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセンまたはこれらの混合物、ならびにこれらの二量体、三量体、および四量体が特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物およびブチルアクリレートなどの不飽和エステルであってもよい。
【0131】
別の種類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸およびそのエステルが含まれる。脂肪酸は、しばしば、植物油または動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸およびこれらのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、またはこれらの混合物が挙げられる。しばしば、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナッツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、またはこれらの混合物から得られる。脂肪酸および/またはエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合してもよい。
【0132】
1種以上の酸化防止剤は、潤滑性組成物の、約0重量%~約20重量%、または約0.1重量%~約10重量%、または約1重量%~約5重量%の範囲で存在し得る。
【0133】
耐摩耗剤
本発明の化合物は、耐摩耗剤として使用することができる。しかしながら、特定の実施形態では、潤滑剤添加剤組成物および潤滑剤組成物は、追加の耐摩耗剤(複数可)を含有することができる。追加の好適な耐摩耗剤の例には、これらに限定されないが、チオリン酸金属塩、ジアルキルジチオリン酸金属塩、リン酸エステルまたはその塩、リン酸エステル、ホスファイト、リン含有カルボン酸エステル、エーテル、またはアミド、硫化オレフィン、チオカルバメート含有化合物、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド、およびそれらの混合物が含まれる。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第1490460号により詳細に記載されている。ジアルキルジチオリン酸塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、または亜鉛であり得る。有用な耐摩耗剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などのチオホスフェートであり得る。
【0134】
追加の耐摩耗剤は、潤滑性組成物の総重量の、約0重量%~約15重量%、または約0.01重量%~約10重量%、または約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%の範囲で存在し得る。特定の実施形態では、追加の耐摩耗剤(複数可)は、アミン塩の形態であり、約1.0重量%以下、約0.5重量%以下、または約0.25重量%以下で存在する。他の実施形態では、追加の耐摩耗剤はアミン塩ではない。
【0135】
清浄剤
本潤滑剤組成物は、任意に、1つ以上の中性、低塩基性、または過塩基性清浄剤、またはこれらの混合物をさらに含んでもよい。好適な清浄剤基質には、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサレート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ-および/またはジ-チオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、ならびにメチレン架橋フェノールが含まれる。好適な清浄剤およびその調製方法は、米国特許第7,732,390号、およびその中で引用される参考文献を含む、多数の特許公報において、より詳細に記載されている。
【0136】
清浄剤基質は、これらに限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、またはそれらの混合物のような、アルカリ金属またはアルカリ土類金属で塩基化され得る。いくつかの実施形態では、清浄剤は、バリウムを含まない。好適な清浄剤は、石油スルホン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩、および長鎖モノ-またはジ-アルキルアリールスルホン酸を含むことができ、アリール基は、ベンジル、トリル、およびキシリルのうちの1つである。
【0137】
過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリまたはアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物または金属水酸化物を基質および二酸化炭素ガスと反応させることによって調製され得る。基質は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、または脂肪族置換フェノールのような酸である。
【0138】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論的量を超える、スルホン酸塩、カルボン酸塩、およびフェネートの金属塩などの金属塩に関する。このような塩は、100%超の変換レベルを有してもよい(すなわち、これらは、酸をその「標準」「中性」の塩に変換するのに必要な理論的量の金属の100%より多くを含み得る)。しばしばMRと略される「金属比」という表現は、既知の化学反応性および化学量論性による中性塩中の金属の化学当量に対する過塩基性塩中の金属の総化学当量の比を示すために使用される。正または中性塩では、金属比は、1であり、過塩基性塩では、MRは、1より大きい。そのような塩は、一般的には、過塩基性、高塩基性、または超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、またはフェノールの塩であり得る。
【0139】
過塩基性清浄剤は、1.1:1から、または2:1から、または4:1から、または5:1から、または7:1から、または10:1からの金属比を有してもよい。
【0140】
いくつかの実施形態では、清浄剤は、ギア、車軸、またはエンジンの錆を軽減または防止するために使用することができる。
【0141】
好ましい実施形態では、本発明の潤滑剤組成物に含まれる場合、エラストマーシールの機能寿命を延ばすために1種以上の清浄剤が使用され得る。エラストマーシールの機能寿命を延ばすための好適な清浄剤としては、スルホネートまたはフェネートを含むこれらの清浄剤が挙げられる。このような清浄剤の例としては、過塩基性または中性のカルシウムまたはマグネシウムスルホネート清浄剤、および過塩基性または中性のカルシウムまたはマグネシウムフェネート清浄剤が挙げられる。
【0142】
洗浄剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約8重量%、または約1重量%~約4重量%、または約4重量%超~約8重量%で存在し得る。
【0143】
分散剤
潤滑剤組成物は、任意選択で、1つ以上の追加の分散剤またはそれらの混合物をさらに含んでもよい。分散剤は、潤滑油組成物への混合前にそれらが灰形成金属を含有せず、潤滑剤への添加時にそれらが通常いかなる灰にも寄与しないため、しばしば無灰型分散剤として知られる。無灰型分散剤は、比較的高分子または量の炭化水素鎖に結合した極性基を特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例には、約350~約5000、または約500~約3000の範囲の数平均分子量のポリイソブチレン置換基を有するポリイソブチレンスクシンイミドが含まれ。スクシンイミド分散剤およびこれらの調製は、例えば、米国特許第7,897,696号および米国特許第4,234,435号に開示されている。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン、典型的にはポリ(エチレンアミン)から形成されたイミドである。
【0144】
いくつかの実施形態において、潤滑剤組成物は、約350~約5000、または約500~約3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導された少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、または他の分散剤と組み合わせて使用してもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、含まれる場合、ポリイソブチレン(PIB)は、50モル%を超える、60モル%を超える、70モル%を超える、80モル%を超える、または90モル%を超える末端二重結合の含有量を有し得る。そのようなPIBは、高反応性PIB(「HR-PIB」)とも称される。約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBは、本開示の実施形態における使用に好適である。従来の非高反応性PIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、または10モル%未満の二重結合含有量を有する。
【0146】
約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であり得る。このようなHR-PIBは、市販されているか、または米国特許第4,152,499号および米国特許第5,739,355号に記載されているような、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。前述の熱エン反応において使用される場合、HR-PIBは、増加した反応性のために、反応におけるより高い転換率、およびより少ない量の沈降物形成をもたらし得る。
【0147】
好適な分散剤の1つの種類は、マンニッヒ塩基であり得る。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、およびホルムアルデヒドのようなアルデヒドの縮合によって形成される物質である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0148】
好適な種類の分散剤は、高分子量エステルまたは半エステルアミドであり得る。
【0149】
好適な分散剤はまた、種々の薬剤のいずれかとの反応による従来の方法によって後処理することができる。これらの剤の中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、およびリン化合物がある。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、米国特許第8,048,831号は、いくつかの好適な後処理方法および後処理された生成物を記載している。
【0150】
存在する場合、分散剤は、潤滑油組成物の総重量に基づいて最大で約20重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。使用し得る分散剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、または約0.1重量%~約10重量%、または約3重量%~約10重量%、または約1重量%~約6重量%、または約7重量%~約12重量%であってもよい。いくつかの実施形態において、潤滑油組成物は、混合分散剤系を利用する。
【0151】
極圧剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意に、1つ以上の極圧剤を含有してもよい。油に可溶性である極圧(EP)剤は、硫黄およびクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、ならびにリンEP剤を含む。そのようなEP剤の例としては、塩素化ワックス;ジベンジルジスルフィド、二硫化ビス(クロロベンジル)、三硫化ジブチル、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、および硫化ディールス-アルダー付加物のような有機硫化物および多硫化物;硫化リンとテルペンチンまたはオレイン酸メチルとの反応生成物のようなリン硫化炭化水素;亜リン酸ジヒドロカルビルおよびトリヒドロカルビル、例えば、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジヘプチル、亜リン酸ジシクロヘキシル、亜リン酸ペンチルフェニルのようなリンエステル;亜リン酸ジペンチルフェニル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸ジステアリル、およびポリプロピレン置換亜リン酸フェニル;ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛およびバリウムヘプチルフェノール二酸のような金属チオカルバミン酸塩;例えば、ジアルキルジチオリン酸と酸化プロピレンとの反応生成物のアミン塩を含む、アルキルおよびジアルキルリン酸のアミン塩;ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0152】
一実施形態では、有機多硫化物は、S-3濃縮有機多硫化物である。本明細書で使用されるとき、句「S-3濃縮有機多硫化物」は、一硫化物または他の多硫化物種よりも多くの三硫化物種を含有する有機多硫化物を指す。いくつかの実施形態では、S-3濃縮有機多硫化物は、少なくとも50重量%の三硫化物、または少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも75%、または少なくとも80%の三硫化物を、主にS-2およびS-4多硫化物である残りの有機多硫化物と共に含有する。特定の実施形態では、S-3濃縮有機多硫化物は、ほぼ100%の三硫化物を含有する。いくつかの実施形態では、S-2:S-3:S-4多硫化物のモル比は、約10~30:50~80:10~30である。特定の実施形態では、S-3濃縮有機多硫化物は、それぞれ独立して、約2~約30個の炭素、または約2~約20個の炭素、または約2~約12個の炭素、または約3~約6個の炭素を有するヒドロカルビル基を有する。ヒドロカルビル基は、芳香族または脂肪族であり得るが、好ましくは脂肪族である。特定の実施形態では、ヒドロカルビル基は、アルキル基である。一実施形態では、S-3濃縮有機多硫化物は、少なくとも60%のジヒドロカルビル三硫化物を含む。他の実施形態では、全多硫化物の重量%による有機多硫化物は、約5重量%~約20重量%のS-2、約30重量%~約80重量%のS-3、および約5重量%~約50重量%のS-4である。好適なS-3濃縮有機多硫化物の例としては、米国特許第6,642,187号、米国特許第6,689,723号、または米国特許第6,489,271号に開示されているものが挙げられる。
【0153】
摩擦調整剤
本明細書における潤滑油組成物は、任意選択で1つ以上の追加の摩擦調整剤も含有し得る。好適な摩擦調整剤は、金属含有および金属非含有摩擦調整剤を含むことができ、これらに限定されないが、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、酸化アミン、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物およびオレフィン、ヒマワリ油および他の天然に存在する植物または動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールおよび1つ以上の脂肪族または芳香族カルボン酸のエステルまたは部分エステルなどを含むことができる。
【0154】
好適な摩擦調整剤は、直鎖、分岐鎖、もしくは芳香族ヒドロカルビル基、またはそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有することができ、飽和または不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素および水素または硫黄もしくは酸素のようなヘテロ原子で構成され得る。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であり得る。一実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノ-エステル、またはジ-エステル、または(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、または長鎖イミダゾリンであり得る。
【0155】
他の好適な摩擦調整剤は、有機、無灰(金属非含有)、窒素非含有有機摩擦調整剤を含み得る。このような摩擦調整剤は、カルボン酸と無水物とをアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み、一般に親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えばカルボキシルまたはヒドロキシル)を含んでもよい。有機無灰窒素非含有摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-およびトリ-エステルを含み得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0156】
アミン系摩擦調整剤は、アミンまたはポリアミンを含み得る。そのような化合物は、飽和もしくは不飽和、またはその混合物のいずれかの直鎖であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。好適な摩擦調整剤のさらなる例には、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが含まれる。そのような化合物は、飽和、不飽和のいずれか、またはその混合物の直鎖であるヒドロカルビル基を有し得る。それらは、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。例としては、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0157】
アミンおよびアミドは、それ自体として、または酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸塩、ホウ酸またはモノ-、ジ-またはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物もしくは反応生成物の形態で使用することができる。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号に記載されている。
【0158】
摩擦調整剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0重量%~約10重量%、または約0.01重量%~約8重量%、または約0.1重量%~約4重量%の量で存在してもよい。
【0159】
粘度指数改善剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意に、1種以上の粘度指数改善剤を含有してもよい。好適な粘度指数改善剤としては、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、またはこれらの混合物を挙げることができる。粘度指数向上剤は、星型ポリマーを含んでもよく、好適な例は、米国特許公開第2012/0101017A1号に記載されている。
【0160】
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意に、粘度指数改善剤に加えて、または粘度指数改善剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改善剤を含有してもよい。好適な分散剤粘度指数改善剤としては、官能化ポリオレフィン、例えばアシル化剤(例えば無水マレイン酸)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、またはアミンと反応したエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0161】
粘度指数改善剤および/または分散剤粘度指数改善剤の総量は、潤滑組成物の総重量に基づいて、約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、または約0.5重量%~約10重量%であり得る。
【0162】
特定の配合物についての様々な添加剤成分の有効量は容易に確かめることができるが、説明の目的のために代表的な有効量についてのこれらの一般的な指針を提供する。下記の量は、完成した流体の重量%で与えられる。
【0163】
【表2】
【0164】
本発明の化合物、およびこれを含む潤滑剤添加剤組成物は、自動車用ギア油または車軸油に使用することができる。そのような油の典型は、極端な圧力、負荷および温度条件下で作動する自動車のスパイラルベベルおよびウォームギア車軸油、高速、低トルクおよび低速、高トルクの両方の条件下で作動するハイポイドギア油である。
【0165】
本発明の化合物およびこれを含む潤滑剤添加剤組成物が使用され得る工業用潤滑用途としては、油圧油、工業用ギア油、滑り面機械油、循環油および蒸気タービン油、ガスタービン油、大型ガスタービンおよび航空機用ガスタービン用、動面油、ギア油、コンプレッサー油、ミスト油および工作機械用潤滑剤が挙げられる。乗用車用モーター油、大型ディーゼルエンジン油、船舶用エンジン油、機関車、および高速自動車用ディーゼルエンジンなどのエンジン油もまた企図される。
【0166】
機能性流体はまた、本発明の化合物およびこれを含む潤滑剤添加剤組成物から調製することができる。これらの流体には、手動トランスミッション流体、自動トランスミッション流体、無段トランスミッション流体、パワーステアリング流体およびパワーブレーキ流体などの自動車用流体が含まれる。
【0167】
本発明の化合物はまた、自動車用、工業用、および航空用グリースなどのグリース、および自動車シャシ潤滑剤に組み込むことができる。
【0168】
本発明はまた金属表面を潤滑する方法を提供する。本発明の潤滑剤組成物を用いて金属表面を潤滑することは、稼働する際、金属表面間の磨耗を低減することができる。一実施形態では、潤滑される金属表面は、機械部品であり得る。機械部品は、車軸、差動、エンジン、手動トランスミッション、自動トランスミッション、無段トランスミッション、クランクシャフト、クラッチ、油圧装置、工業用ギア、滑り面装置、およびタービンを含むことができる。
【0169】
本発明はさらに、ドライブライン、工業用または金属加工装置を本発明の化合物を含む潤滑剤組成物で潤滑することを含む、ドライブライン、工業用または金属加工装置を潤滑する方法を提供する。
【0170】
シール
シールは、装置内の流体または潤滑剤を維持するために、エンジン、ギアアセンブリ、およびトランスミッションを含む多数の機械の設計および製造に使用されている。機械の故障は表面の疲労だけではなく、潤滑の問題によっても引き起こされる。このように、シールは、潤滑の喪失を低減し、汚染物質の侵入を低減し、装置の実行時間を増大させるのに重要な役割を果たす。シールは潤滑剤と接触するため、特定の操作条件下では弾力性を失い、脆くなり得る。多くの場合、シールの劣化速度は潤滑剤中に存在する添加剤によって影響を受ける。シールは、典型的には、ニトリルゴム、シリコーン、エチレンアクリレート、フルオロエラストマー、およびポリアクリレートを含むポリマー材料製である。エラストマーシールの機能寿命を延ばすと、機械の磨耗とダウンタイムを低減し、したがって生産性と機械の寿命を向上させることができる。本発明は、潤滑性または機能性流体組成物と接触するエラストマーシールの機能寿命を延ばす方法を提供し、この方法は、シールを有効量の本発明の潤滑性組成物と接触させることを含む。シールの標準試験は、静的および動的両方の摩耗および耐久性に関して、当該技術分野では周知である。標準試験方法論は、当業者によって容易に確認可能である。
【0171】
本発明の特定の実施形態が本明細書で個々に説明されている場合があるが、任意の一実施形態を任意の他の実施形態と組み合わせることができ、そのような組み合わせも本発明の範囲内であることを当業者は理解する。
【0172】
合成スキーム
本発明の化合物は、当業者にとって一般的に既知の合成方法を用いて、そしてより具体的には、各々が参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、2015年8月19日に出願された米国特許出願第14/830,719号、および2016年5月24日に出願された米国特許出願第15/163,481号に記載されているものなどの一般的合成スキームを用いて調製することができる。
【0173】
本発明の特定の化合物は、以下の一般的スキームを用いて調製することができる。
【0174】
【化23】
【0175】
特定の例において、化合物の合成は、位置異性体の生成をもたらすことができる。例えば、第一級および第二級アルコールは両方とも、以下のような単一の反応によって形成することができる。
【0176】
【化24】
【0177】
【化25】
【0178】
【化26】
【0179】
【化27】
【0180】
上記のスキームに示された方法によって調製される化合物は、特定の反応生成物を濃縮するために調製することができる。しかしながら、特定の実施形態では、反応生成物は、生成物の混合物である。例えば、スキーム2に記載される方法の反応生成物は、P2aとP3a生成物の混合物であり得る。同様に、スキーム4からの反応生成物は、P5a、P6a、およびP7a生成物のうちの1つ以上の混合物であり得る。同様に、いくらかの量の反応物が反応生成物中に存在し得る。当業者は、これらの方法から生成される化合物、および生じ得る混合物を容易に確認することができる。単一反応生成物が望まれる場合、当業者は、このような反応生成物を精製するために日常的かつ従来の方法を用いることができる。上記のものなどの方法から生じる精製生成物および混合物は、本発明の範囲内である。
【0181】
下記の中間体および実施例に示される構造は、記載された特定の反応で生成される最も豊富な異性体の構造である。当業者は、上記のエポキシド付加反応およびそれに類似した反応が第二級アルコール(P1a)として化合物を生成することを認識し理解している。しかしながら、同じエポキシド付加反応は、いくらかの量の第一級アルコール(P1b)を形成することがある。したがって、エポキシド付加反応の得られる生成物は、位置異性体の混合物であり得る。簡略化するために、第二級アルコールおよびそれからの反応生成物のみを以下の中間体および実施例に示す。しかしながら、これらのタイプの反応の結果として、中間体および実施例のすべての位置異性体は本発明の範囲内にある。
【0182】
中間体と実施例
すべての中間体および実施例の存在は、31P NMRによって確認することができ、示されたところで確認された。
【0183】
中間体
中間体P1-Aの合成:O、O-ビス(4-メチルペンタン-2-イル)S-水素ホスホロチオエート(0.25モル)を40℃に加熱し、プロピレンオキシド(0.25モル)をゆっくりと添加して、反応温度を50℃以下に維持する。次いで反応混合物を50℃で30分間加熱する。中間体P1-Aが反応生成物である。
【0184】
【化28】
【0185】
中間体P1-Bの合成:P1-Bは、O、O-ビス(4-メチルペンタン-2-イル)S-水素ホスホロチオエートをO、O-ビス(イソプロピル)S-水素ホスホロチオエートに置き換えることを除いて、P1-Aと同様のプロセスで作製することができる。中間体P1-Bが反応生成物である。
【0186】
【化29】
【0187】
中間体P1-Cの合成:P1-Cは、O、O-ビス(4-メチルペンタン-2-イル)S-水素ホスホロチオエートをO、O-ビス(2-エチルヘキシル)S-水素ホスホロチオエートに置き換えることを除いて、P1-Aと同様のプロセスで作製することができる。中間体P1-Cが反応生成物である。
【0188】
【化30】
【0189】
中間体P1-Dの合成:P1-Dは、O、O-ビス(4-メチルペンタン-2-イル)S-水素ホスホロチオエートをO、O-ビス(イソブチル)S-水素ホスホロチオエートに置き換えることを除いて、P1-Aと同様のプロセスで作製することができる。中間体P1-Dが反応生成物である。
【0190】
【化31】
【0191】
中間体P3-Aの合成:磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコ中で、P1-A(1.68モル)をO、O-ジイソプロピルS-水素ホスホロチオエート(0.84モル、Cheminovaが供給するものとして使用)と混合する。反応内容物を減圧下(10mmHg)90℃に加熱する。反応を通して、イソプロパノールを留去し、別の冷却容器に捕集する。6.5時間後、反応内容物を10℃に冷却し、プロピレンオキシド(0.84モル、Sigma Aldrich)を撹拌反応に45分間かけてゆっくり添加した。P3-Aが反応生成物である。
【0192】
【化32】
【0193】
中間体P3-B、P3-C、およびP3-Dの合成:P3-B、P3-C、およびP3-Dは、P1-AをP1-B、P1-C、およびP1-Dでそれぞれ置き換えることを除いて、P3-Aと同様に調製することができる。
【0194】
【化33】
【0195】
中間体P4-Aの合成:中間体P3-Aを上記のように調製する。反応に、O、O-ジイソプロピルS-水素ホスホロチオエート(376g、1.76モル、Cheminovaが供給するものとして使用)を添加し、反応混合物を90℃および10mmHgの圧力で6時間加熱して、その後室温に冷却する。P4-Aが反応生成物である。
【0196】
【化34】
【0197】
中間体P4-B、P4-C、およびP4-Dの合成:P4-B、P4-C、およびP4-Dは、P3-AをP3-B、P3-C、およびP3-Dでそれぞれ置き換えることを除いて、P4-Aと同様に作製することができる。
【0198】
【化35】
【0199】
中間体P7-Aの合成:P3-A(0.4モル)を、O、O-ジイソプロピルS-水素ホスホロチオエート(0.2モル、Cheminovaが供給するものとして使用)と混合し、反応混合物を90℃および10mmHgの圧力で6時間加熱して、その後室温に冷却する。P7-Aが反応生成物である。
【0200】
【化36】
【0201】
中間体P7-B、P7-C、およびP7-Dの合成:P7-B、P7-C、およびP7-Dは、P3-AをP3-B、P3-C、およびP3-Dでそれぞれ置き換えることを除いて、P7-Aと同様に調製することができる。
【0202】
【化37】
【実施例
【0203】
実施例1.
【0204】
【化38】
【0205】
磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコ中で、中間体P1-A(1.68モル)をO、O-ジイソプロピルS-水素ホスホロチオエート(0.84モル、Cheminovaが供給するものとして使用)と混合する。反応内容物を減圧下(10mmHg)90℃に加熱する。反応を通して、イソプロパノールを留去し、別の冷却容器に捕集する。6.5時間後、反応内容物を10℃に冷却し、プロピレンオキシド(0.84モル、Sigma Aldrich)を撹拌反応に45分間かけてゆっくり添加する。この時点で、O、O-ジイソプロピルS-水素ホスホロチオエート(1.76モル、Cheminovaが供給するものとして使用)を添加し、反応混合物を90℃および10mmHgの圧力で6時間加熱して、その後室温に冷却する。次にアクリル酸エチル(2.7モル、Dow Chemical)を反応に添加し、温度を2時間にわたり70℃にする。続いて、アクリル酸エチルがもはやコールドトラップ中に留出しなくなるまで、反応物を80℃にして100mmHgの真空を適用する。
【0206】
実施例2.
【0207】
【化39】
【0208】
中間体P3-A(0.4モル)を、O、O-ジイソプロピルS-水素ホスホロチオエート(0.2モル、Cheminovaが供給するものとして使用)と混合し、反応混合物を90℃および10mmHgの圧力で6時間加熱して、その後室温に冷却する。次にアクリル酸エチル(0.2モル、Dow Chemical)を反応に添加し、温度を2時間にわたり70℃にする。続いて、アクリル酸エチルがもはやコールドトラップ中に留出しなくなるまで、反応物を80℃にして100mmHgの真空を適用する。
【0209】
実施例3.
【0210】
【化40】
【0211】
中間体P4-A(0.2モル)を、アクリル酸(0.19モル)と混合し、反応を70℃で2時間撹拌し続けた後、10mmHgの真空を適用してあらゆる残留揮発物を除去する。
【0212】
実施例4.
【0213】
【化41】
【0214】
中間体P7-A(0.11モル)を、アクリル酸(0.1モル)と混合し、反応を70℃で2時間撹拌し続けた後、10mmHgの真空を適用してあらゆる残留揮発物を除去する。
【0215】
実施例5.
【0216】
【化42】
【0217】
実施例5の化合物を、P4-AをP4-Bに置き換えることを除いて、実施例3と同様に調製する。
【0218】
実施例6.
【0219】
【化43】
【0220】
実施例6の化合物を、P7-AをP7-Bに置き換えることを除いて、実施例4と同様に調製する。
【0221】
実施例7.
【0222】
【化44】
【0223】
実施例7の化合物を、P1-AをP1-Bに置き換えることを除いて、実施例1と同様に調製する。
【0224】
実施例8.
【0225】
【化45】
【0226】
実施例8の化合物を、P3-AをP3-Bに置き換えることを除いて、実施例2と同様に調製する。
【0227】
実施例9.
【0228】
【化46】
【0229】
実施例9の化合物を、P4-AをP4-Cに置き換えることを除いて、実施例3と同様に調製する。
【0230】
実施例10.
【0231】
【化47】
【0232】
実施例10の化合物を、P7-AをP7-Cに置き換えることを除いて、実施例4と同様に調製する。
【0233】
実施例11.
【0234】
【化48】
【0235】
実施例11の化合物を、P1-AをP1-Cに置き換えることを除いて、実施例1と同様に調製する。
【0236】
実施例12.
【0237】
【化49】
【0238】
実施例12の化合物を、P3-AをP3-Cに置き換えることを除いて、実施例2と同様に調製する。
【0239】
実施例13.
【0240】
【化50】
【0241】
実施例13の化合物を、P4-AをP4-Dに置き換えることを除いて、実施例3と同様に調製する。
【0242】
実施例14.
【0243】
【化51】
【0244】
実施例14の化合物を、P7-AをP7-Dに置き換えることを除いて、実施例4と同様に調製する。
【0245】
実施例15.
【0246】
【化52】
【0247】
実施例15の化合物を、P1-AをP1-Dに置き換えることを除いて、実施例1と同様に調製する。
【0248】
実施例16.
【0249】
【化53】
【0250】
実施例16の化合物を、P3-AをP3-Dに置き換えることを除いて、実施例2と同様に調製する。
【0251】
実施例17.
【0252】
【化54】
【0253】
実施例17の化合物を、アクリル酸エチルをアクリル酸メチルに置き換えることを除いて、実施例1と同様に調製する。
【0254】
実施例18.
【0255】
【化55】
【0256】
実施例18の化合物を、アクリル酸エチルをアクリル酸メチルに置き換えることを除いて、実施例2と同様に調製する。
【0257】
実施例19.
【0258】
【化56】
【0259】
実施例19の化合物を、アクリル酸エチルをアクリル酸メチルに置き換えることを除いて、実施例7と同様に調製する。
【0260】
実施例20.
【0261】
【化57】
【0262】
実施例20の化合物を、アクリル酸エチルをアクリル酸メチルに置き換えることを除いて、実施例8と同様に調製する。
【0263】
実施例21.
【0264】
【化58】
【0265】
実施例21の化合物を、アクリル酸エチルをアクリル酸メチルに置き換えることを除いて、実施例11と同様に調製する。
【0266】
実施例22.
【0267】
【化59】
【0268】
実施例22の化合物を、アクリル酸エチルをアクリル酸メチルに置き換えることを除いて、実施例12と同様に調製する。
【0269】
実施例23.
【0270】
【化60】
実施例23の化合物を、アクリル酸エチルをアクリル酸メチルに置き換えることを除いて、実施例15と同様に調製する。
【0271】
実施例24.
【0272】
【化61】
【0273】
実施例24の化合物を、アクリル酸エチルをアクリル酸メチルに置き換えることを除いて、実施例16と同様に調製する。
【0274】
実施例25.アミンカルボン酸塩
実施例3の化合物を、アミン含有化合物、例えばオクチルアミンまたはオレイルアミンで、TAN=TBNのような処理速度で処理して、アミンカルボン酸塩を生成することができる。実施例3の化合物は、撹拌しながら好適な反応容器に添加することができる。これに、発熱現象を制御するように、アミン含有化合物をゆっくり添加することができる。
【0275】
実施例26.
【0276】
【化62】
【0277】
中間体P1-Aを、O、O-ビス(4-メチルペンタン-2-イル)S-水素ホスホロチオエートをビス(4-メチルペンタン-2-イル)リン酸水素に置き換えることを除いて、上記のように調製する。磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコ中で、反応生成物(1.68モル)をO、O-ジイソプロピルS-水素ホスホロチオエート(0.84モル、Cheminovaが供給するものとして使用)と混合する。反応内容物を減圧下(10mmHg)90℃に加熱する。反応を通して、イソプロパノールを留去し、別の冷却容器に捕集する。6.5時間後、反応内容物を10℃に冷却し、プロピレンオキシド(0.84モル、Sigma Aldrich)を撹拌反応に45分間かけてゆっくり添加する。この時点で、O、O-ジイソプロピルS-水素ホスホロチオエート(1.76モル、Cheminovaが供給するものとして使用)を添加し、反応混合物を90℃および10mmHgの圧力で6時間加熱して、その後室温に冷却する。次にアクリル酸エチル(2.7モル、Dow Chemical)を反応に添加し、温度を2時間にわたり70℃にする。続いて、アクリル酸エチルがもはやコールドトラップ中に留出しなくなるまで、反応物を80℃にして100mmHgの真空を適用する。
【0278】
実施例27.
【0279】
【化63】
【0280】
中間体P3-Aを、O、O-ジイソプロピルS-水素ホスホロチオエートをビス(4-メチルペンタン-2-イル)リン酸水素に置き換えることを除いて、上記のように調製する。生成物(0.4モル)を、O、O-ジイソプロピルS-水素ホスホロチオエート(0.2モル、Cheminovaが供給するものとして使用)と混合し、反応混合物を90℃および10mmHgの圧力で6時間加熱して、その後室温に冷却する。次にアクリル酸エチル(0.2モル、Dow Chemical)を反応に添加し、温度を2時間にわたり70℃にする。続いて、アクリル酸エチルがもはやコールドトラップ中に留出しなくなるまで、反応物を80℃にして100mmHgの真空を適用する。
【0281】
実施例28.
【0282】
【化64】
【0283】
P3-Aを、O、O-ジイソプロピルS-水素ホスホロチオエートをビス(4-メチルペンタン-2-イル)リン酸水素に置き換えることを除いて、上記のように調製する。反応生成物に、O、O-ジイソプロピルS-水素ホスホロチオエート(1.76モル、Cheminovaが供給するものとして使用)を添加し、反応混合物を90℃および10mmHgの圧力で6時間加熱して、その後室温に冷却する。反応生成物(0.2モル)を、アクリル酸(0.19モル)と混合し、反応を70℃で2時間撹拌し続けた後、10mmHgの真空を適用してあらゆる残留揮発物を除去する。
【0284】
実施例29.
【0285】
【化65】
【0286】
実施例29の化合物を、アクリル酸エチルをアクリル酸(0.1モル)に置き換えることを除いて、実施例27と同様に調製し、反応を70℃で2時間撹拌し続けた後、10mmHgの真空を適用してあらゆる残留揮発物を除去する。
【0287】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考察および本明細書に開示および示唆された実施形態の実施から当業者に明らかになるであろう。本明細書および実施例が、例示的なものにすぎず、本開示の真の範囲および趣旨は以下の特許請求の範囲によって示されるものとみなされることが意図される。