(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】飲料前駆体
(51)【国際特許分類】
A23F 3/16 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A23F3/16
(21)【出願番号】P 2019537089
(86)(22)【出願日】2017-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2017080125
(87)【国際公開番号】W WO2018127325
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-09-23
(32)【優先日】2017-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521193094
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マンスール・アハメド・アンサリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ポール・オーメロッド
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ジェスクマール・ラジャパンディアン
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-076046(JP,A)
【文献】特開2014-097023(JP,A)
【文献】国際公開第2006/085710(WO,A1)
【文献】特開平06-296457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00-3/42
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉粒子及びバインダーを含む多孔質茶顆粒であって、
・前記茶葉粒子の少なくとも50質量%が、100μmから300μmの粒子径を有し;
・前記バインダーが、茶固体を含む茶ベースのバインダーであり;
・前記茶顆粒が乾燥質量1から40質量%の量でバインダーを含み;及び
・前記多孔質茶顆粒が、350μm超のD[4,3]を有
し、
・100μmから300μmの粒子径を有する前記茶葉が、紅茶葉である、多孔質茶顆粒。
【請求項2】
前記バインダーが茶抽出物又は茶搾り汁である、請求項1に記載の多孔質茶顆粒。
【請求項3】
前記茶顆粒が、乾燥質量10から25質量%の量でバインダーを含む、請求項1又は2に記載の多孔質茶顆粒。
【請求項4】
前記茶葉粒子が、すりつぶした茶葉粒子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の多孔質茶顆粒。
【請求項5】
前記多孔質茶顆粒が、450μm超のD[4,3]を有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載の多孔質茶顆粒。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の多孔質茶顆粒を含む、飲料前駆体。
【請求項7】
前記飲料前駆体が、茶葉を更に含み、前記茶葉の少なくとも90質量%が-5+30メッシュの粒子径を有する、請求項
6に記載の飲料前駆体。
【請求項8】
茶葉に対する多孔質茶顆粒の質量比が5:1から1:5である、請求項
7に記載の飲料前駆体。
【請求項9】
浸出用パックに詰められる、請求項
6から
8のいずれか一項に記載の飲料前駆体。
【請求項10】
1gから4gの質量を有する、請求項
6から
9のいずれか一項に記載の飲料前駆体。
【請求項11】
多孔質茶顆粒の製造方法であって、以下の工程:
(a)茶葉を供給する工程;
(b)前記茶葉の少なくとも50質量%が、100から300μmの粒子径を有するように前記茶葉をすりつぶす及び/又はふるう工程;
(c)工程(b)で得られた前記茶葉とバインダーを含む混合物を形成する工程;
(d)低せん断造粒により、前記混合物から多孔質顆粒を形成する工程;
を含み、前記多孔質茶顆粒が、350μm超のD[4,3]を有し、前記バインダーが、茶固体を含む茶ベースのバインダーであ
り、
100μmから300μmの粒子径を有する前記茶葉が、紅茶葉である、方法。
【請求項12】
工程(c)及び工程(d)が同時に行われる、請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の多孔質茶顆粒が、茶葉と組み合わせられ、前記茶葉の少なくとも90質量%が-5+30メッシュの粒子径を有する、飲料前駆体の製造方法。
【請求項14】
前記飲料前駆体が浸出用パックに包装される、請求項1
3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶ベースの飲料を準備するための飲料前駆体に関する。特に本発明は、そのような前駆体の使用のための茶顆粒に関する。
【背景技術】
【0002】
茶は、何世紀もの間消費されてきて、先進国及び発展途上国両方において人気である。水の次に、茶は世界で最も広く消費されている飲料である。茶の人気は様々な要素によって影響される:一般に健康的であるとみなされ、未処理の水に替わり、安全であり得、リラックス及び精神的敏捷性のような利益と関連し、広く許容可能な味である。
【0003】
茶の健康利益は、第一に、高い濃度のポリフェノールの存在による。紅茶及び緑茶の両者はポリフェノールが豊富であり、カテキン類、テアフラビン類、及びテアルビジン類を含み得る。
【0004】
茶ベースの飲料は、慣習的に、温水中に茶葉を浸出させ、使用済みの茶材料から浸出液を分離することによって作られる。茶ポリフェノールは、浸出液の感覚特性に貢献すると信じられている。残念ながら、茶ポリフェノールの相当な割合が、浸出液中に放出されず、それ故、使用済みの茶材料と共に捨てられる。それ故、改善された浸出性能を有する飲料前駆体を生産するための余地がある。
【0005】
IN187547(Hindustan Lever Limited)は、砂糖ベースの添加剤と顆粒の粉茶の方法に関し、茶葉のような均一な生産物を得る。慣習的なインドの方法で準備された(3分間45gのヤシ糖と共に、1.2リットルの水を沸騰させ、7.75gの適切な茶サンプルを加え、更に15分間沸騰させる)場合に、サンプルが感覚刺激特性(味、舌触り、茶特性など)を有し、標準的なパック茶から得られるものに相当すると言われるが、生産物の浸出性能は開示されていない。IN187547中の顆粒茶生産物が、バインダーとして、30から80質量%の量で、ヤシ糖(伝統的な非遠心分離のサトウキビ糖タイプ)を含む。それ故、この顆粒生産物は、インド市場では適切である可能性があるが、甘くない茶飲料が好まれる市場では適切でない。更に、バインダーが砂糖豊富(ヤシ糖の主要成分が、スクロース、グルコース、フルクトース及び水である)であるため、バインダー自体及び生成する顆粒両方が、吸湿しやすく、それ故、大スケールでの処理が難しい。例えば、顆粒は、生産ラインの操作を妨げ、又は機械の故障を引き起こしさえする、固体の塊に凝集する可能性がある。
【0006】
今日の健康を意識している消費者は、多量の砂糖を含む生産物を求めない。更には、消費者は、ますます、例えば天然原料のみを含む生産物の、「クリーンラベル(clean lavel)」生産物を望む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
我々は、浸出性能が向上した飲料前駆体を供給し、飲料前駆体が(過剰な甘さなどの)飲料への望まない風味を供給せず、天然原料のみを含む、必要がまだあると認識している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の態様において、本発明は茶葉粒子及びバインダーを含む多孔質茶顆粒に関し、:
・茶葉粒子の少なくとも50質量%が100から300μmの粒子径を有し;
・バインダーが、茶固体を含む茶ベースのバインダーであり;
・茶顆粒が、乾燥質量1から40質量%の量でバインダーを含み;及び
・多孔質顆粒が、350μm超のD[4,3]を有する。
【0010】
消費者は、しばしば速い浸出割合及び濃い液色での茶の好みがある。本発明の目的の一つは、消費者が、より少ない量茶材料を使用して、及び/又は従来の茶葉と比較して、より短い準備時間を必要とする飲料を作ることを可能にすることである。
【0011】
理論に縛られることを望むものではないが、発明者は、構造成分及び従来の茶葉の体積比に対する低い表面積が、その浸出性能を制限していると信じている。茶葉の粒子径を減少させることは、構造障壁を減少させること、及び体積比に対する表面積を増大させることによって、浸出性能を向上すると考えられる。しかしながら、単に小さい葉粒子の使用(又は、従来の混合物に小さい葉粒子を組み込むこと)は、いくつかの理由で好ましくない。第一に、消費者は、典型的に、小さい葉粒子を劣っている質の茶と関連付ける。第二に、小さい葉粒子は、浸出液に悪い影響を与え得る(例えば、増大する濁り)。更に、小さい葉粒子は、ティーバッグに組み込まれた際、(増大するバッグ変更などの)技術的な変化を引き起こし得る。本発明の多孔質顆粒は、小さい葉粒子と関連付けられる典型的な悪い態様を制限する径でありながら、浸出性能を向上させた。
【0012】
第二の態様において、本発明は、発明の第一の態様の多孔質茶顆粒を含む飲料前駆体に関する。そのような飲料前駆体は、消費者が、例えば従来の茶葉と比較した際に、より短い浸出時間を必要とするなど、効率的な方法で飲料を作ることを可能にする。加えて又は代わりに、飲料前駆体は、例えば、従来の茶葉と比較した際に、特定の浸出性能に達するのに必要な飲料前駆体の量を減少させることを可能にするなど、より経済的になる可能性がある。
【0013】
第三の態様において、本発明は、多孔質茶顆粒の製造方法に関し、以下の工程:
(a)茶葉を供給する工程;
(b)茶葉の少なくとも50質量%が、100から300μmの粒子径を有するように茶葉をすりつぶす及び/又はふるう工程;
(c)工程(b)で得られた茶葉及びバインダーを含む混合物を形成する工程;
(d)低せん断造粒により混合物から多孔質顆粒を形成する工程;
を含み、多孔質茶顆粒は350μm超のD[4,3]を有し、バインダーが茶固体を含む茶ベースのバインダーである。
【0014】
方法は好ましくは、本発明の第一の態様の多孔質茶顆粒の製造に使用される。工程(c)及び工程(d)は別々又は同時に行われることが可能であることを注意しておくべきである。方法の効率性の観点から、工程(c)及び工程(d)は同時に行われることが好まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明は、添付する図を参照して記載される:
【
図3】動的に浸している間の、ティーバック中の茶顆粒の浸出曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
茶
本発明の目的のための「茶」はカメリアシネンシス変種シネンシス(Camellia sinensis var. sinensis)及び/又はカメリアシネンシス変種アッサミカ(Camellia sinensis var. assamica)からの材料を意味する。用語「茶葉」は、非浸出(例えば、溶媒抽出工程に供されていない)形態での茶植物からの、葉材料及び/又は葉柄材料を意味する。茶葉は、30質量%未満の水分含有量に乾燥される。典型的に、茶葉は1から10質量%の水分含有量を有する。
【0017】
茶葉粒子
茶葉粒子は、緑茶葉、紅茶葉、又はウーロン茶葉を含み得る。それらはまた、1以上のこれらのタイプの茶葉混合物を含んでもよい。「緑茶葉」は実質上発酵させていない茶葉を意味する。「紅茶葉」は実質上発酵させた茶葉を意味する。「ウーロン茶葉」は部分的に発行させた茶葉を意味する。「発酵」は、特定の内因性の酵素及び基質が、一緒にもたらされた場合、茶が受ける酸化及び加水分解工程を意味する。この工程の間に、葉内の無色のカテキン類が、黄橙から暗褐色のポリフェノール基質の複合混合物に変化する。
【0018】
国又は地域の文化が、しばしば、茶に関して消費者の好みを決定する。例えば、緑茶飲料は、中国及び日本で何百年の間、消費されてきた一方、ヨーロッパ及びインドでは紅茶飲料がより人気である。
【0019】
紅茶を消費する従来の地域の消費者は、しばしば、速い浸出割合及び濃い液色での茶の好みがある。茶顆粒が、この消費者のニーズを満たす、飲料前駆体を供給するのに役立つためには、茶葉粒子が紅茶葉粒子であることが好まれる。
【0020】
近年では、緑茶内に存在する化合物(特にカテキン類などのフラバノール類)の潜在的な健康利益への相当な関心がある。茶顆粒が、そのような利益を与える助けとなるためには、茶葉粒子が緑茶葉粒子であることが好まれる。
【0021】
必然的に、消費者の一部は、両者の最高のものを望むだろう。それ故、茶顆粒は紅茶葉粒子及び緑茶葉粒子の混合物を含み得ることも予想される。
【0022】
茶葉粒子の少なくとも50質量%が100から300μmの粒子径を有する。好ましくは、茶粒子の少なくとも65質量%がこの粒子径を有し、より好ましくは、茶粒子の少なくとも80質量%がこの粒子径を有し、更に一層好ましくは、茶粒子の少なくとも90質量%がこの粒子径を有し、最も好ましくは、茶粒子の少なくとも95質量%がこの粒子径を有する。この粒子径は様々な方法で達成され得る。例えば、茶葉を適切な径にすりつぶすこと又は製粉、及び/又は粒子径により茶葉を選別することによる。
【0023】
特定の粒子径を有する粒子の質量割合は、粒子径により茶を画分に選別すること(例えば、ふるい)及びその後、画分の重さを量ることにより決定され得る。粒子径決定の際、茶葉粒子は乾燥状態であり、30質量%未満(典型的には1から10質量%)の水分含有量である。
【0024】
茶葉は、通常の製造方法の結果として、ある範囲の粒子径を有する材料を含む。確かに、茶葉は、典型的には、様々な等級(例えば、ホール葉、ブロークン、ファニングス、ダスト)に選別され、その後競売で売られる。茶選別の一つの方法が、粒子径による。例えば、茶葉は、様々な等級が保持され、収集された、一連の振動するふるいを通過させられてもよい。100から300μの粒子径を有する茶葉粒子は、この方法で分離され得る。例えば、48メッシュ(297μm)のTylerメッシュ径を有するふるいを通過し、及び150メッシュ(105μm)のTylerメッシュ径を有するふるいによって保持される粒子が適切な粒子径を有する。
【0025】
茶葉粒子の50%までが、100から300μmの範囲内に収まらない粒子径を有し得る。大抵、そのような茶粒子は100μm未満の粒子径を有する可能性があるのは、すりつぶし及び/又はふるい後の、極めて小さい粒子を取り除くことは不便であるためで、そのような小さな粒子は、商業価値を有しない傾向がある。しかしながら、理論に縛られることを望むものではないが、我々は、茶顆粒を温水中に浸出させた際、一部の顆粒の分解が起こり得ると信じている。それ故、100μm未満の粒子径を有する多量の粒子は、これらが、茶こし器又は浸出用パックのどちらかによって保持されず、それ故望まない濁り及び/又は浸出液への沈殿をもたらすため、望ましくない。それ故、茶顆粒は、30質量%未満、より好ましくは20質量%未満、更に一層好ましくは10質量%未満、最も好ましくは5質量%未満の量で100μm未満の粒子径を有する茶葉粒子を含むことが好まれる。
【0026】
理論に縛られることを望むものではないが、我々は、300μm超の粒子径を有する茶葉粒子は、より小さい茶葉粒子と比較した際、体積比に対して表面積が減少するという事実により、多孔質茶顆粒の浸出性能に悪い影響を与える傾向があると信じている。300μm超の粒子径の茶葉粒子は、すりつぶし及び/又はふるいの後に、より簡単に取り除かれるため、顆粒内に存在するこの径の粒子は少量に過ぎないことを保証できる。好ましくは、茶顆粒は、15質量%未満、より好ましくは10質量%未満、更に一層好ましくは5質量%未満、最も好ましくは1質量%未満の量で300μm超の粒子径を有する茶葉粒子を含む。
【0027】
茶葉粒子は、実質上不溶性である。本明細書内で使用される、用語「実質上不溶性」は、水などの水性液体中に浸し又はつかる場合、溶解しない基質を表す。基質は、それにも関わらず、水中に浸し又はつかる場合、特定の水-溶解基質を放出してもよい(例えば、風味分子及び/又はにおい分子)。更に、上記のとおり、浸出時に、一部の茶顆粒の分解が起こる可能性がある。
【0028】
バインダー
バインダーは茶固体を含む、茶ベースのバインダーである。本明細書内で使用される、用語「茶固体」は茶由来から得られる水溶性固体を表す。茶固体は、好都合には、液体茶組成物より供給される。茶固体は好ましくは、紅茶固体、緑茶固体、またはそれらの組み合わせである。
【0029】
例えば、一つの特定の好ましい選択肢は、バインダーとして茶抽出物を使用することである。言い換えれば、液体茶組成物は茶葉の抽出物、好ましくは茶葉の水性抽出物である。茶抽出物は、好都合には、溶媒、好ましくは水性溶媒にて茶葉を直接抽出することにより供給されてもよい。茶抽出物が、そこから溶媒を取り除くことによって、濃縮される場合、茶抽出物を濃縮される、液体茶組成物にふさわしい可能性がある。茶抽出物を供給する代替方法は、溶媒中、好ましくは水性溶媒中に茶粉末を溶解させることである。好ましくは、茶抽出物は、紅茶抽出物、緑茶抽出物、又はそれらの組み合わせである。紅茶抽出物が特に好ましい。
【0030】
別の好ましい選択肢は、バインダーとして茶搾り汁を使用することである。言い換えれば、液体茶組成物は、搾りだされた茶搾り汁である。本明細書内で使用される、用語「搾りだされた茶搾り汁」は、(溶媒の使用での茶固体の抽出とは対照的に)物理的な力を使用した、新鮮な茶葉、及び/又はドール(dhool)から搾り取った搾り汁を表す。それ故、「搾りだす」は、搾る、圧縮する、搾り取る、回転させる、及び押し出すなどの意味を包含する。「新鮮な茶葉」は、30質量%未満の水分含有量に乾燥されていない、茶葉及び/又は茶葉柄を表す。「ドール」は柔らかくした新鮮な茶葉を表す。搾りだし工程の間、新鮮な茶葉及び/又はドールの水分含有量は30から90質量%の間、より好ましくは60から90質量%の間である。更に搾りだされた茶搾り汁及びその生産の詳細は、例えばWO 2009/059924(Unilever)、WO 2009/059926(Unilever)及びWO 2009/059927内に見られ得る。好ましくは、茶搾り汁は、紅茶搾り汁、緑茶搾り汁、またはその組み合わせである。
【0031】
茶搾り汁は、従来の茶抽出物よりポリフェノール中に低い割合のガレート化された種を有する傾向がある。例えば、紅茶搾り汁は、典型的には、テアフラビンを含み、テアフラビンガレート(TF4)に対するテアフラビン(TF1)の質量比は、少なくとも2.0であり、より好ましくは少なくとも3.0であり、更に一層好ましくは少なくとも3.2であり、最も好ましくは3.5から5.0である。
【0032】
緑茶搾り汁は、典型的には、カテキン類を含み、非ガレート化カテキン対ガレート化カテキンの質量比は1.4:1より大きく、より好ましくは1.6:1より大きく、更に一層好ましくは1.8:1より大きく、最も好ましくは3:1から20:1までである。用語「テアフラビン類」及び「カテキン類」及び茶搾り汁中のテアフラビン類及びカテキン類の含有量を決定する適切な方法の定義はWO 2009/059927(Unilever)中に見られ得る。
【0033】
バインダーは、様々な由来から茶固体も含み得る。例えば、液体茶組成物は、茶抽出物及び茶搾り汁の組み合わせであり得る。
【0034】
茶固体以外のバインダーの残りは、典型的には、水であり得る。好ましくは、バインダーの総固体含有量の少なくとも90質量%が茶固体であり、より好ましくは少なくとも95質量%、及び最も好ましくは少なくとも99質量%である。
【0035】
茶顆粒中のバインダーの量は、乾燥質量で1から40質量%の範囲内にある。バインダーの量は、茶葉粒子が共に接着して、茶顆粒を形成することを確かにするには十分であるべきだ。それ故、茶顆粒は、好ましくは、乾燥質量で少なくとも5質量%、より好ましくは少なくとも10質量%、更に一層好ましくは少なくとも11質量%、最も好ましくは少なくとも12質量%の量でバインダーを含む。バインダーの高い含有量は望ましくなく、例えば、高濃度は望まないコストの添加、及び/又は強すぎて気づかれる可能性のある風味の様子を招く。それ故、茶顆粒は、乾燥質量35質量%未満、より好ましくは30質量%未満、更に一層好ましくは25質量%未満、最も好ましくは20質量%未満の量でバインダーを含むことが好まれる。
【0036】
多孔質茶顆粒
本発明による茶顆粒は多孔質である。そのような多孔質顆粒は、典型的な茶葉粒子の天然細胞構造より開いた構造(open structure)である。顆粒の多孔質性は、顕微鏡を使用して観察される。
図1及び2は、通常の紅茶葉(
図1)及び本発明による多孔質茶顆粒(
図2)の間の構造の違いを示す。
【0037】
図1は、通常の紅茶葉の共焦点画像である。単一の葉の一片のクチクラ及び切断表面が、この画像内で識別され、クチクラはすべての一片の表面の大きな割合である。
【0038】
図2は、本発明による茶顆粒の共焦点画像である。(構成する粒子間の明らかな目に見える隙間を伴って)多くの小さい粒子の凝集がこの画像内で明らかに観察され得る。顆粒は開いた(多孔質)構造を有し、さらされた表面の大部分は、クチクラ表面というより切断表面である。
【0039】
多孔質茶顆粒は、350μm超のD[4,3]を有する。体積モーメント平均D[4,3]は、サンプルの体積のバルクを構成するそれらの粒子径を反映する。本発明の、多孔質顆粒は、小さい葉粒子と典型的に関連する、悪い態様を制限する径を有する(例えば、消費者の支持、工場環境での扱いやすさ、など)。例えば、多孔質顆粒のサイズ化は、浸出液特性(例えば低い濁り)及び/又は製品外観の観点から、改善された消費者の支持に関連する。そのような利益を最大限にするため、D[4,3]は、好ましくは400μm超、より好ましくは450μm超、最も好ましくは500μm超である。
【0040】
シロッコ(Scirocco)付きMalvern Mastersizer 2000は、非顆粒化及び顆粒化茶粒子の両方の粒子径特性評価に使用された。シロッコは、可変の振動供給割合、及び分散圧力付きの、乾燥分散ユニットである。より小さい粒子及びより大きい顆粒に対して、2.0bar及び0.5barの分散圧力が、それぞれ使用された。振動供給割合は両方の場合に40%で保持された。Mastersizer 2000ソフトウェアは、測定プロセスの間のシステムを制御し、体積サイズ分布を計算するために、分散したデータを解析する。
【0041】
上記規定の様に、茶顆粒は、紅茶葉粒子、緑茶葉粒子、又は紅茶葉粒子及び緑茶葉粒子の混合物を含み得る。更に、バインダーは紅茶固体、緑茶固体、またはそれらの組み合わせを含み得る。それ故、茶顆粒は、茶葉粒子及び予想されるバインダーの任意の組み合わせを含み得ることが明らかであろう。
【0042】
速い浸出割合及び濃い浸出色を有することが、紅茶を伝統的に飲む国において、一般の消費者の好みであるため、茶顆粒が紅茶葉粒子を含み、バインダーが紅茶固体を含むことが特に好まれる。
【0043】
飲料前駆体
本発明は、また、多孔質茶顆粒を含む飲料前駆体に関する。本明細書内で使用される、用語「飲料前駆体」は、飲料を準備するのに適した、調製された組成物を表す。
【0044】
飲料前駆体は、水などの水性液体と接触して、飲料を供給してもよい。この工程は、浸出として表される。浸出は、好ましくは、浸出温度は、少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも55℃、最も好ましくは少なくとも70℃であるが、任意の温度で行われ得る。好ましくは、浸出温度は、120℃未満であり、より好ましくは100℃未満である。
【0045】
飲料は、ヒトの消費に適した、実質的に水性の飲用に適した組成物として定義される。好ましくは、飲料は、少なくとも85質量%の水、より好ましくは少なくとも90質量%の水、最も好ましくは95から99.9質量%の水を含む。
【0046】
多孔質茶顆粒と同様に、飲料前駆体は茶葉を更に含むことが好ましい。用語「茶葉」の意味は、上記の表題「茶」である。
【0047】
茶葉の少なくとも90質量%が-5+30メッシュの粒子径を有する。好ましくは、茶葉の少なくとも90質量%が-5+25メッシュの粒子径を有し、より好ましくは茶葉の少なくとも90質量%が-5+20メッシュの粒子径を有する。
【0048】
本発明の目的のため、茶葉の粒子径は、ふるいメッシュ径によって特徴づけられる。Tylerメッシュ径が、初めから終わりまで使用される(表1参照)。シンボル「+」はメッシュ径の前にあり、これは粒子が、このメッシュ径を有するふるいによって、保持されたことを示唆する。シンボル「-」はメッシュ径の前にあり、これは、粒子が、このメッシュ径を有するふるいを通過することを示唆する。茶葉は、典型的には、ふるいの前に乾燥される。例えば、もし粒子径が-5+30メッシュとして記載された場合、粒子は5メッシュふるいを通過し(4.0mmより小さい粒子)、30メッシュふるいによって保持される(595μmより大きい粒子)。
【表1】
【0049】
飲料前駆体は好ましくは包装される。使用の利便性のため、飲料前駆体は浸出用パック(例えばティーバック)に包装されることが特に好ましい。そのような浸出用パックは多孔質材料を含む。多孔質材料は、不溶性内容物がパックから出ることなく、水がパックに染み込むことを可能にするのに、適切な任意の材料であり得る。適切な材料の例は、ろ紙、ナイロンメッシュ、ガーゼ、綿モスリン、不織布を含むが、任意の他の同様の材料又は布が使用されてもよい。従って、飲料前駆体が浸出用パックに包装される場合、実質上、すべての多孔質茶顆粒が浸出用パック中に保持されることが好ましい。
【0050】
長期間の貯蔵安定性を可能にするため、飲料前駆体は、好ましくは、15質量%未満、より好ましくは10質量%未満、最も好ましくは0.1から5質量%までの水を含む。これらの量は、飲料を作るために、飲料前駆体を使用する前の(例えば、浸出より前の)、水の含有量を表すと理解される。
【0051】
茶葉を含む風味飲料前駆体に、一般に使用される他の原料(例えば、ベルガモット、かんきつ類の皮、など)は、本発明の飲料前駆体中に、任意に茶顆粒及び茶葉と組み合わせられてもよい。例えば、飲料前駆体は、更にハーブ植物材料を含んでもよい。用語「ハーブ植物材料」は、ハーブの浸出のための前駆体として、一般に使用される材料を表す。好ましくは、ハーブ植物材料は、カモミール、シナモン、エルダーフラワー、ジンジャー、ハイビスカス、ジャスミン、ラベンダー、レモングラス、ミント、ルイボス、ローズヒップ、バニラ及びバーベナから選択される。
【0052】
飲料前駆体は更に、又は代わりに果実要素(例えば、リンゴ、カシス、マンゴー、桃、パイナップル、ラズベリー、イチゴ、など)を含んでもよい。
【0053】
飲料前駆体中の多孔質茶顆粒及び茶葉の相対量に関しては特に制限がない。発明者は、飲料前駆体中の多量の多孔質顆粒の使用は、外観、及びそれ故、飲料前駆体の消費者の支持に悪い影響を与える可能性があると信じる。浸出特性と消費者支持のバランスの観点から、多孔質茶顆粒対茶葉の質量比は、5:1から1:5、より好ましくは4:1から1:4、更に一層好ましくは3:1から1:3、及び最も好ましくは2:1から1:2である。
【0054】
飲料前駆体の質量は、少なくとも1gが好まれるのは、より少ない量は、正確に分け、及び添加するのが難しいためである。より好ましくは、質量は少なくとも1.2g、最も好ましくは少なくとも1.4gである。更に、飲料前駆体の質量は4g未満が好ましいのは、より多い量は保存及び/又は扱いが不便になるためである。より好ましくは3g未満、最も好ましくは2g未満である。
【0055】
飲料前駆体は、適切な任意の方法で準備されてもよい。例えば、本発明による多孔質茶顆粒と茶葉との組み合わせにより、茶葉の少なくとも90質量%が-5+30メッシュの粒子径を有する。この方法は、任意に、飲料前駆体の包装の追加及び後の工程を含み、好ましくは浸出用パック中である。
【0056】
本明細書内で使用される、用語「含む」は用語「本質的にからなる」及び「からなる」を包含する。本明細書内に含まれるすべての割合及び比率は、他で示唆しない限り、質量で計算される。値又は量の任意の範囲の明記において、任意の特定の上の値又は量は、任意の特定の下の値又は量と関連付けられ得る。実施例及び比較例を除き、材料の量、反応条件、材料、及び/又は使用の物理特性を示唆する記載における、すべての数字は、「約」という言葉によって先行されて、理解されるべきである。本発明の実施態様の様々な特性は、上記適用される個別のセクションに、適切に、他のセクションに変更すべきところは変更して表される。それ故に、あるセクションで規定された特性は、他のセクションに、適切に規定される特性と組み合わせられてもよい。本明細書内に見られる発明の開示は、それぞれ複合的に依存している特許請求の範囲内に見られるすべての実施態様を含めると考えられるべきである。他で規定しない限り、本明細書内で使用される、すべての技術的及び化学的用語は、茶工程の分野の当業者によって、一般に理解される同じ意味を有する。
【実施例】
【0057】
下記限定されない実施例によって、本発明を説明する。
【0058】
実施例1
図1及び
図2に示される、紅茶葉及び茶顆粒の共焦点画像を、以下のとおりで得た。乾燥顆粒/粒子を、14mmのMicrowell及びNo1.0のカバーガラスがついた35mmのガラスボトム培養皿に置いた。共焦点レーザー画像化を、対物レンズ10x/0.45が装備された、Zeiss LSM-780共焦点スキャニングレーザー顕微鏡(Carl Zeiss Ltd)を用いて行った。画像加工を、ZEN 2012 Vソフトウェアを用いて完成させた。三種のレーザー励起線(405nm、488nm及び561nm)を、自己蛍光分子の励起に使用し、発光を、PMT検出器(429から474nm)、GaAsP検出器(517から579nm)、及び第二PMT検出器(650から758nm)で収集した。3次元zスタック画像を、1.0のズームファクター、2ラインの平均化、及び8μmのz-ステップサイズでの、連続ラインスキャニングモードにおいて、0.64μsのピクセル滞在(pixel dwell)を使用して得た。3次元複合蛍光画像を、最大強度モードでZENソフトウェアの3次元移送特性を使用して、作成した。
【0059】
紅茶葉(対照)は標準的なPF1等級材料であった。これは、ケニヤの工場で、標準的な茶摘み、萎凋(withering)、柔捻(maceration)、発酵、乾燥及びサイズすりつぶしを含む標準的な茶加工から得た。
【0060】
茶顆粒を以下のとおり調製した。
【0061】
a)製粉
160UPZ Impact Mill(Hosokawa Micron UK)を使用して、標準的なPF1等級材料を相対的に広い径分布の粒子に製粉した。60kg/時の速度で供給し、機械を6000rpmで作動した。すりつぶした粒子を、その後ATS600分類器(Allgaier GmbH)を用いて、様々な狭い径の分画:
・150μm未満、
・150から250μm、
・250から425μm、及び
・425μm超
のふるいにかけた。
【0062】
b)造粒手順
造粒を、Aeromatic Fielder MP1流動層造粒機(GEAプロセスシステム)内で行った。造粒手順は、3工程に分けられ、すなわち:加熱、凝集及び乾燥である。すりつぶした茶粒子の1kgの質量(粒子径150μmから250μm)を空気流10%から20%の間に維持して、流動化させた。流動化させる粒子槽の温度を、60℃から70℃に昇温し、蠕動ポンプを使用して、25から30ml/分の流速で、二つの流体ノズルを通じて、Saint Brite instant tea(Unilever)の水性溶液を、65%質量/質量で導入した。水性バインダーの添加により、層温度が50℃付近に低下した。ノズル高さ及び粉末化空気圧(0.75bar)を、試験の間中、一定に維持した。0.5barの周期的なブロー背圧を、粒子層中にあらゆる細かい粒子を再導入する試験の間に、適用した。乾燥工程を、液体バインダーの投入が完了した後直ちに開始し、試験を、昇温(70℃)で更に10から15分間、粒子を流動化させた後、終了した。任意に、顆粒化生産物を、その後、更に80℃で2から3時間、箱型乾燥器中で乾燥させ、3質量%未満の最終生成物での水分含有量を確かにした。乾燥顆粒は、16質量/質量%のバインダー(Saint Brite instant tea)を含み、600μmのD[4,3]粒子径を有した。
【0063】
実施例2
対照の材料及び茶顆粒を得て、上記実施例1で開示したとおり準備した。
【0064】
多孔質茶顆粒の浸出性能を対照茶材料と比較した。より具体的には、対照材料の3つの異なる量及び多孔質茶顆粒の3つの異なる量を比較した。表2は、それぞれの場合において、茶葉の量又は茶顆粒の量を示す。
【表2】
【0065】
浸出性能を、WO 2012/113602に記載された、動的方法を用いて決定した。動的(連続的に浸すこと)手順は、ティーバックのかき混ぜを含む浸出の消費者の調製の実験室シミュレーションを表す。同じサイズ及び形状を有し、同じフィルター材料で作られたティーバックを、すべての場合で使用した(四面体のティーバック)。445nmで吸光度を測定した。200mlの体積中での総浸出時間は120秒であり、サンプリングの頻度は1秒あたり1サンプルであった。
【0066】
浸出曲線を
図3に示した。サンプル1(多孔質顆粒、標準質量バック)、サンプル2(多孔質顆粒、20質量%減少バック)、及びサンプル3(多孔質顆粒、30質量%減少バック)が、対照A(茶葉、標準質量バック)と比較して浸出性能を向上させた。それぞれのサンプルが、適切な対照、すなわち対照A(標準質量バック)に対してサンプル1、対照B(20質量%減少バック)に対してサンプル2、対照C(30質量%減少バック)に対してサンプル3と比較した際に、浸出性能において向上も示した。
【0067】
動的手順の終了時に、浸出液中の可溶性固体の濃度を測定した。浸出液の50mlサンプルをとり、精密天秤を使用して重量測定した。このサンプルを、16時間オーブン中で完全に乾燥させ、その後、再度重量測定した。初期浸出液の質量及び乾燥サンプルの質量の間の差異を、浸出液中の可溶性固体の濃度の計算に使用した。結果を表3に示す。浸出液中に放出された可溶性固体の濃度が、それぞれの対照(すなわち対照A及びC)と比較して、サンプル1及び3について有意に高かった。
【表3】
【0068】
多孔質茶顆粒から浸出液に放出される可溶性固体の濃度は、バインダーからの固体及び茶葉粒子からの固体を含むだろう。これは、浸出液中の可溶性固体が茶葉材料のみに由来する、対照サンプルと対照的である。
【0069】
浸出性能における改善が、バインダーの存在によるものだけでないと証明するために、茶葉粒子から抽出される可溶性固体の割合を推定した。これを行うため、バインダー中に含まれるすべての固体が浸出液に放出されると仮定した。この濃度に加えて、浸出液中に残存する可溶性固体が、茶葉粒子から得られると考えられる。対照サンプルに関して、浸出液中の可溶性固体は、茶葉から得られた。
【表4】
【0070】
表4は、葉成分から抽出される可溶性固体の割合を示す(すなわち、サンプル1及び3に関する茶葉粒子、対照A及びCに関する茶葉)。対照A及びCに関して、葉成分中に存在する可溶性固体の約3分の2が、浸出液に放出されると推定された。一方、サンプル1及び3に関して、茶葉粒子中に存在する可溶性固体の少なくとも4分の3が、浸出液中に放出されると推定された。これは、多孔質茶顆粒の改善された浸出性能が、バインダーの存在によるものだけでないと示唆する。言い換えれば、顆粒中の茶葉粒子は、従来の茶葉(非造粒)の場合より、液中に、構成する固体のより大きい割合を放出する。