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特許6997198直線状トラッキング及び円形トラッキングのための傾斜境界及び円形境界
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】直線状トラッキング及び円形トラッキングのための傾斜境界及び円形境界
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/08 20060101AFI20220107BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20220107BHJP
   B65G 47/90 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B65G43/08 B
B25J13/00 A
B65G47/90 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019541086
(86)(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 US2018016179
(87)【国際公開番号】W WO2018144566
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-10-05
(31)【優先権主張番号】15/420,777
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514079114
【氏名又は名称】ファナック アメリカ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】ミン-レン ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ガネーシュ カルバビ
(72)【発明者】
【氏名】サイ-カイ チェン
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-140084(JP,A)
【文献】特開2005-111607(JP,A)
【文献】特開平05-329723(JP,A)
【文献】特開2013-139075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/08
B25J 13/00
B65G 47/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動のコンベヤのコンベヤ流れ方向に関するロボットの動作を制御する方法であって、前記ロボットは、前記コンベヤの物品支持面に重畳配置された円形の作業範囲を備え、
前記コンベヤの前記物品支持面について、前記コンベヤ流れ方向を横切る上流境界を設定するステップと、
前記物品支持面について、前記コンベヤ流れ方向を横切る下流境界を設定するステップであって、前記上流境界及び前記下流境界の少なくとも一方は、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して傾斜しており、前記上流境界及び前記下流境界は、前記物品支持面について、前記上流境界と前記下流境界との間にピッキング領域を画定するように配置されている、ステップと、
前記作業範囲の直径よりも小さい直径を有する円形境界を設定することと、
前記上流境界及び前記下流境界の上に前記円形境界を重畳配置して前記ピッキング領域をさらに画定することと、
前記ピッキング領域内で前記ロボットを操作して、前記上流境界及び前記下流境界によって画定された前記物品支持面上の物品を取り出すこと及び前記物品支持面上に物品を載置することの少なくとも一方を行うステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して傾斜した上流境界と、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に沿った下流境界とを設定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して傾斜した下流境界と、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に沿った上流境界とを設定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して傾斜した上流境界及び下流境界を設定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して、互いに異なる角度で傾斜した上流境界及び下流境界を設定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コンベヤ流れ方向に平行な前記物品支持面の中心線上に、前記円形境界の中心を配置することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記コンベヤ流れ方向に平行な前記物品支持面の中心線から離れた位置に、前記円形境界の中心を配置することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記円形境界の直径を、前記物品支持面の幅よりも大きい値に設定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記円形境界の直径を、前記物品支持面の幅よりも小さい値又は該幅に等しい値に設定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記上流境界及び前記下流境界の少なくとも一方を、前記ピッキング領域から障害物を排除できる角度に傾斜させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
可動のコンベヤのコンベヤ流れ方向に関するロボットの動作を制御する方法であって、前記ロボットは、前記コンベヤの物品支持面に重畳配置された円形の作業範囲を備え、
前記コンベヤの前記物品支持面に対する前記ロボットの位置及び動作を規定するための追跡フレームを設定するステップと、
前記コンベヤ流れ方向を横切る上流境界を設定するステップと、
前記コンベヤ流れ方向を横切る下流境界を設定するステップと、
前記上流境界及び前記下流境界に部分的に重畳するとともに前記作業範囲の直径よりも小さい直径を有する円形境界を設定するステップであって、前記上流境界、前記下流境界及び前記円形境界は、前記物品支持面についてピッキング領域を画定するように配置されている、ステップと、
前記ロボットを操作して、前記上流境界、前記下流境界及び前記円形境界によって画定された前記ピッキング領域から物品を取り出すステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して傾斜した上流境界と、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に沿った下流境界とを設定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して傾斜した下流境界と、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に沿った上流境界とを設定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して傾斜した上流境界及び下流境界を設定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して、互いに異なる角度で傾斜した上流境界及び下流境界を設定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記コンベヤ流れ方向に平行な前記物品支持面の中心線上、又は前記中心線から離れた位置に、前記円形境界の中心を配置することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記円形境界の直径を、前記物品支持面の幅よりも大きい値に設定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記上流境界及び前記下流境界の少なくとも一方を、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して、前記ピッキング領域から障害物を排除できる角度に傾斜させることを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り出すべき部品を搬送する可動コンベヤに対するロボットのピッキング領域を規定するための柔軟な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本節は、必ずしも従来技術ではない本開示に関連する背景技術情報を提供する。
【0003】
従来、追跡境界(tracking boundaries)としても知られる複数の境界(多くの場合、上流境界(UB)及び下流境界(DB)と称される)は、コンベヤ上におけるロボットの作業範囲を画定するものであり、コンベヤ表面上の部品の流れ方向に垂直な直線群によってのみ定義され得る。ロボットは、コンベヤ上の部品を、該部品がピッキング領域内にあるときに取り出す。ピッキング領域は、ロボットの円形作業範囲、上流境界UB及び下流境界DBの交差によって定義される。
【0004】
従来、ロボットの動作を制御するモーションソフトウェアにより、部品が上流境界UBより下流にあるときは、直ちにロボットが部品を取り出し又は載置することができる。この作業は、部品が実際には作業範囲外にあっても実行される。仮に部品が上流境界より下流でかつ作業範囲外にあるときは、ロボットは「到達不能位置」エラーとともに作業を失敗し、これはダウンタイムにつながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロボットが最大数の部品を取り出し又は載置できる能力を具備するようにピッキング領域を最大化することは、常に望まれる。しかし、垂直な上流境界と下流境界との間の距離が増加すると、部品に到達できない領域が増大するので、「到達不能位置」エラーの確率が上昇する。
【0006】
上述の欠点を回避するために、使用者は、ロボットが到達不能領域での取り出しをせずにピッキング領域内でのみ取り出しを行うように、複雑なカスタマイズされたプログラミングを行う必要がある。このことは、ロボットソフトウェアの複雑さとコストを増加させる。
【0007】
直線的かつ垂直な境界のみを使用するような制限は、ロボットの作業範囲内に他のロボットや機械のような物体又は障害物がある場合には、ロボットのピッキング領域の最大化を不可能にする。直線的かつ垂直な境界のみを使用するような制限は、取り出し速度の向上が望まれる用途において、ロボットが作業範囲の境界上にある部品を取り出さないことを許可しない。
【0008】
従来、ロボットを操作しながら衝突を回避する方法はあるが、コンベヤ上のピッキング領域を画定するための傾斜した境界及び円形の境界は言及されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に従い、本発明は、コンベヤ上のロボットピッキング領域を傾斜した境界によって画定し得る第1の柔軟な方法を含む。第2の柔軟な方法では、コンベヤ上のロボットピッキング領域が、ロボットの円形作業範囲より小さい円形の境界によって画定され得る。ロボットのピッキング領域は、以下の境界を用いて画定されることが検討される。
1.直線的な上流境界は、長手軸又はコンベヤの流れ方向に垂直(従来技術と同様)であるか、本発明に従って傾斜することができる。
2.直線的な下流境界は、垂直であるか又は傾斜することができる。
3.円形の境界は、境界1及び2とともに使用可能である。
【0010】
本発明によれば、可動のコンベヤのコンベヤ流れ方向に関するロボットの動作を制御する方法は、前記コンベヤの物品支持面について、前記コンベヤ流れ方向を横切る上流境界を設定するステップと、前記物品支持面について、前記コンベヤ流れ方向を横切る下流境界を設定するステップであって、前記上流境界及び前記下流境界の少なくとも一方は、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して傾斜しており、前記上流境界及び前記下流境界は、前記物品支持面について、前記上流境界と前記下流境界との間にピッキング領域を画定するように配置されている、ステップと、前記ピッキング領域内で前記ロボットを操作して、前記上流境界及び前記下流境界によって画定された前記物品支持面上の物品を取り出すこと及び前記物品支持面上に物品を載置することの少なくとも一方を行うステップと、を含む。
【0011】
上記方法は、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して傾斜した上流境界と、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に沿った下流境界とを設定すること、又は、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して傾斜した下流境界と、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に沿った上流境界とを設定すること、又は、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して傾斜した上流境界及び下流境界を設定することを含む。上記方法は、前記コンベヤ流れ方向に垂直な方向に対して、互いに異なる角度で傾斜した上流境界及び下流境界を設定することを含む。
【0012】
前記ロボットは、前記物品支持面に重畳配置された円形の作業範囲を備え、前記方法は、前記作業範囲の直径よりも小さい直径を有する円形境界を設定することと、前記上流境界及び前記下流境界の上に前記円形境界を重畳配置して前記ピッキング領域をさらに画定することとを含む。前記方法は、前記物品支持面の長手軸上に、前記円形境界の中心を配置することを含む。前記方法は、前記物品支持面の長手軸から離れた位置に、前記円形境界の中心を配置することを含む。前記方法は、前記円形境界の直径を、前記物品支持面の幅よりも大きい値に設定することを含む。前記方法は、前記円形境界の直径を、前記物品支持面の幅よりも小さい値又は該幅に等しい値に設定することを含む。
【0013】
前記方法は、前記上流境界及び前記下流境界の少なくとも一方を、前記ピッキング領域から障害物を排除できる角度に傾斜させることを含む。
【0014】
本発明によれば、可動のコンベヤのコンベヤ流れ方向に関するロボットの動作を制御する方法は、前記コンベヤの物品支持面に対する前記ロボットの位置及び動作を規定するための追跡フレームを設定するステップと、前記コンベヤ流れ方向を横切る上流境界を設定するステップと、前記コンベヤ流れ方向を横切る下流境界を設定するステップと、前記上流境界及び前記下流境界に部分的に重畳する円形境界を設定するステップであって、前記上流境界、前記下流境界及び前記円形境界は、前記物品支持面についてピッキング領域を画定するように配置されている、ステップと、前記ロボットを操作して、前記上流境界、前記下流境界及び前記円形境界によって画定された前記ピッキング領域から物品を取り出すステップと、を含む。
【0015】
上記内容は、本発明の他の利点とともに、以下の好適な実施形態の詳細な説明及び添付図面から、当業者に直ちに明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コンベヤの概略平面図であって、コンベヤ流れ方向に垂直な上流境界及び下流境界で画定された、従来技術に係るロボットピッキング領域を示す。
図2】コンベヤの概略平面図であって、コンベヤ流れ方向に垂直な下流境界及び傾斜した上流境界で画定された、本発明に係るロボットピッキング領域を示す。
図3】コンベヤの概略平面図であって、円形境界並びに垂直な上流境界及び下流境界で画定された、本発明に係るロボットピッキング領域を示す。
図4】コンベヤの概略平面図であって、傾斜した上流境界及び下流境界で画定された、本発明に係るロボットピッキング領域を示す。
図5】コンベヤの概略平面図であって、円形境界並びに垂直な上流境界及び下流境界で画定された、本発明に係るロボットピッキング領域を示す。
図6】コンベヤ及びロボットの斜視図であって、傾斜した上流境界及び下流境界で画定された、本発明に係るロボットピッキング領域を示す。
図7】本発明に係る、ロボットピッキング領域の境界の設定方法を示すフロー図である。
図8】円形コンベヤの概略平面図であって、径方向の上流境界及び下流境界で画定された、本発明に係るロボットピッキング領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明及び添付図面は、本発明の種々の実施形態を記載し図示する。詳細な説明及び図面は、当業者が本発明を実施できるようにするものであって、本発明の範囲をいかなる態様にも限定するものではない。開示された方法に関し、示されたステップは例示であって、故にステップの順序は必須でも重要でもない。
【0018】
本発明は、取り出すべき物品を支持するコンベヤ面について、ロボットピッキング領域を画定するための円形の境界及び傾斜した境界という概念を導入する。本発明の概念によって、ロボットは従来技術の欠点を克服できるだけでなく、コンベヤ上の物品をロボットで取り出す用途における要求に適した、付加的な利点も提供される。
【0019】
図1は、従来技術に係るロボットアームRAを備えたロボットRの作業範囲WEと、コンベヤCとを示す。(トラッキング(追跡)境界として知られる)仮想的な境界は、上流境界UB(upstream boundary)及び下流境界DB(downstream boundary)によって特定される。これらの境界は、コンベヤC上のロボットピッキング領域PAを画定するものであり、ロボット制御装置の取り出し用途プログラムにおいて使用者によって、コンベヤ表面上の部品(P1、P2、P3)のコンベヤ流れ方向CFDに垂直な方向に延びる直線としてのみ定義することができる。ロボットRは、ロボットアームRAの端部の取り出しツールPTがピッキング領域PA内にあるときに、コンベヤC上の部品を取り出すことができる。ピッキング領域PAは、ロボットRの円形の作業範囲WEの周縁と、境界UB及びDBとの交差によって画定される。
【0020】
従来技術では、ロボット制御装置において実行されるモーションソフトウェアは、部品が上流境界UBの下流側に移動したら直ちに、ロボットが取り出し動作又は載置動作を行うことを可能にする。この取り出し動作は、部品が実際には作業範囲WEの外側にある場合であっても実行される。図1において、部品P1は上流境界UBより下流にあるが、作業範囲WEの外側である「到達不能(not reachable)」領域NR内にある。この場合、ロボットRは「到達不能位置」エラーとともに作業を失敗し、これは従来システムの第1の欠点としてシステムのダウンタイムにつながる。
【0021】
ロボットRが最大数の部品を取り出し又は載置できる能力を具備するようにピッキング領域PAを最大化することは、常に望まれる。しかし、上流境界UBと下流境界DBとの間の距離が増加すると、従来システムの第2の欠点として「到達不能」領域NRが増大するので、上述の第1の欠点の確率が上昇する。
【0022】
従来システムにおける上述の第1及び第2の欠点を回避するためには、使用者は、ロボットRが領域NRでの取り出しをせずにピッキング領域PA内でのみ取り出しを行うように、複雑なカスタマイズされたプログラミングを行う必要がある。このことは、ロボットソフトウェアの複雑さとコストを増加させる。
【0023】
直線的かつ垂直な境界UB及びDBのみを使用する従来の制限は、ロボットの作業範囲WE内に他のロボットや機械のような物体又は障害物がある場合には、ロボットRのピッキング領域PAの最大化を不可能にしていた。
【0024】
直線的かつ垂直な境界UB及びDBのみを使用するような制限は、取り出し速度の向上が望まれる用途において、ロボットRが作業範囲WEの境界上にある部品を取り出すことを許可しなかった。
【0025】
図2は、コンベヤ10の概略平面図であり、ロボットRがコンベヤ表面から物品を取り出す際に回避すべき障害物11を示す。下流境界12は、コンベヤ10の幅に亘って、長手移動方向(X軸矢印10b)に垂直に(Y軸方向に)延びる。上流境界13は、境界12と離隔され、コンベヤ10の幅に亘って延びるとともに、垂直方向10aから所定の角度で傾斜している。傾斜角Sは、追跡フレーム(tracking frame)に関連して図示されている。境界12及び13は、コンベヤ10の表面から、追跡フレームのZ軸方向に上方に延びる(図6参照)。上流境界13の一端13aは、障害物11に隣接して配置され、他端13bは、下流境界12から一端13aよりも大きい距離を離れて配置される。ロボットRは、コンベヤ表面上の境界12と境界13との間のピッキング領域14内に配置され、障害物11は、該ピッキング領域の外側に配置される。下流境界12及び上流境界13は、コンベヤ10の表面から物品を取り出すときのロボットアームの移動をピッキング領域に制限するために、制御装置によって形成される仮想の境界である。傾斜した境界13によってロボットの使用者は、障害又は衝突の危険がないピッキング領域を規定することができ、ピッキング領域14は、図1に示す上流境界UBのような垂直な上流境界で画定される領域より大きい。
【0026】
図3は、コンベヤ10の概略平面図であり、下流境界12がコンベヤ10の幅に亘って、長手移動方向に垂直に延びることを示す。上流境界21は、境界12と離隔され、コンベヤ10の幅に亘って、長手移動方向に垂直に延びる。重畳配置された内側円形境界22は、境界12及び21にオーバーラップし、コンベヤ10の両端を超えて延在する。追跡(トラッキング)領域23は、境界12、21及び22によって囲繞され、該追跡領域がコンベヤ10の表面とオーバーラップする領域であるピッキング領域を含む。下流境界12、上流境界21及び円形境界22は、コンベヤ10の表面から物品を取り出すときのロボットアームの移動を追跡領域23に制限するために、ロボットの制御装置(図示せず)によって形成される仮想の境界である。円形境界22によってロボットの使用者は、障害又は衝突の危険がないピッキング領域を規定することができる。
【0027】
本発明によれば、図3に示す円形境界22によって使用者は、コンベヤ上に定義された領域内で、ロボットが到達可能な作業範囲を規定することができる。円形境界22と、図2に示す傾斜した境界13との組み合わせによって使用者は、ロボットの作業範囲を最大化することができ、該作業範囲に対しては、ロボットは常に衝突の危険なく到達することができる。円形境界22は、コンベヤ10の幅より大きい直径を有する。しかし当該直径は、コンベヤの幅と等しいか、該幅より小さくてもよい。また、円形境界22の中心は、コンベヤ10の長手軸に対して離れて(オフセットして)いるが、コンベヤの中心に配置されてもよい。
【0028】
図4が示す本発明の実施形態では、境界UB及びDBの双方が、コンベヤCのコンベヤ流れ方向CFDに対して傾斜している。物体Oが、ロボット(図示せず)の作業範囲WE内に配置される。ピッキング領域PAは、傾斜した上流境界UB及び下流境界DBによって、物体Oを避けるように画定される。ロボットは、ピッキング領域PA内の部品Pのみを、追加のプログラミング工程なしに取り出す。従来のシステムでは、図1に示すような直線の境界のみが使用されるが、ロボットのピッキング領域が相当に制限される(2~3個の部品のみが取り出せる)ことに加え、ロボットが物体Oに衝突する危険もある。
【0029】
図1を参照し、従来のシステムでは、垂直な境界UB及びDBに加え、円形境界を定義することはできなかった。図5において、ロボット(図示せず)はピッキング領域PA内の部品Pを取り出すが、ピッキング領域PAは、(作業範囲WEより直径が小さい)円形境界CBと、垂直な境界UB及びDBとの交差によって画定される。この特徴は、非常に重要である。なぜならば、いくつかの用途では、ロボットは作業範囲WEの境界の近傍では、長距離を移動してサイクルタイムが延び、取り出し速度が低下するので、取り出しをすべきでないからである。このことは単純に、用途面の要求である。本発明に係る方法により、この性能が追加のプログラミングなしで得られる。
【0030】
図6は、コンベヤCと、これに隣接配置されたピッキングロボットRの斜視図である。図4と同様に、ピッキング領域PAは、本発明に係る傾斜した境界UB及びDBの対によって画定される。上流境界UB及び下流境界DBの各々は、ロボットRが部品Pを取り出し又は載置するときに物体Oに衝突しないように、傾斜して配置される。
【0031】
上述の発明の記載及び関連する図面によれば、本発明の方法は、使用者が仮想の境界を設定して、ロボットを所望のピッキング領域内に配置することを可能にする。使用者は、垂直又は傾斜した上流境界と、垂直又は傾斜した下流境界とを設定する。使用者は、円形境界を追加することもできる。これらの境界は、障害物を回避し、ロボットピッキング領域を最大化するように設定可能である。
【0032】
図7は、本発明に係る、ロボットピッキング領域の境界の設定方法のフロー図である。本方法はステップ30から開始し、同ステップでは、使用者が、コンベヤ表面の位置及び境界の位置に対して、ロボットの位置及び移動を関連付ける追跡フレームを設定する。ステップ31では、使用者が上流境界の傾斜角を、コンベヤ流れ方向に垂直なゼロ度に設定する。ステップ32では、使用者がした下流境界の傾斜角を、コンベヤ流れ方向に垂直なゼロ度に設定する。ステップ33では、円形境界が望まれる場合は、使用者が円形境界の直径及び中心位置を設定する。ステップ34では、設定された境界によって画定されたピッキング領域内で、ロボットが対象物の取り出し及び載置の一方又は双方を行うように操作される。
【0033】
本発明の方法は、リニアコンベヤに関連して説明された。しかし当該方法は、円形コンベヤから部品を取り出すための境界の設定にも使用可能である。図8は、回転軸40aについて回転する、リング形状の円形コンベヤ40を示す。直線状の下流境界41は、軸40aからコンベヤの周縁40bまで半径方向に延びる。直線状の上流境界42は、軸40aからコンベヤの周縁40bまで、下流境界41とはある角度をなして半径方向に延び、それにより半径方向の両境界の間に、コンベヤ40の環状セグメント40cが形成される。円形境界43が、コンベヤ表面において半径方向の境界41及び42に重なるように設定される。従って、半径方向の境界41及び42、円形境界43並びにコンベヤ周縁40bによって、部品Pの取り出し及び載置の一方又は双方を行うためのトラッキング又はピッキング領域44が画定される。
【0034】
要するに、本発明に係る方法は、部品を含む移動コンベヤ上のロボットピッキング領域を画定する柔軟な方法を提供する。2つの柔軟な方法がある。
1)コンベヤ上のピッキング領域を、傾斜した境界で画定する。
2)コンベヤ上のピッキング領域を、ロボットの円形の作業範囲より小さい円形境界で画定する。
ロボットのピッキング領域は、以下の境界の組み合わせを用いて画定可能である。
A)上流境界は、(従来技術のように)垂直であるか、傾斜可能である。
B)下流境界は、垂直であるか、傾斜可能である。
C)A)及びB)と同時に、円形境界も存在可能である。
【0035】
本発明に係る方法の利点は、ロボットが到達不能な部分への到達にトライして失敗することによるダウンタイムがないことである。他の利点は、ピッキング領域は、ピッキングロボットが使用されている工場内において、該ロボットとスペースを共有する必要がある現実の制約(障害物、機械、他のロボット等)を考慮したものであることである。さらなる利点は、本発明の方法を実施するために、追加のプログラミングを必要としないことである。
【0036】
特許法に従い、好適な実施形態を表すものとして本発明が記載された。しかし本発明は、その精神及び範囲から逸脱することなく、特に図示され記載されたもの以外のものとしても実施可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8