(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ピリジニウム化合物、その合成方法、前記ピリジニウム化合物を含有する金属又は金属合金めっき浴、及び前記金属又は金属合金めっき浴の使用方法
(51)【国際特許分類】
C25D 3/38 20060101AFI20220107BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20220107BHJP
C25D 7/12 20060101ALI20220107BHJP
C07D 213/38 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C25D3/38 101
C25D7/00 J
C25D7/12
C07D213/38 CSP
(21)【出願番号】P 2019542997
(86)(22)【出願日】2018-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2018051926
(87)【国際公開番号】W WO2018145919
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-25
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ランガラジャン・ジャガンナサン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・アドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ラース・コールマン
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ・ブルナー
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-091850(JP,A)
【文献】特表2014-508859(JP,A)
【文献】特表2007-517140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
による構成ブロックを含む化合物であって、
式中、各Aは、下式(A1)及び(A2)
【化2】
から独立して選択される単位を表し、
R
a1、R
a2、R
a3、及びR
a5は、それぞれ独立して、C1~C12-アルカンジイル及び-(CH
2)
c-[CH(R
a6)-CH
2-O]
d-(CH
2)
e-からなる群から選択され、cは0から3の範囲の整数であり、dは1から100の範囲の整数であり、eは1から3の範囲の整数であり、各R
a6は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、
各R
a4は、独立して、アルカンジイル、アレンジイル、及び-(CH
2)
f-[CH(R
a7)-CH
2-O]
g-(CH
2)
h-からなる群から選択され、fは0から3の範囲の整数であり、gは1から100の範囲の整数であり、hは1から3の範囲の整数であり、各R
a7は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、
各X
1及びX
2は、独立して、
【化3】
からなる群から選択され、Zは、-CH
2-、O、Sから選択され、z及びz'は独立して1から6の範囲の整数であり、各R
a8及びR
a9は独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル、及び-CH
2-CH
2-(OCH
2CH
2)
y-OHからなる群から選択され、yは1から4の整数であり、
各Y
1、Y
2、及びY
3は、独立して、O及びN(R
a10)からなる群から選択され、各R
a10は、独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、
aは、1から40の範囲の整数であり、
各Dは、独立して、
-CH
2-CH(OH)-CH
2-、-CH
2-CH(SH)-CH
2-、-(CH
2)
i-[CH(R
d1)-CH
2-O]
j-(CH
2)
k-、及び-CH
2-CH(OH)-(CH
2)
l-[CH(R
d2)-CH
2-O]
m-(CH
2)
n-CH(OH)-CH
2-
からなる群から選択され、iは0から3の範囲の整数であり、jは1から100の範囲の整数であり、kは1から3の範囲の整数であり、各R
d1は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、lは1から3の範囲の整数であり、mは1から100の範囲の整数であり、nは1から3の範囲の整数であり、各R
d2は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択される、化合物。
【請求項2】
各R
a1、R
a2、R
a3、及びR
a5が、独立して、1,1-メチレン(-CH
2-)、1,2-エチレン(-CH
2-CH
2-)、1,3-プロピレン(-CH
2-CH
2-CH
2-)、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-、及び-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
X
1及びX
2が
【化4】
である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
各Dが、-(CH
2)
i-[CH(R
d1)-CH
2-O]
j-(CH
2)
k-であり、式中、各iは2又は3であり、各jは1から25の範囲の整数であり、各kは2から3の範囲の整数であり、各R
d1は独立して、水素及びC1~C4-アルキルからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R
a1からR
a5が、窒素原子を含まない、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
少なくとも1つのAが、式(A1-1)又は(A1-2)
【化5】
によって表される単位になるように選択される、請求項3から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
全てのAが、式(A1-1)又は(A1-2)
【化6】
によって表される単位になるように選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
その質量平均分子量M
wが、250から10000g/molの範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
金属又は金属合金めっき浴での、好ましくは銅又は銅合金めっき浴での、請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物の使用。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物を合成する方法であって、下式(M1)及び(M2)
【化7】
(式中、
R
m1、R
m2、R
m3、及びR
m5はそれぞれ独立して、C1~C12-アルカンジイル及び-(CH
2)
α-[CH(R
m6)-CH
2-O]
β-(CH
2)
χからなる群から選択され、αは0から3の範囲の整数であり、βは1から100の範囲の整数であり、χは1から3の範囲の整数であり、各R
m6は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、
各R
m4は独立して、アルカンジイル、アレンジイル、及び-(CH
2)
δ-[CH(R
m7)-CH
2-O]
ε-(CH
2)
φ-からなる群から選択され、δは0から3の範囲の整数であり、εは1から100の範囲の整数であり、φは1から3の範囲の整数であり、各R
m7は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、
M
1、M
3、及びM
4のそれぞれは独立して、O及びN(R
m10)からなる群から選択され、各R
m10は独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、
M
2及びM
5のそれぞれは独立して、
【化8】
からなる群から選択され、Zは、-CH
2-、O、Sから選択され、ζ及びζ'は独立して1から6の範囲の整数であり、各R
m8及びR
m9は独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル、及び-CH
2-CH
2-(OCH
2CH
2)
ψ-OHからなる群から選択され、ψは1から4の整数である)
の1つによって表される少なくとも1種の出発材料と、
下記の化合物(B1)から(B4)
【化9】
(式中、
各LGは独立して、トリフレート、ノナフレート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、及びハロゲン化物からなる群から選択され、
ιは0から3の範囲の整数であり、
【数1】
は1から100の範囲の整数であり、κは1から3の範囲の整数であり、各R
n1は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、λは1から3の範囲の整数であり、μは1から100の範囲の整数であり、νは1から3の範囲の整数であり、各R
n2は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択される)
の1種又は複数
とを反応させることを特徴とする、方法。
【請求項11】
少なくとも1つのタイプの還元性金属イオンを含む、金属又は金属合金めっき浴であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする、金属又は金属合金めっき浴。
【請求項12】
前記少なくとも1つのタイプの還元性金属イオンが銅イオンである、請求項11に記載の金属又は金属合金めっき浴。
【請求項13】
金属又は金属合金めっき浴中の、請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物の濃度が、0.01mg/Lから1000mg/Lの範囲である、請求項12に記載の金属又は金属合金めっき浴。
【請求項14】
金属又は金属合金を、基板の少なくとも1つの表面上に堆積するための方法であって、
(i)基板を用意する工程と、
(ii)前記基板の表面を、請求項11から13のいずれか一項に記載の水性金属又は金属合金めっき浴に接触させる工程と、
(iii)任意選択で、電流を基板と少なくとも1つのアノードとの間に印加する工程と
を含み、それによって、金属又は金属合金を、基板の表面の少なくとも一部の上に堆積させる、方法。
【請求項15】
前記基板が、プリント回路板、IC基板、回路担体、相互接続デバイス、半導体ウエハ、及びガラス基板からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリジニウム化合物、それを調製するための合成方法、前記ピリジニウム化合物を含有する金属又は金属合金めっき浴、及び前記金属又は金属合金めっき浴を使用するための方法に関する。
【0002】
めっき浴は、デュアルダマシン適用例を含むエレクトロニクス及び半導体産業で、凹部構造を充填するのに特に適している。
【背景技術】
【0003】
金属及び金属合金の湿式化学堆積(金属めっき)は、装飾及び機能的コーティングを製造するための様々な産業で広く使用されている。したがって多数の金属及び金属合金は、様々な基板上に形成することができる。エレクトロニクス及び半導体産業で特に興味深いのは、銅めっきである。銅は、その高い導電率及び比較的低い価格により、これらの産業で使用されている。銅は、これが高速及び費用効率があるので、しばしば電解銅堆積によって導電線を構築するのに使用される。
【0004】
銅の電解析出用めっき浴は、とりわけ、トレンチ、スルーホール(TH)、ブラインドマイクロビア(BMW)、及びピラーバンプのような微細な構造に銅を充填し又はそのような構造が銅で構築される必要のある、プリント回路板及びIC基板を製造するのに使用される。そのような銅の電解析出の別の適用例は、シリコン貫通ビア(TSV)等の凹部構造の充填、及びデュアルダマシンめっき、又は半導体基板の内部又は表面での再配線層(RDL)及びピラーバンプの形成である。より求められるようになる更に別の適用例は、ガラス貫通ビア、即ちガラス基板内の穴及び関連ある凹部構造を、電気めっきによって銅又は銅合金で充填することである。
【0005】
従来、様々な添加剤の組合せが、そのようなめっき浴組成物で使用されている。例えば、電解銅めっき浴は、レベラー、担体抑制剤、及び加速剤-光沢剤を含む、多数の個々の添加剤を含む。
【0006】
特許出願EP1069211A2は、銅イオンの供給源、酸、担体添加剤、光沢剤添加剤、及びレベラー添加剤であって、少なくとも1つの末端に有機結合ハロゲン化物原子(例えば、共有C-Cl結合)含有するポリ[ビス(2-クロロエチル)エーテル-alt-1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]尿素(CAS番号68555-36-2)とすることができるものを含む、水性銅めっき浴を開示する。
【0007】
米国特許出願公開第2009/0205969号(A1)は、尿素、N,N-ジアルキルアミノアルキルアミン、及びN,N-ビス-(アミノアルキル)-アルキルアミンであって電解金属堆積用の添加剤としてのものから作製された架橋ポリマーについて記述する。そこに開示されたプロセスは、電解亜鉛堆積に関する。
【0008】
類似の尿素をベースにしたポリマーも、米国特許第4,157,388号に報告されており、全ての尿素部分は窒素含有アルキレン、即ち、第2級、第3級アミン、及び同様のものを介して架橋されている。陽イオン誘導体及びその電解めっき浴での使用は、ドイツ特許出願DE102005060030A1に開示されている。これらのポリマーにおける個々の尿素部分は、第4級アンモニウム誘導体によって連結される。
【0009】
また、WO2007/024606は、化粧品の適用例における添加剤として、尿素、チオ尿素、及びポリマーを教示しており、個々の尿素、チオ尿素、及び部分は、第4級アンモニウム部分によって連結されている。
【0010】
ウレイルポリマーは、銅の電解析出用レベラーとして、EP2735627A1により当技術分野で公知である。そのようなポリマーは、アミノ尿素誘導体及び求核剤の重付加によって得ることができる。WO2011/029781は、亜鉛の電解析出用の同じポリマーを教示する。
【0011】
しかし、酸性銅めっき浴に使用される場合のそのような添加剤は、先進のプリント回路板、IC基板の製造、並びに半導体及びガラス基板の金属化における、現行及び将来の要件を満たすのに適していない。回路レイアウトに応じて、BMVのインプリント回路板及びIC基板は、共形的にだけでなく完全に、銅で満たされる必要がある。BMVを満たすことに関する典型的な要件は、例えば:隣接する平面基板領域上に12μm以下から18μmの銅を堆積し、それと同時に5μm以下の満たされたBMVの外面上に窪みを創出しながら、完全に満たされたBMVを得ることである。
【0012】
半導体ウエハの金属化において、TSV充填は、隣接する平面領域上にオーバーめっきされた銅の1/5以下のビア直径を創出しながら、銅による完全なボイドレス充填をもたらさなければならない。類似の要件が、銅によるガラス貫通ビアを充填するのに求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許出願EP1069211A2
【文献】米国特許出願公開第2009/0205969号(A1)
【文献】米国特許第4,157,388号
【文献】ドイツ特許出願DE102005060030A1
【文献】WO2007/024606
【文献】EP2735627A1
【文献】WO2011/029781
【文献】EP2113587B9
【文献】EP2537962A1
【文献】米国特許第5,976,341号
【文献】米国特許第6,099,711号
【文献】米国特許出願第2014/209476号A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、本発明の目的は、金属めっき浴に、好ましくは銅又は銅合金を電解析出するための銅めっき浴に、使用可能な化合物であって、プリント回路板及びIC基板製造、並びにTSV充填、デュアルダマシンめっき、再配線層の堆積、又はピラーバンプ形成のような半導体基板の金属化、並びにガラス貫通ビア及びブラインドマイクロビア(BMV)の充填の分野での、上述の適用例に関する要件を満たすものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、式(I)
【0016】
【0017】
による構成ブロックを含む化合物であって、
式中、各Aは、下式(A1)及び(A2)
【0018】
【0019】
から独立して選択される単位を表し、
式中、
Ra1、Ra2、Ra3、及びRa5は、それぞれ独立して、C1~C12-アルカンジイル及び-(CH2)c-[CH(Ra6)-CH2-O]d-(CH2)e-からなる群から選択され、cは0から3の範囲の整数であり、dは1から100の範囲の整数であり、eは1から3の範囲の整数であり、各Ra6は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、
各Ra4は、独立して、アルカンジイル、アレンジイル、及び-(CH2)f-[CH(Ra7)-CH2-O]g-(CH2)h-からなる群から選択され、fは0から3の範囲の整数であり、gは1から100の範囲の整数であり、hは1から3の範囲の整数であり、各Ra7は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、
各X1及びX2は、独立して、
【0020】
【0021】
からなる群から選択され、Zは、-CH2-、O、Sから選択され、z及びz'は独立して1から6の範囲の整数であり、各Ra8及びRa9は独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル、及び-CH2-CH2-(OCH2CH2)y-OHからなる群から選択され、yは1から4の整数であり、
各Y1、Y2、及びY3は、独立して、O及びN(Ra10)からなる群から選択され、各Ra10は、独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、
aは、1から40の範囲の整数であり、
各Dは、独立して、
-CH2-CH(OH)-CH2-、-CH2-CH(SH)-CH2-、-(CH2)i-[CH(Rd1)-CH2-O]j-(CH2)k-、及び-CH2-CH(OH)-(CH2)l-[CH(Rd2)-CH2-O]m-(CH2)n-CH(OH)-CH2-
からなる群から選択され、iは0から3の範囲の整数であり、jは1から100の範囲の整数であり、kは1から3の範囲の整数であり、各Rd1は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、lは1から3の範囲の整数であり、mは1から100の範囲の整数であり、nは1から3の範囲の整数であり、各Rd2は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択される、によって解決される。
【0022】
式(I)による構成ブロックを含む化合物を、本明細書では「ピリジニウム化合物」と呼ぶ。
【0023】
上記目的は、金属又は金属合金めっき浴での少なくとも1種のピリジニウム化合物の使用、好ましくは銅又は銅合金めっき浴での(それらの使用)によっても解決される。金属又は金属合金めっき浴は、金属又は金属合金、好ましくは銅又は銅合金を、基板の少なくとも1つの表面に堆積するのに適している。
【0024】
更に上記目的は、前記めっき浴が少なくとも1種のそのようなピリジニウム化合物を含むことを特徴とする、少なくとも1つのタイプの還元性金属イオンを含む金属又は金属合金めっき浴によって解決される。
【0025】
上記目的は、金属又は金属合金を基板の少なくとも1つの表面に堆積するための方法であって、
(i)基板を用意する工程、
(ii)基板の表面と、本発明による水性金属又は金属合金めっき浴とを接触させる工程、
(iii)任意選択で、基板と少なくとも1つのアノードとの間に電流を印加する工程
を含み、それによって金属又は金属合金を基板の表面の少なくとも一部分に堆積させる、方法によって、更に解決される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の利点は、非常に滑らかで均一な金属又は金属合金堆積物、好ましくは銅堆積物を、いかなる(実質的な)過負荷又は窪みもなしに形成できることである(適用実施例1参照)。
【0027】
本発明の利点は、銅めっき浴で使用される本発明のピリジニウム化合物が、その内部にごく僅かな有機不純物しか形成されない状態で、銅堆積を可能にすることである(適用実施例4参照)。このことは、少ないボイドでより大きい銅粒を生じさせ、それが銅堆積物のより良好な導電率をもたらすので、半導体適用例に特に望ましい。有機不純物は、例えば、レベラー、溶媒、界面活性剤/湿潤剤、光沢剤、及び担体等の銅めっき浴で使用される有機又はポリマー添加剤から、銅堆積物に組み込むことができる。典型的には、それらは元素である炭素、水素、ハロゲン化物、硫黄、及び酸素を含む有機又はポリマー化合物として見出される。
【0028】
本発明の他の利点は、欠陥が非常に少ない(SP2及びSP3欠陥等)銅堆積物を、得ることができることである(適用実施例3及び比較適用例1参照)。これは高い欠陥計数が最終的な生成物収率を減少させる可能性があるので、半導体産業により必要とされる。
【0029】
更に本発明の他の利点は、銅による凹部構造の均一で完全な充填を、得ることができることである。銅堆積物にはボイドがないことも有利である(適用実施例2参照)。
【0030】
本発明の別の利点は、ピリジニウム化合物の調製において、ごく僅かな副反応しか生じる可能性がなく、再現性ある結果をもたらす信頼性ある容易な合成が行われることである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による銅めっき浴で処理されたウエハ基板の平面断面図を示す(適用実施例2)。銅堆積物には、今日の工業規格により求められるように、ボイドがない。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書の全体を通して、他に指示されない限り、パーセンテージは質量パーセンテージ(wt.-%)である。収率は、理論的収量に対するパーセンテージとして与えられる。本明細書で与えられる濃度は、他に指示されない限り、全溶液に対する体積又は質量を指す。「堆積」及び「めっき」という用語は、本明細書では同義で使用される。また、「層」及び「堆積物」も、本明細書では同義である。
【0033】
本発明による「アルキル」という用語は、環状及び/又は非環状構造要素を含む分枝状又は非分枝状アルキル基を含み、このアルキル基の環状構造要素は、少なくとも3個の炭素原子を、生来必要とする。本明細書及び特許請求の範囲におけるC1~CX-アルキルは、1からX個の炭素原子(Xは整数である)を有するアルキル基を指す。例えばC1~C8-アルキルは、とりわけ、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、ネオ-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチルを含む。置換アルキル基は、理論的に、少なくとも1個の水素を官能基によって置き換えることによって得てもよい。他に指示しない限り、アルキル基は、それらの改善された水溶性により、好ましくは置換又は非置換C1~C8-アルキルから、より好ましくは置換又は非置換C1~C4-アルキルから選択される。「アルケニル」は、少なくとも1つのオレフィン(C-C-二重)結合を含む不飽和アルキル基である。アルキル基に対する上述の優先性は、必要に応じて変更してアルケニル基に適用される。
【0034】
「アルカンジイル」という用語は、2つの自由原子価(結合部位)を有する対応基である。時々、当技術分野では「アルキレン」と呼ばれる。本発明による残基は、環状及び/又は非環状構造要素を含み、直鎖状及び/又は分枝状にすることができる。例えばC1~C4-アルカンジイルには、とりわけ、メタン-1,1-ジイル、エタン-1,2-ジイル、エタン-1,1-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、プロパン-1,1-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、ブタン-1,3-ジイル、ブタン-1,2-ジイル、ブタン-1,1-ジイル、ブタン-2,3-ジイルが含まれる。更に、アルカンジイル化合物に結合された個々の水素原子は、それぞれの場合に、アルキル基に関して上記定義されたもの等の官能基により置換されてもよい。他に指示しない限り、アルカンジイル基は、それらの改善された水溶性により、好ましくは置換又は非置換C1~-C8-アルカンジイル、より好ましくは置換又は非置換C1~-C4-アルカンジイルから選択される。
【0035】
本発明による「アリール」という用語は、環形状の芳香族炭化水素残基、例えばフェニル又はナフチルを指し、個々の環炭素原子は、N、O、及び/又はSによって置き換えることができ、例えばベンゾチアゾリルである。好ましくは、炭素原子は、ピリジニウム化合物の調製において望ましくない副反応を回避するのに、置換されない。更にアリール基は、それぞれの場合に水素原子を官能基により置き換えることによって、任意選択で置換される。C5~CX-アリールという用語は、環形状の芳香族基中に5からX個の炭素原子(任意選択で、N、O、及び/又はSによって置き換えられる)を有するアリール基を指す(Xは、生来、整数である)。他に指示しない限り、C5~C6-アリールが好ましい。「アレンジイル」は、アリールに対する2価の対応基であり、例えばフェニレンである。アリール基に関する上述の優先度は、必要に応じて変更してアレンジイル基に適用される。
【0036】
本発明による「アルカリール」という用語は、ベンジル及びp-トリル等、少なくとも1個のアリール及び少なくとも1個のアルキル基を含む、炭化水素基を指す。その他の部分に対するそのようなアルカリール基の結合は、アルカリール基のアルキル又はアリール基を介して生じ得る。アルキル及びアリール基に関する上述の優先度は、必要に応じて変更してアルカリール基に適用される。
【0037】
他に指示しない限り、上述の基は置換され又は置換されない。置換基としての官能基は、処理添加剤の水溶性を改善するために、好ましくはヒドロキシル(-OH)及びカルボキシル(-CO2H)からなる群から選択される。
【0038】
複数の残基が所与の基から選択されることになる場合、残基のそれぞれは、以下で他に指示されない限り互いに独立して選択され、それらは前記基の同じメンバー又は異なるメンバーになるように選択できることを意味する。いくつかの化学式における結合部位は、当技術分野で慣例のように、波線(「
【0039】
【0040】
」)によって強調される。
【0041】
ピリジニウム化合物
好ましくは、各Ra1、Ra2、Ra3、及びRa5は独立して、C1~C8-アルカンジイル及び-(CH2)c-[CH(Ra6)-CH2-O]d-(CH2)e-から選択され、式中、cは2から3の範囲の整数であり、dは1から20の範囲の整数であり、eは2から3の範囲の整数であり、各Ra6は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択される。より好ましくは、各Ra1、Ra2、Ra3、及びRa5は独立して、C1~C4-アルカンジイル及び-(CH2)c-[CH(Ra6)-CH2-O]d-(CH2)e-から選択され、式中、cは2から3の範囲の整数であり、dは1から20の範囲の整数であり、eは2から3の範囲の整数であり、各Ra6は互いに独立して、水素、C1~C4-アルキル、及びフェニルからなる群から選択される。更により好ましくは、各Ra1、Ra2、Ra3、及びRa5は独立して、ピリジニウム化合物の溶解度を改善するために、1,1-メチレン(-CH2-)、1,2-エチレン(-CH2-CH2-)、1,3-プロピレン(-CH2-CH2-CH2-)、-(CH2)2-O-(CH2)2-、及び-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-から選択される。最も好ましくは、Ra1、Ra2、Ra3、及びRa5は、ピリジニウム化合物の合成を更に容易にするために、1,1-メチレン(-CH2-)である。
【0042】
好ましくは、各Ra4は独立して、C1~C8-アルカンジイル、アレンジイル、及び-(CH2)f-[CH(Ra7)-CH2-O]g-(CH2)h-からなる群から選択され、式中、fは0から3の範囲の整数であり、gは1から20の範囲の整数であり、hは1から3の範囲の整数であり、各Ra7は互いに独立して、水素、C1~C8-アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択される。より好ましくは、各Ra4は独立して、1,2-エチレン(-CH2-CH2-)、1,3-プロピレン(-CH2-CH2-CH2-)、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-、及び-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-から選択される。
【0043】
好ましくは、Ra1からRa5は、アミノ基等の窒素原子を含まない。このため、ピリジニウム化合物を合成するのに使用される求核剤の望ましくない副反応が回避される。同じことが、ピリジニウム化合物に含まれる場合のRa6に適用される。
【0044】
Zがピリジニウム化合物に含有される場合、ピリジニウム化合物を調製しながら望ましくない副反応を回避するために、-CH2-及びOからなる群から好ましくは選択される。整数z及びz'は、好ましくは1から3の範囲であり、より好ましくは、z及びz'の合計が2から4の範囲であることを前提とする。更により好ましくは、整数z及びz'は1から2であり、それと同時にz及びz'の合計は2又は3に等しい。
【0045】
Ra8及びRa9がピリジニウム化合物に含有される場合、それらは好ましくは、C1~C8-アルキル及び-CH2-CH2-(OCH2CH2)y-OH(式中、yは1から4の整数である)から選択され、より好ましくはC1~C4-アルキルから選択される。
【0046】
好ましくは、各Y1、Y2、及びY3は独立して、O及びN(Ra10)からなる群から選択され、各Ra10は独立して、C1~C4-アルキルからなる群から選択される。より好ましくは、Y1、Y2、及びY3がO(酸素)であり、したがって尿素部分が形成される。このため、ピリジニウム化合物を調製するときに副反応が回避されるので(更なる求核中心がない)好ましい。
【0047】
好ましくは、X1及びX2は、
【0048】
【0049】
である。これはとりわけ、ピリジニウム化合物の合成を容易にする。
【0050】
ピリジニウム化合物は、1つ又は複数のピリジニウム部分:
【0051】
【0052】
を含む。Ra1、Ra2、Ra3、及びRa5は、ピリジル部分に、後者のオルト、メタ、又はパラ位(ピリジン環により含まれる窒素原子に対して)で結合されてもよい。好ましくは、結合のそれぞれは、メタ又はパラ位(ピリジン環により含まれる窒素原子に対して)で生じ、より好ましくは、Ra1、Ra2、Ra3、及びRa5の全ての結合は、パラ位(ピリジン環により含まれる窒素原子に対して)にある。これらの概説された優先度は、銅めっき浴中でのそれぞれのピリジニウム化合物の高いレベリング特性に起因する(適用実施例1参照)。
【0053】
整数aは、好ましくは2から20の範囲であり、より好ましくは3から15、更により好ましくは4から13の範囲である。これらの概説された優先度は、銅めっき浴中でのそれぞれのピリジニウム化合物の高いレベリング特性に起因する(適用実施例1参照)。
【0054】
好ましくは、少なくとも1つのAは、式(A1)により表される単位になるように選択される。より好ましくは、全てのAが、式(A1)により表される単位になるように選択される。
【0055】
好ましくは、少なくとも1つのAは、式(A1-1)又は(A1-2)
【0056】
【0057】
によって表される単位になるように選択される。
【0058】
次いでY1は、好ましくは、尿素部分を排他的に形成するOになるように選択され、より好ましくは、Ra1及びRa2は、合成を容易にするためにメチレン(-CH2-)である。
【0059】
より好ましくは、全てのAは、式(A1-1)又は(A1-2)
【0060】
【0061】
によって表される単位になるように選択される。
【0062】
更により好ましくは、Y1は、尿素部分を排他的に形成するOになるように選択される。更により好ましくは、Ra1及びRa2は、合成を容易にするためにメチレン(-CH2-)である。これらの概説された優先度は、とりわけ、銅めっき浴中でのそれぞれのピリジニウム化合物の高いレベリング特性に起因する(適用実施例1参照)。
【0063】
本発明のより好ましい実施形態では、少なくとも1つのAは、更により好ましくは全てのAは、式(A1-1)
【0064】
【0065】
により表される1個又は複数の単位になるように選択される。
【0066】
この実施形態において、Y1は、好ましくは、尿素部分を排他的に形成するOになるように選択される。更により好ましくは、Ra1及びRa2が、合成を容易にするためにメチレン(-CH2-)である。これらの概説された優先度は、とりわけ、銅めっき浴中のそれぞれのピリジニウム化合物の高いレベリング特性に起因する(適用実施例1参照)。
【0067】
好ましくは、各Dは独立して、
-CH2-CH(OH)-CH2-、-(CH2)i-[CH(Rd1)-CH2-O]j-(CH2)k-、及び-CH2-CH(OH)-(CH2)l-[CH(Rd2)-CH2-O]m-(CH2)n-CH(OH)-CH2-
からなる群から選択され、式中、iは0から3の範囲の整数であり、jは1から100の範囲の整数であり、kは1から3の範囲の整数であり、各Rd1は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素、C1~C4-アルキル、及びフェニルから選択され、更により好ましくは水素及びC1~C4-アルキルから、更になおより好ましくは水素及びメチルから選択され、lは、1から3の範囲の整数であり、mは、1から100の範囲の整数であり、nは1から3の範囲の整数であり、各Rd2は互いに独立して水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素、C1~C4-アルキル、及びフェニルから選択され、更により好ましくは水素及びC1~C4-アルキルから、更になおより好ましくは水素及びメチルから選択される。
【0068】
より好ましくは、各Dは、-(CH2)i-[CH(Rd1)-CH2-O]j-(CH2)k-であり、式中、各iは2又は3であり、各jは1から20又は25の範囲の整数であり、各kは2から3の範囲の整数であり、各Rd1は独立して、水素及びC1~C4-アルキルからなる群から選択され、更により好ましくは水素及びメチルから選択される。
【0069】
更により好ましい実施形態では、Dは、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-、及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-からなる群から選択される。
【0070】
ピリジニウム化合物の質量平均分子量Mwは、好ましくは250から10000g/molの範囲であり、より好ましくは350から7500g/mol、更により好ましくは500から6000g/molに、更になおより好ましくは1500から5000g/molの範囲である。これらの概説された優先度は、それぞれのピリジニウム化合物の銅めっき浴中での高いレベリング特性に起因する(適用実施例1参照)。
【0071】
任意の(末端)第3級アミノ基(ピリジン環に結合された窒素原子を含む)がピリジニウム化合物中に存在する場合、それらは任意選択で、有機一ハロゲン化物又は有機一擬ハロゲン化物、例えば塩化ベンジル、塩化アルキル、例えば1-クロロヘキサン、又は塩化アリル、又はそれらの対応する臭化物及びメシレートを使用することによって、或いは適切な無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、又は硫酸を使用することによって、所望の性質に応じてそれぞれの第4級アンモニウム基に変換される。
【0072】
ピリジニウム化合物は、好ましくは、共有結合されたC-Cl部分等、有機的に結合されたいかなるハロゲンも含有しない。
【0073】
ピリジニウム化合物の合成
本発明は更に、ピリジニウム化合物を合成する方法に関する。下式(M1)及び(M2)
【0074】
【0075】
の1つによって表される少なくとも1種の出発材料であって、
式中、
Rm1、Rm2、Rm3、及びRm5はそれぞれ独立して、C1~C12-アルカンジイル及び-(CH2)α-[CH(Rm6)-CH2-O]β-(CH2)χからなる群から選択され、αは0から3の範囲の整数であり、βは1から100の範囲の整数であり、χは1から3の範囲の整数であり、各Rm6は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、
各Rm4は独立して、アルカンジイル、アレンジイル、及び-(CH2)δ-[CH(Rm7)-CH2-O]ε-(CH2)φからなる群から選択され、δは0から3の範囲の整数であり、εは1から100の範囲の整数であり、φは1から3の範囲の整数であり、各Rm7は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、
M1、M3、及びM4のそれぞれは独立して、O及びN(Rm10)からなる群から選択され、各Rm10は独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、
M2及びM5のそれぞれは独立して、
【0076】
【0077】
からなる群から選択され、Zは-CH2-、O、Sから選択され、ζ及びζ'は独立して1から6の範囲の整数であり、各Rm8及びRm9は独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル、及び-CH2-CH2-(OCH2CH2)ψ-OHからなる群から選択され、ψは1から4の整数である、出発材料と、
下記の化合物(B1)から(B4)
【0078】
【0079】
の1種又は複数であって、
式中、
各LGは独立して、トリフレート、ノナフレート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、及びハロゲン化物からなる群から選択され、
ιは0から3の範囲の整数であり、
【数1】
は1から100の範囲の整数であり、κは1から3の範囲の整数であり、各R
n1は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、λは1から3の範囲の整数であり、μは1から100の範囲の整数であり、νは1から3の範囲の整数であり、各R
n2は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択される、化合物の1種又は複数とを反応させる。
【0080】
式(M1)及び(M2)によって表される出発材料は、式(A1)及び(A2)によって表される単位をそれぞれ形成するので、ピリジニウム化合物に関する上述の好ましい実施形態は、当然ながら出発材料に対して必要に応じて変更して適用される。これは例えば、A1に関してこれまで述べてきた好ましい実施形態が、M1等の場合に対応することを意味する。同じことが、必要に応じて変更して、ピリジニウム化合物の単位Dを形成する化合物(B1)から(B4)に適用される。
【0081】
式(M1)及び(M2)によって表される1種又は複数の出発材料と、1種又は複数の化合物(B1)から(B4)との反応は、典型的には溶媒中で、好ましくは極性溶媒中で実施される。適切な溶媒は、水、グリコール、アセトニトリル、及びアルコール、又はこれらの混合物であり、水が、その生態学的に害のない特性により好ましい。反応温度は通常、50から100℃の範囲であり、好ましくは60から90℃、より好ましくは75から85℃の範囲である。反応は、好ましくは、出発材料の全てが消費されて例えばpHセンサーを使用したpH測定により検出できるまで継続されるが、それはpHが、ピリジン環内の塩基性窒素原子からそれぞれの第4級アンモニウム部分への変換に起因して低下するからである。pH値が、ある特定の期間にわたり、例えば少なくとも10分間一定になると、反応は完了し、終結させることができる。或いは反応は、1から120時間にわたり、好ましくは12から100時間、より好ましくは24から84時間にわたり実施される。
【0082】
本発明の好ましい実施形態では、式(M1)及び(M2)による出発材料の物質の量(これに関しては、複数が使用される場合に式(M1)及び(M2)による全ての出発材料の物質の全量を意味する)の、ピリジニウム化合物の調製に用いられる化合物(B1)から(B4)の物質の量(これに関しては、複数が使用される場合に全ての化合物(B1)から(B4)の物質の全量を意味する)に対するモル比
【0083】
【0084】
が、1:1から1.5:1の範囲であり、より好ましくは1.04:1から1.4:1の範囲であり、更により好ましくは1.05:1から1.25:1の範囲である。これは式(I)による構成ブロック中のAのDに対するモル比も、好ましくは前記範囲にあり、即ち好ましくは1:1から1.5:1にあり、より好ましくは1.04:1から1.4:1の範囲であり、更により好ましくは1.05:1から1.25:1の範囲である。
【0085】
式(M1)による出発材料は、適切なピリジンアルキレン求核剤と、尿素及び/又はグアニジン(適切には、必要に応じてN-保護されている)とを反応させることによって、調製することができる。同様に、式(M2)による出発材料は、たとえ尿素及び/又はグアニジンの2個の分子(適切には、必要に応じてN-保護されている)と適切な二求核剤(例えば、α,ω-ジクロロポリエーテル)との連結後であろうとも、同じ反応によって得ることができる。尿素及び/又はグアニジンの窒素原子の1個(この場合は2個)をマスクする一般的な保護基の使用が、特にグアニジンの場合に望ましくない副反応を回避するため推奨され得る。したがって、尿素との反応は、副反応を回避するのに保護基が必要ではないので、グアニジンとの反応に比べて容易であるので好ましい。
【0086】
ピリジニウム化合物は、ピリジニウム化合物の物理的性質に応じて、受け取ったままの状態で、又はクロマトグラフィ、沈殿、若しくは蒸留等の従来の精製方法により精製して、使用されてもよい。当業者は、通例の実験により適切な方法を決定することができる。
【0087】
式(M1)及び/又は(M2)による出発材料と、化合物(B1)から(B4)との間の連結は、式(M1)及び/又は(M2)による出発材料中のピリジン部分の窒素原子の1個を介して、及び/又は存在する場合にはM2及びM5の窒素原子の1個を介して生ずる。好ましくは、連結は、ピリジン部分の窒素原子で生ずる。
【0088】
本発明の別の実施形態では、本発明による正に帯電したピリジニウム化合物の対イオンとして働くハロゲン化物イオンを、ピリジニウム化合物の調製後に、水酸化物、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩、アルキルスルホン酸塩、例えばメタンスルホン酸塩、アルカリールスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルカリールカルボン酸塩、アリールカルボン酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、及びホスホン酸塩等の陰イオンにより置き換える。ハロゲン化物イオンは、例えば、適切なイオン交換樹脂上でのイオン交換によって置き換えることができる。最も適切なイオン交換樹脂は、Amberlyst(登録商標)A21等の塩基性イオン交換樹脂である。次いでハロゲン化物イオンを、所望の陰イオンを含有する無機酸及び/又は有機酸をイオン交換樹脂に添加することによって置き換えることができる。使用中のめっき浴におけるハロゲン化物イオンの高濃度化は、ピリジニウム化合物がハロゲン化物イオン以外の陰イオンを含有する場合に回避することができる。
【0089】
本発明の一実施形態では、ピリジニウム化合物は、下式(IIa)若しくは(IIb)による構成ブロックを含み、又は化合物は、下式(IIC)によって表され、
【0090】
【0091】
このピリジニウム化合物は、構成ブロック
【0092】
【0093】
に結合された1又は2個の末端基CG1及び/又はCG2を含有し、
単位Aに結合された末端基CG1は、水素、アルキル、アラルキル、G1-、G2-D-、
【0094】
【0095】
からなる群から選択され、
式中、各G1は独立して、下式Rp1-(CH2)r-[CH(Rp2)-CH2-O]s-(CH2)t-により表され、ここで各Rp1は、C1~C8-アルキル、C1~C8-アルケニル、アラルキル、アリール、トリフレート、ノナフレート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、及びハロゲン化物からなる群から選択され、rは0から3の範囲の整数であり、sは1から100の範囲の整数であり、tは1から3の範囲の整数であり、Rp2は互いに独立して、水素、アルキル、アリール、及びアラルキルからなる群から選択され、G2は、式(M1)及びM2)の1つにより表される単位であり、
Dに結合された第2の末端基CG2は、水素、ヒドロキシル基(-OH)、式(M1)又は(M2)により表される単位、E、C1~C8-アルキル、アラルキル、アリール
【0096】
【0097】
からなる群から選択され、Eは、トリフレート、ノナフレート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、及びハロゲン化物から選択される。
【0098】
Eは、好ましくは、トリフレート、ノナフレート、アルキルスルホネート、及びアリールスルホネートから選択される。
【0099】
Rp1は、好ましくは、C1~C8-アルキル、C1~C8-アルケニル、アラルキル、及びアリールからなる群から選択される。
【0100】
ピリジニウム化合物は、式(IIc)によって表される。
【0101】
CG1は、好ましくは、C1~C4-アルキル、ベンジル、G2-D-、Rp1-[CH(Rp2)-CH2-O]s-(CH2)t-から選択され、式中、sは1から20(より好ましくは1から3)の範囲の整数であり、tは2及び3から選択される整数であり、各Rp2は互いに独立して、水素、C1~C4-アルキル、及びフェニルからなる群から選択され(より好ましくは、水素及びメチル、最も好ましくは水素)、各Rp1は独立して、C1~C4-アルキルからなる群から選択される(より好ましくは、ピリジニウム化合物の水溶性を改善させるため、メチルである)。特にCG1は、ピリジニウム化合物の合成を容易にするため、G2-D-になるように選択される。
【0102】
好ましくは、CG2は、式(M1)又は(M2)により表される単位である。
【0103】
金属めっき浴
本発明は更に、少なくとも1つのタイプの還元性金属イオン及び少なくとも1種のピリジニウム化合物を含む、金属又は金属合金めっき浴(以後、「めっき浴」と呼ぶ)に関する。
【0104】
還元性金属イオンは、本発明の文脈において、堆積して金属層又は金属合金層を形成できるような(所与の条件下で)金属イオンであると理解される。本発明の文脈において、還元性金属イオンは、好ましくは金イオン、スズイオン、銀イオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、パラジウムイオン、及び銅イオンからなる群から選択される。前記イオンの適切な供給源は、前記金属の水溶性塩及び/又は水溶性錯体である。非還元性金属イオンには、とりわけ、典型的に適用される条件下では還元することができないアルカリ及びアルカリ土類金属イオンが含まれる。
【0105】
ただ1つのタイプの還元性イオンが、本発明によりめっき浴中に存在する場合、めっき浴を使用したときにこの金属のみが堆積されることになる。2つ以上のタイプの還元性金属イオンが内部に存在する場合、合金が堆積されることになる。本発明の意味の範囲内で、ある特定の還元剤を使用したときに合金を堆積することも可能になり、これは1つ又は複数のタイプの還元性金属イオンと共に、次亜リン酸塩又はアミノボラン等のリン又はホウ素をベースにした共堆積物を形成することになるものである。本発明によるめっき浴は、エレクトロニクス及び半導体産業で使用することができる金属又は金属合金を堆積するのに適切である。
【0106】
2種以上のピリジニウム化合物は、めっき浴内で混合物として使用することが可能である。
【0107】
本発明によるめっき浴は、水性溶液である。「水性溶液」という用語は、溶液中の媒体である主な液体媒体が、水であること意味する。例えばアルコール及びその他の極性有機液体のような、水に対して混和性である他の液体を、添加してもよい。
【0108】
pH調節剤(酸、塩基、緩衝剤)、錯化剤(キレート化剤とも呼ばれる)、安定剤、還元剤、湿潤剤、及び同様のもの等のその他の成分が、めっき浴に添加されてもよい。これらの成分及びその適切な濃度は、当技術分野で公知である。
【0109】
本発明によるめっき浴は、全ての成分を水性液体媒体に、好ましくは水に溶解することによって、調製されてもよい。
【0110】
銅めっき浴
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つのタイプの還元性金属イオンが銅イオンである。そのようなめっき浴は、本明細書では「銅めっき浴」と呼ばれる。前記銅めっき浴は、銅の電気めっきに特に適切であり、したがって好ましくは、電解銅めっき浴である。典型的には、本発明の銅めっき浴は、凹部構造及びデュアルダマシン適用例の充填に適切である。
【0111】
より好ましくは、本発明の銅めっき浴イオンにおける全ての還元性金属イオンの99質量パーセント以上が、銅イオンである。更により好ましくは、本発明の銅めっき浴は、銅イオン以外の更なる還元性金属イオンを含まない(技術的原材料中に一般に存在する微量の不純物、及びFe3+/Fe2+等の典型的に用いられるレドックス対、即ち、銅イオンに対して0.1質量%未満のそのような他の還元性金属イオンは無視する)。特に銅めっき浴は、意図的に添加された亜鉛イオンを含まない。亜鉛及び銅の共堆積は、純粋な銅に比べ、形成された堆積物の導電率を著しく低減させ、そのような亜鉛及び銅の共堆積を、エレクトロニクス産業で使用するのに不適切にする。更に、好ましくは、亜鉛イオンに関して概説したものと同じ理由でスズイオンを含まない。
【0112】
本発明によるピリジニウム化合物は、本発明の銅めっき浴内でレベラーとして働く。レベリング機能及び「レベラー」という用語は、下記を意味する:本発明による銅めっき浴及び本発明による方法を使用して、凹部及び陥凹部等の充填されるべき構造内に、銅を非常に均一な手法で堆積することが可能である。特に、凹部及び陥凹部を全体として充填し、陥凹部/凹部での堆積に比べて表面での銅の堆積を低減させ、任意のボイド又は窪みを回避し又は少なくとも最小限に抑えることが可能である。このことは、実際に変形を示ない、広く滑らかで均一な銅表面が形成されることを保証する。
【0113】
本発明の銅めっき浴における本発明による少なくとも1種のピリジニウム化合物の濃度は、好ましくは0.01mg/Lから1000mg/Lの範囲であり、より好ましくは0.1mg/Lから100mg/L、更により好ましくは0.5mg/Lから50mg/Lに、更になおより好ましくは0.8又は5mg/Lから20mg/Lの範囲である。複数のピリジニウム化合物が使用される場合、使用される全てのピリジニウム化合物の全濃度は、好ましくは、上記にて定義された範囲にある。
【0114】
銅イオンは、好ましくは、下記の銅イオン供給源:硫酸銅、メタンスルホン酸銅等のアルキルスルホン酸銅、p-トルエンスルホン酸銅及びフェニルスルホン酸銅等のアリールスルホン酸銅、塩化銅等の銅ハロゲン化物、酢酸銅、クエン酸銅、フルオロホウ酸銅、酸化銅、炭酸銅、及び前述の混合物の、1種又は複数を使用することによって、浴に含まれる。より好ましくは、硫酸銅、アルキルスルホン酸銅、又は前述の混合物が、銅イオン供給源として使用される。銅めっき浴内での銅イオン濃度は、好ましくは1g/Lから70g/Lの範囲である。
【0115】
銅めっき浴は更に、硫酸、フルオロホウ酸、リン酸、及びメタンスルホン酸、並びに前述の混合物からなる群から好ましくは選択される、少なくとも1種の酸を含有する。前記酸は、好ましくは、1g/Lから400g/Lの濃度で、より好ましくは5g/Lから250g/Lの濃度で、銅めっき浴に含有される。
【0116】
銅めっき浴は、好ましくは、≦3のpH値を有し、より好ましくは≦2、更により好ましくは≦1.5のpH値を有する。
【0117】
銅めっき浴は、任意選択で、当技術分野で公知の少なくとも1種の加速剤-光沢剤添加剤を含有する。前記加速剤-光沢剤は、好ましくは、有機チオール-、スルフィド-、ジスルフィド-、及びポリスルフィド-化合物からなる群から選択される。より好ましい加速剤-光沢剤添加剤は、3-(ベンズチアゾリル-2-チオ)-プロピルスルホン酸、3-メルカプトプロパン-1-スルホン酸、エチレンジチオジプロピルスルホン酸、ビス-(p-スルホフェニル)-ジスルフィド、ビス-(ω-スルホブチル)-ジスルフィド、ビス-(ω-スルホヒドロキシプロピル)-ジスルフィド、ビス-(ω-スルホプロピル)-ジスルフィド、ビス-(ω-スルホプロピル)-スルフィド、メチル-(ω-スルホプロピル)-ジスルフィド、メチル-(ω-スルホプロピル)-トリスルフィド、O-エチル-ジチオ炭酸-S-(ω-スルホプロピル)-エステル、チオグリコール酸、チオリン酸-O-エチル-ビス-(ω-スルホプロピル)-エステル、3-N,N-ジメチルアミノジチオカルバモイル-1-プロパンスルホン酸、3,3'-チオビス(1-プロパンスルホン酸)、チオリン酸-トリス-(ω-スルホプロピル)-エステル、及びそれらの対応する塩からなる群から選択される。銅浴組成物中に任意選択で存在する全ての加速剤-光沢剤添加剤の濃度は、好ましくは0.01mg/Lから100mg/Lの範囲であり、より好ましくは0.05mg/Lから50mg/Lの範囲である。
【0118】
銅めっき浴は、任意選択で、当技術分野で公知の少なくとも1種の更なる担体-抑制剤添加剤を含有する。好ましくは、少なくとも1種の更なる担体-抑制剤添加剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ステアリン酸ポリグリコールエステル、アルコキシル化ナフトール、オレイン酸ポリグリコールエステル、ステアリルアルコールポリグリコールエーテル、ノニルフェノールポリグリコールエーテル、オクタノールポリアルキレングリコールエーテル、オクタンジオール-ビス-(ポリアルキレングリコールエーテル)、ポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、及びポリ(プロピレン-グリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)からなる群から選択される。より好ましくは、任意選択の担体-抑制剤添加剤は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ-(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、及びポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)からなる群から選択される。銅めっき浴中の前記任意選択の担体-抑制剤添加剤の濃度は、好ましくは0.005g/Lから20g/Lの範囲であり、より好ましくは0.01g/Lから5g/Lの範囲である。
【0119】
任意選択で、水性銅めっき浴は、本発明のピリジニウム化合物に加え、窒素含有有機化合物、例えばポリエチレンイミン、アルコキシル化ポリエチレンイミン、アルコキシル化ラクタム、及びそれらのポリマー、ジエチレントリアミン及びヘキサメチレンテトラミン、ポリエチレンイミン保持ペプチド、ポリエチレンイミン保持アミノ酸、ポリビニルアルコール保持ペプチド、ポリビニルアルコール保持アミノ酸、ポリアルキレングリコール保持ペプチド、ポリアルキレングリコール保持アミノ酸、アミノアルキレン保持ピロール、及びアミノアルキレン保持ピリジン、有機色素、例えばヤヌスグリーンB、ビスマルクブラウンY、及びアシッドバイオレット7、硫黄含有アミノ酸、例えばシステイン、フェナジニウム塩、及びそれらの誘導体からなる群から好ましくは選択される、少なくとも1種の更なるレベラー添加剤を含有する。適切なウレイルポリマーはEP2735627A1に開示されており、前記ポリアルキレングリコール保持アミノ酸及びペプチドはEP2113587B9に公開されており、EP2537962A1は、適切なアミノアルキレン保持ピロール及びピリジンについて教示する。好ましい更なるレベラー添加剤は、窒素含有有機ピリジニウム化合物から選択される。前記任意選択のレベラー添加剤は、好ましくは、銅めっき浴中に0.1mg/Lから100mg/Lの量で含有される。
【0120】
銅めっき浴は、任意選択で更に、ハロゲン化物イオン、好ましくは塩化物イオンの少なくとも1つの供給源を、20mg/Lから200mg/L、より好ましくは30mg/Lから60mg/Lの量で含有する。ハロゲン化物イオンに関する適切な供給源は、例えば塩酸、又は塩化ナトリウム等のアルカリハロゲン化物である。
【0121】
任意選択で、銅めっき浴は、少なくとも1種の湿潤剤を含有する。これらの湿潤剤は、当技術分野では界面活性剤とも呼ばれる。少なくとも1種の湿潤剤は、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性、及び/又は両性界面活性剤からなる群から選択されてもよく、0.01から5質量%の濃度で使用される。
【0122】
本発明の一実施形態では、Fe2+/3+イオン等のレドックス対が銅めっき浴に含有される。そのようなレドックス対は、銅堆積用に不活性アノードと組み合わせて反転パルスめっきが使用される場合、特に有用である。反転パルスめっき及び不活性アノードと組み合わせてレドックス対を使用する銅めっきに適切なプロセスは、例えば、米国特許第5,976,341号及び米国特許第6,099,711号に開示されている。銅めっき浴は、銅の電解析出に特に適切である。
【0123】
本発明の一実施形態では、低濃度銅めっき浴が使用される。前記低濃度銅めっき浴は、銅イオンを1から10g/L、好ましくは2から8g/Lの濃度で、及び酸を2から15g/L、好ましくは5から10g/Lの濃度で含む。これは前記浴の過電位を増大させて、堆積の制御をより容易にし、したがって、凹部構造のより再現性ある充填が可能になる。
【0124】
本発明の別の実施形態では、高濃度銅めっき浴が使用される。前記高濃度銅めっき浴は、銅イオンを10から70g/L、好ましくは20から50g/Lの濃度で、及び酸を10から400g/L、好ましくは50から200g/Lの濃度で含む。これは浴の導電率を増大させ、その結果、より速く銅が堆積する。
【0125】
本発明による方法
工程は、好ましくは所与の順序で実施されるが、必ずしも現下の順序である必要はない。工程(ii)及び任意選択の工程(iii)は、同時に、逐次、又は工程(ii)を実施したその後に工程(ii)を継続しながら任意選択の工程(iii)が実施されてもよい。本発明による方法は、任意選択の工程(iii)を含むことが好ましく、したがって金属堆積を、電解金属堆積にする。方法は任意選択で、当技術分野で公知の濯ぎ、乾燥、又は前処理工程等、命名された工程の間に更なる工程を含む。
【0126】
任意の基板を、本発明による方法で使用してもよい。典型的な基板は、導電性及び半導体基板である。導電性基板は、金属シード層も含む金属基板であり(例えば、プラスチック等の典型的な非導電性基板上にパラジウムが堆積されて、プラスチックに金属めっきできるようにする)、半導体基板は、例示的にはシリコン及びガラス基板である。基板は、本発明のめっき浴で処理するのに適切な、少なくとも1つの表面を有する。基板は、その全体が上記列挙された材料で作製され、又は上記列挙された材料で作製された1つ若しくは複数の表面のみ含む。本発明の意味の範囲内で、複数の表面を同時に又は逐次処理することも可能である。
【0127】
好ましくは、基板は、プリント回路板、IC基板、回路担体、相互接続デバイス、半導体ウエハ、及びガラス基板からなる群から選択される。トレンチ、ブラインドマイクロビア、シリコン貫通ビア、及びガラス貫通ビア等の1つ又は複数の凹部構造を有する前述の群の基板が、より好ましい。次いで金属又は金属合金、好ましくは銅又は銅合金を、凹部構造内に堆積する。
【0128】
本発明によるめっき浴は、10から100℃で、所望の堆積厚を堆積させるのに十分な任意の時間にわたり動作する。適切な温度及び持続時間は、通例の実験によって当業者が決定することができる。
【0129】
めっき浴は、従来の垂直又は水平めっき設備のいずれかで使用することができる。或いは、噴水めっき設備を使用してもよい。基板、又は表面の少なくとも一部を、噴霧、拭い、浸漬、液浸を用いて、又はその他の適切な手段によって、本発明のめっき浴に接触させてもよい。それによって、金属又は金属合金の堆積、好ましくは銅又は銅合金の堆積が、基板の表面の少なくとも一部の上に得られる。
【0130】
めっき浴又は基板をめっきプロセス中に、即ち金属又は金属合金の堆積中に揺動させることが優先される。揺動は、例えば、振盪、回転、撹拌のようなめっき浴の機械的運動によって、めっき浴内での基板の機械的運動、例えばその回転によって、又は液体を連続的にポンプ送出することによって、又は超音波処理、高温、又は気体供給(空気、又はアルゴン若しくは窒素等の不活性ガスで、めっき浴をパージする等)によって実現されてもよい。
【0131】
任意選択で、少なくとも1つの基板を、1つ又は複数の前処理工程に供する。前処理工程は、当技術分野で公知である。前処理工程は、例えば、清浄化工程、(マイクロ-)エッチング工程、及び活性化工程とすることができる。清浄化工程は、典型的には、1種又は複数の界面活性剤を含む水性溶液を使用し、例えば、金属めっき堆積に有害な汚染物質を基板の少なくとも1つの表面から除去するのに使用される。(マイクロ-)エッチング工程は通常、基板の少なくとも1つの表面の表面積を増大させるため、過酸化水素等の1種又は複数の酸化剤を任意選択で含む酸性溶液を用いる。活性化工程は通常、少なくとも1つの表面に金属がより堆積し易くなるように、ほとんどの場合にパラジウムである金属触媒を、少なくとも1つの基板の少なくとも1つの表面に堆積させる必要がある。時々、活性化工程の前に、予備浸漬工程を行い、又は活性化工程に続けて後浸漬工程を行い、どちらも当技術分野で公知である。
【0132】
好ましい銅めっき浴は、好ましくは本発明による方法で、15℃から50℃の温度範囲で、より好ましくは20℃から40℃の温度範囲で、電流を基板及び少なくとも1つのアノードに印加することによって動作する。好ましくは、カソード電流密度は0.05A/dm2から12A/dm2の範囲であり、より好ましくは0.1A/dm2から7A/dm2が印加される。
【0133】
本発明による方法で低濃度銅めっき浴を使用する場合に特に適切な、本発明の一実施形態では、下記の通りである:最初に低電流密度(例えば、0.5から5mA/cm
2)を使用して、例えば凹部構造を充填し、その後、1つ又は複数の高電流密度工程を行い、前記工程のそれぞれは、過負荷段階に有用な最初の低電流密度工程の場合よりも高い電流密度を有する(米国特許出願第2014/209476号A1、特にその段落69~74及び
図7に開示されている方法も参照)。例えば、1つ又は複数の高電流密度工程における電流密度は、好ましくは10から20又は30mA/cm
2の範囲である。任意選択で、低電流密度工程はその前に、非常に短い期間にわたり高電流密度を用いる、例えば0.05から1秒間で15から20mA/cm
2を用いる高温進入工程が行われる。
【0134】
任意選択の工程(iii)が本発明による方法に含まれる場合、本発明のめっき浴は、DCめっき及び(反転)パルスめっきに使用することができる。不活性及び可溶性アノードは共に、本発明によるめっき浴から金属又は金属合金を堆積するときに利用することができる。
【0135】
本発明の利点は、銅めっき浴が、凹部構造の均一な充填を可能にすること、及び堆積物がボイド及び窪みを含まないことである。均一充填は、本発明の文脈において、一般にアスペクト比が<1であるトレンチ及び一般にアスペクト比が>1であるビア等、種々のアスペクト比を有する種々の凹部構造に、1工程で充填することができ、その結果、種々のアスペクト比を有するこれら種々の凹部構造に類似の層分布が得られることが理解されよう。
【0136】
本発明の更なる利点は、銅めっき浴が、最適なマウンド形成結果を得ることを可能にすることである。マウンド形成は、いかなる窪みもいかなる過負荷も示さない平面銅堆積を、得ることができることを意味する。
【0137】
好ましくは、純粋な銅が堆積される(技術的原材料中に一般に存在する任意の微量の不純物は無視する)。純粋な銅は、その高い導電率に起因して半導体産業に特に有用である。純粋な銅は、本発明の文脈において、堆積物の全金属含量に対して95質量%の最小限の銅含量が形成され、好ましくは98質量%、より好ましくは99.0質量%、最も好ましくは99.90質量%が形成されることを、理解されたい。より好ましい実施形態では、形成される堆積物は、少なくとも95質量%の銅、好ましくは少なくとも99質量%の銅、より好ましくは少なくとも99.9質量%の銅からなる。
【0138】
有利には及び好ましくは、本発明の銅めっき浴及び本発明による方法の使用では、銅堆積物のキログラム当たり1000mg未満の有機不純物、より有利には及びより好ましくは、銅堆積物のキログラム当たり800mg未満の有機不純物、更により有利には及び更により好ましくは、銅堆積物のキログラム当たり600mg未満の有機不純物、更になおより好ましくは、銅堆積物のキログラム当たり200mg未満の有機不純物、最も好ましくは、銅堆積物のクログラム当たり100mg未満の有機不純物を含有する銅堆積物を形成することが可能になる。
【0139】
使用クレーム
本発明は更に、金属又は金属合金めっき浴での少なくとも1種のピリジニウム化合物の使用、詳細には銅めっき浴でのレベラーとして使用に関する。上述の好ましい実施形態は、必要に応じて変更してこの実施形態に適用される。
【0140】
次に本発明について、下記の非限定的な実施例を参照することにより例示する。
【実施例】
【0141】
以下において他に指示しない限り、本明細書の出願日に入手可能なテクニカルデータシートに記述されるような、商品を使用した。
【0142】
1H-NMRスペクトルを、400MHz、スペクトルオフセット4300Hz、掃引幅9542Hz(25℃)で記録した(NMR分光器、Bruker社から提供)。使用した溶媒は、他に指示しない限り、d6-DMSOであった。
【0143】
ピリジニウム化合物の質量平均分子量Mwは、下記のGPC装置及び条件を使用するゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって決定した:SECurity GPC System PSS、ポンプ:Agilent 1260、カラム:PL Aquagel OH 30+40、40℃、溶離液A:60体積% 0.3mol/Lのギ酸水溶液+40体積%メタノール、流量:1mL/分、検出器Rl 40℃、時間:30分、注入体積:50マイクロリットル、較正:PVP=ポリ-(2ビニルピリジン)、較正:800~256000) PPS標準、データシステム:WIN GPC V8.0。
【0144】
FEI Helios Nanolab 450Sを、集束イオンビーム-走査型電子顕微鏡法(FIB-SEM)として使用した。集束イオンビームミリングを使用して高品質断面を作成し、高分解能走査型電子顕微鏡法を使用して撮像を行った(後方散乱、例えば50,000倍の倍率)。堆積物の厚さは、この方法を使用して得た。
【0145】
或いは、堆積物の厚さを各基板の10カ所で測定し、これを使用して、XRF機器Fischerscope XDV-SDD(Helmut Fischer GmbH社、ドイツ)を使用するXRFにより層の厚さを決定した。堆積物の層状構造を想定することにより、層の厚さをそのようなXRFデータから計算することができる。
【0146】
動的SIMS(D-SIMS)の形である、Cameca SASにより提供された磁場型二次イオン質量分光計(MS-SIMS)を用いた。セシウム(Cs+)イオンビームを、炭素、硫黄、酸素、及び塩素を含む非金属不純物の分析に使用した。システムを較正するため、イオン注入により作成された標準を使用した。
【0147】
Olympus社製のレーザー走査共焦点顕微鏡(Olympus Lext OLS4100)を使用して、めっきされた試料の過負荷の共形性を測定した。
【0148】
全ての適用実施例におけるピリジニウム化合物の濃度は、ピリジニウム化合物そのものに対するものであり、以下に記述される合成方法によって得られた溶液に対するものではない。
【0149】
1,3-ビス(ピリジン-4-イルメチル)尿素(式(M1)による出発材料)の調製
磁気撹拌棒、凝縮器、温度計、及びバブラーを備えた100mlのガラス反応器に、12.52gの尿素及び46.00gの4-(アミノメチル)ピリジンを室温で投入した。反応混合物を10分以内で120℃に加熱し、その結果、少量のアンモニアが形成された。次いで反応混合物の温度を段階的に160℃まで上昇させた(130℃で19時間、140℃で3時間、150℃で2時間、160℃で19時間)。反応終了後、反応混合物を60℃に冷却し、その温度で4時間保持した後、室温に冷却した。次いで60mlの酢酸エチルを添加し、得られた懸濁液を75℃で24時間撹拌した。室温に冷却した後、固体を濾別し、50mlの酢酸エチルでそれぞれ3回洗浄し、真空乾燥した。透明な白色固体48.81g(収率97.6%)が得られた。
【0150】
【0151】
1,3-ビス(ピリジン-3-イルメチル)尿素(式(M1)による出発材料)の調製
上述の調製方法を、12.52gの尿素及び45.10gの3-(アミノメチル)ピリジンで繰り返した。透明な白色固体47.21g(収率94.4%)が得られた。
【0152】
【0153】
1,3-ビス(ピリジン-2-イルメチル)尿素(式(M1)による出発材料)の調製
上述の調製方法を、12.52gの尿素及び45.10gの2-(アミノメチル)ピリジンで繰り返した。透明な白色固体47.82g(収率95.6%)が得られた。
【0154】
【0155】
ピリジニウム化合物1(PC1)の調製
磁気撹拌棒、凝縮器、及び温度センサーを備えた100mlのガラス反応器に、12.67gの1,3-ビス(ピリジン-4-イルメチル)尿素(式(M1)による出発材料)及び30gの水を投入し、その後、80℃に加熱した。次いで7.48gの1,2-ビス(2-クロロエトキシ)エタン(化合物(B3))を滴下し、得られた混合物を、pH値をモニターしながら26時間撹拌した。反応が、一定pH値により示されるように終了すると、透明な赤褐色溶液が得られ、これを更に水で希釈して、ピリジニウム化合物1の40質量%の水溶液50gを得た。
【0156】
Mw 4600g/mol、多分散性3.7、
【0157】
【0158】
ピリジニウム化合物2(PC2)の調製
磁気撹拌棒、凝縮器、及び温度センサーを備えた100mlのガラス反応器に、12.67gの1,3-ビス(ピリジン-3-イルメチル)尿素(式(M1)による出発材料)及び30gの水を投入し、その後、80℃に加熱した。次いで7.48gの1,2-ビス(2-クロロエトキシ)エタン(化合物(B3))を滴下し、得られた混合物を、pH値をモニターしながら55時間撹拌した。反応が、一定pH値により示されるように終了すると、透明な黄色溶液が得られ、これを更に水で希釈して、ピリジニウム化合物2の40質量%の水溶液50gを得た。
【0159】
Mw 2300g/mol、多分散性2.3、
【0160】
【0161】
ピリジニウム化合物3(PC3)の調製
磁気撹拌棒、凝縮器、及び温度センサーを備えた100mlのガラス反応器に、12.67gの1,3-ビス(ピリジン-2-イルメチル)尿素(式(M1)による出発材料)及び30gの水を投入し、その後、80℃に加熱した。次いで7.48gの1,2-ビス(2-クロロエトキシ)エタン(化合物(B3))を滴下し、得られた混合物を78時間撹拌し、一定pH値に達した後に赤褐色の固体を得た。次いで生成物を水に溶解して、ピリジニウム化合物3の40質量%の水溶液50gを得た。
【0162】
Mw<880g/mol、
【0163】
【0164】
(適用実施例1)
過負荷の均一性(マウンド形成特性)の制御
5g/LのCu2+イオン(硫酸銅として添加される)、10g/Lの硫酸、50mg/Lの塩化物イオン(塩酸として添加される)、4mL/LのAtomplate(登録商標)抑制剤、及び4.3mL/LのAtomplate(登録商標)加速剤(共にAtotech Deutschland GmbH社の製品)を含む溶液を、使用した。ピリジニウム化合物は、個々の銅めっき浴が得られるように、後続の表に示された濃度で、レベラーとして前記溶液に添加した。
【0165】
約20mm×25mmのクーポンからなる基板を、低k誘電体を使用して300mm 32nmノード試験パターンウエハから切断した。全てのフィーチャーは、200nmの深さであった。これらの実験で使用されるフィーチャーは、線の空間に対する比が1:1であり、100nmのピッチを有していた。バリア/ライナー/シード積層体は、AMAT Enduraツール上で工業規格PVD法を使用する、3nm TaN/3nm Ta/30nm Cuからなるものであった。クーポンを、ビーカー規模のクーポンめっき装置でめっきし、その温度は25℃であり、アノードは、ナフィオン膜によってカソードチャンバーから離間された可溶性の銅であった。波形は、進入工程及びその後の3つの全く異なるめっき工程からなるものであった。進入工程は、90RPMで0.1秒間、公称16mA/cm2に一致させるため、電位制御された高温進入を使用した。第1のめっき工程は、30RPMで24秒間、4mA/cm2であった。第2のめっき工程は、30RPMで14秒間、10mA/cm2であった。第3のめっき工程は、150RPMで40秒間、20mA/cm2であった。被膜の最終的な厚さは約400nmであった。
【0166】
めっき後、長さ約50μm及び幅100umの、100nmピッチの稠密な1:1ラインアレイの領域を選択して、マウンド形成特性(即ち、過負荷又は窪みの存在)を評価し、共焦点顕微鏡で分析した。結果を表1にまとめる。
【0167】
【0168】
全てのピリジニウム化合物は、濃度上昇により改善するレベリング効果を示した。意外にも、PC1及びPC2のレベリング効果は、PC3の場合に比べて更により顕著であることがわかった。したがって銅めっき浴は、凹部構造内に銅を堆積するときに望ましくない過負荷又は窪みを与えないものを、容易に得ることができる。
【0169】
(適用実施例2)
充填性能
5g/LのCu2+イオン(硫酸銅として添加される)、10g/Lの硫酸、50mg/Lの塩化物イオン(塩酸塩として添加される)、4mL/LのAtomplate(登録商標)抑制剤、4.3mL/LのAtomplate(登録商標)加速剤(共にAtotech Deutschland GmbH社の製品)、及び3.5mL/Lのピリジニウム化合物PC1を含む溶液を、使用した。
【0170】
低k誘電体を使用して300mm 32nmノード試験パターンウエハから切断された、約20mm×25mmのクーポンからなる基板を使用した。全てのフィーチャーは、200nmの深さであった。これらの実験で使用されるフィーチャーは、線の空間に対する比が1:1であり、48nmのピッチを有していた。バリア/ライナー/シード積層体は、AMAT Enduraツール上で工業規格PVD法を使用する、3nm TaN/3nm Ta/30nm Cuからなるものであった。クーポンを、ビーカー規模のクーポンめっき装置でめっきし、その温度は25℃であり、アノードは、ナフィオン膜によってカソードチャンバーから離間された可溶性の銅であった。波形は、進入工程及びその後の3つの全く異なるめっき工程からなるものであった。進入工程は、90RPMで0.1秒間、公称16mA/cm2に一致させるため、電位制御された高温進入を使用した。第1のめっき工程は、30RPMで24秒間、4mA/cm2であった。第2のめっき工程は、30RPMで14秒間、10mA/cm2であった。第3のめっき工程は、150RPMで40秒間、20mA/cm2であった。被膜の最終的な厚さは約400nmであった。
【0171】
めっき後、長さ約50μm及び幅100μmの、100nmピッチの稠密な1:1ラインアレイの領域を、FIB-SEM断面画像で検査した。これは
図1に見ることができ、基板の平面断面が示されている。断面は、様々な深さで個々の銅線を目に見えるようにするために、めっきされた基板をある角度で切断することによって作製した。基板を完全に充填し、銅堆積物にボイドはなかった。
【0172】
(適用実施例3)
銅堆積物の欠陥(SP2及びSP3の欠陥)
基板として、下記の通り均一な層を持つ300nmの非パターン化ウエハを使用した。誘電体層は、テトラエトキシシランから形成された100nmのSiO2であった。バリア/ライナー/シード積層体は、AMAT Enduraツール上で工業規格PVD法を使用する、4nm TaN/2nm Ta/45nm Cuからなるものであった。ウエハを、Sabre(登録商標)Extreme(商標)めっきツール(LAM Research)内でめっきした。基板を、前記めっきツール内で、それぞれ5g/LのCu2+イオン(硫酸銅として添加される)、10g/Lの硫酸、50mg/Lの塩化物イオン(塩化ナトリウムとして添加される)、4mL/LのAtomplate(登録商標)抑制剤、4mL/LのAtomplate(登録商標)加速剤(共にAtotech Deutschland GmbH社の製品)、及びピリジニウム化合物PC1を後続の表に示される濃度で含む、温度25℃の銅めっき浴と接触させた。波形は、進入工程及びその後の3つの全く異なるめっき工程からなるものであった。進入工程は、90RPMで0.1秒間、公称16mA/cm2に一致させるため、電位制御された高温進入を使用した。第1のめっき工程は、30RPMで24秒間、4mA/cm2であった。第2のめっき工程は、30RPMで14秒間、10mA/cm2であった。第3のめっき工程は、150RPMで80秒間、20mA/cm2であった。被膜の最終的な厚さは約700nmであった。次いで、表面に銅堆積物が形成された基板を、KLA Tencor Surfscan SP2及びKLA Tencor Surfscan SP3(KLA Tencor社)の両方を使用して分析して、銅堆積物中に形成された欠陥をカウントした。結果を表2にまとめる。
【0173】
【0174】
本発明のピリジニウム化合物を含む、本発明の銅めっき浴で形成された銅堆積物には、欠陥がほとんどなかった。欠陥がほとんどないことは、例えばそのように得られた銅堆積物の光学検査を容易にし、全体の収率を増大させるので、半導体産業において非常に望ましい。
【0175】
(比較例1)
銅堆積物中の欠陥(SP2及びSP3欠陥)
適用実施例3を繰り返したが、本発明のピリジニウム化合物の代わりにポリエチレンイミン(Mw:2000g/mol)を、2mg/Lの濃度で使用した。SP2及びSP3欠陥の数は、両方の測定で10,000個を超えた。
【0176】
したがって、銅堆積物中の欠陥の数は、本発明のピリジニウム化合物を銅めっき浴のレベラーとして使用したときに、著しく低減させることができる。
【0177】
(適用実施例4)
銅堆積物純度
基板として、均一な層を持つ300mmの非パターン化ウエハを使用した。誘電体層は、テトラエトキシシランから形成された100nmのSiO2であった。バリア/ライナー/シード積層体は、AMAT Enduraツール上で工業規格PVD法を使用する、4nm TaN/2nm Ta/45nm Cuからなるものであった。ウエハを、Sabre(登録商標)Extreme(商標)めっきツール(LAM Research)内でめっきした。基板を、前記めっきツール内で、それぞれ5g/LのCu2+イオン(硫酸銅として添加される)、10g/Lの硫酸、50mg/Lの塩化物イオン(塩化ナトリウムとして添加される)、4mL/LのAtomplate(登録商標)抑制剤、4mL/LのAtomplate(登録商標)加速剤(共にAtotech Deutschland GmbH社の製品)、及び添加剤を後続の表に示される濃度で含む、温度25℃の銅めっき浴と接触させた。波形は、進入工程及びその後の3つの全く異なるめっき工程からなるものであった。進入工程は、90RPMで0.1秒間、公称16mA/cm2に一致させるため、電位制御された高温進入を使用した。第1のめっき工程は、30RPMで24秒間、4mA/cm2であった。第2のめっき工程は、30RPMで14秒間、10mA/cm2であった。第3のめっき工程は、150RPMで80秒間、20mA/cm2であった。被膜の最終的な厚さは約700nmであった。形成された銅堆積物を、二次イオン質量分光法(SIMS)により分析した。結果を表3にまとめる。
【0178】
【0179】
銅堆積物中に存在する炭素、硫黄、塩素、及び酸素の量を、測定してきた。これらの原子は、銅堆積物中に存在することになる有機又はポリマー不純物から得られる。比較例で形成された銅堆積物は全て、著しく高い量のそのような有機不純物を示したことがわかる。それとは対照的に、銅めっき浴中の本発明のピリジニウム化合物は、ごく僅かな有機不純物しか銅堆積物中に蓄積されなかった。
【0180】
本発明のその他の実施形態は、本明細書を検討することから又は本明細書に開示される発明を実施することから、当業者に明らかにされよう。本明細書及び実施例は、単なる例示と見なされ、本発明の真の範囲は下記の特許請求の範囲のみによって定義されるものとする。