(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】多孔質ポリマーベース構造体を含む使い捨て吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/53 20060101AFI20220107BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20220107BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61F13/53 300
A61F13/15 320
A61F13/15 390
A61F13/534
(21)【出願番号】P 2019572214
(86)(22)【出願日】2017-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2017066937
(87)【国際公開番号】W WO2019007511
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】506215320
【氏名又は名称】エシティ・ハイジーン・アンド・ヘルス・アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ブロムストレーム
(72)【発明者】
【氏名】ペータル・レンバリ
(72)【発明者】
【氏名】ケント・ヴァルティアイネン
(72)【発明者】
【氏名】アクセル・エーリクソン
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト・ヴッツェル
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0175171(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0374876(US,A1)
【文献】特開2016-13209(JP,A)
【文献】特開2011-231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨て吸収性物品
(例えば、おむつ、パンツ型おむつ、パンティーライナー、生理用ナプキン、又は失禁用具)であって、
内相の液滴を取り囲む連続外相を含み、外相が1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーと光重合開始剤とを含む、エマルジョンを、所定の3Dモデルに従って、1層ずつ堆積及び光重合させる工程と、
1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーから形成された連続ポリマー相から内相を除去して、
それによって、少なくとも以下の3種類の細孔:(i) 内相が除去された場所から生じる細孔、(ii) (i)による細孔を相互接続している細孔、及び(iii) 3Dモデルによって予め規定された細孔、を含むモノリシック多孔質構造体を生成する工程と
を含む方法によって得られる多孔質ポリマーベース構造体を含む、使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
連続外相が油相であり、内相が水性相である、請求項1に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
(ii)による細孔の平均直径が、(i)による細孔の平均直径よりも小さく、且つ/又は(iii)による細孔の平均直径が、(i)による細孔の平均直径よりも大きい、請求項1又は2に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
(i)による細孔の平均直径が、1~250μ
mであり、且つ/又は(ii)による細孔の平均直径が、0.1~100μ
mである、請求項1から3のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項5】
(iii)による細孔の平均直径が、30μm~2000μ
mである、請求項1から4のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項6】
内相/外相の容積比が、74/26を超える、請求項1から5のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項7】
1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーが、(i) ガラス状モノマー
(例えば、スチレン及びスチレン系モノマー、イソボルニルアクリレート、並びにこれらの組合せ
);(ii) ゴム状モノマー
(例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート系モノマー
(例えば、2-エチルヘキシルアクリレート
)ブタジエン、イソプレン、及びこれらの組合せ
);並びに(iii) 二官能性又はそれ以上の官能性の架橋モノマー
(例えば、芳香族ジビニル又はジアリルモノマー
(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、又はジアリルフタレート
)、ポリオールのジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル
(例えば、TMTPA、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3-ブチレンジ(メタ)アクリレート、及びアリルメタクリレート
)並びにこれらの組合せ、並びにこれらのモノマー又はモノマーの組合せのオリゴマーから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項8】
外相が、(i
) ガラス様ポリマー(高Tg)を生成する、1種のモノマー
(例えば、スチレン又はイソボルニルアクリレート(IBOA))と、(ii
) ゴム様ポリマー(低Tg)を生成する、1種のモノマー
(例えば、2-エチルヘキシルアクリレート(EHA))とを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項9】
吸収性物品が、液体浸透性カバーシートと、バックシートと、カバーシートとバックシートとの間に配置された吸収性層とを含み、吸収性層が多孔質ポリマーベース構造体を含むか又はそれからなる、請求項1から8のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項10】
(i)による細孔の平均直径が、1~50μ
mであり、且つ/又は(ii)による細孔の平均直径が、0.1~8μ
mである、請求項9に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項11】
多孔質ポリマーベース構造体が、親水化処理
(例えば、空気プラズマ処理、又は空気プラズマ処理及びそれに続くアクリル酸のプラズマ堆積
)に供されたものである、請求項9又は10に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項12】
(iii)による細孔が、SAP粒子を含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項13】
吸収性物品が、液体浸透性カバーシートと、バックシートと、カバーシートとバックシートとの間に配置された吸収性層と、カバーシートと吸収性層との間に配置された分配/注入層とを含み、分配/注入層は多孔質ポリマーベース構造体を含むか又はそれからなる、請求項1から8のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項14】
(i)による細孔の平均直径が、50~250μ
mであり、且つ/又は(ii)による細孔の平均直径が、0.1~100μ
mである、請求項13に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項15】
多孔質ポリマーベース構造体が、(iii)による細孔により接続された(それによりチャネルを形成する)2つの主要な対向面を有し、(iii)による細孔が、体液の流れが横方向に向けられて損傷点から離れるように配置される、請求項13又は14に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項16】
多孔質ポリマーベース構造体の全開放気孔率が、60~99.5
%である、請求項1から15のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の吸収性物品の製造方法であって、
(a) 内相の液滴を取り囲む連続外相を含み、外相が1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーと光重合開始剤とを含むエマルジョンを、所定の3Dモデルに従って、1層ずつ堆積及び光重合させる工程、並びに、
1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーから形成された連続ポリマー相から内相を除去して、
それによって、少なくとも以下の3種類の細孔:(i) 内相が除去された場所から生じる細孔、(ii) (i)による細孔を相互接続している細孔、及び(iii) 3Dモデルによって予め規定された細孔、を含むモノリシック多孔質構造体を生成する工程
によって、多孔質ポリマーベース構造体を製造する工程と、
(b) バックシートと液体浸透性カバーシートとを用意し、バックシートと、多孔質ポリマーベース構造体と、液体浸透性カバーシートとを組み立てて吸収性物品を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項18】
堆積及び光重合させる工程が、UV照射下
(例えば、光造形(SLA)、デジタル光処理(DLP)、又は連続液界面製造(CLIP))で行われる、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質ポリマーベース構造体を含む、おむつ又は生理用ナプキン等の衛生使い捨て吸収性物品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体液を吸収するためのポリマーフォームは、おむつ、失禁ガード(失禁保護具)及び生理用ナプキン等の衛生吸収性製品に広く使用されている。
【0003】
良好な液体貯蔵能力を得るために、これらのポリマーフォームは通常、連続気泡構造体となっている。このような構造体は、通常、高内相エマルジョン(high internal phase emulsion)(HIPE)を重合させることにより調製される。
【0004】
HIPEは、多い方の内相が、連続的な少ない方の外相内に分散している、粘稠なエマルジョンである。典型的に、内相は容積の74%以上を占める。内相若しくは外相(又は両方)がモノマーを含有する場合、ポリマーをHIPE内で合成することができる。モノマーが外相中にのみ存在する場合、多孔質エマルジョン鋳型ポリマー(porous-emulsion templated polymer)を合成することができる。
【0005】
多孔質エマルジョン鋳型ポリマーが合成されると、内相を除去して多孔質構造を残すことができる。典型的に、このような多孔質構造は、以下の2種類の細孔:(i)内相が除去された場所から生じる細孔、及び(ii)(i)による細孔を相互接続している細孔を有する。
【0006】
先行技術は、そのような連続気泡構造を有するポリマーフォームを開示している。ポリマーフォームは、HIPEを使用して作製することができる。
【0007】
より具体的には、WO 1993/21234 A1が、多孔質架橋ポリマー材料の調製方法を開示している。この方法は、(a)重合性モノマーと二官能性不飽和架橋用モノマー、内相としての水、及び界面活性剤の混合物を含む油中水エマルジョンを用意する工程と、(b)油中水エマルジョンを加熱して、重合性モノマーを重合させ架橋する工程とを含む。油中水エマルジョンはHIPEであり得る。
【0008】
WO 1993/04092 A1は、12~100mL/gの細孔容積と; 0.5~5.0m2/gの比表面積と; 5.1kPaの封圧が15分後に5~95%の歪みを生じるような、圧縮たわみに対する抵抗性と、を有するポリマーフォーム材料を開示している。これらのフォーム材料はHIPEを使用して調製することができ、吸収性物品での使用に適している。
【0009】
EP 0 878 481 B1は、液体吸収の開始の際に開口し、本質的に互いに接続している、複数のセルを含むポリマーフォーム構造体を備えた、フォーム材料を開示している。このフォーム構造体は、非イオン性ブロックコポリマーである界面活性剤を含み、フォーム構造体の内部表面は親水性である。フォーム構造体は、吸収性物品としての使用に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO 1993/21234 A1
【文献】WO 1993/04092 A1
【文献】EP 0 878 481 B1
【非特許文献】
【0011】
【文献】Susec in Macromol. Rapid Commun. 2013年、34号、938~943頁
【文献】Susec in Macromol. Rapid Commun. 2013年、34号、938~9438頁(項目3.5.)
【文献】Silverstein(Polymer 55号(2014)304~320頁)
【文献】Owenら、Journal of the Mechanical Behavior of Biomedical Materials、2016年2月、54号、159~172頁
【文献】Johnson (Adv. Mater. 2013年、25号、3178~3181頁)
【文献】Sears (Macromol. Rapid Commun. 2016年、DOI: 10.1002/marc.201600236)
【文献】Owen (Journal of the Mechanical Behavior of Biomedical Materials、2016年2月、54号、159~172頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の1つの目的は、体液への曝露の際に、フォーム材料の小さい細孔へのより良いアクセスを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、良好な吸収能力を有する、吸収性物品用のフォーム材料を提供することである。
【0014】
本発明の一実施形態における更なる目的は、分配層内の体液の流れ及び流れの方向を制御することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、おむつ、パンツ型おむつ、パンティーライナー、生理用ナプキン又は失禁用具等の使い捨て吸収性物品であって、
・内相の液滴を取り囲む連続外相を含み、外相が1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーと光重合開始剤とを含むエマルジョンを、所定の3Dモデルに従って、1層ずつ堆積及び光重合させる工程と、
・1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーから形成された連続ポリマー相から内相を除去して、
それによって、少なくとも以下の3種類の細孔:(i)内相が除去された場所から生じる細孔、(ii)(i)による細孔を相互接続している細孔、及び(iii)3Dモデルによって予め規定された細孔、を含むモノリシック多孔質構造体を生成する工程と
を含む方法によって得られる多孔質ポリマーベース構造体(多孔質ポリマーをベースとする構造体)を含む、使い捨て吸収性物品に関する。
【0017】
通常の意味に従って、「モノリシック」とは、多孔質構造体が単片として形成されていることを意味する。
【0018】
本発明はまた、液体浸透性カバーシートと、バックシートと、カバーシートとバックシートとの間に配置された吸収性層とを含み、吸収性層が多孔質ポリマーベース構造体を含むか又はそれからなる、このような使い捨て吸収性物品に関する。
【0019】
本発明はまた、液体浸透性カバーシートと、バックシートと、カバーシートとバックシートとの間に配置された吸収性層と、カバーシートと吸収性層との間に配置された分配/注入層(distribution/inlet layer)とを含み、分配/注入層は多孔質ポリマーベース構造体を含むか又はそれからなる、このような使い捨て吸収性物品に関する。
【0020】
本発明はまた、吸収性物品の製造方法であって、
・(a)内相の液滴を取り囲む連続外相を含み、外相が1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーと光重合開始剤とを含むエマルジョンを、所定の3Dモデルに従って、1層ずつ堆積及び光重合させる工程、並びに
1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーから形成された連続ポリマー相から内相を除去して、
それによって、少なくとも以下の3種類の細孔:(i)内相が除去された場所から生じる細孔、(ii)(i)による細孔を相互接続している細孔、及び(iii)3Dモデルによって予め規定された細孔、を含むモノリシック多孔質構造体を生成する工程
によって、多孔質ポリマーベース構造体を製造する工程と、
・(b)バックシートと液体浸透性カバーシートとを用意し、バックシートと、多孔質ポリマーベース構造体と、液体浸透性カバーシートとを組み立てて吸収性物品を形成する工程と
を含む、方法に関する。
【0021】
多孔質ポリマーベース構造体は、使い捨て吸収性物品の良好な吸収能力に寄与すると考えられている。より具体的には、3Dモデルによって予め規定された細孔(マクロ細孔)の存在は、エマルジョンの光重合から生じる細孔(ミクロ細孔)と相まって、良好な吸収能力をもたらす。マクロ細孔の存在は、体液への曝露時におけるフォーム材料のミクロ細孔へのアクセスを改善すると考えられている。
【0022】
更に、ミクロ細孔は、エマルジョンの光重合の結果であるため、ビルドファイルに含める必要はない。したがって、印刷解像度はあまり重要ではなくなるため、印刷プロセスを高速化することが可能である。
【0023】
本発明の別の利点は、多孔質ポリマーベース構造体の吸収能力及び他の関連パラメータを、高い精度で事前に決定し得ることである。これは、マクロ細孔のサイズと位置が予め決定されており、ミクロ細孔のサイズはエマルジョンの内相の液滴サイズを調整することよって制御することができるためである。
【0024】
以下の表現「(本発明の)(好ましい)実施形態」及び同様の文言は、その全ての態様、すなわち、吸収性物品を製造するための特許請求される方法、及びこの方法によって得られる吸収性物品に関連すると理解されるべきである。同じことは任意選択の特徴及び好ましい特徴の説明にも当てはまる。
【0025】
説明が「好ましい」実施形態/特徴、又は「実施形態」(「等」若しくは「例えば」等の用語に続く実施形態)を指す場合、これらの実施形態/特徴の組合せも、実施形態/特徴のこの組合せが技術的に意味を有する限り、開示されていると考えられる。
【0026】
以下、用語「含む」の使用は、それが技術的に意味を有する限り、より限定的な実施形態として、用語「からなる」をも開示していると理解されるべきである。
【0027】
本発明の実施形態
本発明は、以下の実施形態(「項目」)を含む。
【0028】
1.おむつ、パンツ型おむつ、パンティーライナー、生理用ナプキン又は失禁用具等の使い捨て吸収性物品であって、
内相の液滴を取り囲む連続外相を含み、外相が1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーと光重合開始剤とを含むエマルジョンを、所定の3Dモデルに従って、1層ずつ堆積及び光重合させる工程と、
1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーから形成された連続ポリマー相から内相を除去して、
それによって、少なくとも以下の3種類の細孔:(i)内相が除去された場所から生じる細孔、(ii)(i)による細孔を相互接続している細孔、及び(iii)3Dモデルによって予め規定された細孔、を含むモノリシック多孔質構造体を生成する工程と
を含む方法によって得られる多孔質ポリマーベース構造体を含む、使い捨て吸収性物品。
【0029】
2.連続外相が油相であり、内相が水性相である、項目1に記載の使い捨て吸収性物品。
【0030】
3.(ii)による細孔の平均直径が、(i)による細孔の平均直径よりも小さく、且つ/又は(iii)による細孔の平均直径が、(i)による細孔の平均直径よりも大きい、項目1又は2に記載の使い捨て吸収性物品。
【0031】
4.(i)による細孔の平均直径が、1~250μm、好ましくは4~150μm、より好ましくは5~50μm、例えば5~35μmであり、且つ/又は(ii)による細孔の平均直径が、0.1~100μm、好ましくは0.1~8μm、好ましくは0.2~6μm、例えば0.5~5μmである、項目1、2、又は3のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0032】
5.(iii)による細孔の平均直径が、30μm~2000μm、好ましくは50μm~1500μm、例えば100~1000μmである、項目1、2、3又は4のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0033】
6.内相/外相の容積比が、74/26を超える、項目1、2、3、4又は5のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0034】
7.1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーが、(i)ガラス状モノマー、例えば、スチレン及びスチレン系モノマー、イソボルニルアクリレート、並びにこれらの組合せ;(ii)ゴム状モノマー、例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート系モノマー、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、ブタジエン、イソプレン、及びこれらの組合せ;並びに(iii)二官能性又はそれ以上の官能性の架橋用モノマー、例えば芳香族ジビニル又はジアリルモノマー、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、又はジアリルフタレート、ポリオールのジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル、例えば、TMTPA、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3-ブチレンジ(メタ)アクリレート、及びアリルメタクリレート、並びにこれらの組合せ、並びにこれらのモノマー又はモノマーの組合せのオリゴマーから選択される、項目1、2、3、4、5又は6のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0035】
8.外相が、(i)スチレン又はイソボルニルアクリレート(IBOA)等のガラス様ポリマー(高Tg)を生成する、1種のモノマーと、(ii)2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)等のゴム様ポリマー(低Tg)を生成する、1種のモノマーとを含む、項目1、2、3、4、5、6又は7のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0036】
9.吸収性物品が、液体浸透性カバーシートと、バックシートと、カバーシートとバックシートとの間に配置された吸収性層とを含み、吸収性層が多孔質ポリマーベース構造体を含むか又はそれからなる、項目1、2、3、4、5、6、7又は8のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0037】
10.(i)による細孔の平均直径が、1~50μm、好ましくは2~35μm、例えば4~15μmであり、且つ/又は(ii)による細孔の平均直径が、0.1~8μm、好ましくは0.2~6μm、例えば0.5~5μmである、項目9に記載の使い捨て吸収性物品。
【0038】
11.多孔質ポリマーベース構造体が、親水化処理、例えば、空気プラズマ処理、又は空気プラズマ処理及びそれに続くアクリル酸のプラズマ堆積に供されたものである、項目9又は10に記載の使い捨て吸収性物品。
【0039】
12.(iii)による細孔が、SAP粒子を含む、項目9、10又は11のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0040】
13.吸収性物品が、液体浸透性カバーシートと、バックシートと、カバーシートとバックシートとの間に配置された吸収性層と、カバーシートと吸収性層との間に配置された分配/注入層とを含み、分配/注入層は多孔質ポリマーベース構造体を含むか又はそれからなる、項目1、2、3、4、5、6、7又は8のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0041】
14.(i)による細孔の平均直径が、50~250μm、好ましくは60~200μm、例えば、70~150μmであり、且つ/又は(ii)による細孔の平均直径が、0.1~100μm、好ましくは0.1~8μm、より好ましくは0.2~6μm、例えば0.5~5μmである、項目13に記載の使い捨て吸収性物品。
【0042】
15.多孔質ポリマーベース構造体が、(iii)による細孔により接続された(それによりチャネルを形成する)2つの主要な対向面を有し、(iii)による細孔が、体液の流れが横方向に向けられて損傷点から離れるように配置される、項目13又は14に記載の使い捨て吸収性物品。
【0043】
16.多孔質ポリマーベース構造体の全開放気孔率が、60~99.5%、好ましくは75~99%、例えば80~95%である、先行項目1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0044】
17. 項目1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16のいずれか一項に記載の吸収性物品の製造方法であって、
(a)内相の液滴を取り囲む連続外相を含み、外相が1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーと光重合開始剤とを含むエマルジョンを、所定の3Dモデルに従って、1層ずつ堆積及び光重合させる工程、並びに、
1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーから形成された連続ポリマー相から内相を除去して、
それによって、少なくとも以下の3種類の細孔:(i)内相が除去された場所から生じる細孔、(ii)(i)による細孔を相互接続している細孔、及び(iii)3Dモデルによって予め規定された細孔、を含むモノリシック多孔質構造体を生成する工程
によって、多孔質ポリマーベース構造体を製造する工程と、
(b)バックシートと液体浸透性カバーシートとを用意し、バックシートと、多孔質ポリマーベース構造体と、液体浸透性カバーシートとを組み立てて吸収性物品を形成する工程と
を含む、方法。
【0045】
18.堆積及び光重合させる工程が、UV照射下で、好ましくは、光造形(SLA)、デジタル光処理(DLP)、又は連続液界面製造(CLIP)によって、行われる、項目17に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、おむつ、パンツ型おむつ、パンティーライナー、生理用ナプキン又は失禁用具等の使い捨て吸収性物品であって、
・内相の液滴を取り囲む連続外相を含み、外相が1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーと光重合開始剤とを含むエマルジョンを、所定の3Dモデルに従って、1層ずつ堆積及び光重合させる工程と、
・1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーから形成された連続ポリマー相から内相を除去して、
それによって、少なくとも以下の3種類の細孔:(i)内相が除去された場所から生じる細孔、(ii)(i)による細孔を相互接続している細孔、及び(iii)3Dモデルによって予め規定された細孔、を含むモノリシック多孔質構造体を生成する工程と
を含む方法によって得られる多孔質ポリマーベース構造体を含む、使い捨て吸収性物品に関する。
【0047】
「使い捨て吸収性物品」として、我々は、尿、水様便、女性の分泌物又は月経液等の体液を吸収できる物品を考えている。これらの吸収性物品としては、おむつ、パンツ型おむつ、パンティーライナー、生理用ナプキン又は失禁保護具(例えば大人に使用されるもの)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
好ましい一実施形態において、連続外相は油相であり、内相は水性相である。別の実施形態において、連続外相は水性相であり、内相は油相である。
【0049】
更に好ましい一実施形態において、内相/外相の容積比は74/26を超える。好ましくは、内相/外相の容積比は少なくとも80/20、好ましくは少なくとも85/15、好ましくは少なくとも90/10、より好ましくは少なくとも95/5である。このような容積比はHIPEの特徴である。
【0050】
外相の成分
好ましい一実施形態において、外相(例えば、油性外相)は以下の成分:
(a)1種又は複数種の光重合性モノマーと、
(b)1種又は複数種の光重合開始剤と、
(c)任意選択で1種又は複数種のUV吸収剤と、
(d)任意選択で1種又は複数種の溶媒と
を含む。
【0051】
これらの成分の好ましい量は、それぞれ(油性)外相の総質量に対して、
(a)少なくとも50質量%、特に少なくとも80質量%の光重合性モノマー、
(b)0.01~10質量%、特に0.1~5質量%の光重合開始剤、
(c)任意選択で、0.01~2質量%、特に0.05~1質量%のUV吸収剤、
(d)50質量%以下、例えば1~30質量%又は5~20質量%の溶媒
である。
【0052】
(a)光重合性モノマー及び/又はオリゴマー
好ましい一実施形態において、外相に含有される1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーは、(i)ガラス状モノマー;(ii)ゴム状モノマー;並びに(iii)二官能性及びそれ以上の官能性(例えば三官能性)の架橋用モノマー及び/又はこれらのモノマー若しくはモノマーの組合せのオリゴマーから選択される。
【0053】
本発明において、用語「ガラス状モノマー」とは、好ましくは、35℃超、好ましくは40℃~90℃、より好ましくは45℃~80℃(高ガラス転移温度)のガラス転移温度(Tg)を有する非晶質ホモポリマーを生成するモノマーを指す。ガラス状モノマーはガラス様ポリマーを形成する。
【0054】
ガラス状モノマーは、当技術分野で十分に確立されており、スチレン、スチレン系モノマー(例えば、エチルスチレン)、イソボルニルアクリレート及びこれらの組合せを含む。特に好ましいものは、イソボルニルアクリレート及びスチレンである。
【0055】
本発明において、用語「ゴム状モノマー」は、好ましくは、35℃以下、好ましくは30℃~-30℃、より好ましくは25℃~-20℃、より好ましくは20℃~-15℃(低ガラス転移温度)のガラス転移温度(Tg)を有する非晶質ホモポリマーを生成するモノマーを指す。ゴム状モノマーはゴム様ポリマーを形成する。
【0056】
ゴム状モノマーは、当技術分野で十分に確立されており、C4~C14アルキルアクリレート、例えば、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシル(ラウリル)アクリレート、イソデシルアクリレート、及びテトラデシルアクリレート;アリール及びアルカリルアクリレート、例えば、ベンジルアクリレート及びノニルフェニルアクリレート; C6~C16アルキルメタクリレート、例えば、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ドデシル(ラウリル)メタクリレート、及びテトラデシルメタクリレート;アクリルアミド、例えばN-オクタデシルアクリルアミド; C4~C12アルキルスチレン、例えばp-n-オクチルスチレン;イソプレン;ブタジエン;並びにそのようなモノマーの組合せを含む。特に好ましいものは、2-エチルヘキシルアクリレートである。
【0057】
ガラス転移温度(Tg)は、ポリマーが硬く脆い状態から柔らかく柔軟な状態に変化する温度として定義される。つまり、Tgは、ポリマーのガラス状態とゴム状態との間の転移の中点を表す。Tgは、ASTM D7426-08(2013)に従う示差走査熱量測定で測定することができる。
【0058】
理論に拘束されることを望むものではないが、ガラス状モノマーは多孔質ポリマーベース構造体に十分な剛性を与え、ゴム状モノマーは多孔質ポリマーベース構造体に十分な柔軟性を与えて、モノマーはその所望の機能に適したものになると考えられている。
【0059】
二官能性及びそれ以上の官能性(例えば、三官能性)の架橋モノマーは、当技術分野で十分に確立されており、その例としては、ジウレタンジメタクリレート(DUDMA);芳香族ジビニルモノマー、例えば、ジビニルベンゼン及びその類似体、例えば、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、ジビニルアルキルベンゼン、ジビニルフェナントレン、ジビニルビフェニル、ジビニルジフェニルメタン、ジビニルベンジル、ジビニルフェニルエーテル、ジビニルジフェニルスルフィド、ジビニルフラン、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン、及びこれらの混合物;ジオールのジアクリレート及びその類似体、例えば、ジメタクリレート、ジアクリルアミド及びジメタクリルアミド;ジアリルモノマー、例えばジアリルフタレート;ポリオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、3-ブチレンジ(メタ)アクリレート、及びアリルメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA);並びにポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート(PPGDMA)並びにこれらの組合せが挙げられる。特に好ましいものは、芳香族ジビニルモノマー、例えば、ジビニルベンゼン及びその類似体、例えば、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、ジビニルアルキルベンゼン、ジビニルフェナントレン、ジビニルビフェニル、ジビニルジフェニルメタン、ジビニルベンジル、ジビニルフェニルエーテル、ジビニルジフェニルスルフィド、ジビニルフラン、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン、及びこれらの混合物;並びにTMPTAである。
【0060】
別の好ましい実施形態において、外相は、(i)ガラス様ポリマーを生成する1種のモノマーと、(ii)ゴム様ポリマーを生成する1種のモノマーとを含む。好適なモノマーは、上記に挙げたものと同じである。特に好ましい組合せは、2-エチルヘキシルアクリレート/スチレン及び2-エチルヘキシルアクリレート/イソボルニルアクリレートである。この実施形態において、前述の二官能性及びそれ以上の官能性のモノマー(iii)、例えば、TMTPA、PPGDMA又はDUDMAも加えられてよい。
【0061】
一般に、5/95~60/40、好ましくは10/90~50/50、例えば、15/85~40/60の、ガラス状モノマー/オリゴマー(i)のゴム状モノマー/オリゴマー(ii)に対する質量比(i/ii)を使用することが好ましい。
【0062】
二官能性及びそれ以上の官能性(例えば、三官能性)の架橋用モノマー/オリゴマー(iii)は、単独で使用することができるが、ガラス状モノマー/オリゴマー(i)及び/又はゴム状モノマー/オリゴマー(ii)との混合物でも使用することができる。後者の場合、(iii)の量は、モノマー及び/又はオリゴマー(i)、(ii)、及び(iii)の総量に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~30質量%、例えば、10~25質量%である。
【0063】
更に、Susec in Macromol. Rapid Commun. 2013年、34号、938~943頁によって教示されるように、多孔質ポリマーベース構造体の柔軟性を高めるために、ペンタエリトリトール(pentaeythritol)テトラキス3-メルカプトプロピオネート(「TT」)等の多官能性チオールをエマルジョンに添加してもよい。
【0064】
(b)光開始剤
本発明は、モノマーの重合を開始してポリマーを形成するために、外相において光重合開始剤(「光開始剤」)を利用する。油性外相において使用されてよい好適な光開始剤としては、アシルホスフィンオキシド、例えば、ビス-アシルホスフィンオキシド(BAPO)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(例えば、Irgacure 819)、及び(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド;又はα-ヒドロキシ、α-アルコキシ又はα-アミノ-アリールケトン、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン;(これらは(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンのように(例えば、50/50の容積比で)組み合わせて使用してもよい);並びに開裂可能ゲルマニウム系開始剤、例えばIvocerinが挙げられる。光開始剤の使用は、既知のHIPE系ポリマーベース吸収性構造体の製造に使用される熱開始剤よりも均質な構造体をもたらし得る。
【0065】
(c)UV吸収剤(任意選択)
好ましい一実施形態において、光重合性組成物は、1種又は複数種の(c)UV吸収剤を更に含んでよい。UV吸収剤の種類は、UV光を吸収することができ、光重合性組成物に可溶であり、好ましくは低揮発性を示す限り、原則として限定されない。光重合工程において光源としてUV光を使用する場合、UV吸収剤がUV光線の浸透深度を減少させるため、UV吸収剤を使用することが有益である可能性がある。これにより、光重合性モノマー及び/又はオリゴマーは、生成される実際の層近傍の領域における光重合の開始を防ぎ、それによりモノリシック吸収性構造体の構造的特徴の解像度を高める。
【0066】
UV吸収剤は、単独で又は組み合わせて使用してよい。UV吸収剤は、有機化合物又は無機化合物であってよい。有機UV吸収剤の典型的な市販例は、ベンゾトリアゾール、例えば、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6'-tert-ブチル-4'-メチル-2,2'-メチレンビスフェノール、例えば、BASF社製Tinuvin Carboprotect(登録商標)である。
【0067】
連続外相中のUV吸収剤の含有量は通常、連続外相の質量に対して最大2質量%、例えば、0.01~2質量%、好ましくは0.05~1質量%である。
【0068】
(d)溶媒(任意選択)
更に、前述のように、エマルジョンの粘度及び/又は最終的多孔質ポリマーベース構造体の細孔構造を調整するために、トルエン等の溶媒を連続外相に添加してもよい。次に、別途の方法工程において、例えば揮発性溶媒での洗浄及び/又は(例えば、真空下での)蒸発によって、残留溶媒を除去することが必要になる場合がある。
【0069】
水性内相
一実施形態において、内相は水である。一実施形態において、内相は、金属塩、好ましくはアルカリ土類金属塩、より好ましくは塩化カルシウムを含む。金属塩の含有量は、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは1~10質量%、更に好ましくは約5質量%である。金属塩の存在により、オストワルド熟成が防止されるか、又は少なくとも軽減される。
【0070】
一実施形態において、安定したエマルジョンの形成を可能にするために、界面活性剤をエマルジョンに含めてもよい。好適な界面活性剤としては、ソルビタンエステル、例えば、ラウリン酸ソルビタン(例えば、SPAN TM 20)、パルミチン酸ソルビタン(例えば、SPAN TM 40)、ステアリン酸ソルビタン(例えば、SPAN TM 60及びSPAN TM 65)、モノオレイン酸ソルビタン(例えば、SPAN TM 80)、トリオレイン酸ソルビタン(例えば、SPAN TM 85)、セスキオレイン酸ソルビタン(例えば、EMSORB TM 2502)、及びイソステアリン酸ソルビタン(例えば、CRILL TM 6);ポリグリセロールエステル及びエーテル(例えば、TRIODAN TM 20);ポリオキシエチレン脂肪酸、エステル及びエーテル、例えば、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、ポリエトキシル化オレイルアルコール(例えば、BRIJ TM 92及びSIMUSOL TM 92)等;一、二、及び三リン酸エステル、例えば、オレイン酸の一、二、及び三リン酸エステル(例えば、HOSTAPHAT);ポリオキシエチレンソルビトールエステル、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサステアレート(例えば、ATLAS TM G-1050);エチレングリコール脂肪酸エステル;モノイソステアリン酸グリセロール(例えば、IMWITOR 780K);グリセロールと脂肪アルコールのエーテル(例えば、CREMOPHOR WO/A);多価アルコールのエステル;合成一級アルコールエチレンオキシド縮合物(例えば、SYNPERONIC A2);脂肪酸のモノ及びジグリセリド(例えば、ATMOS TM 300);ポリ(プロピレンオキシド)とポリ(エチレンオキシド)のトリブロックコポリマー(例えば、PEL121); PEG 30-ジポリヒドロキシステアリン酸(例えば、Hypermer B246);並びにポリリシノール酸ポリグリセロールが挙げられる。好ましい界面活性剤としては、PEL121、Hypermer B246、ポリリシノール酸ポリグリセロール、ステアリン酸ソルビタン(例えば、SPAN 65)、モノオレイン酸ソルビタン(例えば、SPAN TM 80)及びトリオレイン酸ソルビタン(例えば、SPAN TM 85)が挙げられ、特に好ましいものは、モノオレイン酸ソルビタン(例えば、SPAN TM 80)及びトリオレイン酸ソルビタン(例えば、SPAN TM 85)である。界面活性剤は、それぞれ連続外相の質量に対して、好ましくは1~40質量%、特に2~35質量%、例えば、3~25質量%又は3~15質量%の量で使用される。
【0071】
細孔径
本発明によれば、細孔の直径に関して特定の制限はない。好適な直径は、機械的安定性、毛細管力、十分に高い吸収速度等の既知の基準を考慮して、当業者が選択することができる。所定の試料の細孔は必ずしもほぼ同じサイズではないため、細孔径は平均細孔径を指す。
【0072】
好ましい一実施形態において、(ii)による細孔の平均直径は(i)による細孔の平均直径より小さく、且つ/又は(iii)による細孔の平均直径は(i)による細孔の平均直径より大きい。
【0073】
更なる好ましい一実施形態において、(i)による細孔の平均直径は、1~250μm、好ましくは4~150μm、より好ましくは5~50μm、例えば5~35μmであり、且つ/又は(ii)による細孔の平均直径は、0.1~100μm、好ましくは0.1~8μm、より好ましくは0.2~6μm、例えば0.5~5μmである。
【0074】
細孔タイプ(i)の直径は、重合前の内相液滴のサイズに依存する。内相の液滴サイズが大きいほど、細孔タイプ(i)の直径が大きくなる。内相の液滴サイズを変更する方法は、当技術分野で周知であり、混合/せん断、温度の調整、溶媒の添加、エマルジョンのエージング、並びに界面活性剤の組成及び量の変更によるエネルギー入力の変更を含む。液滴サイズを変更できる他の方法があり、当業者はそのような方法を認識しているであろう。
【0075】
細孔タイプ(ii)の直径は、内相容積の増加とともに増加する。
【0076】
多孔質ポリマーベース構造体の平均細孔径を決定するために多くの方法が利用可能である。平均細孔径を決定するための1つの有用な方法は、例えばSEMによる直接的写真測定を含む。この方法では、多孔質ポリマーベース構造体の破断面の顕微鏡写真が作成される。この顕微鏡写真に、例えば10ミクロンの寸法を表すスケールが重ね合わされる。このようなスケールを使用して、画像解析手順を介して平均細孔径を決定することができる。本明細書では、直接的写真測定を使用して、平均細孔径を測定する。
【0077】
細孔の平均直径は、Susec in Macromol. Rapid Commun. 2013年、34号、938~9438頁(項目3.5.)に記載された方法によっても決定できる。
【0078】
好ましい一実施形態において、(iii)による細孔の平均直径は、30μm~2000μm、好ましくは50μm~1500μm、例えば100~1000μmである。細孔タイプ(iii)の直径は3Dモデルによって予め決定されているため、容易に制御及び測定することができる。
【0079】
連続外相としての水性相
一実施形態によれば、連続外相は前述の水性相であり、内相は油相である。モノマーは、好ましくは、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及びN-イソプロピルアクリルアミドから選択される。モノマー含有量は、好ましくは水性外相の約20~40%、より好ましくは25~35%、より好ましくは約30%である。好ましい架橋剤は、N,N-メチレンビスアクリルアミドである。これにより、ポリマーの比表面積が増加し、吸水率が増加するためである。
【0080】
水性外相で使用できる好適な光開始剤としては、ペルオキソ二硫酸カリウム(PPS)及び過酸化水素等の水溶性ペルオキソ化合物が含まれる。
【0081】
親水性ポリHIPEに適したエマルジョン及び製造条件も、Silverstein(Polymer 55号(2014)304~320頁)に記載されている。
【0082】
多孔質ポリマーベース構造体を含む吸収性物品及び吸収性層
好ましい一実施形態において、吸収性物品は、液体浸透性カバーシートと、バックシートと、カバーシートとバックシートとの間に配置された吸収性層とを含み、吸収性層は多孔質ポリマーベース構造体を含むか又はそれからなる。
【0083】
液体浸透性カバーシート(トップシート)は着用者の身体に面している。吸収性物品の反対側には、カバーシート(バックシート)が存在する場合があり、カバーシート(バックシート)は、使用中、通常は着用者の衣服に面しており、好ましくは液体不浸透性である。バックシートは、例えば、プラスチックフィルム、プラスチックコーティングされた不織布、又は疎水性不織布を含むか、又はそれらからなることができる。
【0084】
好適なトップシートは、織布及び不織布材料(例えば、繊維の不織布ウェブ)、開口プラスチックフィルム等のポリマー材料、例えば、有孔の成形熱可塑性フィルム及びハイドロフォームされた熱可塑性フィルム;多孔質フォーム;網状フォーム;網状熱可塑性フィルム;及び熱可塑性スクリム等の広範囲の材料から製造することができる。好適な織布及び不織布材料は、天然繊維又は天然繊維と合成繊維の組合せから構成され得る。トップシートの全て又は一部を占めることができる好適な合成繊維の例としては、ポリアミド(例えば、ナイロン)、アクリル(例えば、ポリアクリロニトリル)、芳香族ポリアミド(例えば、アラミド)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリエステル、ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、天然ゴム、ラテックス、スパンデックス(ポリウレタン)並びにこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。複数のタイプの繰り返し単位を含有する合成繊維は、各高分子鎖(strand)内(コポリマー)、高分子鎖(strand)間(ホモポリマーブレンド)、又はこれらの組合せ(コポリマーのブレンド)において分子レベルで繰り返し単位を組み合わせることから得ることができ、又は、ナノスケール、マイクロスケール、又はマクロスケールのより高いスケールレベルの繰り返し単位の別個の相を組み合わせることから得ることができる(例えば、多成分繊維)。多成分繊維の各成分は、ホモポリマー、コポリマー、又はそれらのブレンドを含むことができる。二成分繊維は、多成分繊維の一般的な型である。コポリマー中の2つ以上のタイプの繰り返し単位は、ランダムに、又は各タイプの交互ブロックに配置され得る。異なるタイプの繰り返し単位のブロックは、それぞれの端部で互いに結合する(ブロックコポリマー)か、又は少なくとも1種のブロックのそれぞれの端部間で互いに結合する(グラフトコポリマー)ことができる。
【0085】
不織布材料は、繊維と不織布材料がほぼ同じ時点で形成される直接押出プロセスによって、又は別途に後の時点で不織布材料中に配置できる予備成形繊維によって形成することができる。例示的な直接押出プロセスとしては、典型的に層を形成する、スパンボンディング、メルトブロー、溶媒紡糸、エレクトロスピニング、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な「敷設(laying)」プロセスとしては、湿式敷設(wet laying)及び乾式敷設(dry laying)が挙げられる。例示的な乾式敷設プロセスとしては、典型的に層を形成する、空気敷設、カーディング、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。上記のプロセスの組合せにより、一般にハイブリッド又は複合材と呼ばれる不織布が得られる。不織布材料中の繊維は、典型的に、重なり合った接合部のいくつかにおいて1つ又は複数の隣接する繊維に接合されている。繊維は、機械的絡み合いによって、化学結合、又はこれらの組合せによって、接合され得る。
【0086】
バックシートは、吸収性層によって吸収された滲出物が、ベッドシーツ及び下着等の吸収性物品に接触する可能性がある他の外部物品を汚すことを防ぐ。好ましい実施形態において、バックシートは、液体(例えば、尿)に対して実質的に不浸透性であり、不織布と、約0.012mm~約0.051mmの厚さを有する熱可塑性フィルム等の薄いプラスチックフィルムとの積層体を含む。好適なバックシートフィルムとしては、Tredegar Industries Inc. 社(Terre Haute, Ind.)によって製造され、商品名X15306、X10962、及びX10964で販売されているものが挙げられる。他の好適なバックシート材料としては、滲出物がバックシートを通過することを防止しながらも、蒸気が吸収性物品から逃げることを可能にする、通気性材料を挙げることができる。例示的な通気性材料としては、織布ウェブ、不織布ウェブ、フィルム被覆不織布ウェブ等の複合材料、及び微孔性フィルム等の材料を挙げることができる。
【0087】
この実施形態の好ましい態様において、(i)による細孔の平均直径が、1~50μm、好ましくは2~35μm、例えば4~15μmであり、且つ/又は(ii)による細孔の平均直径が、0.1~8μm、好ましくは0.2~6μm、例えば0.5~5μmである。
【0088】
この実施形態の別の好ましい態様において、多孔質ポリマーベース構造体は、親水化処理、例えば、空気プラズマ処理、又は空気プラズマ処理及びそれに続くアクリル酸のプラズマ堆積に供されたものである。好適なプラズマ処理方法は、Owenら、Journal of the Mechanical Behavior of Biomedical Materials、2016年2月、54号、159~172頁に開示されている。
【0089】
この実施形態の別の好ましい態様において、(iii)による細孔は超吸収性ポリマー(SAP)粒子を含む。
【0090】
多孔質ポリマーベース構造体にSAP粒子を挿入するための可能な方法が多くある。これらの方法としては以下の方法が挙げられる。
【0091】
- 3D印刷されたオブジェクトは、まだビルドプレート上にある間に、SAP粉末で満たされた槽に浸漬される。SAP粉末は構造体全体に吸い上げられる。SAP粉末は構造体内の空隙に閉じ込められる。空隙は、適量のSAP粉末が最終的に適切な場所に収まるように設計及び配置されている。
【0092】
- 3D印刷された構造体は、SAP粒子の流動床内に降下させられる。粒子が構造内の空隙に流れ込む。流動化がオフになる。構造体内の残りのSAP粉末は、3D印刷された構造体の空隙/細孔内に詰まる。
【0093】
- 3D印刷された構造体が、SAP粒子で満たされた槽内に降下させられる。3D印刷された細部の表面における残留モノマーの湿りは接着剤として機能し、SAP粉末がオブジェクトに付着することを可能にする。その後、細部はUVチャンバーで後硬化される。
【0094】
- SAP粉末が、ビルドプレートの穴から、3D印刷された構造体に堆積する。
【0095】
- ノズルが、3D印刷されたオブジェクトにUV硬化性SAPコーティングを吹き付ける。その後、コーティングはUVチャンバー内で硬化される。
【0096】
- 3D印刷された構造体が、SAP粒子で満たされた槽内に降下させられる。オブジェクト及び/又はSAP粒子が帯電する。電荷が、静電流によって粒子を構造体に付着させる。
【0097】
- 複数の針を使用して、SAPが構造体に押出/注入される。
【0098】
- ビルドプレートが、SAP粒子で満たされた槽内に降下させられる。ビルドプレートが振動し始め、SAP粒子が構造体内の細孔に入り込む。
【0099】
多孔質ポリマーベース構造体を含む分配/注入層
好ましい一実施形態において、吸収性物品は、液体浸透性カバーシートと、バックシートと、カバーシートとバックシートとの間に配置された吸収性層と、カバーシートと吸収性層との間に配置された分配/注入層とを含み、分配/注入層は多孔質ポリマーベース構造体を含むか又はそれからなる。この捕捉/分配層は、トップシートに浸透する体液を除去し、且つ/又は入ってくる体液を吸収性層の表面全体に分配することを助ける。
【0100】
この実施形態において、吸収性層は、一般に圧縮性であり、形状適合性であり、着用者の皮膚への刺激がなく、尿及び他の身体滲出物等の液体を吸収及び保持することができる、任意の吸収性材料を含んでよい。吸収性層は、コアラップ(core wrap)で部分的又は全体的に囲まれていてもよい。いくつかの特定の製品において、吸収性層は完全に省略されてもよい。
【0101】
トップシート及びバックシートは、前述の材料と同じ材料から選択されてよい。
【0102】
この実施形態の好ましい態様において、(i)による細孔の平均直径は、50~250μm、好ましくは60~200μm、例えば70~150μmであり、且つ/又は(ii)による細孔の平均直径が、0.1~100μm、好ましくは0.1~8μm、より好ましくは0.2~6μm、例えば0.5~5μmである。
【0103】
吸収性物品を設計するとき、多くの場合、利用可能な吸収能力を最大限に活用することが1つの目的となる。本発明の好ましい一実施形態において、多孔質ポリマーベース構造体は、(iii)による細孔により接続された(それによりチャネルを形成する)2つの主要な対向面を有し、(iii)による細孔は、体液の流れが横方向に向けられて損傷点から離れるように配置される。
【0104】
気孔率
本発明の更なる利点の1つは、適切な3Dモデルを使用することにより、多孔質ポリマーベース構造体の製造の前に、全開放気孔率を容易に決定することができることである。好ましい一実施形態において、多孔質ポリマーベース構造体の全開放気孔率は、60~99.5%、好ましくは75~99%、より好ましくは80~95%である。
【0105】
全開放気孔率は、圧入方法、例えば水銀圧入により測定可能であり、水銀圧入は、当技術分野でよく知られた方法である。例えば、Johnson (Adv. Mater. 2013年、25号、3178~3181頁)に記載された水銀ポロシメトリー法を参照されたい。
【0106】
吸収性物品の製造方法
本発明はまた、吸収性物品の製造方法であって、
(a)内相の液滴を取り囲む連続外相を含み、外相が1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーと光重合開始剤とを含むエマルジョンを、所定の3Dモデルに従って、1層ずつ堆積及び光重合させる工程、並びに、
1種又は複数種の光重合性モノマー及び/又はオリゴマーから形成された連続ポリマー相から内相を除去して、
それによって、少なくとも以下の3種類の細孔:(i)内相が除去された場所から生じる細孔、(ii)(i)による細孔を相互接続している細孔、及び(iii)3Dモデルによって予め規定された細孔、を含むモノリシック多孔質構造体を生成する工程
によって、多孔質ポリマーベース構造体を製造する工程と、
(b)バックシートと液体浸透性カバーシートとを用意し、バックシートと、多孔質ポリマーベース構造体と、液体浸透性カバーシートとを組み立てて吸収性物品を形成する工程と
を含む、方法に関する。
【0107】
重合前のエマルジョン(例えば、HIPEエマルジョン)中の液滴のサイズは、多孔質ポリマーベース構造体(例えば、HIPE材料)内の細孔(i)の第1のレベルのサイズを大きく左右する。多孔質ポリマーベース構造体(例えば、HIPE材料)の液滴サイズに影響するさまざまな要因があり、調整方法は、Susec in Macromol. Rapid Commun. 2013年、34号、938~943頁に記載されるような、混合/せん断によるエネルギー入力の変更、温度の調整、溶媒の添加、エマルジョンのエージング、及び界面活性剤組成及び量の変更を含む。架橋用モノマーとポロゲン溶媒の使用に応じて、第4のレベルのメソ又はミクロ細孔をポリマー相内に導入することができる。
【0108】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、堆積及び光重合させる工程は、UV照射下で、好ましくは光造形(SLA)、デジタル光処理(DLP)、又は連続液相間製造(CLIP)によって、行われる。
【0109】
3つの技術は全て、光重合性組成物の層ごとの光重合を利用する既知の3D印刷技術である。
【0110】
光造形(SLA、光造形装置、光加工、光固化(photo solidification)、又は樹脂印刷としても知られる)は、光重合を使用して層ごとにモデル、プロトタイプ、パターン、及び生産部品を作製するために使用される3D印刷技術の一形態である。次いで、これらのポリマーは、三次元固体の本体を構成する。光造形は、紫外線(UV)レーザーの焦点を感光性ポリマー樹脂の槽に合わせることにより機能する積層造形プロセスである。コンピューター支援製造又はコンピューター支援設計ソフトウェア(CAM/CAD)により、UVレーザーを使用して、予めプログラムされたデザイン又は形状を感光性ポリマー槽の表面に描画する。感光性ポリマーは紫外線下で感光性であるため、樹脂は固化して、所望の3Dオブジェクトの単一層を形成する。このプロセスを、3Dオブジェクトが完成するまで、デザインの各層において繰り返す。
【0111】
デジタル光処理(DLP)は、感光性ポリマーにより機能する3D印刷プロセスであるという点で、光造形(SLA)と類似したプロセスである。主な違いは光源である。DLPは、液晶ディスプレイパネル又は可変形ミラーデバイス(DMD)とともに、アークランプ等のより従来型の光源を使用し、光源は単一パスで感光性ポリマー樹脂の槽の表面全体に適用され、一般にSLAよりも処理が高速になる。SLAと同様に、DLPは優れた解像度により高精度部品を生成する。SLAに対するDLPの1つの利点は、プロセスを容易にするために樹脂の浅い槽のみが必要なことであり、これにより、一般に無駄が少なくなり、ランニングコストが下がる。支持構造とともに使用すると、任意の形状が可能となる。この技術は、個人用プリンタ分野でも利用可能であり、投資コストが比較的低いため魅力的である。
【0112】
現在、市場で最高の解像度のDLPマシンは、X/Y平面で約16×16μm及びZ方向で10μmの解像度で印刷を行う。
【0113】
DLPの解像度は、毛細管力を利用して多孔質ポリマーベース構造体を実現するのに十分小さい細孔を有する微孔構造を形成するのに十分である。
【0114】
DLPは、利用可能な最速3D印刷方法の1つである。DLPプロジェクターは、3D部品の断面を樹脂の表面に描画して、画像を表示する。曝露した樹脂は所定の厚さに固化して1つの層を形成するため、X/Y平面で測定されるオブジェクトのサイズ又はオブジェクトの幾何学的な複雑さに関係なく、各層が即時に印刷される。
【0115】
DLP印刷の速度を制限する主な要因は、新しい層を印刷する前にビルドプレートを持ち上げて再配置する必要があることである。新しい層を印刷する前にオブジェクトを持ち上げる必要がある理由は以下の2つがある。
(1)前の層と層/画像が投影される表面との間に新しい樹脂が流れ込むことを可能にするために、オブジェクトが樹脂槽の底面から持ち上げられる。
(2)新しい層を印刷する前に、印刷した層を樹脂槽の底面から引き離す/剥がす必要がある。
【0116】
DLP印刷プロセスを高速化するために、Carbon 3D社は、各層の間にビルドプレートを再配置することなく連続的に印刷することができるDLPプリンタを発明した。Carbon 3D社の発明は、CLIP、連続液界面製造と呼ばれている。
【0117】
連続液界面製造(CLIP;元々は連続液相間印刷)は、光重合を使用して、樹脂を使用するさまざまな形状の固体オブジェクトを作製する、3D印刷方法である。CLIPは、Joseph DeSimone、Alexander、Nikita Ermoshkin及びEdward T. Samulskiによって発明され、当初はEiPi Systems社によって所有されていたが、現在はCarbon 3D社によって開発されている。連続プロセスは、液体感光性ポリマー樹脂のプールから始まる。プール底部の一部は、紫外線に対して透過性である(「窓」)。紫外線ビームが窓から透過し、オブジェクトの正確な断面を照らす。光により樹脂が固化する。樹脂がオブジェクトの下に流れてオブジェクトの底部との接触を維持できるように十分にゆっくりと、オブジェクトが上昇する。酸素浸透膜が樹脂の下にあり、樹脂が窓に付着することを防ぐ「デッドゾーン」(持続的な液体界面)を作製する(光重合は窓と重合装置との間で抑制される)。光造形とは異なり、この印刷プロセスは連続的である。
【0118】
Carbon 3D社は、樹脂槽の底部にある窓を、光を透過させ酸素を浸透させる特別な窓に置き換えた。酸素はUV光の効果を相殺し、したがって、感光性ポリマーの硬化を防ぐ。CLIPは、窓を通る酸素流束を制御することにより、窓とオブジェクトとの間に未硬化樹脂の薄層(Carbon 3D社では「デッドゾーン」と呼ぶ)を作製する。印刷されたオブジェクトが樹脂槽の底部の窓に直接接触することはないため、未硬化層はビルドプレートの再配置を必要としなくなる。
【0119】
以下に、本発明で使用することができる無層/連続DLPプリンタの例を挙げる。
- University of Buffaloの学生によって開発された無層/連続DLPプリンタ: Krassenstein, E.(2015)。学生は、超高速の「膜ベース」3Dプリンタ(12分間で10ミクロンにて40×40×100mmのオブジェクトを印刷する)を作製した。(http://3dprint.com/54864/super-fast-3d-printer/に記載)(Krassenstein、2015年)
- Gizmo 3D社が開発した無層/連続DLPプリンタ: Gizmo 3DプリンタDLP 3D Printe(日付なし)(http://www.gizmo3dprinters.com.auに記載)。
- Carima社が開発した無層/連続DLPプリンタ: Carima(日付なし)(http://www.carima.comに記載)。
- NewPro 3D社が開発した無層/連続DLPプリンタ: D, N. 3(2016b) Newpro3D超高速3Dプリンタ、現時点の世界最速3Dプリンタ。(http://newpro3d.com/ili-technology/に記載)。
- Nexa3D社が開発した無層/連続DLPプリンタ: Smart(日付なし)(http://www.nexa3d.comに記載)。
【0120】
本発明の一実施形態において、任意の残留モノマー及び/若しくはオリゴマー並びに/又は内相は、以下の方法のいずれかを使用して、除去される。
- ビルドプレートが穿孔プレートに移動し、そこで残留モノマー及び/又はオリゴマー並びに内相が構造体から吸い出される。残留物は、ろ過され、再利用される。次に、構造体の表面に粘着した任意の残留モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させるため、構造体に光(例えば、UV)が照射される。次に、(例えば、熱及び/又はマイクロ波を使用して)構造体を乾燥させる。
- 閉じたチャンバーにビルドプレートを移動させる。未硬化モノマー及び/又はオリゴマー並びに内相を遠心分離するために、ビルドプレートがチャンバー内で回転する。次に、構造体の表面に粘着した任意の残留モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させるため、構造体に光(例えば、UV)が照射される。次に、(例えば、熱及び/又はマイクロ波を使用して)構造体を乾燥させる。
- ビルドプレートを穿孔プレートに移動させる。ビルドプレートは、形状を穿孔プレートに押し付けて、未硬化モノマー及び/又はオリゴマー並びに内相を絞り出す。次に、構造体の表面に粘着した任意の残留モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させるため、構体造に光(例えば、UV)が照射される。次に、(例えば、熱及び/又はマイクロ波を使用して)構造体を乾燥させる。
- ローラーを使用して、残留モノマー及び/又はオリゴマー並びに内相を構造体から絞り出す。次に、構造体の表面に粘着した任意の残留モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させるため、構造体に光(例えば、UV)が照射される。次に、(例えば、熱及び/又はマイクロ波を使用して)構造体を乾燥させる。
【0121】
真空と、圧力、マイクロ波、及び/又は熱とを任意選択で組み合わせて使用して、内相を構造体から除去することができる。
【0122】
本発明の一実施形態において、注入/分配層を有する構造体を生成するプロセスを以下に説明する。
- 第1のエマルジョンを使用して、入口特性を有する1つ又は複数の層が印刷される。
- 上記の方法の1つを使用して、残留樹脂及び水性相が除去される。
- 樹脂槽が空にされ、新しい樹脂で満たされるか、又は新しい樹脂槽によって交換される。
- 第2のエマルジョンを使用して、分配特性を有する1つ又は複数の層が印刷される。
- 上記の方法のいずれかを使用して、残留樹脂及び水性相が除去される。
- 熱、圧力、及び/又はマイクロ波を使用して、得られた構造体を乾燥させ、水性相を完全に除去する。
- 得られた構造体にUV光を照射して、構造体の表面に粘着した任意の残留モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させる。
- 上記の方法を使用して、SAPが構造体に挿入される。
【0123】
層ごとの組み立て方法は、使用するエマルジョンの粘度に影響を受けやすい場合がある。例えば、SLAでは一般に、エマルジョンの粘度が低いことが必要である。低い粘度では、線の広がりにより印刷が失敗することがある。線の高さが低下すると、ノズルと印刷層との間の距離が大きくなりすぎて、押し出された材料を正確に堆積させることができなくなる。したがって、一実施形態では、粘度を下げるために、トルエンが油性外相に添加される。エマルジョンが粘稠すぎて効果的に印刷できない場合、トルエンを添加することにより適切な印刷が可能になる。更に、トルエンの添加は、多孔質ポリマーベース構造体に有害な影響を与えない。好ましくは、トルエンのモノマーに関して10~50容積%が添加される。
【0124】
工程(a)の典型的な一実施形態において、エマルジョンは以下のように調製される。(i)、(ii)及び(iii)から選択される好適な量のモノマー/オリゴマーを混合し、続いて、界面活性剤を添加する。混合物を溶解させる。得られた溶液を光曝露から保護し、光開始剤を添加しながら攪拌する。次に、攪拌を続けながら、好適な粘度を有するエマルジョンが形成されるまで、水性相、例えば水を滴下添加する。その後、好適なUV硬化システムを用いて、LBL光重合工程を実施する。次いで、得られたモノリシック多孔質ポリマーベース構造体を回収し、アセトン等の揮発性溶媒への浸漬及び/又は(例えば真空下での)乾燥により、水性相を除去する。
【0125】
本発明の多孔質ポリマーベース構造体は、Sears (Macromol. Rapid Commun. 2016年、DOI: 10.1002/marc.201600236)、Susec (Macromol. Rapid Commun. 2013、34号、938~943頁)、Owen (Journal of the Mechanical Behavior of Biomedical Materials、2016年2月、54号、159~172頁)、Johnson (Adv. Mater. 2013年、25号、3178~3181頁)及びSilverstein (Polymer 55号(2014)、304~320頁)に記載されたものに類似の方法で製造することができる。
【0126】
意図する機能に応じて、ゴム状モノマーのガラス状モノマーに対する比を増加させることにより、多孔質ポリマーベース構造体をより柔軟にすることが望ましい場合がある。ゴム状モノマーはより低いTg値を有するポリマーを生成するため、得られる構造はより柔軟である。
【0127】
多孔質ポリマーベース構造体(例えば、ポリHIPE構造体)の湿潤性を改善するために、Owenによって記載された技術を本発明において使用することもできる。これらの技術には、負に帯電したカルボキシル基の追加(pdAAc)又は酸素含有基の沈着(pcAir)に基づく、pcAir又はpdAAcプラズマ処理が含まれる。