(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ガス検知型シール
(51)【国際特許分類】
G01N 31/22 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
G01N31/22 121C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020049823
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2020-05-08
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514024712
【氏名又は名称】台湾ナノカーボンテクノロジー股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAIWAN CARBON NANO TECHNOLOGY CORPORATION
【住所又は居所原語表記】5F.,NO.50-1, Keyan Rd.,Zhunan Township, Miaoli County, Taiwan(R.O.C.)
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】許 景棟
(72)【発明者】
【氏名】施 純偉
(72)【発明者】
【氏名】李 光哲
(72)【発明者】
【氏名】李 家宏
(72)【発明者】
【氏名】黄 健曜
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群賢
(72)【発明者】
【氏名】李 庭鵑
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群榮
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-242101(JP,A)
【文献】特開2018-128391(JP,A)
【文献】特開2009-168755(JP,A)
【文献】特開2017-166970(JP,A)
【文献】特表2017-501830(JP,A)
【文献】特開2007-278926(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0325221(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0189600(US,A1)
【文献】特開2018-004392(JP,A)
【文献】登録実用新案第3192785(JP,U)
【文献】特開昭64-072061(JP,A)
【文献】特表2019-507339(JP,A)
【文献】台湾特許出願公開第201736818(TW,A)
【文献】特表2017-530441(JP,A)
【文献】台湾特許出願公開第201827816(TW,A)
【文献】中国特許出願公開第104814885(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積み重ねて設けられた粘着層と、反応呈色層と、化学反応層とを含むガス検知型シールであって、
前記化学反応層は、被検ガスと反応して化学変化が生じる少なくとも1つの反応領域を含み、前記化学反応層
は前記反応呈色層の反対側に位置するガス取込み面を有し、該ガス取込み面は前記被検ガスに接触され、
前記反応呈色層は、
反応面と、
該反応面の反対側に位置する呈色面とを有し、前記反応面は
前記反応領域に接触し、
前記反応呈色層は呈色指示薬を含み、前記呈色指示薬
が前記反応面を介して前記反応領域の前記化学変化に対応して呈色反応を起こ
すことで、前記呈色面から前記呈色指示薬の色の変化を観察でき、
前記粘着層は、前記反応呈色層の前記呈色面に、又は前記化学反応層の前記
ガス取込み面に設けられることを特徴とするガス検知型シール。
【請求項2】
前記ガス検知型シールの最も外側に反射防止フィルムが設けられることを特徴とする請求項1に記載のガス検知型シール。
【請求項3】
前記ガス取込み面に近い側に、ガス選別機能を有する少なくとも1つの拡散フィルムが設けられることを特徴とする請求項1に記載のガス検知型シール。
【請求項4】
前記拡散フィルムは、吸着機能を有する液体、コロイド、細孔、及び繊維性フィルムからなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載のガス検知型シール。
【請求項5】
前記拡散フィルムはグラフェンを含むことを特徴とする請求項3に記載のガス検知型シール。
【請求項6】
前記ガス取込み面に近い側に2つの拡散フィルムが設けられ、2つの前記拡散フィルムの間に吸着層が挟設されることを特徴とする請求項3に記載のガス検知型シール。
【請求項7】
前記ガス取込み面に、ガス選別機能を有する少なくとも1つの拡散フィルムが設けられ、ガス選別機能を有する少なくとも1つの前記拡散フィルムは前記ガス取込み面に直接接触することを特徴とする請求項1に記載のガス検知型シール。
【請求項8】
前記ガス取込み面に少なくとも1つのフィルム層が設けられ、前記フィルム層は吸着層、ガス選別機能を有する拡散フィルム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のガス検知型シール。
【請求項9】
前記呈色面に比色ブロックが設けられることを特徴とする請求項1に記載のガス検知型シール。
【請求項10】
前記粘着層は、前記反応呈色層又は前記化学反応層より面積が大きいことを特徴とする請求項1に記載のガス検知型シール。
【請求項11】
前記化学変化は、酸化還元反応、酸塩基反応、酵素触媒反応、金属触媒反応、縮合反応、加水分解反応、付加反応、脱離反応、置換反応、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のガス検知型シール。
【請求項12】
前記呈色指示薬は、酸塩基指示薬、発色性溶媒和物、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のガス検知型シール。
【請求項13】
前記呈色指示薬なる組成物は、水和物、沈殿物、金属錯体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のガス検知型シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールに関し、特に、ガスを検知でき、軽量薄型の構造で利用しやすいガス検知型シールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体の健康状態はガスの代謝によって検知できることが、ますます多くの研究によって証明されている。例えば、糖尿病患者がはき出したガスからはアセトンが検出される。したがって、これらの情報をリアルタイムに記録できれば、利用者は自分の健康状態をリアルタイムに知ることができる。
【0003】
関連の技術として、例えば、特許文献1には、中国の伝統的医学理論に基づく健康状態監視装置、システム及び方法が開示されている。これによれば、匂い検知器を用いて、被監視の利用者から匂い情報を取得し、顔画像データ、舌質画像データ、音声情報、脈波データ等その他の情報と組み合わせることによって、中国の伝統的医学知識を持たなくても、利用者に対する健康状態の監視を低コストで実現できる。
【0004】
しかしながら、上記の特許に係る匂い検知器等のガス検知装置は、体積が大きいだけでなく、正常に動作するために電力の供給が必要であるため、利用者の日常生活に影響を与えるだけでなく、操作しにくく、時間と場所の制限なしに監視することはできないため、その適用範囲が制限されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国発明特許公開第CN108597621A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、体積が大きく、動作するのに継続的な電力供給が必要であるという従来のガス検知装置の欠点を解消することである。
【0007】
本発明の第2の目的は、軽量薄型の構造で利用しやすいガス検知型装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するためになされるものであって、ガス検知型シールを提供する。当該ガス検知型シールは、積み重ねて設けられた粘着層と、反応呈色層と、化学反応層とを含み、ただし、当該化学反応層は、被検ガスと反応して化学変化が生じる少なくとも1つの反応領域を含み、当該化学反応層の当該被検ガスに近い側はガス取込み面であり、当該反応呈色層は、対応して設けられた呈色面と、反応面とを含み、当該反応面は当該化学反応層の当該反応領域に接触し、当該反応呈色層は、当該反応面の当該化学変化に対応して呈色反応が起こるように、呈色指示薬を含み、さらに、当該粘着層は、当該反応呈色層又は当該化学反応層以上の面積を有し、且つ、当該粘着層は当該反応呈色層の当該呈色面に、又は当該化学反応層の当該反応呈色層から離隔する側に設けられる。
【発明の効果】
【0009】
これにより、本発明のガス検知型シールは、従来のガス検知装置と比べ、少なくとも以下の利点を有する。
(1)本発明のガス検知型シールは、化学反応層に設けられた反応領域によって、被検ガスと反応することで、化学変化が生じる。当該化学変化は、反応呈色層における呈色指示薬の反応によって異なる色を示し、利用者は色の変化を直接目視で観察するか、又は従来のデータベースを利用し、色の変化を分析・判断する方法で検出結果を得ることができるため、一層利用しやすくなる。
【0010】
(2)当該ガス検知型シールのガス取込み面を外側に向けて物体に付与すると、周囲環境からガスの変化を検知できる。同ガス取込み面を内側に向けて物体に付与すると、物体自体の匂いを検知できるため、従来の技術と比べて、本発明のガス検知型シールの適用範囲が広くなる。例えば、身動きが不自由な患者の大腿又は鼠径部位に付与して尿意を検知でき、有毒ガスが存在する環境で作業する時、利用者に周囲環境の変化を注意させるように、腕又は手の背側に付与するように利用できる。また、関連の文献によれば、糖尿病患者はき出したガスには多くのアセトンが含まれ、腎臓疾患を抱える患者がはき出したガスに多くのアンモニアが含まれているため、長期間にわたって又は短期間で監視を行うことができる。そして、人体に関連する上記の用途のほかに、本発明のガス検知型シールは、動物又は植物にも適用する。例えば、生産・販売、又は成長中に、色の変化によって監視を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施例に係るガス検知型シールの第1利用形態の概略図である。
【
図2】本発明の第2実施例に係るガス検知型シールの第1利用形態の概略図である。
【
図3】本発明の第1実施例に係るガス検知型シールの第2利用形態の概略図である。
【
図4】本発明の第2実施例に係るガス検知型シールの第2利用形態の概略図である。
【
図5】本発明のガス検知型シールを人体に適用して検知を行うことの概略図である。
【
図6】本発明のガス検知型シールを植物に適用して検知を行うことの概略図である。
【
図7】本発明の第3実施例に係るガス検知型シールの第1利用形態の概略図である。
【
図8】本発明の第4実施例に係るガス検知型シールの第1利用形態の概略図である。
【
図9】本発明の第5実施例に係るガス検知型シールの第1利用形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の詳細な内容を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施例に係るガス検知型シールの第1利用形態の概略図である。当該ガス検知型シールは、主に、化学反応層10と、化学反応層10に対して互いに積み重ねられた反応呈色層20と、粘着層30とを含む。さらに、仕切り部40を含む。
【0013】
化学反応層10は、複数の第1領域11aと、11bとを含むように、仕切り部40によって分割され、第1領域11a、11bは、反応領域13aと、13bとを含み、反応領域13a、13bは(矢印に示すように)被検ガスと反応して化学変化が生じる。これらの反応領域13a、13bには、異なる目的ガスと反応するように、それぞれが異なる種類の化学物質を含んでもよい。例えば、一部の反応領域13a、13bがアルカンと反応し、一部の反応領域13a、13bがアルコール類と反応し、また一部の反応領域13a、13bが硫化物と反応する。仕切り部40は、隣り合う第1領域11a、11bで起こる反応が互いに影響し合わないように、隣り合う第1領域11aと、11bとを間隔する。さらに、当該化学変化は、酸化還元反応、酸塩基反応、酵素触媒反応、金属触媒反応、縮合反応(condensation reaction)、加水分解反応(hydrolysis)、付加反応(addition reaction)、脱離反応(elimination reaction)、置換反応(substitution reaction)、又はこれらの組み合わせであってもよく、これらに限定されるものではない。一つの非限定的な例として、本発明に適用する酸化還元反応は、エタノールをアセトアルデヒド又は酢酸に酸化する反応が挙げられ、酵素触媒はグルコースオキシダーゼ(glucose oxidase)が挙げられ、金属触媒は白金触媒が挙げられる。
【0014】
これによって、例えば、反応領域13a、13bにヒドラジン(H2N-NH2)が塗布されている場合、二酸化炭素を含む被検ガスが、ヒドラジンが塗布された上記の反応領域13a、13bと反応する時、H2NNHCOOHを生成し、酸化還元指示薬クリスタルバイオレット(Crystal violet)を利用して呈色させる。
【0015】
これらの反応領域13a、13bで起こる反応が不可逆的な反応である場合、これによって生じる反応結果は経過情報として取り扱う。経過情報とは、全ての吸着された当該被検ガスの関連情報を記録すること、即ち、結果が現れるまでの過程を指す。また、これらの反応領域13a、13bでガスの吸着後にまた脱着する現象が生じる場合、当該反応は可逆的な反応であり、リアルタイムな情報として取り扱う。リアルタイムな情報とは、現時点の情報を指し、より具体的には、一部の反応は一定の期間だけ維持するため、その前の情報は記録にできず、現時点の情報だけが残ることを指す。そのため、設計の段階では、これらの反応領域13a、13bでの化学反応が可逆的なものであるように、拡散係数を適宜調整してガスの吸着と脱着の速度を制御することで、経過情報及びリアルタイムな情報の両方を同時に記録できる。
【0016】
本発明において、第1領域11a、11bの当該被検ガスに近い側はガス取込み面12a、12bとして定義される。一つの実施形態において、ガスが直接これらの反応領域13a、13bに入るため干渉又はダメージが生じるのを避けるように、ガス取込み面12a、12bに設けられた保護層をさらに含んでもよい。
【0017】
反応呈色層20も、複数の第2領域21aと、21bとを含むように、仕切り部40によって分割され、第2領域21a、21bと、第1領域11a、11bとは互いに対応するように積み重ねられ、且つ、第2領域21a、21bは反応面23a、23bと、呈色面22a、22bとを含み、反応面23a、23bは化学反応層10のこれらの反応領域13a、13bに接触し、呈色面22a、22bはこれらの反応領域13a、13bから離隔するように設けられ、呈色面22a、22bから色の変化を観察できる。
【0018】
反応呈色層20に呈色指示薬が含まれているため、これらの反応領域13a、13bは反応のために変化が生じる時、これらの反応領域13a、13bに接触する反応呈色層20は、当該化学変化に対応して呈色反応が起こる。
【0019】
ただし、当該呈色指示薬なる組成物は、水和物、沈殿物、金属錯体及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、水和物である場合は、乾燥の塩化コバルト(II)が湿気と接触してピンク色の水和物を生成するものであってもよい。沈殿物である場合は、酢酸鉛が硫化水素と接触して黒色の硫化鉛沈殿物を生成するものであってもよい。金属錯体である場合は、酸素とヘモグロビン中の鉄イオンが配位結合を形成して赤色を呈するものであってもよい。本発明に適用する「呈色指示薬」は特に限定されるものではない。例えば、当該呈色指示薬は、酸塩基指示薬、発色性溶媒和物、又はこれらの組み合わせであってもよい。なお、本発明に適用する当該酸塩基指示薬は特に限定されるものではなく、一つの非限定的な実施例として、ブロモチモールブルー(Bromothymol Blue)、フェノールフタレイン等の呈色試薬であってもよい。
【0020】
本実施形態において、仕切り部40は、隣り合う第1領域11aと11b、及び、第2領域21aと21bを分割する隔壁であり、これによって、ガス取込み面12aに入る当該被検ガスと反応領域13aの反応が、隣り合う反応領域13bに影響を与えることはなく、反応領域13aで起こる反応が反応面23a及び呈色面22aだけに影響を与え、反応面23b及び呈色面22bに対する影響はない。また、本実施例において、化学反応層10と反応呈色層20は互いに独立的な2層の構造であるが、別の実施例において、化学反応層10と反応呈色層20は1層の構造であってもよく、即ち化学反応層10と反応呈色層20は1層に統合されてもよい。
【0021】
粘着層30は、化学反応層10の反応呈色層20から離隔する側に設けられる。本実施形態において、ガス取込み面12a、12bに近い側を指す。粘着層30は、主に当該ガス検知型シールに粘着特性を付与するために設けられるため、実際の状況に応じて、粘着層30の片面だけに粘着特性を付与するか、又は両面ともに粘着特性を付与してもよい。又は、付与対象又は物体2の特性に応じて適切な材料、例えば、ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol、略称PVA)を選択してもよく、これに限定されるものではない。
【0022】
本実施形態において、当該目的被検ガスは対象又は物体2から発しているため、粘着層30は、当該被検ガスが粘着層30を通してガス取込み面12a、12bを介して化学反応層10に入って、化学反応層10におけるこれらの反応領域13a、13bと反応するように、通気性を有することが好ましい。
【0023】
図2は、本発明の第2実施例に係るガス検知型シールの概略図である。
図2が参照されるとおり、上記の実施例に係る利用形態と同じように、これも対象又は物体2の発する被検ガスを検知するために利用される。なお、第2実施例は、粘着層30の設けられた位置に関して、上記の第1実施例と相違する。本実施形態において、粘着層30は反応呈色層20の呈色面22a、22bに設けられ、且つ、当該ガス検知型シールが対象又は物体2に堅牢に付与できるように、粘着層30の面積は反応呈色層20又は化学反応層10の面積より大きくしてもよい。
【0024】
図3は、本発明の第1実施例に係るガス検知型シールの第2利用形態の概略図であり、
図4は、第2実施例に係るガス検知型シールの第2利用形態の概略図である。
図3、
図4が参照されるとおり、(矢印に示すように)周囲環境からガスの変化を検知するために当該ガス検知型シールを対象又は物体2に付与する。
図3、
図4に示すガス検知型シールは上記の実施例と基本的に同じ構成であるため、ここで詳細な説明は省略される。なお、本利用形態において、当該被検ガスがこれらの反応領域13a、13bと順調に反応できるように、反応呈色層20は、当該被検ガスが反応呈色層20を通して化学反応層10に入るように、通気性を有することが好ましい。
【0025】
図5は、本発明のガス検知型シールを人体に適用して検知を行うことの概略図であり、
図6は、本発明のガス検知型シールを植物に適用して検知を行うことの概略図である。
【0026】
図5に示すように、利用者は、当該ガス検知型シールを手の背側に付与して皮膚代謝物の発する匂い又は匂いの変化を検知し、目視で観察し又はデータベースと照合することによって身体状態を監視するという目的を達成できるため、その適用分野は迅速なスクリーニング検査及び慢性疾患の長期監視を含む。また、付与位置によって様々な監視効果を実現でき、実際に使用する時は、利用者のニーズに応じて調整できる。例えば、患者の尿の匂いを監視する場合、本発明のガス検知型シールを大腿又は鼠径部位に付与する。糞便の匂いを監視する場合、患者の臀部の付近に付与する。又は、日常生活で簡易な口臭監視をするために口腔の付近に付与する。又は、スポーツ計画又はダイエットを実施中の利用者の場合は、身体の適切な部位に付与してケトン体を監視するように利用できる。このほかにも、臨床現場即時検査(point-of-care testing、略称POCT)又は診療所での診断の目的も達成できる。
【0027】
本発明のガス検知型シールは、人体に適用するだけでなく、
図6に示すように、植物に付与してその発する匂いを監視するようにも利用できる。具体的には、一つの実施例において、例えば、リンゴ、バナナ等の果物は熟成する過程にエチレンを放出するため、本発明のガス検知型シールを適用する場合、生産・販売、及び成長中に監視するように利用できる。
【0028】
上記の第1実施例及び第2実施例に示す構成に加え、本発明のガス検知型シールは、その他の機能層をさらに含んでもよい。次に、第2実施例の構造に基づいて説明するが、第1実施例も、限定されるものではなく、次に説明する機能層を追加してもよい。
【0029】
図7は、本発明の第3実施例に係るガス検知型シールである。当該実施例によれば、最も外側に設けられた反射防止フィルム50をさらに含み、反射防止フィルム50を設けることで、利用者は外部から、装置を利用して又は目視観察で色の変化を確認し、干渉を避けることができる。
【0030】
図8は、本発明の第4実施例に係るガス検知型シールであり、
図9は、本発明の第5実施例に係るガス検知型シールである。
図1、
図8及び
図9が参照されるとおり、第2実施例の構造と比べて分かるように、
図8及び
図9のガス検知型シールには、特定のガスを選別する効果を得るように、さらに、ガス選別機能を有する拡散フィルム60が1層以上設けられている。拡散フィルム60は、対象又は物体2の表面と化学反応層10との間に設けられ、即ち、ガス取込み面12a、12bの近傍に設けられる。
【0031】
拡散フィルム60が複数層設けられた場合、
図9に示すように、各拡散フィルム60は、それぞれ異なるガスを対象とするように設定してもよい。また、これらの拡散フィルム60にガスが拡散する経路を調整して、分子の大小によって拡散速度を変更することで分子の大小に基づく選別の効果を得るように、
図8及び
図9の実施例において、拡散フィルム60のそれぞれに、サイズが異なるグラフェン70を添加してもよい。
【0032】
さらに、本発明のガス検知型シールでより効率的にガス分子が吸着するという目的を達成するために、拡散フィルム60に吸着分子をさらに含んでもよい。当該吸着分子は、任意の、吸着機能を有する液体、コロイド、細孔、又は繊維性フィルムであってもよい。具体的には、一つの非限定的な例において、当該吸着分子としてグリセリンを利用できる。又は、一つの非限定的な例において、当該吸着分子として細孔を用い、細孔の特性を利用してサイズの大きなガス分子をスクリーニングする。又は、
図9の実施例に示すように、直接2つの拡散フィルム60の間に、吸着分子を含む吸着層80を設けてもよく、これによって優れた吸着効果を得られる。
【0033】
なお、本発明のガス検知型シールは粘着層30を含む複数層を積み重ねて形成された構造である場合においても、耐水性が不十分な問題はあり得る。そのために、上記の様々な実施例において、内部の化学反応に対する外部環境の干渉を緩和するために、化学反応層10のガス取込み面12a、12bに近い適切な位置に、遮水性を有する通気性フィルムを設けてもよい。
【0034】
利用者は、毎回の検知データを情報化するために、当該ガス検知型シールに一次元バーコード又は二次元QRコード(登録商標)等(
図5、
図6参照)を設計してもよい。このほかに、例えば、撮影の方式で検出結果を取得し、次に分析ソフトウェアを用いて、色の変化を分析して記憶することで、同様に検知データを情報化するという目的は達成できる。さらに、これらの監視データをグループに分けて分類して、AI機器に学習させて予測と判断を行うこともできる。
【0035】
さらに、本発明のガス検知型シールに、複数の比色ブロックが設けられてもよい。利用者は色の弁別がしやすく、判断の誤差が減るように、これらの比色ブロックがこれらの反応領域13a、13bに対応して並ぶように設計される。
【0036】
なお、上記の様々な実施例において、当該被検ガスが化学反応層10に入ってこれらの反応領域13a、13bと反応することを前提として、化学反応層10、反応呈色層20、又はその他の機能層の設置順番は互いに入れ替えてもよい。
【符号の説明】
【0037】
2 対象又は物体
10 化学反応層
11a、11b 第1領域
12a、12b ガス取込み面
13a、13b 反応領域
20 反応呈色層
21a、21b 第2領域
22a、22b 呈色面
23a、23b 反応面
30 粘着層
40 仕切り部
50 反射防止フィルム
60 拡散フィルム
70 グラフェン
80 吸着層