(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】多孔質担体および電気化学素子セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/449 20210101AFI20220107BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20220107BHJP
H01M 50/429 20210101ALI20220107BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20220107BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/414
H01M50/429
H01M50/457
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020085821
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2020-05-15
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】502364017
【氏名又は名称】聚和国際股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】吉武 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】張 惟閔
(72)【発明者】
【氏名】何 麗貞
(72)【発明者】
【氏名】郭 聰田
(72)【発明者】
【氏名】張 凱奇
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-024866(JP,A)
【文献】特開2015-185515(JP,A)
【文献】国際公開第2007/066768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/449
H01M 50/414
H01M 50/429
H01M 50/457
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース基板
と、
前記セルロース
基板の少なくとも1つの表面上に配置された機能層
とを含み、
前記機能層が、有機ポリマー弾性充填剤およびポリマーバインダーを含
み、
前記有機ポリマー弾性充填剤の弾性係数が、200kgf / mm
2
~500kgf / mm
2
である、
多孔質担体。
【請求項2】
前記多孔質担体の回復率が少なくとも60%以上である、請求項
1記載の多孔質担体。
【請求項3】
前記多孔質担体の圧縮率が12%以下である、請求項1
または2に記載の多孔質担体。
【請求項4】
前記セルロース
基板の材料が、天然繊維、変性天然繊維、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1から
3のいずれか1項に記載の多孔質担体。
【請求項5】
前記天然繊維が、綿、麻、ココナッツ、またはそれらの組み合わせを含む、請求項
4に記載の多孔質担体。
【請求項6】
前記有機ポリマー弾性充填剤の材料が、エチレン性不飽和単量体を含む、請求項1から
5のいずれか1項に記載の多孔質担体。
【請求項7】
前記エチレン性不飽和単量体が、エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルまたはその誘導体、非共役ジエンジオレフィン系化合物またはその誘導体、エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体、および芳香族ビニル化合物またはその誘導体からなる群の少なくとも1種から選択される、請求項
6に記載の多孔質担体。
【請求項8】
多孔質担体の厚さが13μm~50μmである、請求項1から
7のいずれか1項に記載の多孔質担体。
【請求項9】
前記セルロース
基板の厚さが12μm~50μmである、請求項1から
8のいずれか1項に記載の多孔質担体。
【請求項10】
前記機能層の厚みが0.5μm以上20μm以下である、請求項1から
9のいずれか1項に記載の多孔質担体。
【請求項11】
前記セルロース
基板の繊維径が、0.01μm以上50μm以下である、請求項1から
10のいずれか1項に記載の多孔質担体。
【請求項12】
前記機能層中の
前記有機ポリマー弾性充填剤の重量百分率が50%~99.9%である、請求項1から
11のいずれか1項に記載の多孔質担体。
【請求項13】
前記機能層が、前記セルロース
基板の少なくとも一方の面上に連続的または不連続的に配置されている、請求項1から
12のいずれか1項に記載の多孔質担体。
【請求項14】
前記機能層が、前記セルロース
基板の両面に配置されている、請求項1から
13のいずれか1項に記載の多孔質担体。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれか1項に記載の多孔質担体を含む電気化学素子セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体およびセパレータに関するもので、特に、多孔質担体および電気化学素子用セパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウムイオン電池は、パーソナルコンピュータまたは携帯電話、ハイブリッド電気自動車、または電気自動車などに蓄電池として使用されている。また リチウムイオン電池は、繰り返しの充放電できることに加えて軽量で電圧が高いため、高エネルギー密度が実現できることから、リチウムイオン電池の市場での需要は日々高まると同時に、リチウムイオン電池の寿命をさらに伸ばすという使用者の要求も高まっている。
【0003】
リチウムイオン電池のセパレータは電解質や電極に対して安定である必要がある一方で、不織布は他の材料と比較してもイオン伝導性、湿潤性および耐熱性性能は優れたものである。 しかしセルロース自体には伸縮性がない。このため、セルロースをリチウムイオン電池の不織布セパレータの原料として使用した場合、長期にわたる充電および放電を繰り返した後、リチウムイオン電池の当該セパレータが圧縮され、電極とセパレータとの間にギャップを生む結果となる。 そのためリチウムイオン電池のインピーダンスが増加し、これによりリチウムイオン電池の寿命が短くなってしまう。 したがって、現在の業界の要求を満足させるためにこのセパレータが圧縮された後のインピーダンスの増加という問題をどのように改善するかということがこの分野の技術者に緊急に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、より良好な耐圧縮性および回復性を有する多孔質担体を提供するものである。
【0005】
本発明はまた、より良好な耐圧縮性および回復性を有する多孔質担体からなる電気化学素子セパレータを提供するものである。 本発明の電気化学素子セパレータをリチウムイオン電池のセパレータとして用いることで、リチウムイオン電池の長寿命化を図ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、セルロース基板と機能層とを含む多孔質担体を提供するものである。 ここで機能層はセルロース基板の少なくとも1つの表面上にあることが特徴であり、また機能層は有機ポリマー弾性充填剤とポリマーバインダーを含むものである。
【0007】
本発明の実施の形態によれば、有機ポリマー弾性充填剤の弾性係数は200kgf / mm2から500kgf / mm2の間である。
【0008】
本発明の一実施の形態によれば、多孔質担体の回復率は少なくとも60%以上である。
【0009】
本発明の一実施の形態によれば、多孔質担体の圧縮率は12%以下である。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、セルロース基板の材料は、天然繊維、修飾天然繊維、またはそれらの組み合わせを含んでいる。
【0011】
本発明の一実施の形態によれば、天然繊維は、綿、麻、ココナッツ、またはそれらの組み合わせを含んでいる。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、有機ポリマー弾性充填剤としては、エチレン性不飽和単量体を含む。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、エチレン性不飽和単量体としては、エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルまたはその誘導体、共役ジエン系化合物またはその誘導体、エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体、および芳香族ビニル化合物またはその誘導体からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0014】
本発明の一実施の形態によれば、多孔質担体の厚さは13μmから50μmの間である。
【0015】
本発明の一実施の形態によれば、セルロース基板の厚さは12μmから50μmの間である。
【0016】
本発明の一実施の形態によれば、機能層の厚さは0.5μmから20μmの間である。
【0017】
本発明の一実施の形態によれば、セルロース基板の繊維径は0.01μmから50μmの間である。
【0018】
本発明の一実施の形態によれば、機能層中の有機ポリマー弾性充填剤の重量パーセントは、50%から99.9%の間である。
【0019】
本発明の一実施の形態によれば、機能層はセルロース基板の少なくとも1つの表面上に連続的または不連続的にあるものである。
【0020】
本発明の一実施の形態によれば、機能層はセルロース基板の2つの対向面にある。
【0021】
本発明は、前述の多孔質担体を含む電気化学素子セパレータを提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
以上のことから、本発明の多孔質担体は、少なくとも一方の面に有機ポリマー弾性充填剤を被覆することで、より優れた耐圧縮性および回復性を有するものである。 またリチウムイオン電池のセパレータに本多孔質担体を適用した場合、本発明の多孔質担体は圧縮されにくく、回復性が良好であるため、本多孔質担体を用いたリチウムイオン電池は繰り返し充放電を行ってもセパレータと電極との間に隙間が生じにくいという特徴がある。これによってインピーダンスが容易に増加せず、リチウムイオン電池がより長い寿命を有することができるものである。
【0023】
本開示の前述の特徴および利点をより分かりやすくするために、図を用いて実施形態を以下に詳細に説明する。
【0024】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するためのもので本明細書の一部を構成している。また本発明の原理を明確にするために実施形態の説明を例示することにした。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による多孔質担体を示す模式図である。
【0026】
【
図2】本発明の他の実施形態に係る多孔質担体を例示する模式図である。
【0027】
【
図3】本発明の単一粒子の圧縮率と回復率の試験方法を説明する模式図である。
【0028】
【
図4A】本発明の多層多孔質担体の圧縮率と回復率の試験方法を説明する模式図である。
【
図4B】本発明の多層多孔質担体の圧縮率と回復率の試験方法を説明する模式図である。
【0029】
【
図5】本発明のいくつかの実験例の多層多孔質担体の圧縮性試験の結果である。
【0030】
【
図6】本発明の実験例の多層多孔質担体の回復率試験の結果である。
【0031】
【
図7】本発明の幾つかの実験例のリチウムイオン電池のサイクル性能試験の結果である。
【発明の詳細な説明】
【0032】
以下の詳細な説明の部では、本発明の実施形態の理解を促すために詳細にわたる説明をしている。 しかしながら、これらの具体的な詳細がなくてもこれらの実施形態を実施できることは明らかである。一方で図面を簡略化するために周知の構造および素子を簡単に示している。
【0033】
本明細書において、「ある数値から別の数値」により表される範囲は、本明細書の範囲の全ての数値の列挙を避けるための概略的表現である。 したがって、特定の数値範囲の列挙は、明細書に明示的に述べられる任意の数値およびより小さな数値範囲のように、その数値範囲内の数値に加えて若干小さな数値範囲を含んでいる。
【0034】
以下では、本発明をさらに説明するために実施形態を提供するが、実施形態は単なる例示であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0035】
図1は本発明のいくつかの実施形態による多孔質担体を示す概略図である。
図2は本発明の他の実施形態に係る多孔質担体を例示する模式図である。
【0036】
図1を参照し、本発明は、セルロース基板100と機能層102とを含む多孔質担体10を提供する。具体的には、機能層102はセルロース基板100の少なくとも一方の面にあり、ここで機能層102は有機ポリマー弾性充填剤およびポリマーバインダーを含んでいる。ある実施形態の時には、多孔質担体10の厚さは、例えば13μmから50μmの間であるが、別の実施形態の時には、多孔質担体10の厚さは、例えば、20μmから25μmの間である。しかし本発明はそれに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、多孔質担体10の機能層102は、
図1に示されるようにセルロース基板100の一方の面にあるが本発明はそれに限定されるものではない。一方で
図2に示されるようにいくつかの実施形態では、多孔質担体20の機能層102は、セルロース基板100の2つの対向する表面に存在している。すなわち、本発明の多孔質担体は、使用者の要求に応じてセルロース基板100の片面または両面に機能層102が存在してもよい。
【0037】
いくつかの実施形態において、セルロース基板100の材料は、例えば、天然繊維、修飾天然繊維、またはそれらの組み合わせでも良い。 いくつかの実施形態では、天然繊維は、例えば、綿、麻、ココナッツ、またはそれらを組み合わせても良いが、本発明はそれに限定されるものではない。 本実施形態では、セルロース基板100は、例えば、ナノセルロース不織布であるが、本発明はまたこれに限定されるものでもない。 いくつかの実施形態では、セルロース基板100の厚さは、例えば12μmから50μmの間である。 他の実施形態では、セルロース基板100の厚さは、例えば、20μmから25μmの間であるが、これについても本発明はそれに限定されるものではない。 いくつかの実施形態では、セルロース基板100の繊維径は、例えば、0.01μmから50μmの間であるが、本発明はそれに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、機能層102中の有機ポリマー弾性充填剤の材料は、エチレン性不飽和単量体を含む。いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和単量体は、例えばエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルまたはその誘導体、共役ジエン系化合物またはその誘導体、エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体および芳香族ビニル化合物またはその誘導体からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0038】
例えば、有機ポリマー弾性充填剤としては例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、スチレンメチルメタクリレート共重合体(PMMA-PS)、ポリスチレンが使用されるが本発明はこれらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、有機ポリマー弾性充填剤のポリマー粒子の弾性係数は、例えば、200kgf / mm2 ~500kgf / mm2である。他の実施形態では、有機ポリマー弾性充填剤のポリマー粒子の弾性係数は、例えば、200kgf / mm2 ~400kgf / mm2である。いくつかの実施形態において、有機ポリマー弾性充填剤のポリマー粒子の粒度は、例えば、0.8μmと5μmの間である。本実施形態では、有機ポリマー弾性充填剤のポリマー粒子の粒度分布は単分散である。すなわち、ポリマー粒子の粒度分布の変動係数は、例えば5%未満であるが、本発明はこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、有機ポリマー弾性充填剤のポリマー粒子の耐熱温度は少なくとも250℃より高いものである。例えば、有機ポリマー弾性充填剤の粒子の耐熱温度は280℃~340℃であるが、本発明はこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、機能層102中の有機ポリマー弾性充填剤の重量パーセントは、例えば、50%から99.9%の間であるが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0039】
いくつかの実施形態において、機能層102中のポリマーバインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン - ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群の少なくとも1つから選択される。 ただし、本発明はこれに限定されるものではない。 いくつかの実施形態では、機能層102中のポリマーバインダーの重量百分率は、例えば2.5%~10%の間であるが、本発明はそれに限定されるものではない。
いくつかの実施形態において、機能層102は、セルロース基板100の少なくとも1つの表面上に連続的または不連続的に存在している。特に、いくつかの実施形態において、機能層102はセルロース基板100の表面上に連続的に存在する。すなわち、セルロース基板100の1つの表面または2つの対向面に存在する機能層102は、例えば、均一な厚さの薄層である。他の実施形態では、機能層102は、例えばセルロース基板100の表面上に不連続に存在している。すなわち、セルロース基板100の1つの表面または2つの対向面に存在する機能層102は完全な層構造ではなく、セルロース基板100の表面にドット状、ブロック状、短冊状に不規則に分布している。いくつかの実施形態では、機能層102が、
図2に示されるようにセルロース基板100の2つの対向面に存在する場合、機能層102は、セルロース基板100の2つの対向面に連続的に存在させることができる。他の実施形態において、機能層102はまた、例えば、セルロース基板100の2つの対向面に不連続に存在してもよいが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0040】
他の実施形態において、機能層102は、例えば、セルロース基板100の1つの表面に連続的に存在し、セルロース基板100のもう1つの表面に不連続に配置されてもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、機能層102の厚さは、例えば、0.5μmから20μmの間であるが、本発明はそれに限定されるものではない。他の実施形態では、機能層102の厚さも、例えば、0.5μmから8μmの間である。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明の多孔質担体の回復率は、例えば少なくとも60%以上であることに注意されたい。 例えば、多孔質担体の回復率は、例えば、60%~99%の間であり、例えば、60%~70%の間が好ましいが、本発明はこれに限定されるものでない。 いくつかの実施形態において、本発明の多孔質担体の圧縮率は、例えば、12%以下である。 例えば、多孔質担体の圧縮率は、例えば、1%~12%、好ましくは、5%~12%であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
本発明はさらに、次のステップを含む多孔質担体10の製造方法を提供する。セルロース基板100が提供される。 機能層102は、セルロース基板100の少なくとも1つの表面上にコーティングされており、この機能層102は有機ポリマー弾性充填剤およびポリマーバインダーを含んでいる。 いくつかの実施形態では、機能層102をコーティングする方法としては、例えば、スピンコーティング法、スプレー法、ローラーコーティング法、フローコーティング法、ブレードコーティング法、ディッピング法、またはそれらの組み合わせを含んでも良い。 本発明はそれに限定されるものではない。
【0043】
本発明はさらに、上記の実施形態における多孔質担体10または多孔質担体20を含む電気化学素子セパレータを提供する。セルロース基板100自体は弾性を有していないので、セルロース基板100の少なくとも一方の面に機能層102を被覆することにより、多孔質担体10または機能層102を有する多孔質担体20はより伸縮性を持つことができることに注意されたい。そのため多孔質担体10または多孔質担体20は、圧縮されてもより高い回復が確認される。さらに、機能層102を有する多孔質担体10または多孔質担体20はまた、より良好な耐圧縮性を有している。電気化学素子への用途展開としては、例えば、多孔質担体10または多孔質担体20を電気化学素子セパレータとして使用することができる。多孔質担体10または多孔質担体20は、より優れた耐圧縮性を有し、かつ圧縮後もより良好な回復が可能なために、長期間の充電および放電サイクル電後でも電極と電気化学素子セパレータとの間の隙間を生じさせにくいという特徴がある。これにより、インピーダンスが容易に増加せず、このため電気化学素子はより長い寿命を有することができる。
【0044】
本発明の電気化学素子は特に限定されるものではないことに注意されたい。 いくつかの実施形態では、電気化学素子はリチウムイオン電池を例示しているが、本発明はそれに限定されるものではない。 本実施形態では、電気化学素子は、例えば、正極、負極、電解質および電気化学素子用セパレータから構成されているが、これらの構成に限定されるものでもない。
【0045】
いくつかの実施形態では、電気化学素子の正極は、例えば、正極活物質からなる。正極活物質としては、リチウムイオン電池の正極の正極活物質として用いることができるものであれば特に限定されるものではない。例えば、正極活物質は、リチウム金属、リチウムニッケル含有複合化合物、リチウム混合遷移金属酸化物、リチウム混合遷移金属硫化物、またはそれらの組み合わせなどを含むものである。リチウム - ニッケル含有複合化合物としては、例えば、Ni- Mn-Co複合化合物、Ni- Mn- Al複合化合物、Ni-Co-Al複合化合物、またはそれらの組み合わせでもよい。リチウム混合遷移金属硫化物としては、例えば、LiTiS2がある。リチウム混合遷移金属酸化物は、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiFePO4、LiMnO2、LiMoO3、LiV2O5、またはそれらの組み合わせでもよい。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。正極活物質は、例えば、上記した材料のうちの1つまたはそれらの組み合わせから選択することができるが、本発明はそれらに限定されるものではない。本実施形態では、正極活物質は、例えば、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2であるが、これに限定されるものではない。
【0046】
いくつかの実施形態では、電気化学素子の負極は、例えば負極活物質からなる。負極活物質としては、リチウムイオン電池の負極の負極活物質として用いることができるものであれば特に限定されるものではない。負極活物質は、例えば、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な元素を含んでいる。またリチウムイオン電池の高容量を達成するために、元素をリチウムと合金化してもよい。 例えば、負極活物質は、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、インジウム、または亜鉛であっても良い。いくつかの実施形態において、炭素は、例えば、グラファイト、アモルファスカーボン、カーボンファイバー、コークス、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、またはフラーレンを含んでいるが、本発明はそれらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、負極活物質は、例えば金属化合物が使われる。この金属化合物としては、リチウム金属化合物(例えば、LiAl、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn)、金属酸化物(例えば、SnO、SnO2、GeO、GeO2、In2O、In2O3、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、SiO、ZnO)、リチウム金属酸化物(例えば、リチウム - 遷移金属複合酸化物)、またはそれらの組み合わせがあげられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。負極活物質は、例えば、上記した材料の1つまたはそれらの組み合わせから選択することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。本実施形態において、負極活物質は、例えば天然黒鉛であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
いくつかの実施形態では、電気化学素子の電解質は特に限定されない。例えば、電気化学素子の電解質は、例えば、電解質としてのリチウム塩を1mol / L程度の濃度で非水系有機溶媒に溶解させたものであるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、LiClO4、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、Li[(CO2)2]2B、またはそれらの組み合わせなどである。非水性有機溶媒は、炭酸塩(例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、またはメチルエチルカーボネート)、ラクトン(例えば、γ-ブチロラクトン)、エーテル(例えば、トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2-エトキシエタン、テトラヒドロフラン、または2-メチルテトラヒドロフラン)、スルホキシド(たとえばジメチルスルホキシド)、オキソラン(例えば、1,3-ジオキソランまたは4-メチル-1,3-ジオキソラン)、窒素含有物(例えば、アセトニトリル、ニトロメタン、またはNMP)、エステル(例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、またはリン酸トリメステル)、グライム(例えば、ジグリム、トリグリム、またはテトラグリム、ケトン(例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、またはメチルイソブチルケトン)、スルホン(例えば、スルホラン)、オキサゾリジノン(例えば、3-メチル-2-オキサゾリジノン)、またはスルトン(例えば、1,3-プロパンスルトン、4-ブタンスルトン、またはナフサスルトン(Naphtha sultone))が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。 電解質は、例えば、上記の材料の1つまたはそれらの組み合わせから選択することができるが、本発明はこれらに限定されるものでない。本実施形態では、電解質は、例えばエチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートに溶解したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
(実験)
【0049】
実験例を参照して、本発明を以下により詳細に説明する。 以下の実験が記載されているが、使用される材料ならびにその量および比率、ならびに取り扱いの詳細および取り扱い方法などは本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。そのため下記の実験は本発明を限定しているものではない。
【0050】
本実施形態において、「圧縮」は、多孔質担体に特定の圧力が加えられたときの、多孔質担体の厚さ方向における変形量(または粒子の長さの変形量)が、多孔質担体の元の厚さ(または粒子の元の直径)の20%未満に達すること、と定義される。
【0051】
(実験1)
【0052】
図3は、本発明の単一粒子の圧縮率と回復率の試験方法を説明する模式図である。
【0053】
以下、有機ポリマー弾性充填剤の特性を試験した。 本実験では、有機ポリマー弾性充填剤の材料として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA、台湾工業技術研究所提供)およびスチレン - メチルメタクリレート共重合体(PMMA-PS、台湾工業技術研究所提供)を選択した。 ここで使用したPMMA粒子は高度に架橋されており、PMMA-PS粒子は適度に架橋されたものである。 本実験では、PMMA粒子およびPMMA-PS粒子の粒度、耐熱性および機械的性質をそれぞれ分析した。 試験方法を以下に記載し、試験結果を表1に示す。
【0054】
<粒子特性の解析方法>
【0055】
粒子径の分析:電子顕微鏡を用いて異なる場所の粒度を観察し、粒度分布の変動係数(Cv)を算出した。
【0056】
熱重量減少分析:熱重量分析器(モデルTGA Q50)を使用して分析を実施した。粒子の試料10mgを採取し、毎分10℃の速度で室温から800℃に加熱していった。5%のサンプル重量減少が確認された温度を、TGA 5%重量減少として定義した。
【0057】
機械的特性分析:米国特許第5,486,941号を参照して、微小圧縮試験のために単一の粒子を採取した。 微小圧縮試験機のモデルはMCT - 511(島津製作所製)であり、プレッサー(上部圧盤)の直径は50μmである。
【0058】
粒子の圧縮率:
図3の(a)と(b)を参照し、力値が1mNになるまで単一粒子Pに特定の圧力をかけ、変位長をL1として記録し、単一粒子の元の直径はDとした。粒子Pの圧縮率(%)は、単一粒子Pの元の直径Dに対する変位長L1の百分比として定義される。
粒子の圧縮率(%)=L1 / D×100%
【0059】
粒子の回復率:
図3の(a)、(b)、(c)を参照し、力値が1mNになるまで単一粒子Pに特定の圧力をかけ、この時の変位長をL1として記録した。 続けて圧力値を10秒間維持した後、圧力を解放した。機器が検出可能な最低応力値(即ち、0.01mN)まで、変位長をL2として記録した。粒子の回復率は、変位長L1に対する変位長L2の百分比として定義される。
粒子の回復率(%)=L2 / L1×100%
【0060】
K値:算出式は下記式1の通りである。
【数1】
ここで、
F:単一粒子にかかる圧力(kgf)。
S:10%圧縮後の単一粒子の変位長(μm)。
R:単一粒子の直径(μm)。
【0061】
【0062】
上記表1の分析結果から、本発明の有機ポリマー弾性充填剤の粒度分布は単分散(Cv<5%)であり、有機ポリマー弾性充填剤の粒度分布は下記の通りであることがわかる。優れた耐熱性 また、回復率(復元率)、圧縮率、k値の結果によれば、PMMA粒子は、PMMA -PS粒子よりも剛性が高く、弾性回復が好ましい。
【0063】
(実験2)
【0064】
以下、本発明の多孔質担体の特性を試験した。 本実験では、有機ポリマー弾性充填剤の材料として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)およびスチレン - メタクリル酸メチル共重合体(PMMA-PS)を選択した。 本実験では、本発明の実施例および比較例の多孔質担体の厚さおよび機械的性質をそれぞれ測定および分析した。 各実施例の製造方法およびその特性の試験方法を以下に示し、試験結果を表2に示す。本実験における多孔質担体は単層構造である。
【0065】
(実施例1)
【0066】
まず、PMMA粒子をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の溶媒中で混合した。両者の重量比は連続して10:90である。 次に、超音波を用いて30分間分散させて混合溶液を形成した。 次に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、日本のクレハ社から購入、モデルW1700)を混合溶液に添加した。混合溶液に対するPVDFの重量比は2:98である。 スラリーを、24時間徹底的に攪拌しそして溶解することにより調製した。 次いで、このスラリーをワイヤーバコーター(10番)を用いてペーパーセパレーター(ニッポン高度紙工業株式会社より購入)の片面に均一に塗布した後、オーブンに入れて90℃で1時間乾燥して実施例1の多孔質担体を得た。
【0067】
(実施例2)
【0068】
実施例2の多孔質担体は、実施例1と同様の調製手順に従って調製されたが、違いは、実施例2では、PMMA粒子がPMMA-PS粒子で置き換えられたことである。 このようにして、実施例2の多孔質担体を得た。
【0069】
(比較例)
【0070】
比較例の多孔質担体は、実施例1と同様の調製手順で調製したが、比較例では、PMMA粒子を添加することなく、PVDFを直接NMPに溶解させた点が異なる。 ここで、PVDFとNMP溶媒との重量比は、2:98である。 このようにして、比較例の多孔質担体を得た。
【0071】
<単層多孔質担体特性の解析方法>
【0072】
実施例1、実施例2および比較例の単層多孔質担体の厚さおよび機械的性質をそれぞれ測定および分析した。 回復率試験および圧縮率試験の方法は、試験対象を単一粒子から単層多孔質担体に置き換えたことと、2.5mNに達する力値以外は、上記実験1に記載したものと同様であった。
【0073】
単層多孔質担体の圧縮率:力値が2.5mNになるまで単一粒子Pに特定の圧力をかけ、変位厚さをt1として記録し、単層多孔質担体の元の厚さはt0とした。単層多孔質担体の圧縮率(%)は、単層多孔質担体の元の厚さt0に対する変位厚さt1の百分比として定義される。
単層多孔質担体の圧縮率(%)=t1 / t0×100%
【0074】
単層多孔質担体の回復率:力値が2.5mNになるまで単一粒子Pに特定の圧力をかけ、変位厚さをt1として記録した。 続けて圧力値を10秒間維持した後、圧力を解放した。機器が検出可能な最低応力値(即ち、0.01mN)まで、変位厚さをt2として記録した。単層多孔質担体の回復率(%)は、変位厚さをt1に対する変位厚さt2の百分比として定義される。
単層多孔質担体の回復率(%)=t2 / t1×100%
【0075】
【0076】
上記表2の解析結果から、実施例1および実施例2の多孔質担体は、比較例の多孔質担体よりも圧縮率が低いことがわかる。これは、有機ポリマー弾性充填剤で被覆された多孔質担体が圧縮されにくいということを意味する。 同時に、実施例1および実施例2の多孔質担体も比較例の多孔質担体よりも高い回復率を有しており、有機ポリマー弾性充填剤で被覆された多孔質担体の方が回復率が高いことを意味する。 また、実施例1の多孔質担体は、実施例2の多孔質担体よりも圧縮率が低いため、実施例1の有機ポリマー弾性充填剤(PMMA)で被覆された多孔質担体の方が剛性が高く、実施例2の有機ポリマー弾性充填剤(PMMA - PS)をコートした多孔質担体は比較的柔らかい。
【0077】
(実験3)
【0078】
図4Aおよび
図4Bは、本発明による多層多孔質担体の圧縮率および回復率の試験方法を示す模式図である。
図5は、本発明のいくつかの実験例の多層多孔質担体の圧縮率試験の結果である。
図6は、本発明の実験例の多層多孔質担体の回復試験の結果である。
【0079】
以下、各実施例の単層多孔質担体をそれぞれ積層して多層多孔質担体を形成した。 本実験では、本発明の実施形態および比較実施形態の多層多孔質担体の機械的性質をそれぞれ分析した。 以下に、各実施形態および各比較例の製造方法およびその特性の試験方法について説明し(
図4Aおよび
図4B参照)、試験結果を
図5および
図6に示す。本実験における多孔質担体は、多層に積層された構造である。
【0080】
(実施形態1)
【0081】
実施例1の単層多孔質担体を5cm×5cmの大きさに切断し、次いで約2mmの厚さに積み重ねた(すなわち100層の多層多孔質担体を積み重ねた)。 これによって実施形態1の多層多孔質担体を得た。
【0082】
(実施形態2)
【0083】
実施形態2の多層多孔質担体は、実施例1と同様の調製手順で調製したが、実施形態2では、実施例1の単層多孔質担体を実施例2の単層多孔質担体に置き替えた。 このようにして実施形態2の多層多孔質担体を得た。
【0084】
(比較実施形態1)
【0085】
比較実施形態1では、紙セパレータは他の材料を被覆されていないものを用いる。 この紙セパレータを5cm×5cmのサイズに直接切断し、次いで約2mmの厚さに積み重ねた。 このようにして比較実施形態1の多層多孔質担体を得た。
【0086】
(比較実施形態2)
【0087】
比較実施形態2の多層多孔質担体は、実施形態1と同様の調製手順で調製されたが、比較実施形態2では、実施例1の単層多孔質担体が比較例の単層多孔質担体に置き換えたものである。このようにして、比較実施形態2の多層多孔質担体を得た。
【0088】
<多層多孔質担体特性の解析方法>
【0089】
多層多孔質担体の圧縮率(厚さ維持率、%):
図4Aおよび
図4Bに示すように、まず、単層の多孔質担体1を積層して多層多孔質担体2を形成した。次に、各実施形態および各比較実施形態の積層多孔質担体2を矩形のプレッサー3(15cm×10cm)で加圧した。 圧縮後の多層多孔質担体2 'の厚さT1'(約1.7mm)は、元の厚さT1の85%であった。 2秒後に圧力を開放し、加圧を500回繰り返した。 圧力を解放した後の多層多孔質担体2 'の厚さT2を圧縮時間と共に記録した。多層多孔質担体の圧縮率は、圧縮後の厚さと元の厚さとの差の百分比として定義される。
多層多孔質担体の圧縮率(%)= (T1-T2) / T1×100%
【0090】
多層多孔質担体の回復率(厚さ回復率、%):
図4Aおよび
図4Bに示すように、まず、単層多孔質担体1を積層して多層多孔質担体2を形成した。次に、各実施形態および各比較実施形態の積層多孔質担体2を矩形プレッサー3(15cm×10cm)で加圧した。 圧縮後の多層多孔質担体2 'の厚さT1'(約1.7mm)は、元の厚さT1の85%であった。 2秒後に圧力を解放し、 加圧を500回繰り返した。圧力を解放したのちの経時的に厚みT3を測定した。多層多孔質担体の回復率は、多層多孔質担体の元の厚さに対する多層多孔質担体の圧縮後の厚さの百分比として定義される。
多層多孔質担体の回復率(%)= T3 / T1×100%
【0091】
図4から明らかなように、実施形態1および実施形態2の多層多孔質担体は、比較実施形態1および比較実施形態2の多層多孔質担体よりも厚み維持率が高いことがわかる。有機ポリマー弾性充填剤をコートした多層多孔質担体は圧縮するのが容易ではなく、実施形態1の多層多孔質担体は、500回の圧縮サイクルの後でも、その元の厚さの約96%を依然として維持することができる。 例えば、比較実施形態1および比較実施形態2の多層多孔質担体は、その元の厚さの約85%~87%しか維持できない。 また、
図6から明らかなように、実施形態1及び実施形態2の多層多孔質担体も、比較実施形態1及び比較実施形態2の多層多孔質担体よりも回復率が高いことがわかる。
【0092】
(実験4)
【0093】
図7を参照する。 本発明の実験例のリチウムイオン電池のサイクル性能の結果である。
【0094】
以下、本発明の多孔質担体をリチウムイオン電池に適用した。 すなわち、リチウムイオン電池のセパレータとして多孔質担体を用いた。 各リチウムイオン電池のサイクル性能を試験した。 各実験例および各比較実験例の製造方法およびそのサイクル性能の試験方法を以下に示し、試験結果を
図6に示す。 本実験における多孔質担体は単層構造であり、本実験におけるリチウムイオン電池は非水系電池に属する。
【0095】
実験例1
【0096】
<電極シートの製造>
【0097】
正極活物質を、PVDFと導電性カーボンとを94:3:3の割合で十分に混合した後、NMP溶媒に分散させて正極スラリーを調製した。 本実験では、正極活物質はLi(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2である。 次に、正極スラリーをアルミニウム箔上に塗布した(アルミニウム箔の厚さは16μm)。 乾燥・プレス後、直径13mmの円形電極シートに切断して本実験の正極を得た。
【0098】
負極活物質とPVDFと導電性カーボンとを95:1:4の割合で十分に混合した後、NMP溶媒に分散させて負極スラリーを調製した。 本実験では、負極活物質は天然黒鉛である。 次に、この負極スラリーを銅箔上に塗布した(銅箔の厚さは10μm)。 乾燥・プレス後、直径13mmの円形電極シートに切断して本実験の負極を得た。
【0099】
<電解質の調製>
【0100】
エチレンカーボネート(EC)をジメチルカーボネート(DMC)と3:7の重量比で混合し、これにヘキサフルオロリチウム(LiPF6) を加えて1Mの溶液としたものを電解質とした
【0101】
<リチウムイオン電池の組み立て>
【0102】
CR2032ボタン電池を使用して電池組立て試験を実施した。 本実験のリチウムイオン電池の正極、負極および電解質は、それぞれ上記の方法で作製した。実験例1において、リチウムイオン電池のセパレータは、上記実施例1の単層多孔質担体であり、その厚みは28μmであった。 このようにして実験例1のリチウムイオン電池を得た。
【0103】
実験例2
【0104】
実験例2のリチウムイオン電池は、実験例1と同様の製造方法で製造されたが、実験例2では、リチウムイオン電池のセパレータを実施例2の単層多孔質担体に交換した。厚みは28μmである。 このようにして実験例2のリチウムイオン電池を得た。
【0105】
比較実験例1
【0106】
比較実験例1のリチウムイオン電池は、実験例1と同様の製造方法で製造され、差異は、比較実験例1では、リチウムイオン電池のセパレータを比較例の単層多孔質担体に代えたことである。このときの厚み24μmである。 このようにして、比較実験例1のリチウムイオン電池を得た。
【0107】
比較実験例2
【0108】
比較実験例2のリチウムイオン電池は、実験例1と同様の製造方法で製造され、差異は、比較実験例2では、リチウムイオン電池のセパレータが、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP / PE / PP、Celgardから購入、モデル2325)の三層構造からなる一般的な三層構造セパレータで置き換えられており、その厚さは25μmである。 このようにして、比較実験例2のリチウムイオン電池を得た。
【0109】
<リチウムイオン電池のサイクル性能の試験方法>
【0110】
試験では、リチウムイオン電池のサイクル性能試験を室温で行った。 充電条件は、1Cの定電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で0.1C未満の電流になるまで充電した。 放電条件は、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。 充放電サイクルを100回繰り返した後、1回目の放電容量をC0、N回目の放電容量をCnとし、各サイクルの容量維持率を求めた。
【0111】
図7から、実験例1および実験例2のリチウムイオン電池は、充放電サイクルを100回繰り返した後、比較実験例1および比較実験例2のリチウムイオン電池よりも容量維持率が高く、これは、リチウムイオン電池のセパレータとして有機ポリマー弾性充填剤で被覆された多孔質担体は、圧縮するのが容易ではなく、より良好な回復を有することで、電池が長寿命を有することを意味する。
【0112】
要約すると、本発明の多孔質担体は、その少なくとも一方の表面に有機ポリマー弾性充填剤をコーティングすることによって、より良好な耐圧縮性および弾性回復を有する。 このように、リチウムイオン電池のセパレータに多孔質担体を適用した場合、本発明の多孔質担体は圧縮されにくく、回復性が良好であるため、充放電後でもセパレータと電極との間に隙間が生じにくくなる。そのため、インピーダンスの上昇を抑制でき、結果としてリチウムイオン電池の長寿命化を図ることができる。
【0113】
本発明を上記の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなく説明した実施形態に対する修正を加えることができることは当事者であれば明らかなことである。 したがって、本発明の範囲は上記の詳細な説明ではなく添付の特許請求の範囲によって定義されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、より良好な耐圧縮性および復元性を有する多孔質担体を提供する。
【符号の説明】
【0115】
1:単層多孔質担体
2,2′:多層多孔質担体
3:プレッサー
10,20:多孔質担体
100:セルロース基板
102:機能層
D:直径
L1、L2:変位長
P:粒子
T1,T1′:厚さ