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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】気相エピタキシー法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20220107BHJP
   C23C 16/30 20060101ALI20220107BHJP
   C30B 25/18 20060101ALI20220107BHJP
   C30B 29/40 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/30
C30B25/18
C30B29/40 502F
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020209391
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2021100115
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】10 2019 008 928.6
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504324855
【氏名又は名称】アズール スペース ソーラー パワー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AZUR SPACE Solar Power GmbH
【住所又は居所原語表記】Theresienstrasse 2, D-74072 Heilbronn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クレメンス ヴェヒター
(72)【発明者】
【氏名】グレゴア ケラー
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-312264(JP,A)
【文献】特開平10-029897(JP,A)
【文献】特表2001-520708(JP,A)
【文献】特開昭63-166285(JP,A)
【文献】特開平3-135015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/30
C30B 25/18
C30B 29/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程段階:
- 第1の導電型の第III-V族基板(S)の準備、
- 気相エピタキシー装置(A)の反応チャンバ(K)への、充填温度Tにおける前記第III-V族基板(S)の導入、
- 担体ガスと、第V主族からの第1の元素用の第1の前駆体とを有する初期ガス流(I)の導入下での、前記充填温度Tからエピタキシー温度Tへの前記第III-V族基板(S)の加熱、
- 前記反応チャンバ内に案内される、前記担体ガスと、前記第1の前駆体と、第III主族の元素用の少なくとも1つの第2の前駆体とを有するエピタキシーガス流からの気相による、前記第III-V族基板(S)表面上での、前記第1の導電型のドーパントのドーパント濃度(Dmax、Dmin)を有する第III-V族層の蒸着
- 前記充填温度Tから前記エピタキシー温度Tへの前記加熱中、前記初期ガス流(I)に、前記第1の導電型のドーパント用の第3の前駆体を添加すること
を有する気相エピタキシー法であって、
前記第3の前駆体の添加が、前記加熱中、少なくとも150℃の温度から開始し、
前記初期ガス流の総質量流量が、前記エピタキシーガス流の総質量流量の最高で10%であり、かつ
ドーパント濃度(D max 、D min )を10 17 cm -3 から10 15 cm -3 へと低下させて前記第III-V族層を成長させ、かつ
前記第III-V族層を、最高で30μmの層厚(d )で成長させることを特徴とする、気相エピタキシー法。
【請求項2】
前記第3の前駆体の添加が、前記加熱中に500℃未満の温度または400℃未満の温度または300℃未満の温度で開始することを特徴とする、請求項1記載の気相エピタキシー法。
【請求項3】
反応チャンバ(K)として遊星型リアクタを使用することを特徴とする、請求項1または2記載の気相エピタキシー法。
【請求項4】
少なくとも1×1017cm-3または少なくとも1×1018cm-3のドーパント濃度(D基板)を有する第III-V族基板を準備することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項5】
前記第III-V族層を、前記第III-V族基板(S)の表面上に材料結合により成長させることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項6】
前記第III-V族層内での前記ドーパント濃度(Dmax、Dmin)を、前記第1の前駆体の質量流量と前記第2の前駆体の質量流量との比を利用して、および/または前記エピタキシーガス流に添加される前記第3の前駆体の質量流量を利用して調整することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項7】
前記第3の前駆体が、ジメチル亜鉛、またはジエチル亜鉛、または四臭化炭素、または1,2-ビスシクロペンタジエニルマグネシウム、またはモノシラン、またはジシラン、またはテルル化ジメチル、またはテルル化ジエチル、またはテルル化ジイソプロピルであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項8】
前記第III-V族基板(S)が、層厚全体にわたって一定のドーパント濃度、または最高で1%だけ変化するドーパント濃度を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項9】
前記第III-V族基板が、GaAsを含むかまたはGaAsからなることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項10】
前記エピタキシー温度Tが、少なくとも550℃または少なくとも600℃で、かつ最高900℃であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相エピタキシー法に関する。
【0002】
半導体層をエピタキシャル形成させるための非常に様々な気相エピタキシー装置が知られており、例えばAixtron社の装置が知られている。
【0003】
それらの方法に共通するのは、典型的には、基板を導入するために反応チャンバを開き、続いて閉じ、ポンプ排出し、十分に加熱してから、該反応チャンバ内に導入されるガス流により基板の表面上で半導体層を成長させることである。
【0004】
ガス流の組成は、成長させるべき層の種類に従うが、典型的には、アルシンおよび/またはTMGaのような、成長させるべき半導体層用の元素を供給する前駆体が添加され、かつ層をドーピングするためには、適宜、ドーパント用前駆体も添加される。
【0005】
この背景をもとに、本発明の課題は、従来技術を発展させる方法を提示することにある。
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。本発明の有利な形態が、従属請求項の主題である。
【0007】
本発明の主題によると、次の工程段階:
- 第1の導電型の第III-V族基板の準備、
- 気相エピタキシー装置の反応チャンバへの、充填温度Tにおける第III-V族基板の導入、
- 担体ガスと、第V主族からの第1の元素用の第1の前駆体とを有する初期ガス流の導入下での、充填温度Tからエピタキシー温度Tへの第III-V族基板の加熱、
- 反応チャンバ内に案内される、担体ガスと、第1の前駆体と、第III主族の元素用の少なくとも1つの第2の前駆体とを有するエピタキシーガス流からの気相による、第III-V族基板表面上での、第1の導電型のドーパントのドーパント濃度を有する第III-V族層の蒸着、
を有する気相エピタキシー法が提供される。
【0008】
さらに、充填温度Tからエピタキシー温度Tへの加熱中、初期ガス流に、第1の導電型のドーパント用の第3の前駆体を少なくとも一時的に添加する。好ましくは、第3の前駆体を加熱工程全体にわたって添加する。
【0009】
第III-V族基板は、第III主族の少なくとも1つの成分および第V主族の少なくとも1つの成分を有することが自明である。基板は、例えばGaAsからなる。
【0010】
充填温度と呼ばれるのは、反応チャンバを開き、かつ基板をチャンバ内に配置する際の温度である。充填温度は、充填の技術に従うことが自明である。つまり、充填温度は、手動充填の場合、典型的には、ロボットによる充填の場合よりも明らかに低い必要がある。エピタキシャル成長は、典型的には、充填温度においてはまだ起こらない。
【0011】
エピタキシー温度と呼ばれるのは、成長プロセス用に選択され、かつ確かな成長を確保する温度である。結晶成長が、より高温およびより低温において、ないしは温度範囲内においても可能であることは自明である。
【0012】
前駆体と呼ばれるのは、エピタキシャル成長の出発生成物(Ausgangsprodukt)として利用される分子である。それに応じて、前駆体は、成長させるべき元素、例えば、第III主族または第V主族の元素、および少なくとも1つのさらなる元素からなる分子である。
【0013】
ガス流用の担体ガスとしては、例えば、HまたはNが適切である。
【0014】
担体ガスと、第V主族からの第1の元素用の前駆体、例えばアルシンとを有する初期ガス流を、該当する第V主族の元素、例えばヒ素の、第III-V族基板からの外方拡散を抑制するために、加熱中、反応チャンバ内に導入する。これは、層、つまり基板表面の安定化とも呼ばれる。
【0015】
第1の導電型のドーパントないしは該当する第3の前駆体の、初期ガス流へのさらなる添加によって、加熱工程中に、第2の導電型がドープされた層が、たとえ薄いものであっても基板表面上に形成されることが阻止される。
【0016】
第2の導電型のドーパントおよび/または第III主族の元素は、例えば、エピタキシー装置の先行する利用により、バックグラウンド/不純物として反応チャンバ内に存在するかまたは堆積している。
【0017】
加熱により、堆積した元素およびドーパントが蒸発する。アルシンと共に、つまり半導体ディスクの表面からの蒸発は、加熱プロセス中にすでに、場合によっては非常に薄い層の望ましくない成長を起こしかねない。
【0018】
成長させるべき第III-V族層のドープ量が少ないほど、そのような望ましくない、第2の導電型がドープされた層の影響、つまり順方向で始めのうちにかなり高い電圧値に対しても引き続き遮断する作用がますます重大になる。
【0019】
したがって、高い絶縁耐力用の、ドープ量の少ない層を有する部品の場合にはまさに、本発明による方法によって、部品の特性曲線が、順方向においても確かに、理想的な特性曲線カーブからせいぜい少ししか逸脱しない。
【0020】
第1の実施形態によると、第3の前駆体の添加は、加熱中に500℃未満の温度または400℃未満の温度または300℃未満の温度で開始する。それによって、第3の前駆体を添加する前にエピタキシャル成長が起こり得ないことが保証される。
【0021】
一変形形態では、第3の前駆体の添加は、加熱中、少なくとも150℃の温度から、または少なくとも200℃の温度から開始する。
【0022】
別の一実施形態では、初期ガス流の総質量流量は、エピタキシーガス流の総質量流量の最高で10%である。
【0023】
さらなる一実施形態によると、反応チャンバとして遊星型リアクタを使用する。
【0024】
別の一変形形態では、少なくとも1×1017cm-3または少なくとも1018cm-3のドーパント濃度を有する第III-V族基板を準備する。
【0025】
さらなる一変形形態によると、第III-V族層を、1018cm-3から1015cm-3へと低下するドーパント濃度で成長させる。
【0026】
別の一変形形態によると、ドーパント濃度を1017cm-3または5×1016cm-3から1015cm-3へと低下させて第III-V族層を成長させる。一実施形態では、第III-V族層の初期ドーピングが、基板ドーピングから5×1016cm-3までの間の範囲にある。
【0027】
別の一実施形態では、第III-V族層を、最高で10μmまたは最高で30μmまたは最高で60μmの層厚で成長させる。
【0028】
一変形形態では、第III-V族層は、少なくとも10μmまたは少なくとも30μmの層厚を有する。好ましくは第III-V族層は、10μm~60μmの範囲の層厚を有する。
【0029】
さらなる一実施形態では、第1の導電型は、pまたはnである。
【0030】
別の一変形形態では、第III-V族層を、第III-V族基板の表面上に材料結合により成長させる。
【0031】
別の一変形形態では、第III-V族層内でのドーパント濃度を、第1の前駆体の質量流量と第2の前駆体の質量流量との比を利用して、および/またはエピタキシーガス流に添加される第3の前駆体の質量流量を利用して調整する。
【0032】
第III-V族層のドーピングは、適切なドーパント、例えば炭素を使用する場合、第III主族の元素と第V主族の元素と比にも依存する。
【0033】
その際、ドーパントは、該当するドーパント用のさらなる前駆体、例えば四臭化炭素の形で、または有機金属前駆体、例えば第III主族の元素用の第2の前駆体、例えばTMGaを利用して準備する。
【0034】
ドーパント用前駆体を添加する場合、これは活性ドーピング(aktive Dotierung)と呼ばれ、有機金属前駆体の炭素を利用するドーピングはオートドーピングと呼ばれる。
【0035】
さらなる一実施形態によると、第3の前駆体は、ジメチル亜鉛、またはジエチル亜鉛、または四臭化炭素、または1,2-ビスシクロペンタジエニルマグネシウム、またはモノシラン、またはジシラン、またはテルル化ジメチル、またはテルル化ジエチル、またはテルル化ジイソプロピルである。
【0036】
さらなる一変形形態では、基板は、層厚全体にわたって一定のドーパント濃度、または最高で1%だけ変化するドーパント濃度、または最高で10%だけ変化するドーパント濃度を有する。
【0037】
別の一実施形態では、第III-V族基板は、GaAsを含むかまたはGaAsからなる。
【0038】
別の一変形形態によると、エピタキシー温度Tは、少なくとも550℃または少なくとも600℃で、かつ最高900℃である。
【0039】
以下に、図面に関連付けて本発明をより詳細に説明する。その際、同種の要素には同一の符号を付す。説明する実施形態は、著しく図式化されており、つまり間隔ならびに横方向および垂直方向の長さは一定率でなく、異なる指定がない限り、互いに導出可能な幾何学的関係も有しない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】加熱工程中の、反応チャンバ内に配置された基板の平面図である。
図2】加熱工程に関する本発明の第1の実施形態の温度推移を示す図である。
図3】第III-V族基板およびそれに続く第III-V族層にわたるドーパント濃度推移を示す図である。
図4】特性曲線の推移を示す図である。
【0041】
図1の図解は、その中に配置された複数の第III-V族基板およびガス入口要素Oを有する、気相エピタキシー装置Aの遊星型リアクタとして形成されたリアクタチャンバKを上から見た断面図を示し、該ガス入口要素を介して、第III-V族層を蒸着させるためにリアクタチャンバK内にエピタキシーガス流を導入する。
【0042】
該エピタキシーガス流は、少なくとも1つの担体ガス、第V主族の元素用の第1の前駆体、および第III主族の元素用の第2の前駆体を有する。
【0043】
充填温度TにおいてリアクタチャンバKを充填した後に、リアクタチャンバを閉じ、ポンプ排出し、加熱する。
【0044】
リアクタチャンバの加熱中、ガス入口要素Oを介して、リアクタチャンバK内に初期ガス流Iを案内する。
【0045】
加熱は、例えば、図2の図解に示す温度推移に従い、ただし、初期ガス流Iは、t0時点では充填温度Tにおいて、担体ガスと第V主族の元素用の第1の前駆体とを含む。
【0046】
t2時点でトリガ温度Tに達してからエピタキシー温度Tに達するまで、初期ガス流にさらに、第1の導電型のドーパント用の第3の前駆体を添加する。
【0047】
トリガ温度Tはエピタキシー温度Tよりも低く、時点t2は時点t3よりも時間的に早く位置することが自明である。トリガ温度Tは、例えば500℃または400℃である。
【0048】
あるいは、トリガ温度Tが充填温度Tと一致し、その結果、第3の前駆体がすでにt=t時点から、つまり最初から初期ガス流I中に含有されている。
【0049】
安全性の観点から、充填前にガスを流すことはできないことを念のため付け加えておく。
【0050】
図3の図解では、第III-V族基板および第III-V族層の厚さdにわたる第1の導電型のドーパント濃度Dの推移を示す。準備した第III-V族基板は、厚さd基板にわたって、第1の導電型の一定のドーパント濃度D基板を有する。
【0051】
加熱中、第3の前駆体の添加により、第III-V族基板S上に成長させる第III-V族層のドーピングが、第III-V族基板Sに直接続いて、第1の導電型のドーパント濃度Dmaxで開始する。第III-V族層の層厚dにわたってドーパント濃度が、ドーパント濃度Dminまで低下する。
【0052】
本発明の方法によって達成されるドーパント濃度推移に起因し、第2の導電型の層によって補われた部品(ダイオード)に関して、順方向に、図4の図解において実線として例示的に示される、理想的な推移に従うダイオード特性曲線が得られる。
【0053】
加熱中に第3の前駆体を添加しないと、場合によっては、第1の導電型の基板と、後続の蒸着ステップにおいて成長させる第1の導電型の層との間に、望ましくない薄層、つまり第2の導電型の中間層が形成され得る。
【0054】
そのような第2の導電型の層は、第2の導電型のもう1つの層の分だけ補われた部品(ダイオード)に対して、順方向の延長された遮断および該当する逆行する特性曲線を招き、それは、図4の図解において×印で示した推移によって明らかになる。
図1
図2
図3
図4