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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】アクリルゴムおよびその架橋性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20220107BHJP
   C08F 220/22 20060101ALI20220107BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20220107BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20220107BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20220107BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20220107BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C08F220/18
C08F220/22
C08F220/26
C08K3/06
C08K5/3492
C08K5/36
C08L33/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020521194
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2019019561
(87)【国際公開番号】W WO2019225481
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2018099671
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066005
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】峠 大地
(72)【発明者】
【氏名】守山 五輪夫
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-262830(JP,A)
【文献】特開平09-132605(JP,A)
【文献】特開昭59-113010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00-220/70
C08L 33/08
C08K 3/06
C08K 5/3492
C08K 5/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体中に1~4重量%の反応性ハロゲン基含有ビニル単量体を架橋性共単量体として共重合させた共重合体であって、架橋性共単量体以外の他の共単量体100重量%中、n-ブチルアクリレートを45~65重量%、2-メトキシエチルアクリレートを10~35重量%およびエトキシエトキシエチルアクリレートを8~30重量%の割合で共重合させてなるアクリルゴム。
【請求項2】
架橋性共単量体以外の他の共単量体100重量%中、n-ブチルアクリレートを55~62重量%、2-メトキシエチルアクリレートを12~33重量%およびエトキシエトキシエチルアクリレートを10~27重量%の割合で共重合させた請求項1記載のアクリルゴム。
【請求項3】
共重合体中に1~1.5重量%の反応性ハロゲン基含有ビニル単量体を架橋性共単量体として共重合させた請求項1または2記載のアクリルゴム。
【請求項4】
さらに2重量%以下のビニル単量体またはオレフィン単量体を共重合させた請求項1記載のアクリルゴム。
【請求項5】
ムーニー粘度ML1+4(100℃)が5~100である請求項1、2、3または4記載のアクリルゴム。
【請求項6】
請求項1、2、3または4記載のアクリルゴムおよび反応性ハロゲン基と反応する加硫剤を含有してなる架橋性アクリルゴム組成物。
【請求項7】
反応性ハロゲン基と反応する加硫剤がイオウ、イオウ供与体またはトリアジン化合物である請求項6記載の架橋性アクリルゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴムおよびその架橋性組成物に関する。さらに詳しくは、耐寒性を向上させつつ、耐油性の低下を抑制し得るアクリルゴムおよびその架橋性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の超耐寒グレードのアクリルゴムは、耐寒性(TR10値)が-40℃程度である。アクリルゴムをオイルシール成形材料として使用した場合、極寒冷地での使用は、耐寒性の観点からみて、それの使用が困難である。近年、極寒冷地での自動車の使用需要が高まっており、極寒冷地でも使用可能なオイルシール成形材料としてのアクリルゴムが求められている。
【0003】
アクリルゴムの耐寒性は、アルキル基側の鎖長が従来のものよりも長いアクリル酸アルキルエステルモノマーを導入することで向上させることができると考えられる。しかしながら、アルキル鎖を単純に延長した場合には、オイルシール成形材料として重要な特性である耐油膨潤性が大きくなりすぎて、実用的な成形材料とはなり得ない。
【0004】
特許文献1には、シリカ配合アクリルゴム組成物であって、その耐熱性を低下させることなく、押出性およびロール加工性を改善せしめたものが記載されている。そのアクリルゴムとしては、アルキル(メタ)アクリレート-アルコキシアルキル(メタ)アクリレート共重合体等が用いられ、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、その鎖長が長い程耐寒性の点では有利になるが、耐油性の点では不利となり、鎖長が短くなるとこれらの性質は逆になること、アルコキシアルキルアクリレートは、側鎖にエーテル結合を有するので、耐寒性および耐油性にすぐれていることが記載されている。耐寒性および耐油性のバランスの点からは、アルキルアクリレートとしてはエチルアクリレートおよびn-ブチルアクリレートが好ましく、アルコキシアルキルアクリレートとしては2-メトキシエチルアクリレートおよび2-エトキシエチルアクリレートが好ましいと述べられている。
【0005】
また、特許文献2には、過酸化物架橋性アクリルゴム組成物であって、加硫速度が速く、しかも常態物性や耐圧縮永久歪特性にすぐれた加硫物を与え得るアクリルゴム組成物が記載されており、そのアクリルゴムとして、アルキル(メタ)アクリレートおよび側鎖を形成するエーテル基を有する(メタ)アクリレートの共重合体ゴムが用いられている。
【0006】
その側鎖エーテル基を有する(メタ)アクリレートとして、例えば(メタ)アクリル酸のメトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、ブトキシエチル、エトキシプロピル、フェノキシエチル等のアルコキシアルキルエステル、アリールオキシアルキルエステルの他、(メタ)アクリル酸の
メトキシトリエチレングリコールエステル(実施例2)
MeO(CH2CH2O)3COCH=CH2
フェノキシジエチレングリコールエステル
PhO(CH2CH2O)2COCH=CH2
フェノキシポリエチレングリコール
PhO(CH2CH2O)nCOCH=CH2
が挙げられている。
【0007】
しかしながら、メトキシトリエチレングリコールエステル(メトキシエトキシエトキシエチルアクリレート〔MTGA〕)を用いた場合、後記比較例4~5の結果に示されるように、各実施例と比較して、引張強さおよび破断時伸びが悪化しており、またムーニー粘度ML1+4(100℃)の値が高く、成形性が良くないといった問題点がみられる。
【0008】
さらに、特許文献3には、n-ブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレートおよびモノクロロ酢酸ビニルの3元共重合アクリルゴムと該共重合ゴムにさらにCH2=CHCOOC2H4O(COC5H10O)mCOCH3(m:平均2.11)を共重合反応させた4元共重合アクリルゴムとのブレンド体を加硫すると、TR-10値が-44℃と耐寒性にすぐれた加硫物を与えるが、3元共重合アクリルゴム単体の加硫物のTR-10値は-40℃にすぎないことが記載されている。また、TR-10値が-44℃を示すブレンド物について圧縮永久歪値を測定すると、後記参考例に示される如く59%という値が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-40922号公報
【文献】特開2007-186631号公報
【文献】特開平6-145257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、TR-10値によって示される耐寒性を向上させつつ、耐油性の低下を抑制し得るアクリルゴムおよびその架橋性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる本発明の目的は、共重合体中に1~4重量%の反応性ハロゲン基含有ビニル単量体を架橋性共単量体として共重合させた共重合体であって、架橋性共単量体以外の他の共単量体100重量%中、n-ブチルアクリレートを45~65重量%、2-メトキシエチルアクリレートを10~35重量%およびエトキシエトキシエチルアクリレートを8~30重量%の割合で共重合させてなるアクリルゴムによって達成される。
【0012】
このエトキシエトキシエチルアクリレート共重合アクリルゴムは、そこにその架橋性基に対応した加硫剤を配合せしめることにより、架橋性組成物を形成させる。
【発明の効果】
【0013】
従来公知のアルキルアクリレート、アルコキシアルキルアクリレートおよび架橋性基(反応性ハロゲン基)含有ビニル単量体を含有するアクリル共重合体中に、特許文献2に例示されていないエトキシエトキシエチルアクリレートを共重合させたアクリルゴムは、側鎖長の大きいエトキシエトキシエチルアクリレートを導入することにより、低温域でのアクリル共重合体分子鎖同士の凝集が阻害され、Tgが低下して耐寒性を向上させる。
【0014】
また、側鎖長が大きいオクチルアクリレート等のアルキルアクリレートに比べ、エトキシエトキシエチルアクリレートは極性が大きいため、耐寒性を向上させつつ、耐油性の低下を抑制することができる。
【0015】
このアルリルゴムは、ゴム中に導入された架橋性基である反応性ハロゲン基に対応した加硫剤により架橋することができ、かかる架橋性組成物から得られる加硫物は、TR-10の値を低下させて耐寒性を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るアクリルゴムは、n-ブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレートおよび反応性ハロゲン基含有ビニル単量体を含有してなるアクリル共重合体中に、さらにエトキシエトキシエチルアクリレートを共重合させてなる。
【0017】
エトキシエトキシエチルアクリレート C2H5O(CH2CH2O)CH2CH2OCOCH=CH2は、得られるアクリル共重合体の架橋性共単量体を除く残りの他の共単量体100重量%中、約8~30重量%、好ましくは約10~27重量%を占めるような割合で用いられる。これの共重合割合がこれよりも少ないと、所望の耐寒性の向上効果が得られず、一方これよりも多い割合で用いられると、耐油性、引張強さ、耐圧縮永久歪特性が悪化するようになる。
【0018】
アクリル共重合体の主成分となるn-ブチルアクリレートは、共重合体の架橋性共単量体を除く残りの他の共単量体100重量%中、約45~65重量%、好ましくは約55~62重量%の割合で用いられる。
【0019】
また、2-メトキシエチルアクリレートは、共重合体の架橋性共単量体を除く残りの他の共単量体100重量%中、約10~35重量%、好ましくは約12~33重量%の割合で用いられる。2-メトキシエチルアクリレートがこれより多い割合で用いられると所望の耐寒性の向上効果が望めず、一方これより少ない割合で用いられると破断時伸びが悪化するようになる。また、2-メトキシエチルアクリレートの代りに高級アルキルアクリレートが用いられると、後記比較例6~7に示されるように耐油性が悪化することとなる。
【0020】
アクリル共重合体中には、その特性を阻害しない範囲内(一般に約2重量%以下)で、他のビニル単量体またはオレフィン単量体、例えばスチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、酢酸ビニル、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート等を共重合させることもできる。
【0021】
これらを主成分とするアクリル共重合体中に共重合される反応性ハロゲン基含有ビニル単量体は、共重合体中約1~4重量%、好ましくは約1~1.5重量%を占めるような割合で用いられる。反応性ハロゲン基含有ビニル単量体がこれより少ない割合で用いられると、引張強さ、耐圧縮永久歪特性が悪化するようになる。一方、これよりも多い割合で用いられると、破断時伸びが低下するようになる。
【0022】
反応性ハロゲン基含有ビニル単量体としては、例えばクロロエチルビニルエーテル、クロロエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロロアセテート、アリルクロロアセテート、クロロメチルスチレン等が挙げられる。
【0023】
共重合反応は、通常用いられるラジカル開始剤存在下での乳化重合、けん濁重合、溶液重合、塊状重合など任意の重合方法で行われる。ラジカル開始剤としては、第3ブチルハイドロパーオキサイドとナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等を併用したレドックス系、好ましくは第3ブチルハイドロパーオキサイドとナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとを併用したレドックス系を用いることができる。好ましい重合方法である乳化重合の場合には、各種の界面活性剤の存在下で重合反応が行われる。重合反応に際しては、連鎖移動剤を用いることができる。
【0024】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等またはこれらに相当するカリウム塩、カルシウム塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールナトリウム等、好ましくはラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが単独であるいは併用して用いられる。
【0025】
連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー、1,4-テルピノレン等、好ましくはn-ドデシルメルカプタンが用いられ、その添加量を大きくすると、得られる共重合体の分子量は小さくなり、破断時強度やムーニー粘度ML1+4(100℃)が小さくなる。連鎖移動剤は、仕込み単量体合計量100重量部当り約0.001~0.05重量部、好ましくは約0.0035~0.01重量部程度用いられる。
【0026】
重合反応は、回分方式あるいは連続的または断続的な添加方式など任意の方式により、約-10~100℃、好ましくは約2~80℃の温度で行われる。反応終了後の共重合体の分離は、重合方式によりそれぞれ異なった方法で行われるが、例えば乳化重合法やけん濁重合法の場合には、反応混合液に酸や多価金属塩などの凝固剤の添加により行われ、分離された共重合体は洗浄および乾燥工程に付される。
【0027】
得られるアクリル共重合体ゴムは、5以上、好ましくは5~100のムーニー粘度ML1+4(100℃)のものとして取得される。これより小さいムーニー粘度のものでは、ゴムとしての引張強さの点で劣り、一方あまり高いムーニー粘度のものは加工性に劣るようになる。
【0028】
得られた反応性ハロゲン基を架橋性基とする架橋性基含有アクリル共重合体は、反応性ハロゲン基と反応する加硫剤であるイオウ(供与体)、トリアジン化合物等を加硫剤として用いて加硫成形される。イオウとしては、粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、不溶性イオウ、高分散性イオウ等が使用される。そして、良好な引張強さ等の常態物性が求められる場合にはイオウ(供与体)が、また良好な耐圧縮永久歪特性が求められる場合にはトリアジン化合物が好んで用いられる。トリアジン化合物としては、例えば2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン等が、アクリル共重合体100重量部当り約0.1~10重量部、好ましくは約0.2~2重量部の割合で用いられる。イオウ(供与体)も、同じ割合で用いられる。
【0029】
これらの加硫剤は、加硫促進剤と併用されることが好ましい。加硫促進剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の金属石けんあるいは酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛等の金属酸化物などが用いられる。
【0030】
トリアジン化合物加硫剤の場合には、加硫促進剤としてジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-へキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-オクチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-デシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ドデシルジチオカルバミン酸亜鉛、メチルベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、メチルシクロヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸カドミウム、ジエチルジチオカルバミン酸カドミウム、ジメチルジチオカルバミン酸ビスマス、ジエチルジチオカルバミン酸ビスマス、ジメチルジチオカルバミン酸鉄、ジエチルジチオカルバミン酸鉄、ジメチルジチオカルバミン酸テルル、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸セレン、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸誘導体金属塩が用いられる。
【0031】
または、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラ-n-ブチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラ-n-ブチルチウラムジスルフィド、テトラ-n-へキシルチウラムジスルフィド、テトラ-n-オクチルチウラムジスルフィド、テトラ-n-デシルチウラムジスルフィド、テトラ-n-ドデシルチウラムジスルフィド、N,N′-ジメチル-N,N′-ジベンジルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラシクロヘキシルチウラムジスルフィド、N,N′-ジメチル-N,N′-ジシクロヘキシルチウラムジスルフィド、ジ(ペンタメチレン)チウラムジスルフィド等のチウラムスルフィド化合物等もトリアジン化合物加硫剤用加硫促進剤として用いられる。
【0032】
アクリル共重合体は、密閉式混練機を用いて補強剤、充填剤、安定剤、加工助剤等を添加した後、オープンロールを用いて加硫剤および加硫促進剤を添加して架橋性組成物とした後、約150~200℃、約1~30分間のプレス加硫を行った後、必要に応じて約150~180℃、約1~16時間のオーブン加硫(二次加硫)が行われる。なお、ホース状体の成形およびそれの加硫は、射出成形または押出成形によって行われる。
【実施例
【0033】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0034】
実施例1~6、参考例
(1) 温度計、攪拌機、窒素ガス導入管およびジムロート冷却管を備えたセパラブルフラスコ内に、
水 187重量部
ラウリル硫酸ナトリウム 1.6 〃
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 1.6 〃
n-ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤) 0.0035 〃
仕込み単量体混合物 100 〃
を仕込み、窒素ガス置換を行い系内の酸素を十分に除去した後、
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.011重量部
(和光純薬工業製品ロンガリット)
第3ブチルハイドロパーオキサイド 0.0063 〃
(日本油脂製品パーブチルH)
からなるレドックス系開始剤を加えて、室温条件下で重合反応を開始させ、重合転化率が90%以上になるまで反応を継続した。形成された水性ラテックスを、10重量%硫酸ナトリウム水溶液で凝析させ、水洗、乾燥して、アクリルゴムを得た。
【0035】
用いられた仕込み単量体混合物の使用量(重量部)および生成したアクリルゴムの生成量(重量部)は、次の表1に示される。

表1
実施例
仕込み単量体混合物
n-BA 55.0 55.0 55.0 54.7 54.4 60.0
2-MEA 22.5 32.5 17.5 22.4 22.3 12.5
EEEA 19.0 9.0 24.0 18.9 18.8 24.0
St 1 1 1 1 1 1
Cl-VAc 2.5 2.5 2.5 3.0 3.5 2.5
アクリルゴム生成量 94.8 94.3 94.8 94.1 93.7 94.8

注)n-BA:n-ブチルアクリレート
2-MEA:2-メトキシエチルアクリレート
EEEA:エトキシエトキシエチルアクリレート
St:スチレン
Cl-VAc:モノクロロ酢酸ビニル
【0036】
得られたアクリルゴムの共重合割合、ムーニー粘度ML1+4(100℃)およびTgの値は、表2に示される。n-ブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレートおよびエトキシエトキシエチルアクリレートの各単量体成分の合計が100重量%または100モル%として示されている。
注)全有機ハロゲン測定装置(三菱化学アナリテック製TOX-2100型)
を用いて、アクリルゴム中の有機塩素の含有量を測定し、得ら
れた塩素含有量からCl-VAcの共重合割合を算出した
【0037】
(2) 各実施例で得られたアクリルゴムを用い、
アクリルゴム 100重量部
FEFカーボンブラック 60 〃
ステアリン酸 1 〃
老化防止剤(大内新興化学製品ノクラックCD; 2 〃
4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン)
をインターナルミキサで混練し、その後
加硫促進剤(花王製品NSソープ) 3 〃
加硫促進剤(日油製品ノンサール SK-1) 0.25 〃
加硫剤(硫黄) 0.3 〃
を加え、オープンロールで混練し、架橋性アクリルゴム組成物を調製した。この組成物を、180℃で8分間プレス加硫した後、175℃で4時間オーブン加硫(二次加硫)して、アクリルゴム成形品を得た。
【0038】
このアクリルゴム成形品について、次の各項目の測定を行った。
常態物性:ISO 7619-1:2010に対応するJIS K-6253(2010)、
ISO 37:2005に対応するJIS K-6251(2010)準拠
耐油膨潤性試験:ISO 1817:1999に対応するJIS K-6258(2010)準拠
IRM 903油使用、150℃、70時間浸漬後の体積変化率
ΔV100を測定
TR試験:ISO 2921:1997に対応するJIS K-6261(2006)準拠
TR-10値を測定
圧縮永久歪:ISO 815-1:2008、ISO 815-2:2008に対応する
JIS K-6262(2013)準拠、150℃、70時間での測定値
【0039】
以上の測定結果は、次の表3に示される。なお、各物性値の許容目安は、引張強さ11.5MPa以上、破断時伸び130%以上、耐油膨潤性(ΔV100)38%以下、TR-10 -42℃以下、圧縮永久歪35%以下である。なお、参考例は、特許文献3の実施例4のブレンド物(TR-10:-44℃)についての測定値(TR-10値は、JIS K-6301準拠)である。
【0040】
比較例1~9
(1)実施例において、仕込み単量体混合物の使用量(重量部)が、それぞれ次のように変更された。
注)HA:n-ヘキシルアクリレート
OA:n-オクチルアクリレート
MTGA:メトキシエトキシエトキシエチルアクリレート
【0041】
得られたアクリルゴムの共重合割合、ムーニー粘度ML1+4(100℃)およびTgの値は、次の表5に示される。比較例4~5では、MTGAの1H-NMRのピークが2-MEAのそれと重なってしまい、また比較例6では、HAの1H-NMRのピークがn-BAのそれと重なってしまい、判別が不可能であるため、共重合割合が不明である。
【0042】
(2) 比較例1~9で得られたアクリルゴムを用い、実施例1~6と同様にして、加硫および各項目の測定を行った。測定結果は、次の表6に示される。
【0043】
以上の結果より、次のことがいえる。
(1) エトキシエトキシエチルアクリレート〔EEEA〕を8~30重量%共重合させることで、従来のアクリルゴムの耐寒性(TR10)を改善することができる(各実施例)。
(2) EEEAが多い場合、耐寒性は良くなるものの、常態値および圧縮永久歪が悪化し、耐油膨潤も大きくなってしまう(比較例1~2)。
(3) EEEAが少なすぎる場合には、耐寒性の改善効果が十分に発揮されない(比較例3)。
(4) 長鎖アルコキシアクリレートのメトキシトリエチレングリコールアクリレート〔MTGA〕を使用すると、耐寒性は改善するものの、常態物性(引張強さおよび伸び)の悪化がみられる(比較例4~5)。
(5) アルコキシアクリレートではなく、n-BA対比で長鎖のアルキルアクリレートを使用すると、耐寒性の改善はみられるが、耐油膨潤が著しく大きくなってしまい実用的ではない(比較例6~7)。
(6) 架橋性モノマーが少なすぎると、架橋密度の低下により圧縮永久歪が悪化してしまう(比較例9)。