(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】有機ケイ素抗菌溶液、有機ケイ素抗菌剤、抗菌ガラス、そのための製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
A01N 55/10 20060101AFI20220107BHJP
C03C 17/30 20060101ALI20220107BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220107BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220107BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A01N55/10 100
C03C17/30 A
A01P1/00
A01P3/00
A01N55/10 400
B32B17/10
(21)【出願番号】P 2020521422
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 CN2018100844
(87)【国際公開番号】W WO2019105068
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】201711234894.0
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520128233
【氏名又は名称】深▲セン▼南玻應用技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN CSG APPLIED TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.1 6th Industrial Road, Shekou, Nanshan District Shenzhen, Guangdong(CN)
(73)【特許権者】
【識別番号】520128244
【氏名又は名称】中國南玻集團股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CSG HOLDING CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1 6th Industrial Road, Shekou, Nanshan District Shenzhen, Guangdong(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】梁 海潮
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲チィ▼
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-049173(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104327721(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 55/10
C03C 17/30
A01P 1/00
A01P 3/00
A01N 25/02
B32B 17/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン四級アンモニウム塩30~65重量%と、
オルトケイ酸テトラエチル10~40重量%と、
二重結合を有するシリコーン10~40重量%と、
エポキシ基を有するシリコーン5~20重量%と、
メチルトリメトキシシラン5~20重量%と、
有機スズ触媒0.1~3重量%と、
を含み、
前記シリコーン四級アンモニウム塩は、メチルジエトキシシランアンモニウムクロリド、N,N-ジメチル-N-オクタデシルアミノプロピルトリメトキシシランアンモニウムクロリド、(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルドデシルアンモニウムクロリドからなる群から選択される少なくとも1種であ
り、
前記エポキシ基を有するシリコーンは、γ-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルメチルジエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である、シリコーン殺菌溶液。
【請求項2】
前記二重結合を有するシリコーンは、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のシリコーン殺菌溶液。
【請求項3】
前記有機スズ触媒は、二酢酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸第一スズ、ジブチルビス(ドデシルチオ)スズからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のシリコーン殺菌溶液。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のシリコーン殺菌溶液を、
溶媒を添加することなく40~80℃の温度で1~8時間反応させる
工程を含む、シリコーン殺菌剤
の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のシリコーン殺菌溶液を、溶媒を添加することなく40~80℃の温度で1~8時間反応させてシリコーン殺菌剤を製造する工程と、
前記シリコーン殺菌剤をガラス表面にコーティングする工程と、
前記ガラス表面にコーティングされた前記シリコーン殺菌剤の焼付処理を行って前記シリコーン殺菌剤を硬化させ、殺菌ガラスを得る工程と、を含む、殺菌ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記焼付処理の温度が260~300℃の範囲であり、前記焼付処理の
時間が10~15分間である、
請求項5に記載の殺菌ガラスの製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のシリコーン殺菌溶液を、溶媒を添加することなく40~80℃の温度で1~8時間反応させてシリコーン殺菌剤を製造する工程と、
前記シリコーン殺菌剤をガラス表面にコーティングする工程と、
前記ガラス表面にコーティングされた前記シリコーン殺菌剤の焼付処理を行って前記シリコーン殺菌剤を硬化させ、殺菌ガラスを得る工程と、
前記殺菌ガラスを用いて、中空ガラス、低放射ガラスまたは積層ガラス
を製造する工程と、
を含む、中空ガラス、低放射ガラスまたは積層ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリコーン殺菌溶液、シリコーン殺菌剤、殺菌ガラス、その製造方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌技術は、有害な細菌が人体に侵入するのを阻む上で常に効果的な手段のひとつであった。広い意味での抗菌には、滅菌、病原菌の除去、防腐、消毒、細菌を阻害する他の関連する作用が含まれる。微生物学と材料科学とを組み合わせた新たなタイプの素材のひとつに、抗菌ガラスがある。このガラスは、環境や人体に対して有害ではないため、「グリーンガラス」と呼ばれている。抗菌ガラスは、Candida albicansなどのカビや、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Salmonella、Bacillus subtilisなどの細菌微生物に対して高い殺傷効果を有し、薬剤耐性を生じない。
【0003】
「抗菌ガラス」は、新たに研究開発された一種の機能性ガラスである。これは、ガラス本来の照明機能、防風機能、雨から守る機能を維持することを基本としつつ、細菌の発育を抑制する機能と殺菌の機能を新たに付加したものである。こうした機能性の向上は、我々の生活環境を改善して良くするだけでなく、医療、ヘルスケア、家電製品などの産業において包括的な抗菌プロジェクトの実施を可能にする。抗菌ガラスは、医療業界、製薬業界、食品業界、家電製品業界、学校、交通機関、その他の場所など、ガラスを使用できる場所であればどこでも使用可能である。
【0004】
抗菌ガラスに関しては、国内外の特許や製品がすでに存在している。たとえば、2014年のコンシューマーエレクトロニクスショー(CES)において、Corning社が新たな「抗菌ゴリラガラス」を発表した。これは、ガラスが溶融状態にあるときにガラスの表面に少量の銀イオンを取り込んで得られるガラス製品である。固体のガラスから徐々に銀イオンが溶出することで、ガラスが抗菌作用を持つ。ただし、銀イオンは空気によって酸化して変色しやすいため、ガラスの変色を抑えるために、取り込まれる銀イオンの量は極めて少ない。加えて、そのような銀抗菌ガラスの抗菌作用は、銀イオンの溶出によるものである。したがって、いずれは銀イオンが溶出してしまい、最終的に抗菌作用を失うことになる。これが、「抗菌ゴリラガラス」が市場に受け入れられなかった理由である。
【0005】
多くの既存の抗菌ガラスの特許では、銀抗菌ガラスおよびチタン抗菌ガラスが主に用いられている。このうち、銀抗菌ガラスでは、高温での焼成によってガラスの表面層に銀イオンを埋め込むのにイオン化した銀を使用し、その上で、空気や水との接触によって銀イオンを徐々に放出させる。これが、細菌の増殖を抑える働きをする。チタン抗菌ガラスは、ガラス表面に高温で光触媒抗菌剤TiO2コーティングを導入することによって形成される。TiO2は一種の半導体であるが、紫外光の照射下にある表面で容易に励起させて高い酸化能のあるヒドロキシルラジカルを発生させることができる。これは、細菌を構成する有機物や細菌が生存する上で依存する有機的な栄養分を、細菌のタンパク質が変化するような形で短時間かつ効果的に分解し、これによって抗菌作用が達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、銀抗菌ガラスおよびチタン抗菌ガラスが開発されているが、依然として解決すべき多くの問題が存在する。たとえば、銀抗菌ガラスに関しては、(1)銀抗菌ガラスは通常、一定量の銀イオン(Ag+)を溶融状態のガラス表面に埋め込むことによって得られる。埋め込まれたAg+は空気によって容易に酸化するため、ガラスが黄色や場合によっては褐色を帯びた黒に変化し、これがガラスの見た目に甚だしく影響する。ガラスが変色しないように保つためには、取り入れるAg+の量を極めて少なくしなければならない。しかしながら、銀イオンの量があまりに少なすぎると、細菌を抑制することができるだけで、実際に殺すことはできない。このため、銀抗菌ガラスは、「静菌ガラス」と呼ぶことができるにすぎない。(2)銀を含む抗菌ガラスには、最初の段階では理想的な殺菌作用があるが、後になってこの抗菌作用が劇的に落ちる場合があり、その抗菌効果が発揮される期間はそれほど長くない。また、TiO2抗菌ガラスに関しては、光触媒半導体を励起させてガラスの表面にヒドロキシルラジカルを生成することで、殺菌作用を達成するのに、紫外光の照射に頼る必要がある。しかしながら、実際に応用される条件下では常に紫外光の照射を利用できるわけではない上、紫外光は人体に有害でもある。したがって、TiO2抗菌ガラスには、実際に応用するにはいくつかの制約がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、汎用性が高く、ガラスの透明度に対する影響が少ない、シリコーン殺菌溶液、シリコーン殺菌剤、殺菌ガラス、その製造方法および使用を提供することが必要である。
【0008】
シリコーン殺菌溶液は、シリコーン四級アンモニウム塩30~65重量%と、オルトケイ酸テトラエチル10~40重量%と、二重結合を有するシリコーン10~40重量%と、エポキシ基を有するシリコーン5~20重量%と、メチルトリメトキシシラン5~20重量%と、有機スズ触媒0.1~3重量%と、を含む。シリコーン四級アンモニウム塩は、メチルジエトキシシランアンモニウムクロリド、N,N-ジメチル-N-オクタデシルアミノプロピルトリメトキシシランアンモニウムクロリド、(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルドデシルアンモニウムクロリドからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0009】
上述したシリコーン殺菌溶液を低温で反応させることによって、シリコーン殺菌剤が得られる。このシリコーン殺菌剤をガラス表面にコーティングすることができ、その後これを焼付によって硬化させて殺菌膜を形成する。これは、紫外光を用いた照射なしで効果的に殺菌でき、汎用性が高い。形成された殺菌膜は、ガラスの透明度への影響が少なく(透過性の低下は3%以下)、ガラスの実用性や見た目への影響は皆無で、ガラス表面の殺菌膜は、より良い耐摩耗性を持つ。シリコーン殺菌溶液の各成分の選択および比率によって、かつ、高温触媒下、殺菌剤は、ガラス表面の活性ヒドロキシル官能基と反応して化学的共有結合を形成することができ、形成された殺菌膜とガラスとが強く密着することになる。これは、従来の四級アンモニウム塩殺菌剤と布帛との密着性が弱いという問題ならびに、従来の四級アンモニウム塩殺菌剤が容易に溶出するためガラスに用いるには不適切であるという問題に対処している。実験で求めたところによれば、作製された殺菌ガラスは、長時間にわたる殺菌作用を維持することができる。
【0010】
一実施態様において、二重結合を有するシリコーンは、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0011】
一実施態様において、エポキシ基を有するシリコーンは、γ-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルメチルジエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0012】
一実施態様において、有機スズ触媒は、二酢酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸第一スズ、ジブチルビス(ドデシルチオ)スズからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0013】
シリコーン殺菌剤が、さらに提供される。このシリコーン殺菌剤は、上述したシリコーン殺菌溶液を40~80℃の温度で1~8時間反応させることによって得られる。
【0014】
殺菌ガラスの製造方法は、上述したシリコーン殺菌剤をガラス表面にコーティングする工程と、ガラス表面にコーティングされたシリコーン殺菌剤の焼付処理を行ってシリコーン殺菌剤を硬化させ、殺菌ガラスを得る工程と、を含む。
【0015】
一実施態様において、焼付処理の温度が260~300℃の範囲であり、焼付処理の温度が10~15分間である。
【0016】
上述した殺菌ガラスの製造方法によって得られる殺菌ガラスが、さらに提供される。
【0017】
殺菌ガラスは、ガラス基板と、ガラス基板の表面に形成された殺菌膜とを含む。殺菌膜は、上述したシリコーン殺菌溶液から形成される。
【0018】
中空ガラス、低放射ガラスまたは積層ガラスにおける、上述した殺菌ガラスの使用。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態による殺菌ガラスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、シリコーン殺菌溶液、シリコーン殺菌剤、殺菌ガラス、その製造方法および使用について、具体的な実施形態を参照してさらに詳細に説明する。
【0021】
一実施形態によるシリコーン殺菌溶液は、次のものを含む。
【0022】
シリコーン四級アンモニウム塩30~65重量%。
【0023】
オルトケイ酸テトラエチル10~40重量%。
【0024】
二重結合を有するシリコーン10~40重量%。
【0025】
エポキシ基を有するシリコーン5~20重量%。
【0026】
メチルトリメトキシシラン5~20重量%。
【0027】
有機スズ触媒0.1~3重量%。
【0028】
シリコーン四級アンモニウム塩は、メチルジエトキシシランアンモニウムクロリド、N,N-ジメチル-N-オクタデシルアミノプロピルトリメトキシシランアンモニウムクロリド、(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルドデシルアンモニウムクロリドからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0029】
一実施形態において、二重結合を有するシリコーンは、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0030】
一実施形態において、エポキシ基を有するシリコーンは、γ-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルメチルジエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0031】
一実施形態において、有機スズ触媒は、二酢酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸第一スズ、ジブチルビス(ドデシルチオ)スズからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0032】
一実施形態において、シリコーン殺菌溶液は、次のものを含む。
【0033】
シリコーン四級アンモニウム塩50~55重量%。
【0034】
オルトケイ酸テトラエチル10~15重量%。
【0035】
二重結合を有するシリコーン15~20重量%。
【0036】
エポキシ基を有するシリコーン6~10重量%。
【0037】
メチルトリメトキシシラン10~15重量%。
【0038】
有機スズ触媒0.1~0.5重量%。
【0039】
上述したシリコーン殺菌溶液を低温で反応させることによって、シリコーン殺菌剤が得られる。このシリコーン殺菌剤をガラス表面にコーティングすることができ、その後これを焼付によって硬化させて殺菌膜を形成する。これは、紫外光を用いた照射なしで効果的に殺菌でき、汎用性が高い。形成された殺菌膜は、ガラスの透明度への影響が少なく、ガラス表面の殺菌膜は、より良い耐摩耗性を持つ。シリコーン殺菌溶液の各成分の選択および比率によって、かつ、高温触媒下、殺菌剤は、ガラス表面の活性ヒドロキシル官能基と反応して化学的共有結合を形成することができ、形成された殺菌膜とガラスとが強く密着することになる。これは、従来の四級アンモニウム塩殺菌剤と布帛との密着性が弱いという問題ならびに、従来の四級アンモニウム塩殺菌剤が容易に溶出するという問題に対処している。実験で求めたところによれば、作製された殺菌ガラスは、長時間にわたる殺菌作用を維持することができる。上述したシリコーン殺菌溶液は、効率的な殺菌機能を有し、広域スペクトルが良好で、調製方法が単純であり、安全性があり、無毒で殺菌作用に永続性がある。また、上述したシリコーン殺菌溶液では、高コストの金属イオン抗菌成分を用いる必要がなく、殺菌作用を発揮するのに紫外光の励起に頼ることもない。ガラス表面へのコーティングによって形成される殺菌ガラスは、安全性が高く、耐熱性が良好である(最大300℃を超える)。
【0040】
一実施形態によるシリコーン殺菌剤は、上述したシリコーン殺菌溶液を40~80℃の温度で1~8時間反応させることによって得られる。
【0041】
上述したシリコーン殺菌溶液を40~80℃の温度で1~8時間反応させて重合を行い、これによってプレポリマーを得る。これを、ガラス表面にコーティングして殺菌剤層を形成することができる。本実施形態では、シリコーン殺菌溶液を、溶媒を添加することなく、40~80℃の温度で直接反応させる。
【0042】
一実施形態において、上述したシリコーン殺菌溶液を反応容器にゆっくり加え、攪拌下で徐々に加熱し、40~80℃の反応温度で1~8時間維持する。そして、冷却後、シリコーン殺菌剤が得られる。加熱速度は、55~60℃/分であると好ましい。
【0043】
上述したシリコーン殺菌剤をガラス表面にコーティングし、均一な殺菌剤層を形成することができる。これは、オレンジピール、波状パターン、斑点などの噴霧の問題を起こしにくく、噴霧に適している。したがって、最終的には虹色斑のない製品を得ることができ、ガラスの光透過率への影響は少ない。
【0044】
一実施形態による殺菌ガラスの製造方法は、以下の工程を含む。
【0045】
工程S110では、上述したシリコーン殺菌溶液を40~80℃の温度で1~8時間反応させ、シリコーン殺菌剤を得る。
【0046】
一実施形態において、上述したシリコーン殺菌溶液を反応容器にゆっくり加え、攪拌下で徐々に加熱し、40~80℃の反応温度で1~8時間維持する。そして、冷却後、シリコーン殺菌剤が得られる。加熱速度は、55~60℃/分であると好ましい。
【0047】
上述したシリコーン殺菌溶液を、重合のために40~80℃の温度で1~8時間反応させることで、プレポリマーを得る。これは、ガラス表面にコーティングすることが可能である。
【0048】
工程S110は省略可能である点に注意されたい。この場合、シリコーン殺菌剤を直接用いることができる。
【0049】
工程S120では、シリコーン殺菌剤をガラス表面にコーティングする。
【0050】
一実施形態において、ガラスは、ソーダ石灰ガラスまたは高アルミナガラスである。
【0051】
一実施形態において、ガラスは、非強化ガラス、強化ガラスまたは半強化ガラスである。
【0052】
一実施形態において、ガラスは、ガラス板である。
【0053】
一実施形態において、コーティング方法は、スプレーコーティングまたはローラーコーティングである。もちろん、別の実施形態では、ガラス表面にコーティングを形成できるかぎり、ナイフコーティングなどの一般に用いられている他の方法を使用することもできる。
【0054】
一実施形態において、ガラス表面にシリコーン殺菌剤をコーティングし、殺菌剤層を形成する。殺菌剤層は、厚さが0.1~100μmであり、3~7μmであると好ましい。また、コーティングが殺菌剤層を形成するためのシリコーン殺菌剤である場合、オレンジピール、波状パターン、斑点、その他の噴霧の問題は起こり得ない。
【0055】
工程S130では、ガラス表面にコーティングされたシリコーン殺菌剤に焼付処理を行ってシリコーン殺菌剤を硬化させ、殺菌ガラスを得る。
【0056】
一実施形態において、焼付処理の温度は260~300℃の範囲であり、焼付処理の温度は10~15分間である。もちろん、焼付処理の温度および時間は、シリコーン殺菌剤を反応させて硬化させることができるかぎり、上述した時間および温度に限定されない。
【0057】
この工程では、高温触媒下で、シリコーン殺菌剤は、有機ケイ素ポリマーがガラス表面にしっかりと密着するようにガラス表面の活性ヒドロキシル官能基と反応して化学的共有結合を形成することができ、これによって、殺菌ガラスの長時間作用する殺菌特性が保証される。
【0058】
上述した殺菌ガラスの製造方法は、プロセスが単純で、作製された殺菌ガラスの殺菌膜はガラスに対する密着性が高い。実験で求めたところによれば、作製された殺菌ガラスは、長時間作用する殺菌作用を維持することができ、光をよく透過する。
【0059】
一実施形態による殺菌ガラスは、上述した殺菌ガラスの製造方法によって得られる。
【0060】
上述した殺菌ガラスは、光をよりよく透過し、汎用性が高い。形成された殺菌膜は、ガラスに対する密着性が高く、殺菌ガラスは長時間作用する殺菌活性を有する。
【0061】
図1を参照すると、別の実施形態による殺菌ガラス200は、ガラス基板210および殺菌膜230を含む。
【0062】
一実施形態において、ガラス基板210は、ソーダ石灰ガラスまたは高アルミナガラスである。
【0063】
一実施形態において、ガラス基板210は、非強化ガラス、強化ガラスまたは半強化ガラスである。
【0064】
一実施形態において、ガラス基板210は、ガラス板である。ガラス基板210は、厚さが4~6mmであると好ましい。もちろん、ガラス基板210は板状に限定されず、ガラス基板210の表面に殺菌膜230を形成できるかぎり、湾曲したガラスなどの他の形状であってもよい点に注意されたい。
【0065】
図示の実施形態では、殺菌膜230は、ガラス基板210の1つの面に形成される。もちろん、別の実施形態では、殺菌膜230をガラス基板210の他の面に形成することもできる点に注意されたい。
【0066】
殺菌膜230は、上述したシリコーン殺菌溶液から形成される。上述したシリコーン殺菌溶液を調製してシリコーン殺菌剤を形成し、その後、シリコーン殺菌剤を硬化対象となるガラス基板210の表面にコーティングする。
【0067】
一実施形態において、殺菌膜230は、厚さが2~5μmである。
【0068】
上述した殺菌ガラスは、光をよりよく透過し、汎用性が高い。この殺菌膜は、ガラスに対する密着性が高く、よりよい耐摩耗性を持つ。細菌が殺菌膜230の表面に吸着されると、殺菌膜230は細菌の細胞壁に侵入することができ、細菌の細胞膜を破壊し、最終的には細菌を殺す。この殺菌膜は、長時間作用する殺菌活性を有する。
【0069】
上述した2つの殺菌ガラスは、中空ガラス、低放射ガラスまたは積層ガラスなど、様々なタイプのガラスの用途として用いることが可能である。
【0070】
以下、具体的な実施例を参照し、詳細に説明する。
【0071】
以下の実施例で用いる1#のガラスは、強化ソーダ石灰ガラス板であり、厚さは6mmである。2#のガラスは、強化高アルミナガラス板であり、厚さは4mmである。3#のガラスは、非強化ソーダ石灰ガラス板であり、厚さは6mmである。4#のガラスは、非強化高アルミニウムガラス板であり、厚さは4mmである。
【実施例】
【0072】
実施例1
【0073】
実施例1によるシリコーン殺菌溶液は、以下のものを含んでいた。
【0074】
メチルジエトキシシランアンモニウムクロリド30%。
【0075】
オルトケイ酸テトラエチル10%。
【0076】
ビニルトリメトキシシラン17%
【0077】
γ-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン20%。
【0078】
メチルトリメトキシシラン20%。
【0079】
二酢酸ジブチルスズ3%。
【0080】
上述したシリコーン殺菌溶液を3回に分けて反応容器に加え、攪拌下で加熱速度5℃/分にて40℃の温度まで加熱し、8時間反応させてシリコーン殺菌剤を得た。
【0081】
上述したシリコーン殺菌剤を、噴霧装置によって1#のガラスの1つの面に均一にコーティングし、厚さ0.1μmの殺菌剤層を形成した。殺菌剤層は、オレンジピール、波状パターン、斑点などの噴霧の見た目の問題を呈することができなかった。
【0082】
1#のガラスを260℃の温度で15分間焼付、殺菌ガラスを得た。
【0083】
実施例2
【0084】
実施例2のシリコーン殺菌溶液は、以下のものを含んでいた。
【0085】
N,N-ジメチル-N-オクタデシルアミノプロピルトリメトキシシランアンモニウムクロリド65%。
【0086】
オルトケイ酸テトラエチル10%。
【0087】
ビニルトリエトキシシラン10%。
【0088】
3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン5%。
【0089】
メチルトリメトキシシラン7%。
【0090】
ジラウリン酸ジブチルスズ3%。
【0091】
上述したシリコーン殺菌溶液を3回に分けて反応容器に加え、攪拌下で加熱速度5℃/分にて80℃の温度まで加熱し、1時間反応させてシリコーン殺菌剤を得た。
【0092】
上述したシリコーン殺菌剤を、ローラーコーティング装置によって2#のガラスの1つの面に均一にコーティングし、厚さ10μmの殺菌剤層を形成した。この殺菌剤層は、オレンジピール、波状パターン、斑点などの噴霧による見た目の問題を呈することができなかった。
【0093】
2#のガラスを300℃の温度で10分間焼き付けて、殺菌ガラスを得た。
【0094】
実施例3
【0095】
実施例3のシリコーン殺菌溶液は、以下のものを含んでいた。
【0096】
(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド30%。
【0097】
オルトケイ酸テトラエチル40%。
【0098】
ビニルトリエトキシシラン19.9%。
【0099】
3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルメチルジエトキシシラン5%。
【0100】
メチルトリメトキシシラン5%。
【0101】
オクタン酸第一スズ0.1%。
【0102】
上述したシリコーン殺菌溶液を3回に分けて反応容器に加え、攪拌下で加熱速度5℃/分にて60℃の温度まで加熱し、5時間反応させて、シリコーン殺菌剤を得た。
【0103】
上述したシリコーン殺菌剤を、ローラーコーティング装置によって3#のガラスの1つの面に均一にコーティングし、厚さ3μmの殺菌剤層を形成した。この殺菌剤層は、オレンジピール、波状パターン、斑点などの噴霧による見た目の問題を呈することができなかった。
【0104】
3#のガラスを280℃の温度で12分間焼き付けて、殺菌ガラスを得た。
【0105】
実施例4
【0106】
実施例4のシリコーン殺菌溶液は、以下のものを含んでいた。
【0107】
(トリメトキシシリルプロピル)オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド50%。
【0108】
オルトケイ酸テトラエチル20%。
【0109】
ビニルトリメトキシシラン10%。
【0110】
γ-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン10%。
【0111】
メチルトリメトキシシラン7%。
【0112】
ジブチルビス(ドデシルチオ)スズ3%。
【0113】
上述したシリコーン殺菌溶液を3回に分けて反応容器に加え、攪拌下で加熱速度5℃/分にて50℃の温度まで加熱し、7時間反応させて、シリコーン殺菌剤を得た。
【0114】
上述したシリコーン殺菌剤を、ローラーコーティング装置によって4#のガラスの1つの面に均一にコーティングし、厚さ7μmの殺菌剤層を形成した。この殺菌剤層は、オレンジピール、波状パターン、斑点などの噴霧による見た目の問題を呈することができなかった。
【0115】
4#のガラスを270℃の温度で13分間焼き付けて、殺菌ガラスを得た。
【0116】
実施例5
【0117】
実施例5のシリコーン殺菌溶液は、以下のものを含んでいた。
【0118】
3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルドデシルアンモニウムクロリド55%。
【0119】
オルトケイ酸テトラエチル15%。
【0120】
ビニルトリエトキシシラン16%。
【0121】
3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン7%。
【0122】
メチルトリメトキシシラン6%。
【0123】
二酢酸ジブチルスズ1%。
【0124】
上述したシリコーン殺菌溶液を3回に分けて反応容器に加え、攪拌下で加熱速度5℃/分にて60℃の温度まで加熱し、5時間反応させて、シリコーン殺菌剤を得た。
【0125】
上述したシリコーン殺菌剤を、ローラーコーティング装置によって1#のガラスの1つの面に均一にコーティングし、厚さ20μmの殺菌剤層を形成した。この殺菌剤層は、オレンジピール、波状パターン、斑点などの噴霧による見た目の問題を呈することができなかった。
【0126】
1#のガラスを270℃の温度で13分間焼き付けて、殺菌ガラスを得た。
【0127】
実施例6
【0128】
実施例6のシリコーン殺菌溶液は、以下のものを含んでいた。
【0129】
3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルドデシルアンモニウムクロリド56%。
【0130】
オルトケイ酸テトラエチル13%。
【0131】
ビニルトリメトキシシラン16%。
【0132】
γ-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン8%。
【0133】
メチルトリメトキシシラン6%。
【0134】
ジブチルビス(ドデシルチオ)スズ1%。
【0135】
上述したシリコーン殺菌溶液を3回に分けて反応容器に加え、攪拌下で加熱速度5℃/分にて50℃の温度まで加熱し、7時間反応させて、シリコーン殺菌剤を得た。
【0136】
上述したシリコーン殺菌剤を、ローラーコーティング装置によって3#のガラスの1つの面に均一にコーティングし、厚さ50μmの殺菌剤層を得た。殺菌剤層は、オレンジピール、波状パターン、斑点などの噴霧による見た目の問題を呈することができなかった。
【0137】
3#のガラスを270℃の温度で13分間焼き付けて、殺菌ガラスを得た。
【0138】
比較例1
【0139】
比較例1では、シリコーン四級アンモニウム塩の殺菌溶液は、シリコーン四級アンモニウム塩抗菌剤DC-5700であった。これは、Dow Corning Corporation製の市販品である。シリコーン四級アンモニウム塩抗菌剤DC-5700を、ローラーコーティング装置によって1#のガラスの1つの面に均一にコーティングし、厚さ50μmの殺菌剤層を形成した。この殺菌剤層は、オレンジピール、波状パターン、斑点などの噴霧による見た目の問題を呈することができなかった。
【0140】
1#のガラスを260℃の温度で13分間焼き付けて、殺菌ガラスを得た。
【0141】
実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスに、抗菌性能試験を行った。PRC Building Materials Industry Standard JC/T 1054-2007に従って、殺菌ガラスの抗菌性能を試験した。試験の指標として、MIC(最小発育阻止濃度)および24時間殺菌率を用いた。計算で求めた抗菌率に基づいて抗菌性能を評価し、結果を表1に示した。試験した株は、Acinetobacter baumannii(ATCC11038)、Klebsiella pneumoniae(ATCC4352)、Pseudomonas aeruginosa(ATCC9027)、Escherichia coli(ATCC25922)、Staphylococcus aureus(ATCC6538)、Streptococcus hemolyticus(ATCC19615)であった。表1の対照試料は通常のソーダ石灰ガラスであった。
【表1】
【0142】
実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスに、耐久性試験を行った。結果を表2に示した。
【0143】
耐久性試験には、耐摩耗性試験、耐酸性試験、耐アルカリ性試験、消毒薬耐性試験、耐溶剤性試験、耐沸騰水性試験、UV耐性試験を含む。PRC Building Materials Industry Standard JC/T 1054-2007に従って、殺菌ガラスの抗菌性能を試験した。試験の指標として、MIC(最小発育阻止濃度)および24時間殺菌率を用いた。計算で求めた抗菌率に基づいて抗菌性能を評価した。試験した株は、Escherichia coli(ATCC25922)であった。表2の対照試料は、通常の高アルミナガラスであった。表3は、実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスで作られた試料の可視光透過率の変化を示す。
【0144】
耐摩耗性については、GB/T 30984.1に規定された方法に従って測定した。換言すると、実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスで作られた試料を使用して、GB/T 268に適合する分光測光器を用いて、耐摩耗性前後の可視光透過率の変化を測定した。次に、サンプルを試験プラットフォームに固定し、GB/T 30984.1の要件を満たす装置を用いて規定の方法で耐摩耗性試験を行った。試験が終了したら、脱イオン水および無水エタノールで試料を十分にすすぎ、温度110℃で15分間、オーブン内に置いた。室温まで冷却後、殺菌性能を測定した。
【0145】
耐酸性については、GB/T 30984.1に規定された方法に従って測定した。換言すると、実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスから試料を作製した後、1mol/Lの塩酸溶液に、温度23℃で24時間、試料を浸漬した。試験が終了したら、脱イオン水および無水エタノールで試料を十分にすすぎ、温度110℃で15分間、オーブン内に置いた。室温まで冷却後、殺菌性能を測定した。
【0146】
耐アルカリ性については、GB/T 30984.1に規定された方法に従って測定した。換言すると、実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスから試料を作製した後、pH10のアンモニア水に、温度23℃で24時間、試料を浸漬した。浸漬終了後、脱イオン水および無水エタノールで試料を十分にすすぎ、温度110℃で15分間、オーブン内に置いた。室温まで冷却後、殺菌性能を測定した。
【0147】
消毒薬耐性の測定: 実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスから試料を作製した。次に、商品のブロモゲラミン(ベンザルコニウム臭化物含有量27g/L)を、脱イオン水を用いて容量比1:15で希釈した後、このブロモゲラミン希釈液に、温度23℃で24時間、試料を浸漬した。浸漬終了後、脱イオン水および無水エタノールで試料を十分にすすぎ、温度110℃で15分間、オーブン内に置いた。室温まで冷却後、殺菌性能を測定した。
【0148】
耐溶剤性の測定: 実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスから試料を作製した後、75%(質量パーセント)エタノール溶液に、温度23℃で24時間、試料を浸漬した。浸漬終了後、脱イオン水および無水エタノールで試料を十分にすすぎ、温度110℃で15分間、オーブン内に置いた。室温まで冷却後、殺菌性能を測定した。
【0149】
耐沸騰水性の測定: 実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスから試料を作製した後、沸騰した脱イオン水に試料を浸漬し、1時間沸騰させた。沸騰後、脱イオン水および無水エタノールで試料を十分にすすぎ、温度110℃で15分間、オーブン内に置いた。室温まで冷却後、殺菌性能を測定した。
【0150】
UV耐性の測定: 実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスから試料を作製した後、GB/T 16259の規定に従って測定を行った。UV耐性時間は250時間であり、累計の総照射エネルギーは750MJ/m2以上であった。試験終了後、脱イオン水および無水エタノールで試料を十分にすすぎ、温度110℃で15分間、オーブン内に置いた。室温まで冷却後、殺菌性能を測定した。
【表2】
【表3】
【0151】
実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスに、耐候性試験を行った。
【0152】
耐候性試験には、寒熱繰り返し能試験および耐湿熱性試験を含む。PRC Building Materials Industry Standard JC/T 1054-2007に従って、殺菌ガラスの抗菌性能を試験した。試験の指標として、MIC(最小発育阻止濃度)および24時間殺菌率を用いた。計算で求めた抗菌率に基づいて抗菌性能を評価した。試験した株は、Escherichia coli(ATCC25922)。表4の対照試料は、通常の高アルミナガラスであった。
【0153】
JC/T 1054-2007に規定された方法に従って、耐湿熱性を測定した。換言すると、実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスから試料を作製した後、恒温恒湿チャンバ内に試料を垂直に配置した。恒温恒湿チャンバの相対湿度は95%以上、温度は58℃で制御され、浸漬時間は1000時間であった。浸漬終了後、脱イオン水および無水エタノールで試料を十分にすすぎ、温度110℃で15分間、オーブン内に置いた。室温まで冷却後、殺菌性能を測定した。
【0154】
寒熱繰り返しについては、GB/T 30984.1-2015に規定された方法に従って測定した。換言すると、実施例1~6および比較例1で作製した殺菌ガラスから試料を作製した。温度センサーを試料の中央部の表面または裏面に置いた後、試料を室温にて人工気候室に入れた。温度センサーを温度モニターに接続した後、人工気候室を閉じた。温度85℃および-40℃、湿度85%で、試料に10サイクルの寒熱繰り返し試験を行った。試験終了後、脱イオン水および無水エタノールで試料を十分にすすぎ、温度110℃で15分間、オーブン内に置いた。室温まで冷却後、殺菌性能を測定した。
【表4】
【0155】
表1から表4によれば、実施例1~6による殺菌ガラスは、優れた抗菌性能、耐摩耗性、耐酸性、耐アルカリ性、消毒薬耐性、耐溶剤性、耐沸騰水性、UV耐性、耐候性を有することがわかる。また、殺菌ガラスは、ガラスの光透過性への影響が小さい。
【0156】
以上、それぞれの実施形態について1つずつ説明したが、それぞれの実施形態は独立しないことに注意されたい。本出願の開示内容を読んで、それぞれの実施形態に関するそれぞれの技術的特徴を、互いに衝突しないかぎり、それぞれの実施形態間で任意に組み合わせられることは、当業者であれば適宜理解できる。もちろん、同じ実施形態で言及したそれぞれの技術的特徴を、互いに衝突しないかぎり、任意に組み合わせることも可能である。
【0157】
上記の説明は、本発明の具体的な実施形態にすぎず、本発明の保護範囲を限定することを意図したものではない。本発明に開示した技術的範囲の中で当業者によって容易に理解できる変形または置換はいずれも、本発明の保護範囲に包含される。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の保護範囲とすべきである。