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特許6997313P2P装置用のデュアル・インタフェース自動車Wi-Fiコントローラのための負荷平衡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】P2P装置用のデュアル・インタフェース自動車Wi-Fiコントローラのための負荷平衡
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20220107BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20220107BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20220107BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20220107BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W84/12
H04W16/28
H04W72/04 150
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020526959
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 US2018058868
(87)【国際公開番号】W WO2019103823
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】62/590,979
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/925,566
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507364997
【氏名又は名称】サイプレス セミコンダクター コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Cypress Semiconductor Corporation
【住所又は居所原語表記】198 Champion Court, San Jose, CA 95134, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】スワロオパラニ サフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィノス サンパス
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0271829(US,A1)
【文献】特開2000-270100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0149806(US,A1)
【文献】米国特許第08514825(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線アクセスポイントにおいて、第1周波数帯を介した該無線アクセスポイントとの接続を要求する第1プローブ要求を第1クライアント装置から受信するステップと、
前記第1クライアント装置が第2周波数帯を介した接続をサポートすることの指示に応答して、前記第1クライアント装置を待ち行列に入れるステップと、
前記無線アクセスポイントにおいて、前記第2周波数帯を介した前記無線アクセスポイントとの接続を要求する第2プローブ要求を前記第1クライアント装置から受信したことに応答して、前記第2周波数帯を使用した前記無線アクセスポイントと前記第1クライアント装置との接続を確立するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1クライアント装置を待ち行列に入れるステップが、前記第1クライアント装置のメディアアクセス制御(MAC)アドレスをブロックリスト中に追加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2周波数帯を使用した前記無線アクセスポイントと前記第1クライアント装置との接続を確立したことに応答して、前記第1クライアント装置を前記待ち行列から除くステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1クライアント装置が前記第2周波数帯を介した接続をサポートするものと判定したことに応答して、前記第1クライアント装置を満了時刻に関連付けるステップをさらに含み、前記満了時刻よりも前に前記無線アクセスポイントにおいて前記第2プローブ要求を受信する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記無線アクセスポイントにおいて、前記第1周波数帯を介した前記無線アクセスポイントとの接続を要求する第3プローブ要求を第2クライアント装置から受信するステップと、
前記第2クライアント装置が前記第2周波数帯を介した接続をサポートすることの指示に応答して、
前記第2クライアント装置を満了時刻に関連付け、
前記満了時刻後に、前記第1周波数帯を介した前記無線アクセスポイントとの接続を要求する第4プローブ要求に応答して、前記第1周波数帯を介した前記第2クライアント装置との接続を確立するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2周波数帯を使用した接続を確立するステップが、前記第2プローブ要求に応答して、前記無線アクセスポイントから前記第1クライアント装置へプローブ応答を送信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記指示が、前記第1プローブ要求内で送信されるWi-Fi(登録商標)プロテクテッド・セットアップ情報要素(WPS IE)内の無線周波数(RF)帯域属性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2周波数帯の送信電力が、前記第1周波数帯の送信電力よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2周波数帯内で送信される信号をビーム形成して前記第1クライアント装置に向けることによって、前記第2周波数帯の送信電力を増加させるステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1周波数帯が2.4GHzの周波数帯であり、前記第2周波数帯が5GHzの周波数帯である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1要求を受信する前に、前記無線アクセスポイントと、1つ以上のブルートゥース(登録商標)装置のそれぞれとの間のブルートゥース(登録商標)接続を維持するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第1周波数帯用の第1無線コアと、
処理ユニットと、
第2周波数帯用の第2無線コアとを具えた無線装置であって、
前記第1無線コアは、前記第1周波数帯を介した前記無線装置との接続を要求する第1プローブ要求を第1クライアント装置から受信するように構成され、
前記処理ユニットは、前記第1クライアント装置が前記第2周波数帯を介した接続をサポートすることの指示に応答して、前記第1クライアント装置を待ち行列に入れるように構成され、
前記第2無線コアは、
前記第2周波数帯を介した前記無線装置との接続を要求する第2プローブ要求を前記第1クライアント装置から受信し、
前記第2プローブ要求を受信したことに応答して、前記第2周波数帯を使用した前記無線アクセスポイントと前記第1クライアント装置との接続を確立する
ように構成されている無線装置。
【請求項13】
前記処理ユニットに結合されたブロックリストをさらに具え、前記処理ユニットが、
前記第1クライアント装置のメディアアクセス制御(MAC)アドレスを前記ブロックリストに追加することによって、前記第1クライアント装置を待ち行列に入れ、
前記第2周波数帯を使用した前記無線アクセスポイントと前記第1クライアント装置との接続を確立したことに応答して、前記MACアドレスを前記ブロックリストの待ち行列から除く
ようにさらに構成されている、請求項12に記載の無線装置。
【請求項14】
前記処理ユニットに結合されたブロックリストをさらに具え、
前記処理ユニットが、前記第1クライアント装置が前記第2周波数帯を介した接続をサポートするものと判定したことに応答して、前記第1クライアント装置を前記ブロックリスト中の満了時刻に関連付けるようにさらに構成され、
前記第2プローブ要求は、前記満了時刻よりも前に前記無線アクセスポイントにおいて受信される、請求項12に記載の無線装置。
【請求項15】
前記第1無線コアが、前記第1周波数帯を介した前記無線アクセスポイントとの接続を要求する第3プローブ要求を第2クライアント装置から受信するようにさらに構成され、
前記処理ユニットが、前記第2クライアント装置が前記第2周波数帯を介した接続をサポートすることの指示に応答して、前記第2クライアント装置を満了時刻に関連付けるようにさらに構成され、
前記第1無線コアが、前記満了時刻後に受信した、前記第1周波数帯を介した前記無線アクセスポイントとの接続を要求する第4プローブ要求に応答して、前記第1周波数帯を介した前記第2クライアント装置との接続を確立するようにさらに構成されている、
請求項12に記載の無線装置。
【請求項16】
前記第2無線コアの送信電力が前記第1無線コアの送信電力よりも大きい、請求項12に記載の無線装置。
【請求項17】
前記処理ユニットに結合されたブルートゥース(登録商標)トランシーバをさらに具え、該ブルートゥース(登録商標)トランシーバは、前記第1要求を受信する前に、前記無線アクセスポイントと、1つ以上のブルートゥース(登録商標)装置のそれぞれとの間の1つ以上のブルートゥース(登録商標)接続を維持するように構成され、
前記第1周波数帯が2.4GHzの周波数帯であり、前記第2周波数帯が5GHzの周波数帯である、請求項12に記載の無線装置。
【請求項18】
媒体装置と、
前記媒体装置に結合された無線アクセスポイントとを具え、該無線アクセスポイントは、
デュアルバンド無線装置と、
処理ユニットとを具え、
前記デュアルバンド無線装置は、
第1周波数帯を介した前記無線アクセスポイントとの接続を要求する第1プローブ要求を第1クライアント装置から受信し、
第2周波数帯を介した前記無線アクセスポイントとの接続を要求する第2プローブ要求を前記第1クライアント装置から受信し、
前記第2プローブ要求を受信したことに応答して、前記第2周波数帯を使用した前記無線アクセスポイントと前記第1クライアント装置との接続を確立するように構成され、
前記処理ユニットは、前記第1クライアントからの、前記第1クライアント装置が前記第2周波数帯を介した接続をサポートすることの指示に応答して、前記第1クライアント装置を待ち行列に入れるように構成されているシステム。
【請求項19】
自動車をさらに具え、前記媒体装置及び前記無線アクセスポイントが前記自動車の電力サブシステムによって給電される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1クライアント装置を含む複数のクライアント装置をさらに具え、前記複数のクライアント装置の各々が前記無線アクセスポイントに無線で結合され、前記複数のクライアント装置が、シングルバンドWi-Fi(登録商標)装置、デュアルバンドWi-Fi(登録商標)装置、及びブルートゥース(登録商標)装置のうちの1つ以上を含む、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許非仮出願第15/925566号、2018年3月19日出願の国際出願であり、この米国特許非仮出願は、米国特許仮出願第62/590979号、2017年11月27日出願により優先権を主張し、これらの特許出願のすべては、その全文を参照することによって本明細書中に含める。
【0002】
技術分野
本発明は無線通信の分野に関するものであり、具体的にはデュアルバンド・クライアント装置の無線アクセスポイントへの接続に関するものである。
【背景技術】
【0003】
背景
Wi-Fi(登録商標)は、電気電子技術者協会(IEEE:Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11仕様に準拠して無線ローカルエリア・ネットワーク内の装置を接続する技術である。Wi-Fi(登録商標)技術を用いて接続することができる装置は、パーソナル・コンピュータ、ビデオゲーム・コンソール(操作卓)、電話機、タブレット、デジタルカメラ、スマート・テレビジョン、デジタル音楽プレーヤ、プリンタ、その他である。これら及び他のWi-Fi互換の装置は、インターネットに接続された無線アクセスポイントに接続することによってインターネットにアクセスすることができる。
【0004】
Wi-Fi装置が最も一般的に使用する周波数帯域は2.4ギガヘルツ(GHz)及び5GHzの無線帯域である。これらの周波数帯域は、工業、科学、及び医療(ISM:industrial, scientific and medical)無線帯域である。電子レンジ、ベビーモニター(乳児監視カメラ)、等は2.4GHz帯内の放射を発生する。それに加えて、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)のような一般的な通信技術も2.4GHz帯を使用する。2.4GHz帯内の信号を使用または放射するブルートゥース(登録商標)装置及び他の装置の台数の増加は、特に、多数のこうした装置が近接して使用されている際に、例えばこれらの装置が建物の室内または乗物の室内で使用されている際に、同じ帯域内のWi-Fi(登録商標)信号と干渉し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明を、限定ではない一例として、添付した図面の図中に示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態による乗物内の無線システムのブロック図である。
図2】一実施形態による無線ネットワークのブロック図である。
図3図3Aは、一実施形態によるデュアルバンド無線装置のブロック図である。図3Bは、一実施形態による無線クライアント装置のブロックリストを示す図である。
図4図4A~4Dは、一実施形態による、無線アクセスポイントとクライアント装置との接続を確立するためのタイミング図である。
図5】一実施形態による、デュアルバンド無線アクセスポイントとクライアント装置との接続を確立するためのプロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
以下の説明は、特許請求する主題のいくつかの実施形態の良好な理解をもたらすために、具体的なシステム、構成要素、方法、等の例の多数の具体的詳細を説明する。しかし、少なくとも一部の実施形態はこれらの具体的詳細なしで実施することができることは、当業者にとって明らかである。他の例では、特許請求する主題を無用に曖昧にすることを回避するために、周知の構成要素または方法は詳細に説明せず、あるいは単純なブロック図形式で提示する。従って、説明する具体的詳細は例示に過ぎない。特定の実現は、これらの例示的詳細から変化し得る。それでも、特許請求する主題の範囲内であるものと考えられる。
【0008】
一実施形態では、Wi-Fi(登録商標)技術を用いて、乗物(例えば、自動車または小型船舶)の室内、建物の室内、他の生活空間のような環境内の1つ以上の装置管の接続を確立する。具体的には、Wi-Fi(登録商標)技術を用いて、1つ以上の無線装置を含むピア・ツー・ピア(P2P:peer-to-peer)のアドホック(その場の)無線ネットワークを確立する。こうしたP2Pネットワークでは、無線アクセスポイント装置がネットワーク内のグループオーナー(GO:group owner)として指定されるのに対し、P2Pネットワーク内の他の装置はクライアントである。グループオーナーは、ユーザによって指定されると、自律型グループオーナー(AGO:autonomous group owner)として知られる。アクセスポイントは、ソフト・アクセスポイント(ソフトAP(soft access point))、モバイル(移動型)アクセスポイント、グループオーナー(GO)、またはアクセスポイント機能を提供する他のあらゆる装置とすることができる。
【0009】
一実施形態では、アクセスポイント装置がデュアルバンド無線機を含み、このデュアルバンド無線機は2.4GHz(2.4G)帯及び5GHz(5G)帯の両方で接続を確立することができる。従って、アクセスポイントは、共に同じネットワークに接続された2.4GHzのAGO及び5GHzのAGOを含む。一部のクライアント装置(即ち、シングルバンド装置)は、(2.4GHz帯を使用する)2.4GHzのAGOのみを通してネットワークに接続することができるが;デュアルバンド・クライアントは2.4GHz帯も5GHz帯もサポートする。
【0010】
しかし、多数の場合、デュアルバンドが可能なクライアントは、それ自身の内部論理構成に応じて2つのグループオーナーの一方に接続し、このことは、デュアルバンド・クライアントが、より混雑が少ない5GHz帯を使用することができる場合でも、デュアルバンド・クライアントに、より混雑した2.4GHz帯を使用して接続させることがある。自動車インフォテインメント(情報娯楽)システムのような一部の場合には、無線ネットワークは、デュアルバンド装置よりも多数の、ブルートゥース(登録商標)装置、Wi-Fi(登録商標)装置を含む2.4GHzの装置が支配的であることが多い。これらの環境では、2.4GHzを使用するデュアルバンドが可能なクライアントは、2.4GHz帯内の干渉及びトラフィックに起因して大幅に低いデータレートで動作することがあり、貧弱な性能を生じさせる。
【0011】
一実施形態では、2.4GHz帯及び5GHz帯用のデュアルAGOを動作させる無線アクセスポイント装置が、2.4GHzインタフェースの代わりに5GHzインタフェース経由で接続するようにデュアルバンド・クライアント装置を導く。このことは、ブルートゥース(登録商標)装置と2.4GHzのWi-FI(登録商標)装置とによって生じる干渉を回避し、これにより5GHzが可能なデュアルバンド装置の性能を向上させる。しかし、デュアルバンドが可能な個別の装置は、必ずしも5GHzを選好するように構成されておらず、実際には2.4GHzを選好することがある。一般的構成では、例えば、デュアルバンドが可能なP2P装置は、2.4GHz帯内のソーシャルチャネル1、6、及び11を提供することによって開始されるP2P発見サービスを実行する。
【0012】
従って、一実施形態では、無線アクセスポイント装置が、デュアルバンドが可能な装置を識別して、これらの装置が2.4GHzのGOに接続することを防止する。Wi-Fi(登録商標)プロテクテッド・セットアップ・プロトコルを使用するIEEE802.11準拠のネットワーク内の装置については、グループオーナーは、クライアントがグループオーナーに接続しようとする際に送信するプローブ要求内のWi-Fi(登録商標)プロテクテッド・セットアップ情報要素(WPS IE:Wi-Fi Protected Setup Information Element)から、接続しようとするクライアントの帯域能力を決定することができる。従って、一実施形態では、アクセスポイント装置は、2.4GHz帯内のプローブ要求を無視することによって、デュアルバンドが可能な装置に、まず2.4GHz経由で接続せずに5GHzを使用して接続させ;デュアルバンド装置は、2.4GHz帯を使用して接続することに失敗すると、代わりに5GHz帯内で接続する。
【0013】
図1に、無線ネットワーク内で接続された装置を含む自動車システムの実施形態を示す。自動車100は、メディア(媒体)装置120に接続された無線アクセスポイント装置110を含み、メディア装置120は、ステレオ・ヘッドユニット、インフォテインメント・ユニット、または自動車100内の他の装置とすることができる。無線アクセスポイント110及びメディア装置120の各々は、自動車の電力サブシステム140によって給電される。このシステムは複数の無線クライアント装置130も含み、無線クライアント装置130は、2.4GHz帯または5GHz帯、または他のWi-Fi(登録商標)周波数帯域を介して無線アクセスポイント110に接続することができる。一実施形態では、無線アクセスポイント装置110はブルートゥース(登録商標)装置に接続することもできる。無線アクセスポイント110からは、無線電波信号がアンテナ(または一組のアンテナ)から送信される。無線アクセスポイント110は、ビームステアリングをサポートして、アンテナ150から送信される信号を自動車100の室内に向かう方向151に指向させ、この室内ではWi-Fi(登録商標)クライアント装置及びブルートゥース(登録商標)装置が最も配置されやすい。
【0014】
図1には自動車100を乗用車として示しているが、代案実施形態では航空機または小型船舶のような異なる種類の乗物として具体化することができる。代案実施形態では、無線ネットワークの構成要素を室内または他の生活空間内に配置することができる。例えば、ホームシアターシステム、ホームオートメーションシステム、等が、複数の無線接続された装置を室内または室外の生活空間内またはその付近に含むことができる。
【0015】
図2に、無線アクセスポイント110を含む無線ネットワーク200の一実施形態を示し、無線アクセスポイント110は、2つの異なる周波数帯域上でのWi-Fi(登録商標)クライアント211及び212との無線通信をサポートする。無線アクセスポイント110はブルートゥース(登録商標)モジュール206も含み、ブルートゥース(登録商標)モジュール206は1つ以上のブルートゥース(登録商標)装置213のそれぞれとの1つ以上のブルートゥース(登録商標)接続を確立して維持する。無線アクセスポイント110は、2.4GHzのGOを通して1つ以上のシングルバンドWi-Fi(登録商標)クライアント装置と通信し、2.4GHzのGOは第1アンテナ150(1)を通して信号を送信し、第1アンテナ150(1)はブルートゥース(登録商標)モジュール206と共用される。無線アクセスポイント110は、2.4GHzのGOまたは5GHzのGOのいずれかを通してデュアルバンドWi-Fi(登録商標)クライアント211と通信することもでき、5GHzのGOは第2アンテナ150(2)を通して信号を送信する。一実施形態では、2.4GHzのGO及び5GHzのGOの各々が単一入力単一出力(SISO:single-input single-output)アクセスポイントであり、同じ接続用のサービスセット識別子(SSID:service set identifier)及びパスコードを有する。
【0016】
一実施形態では、無線ネットワーク200が1つ以上のシングルバンド・クライアント装置212及びブルートゥース(登録商標)装置を含み、これらの装置は既に無線アクセスポイント110に接続されている。シングルバンド・クライアント装置212及びブルートゥース(登録商標)装置は、2.4GHzの周波数帯を使用して無線アクセスポイント110と、及び/または互いに通信し、これにより、2.4GHz帯が5GHz帯よりも大量に使用される環境を作り出す。従って、デュアルバンド・クライアント装置211がこの環境内の無線アクセスポイント110に無線で接続しようとする際に、無線アクセスポイント110は、5GHz帯を使用して接続するようにデュアルバンド・クライアント装置211を導いて、既存の2.4GHzトラフィックとの、及び既存の2.4GHzトラフィックからの干渉を回避する。
【0017】
無線アクセスポイント110はデュアルバンド無線装置205を含み、デュアルバンド無線装置205内には2.4GHzのGO及び5GHzのGOが実装されている。無線アクセスポイント110に接続するために、デュアルバンド・クライアント装置211はプローブ要求を送信し、プローブ要求は2.4GHz及び5GHzの周波数帯のいずれかを介した無線アクセスポイント110との接続を要求する。好ましい5GHz帯を介した接続を求めるプローブ要求に応答して、無線アクセスポイント110はプローブ応答をデュアルバンド・クライアント装置211へ送信して、5GHzの周波数帯を使用した無線アクセスポイント110とデュアルバンド・クライアント装置211との無線接続を確立する。デュアルバンド・クライアント装置211が、好ましくない2.4GHz帯を使用した接続を求めるプローブ要求を送信した場合、無線アクセスポイント11は、5GHz帯を介して接続するようにクライアント装置を導こうとする。
【0018】
一実施形態では、処理ユニット201が、メモリ202に記憶されている命令を実行することによって、5GHzの周波数帯を使用して接続するようにデュアルバンド装置2110を導くことに関連する計算を実行する。メモリ202は、揮発性及び/または不揮発性メモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)、読出し専用メモリ(ROM:read only memory)、等を含むことができる。種々の実施形態では、命令207を、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組合せとして提供することができる。
【0019】
命令207によれば、好ましくない2.4GHz帯を求めるプローブ用流を受信すると、プロセッサ201は、クライアント装置211が好ましい5GHz帯を使用することができるか否かを判定する。プロセッサ201は2.4GHzのプローブ要求内で送信されるWPS IEフレームを認証して構文解析する。WPS IEの「RF帯域(RF Bands)」属性では、0x01の値は装置が2.4GHz帯を使用することができることを示し、0x02の値は装置が5GHz帯を使用することができることを示し、0x03または「自動(Auto)」の値は装置がいずれの帯域も使用することができることを示す。「RF帯域」属性が、クライアント装置211が5GHz帯も使用することができるデュアルバンド装置であることを示す場合、処理ユニット201は、2.4GHzのプローブ要求に応答せずに装置211を待ち行列に入れる。装置211は、メモリ202に記憶されているブロックリスト203中の待ち行列に入れられる。
【0020】
クライアント211がブロックリスト203中にある間には、ブロックリスト203中のクライアント211に関連する満了時刻に達するまで、クライアント211からの2.4GHzのプローブ要求は無視される。2.4GHz帯を求めるプローブ要求が何度も無視されるので、クライアント装置211は、5GHz帯を使用して無線アクセスポイント110に接続しようとする。従って、クライアント装置211は5GHzのプローブ要求を送信し、このプローブ要求は5GHzのGOで受信され、無線アクセスポイント110はプローブ応答を送信して、5GHzのプローブ要求に応答した5GHzの無線接続を確立する。
【0021】
5GHzのプローブ要求を受信しない場合、処理ユニット201はクライアント211からのあらゆる2.4GHzのプローブ要求を無視し続け、その間に満了時刻を装置クロック204が提供する現在時刻と時々または周期的に比較して、満了時刻に達したか否かを判定する。満了時刻に達した後に、無線アクセスポイント110はクライアント211からの2.4GHzのプローブ要求を無視することを止めて、クライアント装置211が2.4GHz帯を使用して接続することを可能にする。このメカニズムは、2.4GHzのシングルバンド・クライアントが「自動」の「RF帯域」属性を報告することによってデュアルバンド能力を主張しても、このシングルバンド・クライアントが最終的に無線アクセスポイント110に接続することを可能にする。このことは、デュアルバンドが可能なクライアントが、上記満了時刻によって区切られる特定のタイムアウト(時間切れ)期間内に5GHz帯を使用して接続しようとしない場合でも、これらのクライアントが2.4GHz帯を介して接続することも可能にする。
【0022】
一実施形態では、上記のメカニズムを大まかに用いて、あらゆる好ましくない周波数帯から好ましい周波数帯へ無線接続を導くことができ、これらの周波数帯は、異なるように指定された周波数範囲を代表する。一実施形態では、好ましくない周波数帯及び好ましい周波数帯が上述したように2.4GHz及び5GHzであるのに対し、他の実施形態では、好ましくない周波数帯及び好ましい周波数帯が異なる周波数範囲を代表することができる。例えば、上記のメカニズムを用いて、好ましくない5GHz帯の上部から好ましい5GHz帯の下部へ無線接続を導くことができる。
【0023】
一実施形態では、無線アクセスポイント110の構成要素201~207が単一の集積回路チップデバイス内に存在する。代案実施形態では、無線アクセスポイント110の構成要素が共通のキャリアボード(担体基板)上の別個の集積回路パッケージ内に配置されている。
【0024】
図3Aに、一実施形態によるデュアルバンド無線装置205のブロック図を示す。デュアルバンド無線装置205は、2.4GHzのGOを実現するためのメディアアクセス・コントローラ(MAC:media access controller)311と無線コア321、及び5GHzのGOを実現するためのMAC310と無線コア320を含む。MACモジュール310及び311は、無線送信されるフレーム内にデータを封じ込め、次に、これらのフレームを無線コア320及び321に転送し、これらのフレームは無線信号に変換されて、それぞれアンテナ150(2)及び150(1)により送信される。一実施形態では、無線コア320及び321の各々が、無線トランシーバ回路、変調及び復調(モデム)回路、及び無線送信を実行するための他の物理層の回路モジュールを含む。2.4GHz帯を使用してクライアント装置から無線アクセスポイント110へ送信される通信(例えば、プローブ要求)は無線コア321によって受信されるのに対し、5GHz帯を使用して送信される通信は無線コア320によって受信される。デュアルバンド無線装置205では、好ましい5GHz帯用のMAC310がマスター装置として機能するのに対し、好ましくない2.4GHz帯用のMAC311はスレーブとして機能する。処理ユニット201からスレーブMAC311へ提供されるデータは、マスターMAC310によってスレーブMAC311に渡される。
【0025】
図3Bに、一実施形態によるブロックリスト203を示す。ブロックリスト203はメモリ202に記憶され、処理ユニット201によって維持されている。クライアント装置211が好ましくない2.4GHzの周波数帯を求めるプローブ要求を送信し、「RF帯域」属性が、クライアント装置211が5GHz帯を介して通信することができることを示す際に、処理ユニット201は(クライアント装置211がまだブロックリスト203中になければ)クライアント装置211をブロックリスト中の待ち行列に入れる。一実施形態では、処理ユニット201が、クライアント装置211のメディアアクセス制御(MAC:media access control)アドレスをブロックリスト203中に記憶することによってクライアント装置211を待ち行列に入れる。一実施形態では、ブロックリスト203はブルーム(Bloom)フィルタを用いて実現され;従って、クライアントのMACアドレスがハッシュ値に置き換えられ、MACアドレスのハッシュ値(例えば、330~332)がブロックリスト203中に記憶される。各MACアドレスまたはMACアドレスのハッシュ値330~332は、対応する満了時刻340~342に対応する。一実施形態では、プローブ要求を受信した時刻に所定の継続時間(例えば、10ミリ秒)を加算することによって満了時刻を計算する。
【0026】
好ましくない2.4GHz帯を求める次のプローブ要求を受信すると、処理ユニット201は要求中のクライアント装置のMACアドレスをブロックリスト203に対してチェックする。ブロックリスト203がブルームフィルタとして実現されている際には、要求中のクライアントをハッシュ値に置き換えて、ブロックリスト203中のMACアドレスのハッシュエントリと比較して、クライアント装置が以前にブロックされたか否かを判定する。(クライアント装置が以前にブロックされたことを示す)一致が見出され、システムクロック204によって提供されるシステム時刻が、関連する満了時刻を過ぎていない場合、受信した2.4GHzのプローブ要求を無視する。
【0027】
ブロックリスト203のブルームフィルタの実現は確率的であるので、誤判定が発生し得る;即ち、クライアント装置が(例えば、ハッシュ衝突により)以前にブロックされていない際に、時としてクライアント装置がブロックリスト203上にあるものとして識別されることがある。これらの場合、満了時刻に達した際に、クライアント装置は結局ブロックされていない。
【0028】
ブロックリスト203中に表現されるクライアント装置毎に、関連する満了時刻に達すると、無線アクセスポイント110は好ましくない2.4GHz帯を求めるプローブ要求の無視を停止する。クライアント装置が非ブロック状態になった(即ち、満了時刻を過ぎた)後に、2.4GHz帯を求めるプローブ要求をクライアント装置から受信したことに応答して、無線アクセスポイント110はプローブ応答を送信して、要求された2.4GHz帯を使用したクライアントとの無線接続を確立する。5Gのプローブ要求をクライアント装置から受信した場合、ブロックリスト203はチェックせず、無線アクセスポイント110はプローブ応答を送信して、要求された5GHz帯内の接続を確立する。
【0029】
2.4GHz帯内または5GHz帯内のいずれかで接続を確立した後に、クライアント装置は、そのMACアドレスまたはMACアドレスのハッシュ値をブロックリスト203から除去することによって、ブロックリスト203中の待ち行列から除かれる。接続が確立された後に、クライアントはブロックリスト中の待ち行列から除かれ、これにより、2.4GHz帯を求める次のプローブ要求はクライアント装置を再度ブロックさせない。一実施形態では、 ブルームフィルタを用いてブロックリスト203を実現して、MACアドレスのハッシュ値の削除を可能にする。
【0030】
図4Aに、一実施形態によるデュアルバンド・クライアント装置211と無線アクセスポイント110との無線接続を確立するためのタイミング図を示す。図4Aに示すように、クライアント装置211は、まず2.4GHzのプローブ要求401を無線アクセスポイント110へ送信することによって、2.4GHzの周波数帯を介した無線アクセスポイント110との接続を試みる。時刻406にプローブ要求401を受信すると、無線アクセスポイント110はブロックリスト203をチェックして、クライアント装置211がブロックされているか否かを判定する。無線アクセスポイント110は、デュアルバンド・クライアント装置211が以前にブロックされていないものと判定し、従って、プローブ要求401と共に送信されたWPS IEフレームの「RF帯域」属性をチェックすることによって、デュアルバンド・クライアント装置211が5GHz帯を使用して接続することができるか否かを判定することに進む。
【0031】
クライアント装置211はデュアルバンド・クライアント装置であり;従って「RF帯域」属性は「自動」に設定され、デュアルバンド・クライアント装置211が2.4GHz帯内でも5GHz帯内でも通信することができることを示す。クライアント装置211が好ましい5GHz帯内で通信することができるものと判定したことに応答して、無線アクセスポイント110は、当該クライアント装置のMACアドレスまたはMACアドレスのハッシュ値を満了時刻409と共にブロックリスト203に追加することによって、このクライアントを継続時間408だけ待ち行列に入れる。一実施形態では、満了時刻409が、無線アクセスポイント110が2.4GHzのプローブ401を受信した時刻の10ミリ秒後である。
【0032】
プローブのタイムアウト継続時間405後に、デュアルバンド・クライアント装置211は、その初期のプローブ要求401に対するプローブ応答を受信し損なうと、次のプローブ要求402を送信して2.4GHz帯内での接続を再試行する。プローブ要求402は無線コア321において受信され、その内容は処理ユニット201に提供される。無線アクセスポイント110内の処理ユニット201は、時間407中にブロックリスト203をチェックして、クライアント211がブロックリスト203中の待ち行列に入れられているものと判定し、それに応じて2.4GHzのプローブ要求402を無視する。
【0033】
クライアント211が待ち行列に入っている際に、5GHz帯内で接続を確立することを要求するプローブ要求403を無線アクセスポイント110の無線コア320において時間408中に受信した場合、無線アクセスポイント110は、ブロックリスト203をチェックせずに、5GHzのGOの詳細を含む有効な5GHzのプローブ応答404を、無線コア320を通して送信して、要求された5GHzの接続を確立する。クライアント装置211がプローブ応答404を受信した後に、クライアント装置211と無線アクセスポイント110との5GHzの接続が確立される。クライアント装置211はブロックリスト203中の待ち行列から除かれる。
【0034】
図4Bに、一実施形態による、シングルバンド・クライアント装置212と無線アクセスポイント110との無線接続を確立するためのタイミング図を示す。一実施形態では、クライアント装置212が、(「RF帯域」属性を「自動」に設定することにより)自分自身をデュアルバンドが可能な装置として誤って識別しているシングルバンド無線装置を表す;その代わりに、クライアント装置212は、満了時刻420を過ぎた後に5GHzの周波数帯を使用して接続しようとせずに2.4GHzの周波数帯を介して接続しようとし続ける、デュアルバンドが可能な装置を表すことができる。
【0035】
クライアント装置212は、2.4GHzのプローブ要求411を無線アクセスポイント110へ送信する。プローブ要求411は、無線アクセスポイント110の無線コア321において受信される。時間416中に、無線アクセスポイント110は自分のブロックリスト203をチェックして、クライアント装置212が以前にブロックされていないものと判定する。また、時間416中には、無線アクセスポイント110はプローブ要求411と共に送信されたWPS IEフレームを構文解析する。WPS IEフレームの「RF帯域」は「自動」に設定されており、クライアント装置212がデュアルバンドの通信能力を有することを誤って示し;従って、無線アクセスポイント110はクライアント装置212を継続時間419中に待ち行列に入れる。無線アクセスポイント110の処理ユニット201は、クライアント装置212のMACアドレスまたはMACアドレスのハッシュ値をブロックリスト213に追加して満了時刻320に関連付ける。
【0036】
クライアント装置212が待ち行列に入っている間に、当該クライアント装置のタイムアウト時間415が経過して、クライアント装置212は次のプローブ要求412を再度送信して2.4GHz帯を介した接続を要求する。プローブ要求412に応答して、無線アクセスポイント110は、時刻417にクライアント装置212をブロックリスト203上に置いてプローブ要求412を無視する。
【0037】
満了時刻420を過ぎた後に、3回目の2.4GHzのプローブ要求413がクライアント装置212から送信されて無線アクセスポイント110で受信される。時間418中に、無線アクセスポイント110の処理ユニット201は、ブロックリスト203をチェックして、クライアント装置212が以前にブロックされており、このブロックは満了しているものと判定する。従って、プローブ要求413に応答して、無線アクセスポイント110は、2.4GHzの無線コア321により、
2.4GHzのGOの詳細を含むプローブ応答414を送信する。プローブ応答414がクライアント装置212で受信された後に、2.4GHzの接続がクライアント装置212と無線アクセスポイント110との間に確立される。この接続が確立されると、処理ユニット201は、クライアント装置212のMACアドレスまたはMACアドレスのハッシュ値をブロックリスト203から除去することによって、クライアント装置212をブロックリスト203中の待ち行列から除く。従って、図4Bはフェールセーフ・メカニズム(二重安全機構)を示し、このフェールセーフ・メカニズムによって、帯域能力を誤って報告するシングルバンド・クライアント装置(あるいは、5GHzのプローブ要求を適時に送信しないデュアルバンドが可能なクライアント装置)は、それでも満了時刻420を過ぎた後に2.4GHz帯を使用して無線アクセスポイント110に接続することができる。
【0038】
図4Cに、一実施形態による、デュアルバンド・クライアント装置211と無線アクセスポイント110との無線接続を確立するためのタイミング図を示す。具体的には、図4Cは、デュアルバンド・クライアント装置211が5GHz帯を選好して、2.4GHzのプローブ要求を以前に送信せずに5GHzのプローブ要求451を送信する場合を示す。この場合、無線アクセスポイント110は、その好ましい方の5GHzの無線コア320においてプローブ要求451を受信して、5GHzのプローブ応答をクライアント装置211へ送信することによって応答する。クライアント211がプローブ応答452を受信した後に、要求した接続がクライアント装置211と無線アクセスポイント110との間に5GHzの周波数帯内で確立される。一実施形態では、このプロセス中に、無線アクセスポイント110が「RF帯域」属性またはブロックリストをチェックする必要がない。
【0039】
一実施形態では、デュアルバンド・クライアント装置211が、2.4GHzのGOまたは5GHzのGOのいずれかをより強い信号として識別して、より強い信号を有するGOに最初に接続しようとする。従って、無線アクセスポイント110は、(例えば、ビーコン及びプローブ応答の)5GHz帯内の送信電力を2.4GHz帯内の送信電力よりも高いレベルまで増加させることによって、まずプローブ要求451を5GHzのGOへ送信するように、このように構成されたクライアント装置211を誘導する。一実施形態では、5GHz帯内の送信電力を2.4GHz帯内の送信電力に対して2~3デシベル・ミリワット(dBm)だけ増加させる。一実施形態では、5GHz帯内の電力の増加を、ビーム形成によって実現される指向性の電力増加とすることができる。例えば、図1を参照すれば、信号をビーム形成して、5GHz帯内の送信電力を、クライアント装置130が最も配置されやすい乗物の室内へ向かう方向に集中させることができる。他の実施形態では、クライアント装置211が、5GHz帯を使用することによってより良い性能を得ることができることの当該クライアント装置による判定、当該クライアント装置自体の所定の構成、ユーザによる5GHz帯に接続することの命令、等に基づいて、5GHz帯を介して接続することを選好することができる。
【0040】
図4Dに、一実施形態による、シングルバンド・クライアント装置212と無線アクセスポイント110との無線接続を確立するためのタイミング図を示す。具体的には、図4Dは、シングルバンド・クライアント装置212が2.4GHz帯上のみで通信することができ、そのシングルバンドの能力を「RF帯域」属性中に正しく示している場合を示す。この場合、無線アクセスポイント110は、プローブ要求461を2.4GHzの無線コア321において受信する。時刻463に、無線アクセスポイント110はブロック203をチェックして、クライアント装置212が以前にブロックされていないものと判定する。時刻463に、無線アクセスポイント110は、プローブ要求461中のWPS IEフレーム内で送信される「RF帯域」属性をチェックする。「RF帯域」属性は0x01に正しく設定されており、クライアント装置212が2.4GHz帯内のみで通信することができることを示している。従って、無線アクセスポイント110は、2.4GHzのプローブ応答462をクライアント装置211へ送信することによって応答する。クライアント装置212がプローブ応答462を受信した後に、要求された接続がクライアント装置212と無線アクセスポイント110との間に2.4GHzの周波数帯内で確立される。
【0041】
図5に、一実施形態による、デュアルバンドが可能な無線アクセスポイント110にクライアントを接続するためのプロセス500を示す。プロセス500の動作は無線ネットワーク200の構成要素によって実行される。プロセス500中に、無線アクセスポイント110は、無線アクセスポイント110と1つ以上のブルートゥース(登録商標)装置213のそれぞれとの間の1つ以上のブルートゥース(登録商標)接続を維持し、1つ以上のクライアント装置212用のWi-Fi(登録商標)接続をさらに維持する。ブルートゥース装置213及びクライアント装置212は2.4GHzの周波数帯で動作し、これにより、この帯域内のトラフィックの量及び干渉の可能性を増加させる。
【0042】
一実施形態では、プロセス500を図4Aに従って実行して、デュアルバンド・クライアント装置211が好ましくない2.4GHz帯を使用した接続を最初に要求した際にも、好ましい5GHzの周波数帯を使用してクライアント装置211を無線アクセスポイント110に接続する。
【0043】
ブロック501では、無線アクセスポイント110の2.4GHzのGO及び5GHzのGOが共に、それぞれの周波数帯内でプローブ要求を待ち受ける。クライアント装置211は、2.4GHzの周波数帯内で無線アクセスポイント110への接続を要求する最初のプローブ要求401を送信する。ブロック503では、無線アクセスポイント110が5GHzの無線コア320においてプローブ要求を受信しておらず;従って、プロセス500はブロック507に進む。ブロック507では、無線アクセスポイント110が2.4GHzの無線コア321においてプローブ要求(例えば、プローブ要求401)を受信し;従ってプロセス500はブロック509に進む。
【0044】
ブロック509では、処理ユニット201が(例えば、期間406に)ブロックリスト203をチェックして、クライアント装置211が以前にブロックされたか否かをチェックする。ブロック511では、クライアント装置211がブロックリスト203中になく、従って、プロセス500はブロック513に進む。ブロック513では、処理ユニット201が、プローブ要求401内で送信されたWPS IE内の「RF帯域」属性をチェックする。ブロック515では、「RF帯域」属性が0x03(即ち、「自動」)である場合、このことはクライアント装置211がデュアルバンド装置であり、5GHzの周波数帯を使用した接続をサポートすることを示す。クライアント装置211についての「RF帯域」属性は「自動」であり;従って、プロセス500はブロック519に進む。
【0045】
ブロック519では、処理ユニット201は、クライアント装置211のMACアドレスまたは(例えば、ブルームフィルタ実現用の)MACアドレスのハッシュ値をブロックリスト203に追加することによって、クライアント装置211を待ち行列に入れる。処理ユニット201は、プローブ要求401を受信した時刻に所定時間(例えば、10ミリ秒)を加算することによって、ブロックにおける満了時刻も計算する。従って、クライアント装置211は、継続時間408だけ待ち行列に入れられ、継続時間408は満了時刻409に終了する。ブロック523では、それに応じて、ブロックされたクライアント装置211の2.4GHzのプローブ要求401を無視する。ブロック523から、プロセス500はブロック501に戻って、2.4GHzのGO及び5GHzのGOにおいて着信されるプローブ要求の待ち受けを継続する。
【0046】
満了時刻409の前に他のプローブ要求402を受信した場合、ブロック511では、処理ユニット201は、時間407中に、クライアント装置211がブロックリスト203中に表現されるものと判定し、ブロック521に進んで、クライアント装置211をブロックすることがまだ満了していないものと判定する。従って、2.4GHzのプローブ要求はブロック523で無視され、満了時刻409が過ぎる前にクライアント装置211から受信した他のあらゆる2.4GHzのプローブ要求と同様である。ブロック523から、プロセス500はブロック501に戻ってプローブ要求の待ち受けを継続する。
【0047】
しかし、クライアント装置211が、満了時刻409よりも前に、好ましい5GHzの接続を求めるプローブ要求403を送信する場合、プロセス500はブロック503からブロック505へ進む。ブロック505では、無線アクセスポイント110が、プローブ要求403に応答してプローブ応答404をクライアント装置211へ送信することによって、クライアント装置211との要求された接続を確立する。クライアント装置211がプローブ応答を受信した後に5GHzの接続が確立され、このプローブ応答は5GHzのGOの詳細を含む。この時点で、接続の確立に成功したことに応答して、クライアント装置211はブロックリスト203中の待ち行列から除かれる。プロセス500はブロック501に戻って、他のクライアント装置からのプローブ要求の待ち受けを継続する。
【0048】
一実施形態では、プロセス500を図4Bに従って実行して、シングルバンド・クライアント装置212がデュアルバンド能力を誤って報告するか、さもなければ5GHz帯を使用した接続を要求し損なった場合でも、2.4GHzの周波数帯を使用してクライアント装置212を無線アクセスポイント110に接続する。
【0049】
ブロック501では、無線アクセスポイント110が2.4GHz帯及び5GHz帯上でプローブ要求を待ち受ける。クライアント装置212がプローブ要求411を2.4GHz帯内で送信すると、プロセス500はブロック503からブロック507へ進み、ブロック507からブロック509へ進む。ブロック509では、処理ユニット201が時刻416にブロックリスト203をチェックし、クライアント装置212はまだブロックリスト203上に置かれていないので、ブロック511からブロック513へ進んで、プローブ要求411のWPS IE内の「RF帯域」属性をチェックする。
【0050】
ブロック515では、「RF帯域」属性が「自動」である場合、プロセス500はブロック519へ進む。ブロック519では、処理ユニット201が、クライアント装置212のMACアドレスまたはMACアドレスのハッシュ値をブロックリスト203中に記録し、このMACアドレスまたはハッシュ値を満了時刻418に関連付けることによって、クライアント装置212をブロックリスト203に追加する。こうして、クライアント装置212は継続時間419だけ待ち行列に入れられ、継続時間419は時刻420に終了する。ブロック523ではプローブ要求を無視する。満了時刻420が過ぎる前に無線アクセスポイント110が受信した次のプローブ要求(例えば、412)も、ブロック507、509、521、及び523の動作により無視される。
【0051】
満了時刻420を過ぎた後に、2.4GHzのプローブ要求413がクライアント装置212によって送信されて無線アクセスポイント110によって受信されると、ブロック521では、プロセッサ201が、装置クロック204によって提供される現在時刻が満了時刻420を超えたものと判定し、このことは満了時刻420を過ぎたことを示す。ブロック521から、プロセス500はブロック517へ進む。ブロック517では、無線アクセスポイント110が、2.4GHzのGOの詳細を含むプローブ応答414を送信することによって、プローブ要求413に応答する。クライアント装置212がプローブ応答414を受信した後に、2.4GHzの接続が確立される。従って、5GHz帯を求める何らかのプローブ要求を受信する前に現在時刻が満了時刻を超えると、無線アクセスポイント110は、好ましくない2.4GHz帯を使用してクライアント装置212との接続を確立する。2.4GHzの接続の確立に成功したことに応答して、クライアント装置212をブロックリスト203中の待ち行列から除き、プロセス500はブロック501に戻って、他のクライアント装置からのプローブ要求を待ち受ける。
【0052】
一実施形態では、プロセス500を図4Cに従って実行して、デュアルバンド・クライアント装置211が好ましい5GHz帯を使用した接続を最初に要求した際に、好ましい5GHzの周波数帯を使用してクライアント装置211を無線アクセスポイント110に接続する。一実施形態では、クライアント装置211が、無線アクセスポイント110によって5GHz帯内で送信される信号(例えば、ビーコン、プローブ応答、等)が2.4GHz帯内で送信される信号よりも高い送信電力を有することに基づいて、最初に5GHz帯を用いて接続しようとする。
【0053】
一実施形態では、上記の5GHz帯内の送信電力は、5GHz帯用の全体的な送信電力の意図的な増加によるものか、あるいは、(例えば、クライアント装置211に向けた)特定方向の送信電力を増加させるための5GHz信号のビーム形成によるものとすることができる。一実施形態では、こうした好ましい5GHz帯用の送信電力の増加を、デュアルバンド・クライアント装置を5GHzに導くための待ち行列メカニズムと共に利用する、というのは、必ずしもすべてのデュアルバンド・クライアント装置を、より強い信号を有する周波数帯を選好するように構成することができないからである。
【0054】
ブロック501では、無線アクセスポイント110が2.4GHz帯内及び5GHz帯内のプローブ要求を待ち受ける。クライアント装置211は、好ましい5GHz帯を用いた接続を要求するプローブ要求451を最初に送信する。従って、プロセス500はブロック503からブロック505へ進む。ブロック505では、無線アクセスポイント110が、プローブ要求403に応答してプローブ応答452をクライアント装置211へ送信することによって、要求された5GHzの接続をクライアント装置211との間に確立する。この5GHzの接続は、クライアント装置211がプローブ応答を受信した後に確立され、このプローブ応答は5GHzのGOの詳細を含む。この時点で、接続の確立に成功したことに応答して、クライアント装置211をブロックリスト203中の待ち行列から除く。プロセス500はブロック501に戻って、他のクライアント装置からのプローブ要求の待ち受けを継続する。
【0055】
一実施形態では、プロセス500を図4Dに従って実行して、シングルバンド・クライアント装置212がそのシングルバンドの能力を正確に報告する際に、好ましい2.4GHzの周波数帯を使用してクライアント装置212を無線アクセスポイント110に接続する。ブロック501では、無線アクセスポイント110が2.4GHz帯及び5GHz帯内のプローブ要求を待ち受ける。クライアント装置212は、2.4GHz帯を使用した接続を要求するプローブ要求461を最初に送信する。従って、プロセス500はブロック503からブロック507へ進んで、ブロック507からブロック509へ進む。ブロック509では、処理ユニット201が時刻463にブロックリスト203をチェックし、クライアント装置212がブロックリスト203中にないので、ブロック511からブロック513へ進んで、プローブ要求461のWPS IE内の「RF帯域」属性をチェックする。この場合「RF帯域属性」は0x01であり、クライアント装置212が2.4GHz帯のみを使用して通信することができることを示している。従って、プロセス500はブロック515からブロック517へ進む。
【0056】
ブロック517では、無線アクセスポイント110が、2.4GHzのGOの詳細を含むプローブ応答462を送信することによって、プローブ要求461に応答する。2.4GHzの接続は、クライアント装置212がプローブ応答462を受信した後に確立される。プロセス500はブロック501に戻って、他のクライアント装置からのプローブ要求の待ち受けを継続する。
【0057】
一実施形態では、デュアルバンドの接続プロセス500を繰り返して、無線アクセスポイント110がプローブ要求の待ち受けを2.4GHz及び5GHzの両方の周波数帯内で継続して、5GHz帯が可能な装置を、5GHz帯を使用して接続するように導く。プロセス500は、自身の帯域能力を不正確に報告するクライアント装置でも、さもなければ5GHzのプローブ要求を適時に送信し損なったクライアント装置でも、2.4GHz帯に接続することを可能にする。従って、プロセス500の動作によって、5GHzが可能なクライアント装置のうちより大きな割合のものが5GHz帯を使用して接続し、これにより2.4GHz帯内の混雑を低減して5GHzで接続された装置における速度を増加させる。
【0058】
以上の実施形態には種々の変更を加えることができ;例えば、高電圧でアサートされるものとして説明した信号を代わりに低電圧でアサートすることができ、あるいは、具体的構成要素を同様な機能を有する他の構成要素に置き換えることができる。本明細書中に説明するように、「電気接続」または「電気結合」される導体電極を結合して、比較的低抵抗の導電経路がこれらの導体電極間に存在するようにすることができる。「ほぼ」等しいものとして説明した量、寸法、または他の値は、名目上は等しくすることができるが、厳密に等しい必要はなく(製造公差、環境条件、量子化または丸め誤差、及び/または他の要因による変動を伴い)、あるいは、意図した効果または利点を実現するのに十分なほど「等しい」に近くすることができる。
【0059】
本明細書中に説明する実施形態は種々の動作を含む。これらの動作は、ハードウェア構成要素、ソフトウェア、ファームウェア、あるいはその組合せによって実行することができる。本明細書中に用いる「結合されている」とは、1つ以上の介在する構成要素により直接または間接的に結合されていることを意味し得る。本明細書中に説明する種々のバス上で供給される信号のいずれも、他の信号と時分割多重化して1つ以上の共通バス上で供給することができる。それに加えて、回路構成要素またはブロック間の相互接続は、バスとして示すことも単一の信号線として示すこともある。これらのバスの各々を代わりに1つ以上の単一の信号線とすることができ、単一の信号線の各々を代わりにバスとすることができる。
【0060】
特定の実施形態はコンピュータプログラム製品として実現することができ、こうしたコンピュータプログラム製品はコンピュータ可読媒体上に記憶された命令を含むことができる。これらの命令を用いて汎用または専用(特定目的の)プロセッサをプログラムして、説明した動作を実行することができる。コンピュータ可読媒体は、マシン(例えば、コンピュータ)にとって可読の形式(例えば、ソフトウェア、処理アプリケーション)で情報を記憶または伝送するためのあらゆるメカニズムを含む。このコンピュータ可読の記憶媒体は、磁気記憶媒体(例えば、フロッピー(登録商標)ディスケット(登録商標));光記憶媒体(例えば、CD-ROM(compact disc-ROM));ランダムアクセスメモリ(RAM);消去可能なプログラマブルメモリ(例えば、EPROM(electrically erasable ROM:消去可能ROM)及びEEPROM(electrically erasable ROM:電気的消去可能ROM));フラッシュメモリ、または電子的命令を記憶するのに適した他の種類の媒体を含むことができるが、それらに限定されない。
【0061】
それに加えて、一部の実施形態は分散型コンピュータ環境で実施することができ、こうした環境では、コンピュータ可読媒体が1つ以上のコンピュータシステム上に記憶され、及び/または1つ以上のコンピュータシステムによって実行される。それに加えて、コンピュータシステム間で転送される情報は、これらのコンピュータシステムを接続する伝送媒体上でプッシュすることもプルすることもできる。
【0062】
本明細書中の方法の動作は特定の順序で示して説明しているが、各方法の動作の順序を変更して、特定の動作を逆の順序で実行することができ、あるいは特定の動作を少なくとも部分的に他の動作と同時に実行することができる。他の実施形態では、別個の動作における命令または副次的動作を間欠的及び/または交互の様式にすることができる。
【0063】
以上の明細書では、特許請求する主題を、その特定の好適な実施形態を参照しながら説明してきた。しかし、添付した特許請求の範囲中に記載する本発明のより広い範囲から逸脱することなしに、種々の修正及び変更を加えることができることは明らかである。従って、明細書及び図面は限定的な意味ではなく例示的な意味で考慮するべきである。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5