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特許6997316プラグコネクタおよびかかるプラグコネクタを備えたプラグコネクタ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】プラグコネクタおよびかかるプラグコネクタを備えたプラグコネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/533 20060101AFI20220107BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20220107BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01R13/533 B
H01R13/42 E
H01R13/52 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020529603
(86)(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018080533
(87)【国際公開番号】W WO2019105705
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】102017221521.6
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロン ダン バオ
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ヴァレンシュタイナー
(72)【発明者】
【氏名】マークス クレッケル
【審査官】鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-249039(JP,A)
【文献】米国特許第05017163(US,A)
【文献】特開平01-197979(JP,A)
【文献】特開2017-073291(JP,A)
【文献】特公平07-118344(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差し込み方向(S)に沿って、少なくとも2つの相手側コンタクト部材(31)を備えた相手側プラグコネクタに嵌め込む、または該相手側プラグコネクタ内に挿入する、プラグコネクタであって、
前記プラグコネクタ(1)は、前記差し込み方向(S)に向けられた第1の平面(3)を備えたハウジング(2)を有し、
前記ハウジング(2)は、少なくとも2つのコンタクトチャンバ(4)を有し、該コンタクトチャンバ(4)の各々は、前記第1の平面(3)内に開口部(5)を有し、各コンタクトチャンバ(4)は、コンタクト部材(6)を収容するように構成されており、該コンタクト部材(6)は、前記相手側プラグコネクタ(30)の少なくとも2つの前記相手側コンタクト部材のうち1つの相手側コンタクト部材に、電気的および機械的に接触するように構成されており、
前記コンタクトチャンバ(4)内に取り込み可能な前記コンタクト部材(6)をロックするために、前記第1の平面(3)上にコンタクトロック部材(20)が配置されており、
前記コンタクトチャンバ(4)のうち少なくとも2つのコンタクトチャンバ(4)は、前記ハウジング(2)内で互いに分離されて形成されており、
少なくとも2つの互いに隣り合うコンタクトチャンバ(4)の間に、壁(7)が配置されており、該壁(7)は、前記差し込み方向(S)とは逆方向に見て、前記第1の平面(3)から突出しており、
かつ/または
前記第1の平面(3)内において、少なくとも2つの互いに隣り合うコンタクトチャンバ(4)の間に、少なくとも1つのノッチが配置されており
前記ハウジング(2)は外側の境界フェンス(8)を有し、前記境界フェンス(8)は、前記差し込み方向Sを中心とした少なくとも220゜の回転角(φ)に沿って、前記第1の平面(3)の周囲を取り囲んでおり、
前記壁(7)および/または少なくとも1つの前記ノッチは、前記差し込み方向(S)に対し垂直に半径方向(R)に沿って、前記境界フェンス(8)を貫通して案内されており、
回転方向(U)に沿って前記壁(7)の両側で、前記境界フェンス(8)と前記壁(7)との間に、それぞれ1つの切り欠き(9)が設けられている、
プラグコネクタ。
【請求項2】
前記壁(7)は前記第1の平面(3)を、少なくとも0.25mmだけ、または少なくとも0.5mmだけ、または少なくとも1mmだけ、または少なくとも1.5mmだけ、または少なくとも2mmだけ、突出しており、
かつ/または
少なくとも1つの前記ノッチは前記第1の平面(3)に関して、少なくとも0.25mm、または少なくとも0.5mm、または少なくとも1mm、または少なくとも1.5mm、または少なくとも2mmである深さを有する、
請求項1記載のプラグコネクタ。
【請求項3】
少なくとも2つの前記コンタクトチャンバ(4)のうち少なくとも2つのコンタクトチャンバ(4)内に、1つのコンタクト部材(6)が配置されている、
請求項1または2記載のプラグコネクタ。
【請求項4】
少なくとも2つの前記コンタクトチャンバ(4)は、前記差し込み方向(S)に沿って見て、前記ハウジング(2)を通る貫通開口部として形成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のプラグコネクタ。
【請求項5】
前記壁(7)は少なくとも、隣り合う前記開口部(5)の長さ(L1、L2)のオーバラップ長(L)に沿って延在している、
請求項1から4までのいずれか1項記載のプラグコネクタ。
【請求項6】
前記境界フェンス(8)は、前記第1の平面(3)から前記差し込み方向(S)とは逆方向に、少なくとも0.25mmだけ、または少なくとも0.5mmだけ、または少なくとも1mmだけ、または少なくとも1.5mmだけ、または少なくとも2mmだけ、突出している
請求項1から5までのいずれか1項記載のプラグコネクタ。
【請求項7】
2つの前記切り欠き(9)が、前記差し込み方向(S)に沿って見て少なくとも、前記ハウジング(2)の前記第1の平面(3)から、前記第1の平面(3)とは反対側の前記ハウジング(2)の第2の平面(10)まで、延在している、
請求項1から6までのいずれか1項記載のプラグコネクタ。
【請求項8】
前記コンタクトロック部材(20)は、前記第1の平面(3)において前記差し込み方向(S)に対し垂直に、第1の位置から第2の位置へと変位可能であり、
前記コンタクト部材(6)は、前記コンタクトロック部材(20)の前記第2の位置において、前記差し込み方向(S)とは逆方向に前記コンタクトチャンバ(4)から離脱しないよう、前記コンタクトロック部材(20)により阻止されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載のプラグコネクタ。
【請求項9】
前記コンタクトロック部材(20)は係合機構(21)を有し、
前記壁(7)および/または少なくとも1つの前記ノッチは、前記差し込み方向(S)とは逆の方向を指す端面(11)の上に、前記係合機構(21)に対し相補的な構造(12)を有し、該構造(12)内で前記係合機構(21)は係合可能である、
請求項8記載のプラグコネクタ。
【請求項10】
前記コンタクトロック部材(20)は、1つの基体(22)から突出した2つのアーム(23)を有し、該アーム(23)は、該アーム(23)の延在方向に対し垂直に、前記差し込み方向(S)と交差する前記壁(7)の幅(B)よりも広い間隔(D)を互いに有し、
両方の前記アーム(23)は、前記コンタクトロック部材(20)が挿入された状態で、前記壁(7)の両側に延在している
請求項9記載のプラグコネクタ。
【請求項11】
前記係合機構(21)は、前記壁(7)の両側に延在する両方の前記アーム(23)と接続されており、
前記係合機構(21)は、両方の前記アーム(23)を該アーム(23)の自由端のところで、接続部材(25)を用いて接続しており、
該接続部材(25)は、前記差し込み方向(S)とは逆方向に見て、前記壁(7)に跨がっている、
請求項10記載のプラグコネクタ。
【請求項12】
電気的なプラグコネクタ装置であって、当該プラグコネクタ装置は、
請求項1から11までのいずれか1項記載のプラグコネクタ(1)と、
少なくとも2つの相手側コンタクト部材(31)を備えた相手側プラグコネクタ(30)と
を有し、前記プラグコネクタ(1)は、差し込み方向(S)に沿って前記相手側プラグコネクタ(30)と差し込み結合され、電気的に接触されている、
電気的なプラグコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側プラグコネクタに嵌め込む、または相手側プラグコネクタ内に挿入する、電気的プラグコネクタ、およびかかるプラグコネクタを備えたプラグコネクタ装置に関する。
【0002】
従来技術
従来技術から、相手側プラグコネクタに嵌め込む、または相手側プラグコネクタ内に挿入する、電気的プラグコネクタは公知である。
【0003】
かかるプラグコネクタを大電流用途に適用する場合、プラグコネクタは通常、少なくとも2つのコンタクト部材を有し、これらのコンタクト部材は、機械的かつ電気的に、相手側プラグコネクタにおける2つの相手側コンタクト部材と接触させられた状態に置かれる。相手側コンタクト部材を、たとえばコンタクトブレードまたはコンタクトピンとして構成することができる。プラグコネクタと相手側プラグコネクタとから成るシステムを、プラグコネクタ装置と称することができる。
【0004】
大電流用途において、かかるプラグコネクタ装置内でプラグコネクタと相手側プラグコネクタとの間で伝送される大電流の場合にはまさに、大電流が案内される複数のコンタクト部材(いわゆる"Power Terminals" 電力端子)および複数の相手側コンタクト部材(いわゆる"Power Pin" 電力ピン)が持続的に互いに絶縁されている、ということが重要である。また、電圧が印加されたときに、隣り合うコンタクト部材同士の短絡を必ず回避しなければならず、その理由は、大電流によって短絡時にプラグコネクタ装置において損傷が発生するおそれがあるからである。例を挙げると、浸入した液体によって、たとえば水もしくはごく一般的には導電性液状媒体によって、かかる短絡が引き起こされる可能性がある。所属するコンタクトチャンバ内にうまく確実に固定されておらず、ぐらぐらとしているコンタクト部材も、短絡を引き起こすリスクとなる可能性がある。
【0005】
水もしくはごく一般的には導電性液状媒体による短絡を回避できるようにする目的で、水がプラグコネクタ装置内に浸入するのを阻止するシールを設けることができる。つまりたとえば、シングルワイヤシールまたはシーリングマットを設けることができ、あるいはプラグコネクタと相手側プラグコネクタとの間にラジアルシールを設けることができる。プラグコネクタをたとえば「雌」型として、相手側プラグコネクタを「雄」型として、構成することができる。
【0006】
独国特許出願公開第102014216281号明細書から、大電流用途のためのプラグコネクタ装置が公知であり、この場合、プラグコネクタと相手側プラグコネクタとの間のラジアルシールによって、水の浸入を防止しようとしている。
【0007】
発明の開示
本発明は、シール部材による良好な封止にもかかわらず、水もしくはごく一般的には導電性液状媒体がプラグコネクタ装置内に浸入するに至る可能性がある、という認識から出発している。例を挙げると、シールが老化しているかもしれないし、またはシールが損傷しているかもしれない。
【0008】
所属するコンタクトチャンバ内にうまく確実に固定されておらず、ぐらぐらとしているコンタクト部材も、短絡を引き起こすリスクとなる可能性があることから、コンタクト部材を、たとえば差し込み方向と交差する方向で変位可能なコンタクトロック部材により、コンタクトチャンバ内でロックすることが、つまりたとえば差し込み方向とは逆方向に意図することなくコンタクトチャンバから離脱しないよう確実に固定することが必要とされるかもしれない。
【0009】
たとえば10Aよりも大きい、50Aよりも大きい、100Aよりも大きい、またはそれどころか400Aよりも大きい電流、および/または48Vよりも高い、450Vよりも高い、またはそれどころか1000Vよりも高い電圧が用いられる場合、短絡は、たとえばその際に生じる熱の発生などにより、プラグコネクタ装置にとっては大きなリスクとなる可能性がある。このことは、1mm(平方ミリメートル)よりも広い、5mmよりも広い、または16mmよりも広い、またはそれどころか100mmよりも広い値になり得る、広い導体断面積の場合にも、当てはまる。
【0010】
したがって、以下のようなプラグコネクタを提供する、という要求が存在していると言えよう。すなわちこのプラグコネクタは一方では、大電流を案内するコンタクト部材をそれらのコンタクトチャンバに信頼性を伴って確実に固定する目的で、コンタクトロックシステムを有し、かつこのプラグコネクタは、浸入した水もしくはごく一般的には浸入した導電性液状媒体によって、コンタクト部材間に、もしくはプラグコネクタ装置内で相手側コンタクト部材間に、短絡経路が形成されるのを防止するように構成されている。特に、互いに隣り合うコンタクト部材間において短絡経路が阻止されるのが望ましく、それというのもこの場合には短絡を発生させるのに、水から形成されたごく短い区間で十分だからである。
【0011】
発明の利点
独立請求項記載の本発明の保護対象によって、上述の要求を満たすことができる。従属請求項には、本発明の有利な実施形態が記載されている。
【0012】
本願において、「含む」および「有する」という表現は、別途明示的に言及されない限り、同義語として用いられる。
【0013】
プラグコネクタは、特に少なくとも部分的に大電流を伝送するために形成されている電気的なプラグコネクタである。
【0014】
本発明の第1の態様によれば、差し込み方向に沿って相手側プラグコネクタに嵌め込むための、または相手側プラグコネクタ内に挿入するための、プラグコネクタが提案され、この場合、相手側プラグコネクタは、少なくとも2つの相手側コンタクト部材を有する。
【0015】
プラグコネクタは、差し込み方向に向けられている第1の平面を備えたハウジングを有する。ハウジングは少なくとも2つのコンタクトチャンバを有し、これらのコンタクトチャンバの各々が第1の平面に開口部を有する。この場合、各コンタクトチャンバは、コンタクト部材を収容するように構成されており、このコンタクト部材は、相手側プラグコネクタの少なくとも2つの相手側コンタクト部材のうちの1つを、電気的および機械的に接触するように構成されている。第1の平面上には、コンタクトチャンバ内に取り込み可能なコンタクト部材をロックするために、コンタクトロック部材が配置されている。ハウジング内におけるコンタクトチャンバのうち少なくとも2つのコンタクトチャンバは、互いに分離されて形成されている。この場合、互いに隣り合う少なくとも2つのコンタクトチャンバの間に、差し込み方向とは逆方向に見て第1の平面から突出した壁が配置されている、というように構成されている。
【0016】
別の選択肢として、またはこれに加えて、第1の平面において互いに隣り合う少なくとも2つのコンタクトチャンバの間に、少なくとも1つのノッチが配置されている。
【0017】
換言すれば、壁および/または少なくとも1つのノッチが、隣り合うコンタクトチャンバに属する開口部の間において第1の平面内に配置されている。隣り合うコンタクトチャンバを、すぐに隣り合うコンタクトチャンバとすることができる。
【0018】
これにより有利には以下のことがもたらされる。すなわち一方では、コンタクトチャンバ内に取り込み可能なコンタクト部材の確実なロックを、コンタクトロック部材により保証することができる。これと同時に、場合によっては第1の平面まで到達する液体たとえば水が、第1の平面に沿って短絡経路を形成するのが、著しく困難になり、またはまったく不可能になる。なぜならば、壁および/または少なくとも1つのノッチによって水がダクト状に迂回させられ、1つの開口部もしくはコンタクトチャンバから隣り合う開口部もしくはコンタクトチャンバへ、水がじかに流れるのが防止されるからである。したがって壁および/または少なくとも1つのノッチによって、第1の平面の周縁部まで水を案内することができ、そこにおいて水を流出させることができる。別の選択肢として、互いに分離されたコンタクトチャンバ内に水がそれぞれ別々に流れ、そのようにしても特に第1の平面上では、コンタクト部材同士の短絡が防止されている。
【0019】
万が一、大量の水が浸入したならば、第1の平面に沿った短絡経路の形成が、壁および/または少なくとも1つのノッチによって少なくとも遅らされる。なぜならば、水はそのままコンタクトチャンバ間の最短経路を辿って流れることはできないからである。このケースではたとえば、プラグコネクタ内またはプラグコネクタを含むプラグコネクタ装置内に付加的に配置されたセンサが、浸入した水を検出することができる。これに基づいて、コンタクト部材の短絡に至る前に、大電流接続部の電流を遮ることができる。かかるセンサ、たとえば水センサ、たとえば抵抗センサとして形成されたものを、たとえば複数のコンタクトチャンバのうち少なくとも1つのコンタクトチャンバ内に、または複数のコンタクトチャンバのうち1つのコンタクトチャンバの近くに、配置することができる。規定された湿度レベルまたは水位が検出されると、センサはたとえば信号を制御部に伝達することができ、次いで制御部はコンタクト部材における電流の流れを遮る。
【0020】
壁および/または少なくとも1つのノッチは有利には、あらゆる取り付け位置において、隣り合うコンタクトチャンバ間の最短経路を辿って水が流れるのがこれによって防止されるように、構成されている。つまりたとえば、差し込み方向が重力方向を指す取り付け位置において、または差し込み方向が挿入方向に対し垂直な方向を指す取り付け位置において、またはこれらの位置の間のすべての角度においてである。重力方向に関して90°よりも大きく旋回させられている差し込み方向の1つの方向においても、壁および/または少なくとも1つのノッチを、一種の遮蔽部材または付着防止バリアもしくはクリープ防止バリアとして、浸入した水がそのまま最短経路を辿って、2つの隣り合うコンタクトチャンバを、またはさらに互いに離間されたコンタクトチャンバも、互いに結び付けてしまうことに、役立たせることができる。
【0021】
第1の平面に沿って、複数のコンタクトチャンバのうち少なくとも2つのコンタクトチャンバを、もしくはそれらの開口部を、互いに結び付ける1つの経路が定められているように、第1の平面を構成することができる。換言すれば、ハウジングを、互いに別個のコンタクトチャンバを備えた1つのブロックと見なすことはできず、この場合にはこのブロックに、単に想定されたもしくは仮想の平面が置かれるに過ぎない。
【0022】
コンタクトチャンバを、ハウジング内部に、つまり第1の平面内の開口部の下方に、完全に互いに分離して形成することができる。このためこれらのコンタクトチャンバをそれぞれ、それ自体1つの別個のコンタクトチャンバとして形成することができる。したがってこれらのコンタクトチャンバは、差し込み方向に対し垂直な方向で互いに離間されている。このことは、コンタクトチャンバに属する開口部についても当てはまる。
【0023】
第1の平面上で、互いに隣り合うすべてのコンタクトチャンバの間に、それぞれ1つの壁が設けられており、かつ/または第1の平面内に少なくとも1つのノッチが設けられている、というように構成することができる。これらの壁およびノッチを、これらがコンタクトロック部材の変位を妨げないように、形成することができる。
【0024】
自明のとおり、射出成形プロセスにより形成される射出スキン層は通常、本発明の趣旨においては壁と見なすことはできない。
【0025】
コンタクトチャンバをたとえば、差し込み方向に対し垂直な方向で一列に配置することができる。2つよりも多くの、またはそれどころか3つよりも多くのコンタクトチャンバが設けられているならば、これらのコンタクトチャンバを一種のマトリックスアレイとして、つまりそれぞれ差し込み方向に対し垂直な行と列とに沿って、ハウジング内に形成することもできる。
【0026】
コンタクトロック部材を、たとえば単一のコンタクトロック部材とすることができる。換言すれば、プラグコネクタ内には、単一のコンタクトロック部材だけしか設けられていない。この単一のコンタクトロック部材を用いてたとえば、コンタクトチャンバ内に取り込み可能なすべてのコンタクト部材を同時に確実に固定することができる。これによって組み立てプロセスが有利には単純化される。
【0027】
コンタクトロック部材を、たとえば第1の平面に沿って変位可能なものとすることができ、コンタクトチャンバの開口部を完全に開放することができるか、または少なくとも部分的に覆うことができる。この目的でコンタクトロック部材を、たとえば差し込み方向に対し垂直な挿入方向に沿って、第1の平面伝いにずらすことができ、もしくは変位させることができる。
【0028】
相手側プラグコネクタは少なくとも2つの相手側コンタクト部材を有し、これらの相手側コンタクト部材を、たとえばコンタクトブレードまたはコンタクトピンとして形成することができ、これらはたとえば、少なくとも10Aまたは少なくとも50Aの大電流を、特に少なくとも12Vまたは少なくとも45Vまたは少なくとも100Vの電圧で、伝送するために形成されている。相手側コンタクト部材はこの目的でたとえば、少なくとも2mm、または少なくとも5mm、または少なくとも10mm、または少なくとも20mmm、または少なくとも50mmの、たとえば6mmまたは50mmまたは90mmの、対応するコンタクト部材のための断面またはコンタクト面を有することができる。
【0029】
これに応じてコンタクト部材は、同様に大電流を案内するように形成されている。たとえばコンタクト部材は、相手側コンタクト部材に嵌め込まれるように形成されている。
【0030】
プラグコネクタもしくはコンタクト部材を、たとえば「雌」型プラグ部材として形成することができ、相手側プラグコネクタもしくは相手側コンタクト部材を、「雄」型として形成することができる。
【0031】
隣り合うコンタクトチャンバ間において第1の平面上に壁が設けられているケースにおいて、この壁が第1の平面から、少なくとも0.25mmだけ、または少なくとも0.5mmだけ、または少なくとも1mmだけ、または少なくとも1.5mmだけ、または少なくとも2mmだけ突出している、ということによって有利には、浸入する水は隣り合うコンタクトチャンバ間の最短経路を形成することができない、ということが保証される。
【0032】
壁は、たとえば少なくとも0.25mm、または少なくとも0.5mm、または少なくとも1mm、または少なくとも1.5mm、または少なくとも2mmである幅を有することができる。
【0033】
別の選択肢として、またはこれに加えて、以下のように構成することができる。すなわち、第1の平面上もしくは第1の平面内に少なくとも1つのノッチが設けられているケースにおいて、この少なくとも1つのノッチは第1の平面に関して、少なくとも0.25mm、または少なくとも0.5mm、または少なくとも1mm、または少なくとも1.5mm、または少なくとも2mmである深さを有する。これによって有利には、一種のダクトとして水の格別効果的な排出がもたらされ、もしくは格別効果的なクリープ防止バリアが形成される。
【0034】
少なくとも1つのノッチは、たとえば少なくとも0.25mm、または少なくとも0.5mm、または少なくとも1mm、または少なくとも1.5mm、または少なくとも2mmであるノッチ幅を有することができる。
【0035】
1つの発展形態によれば、少なくとも2つのコンタクトチャンバのうち少なくとも2つのコンタクトチャンバ内に、1つのコンタクト部材が配置されている、というように構成されている。
【0036】
かくして壁および/または少なくとも1つのノッチによって有利には、浸入した水による2つのコンタクト部材同士の短絡が阻止される。
【0037】
2つのコンタクトチャンバだけしか設けられていなければ、それに従い両方のコンタクトチャンバにコンタクト部材が装着されている。しかしながら2つよりも多くのコンタクトチャンバの場合であれば、プラグコネクタがモジュール式システムのために用いられ、適用事例に応じて厳密に2つだけの、2つよりも多くの、またはそれどころかすべてのコンタクトチャンバにコンタクト部材が装着されている、ということが起こり得る。すべてのコンタクトチャンバには装着が行われていないケースであるならば、少なくともすぐに隣り合っている占有されたコンタクトチャンバの間に、壁および/または少なくとも1つのノッチが形成されている。
【0038】
少なくとも2つのコンタクトチャンバが、差し込み方向に沿って見てハウジングを通り抜ける貫通開口部として形成されていることによって、有利には、第1の平面まで浸入した水を、この貫通開口部を通して流出させることができ、ハウジングひいては第1の平面から遠ざけることができる、ということがもたらされる。
【0039】
壁は少なくとも、隣り合う開口部の長さのオーバラップ長に沿って延在している、ということによって有利には、差し込み方向に対し垂直な方向に沿った開口部の投影のオーバラップ領域に沿って、開口部間ひいてはコンタクトチャンバ間の投影方向に沿ったダイレクトな接続経路は存在しない、ということがもたらされる。投影方向をたとえば、隣り合うコンタクトチャンバ間もしくはそれらの開口部間の最短接続区間に沿って、生じさせることができる。このようにすることで、浸入した水が1つのコンタクトチャンバから隣り合うコンタクトチャンバ内に流れるのが、信頼性を伴って妨げられ、ひいては短い短絡経路も阻止される。壁は特に有利には、途切れることなく少なくとも投影長に沿って延在している。
【0040】
1つの発展形態によれば、ハウジングは外側の境界フェンスを有し、これは第1の平面の周囲を取り囲み、差し込み方向とは逆方向に第1の平面を越えて突出している、というように構成されている。その際に境界フェンスは第1の平面の周囲を、差し込み方向を中心とした少なくとも220°の回転角に沿って取り囲んでいる。壁および/または少なくとも1つのノッチは、差し込み方向に対し垂直な半径方向に沿って、境界フェンスを貫通して案内されている。回転方向に沿って壁の両側で境界フェンスと壁との間に、それぞれ1つの切り欠きが設けられている。換言すれば、壁と境界フェンスとの間に流出開口部が設けられている。これにより有利には、壁および/または少なくとも1つのノッチを通って境界フェンスつまり第1の平面の周縁部まで案内されてきた水を、切り欠きを通して第1の平面から流出させ、たとえばハウジングの外面伝いに流し出すことができる。このようにして有利には、境界フェンス内に水がたくさん溜まるのが回避される。
【0041】
境界フェンスを、たとえば少なくとも0.25mmだけ、または少なくとも0.5mmだけ、または少なくとも1mmだけ、または少なくとも1.5mmだけ、または少なくとも2mmだけ、第1の平面を越えて突出させることができ、すなわち差し込み方向とは逆方向に第1の平面から外に向けて突出させることができる。
【0042】
自明のとおり、境界フェンスがなければ、水は難なく第1の平面の周縁部を越えた後に、ハウジングの外面に流出する可能性がある。
【0043】
1つの発展形態によれば、2つの切り欠きが、差し込み方向に沿って見て少なくとも、ハウジングの第1の平面から、この第1の平面とは反対側のハウジングの第2の平面まで、延在している、というように構成されている。換言すれば、これらの切り欠きはそれぞれ、第1の平面と第2の平面との間において、一種のノッチとしてハウジングの外面に形成されている。かくしてこれらの切り欠きは有利には、一種の「雨樋」として、もしくは規定された流路として、もしくはたとえば水などの液体の流れを補助するものとして、ハウジングの外面に沿って作用する。たとえば、第2の平面において切り欠きの領域に、たとえば水などの液体を検出するためのセンサを配置することができ、このセンサは、液体が検出されたときに、場合によっては電流の流れを遮る。その際に切り欠きの形態によってもたらされるのは、かかるセンサに向かって所期のように液体を導くことができる、ということである。
【0044】
コンタクトロック部材は、第1の平面において差し込み方向に対し垂直に、第1の位置から第2の位置へと変位可能であり、その際にコンタクト部材は、コンタクトロック部材の第2の位置において、差し込み方向とは逆方向にコンタクトチャンバから離脱しないよう、コンタクトロック部材により阻止されている、ということによって有利には、動作中のコンタクト部材同士の短絡が防止されている、ということがもたらされる。しかも、動作中、コンタクト部材が所属の接触された相手側コンタクト部材から離脱する、ということが防止される。大電流を伝送する場合には、かかるケースにおいて、たとえばコンタクト部材および/または相手側コンタクト部材の不所望な損傷が、たとえばアークなどによって引き起こされる可能性がある。
【0045】
コンタクトロック部材の第1の位置では、コンタクト部材をコンタクトチャンバに取り込み可能およびコンタクトチャンバから取り出し可能にすることができる。
【0046】
この場合、たとえば組み立ての目的および/または分解の目的で、コンタクトロック部材を第1の位置と第2の位置との間で繰り返しどちらにでも移動可能である、というように構成することができる。
【0047】
1つの発展形態によれば、コンタクトロック部材は係合機構を有する、というように構成されている。壁および/または少なくとも1つのノッチは、差し込み方向とは逆の方向を指す端面上に、係合機構に対し相補的な構造を有し、そこにおいて係合機構を係合させることができる。これにより有利には以下のことがもたらされる。すなわち、組み立て時に、係合の触覚的信号によって、コンタクトロックが第1の位置に動かされたのか第2の位置に動かされたのか、および第1の位置または第2の位置に動かされた、ということを特定することができる。これと同時にこのようにして、コンタクトロック部材の第1の位置または第2の位置が、意図せずに変わってしまわないよう保護される。
【0048】
壁の端面上に配置することによってさらに有利には、第1の平面に沿った液体の流れが係合機構によっても損なわれない、もしくは流れの向きが変えられることがない、ということがもたらされる。
【0049】
1つの発展形態によれば、コンタクトロック部材は、1つの基体から突出した2つのアームを有し、これらのアームは、それらの延在方向に対し垂直に、差し込み方向と交差する壁の幅よりも広い間隔を互いに有する、というように構成されている。これら両方のアームは、コンタクトロック部材が挿入された状態で、壁の両側に延在している。
【0050】
この場合、アーム同士の間隔をたとえば、最大で1mmだけ、または最大で0.2mmだけ、壁の幅よりも広くすることができる。
【0051】
これによって有利には、壁は液体に対するその分離機能に加え、コンタクトロック部材に対するガイド機能もさらに有する。これによって、コンタクトロック部材の適正な押し込みが促進され、ひいてはコンタクトチャンバ内に装着されたコンタクト部材の確実で信頼性のあるロックも促進される。したがって壁によって、プラグコネクタが短絡に対し特に良好に保護されており、すなわち一方ではコンタクトロック部材を用いることで意図せず離脱することに対し、他方では浸入した水による短絡経路に対し保護される、ということがもたらされる。
【0052】
アームにおいてたとえば基体の近くに、アームの延在方向と交差してアームから突出する突出部を配置することができる。これによって、コンタクトロック部材の第1の位置では突出部が対応する開口部を覆わず、第2の位置では開口部を少なくとも部分的に覆う、ということをもたらすことができる。このようにして突出部は一種のアンダーカットを成すことができ、これによってコンタクト部材が差し込み方向とは逆方向に出てくるように動くのが阻止される。
【0053】
自明のとおり、コンタクトロック部材において、複数の開口部に対し、または開口部各々に対し、つまり複数のコンタクトチャンバに対し、またはコンタクトチャンバ各々に対し、1つのアームまたは2つのアームを設けることができる。これらのアームをすべて、基体に配置することができる。
【0054】
コンタクトロック部材を、基本的にこれとは異なるように形成することもでき、つまり直線状のアームなしで構成することもできる。
【0055】
結局のところ、壁およびその側方で延在する2つのアームによって、誤ったコンタクトロック部材がプラグコネクタ内に押し込まれるのを阻止する、一種のポカヨケソリューションがもたらされる。このことは組み立てにおいて重要であり、その目的は、複数の個別部分から構築されるプラグコネクタが適正に組み立てられており、その機能を、この場合にはつまりたとえばコンタクトチャンバ内に挿入されたコンタクト部材の保護を果たすことができる、ということを保証するためである。
【0056】
1つの発展形態によれば、係合機構は、壁の両側に延在する両方のアームと接続されている。係合機構は、これら両方のアームをその自由端で接続部材を用いて接続している。接続部材は、挿入方向とは逆方向に見て壁に跨がっている。これによって有利には、一方では係合機構が安定化されて、機械的な負荷に対しロバストに形成される。これと同時に、互いに接続された両方のアームが安定化される。これらのアームは、たとえばコンタクトロック部材を斜めに押し込んだことなどによりアームが損傷することに対し、いっそう良好に耐えることができる。このようにすれば、前述のポカヨケソリューションがさらに改善される。しかも、係合機構が壁の端面から滑り落ちることが防止される。
【0057】
1つよりも多くの壁が設けられているならば、1つの壁において端面上に1つの係合機構を設けるだけで十分であると言える。ただしその場合に、複数の係合機構も想定可能である。
【0058】
本発明の第2の態様によれば、電気的なプラグコネクタ装置が提案される。
【0059】
この電気的なプラグコネクタ装置は、
これまで述べてきたようなプラグコネクタと、
少なくとも2つの相手側コンタクト部材を備えた相手側プラグコネクタと
を有する。この場合、プラグコネクタは、差し込み方向に沿って相手側プラグコネクタと差し込み結合され、電気的に接触される。
【0060】
相手側コンタクト部材を、たとえばコンタクトブレードまたはコンタクトピンとして構成することができる。基本的に、配線板上のコンタクト面(いわゆる「ランド」)であってもよい。
【0061】
提案されたプラグコネクタ装置は有利には、コンタクト部材がコンタクトチャンバから離脱することが、好ましくは単一のコンタクトロック部材を用いることで防止されるようにして、短絡に対し特に良好に保護される点で優れている。これと同時に、プラグコネクタ装置内に浸入した水による短絡が、隣り合うコンタクトチャンバ間および/またはコンタクト部材間の短い短絡経路の阻止によって防止される。
【0062】
本発明のさらなる特徴および利点は、例示的な実施形態の以下の説明から、ただしそれらの実施形態は本発明を限定するものとして解釈されるべきではないが、添付の図面を参照すれば、当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1a】プラグコネクタ装置を分解した状態で表した斜視図である。
図1b図1aによるプラグコネクタ装置のプラグコネクタを組み立てられた状態で示す図である。
図1c図1aによる相手側プラグコネクタを示す図である。
図2図1aによるプラグコネクタのハウジングを示す図である。
図3a図2によるプラグコネクタのハウジングをコンタクトロック部材と共に示す図である。
図3b】コンタクトロック部材を2つの異なる位置で示す詳細図である。
図3c】コンタクトロック部材を2つの異なる位置で示す詳細図である。
図4a】差し込み方向が重力方向と一致する取り付け位置でプラグコネクタ装置を見た種々の様子を示す図である。
図4b】差し込み方向が重力方向と一致する取り付け位置でプラグコネクタ装置を見た種々の様子を示す図である。
図4c】差し込み方向が重力方向と一致する取り付け位置でプラグコネクタ装置を見た種々の様子を示す図である。
図5a】差し込み方向が重力方向に対し約80°傾けられた取り付け位置でプラグコネクタ装置を見た種々の様子を示す図である。
図5b】差し込み方向が重力方向に対し約80°傾けられた取り付け位置でプラグコネクタ装置を見た種々の様子を示す図である。
図6a】差し込み方向が重力方向に対し約90°傾けられ、かつ第1の平面における壁が重力方向を指す取り付け位置で、プラグコネクタ装置を見た種々の様子を示す図である。
図6b】差し込み方向が重力方向に対し約90°傾けられ、かつ第1の平面における壁が重力方向を指す取り付け位置で、プラグコネクタ装置を見た種々の様子を示す図である。
図6c】差し込み方向が重力方向に対し約90°傾けられ、かつ第1の平面における壁が重力方向を指す取り付け位置で、プラグコネクタ装置を見た種々の様子を示す図である。
【0064】
図1aには、プラグコネクタ装置100を分解した状態で表した斜視図が示されている。プラグコネクタ装置100は、
・プラグコネクタ1と、
・少なくとも2つの相手側コンタクト部材(31、図1cを参照)を備えた相手側プラグコネクタ30と
を有し、その際にプラグコネクタ1は、差し込み方向Sに沿って相手側プラグコネクタ30と差し込み結合され、電気的に接触可能である。この図では、差し込み方向Sは重力方向gと一致している。
【0065】
プラグコネクタ1は、差し込み方向Sに沿って、相手側プラグコネクタ30に嵌め込むように、または相手側プラグコネクタ30内に挿入するように、構成されている。プラグコネクタ1は、差し込み方向Sに向けられている第1の平面3を備えたハウジング2を有する。第1の平面3は実質的に、角が丸くされた矩形の形状を有する。
【0066】
この図面および以降の図面において向きをわかりやすく説明するために、軸X、Y、Zを有するデカルト座標系が書き込まれている。この場合に差し込み方向Sは、この座標系の方向Zに対し逆方向に延びている。プラグコネクタ装置100に対し相対的に、特にハウジング2の第1の平面3に対し相対的に描かれた座標系の向きであれば、X方向を幅方向と、Y方向を長さ方向と、称することもできる。
【0067】
ハウジング2の上に外側ハウジング51が取り付けられ、その際にハウジング2と外側ハウジング51との間には、一例に過ぎないがラジアルシール50が取り付けられており、このラジアルシール50によって、水もしくはごく一般的には導電性液状媒体がプラグコネクタ1の外側領域から第1の平面3に浸入するのを防止しようとしている。
【0068】
外側ハウジング51にレバー52を配置することができ、このレバー52は、プラグコネクタ1と相手側プラグコネクタ30とが差し込み結合されたときに、歯形部材52aによって相手側プラグコネクタ30における歯付きラック36と噛合可能であり、これによりレバー52を旋回させることで、プラグコネクタ1を相手側プラグコネクタ30に引き寄せることができる。
【0069】
ハウジング2は少なくとも2つのコンタクトチャンバ4を有し、これらのコンタクトチャンバ4の各々が第1の平面3に開口部5を有する。図示の実施例の場合、厳密に2つのコンタクトチャンバ4が設けられている。各コンタクトチャンバ4は、コンタクト部材6を収容するように構成されている。各コンタクト部材6は、相手側プラグコネクタ30の少なくとも2つの相手側コンタクト部材31のうちの1つを、電気的および機械的に接触するように構成されている。各コンタクト部材6は導体55と電気的および機械的に接続されており、この導体55は、導電性コア(線材または撚り線束)の周囲に絶縁材を有する。導体55各々には、導体の延在方向に沿って互いに離間された複数のシールフィンを備えたシングルワイヤシール56を設けることができる。
【0070】
第1の平面3の上には、コンタクトチャンバ4内に取り込み可能なコンタクト部材6をロックするために、コンタクトロック部材20が配置されている。コンタクトロック部材20は、側方から押し込み方向Eに沿って、つまり差し込み方向Sと交差する方向で、プラグコネクタ1内に押し込み可能もしくは変位可能である。このことは、この部材を差し込み方向Sとは交差する方向で、第1の平面3の上方もしくは第1の平面3の上で変位させることができる、ということを意味する。この部材は、押し込み方向Eに対し垂直な1つの面に、コンタクトロック部材口板18を有し、これはコンタクトロック部材20が挿入された状態において、差し込み方向Sとは逆方向に第1の平面3を越えて突出するように延在している。
【0071】
この実施例の場合、ハウジング2は、一例に過ぎないが外側の境界フェンス8を有し、これは第1の平面3の周囲を取り囲み、もしくは第1の平面3の区切りを成しており、差し込み方向Sとは逆方向に第1の平面3を越えて突出している。
【0072】
2つのコンタクトチャンバ4は、ハウジング2内で互いに分離されて形成されている。
【0073】
図示の実施例の場合、互いに隣り合う2つのコンタクトチャンバ4の間に、差し込み方向Sとは逆方向に見て第1の平面3から突出した壁7が配置されている。このようにして、第1の平面3に沿って両方の開口部5同士が直接的につながるのが阻止されている。これによって、ラジアルシール50およびシングルワイヤシール56があるにもかかわらず、場合によっては第1の平面3まで到達する液体が、最短経路を辿って、または単に1つの短い経路を辿ってさえも、開口部5から隣り合う他の開口部5へと流れる可能性がなく、このことからコンタクト部材6同士もしくは相手側コンタクト部材31同士の短絡が信頼性を伴って防止される。
【0074】
別の選択肢として、またはこれに加えて、第1の平面3において互いに隣り合う2つのコンタクトチャンバ4の間に、少なくとも1つのノッチを配置することができ、たとえば壁7の各面にそれぞれ1つのノッチを配置することができる。図示の実施例にはこれらのノッチは描かれていない。壁7の代わりに、少なくとも1つのノッチを形成することもできる。このようにした場合には、第1の平面3を特に平坦に形成することができ、コンタクトロック部材20を特に妨げるものなく第1の平面3の上方で動かすことができる。
【0075】
ハウジング2はこの場合には付加的にさらに、信号コンタクト開口部61をその下に位置する信号コンタクトチャンバと共に有する。これらの信号コンタクトチャンバは、信号コンタクト57をそこに配置された導体と共に収容するように構成されている。
【0076】
この実施例の外側ハウジング51内には、コンタクト部材6のための2つの挿入開口部53、ならびに信号コンタクト57のための6つの信号コンタクト挿入開口部54が設けられている。
【0077】
コンタクト部材6は、少なくとも10A、好ましくは少なくとも20Aまたは少なくとも50A、好ましくは少なくとも100Aの電流を搬送するように構成されている。これらのコンタクト部材6の寸法をこれに応じて選定することができ、たとえば少なくとも2mm、または少なくとも5mm、または少なくとも10mm、好ましくは少なくとも20mmの、相手側コンタクト部材に対するコンタクト面を有することができる。
【0078】
これに対し、信号コンタクトの寸法をたとえばこれよりも小さくすることができる。信号コンタクトにはたとえば信号電圧が加わり、これはたとえば0V~5Vであって、たとえば3Aよりも小さい、好ましくは1Aよりも小さい、特に好ましくは少なくとも300mAよりも小さい、僅かな信号電流しか流れない。たとえば液体によって、たとえば水または尿素溶液またはブレーキ液などによって、信号コンタクト同士で引き起こされる短絡は、たしかにやはり有利ではないけれども、電流を案内するコンタクト部材6同士の短絡に比べれば、これによってもはるかに僅かな電力しか伝送されない。
【0079】
図1bには、図1aによるプラグコネクタ1が組み立てられた状態で示されている。ここではハウジング2は、外側ハウジング51の内側に配置されており、この図では見ることができない。プラグコネクタ1は2つのコンタクト部材6を有し、これらのコンタクト部材6の2つの導体55を見分けることができ、さらにプラグコネクタ1は6つの信号コンタクト部材57をそれらの導体と共に有する。
【0080】
図1cには、この図を見る側に向けられた斜視図として相手側プラグコネクタ30を上から見た様子が示されている。コンタクトブレードとして形成された2つの相手側コンタクト部材を、良好に見分けることができる。両方の相手側コンタクト部材31の間に、接触保護部材32が配置されている。相手側コンタクト部材31から空間的に分離されて、ピンとして形成された6つの信号コンタクト部材34から成るマトリックスが配置されている。基本的に、コンタクトブレードとして形成された相手側コンタクト部材31を、たとえばピンとして、またはそれどころか導体路のコンタクト面として、形成することもできる。
【0081】
図2には、ハウジング2がコンタクトロック部材なしでさらに詳細に示されている。
【0082】
壁7は第1の平面3から、少なくとも0.25mmだけ、または少なくとも0.5mmだけ、または少なくとも1mmだけ、または少なくとも1.5mmだけ、または少なくとも2mmだけ、突出している。別の選択肢として、またはこれに加えて、隣り合う開口部5の間に少なくとも1つのノッチを形成するのが望ましい場合、このノッチは第1の平面3に関して所定の深さを有する。この深さをたとえば、少なくとも0.25mm、または少なくとも0.5mm、または少なくとも1mm、または少なくとも1.5mm、または少なくとも2mmとすることができる。壁7の幅Bもしくはノッチの幅をたとえば、少なくとも0.25mm、または少なくとも0.5mm、または少なくとも1mm、または少なくとも1.5mm、または少なくとも2mmとすることができる。
【0083】
かくして壁7は、液体に対する一種のガイド部材の役割を果たすことができ、ノッチは、一種の水路またはダクトとして、やはり液体に対するガイド部材の役割を果たすことができる。
【0084】
ハウジング2は、厳密に2つのコンタクトチャンバ4を有する。基本的に、2つよりも多くのコンタクトチャンバ4を設けることもでき、たとえば少なくとも3つまたは少なくとも4つのコンタクトチャンバ4を設けることもでき、たとえば5個、6個、7個、8個、9個、10個または14個または20個のコンタクトチャンバ4を設けることもできる。これらのコンタクトチャンバ4を、幅方向Xに沿って1つの列として互いに並べて配置することができる。ただしマトリックスアレイも想定可能であり、この場合にはたとえば、幅方向Xに沿って延在する複数の列が、長さ方向Yに関して互いに離間されている。
【0085】
同様に、たとえば以下のようなハウジング2を用意する目的で、1つまたは複数のコンタクトチャンバ4には装着が行われていない、ということもあり得る。すなわちこのハウジング2には、モジュール式構造のために、たとえばそのつど2つ、3つ、4つ、または5つのコンタクト部材6が装着され、ただしその際に装着が行われるポジションを、交換可能な相手側プラグコネクタ30次第でそれぞれ異ならせることができる。このような場合に、一例に過ぎないが6つのコンタクトチャンバ4を設けておくことができ、ただしこれらのコンタクトチャンバ4のうち、一例に過ぎないが2個または3個だけに、コンタクト部材6が装着されている。
【0086】
ハウジング2内に配置されたコンタクトチャンバ4はそれらの壁に、一例に過ぎないがそれぞれ少なくとも1つのアンダーカット13を有し、このアンダーカット13に、コンタクトチャンバ4内に挿入されたコンタクト部材6の係合突起を最初に係合させることができ、その後、コンタクト部材6が、ここには図示されていないコンタクトロック部材20により、最終的に自身のポジションに確実に固定される(つまり第2のロック)。
【0087】
両方のコンタクトチャンバ4は、図示の実施例の場合にはそれぞれほぼ同じ大きさを有し、したがってコンタクト部材6を同じ部材として製造することができる。第1の平面3に配置された開口部5はこの場合には、角が丸くされたほぼ矩形の断面を有する。この場合、長辺は、第1の開口部5(図中、左側の開口部)における第1の長さL1に沿って、および第2の開口部5における第2の長さL2(図中、右側の開口部)に沿って、延在している。これらの長辺は、ほぼ長さ方向Yに沿って延在している。隣り合う開口部の互いに向き合った両方の長辺を、差し込み方向Sに対し垂直でありかつ開口部5の長辺に対し垂直な方向Rに沿って投影すると(開口部間の最短距離)、オーバラップ長Lが生じる。この場合に壁7は、長さ方向Yに沿って少なくともこのオーバラップ長Lを辿って、両方の開口部5の間に延在している。図2からわかるように、壁はしかも開口部5の長さL1、L2を越えて開口部5の両側に突出している。これにより、第1の平面3に到達した液体が、一方の開口部5から他方の開口部5に最短距離でそのまま到達することはできない。これによって短絡が回避される。
【0088】
第1の平面3の境界フェンス8を、たとえば少なくとも0.25mmだけ、または少なくとも0.5mmだけ、または少なくとも1mmだけ、または少なくとも1.5mmだけ、または少なくとも2mmだけ、第1の平面3を越えて突出させることができる。境界フェンス8を、これがZ方向に沿ってその端面でプラグコネクタのラジアルシール50と共働し、そのようにして第1の平面3への液体の浸入を防止するように、構成することができる(このことはたとえば図4cから見分けられる)。
【0089】
境界フェンス8は、差し込み方向Sを中心とした少なくとも220°の回転角φ(ファイ)に沿って、第1の平面3の周囲を巡っており、もしくは第1の平面3の周囲を取り囲んでいる(このことを明確にする目的で、図2には差し込み方向Sが2重に書き込まれている)。第1の平面3がほぼ矩形の断面である図示の実施例の場合、第1の平面3の境界が3辺で囲まれている。すなわち、それらの2つの短辺において、第1の平面3の境界が完全に囲まれており、さらにそれらの1つの長辺(ここでは左を指す長辺)において、もっと後で説明する切れ目もしくは2つの切り欠き9を除いて、境界が囲まれている。この図において右後方を指す第1の平面の長辺には、境界フェンス8は設けられておらず、もしくは部分的にしか設けられていない。したがってこれにより結果として、この辺からコンタクトロック部材20がこの平面に装填され、コンタクトロック部材20を押し込み方向Eに沿って動かすための入口が形成されている。ハウジングにおいてこの場合に欠けている境界フェンス8は、コンタクトロック部材20のコンタクトロック部材口板18によって補われ(図1a、図3a~図3c、図4aを参照)、したがってコンタクトロック部材20が挿入されたときに、第1の平面3が原則的にそれでもやはり完全に境界フェンス8、18によって取り囲まれているようになる。
【0090】
ハウジング2および外側ハウジング51、ならびにこれらの間において第1の平面3の上に配置されたコンタクトロック部材20を備えた、プラグコネクタのこのような構成の利点は、このようにしてすべてのコンタクト部材6をコンタクトチャンバ4内でロックするために、単一のコンタクトロック部材20で十分である、ということにより表されている。ただし、場合によっては第1の平面3まで到達する液体たとえば水による短絡に対し、良好な保護を保証する目的で、隣り合うコンタクトチャンバ4の間に配置された壁7が設けられている。別の選択肢として、またはこれに加えて、少なくとも1つのノッチを設けることもでき、このノッチは、水路のように開口部5の間に延びており、水を排出させることができる。
【0091】
両方の切り欠き9が、差し込み方向Sに沿って見て少なくとも、ハウジング2の第1の平面3から、第1の平面3とは反対側のハウジング2の第2の平面10まで、延在している。これにより保証されるのは、壁7の両側から両方の切り欠き9を介して水が流出するならば、その場合にも液体経路を介したコンタクト部材6同士の短絡が阻止され、または遅らされる、ということである。それというのも、両方の切り欠き9は、ハウジング2の外面でも互いに別々に延びているからである。
【0092】
図示の実施例の場合、壁7は長さ方向Yに沿って、つまり差し込み方向Sに対し垂直な半径方向Rに沿って、境界フェンス8を貫通して案内されている。回転方向Uに沿って壁7の両側で境界フェンス8と壁7との間に、それぞれ1つの切り欠き9が設けられている。
【0093】
したがって、プラグコネクタ装置100が左側前方に向かって傾斜させられても、液体を第1の平面3から切り欠き9を通って流出させることができ、境界フェンス8の高さまで上昇する可能性がなく、これによりその場合には壁7を乗り越えることができない、ということが保証される。
【0094】
コンタクトチャンバ4は、ハウジング2内に接続部を有してない。これらのコンタクトチャンバ4は、ここではたとえばハウジング2を通る貫通開口部として形成されており、第2の平面10内においてこの図ではハウジング2の下端部のところで終端している。この場合にそこにおいて、プラグコネクタ1が相手側プラグコネクタ30と差し込み結合されたときに、相手側コンタクト部材31がコンタクトチャンバ4内に入ることができる。
【0095】
このように第1の平面3におけるコンタクトチャンバ4の開口部5は、互いに離間されているが、基本的には第1の平面3内の経路を介して互いに連通する可能性がある。かかる経路はたとえば、左側の開口部5から壁7に沿って信号コンタクト開口部61の後方まで延在し、そこにはコンタクトロック部材20が支承されている可能性があり、さらに壁7の周囲を回って右側の開口部5まで延在する。ただしこの経路は、壁7を横切って延在することになる最短経路よりも著しく長い。しかも、壁7によって長く延ばされたこのような経路が生じる前提として必要になるのは、液体が最初にある1つの方向に(たとえば後方に向かって僅かに傾斜させられたのであれば重力gに沿って)流れ、次いで壁7を回った後に上述の方向とは逆方向に、つまり今度は重力gに反して、流れなければならない、ということである。別の可能性としては、液体が壁7の高さ(または別の可能性としてはノッチの溝の深さ)を乗り越えてから、液体が第1の平面3を越えて流れ出て、その後、ハウジング2の外壁を伝って流出するように、たとえば左側に向かう傾斜が大きなものでなければならない。かくして壁7によって、以下の可能性が高められる。すなわち、たとえば前方に傾斜させられた場合、液体は書き込まれた矢印に沿って壁7伝いに流れ、切り欠き9のところで第1の平面3から流出し、そのとき壁7の周囲を回らず、壁7の他方の側で再び上方に向かっては流れない。
【0096】
液体が第1の平面3の上に到達するケースでは、この液体は第1の平面3の外面のところで流出する可能性があるだけでなく、コンタクトチャンバ4自体を通っても流出する可能性がある。第2の平面10に電流が流れて短絡が生じるのを防止する目的で、たとえば第2の平面10の近くに、かつ/または少なくとも1つのコンタクトチャンバ4内に、付加的に少なくとも1つのセンサを配置することができ、このセンサは、液体または湿度また液体レベルを検出するように構成されている。液体または湿度または液体レベルをセンサによって検出すれば、液体を介した2つまたはそれよりも多くのコンタクト部材6同士の、または相手側コンタクト部材31同士の短絡によっても損傷が引き起こされる可能性がないよう、電流を止めることができる。壁7(および/または少なくとも1つのノッチ)によって、短絡を少なくとも遅らせることができ、そのようにすることで、液体が入ったときにセンサによって適時に電流を遮断することができる。
【0097】
図3aには、図2によるプラグコネクタのハウジング2が、コンタクトロック部材20と共に示されている。
【0098】
コンタクトロック部材20は、ここでは一体型で形成されている。この場合には、単一の1つのコンタクトロック部材20だけしかプラグコネクタ1内に設けられていない。コンタクトロック部材20は、1つの基体22から突出した2つのアーム23を有する。基体22はここでは、一例に過ぎないが幅方向Xに沿って延在している。アーム23は、基体22からほぼ垂直に突出しており、押し込み方向Eに沿って自由端24まで延在している。アーム23は、ほぼまっすぐもしくは直線状に形成されており、これによりコンタクトロック部材20の櫛形構造が生じている。壁7と隣り合うアーム23は、それらの延在方向に対し垂直に、差し込み方向Sと交差する壁7の幅Bよりも広い間隔Dを互いに有する。壁7と隣り合う両方のアーム23は、コンタクトロック部材20が挿入された状態で、壁7の両側に延在している。間隔Dをたとえば、最大で1mmだけ、または最大で0.2mmだけ、壁7の幅Bよりも広くすることができる。
【0099】
コンタクトロック部材20は、第1の平面3の上で差し込み方向Sに対し垂直な押し込み方向Eに沿って、第1の位置から第2の位置へと変位可能である。
【0100】
第1の位置では、アーム23はそれらの突出部26によって開口部5を覆っておらず、またはコンタクトロック部材20の第1の位置において、コンタクトチャンバ4にコンタクト部材6を装着できる程度にしか、開口部5を覆っていない。コンタクトロック部材20の第2の位置において、アーム23における突出部26が少なくとも、コンタクトチャンバ4内に装填されたコンタクト部材6が、差し込み方向Sとは逆方向でのコンタクトチャンバ4からの離脱に対し確実に固定されているように、コンタクトチャンバ4の開口部5を部分的に覆っている。
【0101】
コンタクトロック部材20は係合機構21を有し、この場合、壁7(別の選択肢として、またはこれに加えて、少なくとも1つのノッチ)は、差し込み方向Sとは逆の方向を指す端面11の上に、係合機構21に対し相補的な構造12を有し、そこにおいて係合機構21を係合させることができる。係合機構21はここでは、ばね構造28における一種の尖頭部27として形成されており、その際に尖頭部27がばね構造28から壁7の端面11へと押圧される。端面11は長さ方向Yに沿って、2つの隣り合う局所的極小部M1、M2を含むトポグラフィを有する(ここでは第1の極小部M1だけしか見えない)。ここで、コンタクトロック部材20が押し込み方向Eに沿って第1の平面3の上で変位させられると、尖頭部27が端面11に沿って滑動する。これがたとえば楔状の第1の極小部M1に到達すると、尖頭部27が係合し、ここではたとえば第1の位置に到達しており、取り付け工は、たとえば装着ポジション(第1の位置)に到達したという触覚的フィードバックを受け取る。その後は、力のかけ方を強めない限り、コンタクトロック部材20をさらに押し込み方向Eに沿って動かすことができない。このことが行われたならば、尖頭部27は第1の極小部M1の導出斜面29に沿って第1の極小部M1を離れ、さらに移動すると、たとえば楔状の第2の極小部M2内に係合する。取り付け工は、たとえばロックポジション(第2の位置)に到達したという触覚的フィードバックを受け取る。
【0102】
係合機構21は、一例に過ぎないが、壁7の両側に延在する両方のアーム23と接続されている。係合機構21は、壁7と隣り合う両方のアーム23をそれらの自由端24のところで、接続部材25を用いて接続しており、その際に接続部材25は、差し込み方向Sとは逆方向に見て壁7に跨がっている。これによって一方では有利には、両方のアーム23が機械的に安定化される、ということがもたらされる。しかも有利には、係合機構21がその尖頭部27によって、常に端面11の上で、係合機構21に対し相補的な端面11の構造12に沿って滑動し、側方に滑り落ちてしまう可能性がない、ということが達成される。
【0103】
図3bおよび図3cには、コンタクトロック部材20の詳細な様子が、第1の位置(図3b)において、および第2の位置(図3c)において、壁7の縦断面図として示されている。両図において、第1の極小部M1および第2の極小部M2を良好に見分けることができる。図3cの場合、アームにおいて基体22の近くに配置された突出部26が、図示された開口部5の一部分を覆っている。
【0104】
図4aおよび図4bには、Z軸を中心に互いに90°旋回させられたプラグコネクタ1の2つの外面図が示されており、この場合、プラグコネクタ1は、差し込み方向Sが重力方向gと一致するように配置されている。この場合、レバー52および外側ハウジング51を良好に見分けることができる。
【0105】
図4cには図4bの断面図が示されており、これによって具体的に示されているのは、液体が第1の平面3まで入り込んだときに、浸入した液体もしくは導電性の液体もしくは液状媒体が、2つのコンタクト部材6または2つの相手側コンタクト部材31を短絡させるのを、壁7を用いてどのようにして阻止するのか、ということである。この場合、ここでは液体が、一例に過ぎないが、コンタクト部材6の導体55のシングルワイヤシール56を通って浸入している。ここでは「HO」により水として表された液体が、円錐状に延びる開口部を通過した後、外側ハウジング51の下部において開口部5の領域で第1の平面3の上に当たる。ただしこの液体は、第1の開口部5(左側)から第2の開口部(右側)に至る最短経路を辿り第1の平面3を伝って直接、流れる可能性はない。なぜならば液体がそのように流れるのが、ここでは壁7によって阻止されるからである。むしろ液体は、コンタクト部材6ごとに別々に所属のコンタクトチャンバ4内で重力gに従って流出し、その後、短絡が形成される前にたとえばセンサによって検出することができ、それによって電流遮断を生じさせることができる。図4cには撚り線6aが描かれており、これによって導体55が電気的に所属のコンタクト部材6と接続される。撚り線6aは、ここでは圧着部材6bにより個々のコンタクト部材6に固定されている。
【0106】
当然ながら、液体は壁7を伝って境界フェンス8へと流れ、その後、切り欠き9を通って進みながらハウジング2の外面に流出する可能性もある。
【0107】
図5aには、差し込み方向Sが重力方向gに対し約80°傾けられた取り付け位置で、プラグコネクタ1を見た様子が示されている。X方向はおおよそ重力方向gを指しており、レバー52はこの図を見る側に向けられている。押し込み方向Eは、図平面から見る側に向かっている。この状況において、第1の平面3まで流れ込もうとする液体は、壁7のところに蓄積し、この壁7はここでは、重力方向gに関しておおよそ水平に配向されている。
【0108】
図5bには、図5aによるプラグコネクタが、ハウジング2の外面における切り欠き9をじかに見ることができるように、外側ハウジング51の断面図として示されている。
【0109】
たとえばシングルワイヤシール56を通り抜けて第1の平面3まで達した液体は、以下の流路を示している。すなわち、重力gに比較的近くなるように向けられた導体55のところで浸入した液体が、第1の平面3に到達したときに第1の(ここでは下方の)開口部5内に流れる。他方の(上方の)導体55のところで浸入した液体は、重力gに従って進み、最初に第1の平面3と壁7との間の領域に蓄積し、この領域においてv字型の蓄積断面が形成される。ただし液体は壁7を乗り越えることはできず、そうではなくこの図では上方に配置された壁7の面に属する切り欠き9を通り、そこにおいて他方の切り欠き9まで溢れて入り込むことなく、ハウジング2の外壁を伝って流出する。かくしてこの取り付け位置においても、短絡が効果的に防止される。
【0110】
図6aおよび図6bには、Y軸を中心に互いに90°旋回させられたプラグコネクタ1の2つの外面図が示されており、この場合、プラグコネクタ1は、差し込み方向Sが重力方向gに対し約90°傾けられ、かつ第1の平面3における壁7が重力gの方向を指すように、配置されている。レバー52は、重力方向gに沿って下方を指しており、同様に押し込み方向Eも指している。
【0111】
図6cには、図6aおよび図6bによるプラグコネクタが、第1の平面3を見ることができるように、外側ハウジング51の断面図として示されている。
【0112】
このケースにおいて、第1の平面3の上に浸入した液体は、やはり最短経路を辿り隣り合うコンタクトチャンバ4を短絡することができない。それというのも液体は強制的に、ここでは一種の岐路として垂直に立つ壁7によって、壁7の両側で下方に流出し、切り欠き9を通ってハウジング2から排出されるからである。
【0113】
プラグコネクタ1のその他の取り付け位置についても、壁(あるいは別の選択肢として、またはこれに加えて、少なくとも1つのノッチ)によって、隣り合うコンタクトチャンバ4の間およびその中に位置するコンタクト部材6の間の最短経路を辿る液体による短絡が防止されており、または少なくとも長い間、遅らされる。
【0114】
たとえば図6cによるプラグコネクタ1を、差し込み方向Sを中心に180°旋回させると、液体は第1の平面3において壁7を伝って(または少なくとも1つのノッチ内で)信号コンタクトの領域内に流れる。この領域では、短絡はそれほど重大な結果をもたらさないであろうし、短絡を検出することも可能であり、そのようにすればコンタクト部材6における大電流を遮断することができるであろう。
【0115】
さらに自明のとおり、本発明は、厳密に2つのコンタクトチャンバ4を備えたプラグコネクタ1に限定されるものではない。2つよりも多くのコンタクトチャンバ4の場合には、それぞれ隣り合うコンタクトチャンバ4の間に複数の壁7を設けることができ、同様に壁7各々に対し1つまたは2つの切り欠きを設けることができ、この切り欠きを通して液体を第1の平面3から流出させることができる。
図1a
図1b
図1c
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c