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特許6997328時計のダイアルおよびこれを製造するための方法
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  • 特許-時計のダイアルおよびこれを製造するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】時計のダイアルおよびこれを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/12 20060101AFI20220107BHJP
   G04B 19/10 20060101ALI20220107BHJP
   G04B 19/06 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G04B19/12 B
G04B19/10 Z
G04B19/06 N
G04B19/06 M
G04B19/06 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020539720
(86)(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2018055510
(87)【国際公開番号】W WO2019149384
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-07-17
(31)【優先権主張番号】18155191.2
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591030640
【氏名又は名称】モントレー・ラドー・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】エル カディリ,ハキム
(72)【発明者】
【氏名】フレーリッヒャー,トーマス
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-128914(JP,A)
【文献】特開2000-87028(JP,A)
【文献】特開2015-143641(JP,A)
【文献】特開2009-236640(JP,A)
【文献】特開平3-186789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/06-19/18
G01D 13/02-13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体(2)およびマザー・オブ・パール・シート(3)を備える時計のダイアル(1)であって、前記マザー・オブ・パール・シート(3)は、前面(3a)と、前記支持体(2)に面し、パターン(4)が印刷されている後面(3b)とを有する、ダイアルにおいて、前記マザー・オブ・パール・シート(3)は、前記マザー・オブ・パール・シート(3)の前記後面(3b)のみに直接印刷された前記パターン(4)が、通常の照明条件下で前記マザー・オブ・パールを通して透けて見えるように50μm~300μmの厚さを有し、
前記パターン(4)は印刷でなされている、
ことを特徴とする、ダイアル。
【請求項2】
前記マザー・オブ・パール・シート(3)は、50μm~250μmに含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のダイアル。
【請求項3】
前記マザー・オブ・パール・シート(3)は、100μm~200μmに含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のダイアル。
【請求項4】
前記マザー・オブ・パール・シート(3)は、120μm~180μmに含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のダイアル。
【請求項5】
前記マザー・オブ・パール・シート(3)は、130μm~170μmに含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のダイアル。
【請求項6】
前記マザー・オブ・パール・シート(3)は、140μm~160μmに含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のダイアル。
【請求項7】
前記マザー・オブ・パールは、色付けされることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のダイアル。
【請求項8】
印刷された前記パターン(4)は、異なる幅の線のセットによって形成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のダイアル。
【請求項9】
前記支持体(2)は、金属製であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のダイアル。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の支持体(2)およびマザー・オブ・パール・シート(3)を備える時計のダイアル(1)を製造するための方法であって、
a)支持体(2)を用意するステップと、
b)50μm~300μmに含まれる厚さを有するマザー・オブ・パール・シート(3)を用意するステップと、
c)前記マザー・オブ・パール・シート(3)の前記後面(3b)にパターン(4)を印刷するステップと、
d)ステップc)で得られる印刷された前記マザー・オブ・パール・シート(3)を前記支持体(2)に組み付けるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記マザー・オブ・パール・シート(3)は、50μm~250μmに含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マザー・オブ・パール・シート(3)は、100μm~200μmに含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記マザー・オブ・パール・シート(3)は、120μm~180μmに含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記マザー・オブ・パール・シート(3)は、130μm~170μmに含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記マザー・オブ・パール・シート(3)は、140μm~160μmに含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、前記パターンを印刷するステップc)の前に前記マザー・オブ・パールに色合いを付けるステップe)をさらに含むことを特徴とする、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記パターン(4)を印刷するステップc)は、シルク・スクリーン印刷、フォトリソグラフィ、およびインクジェット印刷を含む群から選択される方法に従って堆積されるインクを使用して達成されることを特徴とする、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記インクは、10μm~40μmに含まれる厚さを有する層に堆積されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記インクは、10μm~30μmに含まれる厚さを有する層に堆積されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
印刷された前記パターン(4)は、異なる幅の線のセットによって形成されることを特徴とする、請求項10~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記支持体(2)は、金属製であることを特徴とする、請求項10~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~9のいずれか一項に記載のダイアルを備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体およびマザー・オブ・パール・シートを備える時計のダイアルであって、マザー・オブ・パール・シートが、前面と、該支持体に面し、パターンが印刷されている後面とを有する、ダイアルに関する。本発明はまた、そのようなダイアルを製造するための方法、およびそのようなダイアルを備える時計に関する。
【背景技術】
【0002】
この種類のダイアルは、例えば、スイス特許第CH697 210号に説明される。この文書において、パターンは、暗闇では目に見えるが通常の照明条件下では目に見えない画像を形成するために、蓄光性、蛍光性、または発光性の光素子によって形成される。これを達成するために、光素子は、マザー・オブ・パールの後面、もしくは基板に付加するか、またはマザー・オブ・パール内もしくは基板内に作られるブラインド・キャビティ内に配置し得る。マザー・オブ・パール・シートの推奨厚は、0.4mmであり、この厚さは、ブラインド・キャビティを作るために必要なものである。さらに、マザー・オブ・パール・シートは、蓄光性色素層が日中、通常の照明条件下においては、マザー・オブ・パールを通して透けて見えることがないように十分な厚さでなければならない。マザー・オブ・パールのこの厚さは、ダイアルに相当の厚みをもたらし、その結果として、極薄の腕時計の生産のために極薄のダイアルを作製することは不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、マザー・オブ・パール・ダイアル、ならびにこれを製造する方法であって、極薄のダイアル、およびそのようなダイアルを備える、極薄の時計、とりわけ、腕時計を、マザー・オブ・パールの特徴的な外観を損なうことなく生産することを可能にする方法を提案することによって前述の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のため、本発明は、支持体およびマザー・オブ・パール・シートを備える時計のダイアルであって、マザー・オブ・パール・シートが前面と、該支持体に面し、パターンが印刷されている後面とを有する、ダイアルに関する。
【0005】
本発明によると、マザー・オブ・パール・シートは、マザー・オブ・パール・シートの後面に印刷されたパターンが、通常の照明条件下でマザー・オブ・パールを通して透けて見えるように、50μm~100μmの厚さを有する。
【0006】
このようにして、ユーザの目に見える、マザー・オブ・パールの玉虫色の性質および前面におけるマザー・オブ・パールの滑らかな外観を保ちながら、極薄のパターンで装飾されるマザー・オブ・パール・ダイアルが得られる。
【0007】
他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例証として与えられる以下の説明から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明によるダイアルの上面図である。
図2図1の軸AAに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、時計のダイアル1は、支持体2およびマザー・オブ・パール・シート3を備える。
【0010】
好ましくは、支持体2は金属製である。これは、例えば、真ちゅうのシートから作製される。
【0011】
マザー・オブ・パール・シートは、ユーザの目に見える側に相当する前面3aと、支持体2に面して配置され、パターン4が印刷された後面3bとを有する。
【0012】
好ましくは真ちゅう製の、金属リング6は、ダイアル1の輪郭を画定するためにマザー・オブ・パール・シート3の周縁に設けられる。この金属リング6は、例えば、700μm~900μm程度、例えば、800μmの厚さを有し得る。
【0013】
本発明によると、マザー・オブ・パール・シートは、マザー・オブ・パールの後面に印刷されたパターンが、通常の照明条件下で、特に斜光において、マザー・オブ・パールを通して透けて見えるように、50μm~300μmの厚さを有する。好ましくは、マザー・オブ・パール・シートは、50μm~250μm、好ましくは100μm~200μm、好ましくは120μm~180μm、より好ましくは130μm~170μm、およびさらにより好ましくは140μm~160μmに含まれる厚さを有する。例えば、マザー・オブ・パール・シートの厚さは、およそ150μmである。マザー・オブ・パール・シートのそのような厚さは、一方では、マザー・オブ・パールの後面に印刷されたパターンが通常の照明条件下でマザー・オブ・パールを通して透けて見えるように必要な透明性を保つこと、もう一方では、過度な壊れやすさに起因して、特にパターンを印刷するときに、マザー・オブ・パール・シートが破損するのを回避することを可能にする、出願者により発見された折衷案である。
【0014】
有利には、金属支持体2は、例えば、200μm~250μm程度の厚さを有し、その結果として、ダイアルは、例えば、350μm~400μmの極薄の総厚を有する。
【0015】
印刷されたパターン4は、任意の種類のパターンであり得る。好ましくは、印刷されたパターンは、構造の外観を作成する、異なる幅の線のセットによって形成される。例えば、パターンは、葉の脈および構造を表し得る。
【0016】
好ましくは、使用されるマザー・オブ・パールは、天然のマザー・オブ・パールである。
【0017】
有利には、マザー・オブ・パールは色付けされ得る。
【0018】
そのようなダイアルを製造するための方法は、
a)好ましくは金属製、例えば、真ちゅう製の支持体2を用意するステップと、
b)50μm~300μm、好ましくは50μm~250μm、好ましくは100μm~200μm、好ましくは120μm~180μm、より好ましくは130μm~170μm、およびさらにより好ましくは140μm~160μmに含まれる厚さを有するマザー・オブ・パール・シート3を用意するステップと、
c)マザー・オブ・パール・シートの後面3bにパターン4を印刷するステップと、
d)ステップc)で得られる印刷されたマザー・オブ・パール・シート3を支持体2に組み付けるステップと
を含む。
【0019】
本方法はまた、金属リング6をマザー・オブ・パール・シート3の周縁に組み付けるステップを含む。
【0020】
ステップa)およびb)において、支持体2、マザー・オブ・パール・シート3、およびリング6は、ダイアルの所望の形状および寸法、ならびに本発明による厚さを有するように、切断され準備される。開口部8もまた、針の芯の通過のために支持体2およびマザー・オブ・パール・シート3内に作製される。
【0021】
ステップc)によると、パターン4は、シルク・スクリーン印刷、フォトリソグラフィ、およびインクジェット印刷を含む群から選択される方法に従って堆積されるインクを用いてマザー・オブ・パール・シートの後面3bに印刷される。シルク・スクリーン印刷が特に好ましい。
【0022】
有利には、堆積されたインク層の厚さは、10μm~40μm、好ましくは20μm~30μmに含まれる。使用されるインクは、標準的なインクである。
【0023】
好ましくは、印刷方法は、構造の外観を作成する、異なる幅の線のセットによって形成されるパターンを印刷するために実施される。
【0024】
さらに、本発明の方法は、パターンを印刷するステップc)の前にマザー・オブ・パールに色合いを付けるステップe)を含み得る。
【0025】
印刷されたマザー・オブ・パール・シート3がステップc)において得られ、リング6がダイアル1を形成するために支持体2に組み付けられると、マザー・オブ・パール・シートの前面3aは、滑らかな前面を得るために磨かれ得る。次いで、マザー・オブ・パール・シート3は、サファイア・ガラスによって保護される(図示されない)。インデックスまたは他の装飾要素が、サファイア・ガラスまたはマザー・オブ・パール・シート3上に置かれ得る。
【0026】
本発明はまた、上に説明されるようなダイアルを備える時計に関係する。本発明は、マザー・オブ・パールの玉虫色の性質および前面におけるマザー・オブ・パールの滑らかな外観を保ちながら、パターンで装飾されたマザー・オブ・パールでできた極薄のダイアルを得ることを可能にする。パターンは、より控えめに、より繊細に、およびより上品に、マザー・オブ・パールを通して透けて見える。本発明はまた、極薄のダイアルの使用により、極薄の時計、および特に、極薄の腕時計を得ることを可能にする。
図1
図2