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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】生きた水産養殖用飼料の生産方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/80 20160101AFI20220107BHJP
【FI】
A23K50/80
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020558856
(86)(22)【出願日】2018-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 SG2018050021
(87)【国際公開番号】W WO2019139538
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】520260452
【氏名又は名称】パール・アクア・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ルシアン・ファン・ニューウェンホーフェ
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-511642(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103350026(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第03175704(EP,A1)
【文献】国際公開第2004/057952(WO,A1)
【文献】実開昭52-063699(JP,U)
【文献】特開2017-153437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
A01K 61/00 - 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きた水産養殖用飼料を生産する方法であって、
その表面上に触媒を有する複数のシストを用意すること、
液体培地中で前記シストをインキュベートすることであって、前記シストの一部を孵化させ、複数の生餌生物を放出させる、インキュベートすること、
前記シストの前記表面上の前記触媒をガス生成試薬と反応させることであって、未孵化シスト及びシスト殻を表面に出させる複数の気泡を生成させる、反応させること、並びに
表面に出る前記未孵化シスト及び前記シスト殻から、前記生餌生物を分離すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記触媒が、金属酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属酸化物が、二酸化マンガンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
その前記表面上に前記触媒を有する前記シストを用意する工程が、
触媒前駆体溶液を用意すること、及び
前記シストを前記触媒前駆体溶液と接触させることであって、その前記表面上に前記触媒を有する前記シストを生成する、接触させること
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒前駆体溶液を用意する工程が、触媒前駆体を水と混合させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒前駆体が、過マンガン酸カリウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒前駆体対前記シストの質量比が、約0.0005:1~約0.015:1の間である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒前駆体対前記シストの前記質量比が、約0.001:1~約0.01:1の間である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
分離タンク内における前記ガス生成試薬対前記液体培地の質量比が、約0.002:1~約0.025:1の間である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記分離タンク内における前記ガス生成試薬対前記液体培地の前記質量比が、約0.005:1~約0.015:1の間である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガス生成試薬が、約5パーセント(%)~約25%の間の活性酸素含有量を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ガス生成試薬が、過酸化水素、無機過酸化物及び過酸化水素付加物のうちの1つである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ガス生成試薬が、過炭酸ナトリウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シストの前記表面上の前記触媒を前記ガス生成試薬と反応させる前に、前記生餌生物、前記未孵化シスト及び前記シスト殻の混合物を濃縮することを更に含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記生餌生物、前記未孵化シスト及び前記シスト殻の前記混合物を濃縮する工程が、前記液体培地の約70体積パーセント(vol%)~約90vol%を除去することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記未孵化シスト及び前記シスト殻からの分離後、前記生餌生物の冬眠を誘発することを更に含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記生餌生物の冬眠を誘発する工程が、前記生餌生物を摂氏約0度(℃)~約6℃の間の温度に冷却することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
冬眠中の生餌生物のペーストを形成することを更に含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
冬眠中の生餌生物の前記ペーストを形成する工程が、
前記冬眠中の生餌生物を、篩にて濃縮する工程、及び
氷面上で前記篩内の過剰な水を排出する工程
を含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して水産養殖に関し、とりわけ、生きた水産養殖用飼料(live aquaculture feed)を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生餌生物(Live food organisms)は、養殖水生生物にとって重要な餌資源である。
【0003】
生餌生物の生産は、シスト(cysts)を孵化培地中でインキュベートし、それによってシストの一部が孵化し、自由遊泳生餌生物が放出されることを含む。孵化後、未孵化シスト及び空のシスト殻(cyst shells)から生餌生物を分離する必要があり、その理由は、これらシスト及び殻は消化されず、水生生物が摂取した場合には腸閉塞を引き起こし、水生生物を死に至らしめることがあるからである。
【0004】
しかし、従来の分離技術は時間がかかり、生餌生物に損傷を与えることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、生餌生物に対する損傷を低減する、生きた水産養殖用飼料を生産するための効率的な方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、一態様では、本発明は、生きた水産養殖用飼料を生産する方法を提供する。この方法は、その表面上に触媒を有する複数のシストを用意する工程と、液体培地中でシストをインキュベートしてシストの一部を孵化させ、複数の生餌生物を放出する工程と、シストの表面上の触媒をガス生成試薬と反応させて、未孵化シスト及びシスト殻を表面に出させる複数の気泡を生成する工程と、表面に出る未孵化シスト及びシスト殻から、生餌生物を分離する工程と、を含む。
【0007】
本発明の他の態様及び利点は、本発明の実施形態の原理を例として示す添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0008】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、以下に例としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態による生きた水産養殖用飼料を生産するための装置の概略図である。
図2】本発明の実施形態による生きた水産養殖用飼料を生産する方法を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に述べる詳細な説明は、本発明の現在好ましい実施形態の説明として意図されており、本発明を実施することができる唯一の形態を表すことは意図されていない。本発明の範囲内に包含されることが意図されている異なる実施形態によって、同一又は同等の機能を達成することができることを理解すべきである。
【0011】
ここで、図1を参照すると、生きた水産養殖用飼料を生産するための装置10が示されている。本実施形態では、装置10は、第1の出口14を有する第1のタンク又は容器12と、第2の出口18を有する第2のタンク又は容器16とを含む。第2のタンク16には、フィルタ20を設けてもよい。第1のタンク12及び第2のタンク16の一方又は両方を、好ましくは底部から通気してもよい。1つ又は複数の光源(図示せず)を第1の出口14及び第2の出口18の一方若しくは両方に、又はその近くに設けて、生餌生物を第1の出口14及び第2の出口18それぞれに誘引してもよい。
【0012】
示された実施形態では、第1のタンク12は、インキュベーションタンク又は孵化タンクとして機能する。孵化の結果を最適化するため、第1のタンク12は、シスト及び生餌生物が蓄積し、その結果酸素欠乏に陥る傾向があるデッドスポットを減少させるか又は最小化するために、円筒体22及び円錐形基底部24を有してもよい。とりわけ、収集中の孵化懸濁液の検査を容易にするために、第1のタンク12は透明又は半透明であってもよい。一実施形態では、第1のタンク12は、2000リットル(L)の容積を有し得る。
【0013】
本実施形態では、第2のタンク16は、分離タンクとして機能する。第2のタンク16は、第1のタンク12と同じ特徴を有し得るが、より小さな容積のものであることが好ましい。一実施形態では、第2のタンク16は、第1のタンク12の10パーセント(%)の容積を有し得る。
【0014】
第2のタンク16に設けられたフィルタ20は、液体培地のみを通過させることができるように設計されているので、このフィルタ20は、シスト及び生餌生物を液体培地から分離するのに使用される。一実施形態では、フィルタ20には、液体培地をシスト及び生餌生物から分離するのに効果的な複数の水平スリット又はスロットが設けられている。
【0015】
複数の穴を有するホース(図示せず)を設けて、気泡を供給し、濃縮プロセス中にフィルタ20を連続的に洗浄することができる。
【0016】
生きた水産養殖用飼料を生産するための装置10の様々な要素を説明してきたが、図1の装置10を用いて生きた水産養殖用飼料を生産する方法は、以下、図2を参照して説明する。
【0017】
ここで、図2を参照すると、本発明の実施形態による生きた水産養殖用飼料を生産する方法50が示されている。方法50は、その表面上に触媒を有する複数のシストを用意する工程52で始まる。
【0018】
本明細書で使用される「シスト」等の用語は、例えばワムシ、アルテミア(Artemia)等の水生動物の卵を指す。
【0019】
シストの表面上の触媒は、ガス生成試薬のガス放出反応を触媒することができる任意の化合物又は物質であってもよい。一実施形態では、触媒は、例えば二酸化マンガン等の金属酸化物であってもよい。
【0020】
一実施形態では、その表面上に触媒を有するシストは、触媒前駆体溶液を用意し、シストを触媒前駆体溶液と接触させて、その表面上に触媒を有するシストを生成することによって用意することができる。このような実施形態では、触媒前駆体溶液は、コーティングとしてシストに塗布され得る液体懸濁液、好ましくは水性懸濁液の形態であり得る。
【0021】
触媒前駆体溶液は、触媒前駆体を水と混合することによって用意してもよい。一実施形態では、触媒前駆体は、例えば、過マンガン酸カリウム等の水溶性過マンガン酸塩であってもよい。このような実施形態では、乾燥過マンガン酸塩を水と混合して、強力な酸化剤である水溶性過マンガン酸塩を含む液体コーティングを形成し、これは、シストの表面上に塗布又はコーティングすると、シスト殻の有機物と反応して二酸化マンガンに変換され、これはもはや水溶性ではなく、したがってこれはインキュベーションが完了した後でもシスト殻上に残る。触媒前駆体溶液を調製するために使用される触媒前駆体の分量又は量は、インキュベートされるシストの質量に対して計算又は決定され得る。一実施形態では、触媒前駆体対シストの質量比は、約0.0005:1~約0.015:1の間、より好ましくは約0.001:1~約0.01:1の間であり得る。
【0022】
工程54では、液体培地中でシストをインキュベートしてシストの一部を孵化させ、複数の生餌生物を放出させる。シストがアルテミアシストである実施形態では、孵化したシストから放出される生餌生物は、自由遊泳アルテミア・ノープリウス(Artemia nauplii)である。
【0023】
本実施形態では、第1のタンク12内で、シストのインキュベーション及び孵化を実施する。孵化後、通気を停止して、第1のタンク12内の異なる物体、具体的には、生餌生物、未孵化シスト、及び空のシスト殻を分離することができるようにしてもよい。通気は、第1のタンク12から通気管(図示せず)を取り外すことによって停止することができる。通気を停止すると、空のシスト殻は浮く傾向があるので、空のシスト殻の大部分は液体孵化培地の表面に上昇し、一方、未孵化シストは沈下する傾向があるので、未孵化シストの大部分は、第1のタンク12の底部に沈殿する。第1のタンク12内で自由に泳ぐ生餌生物を、第1のタンク12の第1の出口14の又はその近くの1つ又は複数の光源に誘引して、第1のタンク12の底部に濃縮させてもよい。しかし、酸素欠乏により生餌生物が死滅するのを防ぐために、生餌生物を、第1のタンク12の底部にあまりに長時間沈殿させてはいけない。
【0024】
シストの表面上の触媒をガス生成試薬と反応させる前に、生餌生物、未孵化シスト、及びシスト殻の混合物は、工程56で濃縮してもよい。有利には、これにより、未孵化シスト及びシスト殻を生餌生物から分離するために必要なガス生成試薬の分量又は量が減少する。生餌生物と未孵化シスト、シストの殻、及びその他の不純物とを一緒にした混合物を濃縮する工程は、液体培地の一部を除去することによって実施してもよい。一実施形態では、液体培地の約70体積パーセント(vol%)~約90vol%を除去してもよい。
【0025】
本実施形態では、生餌生物、未孵化シスト、及びシスト殻の混合物の濃縮は、生餌生物、未孵化シスト、及び若干の空のシスト殻を含む液体培地の一部を、第1のタンク12から、第1のタンク12の底部にある第1の出口14を介して、除去するか又は取り出して、生餌生物、未孵化シスト、及びシスト殻の混合物を、より小さい第2のタンク16に移すことによって実施してもよい。第2のタンク16内の液体培地の体積は、第1のタンク12内の液体培地の体積の約10vol%~約30vol%であってもよい。第2のタンク16に設けられたフィルタ20は、液体培地のみを通過させることができるので、生餌生物、未孵化シスト及びシスト殻は第2のタンク16内に保持され、一方、液体培地は、第2の出口18を介して第2のタンク16から排出又は除去される。より詳細には、移送が行われるとき、液体培地は、フィルタ20の外側から、液体培地が排出されるフィルタ20の内側に流れる。その結果、生餌生物、未孵化シスト、及びシストの殻は、フィルタ20の外側で濃縮される。濃縮プロセスは、第1のタンク12の内容物全体が第2のタンク16に移されるまで継続することができる。このようにして、同じ分量の生餌生物、未孵化シスト、及びシストの殻が、第1のタンク12のより大きな容積から、第2のタンク16のより小さな容積に移されるので、第1のタンク12の内容物全体が、より小さな第2のタンク16内で濃縮され得る。有利には、このようなセットアップでは、濃縮プロセス中に生餌生物に損傷を与えることなく、生餌生物、未孵化シスト、及びシスト殻の混合物が濃縮される。
【0026】
工程58では、シストの表面上の触媒をガス生成試薬と反応させて、未孵化シスト及びシスト殻を表面に出させる複数の気泡を生成する。より詳細には、シストの表面上の触媒は、ガス発生試薬と接触すると、ガス発生試薬の反応が誘発又は誘起されて、これによりガス生成試薬が気泡を発生させる。この工程は、第2のタンク16内の通気を停止した後であってもよい。
【0027】
シストの表面上の触媒と第2タンク16のガス生成試薬との間の触媒反応中に、液体培地中でシスト及び他の不純物に付着するマイクロバブルが形成され、これらが液体培地の表面にもたらされる。このようにして、液体培地にガス生成試薬を添加した後に、触媒でコーティングされた、例えば、昆虫の残骸、植物の部分、藻類、及び他の不純物等の有機物すべてが、同様に表面へ上昇する。
【0028】
反応中に触媒は消費されないため、各未孵化シスト及び各シスト殻の表面上の触媒の分量は、ガス生成試薬との反応の前後で同じである。有利には、これにより、液体培地中に未消費のガス生成試薬が存在する限り、各未孵化シスト及び各シスト殻の表面上に気泡を連続的に生成することができる。したがって、未孵化シスト及び/又はシスト殻の一部が気泡を失う場合でも、未孵化シスト及び/又はシスト殻の表面上に、新たな気泡が形成され続ける。別の利点は、未孵化シスト及び/又はシスト殻の表面上の触媒がそのまま維持されるため、必要に応じてガス生成試薬を更に追加するだけで、分離プロセスを簡単かつ容易に再開できることである。
【0029】
使用されるガス発生試薬は、液体又は乾燥形態であってよく、過酸化水素、無機過酸化物及び過酸化水素付加物のうちの1つであってもよい。有利には、過酸化水素源がガス生成試薬として使用される場合、酸素及び水が反応中に生成され、これらは環境的に無害であるだけでなく、生餌生物に追加の酸素を供給する。一実施形態では、ガス生成試薬は、例えば、安定であり、かつ保管及び使用が容易な過炭酸ナトリウム等の乾燥顆粒であってもよい。乾燥形態のガス生成試薬が使用される実施形態では、ガス生成試薬を、第2のタンク16内の液体培地に添加して、溶解するまで液体培地と混合してもよい。
【0030】
触媒が二酸化マンガンであり、ガス生成試薬が過酸化水素、無機過酸化物又は過酸化水素付加物である実施形態では、触媒は、結果として気泡を形成する過酸化水素の分解を加速するように作用する。
【0031】
必要なガス生成試薬の分量又は量は、第2タンク16内の生餌生物、未孵化シスト、シスト殻、及び不純物の濃度に依存し、また更に、過酸化水素源がガス生成試薬として使用される場合、過酸化水素源中の活性酸素の百分率に依存する。一実施形態では、ガス生成試薬は、約5パーセント(%)~約25%の間の活性酸素含有量を有していてもよい。分離又は第2のタンク16内におけるガス生成試薬対液体培地の質量比は、約0.002:1~約0.025:1の間、より好ましくは約0.005:1~約0.015:1の間であり得る。約15パーセント(%)の活性酸素含有量を有する過炭酸ナトリウムをガス生成試薬として使用する一実施形態では、必要なガス生成試薬の分量又は量は、分離又は第2のタンク16内の液体培地の体積の約0.2%~約2.5%の間、より好ましくは約0.5%~約1.5%の間である。
【0032】
第2のタンク16内の未孵化シスト、シスト殻、及び不純物の場合とは異なり、生餌生物が遊泳運動をすることによって、付着した気泡が脱離するので、発生した気泡は生餌生物に付着しない傾向がある。更に、新たに孵化した生餌生物は、一般にうまく遊泳できないため、生餌生物は第2のタンク16の底部に沈殿する傾向があり、したがって第2のタンク16の底部にある第2の出口18を介して、第2のタンク16から容易に排出されるか又は取り出される。このようにして、工程60で、表面に出る未孵化シスト及びシスト殻から、生餌生物を分離する。有利には、泳いでいないすべてのものが気泡によって表面へと押しやられるか又は強制されるので、非常に純粋な分離を達成することができる。分離が完了すると、未孵化シスト及びシスト殻はすべて、液体培地の表面に蓄積する傾向がある。
【0033】
本実施形態では、未孵化シスト及びシスト殻から生餌生物を分離した後、工程62で生餌生物の冬眠を誘発してもよい。冬眠中、生餌生物は遊泳を停止し、その発生は中断する。これにより、酸素需要が大幅に減少する。有利には、冬眠は、生餌生物がより大きな動物に成長するのを防ぎ、大きな動物に成長すると生餌生物はその目的に適さないものになってしまうであろう。冬眠はまた、栄養価を低下させることになる生餌生物によるエネルギーの損失を低減させる。
【0034】
生餌生物の冬眠は、生餌生物を摂氏約0度(℃)~約6℃の間の温度に冷却することによって誘発してもよい。これは、海水を含む大型の冷却タンクに、分離された生餌生物を導入する工程による場合があり、この冷却タンクでは、生餌生物を数時間かけて約0℃~約6℃の間に冷却し、冬眠を誘発する。冷却工程により、生餌生物を強制的に休眠状態にさせ、この状態で生餌生物は動きが最小限になり、したがってその酸素消費量が大幅に減少する。
【0035】
本実施形態では、工程64で、冬眠中の生餌生物のペーストを形成することができる。これは、冷却期間後に冬眠中の生餌生物を収集する工程、冬眠中の生餌生物を篩にて濃縮する工程、及び氷面上で篩内の過剰な水を排出する工程によるものであり得る。一実施形態では、篩はナイロン製篩バッグであり得、篩バッグを大型の冷却ボックス内のアイスキューブ上又は砕いた氷上に置き、冬眠中の生餌生物がペーストを形成するまで、過剰な水を排出してもよい。有利には、氷床が篩バッグから水をかなり速く(約10分~20分で)引き出すので、篩バッグを氷上に置くことは、過剰な水を排出するための迅速かつ効果的な方法であることが分かっている。更に、氷床はまた、冬眠中の生餌生物が冷却されたままであるのに役立ち、冷却されたままであることは、生餌生物の冬眠状態を維持するために重要である。更に有利には、冬眠中の生餌生物のペーストを作製することは、水分含有量が有意に変動することなく、ユーザーが均一な分量の冬眠中の生餌生物を確実に受け取るのに役立つ。排出された生餌生物のペーストは、生餌生物の塊がペーストの物理的特性を有するようなものであり得る。
【0036】
排出後、冬眠中の生餌生物のペーストを篩から取り出し、販売用のトレーに入れる。冬眠中の生餌生物のペーストを含むトレーは、配送のために冷却ボックス内でほぼゼロの温度に保つことができる。ペースト形態の冬眠中の生餌生物は生きており、エビ又は魚のタンク内に導入されると数分以内に遊泳を始めることができる。
【0037】
前述の考察から明らかなように、本発明は、生餌生物に対する損傷を低減する、生きた水産養殖用飼料を生産するための効率的な方法を提供する。本発明の方法により、自由遊泳生餌生物を損傷又は死滅させるリスクを低減させて、自由遊泳生餌生物から未孵化シスト及び空のシスト殻を効果的に分離することができる。更に有利には、冬眠及びペースト形成プロセスは、生餌生物が容易に輸送可能な状態で生き続けることを保証するのに役立つ。
【0038】
本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、本発明は、説明した実施形態のみに限定されないことは明らかであろう。特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、多数の修正形態、変更形態、変形形態、置換形態、及び均等物が当業者には明らかであろう。
【0039】
更に、文脈がそうでないことを明確に要求しない限り、明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって、「含む(Comprises)」、「含む(comprising)」等の単語は、排他的又は網羅的な意味においてではなく包括的な意味において、すなわち、「含むが、それに限定されない」という意味において解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0040】
1 装置10
2 第1のタンク12/容器12
3 第1の出口14
4 第2のタンク16/容器16
5 第2の出口18
6 フィルタ20
7 円筒体22
8 円錐形基底部24
9 方法50
10 工程52
11 工程54
12 工程56
13 工程58
14 工程60
15 工程62
16 工程64
図1
図2