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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】バッチ式熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 17/00 20060101AFI20220107BHJP
   F27B 3/22 20060101ALI20220107BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F27B17/00 B
F27B3/22
F27D7/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021034323
(22)【出願日】2021-03-04
(62)【分割の表示】P 2020097040の分割
【原出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021188893
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591076109
【氏名又は名称】エヌジーケイ・キルンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 実
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 浩平
(72)【発明者】
【氏名】有馬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 紀久
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-077001(JP,A)
【文献】特開平06-213571(JP,A)
【文献】特開平05-187781(JP,A)
【文献】特開2002-333283(JP,A)
【文献】特開昭63-054587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 17/00
F27B 3/00 - 3/28
F27B 5/00 - 5/18
F27B 9/00 - 9/40
F27D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井壁と側壁とを備える炉体と、
被処理物が載置される上面を備える炉床と、
前記炉体内に配置されると共に前記側壁と前記被処理物の間に配置されており、前記側壁に沿って周方向に間隔を空けて配置される複数のヒータと、
前記炉体内に雰囲気ガスを供給する複数のガス導入管と、を備えており、
前記炉体と前記炉床により形成される炉内の形状は、円柱形状であり、
前記側壁の内壁面には、径方向の外側に向かって凹となる凹所が周方向に間隔を空けて複数形成されており、
前記ガス導入管は、前記複数の凹所のそれぞれに配置されると共に、1又は複数のガス吹出し口を備えており、
前記複数のガス導入管のガス吹出し口は、炉内空間に連通しており、前記炉内空間に雰囲気ガスを吹出し可能となっており、
前記凹所の径方向内側の端部における開口幅は、前記ガス導入管の径より大きくされており、
前記ガス導入管は、その全体が前記凹所の径方向内側の端部よりも径方向外側に位置しており、
前記ガス導入管は、前記炉内空間に露出しており、
前記複数のガス導入管は、前記天井壁を貫通して前記炉体内にまで伸びており、
前記ガス導入管は、前記天井壁に対して回転可能に支持されており、前記ガス導入管が前記天井壁に対して回転することで、前記ガス吹出し方向が前記凹所の前記開口幅の範囲内で調整可能となっている、バッチ式熱処理炉。
【請求項2】
前記複数のガス導入管は、前記円柱形状の炉内に対して周方向については、周方向に隣接する前記ヒータの間に位置している、請求項1に記載のバッチ式熱処理炉。
【請求項3】
前記炉床の上面は、前記被処理物が載置される載置部を備えており、
前記上面は、平面視すると円形状を呈しており、その中心を通って上下方向に伸びる軸線の回りに回転可能となっている、請求項1又は2に記載のバッチ式熱処理炉。
【請求項4】
前記炉床の上面は、前記被処理物が載置される載置部と、前記被処理物が載置されない非載置部と、を備えており、
前記上面は、平面視すると円形状を呈しており、その中心を通って上下方向に伸びる第1の軸線の回りに回転可能となっており、
前記載置部は、平面視すると円形状を呈しており、その中心を通って上下方向に伸びる第2の軸線の回りに回転可能となっており、
前記上面が前記第1の軸線の回りに回転することで、前記載置部が公転し、
前記載置部が前記第2の軸線の回りに回転することで、前記載置部が自転し、
前記載置部の公転方向は、前記載置部の自転方向と同一または逆の方向となっており、
前記ガス吹出し方向は、前記載置部の自転方向と同一または逆の方向となっている、請求項3に記載のバッチ式熱処理炉。
【請求項5】
前記複数のヒータは、
前記炉体内の上部に位置する1又は複数の上部ヒータと、
前記炉体内の中間部に位置する1又は複数の中間部ヒータと、
前記炉体内の下部に位置する1又は複数の下部ヒータと、を備えており、
前記複数のガス導入管は、
前記上部ヒータに隣接した位置に配置され、前記上部ヒータに向かってガスを吹き出す1又は複数の上部ガス吹出し口を備える第1ガス導入管と、
前記中間部ヒータに隣接した位置に配置され、前記中間部ヒータに向かってガスを吹き出す1又は複数の中間部ガス吹出し口を備える第2ガス導入管と、
前記下部ヒータに隣接した位置に配置され、前記下部ヒータに向かってガスを吹き出す1又は複数の下部ガス吹出し口を備える第3ガス導入管と、を備えている、請求項1~4のいずれか一項に記載のバッチ式熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被処理物(例えば、セラミックコンデンサ、セラミック圧電素子、セラミック抵抗などの積層セラミック部品等)に熱処理するためのバッチ式熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理物の熱処理後の特性を安定化するためには、熱処理時の炉内温度と炉内雰囲気を均一化する必要がある。特許文献1のバッチ式熱処理炉では、周方向に間隔を空けて複数のヒータが配置され、各ヒータに対応する位置にガス吹出し口が配置される。ガス吹出し口は、ヒータと炉内壁面の間に配置され、ガス吹出し口からの雰囲気ガスがヒータで加熱されながら炉内に供給される。これによって、炉内温度の均一化と炉内雰囲気の均一化が図られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-77001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のバッチ式熱処理炉では、雰囲気ガスをヒータで加熱しながら炉内に供給するため、ガス吹出し口がヒータに対応する位置に制限される。すなわち、ヒータが設けられていない位置にはガス吹出し口が設けられていない。その結果、特許文献1のバッチ式熱処理炉では、炉内雰囲気が不均一になり易いという問題があった。特に、バッチ式熱処理炉で行われる熱処理の中には、熱処理中に炉内の雰囲気を入れ替える場合がある。かかる場合は、速やかに炉内雰囲気を置換する必要があり、ガス吹出し口から多量の雰囲気ガスを炉内に供給することになる。ガス吹出し口がヒータの位置に制限されていると、限られたガス吹出し口から多量の雰囲気ガスを供給することになるため、炉内雰囲気が不均一化し易い。
【0005】
本明細書は、炉内雰囲気の不均一化を抑制することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示するバッチ式加熱炉は、天井壁と側壁とを備える炉体と、被処理物が載置される上面を備える炉床と、炉体内に配置されると共に側壁と被処理物の間に配置されており、側壁に沿って周方向に間隔を空けて配置される複数のヒータと、炉体内に雰囲気ガスを供給する複数のガス吹出し口と、を備えている。炉体と炉床により形成される炉内の形状は円柱形状をしている。複数のガス吹出し口は、円柱形状の炉内に対して径方向については、ヒータと側壁の間に位置しており、円柱形状の炉内に対して周方向については、周方向に隣接するヒータの間に位置している。そして、複数のガス吹出し口からガスが吹き出すガス吹出し方向は、炉内方向となっている。
【0007】
上記のバッチ式加熱炉では、複数のガス吹出し口は、円柱形状の炉内に対して径方向については、ヒータと側壁の間に位置している。したがって、ヒータより外側の側壁に近い位置から炉内に雰囲気ガスが供給される。また、複数のガス吹出し口は、円柱形状の炉内に対して周方向については、周方向に隣接するヒータの間に位置している。したがって、周方向に隣接するヒータの間に所望の配置でガス吹出し口を設けることができる。これらによって、炉内雰囲気の不均一化を抑制することができる。
なお、上記の「ヒータと側壁の間に位置している」には、ヒータと同一の位置に位置している場合や、側壁と同一の位置に位置している場合が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係るバッチ式熱処理炉の横断面図。
図2】実施例1に係るバッチ式熱処理炉の縦断面図。
図3】ヒータとガス導入管の周方向の位置関係を説明するための図であり、炉の中心から見た炉内壁面、ヒータ及びガス導入管を周方向に展開した図。
図4】ガス導入管からガスを吹き出す方向を説明するための図。
図5】ガス導入管をガス吹出し口が設けられた側から見た図。
図6】変形例に係るバッチ式熱処理炉の横断面図。
図7】変形例のガス導入管の構成を説明するための図。
図8】変形例の他のガス導入管の構成を説明するための図。
図9】実施例2に係るバッチ式熱処理炉の横断面図。
図10】実施例2に係るバッチ式熱処理炉の縦断面図。
図11】ヒータとガス導入管の周方向の位置関係を説明するための図であり、炉の中心から見た炉内壁面、ヒータ及びガス導入管を周方向に展開した図。
図12】ガス導入管と、そのガス導入管が配置された位置の近傍の炉内壁面とを拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(特徴1)本明細書が開示するバッチ式加熱炉では、ガス吹出し方向は、側壁に沿った方向となっていてもよい。このような構成によると、ガス吹出し口から供給されるガスが側壁に沿って流れる。このため、炉内の雰囲気は、側壁側から炉内中心に向かって順に置換される。したがって、炉内の雰囲気が周方向にばらつくことが抑制され、炉内雰囲気を周方向に均一化することができる。
【0010】
(特徴2)本明細書が開示するバッチ式加熱炉では、炉床の上面は、被処理物が載置される載置部を備えていてもよい。上面は、平面視すると円形状を呈しており、その中心を通って上下方向に伸びる軸線の回りに回転可能となっていてもよい。ガス吹出し方向は、上面が回転する方向と同一または逆の方向となっていてもよい。このような構成によると、載置部が軸線回りに回転することで、載置部の上面に載置された被処理物も炉内で回転する。このため、被処理物の全体を熱処理することができる。また、載置部の回転方向に対してガス吹出し方向を同一方向又は逆方向とすることで、炉内への雰囲気ガスの供給態様を変えることができる。
【0011】
(特徴3)本明細書が開示するバッチ式加熱炉では、炉床の上面は、被処理物が載置される載置部と、被処理物が載置されない非載置部と、を備えていてもよい。上面は、平面視すると円形状を呈しており、その中心を通って上下方向に伸びる第1の軸線の回りに回転可能となっていてもよい。また、載置部は、平面視すると円形状を呈しており、その中心を通って上下方向に伸びる第2の軸線の回りに回転可能となっていてもよい。上面が第1の軸線の回りに回転することで、前記載置部が公転し、載置部が第2の軸線の回りに回転することで、前記載置部が自転してもよい。載置部の公転方向は、載置部の自転方向と同一または逆の方向となっていてもよい。ガス吹出し方向は、載置部の自転方向と同一または逆の方向となっていてもよい。このような構成によると、被処理物が自転及び公転し、それに合わせてガス吹出し方向を変化させ、炉内への雰囲気ガスの供給態様を多様化することができる。
【0012】
(特徴4)本明細書が開示するバッチ式加熱炉では、複数のヒータは、炉体内の上部に位置する1又は複数の上部ヒータと、炉体内の中間部に位置する1又は複数の中間部ヒータと、炉体内の下部に位置する1又は複数の下部ヒータと、を備えていてもよい。複数のガス吹出し口は、上部ヒータに隣接した位置に配置され、上部ヒータに向かってガスを吹き出す1又は複数の上部ガス吹出し口と、中間部ヒータに隣接した位置に配置され、中間部ヒータに向かってガスを吹き出す1又は複数の中間部ガス吹出し口と、下部ヒータに隣接した位置に配置され、下部ヒータに向かってガスを吹き出す1又は複数の下部ガス吹出し口と、を備えていてもよい。このような構成によると、炉内の上部、中間部及び下部のそれぞれにヒータ及びガス吹出し口が設けられることで、炉内温度及び/又は炉内雰囲気を均一化することができる。
【0013】
(特徴5)本明細書が開示するバッチ式加熱炉では、天井壁を貫通して炉体内にまで伸びる複数のガス導入管をさらに備えていてもよい。ガス吹出し口は、ガス導入管に形成されていてもよい。このような構成によると、天井壁を貫通するガス導入管を利用して複数のガス吹出し口を炉内の所望の位置に配置することができる。
【0014】
(特徴6)本明細書が開示するバッチ式加熱炉では、側壁を貫通して炉体内にまで伸びる複数のガス導入管をさらに備えていてもよい。ガス吹出し口は、ガス導入管に形成されていてもよい。このような構成によると、側壁を貫通するガス導入管を利用して複数のガス吹出し口を炉内の所望の位置に配置することができる。
【0015】
(特徴7)本明細書が開示するバッチ式加熱炉では、ガス吹出し方向は、側壁に直交する方向から側壁に沿った方向までの間で調整可能となっていてもよい。このような構成によると、ガス吹出し方向を調整することで、炉内雰囲気を所望の状態に制御することができる。
なお、上記の「側壁に沿った方向」には、ガス吹出し口を通って軸線に直交する断面でみたときに、ガス吹出し口の左側の側壁に沿った方向だけではなく、右側の側壁に沿った方向も含まれる。したがって、ガス吹出し方向は、ガス吹出し口の左側の側壁に沿った方向から右側の側壁に沿った方向までの角度範囲で調整可能となっている。
【0016】
(特徴8)本明細書が開示するバッチ式加熱炉では、側壁の内壁面には、径方向の外側に向かって凹となる凹所が複数形成されていてもよい。複数の凹所は、周方向に間隔を空けて配置されていてもよい。ガス吹出し口は、凹所内に位置していてもよい。このような構成によると、ガス吹出し口を炉内に配置する場合と比較して炉内容積を小さくすることができる。
【0017】
(特徴9)本明細書が開示するバッチ式加熱炉では、天井壁を貫通して炉体内にまで伸びる複数のガス導入管をさらに備えていてもよい。ガス吹出し口は、ガス導入管に形成されていてもよい。凹所内に、ガス導入管が配置されており、ガス導入管は、天井壁に対して回転可能に支持されており、ガス導入管が天井壁に対して回転することで、ガス吹出し方向が調整可能となっていてもよい。このような構成によると、ガス導入管を天井壁に対して回転可能とするだけで、ガス吹出し方向を容易に調整可能とすることができる。
【0018】
(特徴10)本明細書が開示するバッチ式加熱炉では、複数のヒータは、炉体内の上部に位置する1又は複数の上部ヒータと、炉体内の中間部に位置する1又は複数の中間部ヒータと、炉体内の下部に位置する1又は複数の下部ヒータと、を備えていてもよい。複数のガス吹出し口は、上部ヒータに隣接した位置に配置される1又は複数の上部ガス吹出し口と、中間部ヒータに隣接した位置に配置される中間部ガス吹出し口と、下部ヒータに隣接した位置に配置される1又は複数の下部ガス吹出し口と、を備えていてもよい。このような構成によると、炉内の上部、中間部及び下部のそれぞれにヒータ及びガス吹出し口が設けられることで、炉内温度及び/又は炉内雰囲気を均一化することができる。
【実施例
【0019】
(実施例1) 以下、実施例1に係るバッチ式熱処理炉10について説明する。図1,2に示すように、バッチ式熱処理炉10は、炉床20と、炉床20の上方を覆う炉体12と、炉床20と炉体12の間に形成される炉内空間S内に配置される複数のヒータ30及び複数のガス導入管40を備えている。
【0020】
炉床20は、耐火物によって構成されており、主炉床22と、主炉床22に設置された4つの副炉床24と、主炉床20の周囲に配置された固定床26と、を備えている。主炉床22は、円板状の外形状を有しており、その中心軸(すなわち、主炉床22の中心を通って上下方向に伸びる線)が炉体12の軸線に一致するように配置されている。主炉床22は、図示しない駆動装置に接続されており、その中心軸(炉体12の軸線)周りに回転可能となっている。
【0021】
副炉床24は、円板状の形状を有しており、主炉床22に対して回転可能に設置されている。本実施例では、4つの副炉床24が周方向に等間隔を空けて設置されている(すなわち、4つの副炉床24は、周方向に90°間隔で設置されている。)。4つの副炉床24のそれぞれは、図示しない駆動装置に接続されており、その軸線(すなわち、副炉床24の中心を通って上下方向に伸びる線)周りに回転可能となっている。4つの副炉床24の軸線のそれぞれは、主炉床22の軸線と平行であり、主炉床22の軸線から等距離に配置されている。主炉床22の上面と副炉床24の上面は面一となっており、両者の上面に被処理物Wが載置可能となっている。
【0022】
主炉床22と副炉床24のそれぞれは、回転方向及び回転速度の変更停止が可能となっている。主炉床22が回転することで被処理物Wはいわゆる公転し、副炉床24が回転することで被処理物Wはいわゆる自転をすることになる。各炉床22,24の回転方向は任意に設定することができ、主炉床22及び副炉床24が図1の時計回り又は反時計回りに回転してもよいし、主炉床22が時計回りに回転する一方で副炉床24が反時計回りに回転してもよいし、主炉床22が反時計回りに回転する一方で副炉床24が時計回りに回転してもよい。主炉床22及び副炉床24の回転速度及び回転方向を適宜制御することで、主炉床22及び/又は副炉床24上に載置された被処理物Wを均一に加熱することができる。
【0023】
固定床26は、主炉床22の周囲に配置されている。具体的には、固定床26は、平面視するとリング形状を有しており、主炉床22と炉体12の側壁14の間に配置されている。固定床26は、ハウジングに対して固定されており、固定床26に対して主炉床22及び副炉床24が回転するようになっている。
【0024】
炉体12は、耐火物によって構成されており、円筒状の側壁14と、円板状の天井壁16を備えている。側壁14は、その下端部が固定床26に当接し、その上端部が天井壁16まで伸びている。天井壁16は、側壁14の上端部に当接し、側壁14の上端の開口部を閉じている。本実施例では、側壁14と天井壁16と炉床20によって、被処理物を処理する炉内空間Sが形成されている。炉床20と天井壁16が円板状をしており、側壁14が円筒状をしているため、炉内空間Sは円柱形状をしている。上述の説明から明らかなように、炉内空間Sの軸線は、炉床20の軸線と一致している。なお、天井壁16の中央には、図示しない排気口が形成されており、排気口より炉内空間S内のガスを炉外に排気可能となっている。
【0025】
複数のヒータ30は、図示しない外部電源から供給される電力によって発熱し、被処理物Wを加熱するために炉内雰囲気温度を制御する。図2、3に示すように、複数のヒータ30は、U字状に折り曲げられており、U字状に折り曲げられた部分に設けられる発熱部34と、発熱部34から上方に伸びる2つの非発熱部32を備えている。発熱部34は、通電により高温となる部分であり、炉内空間Sに位置している。非発熱部32は、発熱部34と比較して電気抵抗値が小さな材質で形成されており、天井壁16を貫通し、その端部が炉外に位置している。ヒータ30は、非発熱部32の長さを調整することで、発熱部34の炉内空間Sにおける位置(すなわち、上下方向の位置)が調整されている。具体的には、複数のヒータ30は、炉内空間Sの下部に発熱部34が位置する下部ヒータ30a,30dと、炉内空間Sの中間部に発熱部34が位置する中間部ヒータ30b,30eと、炉内空間Sの上部に発熱部34が位置する上部ヒータ30c,30fに分類される。
【0026】
図1,3に示すように、複数のヒータ30は、円柱形状の炉内空間Sに対して径方向については、側壁14の内周面15と主炉床22の外周面の間(すなわち、側壁14と被処理物Wの間)に位置している。また、複数のヒータ30は、円柱形状の炉内空間Sに対して周方向については、側壁14の内周面15に沿って間隔を空けて配置されている。具体的には、図3に示すように、2つの下部ヒータ30a,30aが周方向に並んで配置され、これら下部ヒータ30a,30aに隣接して2つの中間部ヒータ30b、30bが配置され、これら中間部ヒータ30b,30bに隣接して上部ヒータ30c、30cが配置され、以下同様に、下部ヒータ30d,30d、中間部ヒータ30e、30e、上部ヒータ30f、30fが順に配置される。下部ヒータ30a,30aの間、中間部ヒータ30b,30bの間、上部ヒータ30c、30cの間、下部ヒータ30d,30dの間、中間部ヒータ30e、30eの間、上部ヒータ30f、30fの間のそれぞれには、周方向に間隔が設けられている。下部ヒータ30a,30aと中間部ヒータ30b,30bの間、中間部ヒータ30b,30bと上部ヒータ30c、30cの間、上部ヒータ30c、30cと下部ヒータ30d,30dの間、下部ヒータ30d,30dと中間部ヒータ30e、30eの間、中間部ヒータ30e、30eと上部ヒータ30f、30fの間のそれぞれにも、周方向に間隔が設けられている。
【0027】
複数のガス導入管40は、図示しないガス供給源と接続され、ガス供給源から供給される雰囲気ガスを炉内空間Sに供給する。図2、3に示すように、複数のガス導入管40のそれぞれは、天井壁16を貫通して炉内空間Sに進入し、その下端が炉床20の近傍まで伸びている。天井壁16を貫通してガス導入管40が配置されているため、ガス導入管40を配置する位置の設計自由度が向上し、炉内の所望の位置にガス導入管40を配置することができる。図2に示すように、複数のガス導入管40a~40fは、炉内空間Sに対して径方向については、側壁14の内周面15と主炉床22の外周面の間(すなわち、側壁14と被処理物Wの間)に配置されており、より詳細には、ヒータ30と略同一の位置に配置されている。また、ガス導入管40a~40fは、炉内空間Sに対して周方向については、上部ヒータ30f、30fと下部ヒータ30a,30aの間、下部ヒータ30a,30aと中間部ヒータ30b,30bの間、中間部ヒータ30b,30bと上部ヒータ30c、30cの間、上部ヒータ30c、30cと下部ヒータ30d,30dの間、下部ヒータ30d,30dと中間部ヒータ30e、30eの間、中間部ヒータ30e、30eと上部ヒータ30f、30fの間に配置されている。すなわち、複数のガス導入管40は、側壁14の内周面15に沿って、ヒータ30と重ならないように周方向に間隔を空けて配置されている。
【0028】
図5に示すように、ガス導入管40には、複数のガス吹出し口42が形成されている。ガス供給源からガス導入管40に供給された雰囲気ガスは、ガス吹出し口42から炉内空間Sに吹出されるようになっている。ガス導入管40に対してガス吹出し口42を形成する位置(高さ方向の位置)を調整することで、炉内空間Sに雰囲気ガスを供給する高さ方向の位置が調整されている。具体的には、図3に示すように、下部ヒータ30a,30aに隣接するガス導入管40aでは、下部ヒータ30a,30aの発熱部34と同一の高さ(すなわち、炉内空間Sの下部)にガス吹出し口42が形成されている。中間部ヒータ30b,30bに隣接するガス導入管40bでは、中間部ヒータ30b,30bの発熱部34と同一の高さ(すなわち、炉内空間Sの中間部)にガス吹出し口42が形成されている。上部ヒータ30c,30cに隣接するガス導入管40cでは、上部ヒータ30c,30cの発熱部34と同一の高さ(すなわち、炉内空間Sの上部)にガス吹出し口42が形成されている。同様に、ガス導入管40dでは炉内空間Sの下部に、ガス導入管40eでは炉内空間Sの中間部に、ガス導入管40fでは炉内空間Sの上部にガス吹出し口42が形成されている。なお、本実施例では、ガス導入管40に複数のガス吹出し口42を形成したが(図5)、このような例に限られず、例えば、ガス導入管40の軸線方向に伸びるスリット状の開口をガス導入管40に形成してもよい。
【0029】
また、図4に示すように、ガス導入管40に対してガス吹出し口42を形成する位置(ガス導入管40の周方向の位置)を調整することで、炉内空間Sに雰囲気ガスを吹き出す方向が調整されている。本実施例では、図1,4に示すように、ガス吹出し口42からガスを吹き出す方向は、側壁14の内周面15に沿った方向(すなわち、内周面15の接線方向)に調整されている。図3から明らかなように、ガス導入管40aのガス吹出し口42からは下部ヒータ30a,30aの発熱部34に向かって雰囲気ガスが吹き出され、ガス導入管40bのガス吹出し口42からは中間部ヒータ30b,30bの発熱部34に向かって雰囲気ガスが吹き出され、ガス導入管40cのガス吹出し口42からは上部ヒータ30c,30cの発熱部34に向かって雰囲気ガスが吹き出される。同様に、ガス導入管40dのガス吹出し口42からは下部ヒータ30d,30dの発熱部34に、ガス導入管40eのガス吹出し口42からは中間部ヒータ30e,30eの発熱部34に、ガス導入管40fのガス吹出し口42からは上部ヒータ30f,30fの発熱部34に雰囲気ガスが吹き出される。
【0030】
上記のバッチ式熱処理炉10により被処理物Wを熱処理する場合は、まず、炉体12に対し炉床20を下方に移動させ、次いで、炉床20を水平方向に移動させた後に、炉床20上に被処理物Wを載置する。例えば、副炉床24の上面に被処理物Wを載置する。次に、炉床20を水平方向に移動させて炉体12の直下に配置した後、炉床20を上方に移動させて炉体12に嵌合させることで、炉内空間Sを密閉する。炉内空間Sを密閉すると、ガス導入管40から炉内空間Sに雰囲気ガスを供給すると共に、天井壁16の排気口より炉内空間S内のガスを排気し、炉内空間Sを雰囲気ガスで置換する。このとき、ガス導入管40のガス吹出し口42から炉体12の側壁14に沿って雰囲気ガスが吹き出されるため、炉内空間Sは側壁14側から炉内中心に向かって徐々に雰囲気ガスで置換される。また、ガス導入管40a,40dのガス吹出し口42からは炉内下部に雰囲気ガスが吹出され、ガス導入管40b,40eのガス吹出し口42からは炉内中間部に雰囲気ガスが吹出され、ガス導入管40c,40fのガス吹出し口42からは炉内上部に雰囲気ガスが吹出される。このため、炉内空間Sの上部から下部まで均等に短時間で雰囲気ガスに置換される。
【0031】
炉内空間Sが雰囲気ガスで置換されると、次に、ヒータ30に電力を供給し、被処理物Wを加熱しながら、炉内雰囲気を所定の温度に昇温する。この際、主炉床22及び副炉床24が回転することで、被処理物Wは公転しながら自転し、被処理物Wの全体が均一に加熱される。また、ヒータ30a,30dは被処理物Wの下部を加熱し、ヒータ30b,30eは被処理物Wの中間部を加熱し、ヒータ30c,30fは被処理物Wの上部を加熱する。このため、被処理物Wは、その上部から下部までを偏りなく加熱される。なお、ヒータWの出力は予め設定されたパターンで制御され、これによって、被処理物Wの温度は予め設定された温度プロファイルに従って変化する。これにより、被処理物Wに所望の熱処理が実施される。被処理物Wの熱処理が終了すると、炉体12に対して炉床20を下方に移動させ、炉内空間Sより被処理物Wが取り出される。
【0032】
ここで、被処理物Wに熱処理を実施する際に、炉内空間Sの雰囲気ガスを大気状態から新たな雰囲気ガスに置換することがある。この場合も、ガス導入管40から炉内空間Sに雰囲気ガスを供給すると共に、天井壁16の排気口より炉内空間S内のガス(置換前の雰囲気ガス)を排気し、炉内空間Sを新たな雰囲気ガスに置換する。このとき、ヒータ30には電力が供給され、ガス導入管40から炉内空間Sに供給される雰囲気ガスを加熱する。すなわち、ガス導入管40のガス吹出し口42からは、炉体12の側壁14に沿って雰囲気ガスが吹き出され、雰囲気ガスが吹き出される位置にはヒータ30の加熱部34が位置している。このため、ガス導入管40のガス吹出し口42から吹出された雰囲気ガスは、ヒータ30の発熱部34で加熱されながら、炉内空間Sに流れていくことになる。これによって、炉内空間Sは、ガス吹出し口42から吹出され、かつ、ヒータ30で加熱された雰囲気ガスによって側壁14側から炉中央に向かって順に置換される。また、複数のガス導入管40a~40fから炉内空間Sに雰囲気ガスが供給されるため、炉内空間Sの上部から下部まで偏ることなく雰囲気ガスに置換される。このため、被処理物Wが載置された位置の周辺において、その雰囲気温度が周方向及び上下方向に不均一となることが抑制される。これによって、被処理物Wの熱処理品質を向上することができる。
【0033】
上記のバッチ式熱処理炉10では、ガス導入管40とヒータ30が周方向にずれた位置に配置されている。このため、被処理物Wの加熱や炉内雰囲気温度の制御に適した位置にヒータ30を配置することができる一方、炉内雰囲気の制御に適した位置にガス導入管40を配置することができる。これによって、炉内温度及び炉内雰囲気を所望の状態に制御することができる。
【0034】
また、バッチ式熱処理炉10では、ガス導入管40のガス吹出し口42から炉内空間の周方向に雰囲気ガスを吹き出している。これによって、炉内雰囲気が、側壁14側から炉中心に向かって順に置換され、被処理物Wが配置される位置において炉内雰囲気が周方向にばらつくことを抑制することができる。
【0035】
また、上記の実施例では、主炉床22及び副炉床24は、駆動連結方式を変更することで、ガス吹出し口42から雰囲気ガスを吹き出す方向を主炉床22及び/又は副炉床24の回転方向と同一方向又は逆方向とすることができる。すなわち、主炉床22及び副炉床24をガス吹出し方向に回転させてもよいし、主炉床22及び副炉床24をガス吹出し方向とは逆に回転させてもよい。あるいは、主炉床22と副炉床24の一方をガス吹出し方向に回転させ、主炉床22と副炉床24の他方をガス吹出し方向とは逆に回転させてもよい。さらに、主炉床22と副炉床24の回転方向だけでなく回転速度も変更することができる。このように、ガス吹出し方向に対して主炉床22と副炉床24の回転方向及び/又は回転速度を適宜調整することで、炉内雰囲気及び炉内温度を所望の状態に制御することができる。
【0036】
なお、上記の実施例に係るバッチ式熱処理炉10では、ガス吹出し口42から雰囲気ガスを吹き出す方向が固定されていたが、本明細書に開示の技術は、このような例に限られない。例えば、ガス導入管40を天井壁16に対して回転可能に支持し、ガス導入管40をその軸線周りに回転させることで、ガス吹出し口42から雰囲気ガスが吹き出す方向を変更可能としてもよい。このような構成を採用すると、バッチ式熱処理炉の運転状況に応じて、雰囲気ガスの吹き出し方向を主炉床22の回転方向(被処理物Wの公転方向)と同一又は逆方向とし、あるいは、副炉床24の回転方向(被処理物Wの自転方向)と同一又は逆方向とすることができる。これによって、被処理物Wの周辺の雰囲気温度及び雰囲気ガスを所望の状態に制御することができる。また、かかる構成を採用すると、天井壁16に対するガス導入管40の回転角度を調整することで、雰囲気ガスを炉中心に向かって供給することもできる。この場合、ガス導入管40から炉中心に向かって供給した雰囲気ガスが、主炉床22及び副炉床24の回転(すなわち、被処理物Wの公転及び自転)によって速やかに攪拌され、炉中心の雰囲気ガスを短時間で置換することができる。
【0037】
また、上記の実施例に係るバッチ式熱処理炉10では、ガス導入管40の炉内径方向の位置が、ヒータ30の炉内径方向の位置と同一であったが、本明細書に開示の技術は、このような例に限られない。例えば、ガス導入管40をヒータ30よりも側壁14の内周面により近い位置に配置してもよい。
【0038】
また、上記のバッチ式熱処理炉10では、ガス導入管40が天井壁16を貫通して配置されていたが、本明細書に開示の技術は、このような例に限られない。例えば、図6,7に示すように、炉体12の側壁14を貫通するようにガス導入管44を配置してもよい。この場合において、ガス導入管44の先端は炉内空間Sに位置し、側壁14に沿って雰囲気ガスが吹き出されるようにガス吹出し口42が形成される(図7参照)。このような構成によっても、実施例1のバッチ式熱処理炉10と同様の作用効果を奏することができる。また、ガス導入管44は、その先端が炉内空間Sに露出するだけでよいため、ガス導入管44の長さを短くすることができる。なお、ガス導入管44が側壁14を貫通する場合においても、側壁14に対してガス導入管44をその軸線周りに回転可能に支持し、ガス導入管44をその軸線周りに回転させることでガス吹出し方向を変更可能となっていてもよい。
【0039】
また、図8に示すように、側壁14を貫通するガス導入管44は、水平管46と、水平管46の先端に接続された垂直管48を備えるように構成してもよい。この場合、水平管46は側壁14を貫通し、垂直管48は炉内空間Sに位置する。垂直管48には複数のガス吹出し口49a~49cが形成され、複数のガス吹出し口49a~49cから炉内空間Sに雰囲気ガスを供給することができる。
【0040】
(実施例2) 次に、実施例2に係るバッチ式熱処理炉110について説明する。バッチ式熱処理炉110は、実施例1と異なり、ガス導入管140が炉体112の側壁114に埋め込まれている点で相違し、その他の点では実施例1のバッチ式熱処理炉10と略同一の構成をしている。以下では、実施例1と異なる点を主に説明する。
【0041】
図9~11に示すように、バッチ式熱処理炉110は、実施例1と同様に、炉床120と、炉体112と、複数のヒータ130及び複数のガス導入管140を備えている。炉床120は実施例1の炉床20と同様の構成を有しており、ヒータ130も実施例1のヒータ30と同様の構成を備えている。バッチ式熱処理炉110では、炉体112とガス導入管140が、実施例1の炉体12とガス導入管40と相違している。
【0042】
炉体112は、耐火物によって構成されており、側壁114と天井壁116を備えている。側壁114は、実施例1の側壁14と略同一の構成を有しているが、その内周面115に複数の凹所118が形成されている点で相違している。複数の凹所118は、周方向に間隔を空けて配置されており、ガス導入管140を配置する位置に設けられている。具体的には、複数の凹所118は、隣接する下部ヒータ130の間と、隣接する中間部ヒータ130の間と、隣接する上部ヒータ130,130の間にそれぞれ配置されている(図11参照)。各凹部118は、天井壁116の下端の位置から炉床120の近傍の位置まで上下方向に伸びている。各凹部118の周方向の開口幅は、炉の中心側が広く、炉の中心から離れるに従って徐々に狭くなっている(すなわち、炉の外側から中心に向かって開口幅が広がってゆく形状(いわゆる、ラッパ形状)を有している。)。なお、天井壁116は、実施例1の天井壁16と同一の構成を備えている。
【0043】
複数のガス導入管140は、実施例1と同様に複数のガス吹出し口が形成されている。各ガス導入管140は、、天井壁116を貫通し、側壁114の凹所118内に配置されている。より詳細には、ガス導入管140は、凹所118の底部(最外周側となる位置)に配置されている。ヒータ130は、側壁114の内周面115より内側に位置するため、ガス導入管140はヒータ130より外側に位置していることになる。ガス導入管140は、天井壁116に対して、その軸線周りに回転可能に支持されている。このため、図12に示すように、ガス導入管140から雰囲気ガスを吹き出す方向は、凹所118の開口幅の範囲内で周方向に調整可能となっている。すなわち、ガス導入管140からの雰囲気ガスは、その左右に配置されているヒータ130の発熱部に向かって吹き出すことが可能となっている。ヒータ130に向かって雰囲気ガスを吹き出すことで、ヒータに衝突した雰囲気ガスの一部が側壁114の内周面115に沿って流れる。この結果、炉内空間Sは、ガス導入管140から供給された雰囲気ガスによって外周側から炉内側に向かって順に置換されることになる。その結果、実施例1のバッチ式熱処理炉10と同様の効果を奏することができる。
【0044】
実施例2のバッチ式熱処理炉110では、側壁114の凹所118にガス導入管140が配置される。このため、主炉床120の外周面と側壁114の内周面115との間の距離を短くすることができ、炉内空間Sの容積を小さくすることができる。その結果、ガス導入管140から供給した雰囲気ガスで炉内空間Sを置換するのに要する時間を短縮化することができる。また、雰囲気ガスの供給量を少なくすることができるため、熱処理効率を向上することができる。さらに、炉体12の放熱面積を小さくできるため、ヒータ130の能力を小さくすることができる。
【0045】
なお、上記の実施例では、ガス吹出し口42、142の位置(高さ方向の位置)がヒータ30,130の発熱部34,134に対応する位置(高さ方向の位置)に設けられていたが、本明細書に開示の技術は、このような例に限られない。例えば、ガス吹出し口が非発熱部の位置に対応する高さに設けられていてもよいし、発熱部と非発熱部にわたって設けられていてもよい。さらには、上部ヒータや中間部ヒータに隣接するガス導入管に設けられるガス吹出し口は、上部ヒータや中間部ヒータが設けられていない位置(高さ)に設けてもよい。例えば、上部ヒータに隣接するガス導入管については、炉内空間Sの中間の高さあるいは下部の高さにガス吹出し口を形成してもよい。
【0046】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
10 バッチ式熱処理炉10
12 炉体
14 側壁
15 内周面
16 天井壁
20 炉床
22 主炉床
24 副炉床
26 固定床
30a,30d 下部ヒータ
30b,30e 中間部ヒータ
30c,30f 上部ヒータ
32 非発熱部
34 発熱部
40 ガス導入管
S 炉内空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12