(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20220107BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20220107BHJP
C07D 335/16 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C09K3/10 B
C09K3/10 E
C09K3/10 L
C07D335/16
(21)【出願番号】P 2021533847
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2021020654
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2020096389
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大浦 剛
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104662(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225543(WO,A1)
【文献】特開2006-284976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0248110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C07D 335/16
C08F 2/50
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と光増感性化合物とを含有し、
前記光増感性化合物は、脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物を含み、
前記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物は、下記式(1)で表される構造を有す
る液晶表示素子用シール剤。
【化1】
式(1)中、Xは、脂環式骨格を含む基である。
【請求項2】
前記硬化性樹脂100重量部に対する前記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物の含有量が0.3重量部以上5重量部以下である請求項
1記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項3】
前記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル化合物とエポキシ化合物とを含む請求項
1又は2記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項4】
請求項
1、2又は3記載の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料。
【請求項5】
請求項
1、2若しくは3記載の液晶表示素子用シール剤又は請求項
4記載の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光部硬化性に優れ、かつ、光増感性化合物を溶解させる際の増粘やゲル化を防止することができる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような光熱併用硬化型のシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が用いられている。
滴下工法では、まず、2枚の電極付き透明基板の一方に、ディスペンスにより枠状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下し、すぐに他方の透明基板を貼り合わせ、シール部に紫外線等の光を照射して仮硬化を行う。その後、液晶アニール時に加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製する。基板の貼り合わせを減圧下で行うようにすれば、極めて高い効率で液晶表示素子を製造することができ、現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0003】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、装置の小型化は最も求められている課題である。装置の小型化の手法としては、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、狭額縁設計ともいう)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-133794号公報
【文献】特開平5-295087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
狭額縁設計ではシール剤がブラックマトリックスの直下に配置されるため、滴下工法を行うと、シール剤を光硬化させる際に照射した光が遮られ、シール剤の内部まで光が到達せず硬化が不充分となるという問題があった。このようにシール剤の硬化が不充分となると、未硬化のシール剤成分が液晶中に溶出して液晶汚染を発生させやすくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、遮光部硬化性に優れ、かつ、光増感性化合物を溶解させる際の増粘やゲル化を防止することができる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬化性樹脂と光増感性化合物とを含有し、上記光増感性化合物は、脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物を含む液晶表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、液晶表示素子用シール剤に長波長の光に対する増感効果の高い光増感性化合物を配合することにより、シール剤の遮光部硬化性を向上させることを検討した。しかしながら、このような光増感性化合物を充分に溶解させるためにシール剤を高温で加熱すると、シール剤が増粘したり、ゲル化したりすることがあるという問題があった。そこで本発明者らは、硬化性樹脂に対する溶解性に優れる特定の構造を有する化合物を光増感性化合物として用いることを検討した。その結果、遮光部硬化性に優れ、かつ、光増感性化合物を溶解させる際に高温での加熱を必要としないため増粘やゲル化を防止することができる液晶表示素子用シール剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、光増感性化合物を含有する。
上記光増感性化合物は、脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物を含む。
上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物は、長波長の光に対する増感効果に優れ、かつ、硬化性樹脂に対する溶解性に優れる。そのため、上記光増感性化合物として上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物を含有する本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光部硬化性に優れ、かつ、光増感性化合物を溶解させる際に高温での加熱を必要としないため増粘やゲル化を防止することができるものとなる。
なお、本明細書において上記「光増感性化合物」は、光重合開始剤及び増感剤を含む。
【0010】
上記光増感性化合物は、脂環式骨格を有することにより、得られる液晶表示素子用シール剤のゲル化の防止に特に効果を有する。
上記脂環式骨格としては、例えば、シクロヘキサン骨格、ジシクロペンタジエン型骨格、シクロヘプタン骨格、シクロオクタン骨格等が挙げられる。
また、硬化性樹脂に対する溶解性の観点から、脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物は、芳香環骨格を有さないことが好ましい。
【0011】
上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物は、上記チオキサントン骨格を主鎖の末端に有することが好ましい。
また、上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物は、1分子中に2つ以上のチオキサントニル骨格を有することが好ましい。上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物が1分子中に2つ以上のチオキサントニル骨格を有することにより、得られる液晶表示素子用シール剤が遮光部硬化性により優れるものとなる。
【0012】
上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物は、下記式(1)で表される構造を有することが好ましく、下記式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0013】
【0014】
式(1)中、Xは、脂環式骨格を含む基である。
【0015】
【0016】
式(2)中、Xは、脂環式骨格を含む基である。
【0017】
上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物の分子量の好ましい下限は700、好ましい上限は1100である。上記チオキサントン化合物の分子量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が遮光部硬化性及び低液晶汚染性により優れるものとなる。上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物の分子量のより好ましい下限は750、より好ましい上限は1000である。
なお、本明細書において上記「分子量」は、分子構造が特定される化合物については、構造式から求められる分子量であるが、重合度の分布が広い化合物及び変性部位が不特定な化合物については、数平均分子量を用いて表す場合がある。また、本明細書において上記「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0018】
上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物としては、具体的には、下記式(3-1)で表される化合物、下記式(3-2)で表される化合物が好ましい。
【0019】
【0020】
上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物の含有量は、後述する硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.3重量部、好ましい上限が5重量部である。上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物の含有量が0.3重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が遮光部硬化性により優れるものとなる。上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物の含有量が5重量部以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が低液晶汚染性により優れるものとなる。上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0021】
上記光増感性化合物は、上記脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物以外のその他の光増感性化合物を含んでもよい。
上記その他の光増感性化合物としては、例えば、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、その他のチオキサントン化合物等が挙げられる。
上記その他の光増感性化合物としては、具体的には例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン、1,2-(ジメチルアミノ)-2-((4-メチルフェニル)メチル)-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-(フェニルチオ)フェニル)-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、下記式(4)で表される化合物等が挙げられる。
上記その他の光増感性化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0022】
【0023】
上記その他の光増感性化合物の含有量は、後述する硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記その他の光増感性化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が液晶汚染を抑制しつつ、保存安定性や光硬化性により優れるものとなる。上記その他の光増感性化合物の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0024】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル化合物とエポキシ化合物とを含有することが好ましい。
【0025】
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記(メタ)アクリル化合物は、反応性の観点から1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、上記「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを意味する。
【0026】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。
【0030】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノール型エポキシ化合物、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、スルフィド型エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、アルキルポリオール型エポキシ化合物、ゴム変性型エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0031】
上記ビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱ケミカル社製)、EPICLON EXA-850CRP(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、RE-810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EX-201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX-4000H(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-50TE(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-80DE(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP4032、EPICLON EXA-4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N-770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N-670-EXP-S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、NC-3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ESN-165S(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱ケミカル社製)、EPICLON 430(DIC社製)、TETRAD-X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ZX-1542(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、EPICLON 726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX-611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YR-450、YR-207(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX-147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ化合物のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC-1312、YSLV-80XY、YSLV-90CR(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱ケミカル社製)、EXA-7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0032】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレート、ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3708、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYL RDX63182等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EA-1010、EA-1020、EA-5323、EA-5520、EA-CHD、EMA-1020等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシエステルM-600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA等が挙げられる。
上記ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、デナコールアクリレートDA-141、デナコールアクリレートDA-314、デナコールアクリレートDA-911等が挙げられる。
【0033】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多官能イソシアネート化合物に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0034】
上記多官能イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
また、上記多官能イソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰の多官能イソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長された多官能イソシアネート化合物も使用することができる。
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0036】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記三価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0037】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレート、ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレート、根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、M-1100、M-1200、M-1210、M-1600等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260等が挙げられる。
上記根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、アートレジンUN-330、アートレジンSH-500B、アートレジンUN-1200TPK、アートレジンUN-1255、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-7100、アートレジンUN-9000A、アートレジンUN-9000H等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、U-2HA、U-2PHA、U-3HA、U-4HA、U-6H、U-6HA、U-6LPA、U-10H、U-15HA、U-108、U-108A、U-122A、U-122P、U-324A、U-340A、U-340P、U-1084A、U-2061BA、UA-340P、UA-4000、UA-4100、UA-4200、UA-4400、UA-5201P、UA-7100、UA-7200、UA-W2A等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、AH-600、AI-600、AT-600、UA-101I、UA-101T、UA-306H、UA-306I、UA-306T等が挙げられる。
【0038】
上記エポキシ化合物としては、例えば、上述したエポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物や、部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物とは、例えば、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味する。
【0039】
上記硬化性樹脂として上記(メタ)アクリル化合物と上記エポキシ化合物とを含有する場合、又は、上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物を含有する場合、上記硬化性樹脂中の(メタ)アクリロイル基とエポキシ基との合計中における(メタ)アクリロイル基の比率を30モル%以上95モル%以下になるようにすることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基の比率がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性により優れるものとなる。
【0040】
上記硬化性樹脂は、得られる液晶表示素子用シール剤を低液晶汚染性により優れるものとする観点から、-OH基、-NH-基、-NH2基等の水素結合性のユニットを有するものが好ましい。
【0041】
上記硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0042】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱重合開始剤を含有してもよい。
上記熱重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物や有機過酸化物等で構成されるものが挙げられる。なかでも、液晶汚染を抑制する観点から、アゾ化合物で構成される開始剤(以下、「アゾ開始剤」ともいう)が好ましく、高分子アゾ化合物で構成される開始剤(以下、「高分子アゾ開始剤」ともいう)がより好ましい。
上記熱重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
なお、本明細書において上記「高分子アゾ化合物」とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイル基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0043】
上記高分子アゾ化合物の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶への悪影響を防止しつつ、硬化性樹脂へ容易に混合することができる。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0044】
上記高分子アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記高分子アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記高分子アゾ開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ開始剤としては、例えば、V-65、V-501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0045】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0046】
上記熱重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記熱重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が液晶汚染を抑制しつつ、保存安定性や熱硬化性により優れるものとなる。上記熱重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0047】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱硬化剤を含有してもよい。
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
上記熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0048】
上記有機酸ヒドラジドとしては、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の有機酸ヒドラジド、味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジド等が挙げられる。
上記大塚化学社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、SDH、ADH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアUDH-J等が挙げられる。
【0049】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく、熱硬化性により優れるものとすることができる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0050】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による更なる接着性の向上、線膨張率の改善、硬化物の耐湿性の向上等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0051】
上記充填剤としては、無機充填剤や有機充填剤を用いることができる。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。
上記有機充填剤としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
上記充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0052】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を悪化させることなく、接着性の改善等の効果により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0053】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0054】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。これらは、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができる。
上記シランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0055】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0056】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、応力緩和剤、反応性希釈剤、揺変剤、スペーサー、硬化促進剤、レベリング剤、重合禁止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0057】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、硬化性樹脂と、光増感性化合物と、必要に応じて用いられるシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0058】
本発明の液晶表示素子用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0059】
上記導電性微粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0060】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【0061】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、液晶滴下工法による液晶表示素子の製造に好適に用いることができる。液晶滴下工法によって本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
まず、基板に本発明の液晶表示素子用シール剤を塗布し、枠状のシールパターンを形成する工程を行う。次いで、本発明の液晶表示素子用シール剤等が未硬化の状態で液晶の微小滴をシールパターンの枠内全面に滴下塗布し、すぐに別の基板を重ね合わせる工程を行う。その後、シールパターン部分に光を照射してシール剤を光硬化させる工程を行う方法により、液晶表示素子を得ることができる。照射する光を可視光等の長波長の光とすることにより、周辺部材への光照射によるダメージを緩和でき、更にはシール剤が遮光部に配置される場合であっても充分にシール剤を光硬化させることができる。またシール剤を光硬化させる工程に加えてシール剤を加熱して硬化させる工程を行ってもよい。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、遮光部硬化性に優れ、かつ、光増感性化合物を溶解させる際の増粘やゲル化を防止することができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】遮光部硬化性の評価方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0065】
(式(3-1)で表される化合物の作製)
200mL容の丸型フラスコに、水素化ビスフェノールA型エポキシ化合物(三菱ケミカル社製、「jER YX8000」)4.10g、2-ヒドロキシチオキサントン5.02g、炭酸カリウム3.93g、及び、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド50mLを加え、120℃で終夜撹拌した。撹拌後、エバポレーターで溶媒を除去し、シリカカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(重量比))にて精製を行い、上記式(3-1)で表される化合物を得た。
なお、得られた式(3-1)で表される化合物の構造は、1H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により確認した。
【0066】
(式(3-2)で表される化合物の作製)
200mL容の丸型フラスコに、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物(ADEKA社製、「アデカレジン EP-4088」)3.40g、2-ヒドロキシチオキサントン5.02g、炭酸カリウム3.93g、及び、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド50mLを加え、120℃で終夜撹拌した。撹拌後、エバポレーターで溶媒を除去し、シリカカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(重量比))にて精製を行い、上記式(3-2)で表される化合物を得た。
得られた式(3-2)で表される化合物の構造は、1H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により確認した。
【0067】
(式(5)で表される化合物の作製)
200mL容の丸型フラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製、「EPICLON EXA-830CRP」)3.20g、2-ヒドロキシチオキサントン5.02g、炭酸カリウム3.93g、及び、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド50mLを加え、120℃で終夜撹拌した。撹拌後、エバポレーターで溶媒を除去し、シリカカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(重量比))にて精製を行い、下記式(5)で表される化合物を得た。
得られた式(5)で表される化合物の構造は、1H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により確認した。
【0068】
【0069】
(式(4)で表される化合物の作製)
200mL容の丸型フラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製、「EPICLON EXA-850CRP」)3.40g、及び、4-ジメチルアミノ安息香酸3.70gを加えた。次いで、塩基性触媒としてPS-PPH(バイオタージ・ジャパン社製)35.2重量部の存在下で、110℃で48時間撹拌しながら反応させることにより上記式(4)で表される化合物を得た。上記PS-PPHは、ポリスチレン(PS)にトリフェニルホスフィンを担持した塩基性触媒である。
得られた式(4)で表される化合物の構造は、1H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により確認した。
【0070】
(実施例1~5、比較例1~3)
表1に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1~5及び比較例1~3の液晶表示素子用シール剤を調製した。シール剤は、各材料の混合条件を90℃で10分、100℃で10分、120℃で10分としたものをそれぞれ調製した。
【0071】
<評価>
実施例及び比較例で得られた液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0072】
(低液晶汚染性)
サンプル瓶に液晶(チッソ社製、「JC-5001LA」)0.5gを入れ、実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤0.1gを加えて振とうした後、120℃で1時間加熱し、室温(25℃)に戻した。透明電極と配向膜(日産化学社製、「SE7492」)とを有するガラス基板の配向膜上に、実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤を正方形の枠を描くようにディスペンサーで塗布した。続いて、上記サンプル瓶から取り出した液晶の微小滴を基板上の枠内全面に滴下塗布し、真空中にて別のガラス基板を重ね合わせた。真空を解除し、メタルハライドランプを用いて100mW/cm2の光を60秒照射した。光照射は、波長420nm以下の光をカットするカットフィルター(420nmカットフィルター)を介して行った。その後、120℃で1時間加熱することによりシール剤を熱硬化させて液晶表示素子を得た。得られた液晶表示素子について、1.5Vの交流電圧を印加しながら1Vの直流電圧を印加した際の残像の発生具合を目視にて確認した。
その結果、残像が全く確認されなかった場合を「○」、わずかに残像が確認された場合を「△」、酷い残像が確認された場合を「×」として低液晶汚染性を評価した。
【0073】
(遮光部硬化性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤のうち、各材料の混合条件を90℃で60分としたものと、120℃で60分としたものについての遮光部硬化性を、以下に示すように各測定点のアクリロイル基の転化率を測定することにより評価した。
図1は、遮光部硬化性の評価方法を説明する模式図である。
コーニング社製のガラス(長さ30mm、幅30mm、厚さ0.7mm)の片面の半分をクロム蒸着した基板1と、片面の全体をクロム蒸着した基板2とをそれぞれ準備した(
図1(a))。基板1のクロム蒸着した面側の中央部に、実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤に5μmのポリマービーズを1重量%添加した組成物をそれぞれ20mg塗布し、基板1における組成物を塗布した面側と、基板2におけるクロム蒸着した面側とを重ね合わせてから充分に押しつぶした(
図1(b))。
次に、重ね合わせた基板に、基板1面側からメタルハライドランプを用いて420nm以下カットフィルタを介した状態で、100mW/cm
2の光を30秒照射した後、カッターを用いて基板1、2を剥がした。次いで、顕微IR法によって紫外線直接照射部(場所A)、紫外線直接照射部の際から遮光部側へ25μm離れた点(場所B)、及び、紫外線直接照射部の際から遮光部側へ50μm離れた点(場所C)上のシール剤(
図1(c))について、赤外分光装置(BIORAD社製、「FTS3000」)を用いてアクリロイル基由来のピークを確認した。815~800cm
-1のピーク面積をアクリロイル基由来のピーク面積とし、845~820cm
-1のピーク面積をリファレンスピーク面積として、下記式によりアクリロイル基の転化率を算出した。
アクリロイル基の転化率が90%以上であった場合を「○」、70%以上 90%未満であった場合を「△」、70%未満であった場合を「×」として遮光部硬化性を評価した。
アクリロイル基の転化率(%)=100×(1-(紫外線照射後のアクリロイル基由来のピーク面積/紫外線照射後のリファレンスピーク面積)/(紫外線未照射でのアクリロイル基由来のピーク面積/紫外線未照射でのリファレンスピーク面積))
【0074】
(溶解性及び増粘防止性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について、熱硬化剤、充填剤、及び、シランカップリング剤を除く各材料を表1に示した各条件で加熱した後、混合機で混合し、混合前の粘度と各条件での混合後の粘度とを測定し、(混合後の粘度)/(混合前の粘度)を増粘率とした。また、光増感性化合物の樹脂への溶解(溶け残りの有無)を目視にて確認した。
増粘率が1.05未満であり、かつ、溶け残りがなかったものを「○」、増粘率が1.05未満であり、かつ、溶け残りがあったものを「△1」、増粘率が1.05以上であり、かつ、溶け残りがなかったものを「△2」、増粘率が1.05以上であり、かつ、溶け残りがあったもの「×」として、溶解性及び増粘防止性を評価した。
なお、シール剤の粘度は、E型粘度計(BROOK FIELD社製、「DV-III」)を用い、25℃において回転速度1.0rpmの条件で測定した。
【0075】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、遮光部硬化性に優れ、かつ、光増感性化合物を溶解させる際の増粘やゲル化を防止することができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 片面半分をクロム蒸着した基板
11 クロム蒸着部
2 片面全体をクロム蒸着した基板
21 クロム蒸着部
3 場所A
4 場所B
5 場所C
【要約】
本発明は、遮光部硬化性に優れ、かつ、光増感性化合物を溶解させる際の増粘やゲル化を防止することができる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
本発明は、硬化性樹脂と光増感性化合物とを含有し、前記光増感性化合物は、脂環式骨格及びチオキサントン骨格を有する化合物を含む液晶表示素子用シール剤である。