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特許6997414過熱蒸気殺菌装置、および、過熱蒸気殺菌装置用の回転軸部
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  • 特許-過熱蒸気殺菌装置、および、過熱蒸気殺菌装置用の回転軸部 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】過熱蒸気殺菌装置、および、過熱蒸気殺菌装置用の回転軸部
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/07 20060101AFI20220107BHJP
   B01F 27/70 20220101ALI20220107BHJP
【FI】
A61L2/07
B01F7/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018073845
(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公開番号】P2019180679
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100167243
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】梶原 一信
(72)【発明者】
【氏名】波光 勉
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-189769(JP,U)
【文献】特開平03-083567(JP,A)
【文献】特開平03-261478(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033877(WO,A1)
【文献】特開2019-086161(JP,A)
【文献】特開2000-237286(JP,A)
【文献】特開平02-277534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/07
B01F 7/04
A23L 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱蒸気殺菌装置であって、
被殺菌物を供給する供給口が形成された一端と、殺菌処理物を排出する排出口が形成された他端と、を有する横型筒状部と、
前記横型筒状部内に回転可能に配置される回転軸部であって、主軸と、該主軸の軸線方向に移送される前記被殺菌物を撹拌するために前記主軸の周囲に形成された複数の撹拌羽根と、を備える回転軸部と、
前記横型筒状部内で移送および撹拌される前記被殺菌物に過熱蒸気を照射するための蒸気排出口と
を備え、
前記複数の撹拌羽根は、前記主軸の周方向において互いに異なる少なくとも3つの角度位置に配置され
前記複数の撹拌羽根は、
前記主軸から第1の方向に延在する第1の撹拌羽根と、
前記第1の撹拌羽根に対して前記主軸の軸線を中心として90度回転された位置に配置され、前記主軸から前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する第2の撹拌羽根と、
前記第1の撹拌羽根に対して前記軸線を中心として180度回転された位置に配置され、前記主軸から前記第1の方向に延在する第3の撹拌羽根と、
前記第1の撹拌羽根に対して前記軸線を中心として270度回転された位置に配置され、前記主軸から前記第2の方向に延在する第4の撹拌羽根と
を備え、
前記第1の撹拌羽根および前記第2の撹拌羽根は、前記第1の撹拌羽根と前記第2の撹拌羽根とが周方向に重複せず、かつ、前記軸線方向において前記第1の撹拌羽根と前記第2の撹拌羽根との間に隙間が形成されないように、千鳥状に配置され、
前記第3の撹拌羽根は、前記軸線方向において前記第1の撹拌羽根と同一の位置に配置
され、
前記第4の撹拌羽根は、前記軸線方向において前記第2の撹拌羽根と同一の位置に配置された
過熱蒸気殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の過熱蒸気殺菌装置であって、
前記複数の撹拌羽根は、前記主軸の軸線方向に沿って千鳥状に配置された
過熱蒸気殺菌装置。
【請求項3】
請求項2に記載の過熱蒸気殺菌装置であって、
前記複数の撹拌羽根は、前記軸線方向における一方側に最も近い位置に配置された前記撹拌羽根と、前記軸線方向における他方側に最も近い位置に配置された前記撹拌羽根と、の間において、前記軸線方向に沿った全ての位置において前記複数の撹拌羽根のうちの少なくとも1つが設置されるように配置された
過熱蒸気殺菌装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の過熱蒸気殺菌装置であって、
前記複数の撹拌羽根の各々の大きさは、互いに実質的に等しい
過熱蒸気殺菌装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の過熱蒸気殺菌装置であって、
前記複数の撹拌羽根の各々は、前記主軸から、該主軸の接線方向に延在している
過熱蒸気殺菌装置。
【請求項6】
過熱蒸気殺菌装置用の回転軸部であって、
主軸と、
前記主軸の周囲に形成された第1、第2、第3、及び第4の複数の撹拌羽根と
を備え、
前記4つの撹拌羽根は、前記主軸の周方向において互いに異なる4つの角度位置に配置されており、
前記第1の撹拌羽根および前記第2の撹拌羽根は、前記第1の撹拌羽根と前記第2の撹拌羽根とが周方向に重複せず、かつ、前記軸線方向において前記第1の撹拌羽根と前記第2の撹拌羽根との間に隙間が形成されないように、千鳥状に配置され、
前記第3の撹拌羽根は、前記軸線方向において前記第1の撹拌羽根と同一の位置に配置
され、
前記第4の撹拌羽根は、前記軸線方向において前記第2の撹拌羽根と同一の位置に配置された
過熱蒸気殺菌装置用の回転軸部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱蒸気殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過熱蒸気を用いて穀物を殺菌する装置が知られている(例えば、下記の特許文献1)。特許文献1の装置では、横型筒状部に穀物を供給し、穀物を軸線方向に送るとともに撹拌しつつ、過熱蒸気を当該穀物に照射することによって、穀物の殺菌処理が行われる。穀物の撹拌は、主軸の周囲に形成された複数の撹拌羽根によって行われる。複数の撹拌羽根は、第1の撹拌羽根と、第1の撹拌羽根に対して周方向に180回転された位置に配置される第2の撹拌羽根と、からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2017/033877
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した過熱殺菌装置は、撹拌効果や穀物の定量移送の観点から改善の余地を残している。撹拌が十分に行われないと、過熱蒸気と穀物との接触ムラが生じることになる。同様に、過熱殺菌処理装置内での穀物の移送量が軸線方向に沿って不均一になると、すなわち、横型筒状部内での穀物の滞留量が軸線方向に沿って一定していないと、過熱蒸気と穀物との接触ムラが生じることになる。このような接触ムラは、殺菌効果の低下につながり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本発明の第1の形態によれば、過熱蒸気殺菌装置が提供される。この過熱蒸気殺菌装置は、被殺菌物を供給する供給口が形成された一端と、殺菌処理物を排出する排出口が形成された他端と、を有する横型筒状部を備えている。過熱蒸気殺菌装置は、さらに、横型筒状部内に回転可能に配置される回転軸部を備えている。回転軸部は、主軸と、主軸の軸線方向に移送される被殺菌物を撹拌するために主軸の周囲に形成された複数の撹拌羽根と、を備えている。過熱蒸気殺菌装置は、さらに、横型筒状部内で移送および撹拌される被殺菌物に過熱蒸気を照射するための蒸気排出口を備えている。複数の撹拌羽根は、主軸の周方向において互いに異なる少なくとも3つの角度位置に配置される。
【0007】
かかる過熱蒸気殺菌装置によれば、複数の撹拌羽根が周方向において互いに異なる2つの角度位置に配置される従来の構成と比べて、より多くの角度位置で被殺菌物を撹拌できる。したがって、過熱蒸気と被殺菌物との接触ムラが生じることを抑制し、殺菌効果を高めることができる。また、主軸の1回の回転において被殺菌物が掻き上げられる頻度が増えるので、被殺菌物が常に掻き上げられている状態に近づけることができる。換言すれば、被殺菌物が掻き上げられている状態と、被殺菌物が横型筒状部の底に滞留している状態と、のサイクルを短くすることができる。したがって、これらの2つの状態間の差によって発生する横型筒状部の定量移送性能の低下を抑制することができる。その結果、過熱蒸気と被殺菌物との接触ムラが生じることを抑制し、殺菌効果を高めることができる。
【0008】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態において、複数の撹拌羽根は、主軸の軸線方向に沿って千鳥状に配置される。かかる形態によれば、複数の撹拌羽根の周方向における偏りと、軸線方向における偏りと、のバランスを図り、撹拌性能を向上できる。
【0009】
本発明の第3の形態によれば、第2の形態において、複数の撹拌羽根は、軸線方向における一方側に最も近い位置に配置された撹拌羽根と、軸線方向における他方側に最も近い位置に配置された撹拌羽根と、の間において、軸線方向に沿った全ての位置において複数の撹拌羽根のうちの少なくとも1つが設置されるように配置される。かかる形態によれば、軸線方向に沿った全ての位置において撹拌羽根による撹拌が行われる。したがって、軸線方向に沿った接触ムラを抑制できる。
【0010】
本発明の第4の形態によれば、第1ないし第3のいずれかの形態において、複数の撹拌羽根の各々の大きさは、互いに実質的に等しい。かかる形態によれば、被殺菌物を軸線方向に沿って均一に撹拌できる。したがって、軸線方向に沿った接触ムラをいっそう抑制できる。また、複数の撹拌羽根の製造を効率的に行える。
【0011】
本発明の第5の形態によれば、第1ないし第4のいずれかの形態において、複数の撹拌羽根の各々は、主軸から、主軸の接線方向に延在している。かかる形態によれば、第1の方向および第2の方向が主軸の径方向である場合と比べて、横型筒状部の内面に向けて被殺菌物を押しつける力が作用するので、被殺菌物同士を分離しやすくなる。したがって、撹拌性能が向上し、接触ムラをいっそう抑制できる。
【0012】
本発明の第6の形態によれば、第1ないし第5のいずれかの形態において、複数の撹拌羽根は、主軸から第1の方向に延在する第1の撹拌羽根と、第1の撹拌羽根に対して主軸の軸線を中心として90度回転された位置に配置され、主軸から第1の方向と直交する第2の方向に延在する第2の撹拌羽根と、第1の撹拌羽根に対して軸線を中心として180度回転された位置に配置され、主軸から第1の方向に延在する第3の撹拌羽根と、第1の撹拌羽根に対して軸線を中心として270度回転された位置に配置され、主軸から第2の方向に延在する第4の撹拌羽根と、を備えている。かかる形態によれば、撹拌羽根の数が過剰に増大することを抑えつつ、十分な撹拌効果が得られる。
【0013】
本発明の第7の形態によれば、第6の形態において、第1の撹拌羽根および第2の撹拌羽根は、第1の撹拌羽根と第2の撹拌羽根とが周方向に重複せず、かつ、軸線方向において第1の撹拌羽根と第2の撹拌羽根との間に隙間が形成されないように、千鳥状に配置される。第3の撹拌羽根は、軸線方向において第1の撹拌羽根と同一の位置に配置され、第4の撹拌羽根は、軸線方向において第2の撹拌羽根と同一の位置に配置される。かかる形態によれば、第6の形態の撹拌効果をいっそう高めることができる。
【0014】
本発明の第8の形態によれば、過熱蒸気殺菌装置用の回転軸部が提供される。この回転軸部は、主軸と、主軸の周囲に形成された複数の撹拌羽根と、を備えている。複数の撹拌羽根は、主軸の周方向において互いに異なる少なくとも3つの角度位置に配置される。かかる回転軸部によれば、第1の形態と同様の効果を奏する。第8の形態に第2ないし第7のいずれかの形態を付加することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による過熱蒸気殺菌装置の概略図である。
図2】過熱蒸気殺菌装置の縦断面図である。
図3】主軸および撹拌羽根の正面図である。
図4】主軸および撹拌羽根の側面図である。
図5】主軸および撹拌羽根の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による過熱蒸気殺菌装置10の概略図であり、部分的に断面を示している。図2は、過熱蒸気殺菌装置10を軸線Aの方向(図5参照)と直交する方向に切った縦断面図である。図1に示すように、過熱蒸気殺菌装置10は、横型筒状部20(以下、単に筒状部20とも呼ぶ)と、回転軸部30と、複数(本実施例では4つ)の過熱蒸気ボックス80と、を備えている。
【0017】
筒状部20は、水平方向に延在する略円筒形状を有している。筒状部20のうちの軸線Aの方向(図5参照)の一端側の上部には、被殺菌物としての穀粒を筒状部20内へ供給するための供給口21が形成されている。筒状部20のうちの軸線Aの方向の他端側の下部には、穀粒を筒状部20から排出するための排出口23が形成されている。供給口21には供給シュート71が接続されており、排出口23には排出シュート22が接続されている。
【0018】
回転軸部30は、穀粒の流れにおける上流側の主軸31と、下流側の主軸33と、主軸31と主軸33との間の主軸32と、を備えている。主軸31,32,33は、同軸に連結されている。主軸31の周囲には螺旋スクリュー34が形成されている。主軸33の周囲には、螺旋スクリュー35が形成されている。主軸32の周囲には、複数の撹拌羽根40が形成されている。なお、図1において、撹拌羽根40は概略的に示されており、撹拌羽根40の詳細については後述する。
【0019】
かかる主軸31,32,33、螺旋スクリュー34,35および撹拌羽根40は、筒状部20内に配置されている。主軸31の一端側(主軸32と反対側の端部)は、軸受72によって支持されており、主軸33の一端側(主軸32と反対側の端部)は、軸受73によって支持されている。主軸33には、駆動プーリ77が装着されている。駆動プーリ77には、駆動モータ74の回転力がモータプーリ75およびベルト76を介して伝達される。これによって、主軸31,32,33、螺旋スクリュー34,35および撹拌羽根40は、一体的に回転可能に構成されている。
【0020】
螺旋スクリュー34,35は、筒状部20内に供給された穀粒を、主軸32の軸線Aの方向に移送する機能を有している。撹拌羽根40は、筒状部20内において軸線Aの方向に移送される穀粒を掻き上げることによって撹拌する機能を有している。
【0021】
過熱蒸気ボックス80は、筒状部20の上方に配置されている。この過熱蒸気ボックス80は、軸線Aの方向に沿って複数(図示する例では4つ)の区画に仕切られている。過熱蒸気ボックス80の上方には、過熱蒸気ノズル81が設けられている。過熱蒸気ノズル81の数は、過熱蒸気ボックス80の区画の数と等しい。過熱蒸気ボックス80は、過熱蒸気ノズル81から供給される過熱蒸気を一時的に貯留する。過熱蒸気は、水蒸気を100℃以上に過熱することによって得られ、その温度領域は、例えば、200℃から400℃である。
【0022】
図2に示されるように、過熱蒸気ボックス80の下面壁83には、蒸気排出口85が形成されている。過熱蒸気ボックス80の内部は、蒸気排出口85を介して、筒状部20の内部と連通している。蒸気排出口85の開口面積は、開閉シャッタ84によって調節可能である。
【0023】
かかる過熱蒸気殺菌装置10では、供給シュート71から供給された穀粒は、供給口21を介して筒状部20内に入る。筒状部20内において、穀粒は、螺旋スクリュー34,35によって軸線Aの方向に沿って移送されつつ、撹拌羽根40によって撹拌される。このとき、過熱蒸気ボックス80に貯留された過熱蒸気が蒸気排出口85を介して穀粒に照射され、穀粒の殺菌が行われる。こうして殺菌された穀粒(殺菌処理物)は、排出シュート22から排出される。
【0024】
排出シュート22は、ロータリーバルブ等を介して次工程の穀粒冷却部(図示省略)に接続されている。穀粒冷却部では、穀物を撹拌しつつ、当該穀物に冷却風を供給することによって穀粒の冷却が行われる。冷却に加えて、異物の選別が行われてもよい。
【0025】
図3は、主軸32および撹拌羽根40の正面図である。図4は、主軸32および撹拌羽根40の側面図である。図5は、主軸32および撹拌羽根40の斜視図である。本実施形態では、複数の撹拌羽根40は、周方向におけるそれらの設置位置に基づいて4つに区分される。以下の説明では、符号「40」の末尾にa~dのいずれかを追加して、周方向の設置位置が互いに異なる撹拌羽根40を区別することがある。撹拌羽根40は、第1の撹拌羽根40aと、第2の撹拌羽根40bと、第3の撹拌羽根40cと、第4の撹拌羽根40dと、を備えている。本実施形態では、第1ないし第4の撹拌羽根40a~40dの大きさは、互いに実質的に等しい。これにより、穀粒を軸線Aの方向に沿って均一に撹拌できる。また、複数の撹拌羽根40の製造を効率的に行える。
【0026】
図4で最もよく分かるように、第1の撹拌羽根40aは、主軸32から主軸32の接線方向(以下、第1の方向とも呼ぶ)に延在する。第2の撹拌羽根40bは、第1の撹拌羽根40aに対して主軸32の軸線A(図5参照)を中心として90度回転された位置に配置される。この第2の撹拌羽根40bは、主軸32から主軸32の接線方向、より具体的には、第1の方向と直交する接線方向(以下、第2の方向とも呼ぶ)に延在する。第3の撹拌羽根40cは、第1の撹拌羽根40aに対して軸線Aを中心として180度回転された位置に配置される。この第3の撹拌羽根40cは、主軸32から第1の方向に延在する。第4の撹拌羽根40dは、第1の撹拌羽根40aに対して軸線Aを中心として270度回転された位置に配置される。この第4の撹拌羽根40dは、主軸32から第2方向に延在する。これらの第1ないし第4の撹拌羽根40a~40dは、主軸32と第1ないし第4の撹拌羽根40a~40dとの間をそれぞれ延在するリブ41a~41dによって支持されている。
【0027】
図3で最も良く分かるように、第1の撹拌羽根40aおよび第2の撹拌羽根40bは、第1の撹拌羽根40aと第2の撹拌羽根40bとが周方向に重複せず、かつ、軸線Aの方向において第1の撹拌羽根40aと第2の撹拌羽根40bとの間に隙間が形成されないように、軸線Aに沿って千鳥状に配置されている。また、第3の撹拌羽根40cは、軸線Aの方向において、第1の撹拌羽根40aと同一の位置に配置される。同様に、第4の撹拌羽根40dは、軸線Aの方向において、第2の撹拌羽根40bと同一の位置に配置される。このような千鳥状配置によって、複数の撹拌羽根40の周方向における偏りと、軸線Aの方向における偏りと、のバランスを図り、撹拌性能を向上できる。
【0028】
上述した過熱蒸気殺菌装置10によれば、複数の撹拌羽根40は、主軸32の周方向において互いに異なる4つの角度位置に配置される。したがって、複数の撹拌羽根が周方向において互いに異なる2つの角度位置に配置される従来の構成と比べて、より多くの角度位置で穀粒を撹拌できる。また、穀粒が掻き上げられている状態と、穀粒が筒状部20の底に滞留している状態と、のサイクルを短くして、筒状部20の定量移送性能の低下を抑制できる。したがって、過熱蒸気と穀粒との接触ムラが生じることを抑制し、殺菌効果を高めることができる。また、撹拌羽根40a~40dは、均等な角度間隔で設けられるので、主軸32の1回転での間での接触ムラをいっそう抑制できる。
【0029】
さらに、過熱蒸気殺菌装置10によれば、軸線Aの方向において第1の撹拌羽根40aと第2の撹拌羽根40bとの間に隙間が形成されない。換言すれば、軸線Aの方向における一方側(主軸31側)に最も近い位置に配置された撹拌羽根40と、他方側(主軸33側)に最も近い位置に配置された撹拌羽根40と、の間において、軸線Aの方向に沿った全ての位置において複数の撹拌羽根40のうちの少なくとも1つが設置される。したがって、軸線Aの方向に沿った全ての位置において撹拌羽根40による撹拌が行われる。したがって、軸線Aの方向に沿った接触ムラを抑制できる。
【0030】
しかも、第1の撹拌羽根40aと第2の撹拌羽根40bとは、周方向に重複しない。同様に、第3の撹拌羽根40cと第4の撹拌羽根40dとは、周方向に重複しない。したがって、撹拌羽根40を効率的に配置できる。特に、4つの角度位置にそれぞれ配置される撹拌羽根40a~40dをこのように配置することによって、撹拌羽根40の数が過剰に増大することを抑えつつ、十分な撹拌効果が得られる。
【0031】
さらに、撹拌羽根40a~40dは、主軸32から、主軸32の接線方向に延在するので、撹拌羽根が径方向に延在する場合と比べて、筒状部20の内面に向けて穀粒を押しつける力が作用する(撹拌羽根が径方向に延在するものは、穀粒を筒状部20内で回転方向に回転させる作用が主であるのに対し、撹拌羽根が接線方向に延在するものは、これに加えて筒状部20内面に打ち付ける力もあるということ。)。したがって、穀粒同士を分離しやすくなり、その結果、接触ムラをいっそう抑制できる。
【0032】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0033】
例えば、複数の撹拌羽根40は、主軸32の周方向において互いに異なる3つの角度位置に配置されていてもよいし、あるいは、主軸32の周方向において互いに異なる5つ以上の角度位置に配置されていてもよい。また、例えば、第1の撹拌羽根40aと第2の撹拌羽根40bとの間には、軸線Aの方向の隙間が形成されてもよい。また、撹拌羽根40は必ずしも同じ大きさを有していなくてもよく、周方向において均等な角度間隔で設けられなくてもよい。また、上述した過熱蒸気殺菌装置10の具体構成は単なる一例であり、本発明は、主軸と、主軸の周囲に形成された複数の撹拌羽根と、を備える任意の過熱蒸気殺菌装置に適用可能である。例えば、螺旋スクリュー34,35に代えて、振動式、空気式などの任意の移送手段が設けられてもよい。あるいは、筒状部20を所定の勾配で設置することで、穀粒の移送機能が達成されてもよい。
【0034】
さらに、本発明は、穀物を処理する任意の過熱蒸気殺菌装置に適用可能である。本発明は、例えば、籾米を籾摺処理して得られた玄米用の殺菌装置や、水稲の種子(種籾)の伝染性病害(いもち病、ばか苗病等)を予防するための種子用の殺菌装置に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…過熱蒸気殺菌装置
20…横型筒状部
21…供給口
22…排出シュート
23…排出口
30…回転軸部
31,32,33…主軸
34,35…螺旋スクリュー
40…撹拌羽根
71…供給シュート
72,73…軸受
74…駆動モータ
75…モータプーリ
76…ベルト
77…駆動プーリ
80…過熱蒸気ボックス
81…過熱蒸気ノズル
83…下面壁
84…開閉シャッタ
85…蒸気排出口
40,40a~40d…撹拌羽根
41a~41d…リブ
A…軸線
図1
図2
図3
図4
図5