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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】軟弱土の混合装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 7/00 20060101AFI20220107BHJP
   E02B 3/18 20060101ALI20220107BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
E02F7/00 D ZAB
E02F7/00 L
E02B3/18 E
C02F11/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017217141
(22)【出願日】2017-11-10
(65)【公開番号】P2019085843
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】野中 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 歩
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-173285(JP,A)
【文献】特開2016-186167(JP,A)
【文献】特開2001-182094(JP,A)
【文献】特開2014-173284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 7/00
E02B 3/18
C02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出側端部が投下先の上面より所望の落下高さ分だけ高くなるように設置されたベルトコンベアを備え、軟弱土に所定の比率で改質材が供給された改質材供給済み軟弱土を前記ベルトコンベアより投下させ、前記軟弱土と前記改質材との混合を促進するようにした軟弱土の混合装置において、
前記ベルトコンベアの排出側端部下に前記ベルトコンベアの排出側端部及び前記投下先よりそれぞれ一定の距離を隔てて配置された混合促進手段を備え、
前記混合促進手段は、所定の角度に傾けて設置された混合促進用衝突板部と、該混合促進用衝突板部の下縁より水平又は略水平に延出した一時貯留部とを備え、
前記ベルトコンベアの排出側端部より順次投下された前記改質材供給済み軟弱土が前記混合促進用衝突板部に衝突するとともに、該混合促進用衝突板部で反発した改質材供給済み軟弱土が前記一次貯留部で受け止められ、塊状となって前記投下先に落下するようにしたことを特徴としてなる軟弱土の混合装置。
【請求項2】
前記ベルトコンベアの投下先に土運船が配置され、
該土運船の貯泥部には、所定の角度に傾けて設置された補助混合促進用衝突板部を有する補助混合促進手段を備え、前記補助混合促進用衝突板部に前記塊状の改質材供給済み軟弱土が衝突するようにした請求項1に記載の軟弱土の混合装置。
【請求項3】
前記ベルトコンベアの投下先が法肩手前の地面であって、
該法肩手前の地面には、所定の角度に傾けて設置された補助混合促進用衝突板部を有する補助混合促進手段を備え、前記補助混合促進用衝突板部に前記塊状の改質材供給済み軟弱土が衝突するようにした請求項1に記載の軟弱土の混合装置。
【請求項4】
前記改質材供給済み軟弱土が上流側のベルトコンベアより下流側のベルトコンベアに向けて落下する乗り継ぎ部を備え
前記下流側のベルトコンベアがその排出側端部が投下先の上面より所望の落下高さ分だけ高くなるように設置され、該排出側端部下に前記下流側のベルトコンベアの排出側端部及び前記投下先よりそれぞれ一定の距離を隔てて前記混合促進手段が配置されている請求項1~3のいずれか一に記載の軟弱土の混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫土等の軟弱土に製鋼スラグ等の改質材を混合させて軟弱土の強度を改良するための軟弱土の混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浚渫土等の軟弱土に鉄鋼精製の過程で副産物として生じる製鋼スラグを改質材として混合させることにより軟弱土を強度改良してなるカルシア改質土を地盤材、干潟・浅場造成材等の土木材料として使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1、段落0035を参照)。
【0003】
浚渫土等の軟弱土に製鋼スラグを混合する方法としては、機械式ミキサ等の攪拌装置に投入された一定量の軟弱土に対し所定の比率で製鋼スラグを添加し、それを攪拌装置により攪拌して強制的に混合する方法、軟弱土に製鋼スラグを所定の比率で添加したものを空気圧送し、それを圧送管内に生じるプラグ流の乱流効果を利用して攪拌混合する管中混合工法、土運船等に貯留された軟弱土に所定の比率で製鋼スラグを添加し、それをバックホウにて強制的に掻き混ぜる方法等が知られている。
【0004】
また、二つの物質を簡易且つ大量に混合する方法として、ベルトコンベアの乗継ぎを利用して混合する方法も知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0005】
更に、軟弱土と添加物とを混合する他の方法としては、添加物を添加した軟弱土を背の高い塔型筒状の混練装置に投入して装置内を落下させ、その際の落下エネルギを活用して軟弱土と添加物とを混合することも考えられる(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
しかしながら、従来の攪拌装置を使用した混合方法及び管中混合工法では、専用の設備を必要とする為に、施設が大掛かりなものにならざるを得ず、例えば、管中混合方式の場合、軟弱土と製鋼スラグとを混合・圧送する空気圧送船を必要とし、施工費用が嵩むという問題があった。
【0007】
一方、バックホウを使用した混合方法は、汎用機械を使用して簡易且つ安価に施工ができる半面、大量施工には不向きであった。
【0008】
ベルトコンベアの乗継ぎを利用した混合方法は、主に乾燥した状態又は含水比の低い砂質土とセメント等との混合を対象とするものであって、シルト・粘土分が多い浚渫土等の含水比が高い軟弱土と製鋼スラグとの混合には適さず、軟弱土と製鋼スラグとの混合に適用した場合、浚渫土等の軟弱土と製鋼スラグとが十分に混合されず、その為、ニ軸ミキサ等による強制的な混合を別途行う必要があり、攪拌装置を使用する混合方法と同様に施設が大掛かりなものにならざるを得なかった。
【0009】
また、落下エネルギを活用して軟弱土と添加物とを混合する方法においては、背の高い不安定な塔型の混練装置を使用するため、当該混練装置を安定した状態に設置する必要があり、設備が大掛かりとなり且つ、設置場所が制限されるという課題があり、また、このような混練装置には、十分な混合状態を得る為に電力で動作するパドル等の攪拌手段を備える場合が多々あり、より簡便な構造で軟弱土と製鋼スラグ等の改質材との混合が可能な装置の開発が望まれている。
【0010】
そこで、本願発明者は、改質材供給済み軟弱土を移送するベルトコンベアの乗り継ぎ部において、上流側のベルトコンベアの排出側端部が下流側のベルトコンベアの投入側端部より所定の落下高さ分だけ高い位置となるように設置するとともに、各ベルトコンベアの排出側端部下に所定の衝突距離を隔てて配置された混合用反発体を備え、各ベルトコンベアの排出側端部より投下した改質材供給済み軟弱土を混合用反発体に衝突させることにより軟弱土と改質材との混合が促進されるようにした混合装置(以下、乗り継ぎ部落下衝撃式混合装置という)を開発するに至った(特許文献3を参照)。
【0011】
この乗り継ぎ部落下衝撃式混合装置は、改質材添加済み軟弱土の移送に使用するベルトコンベアの乗り継ぎを利用するため、塔型の混合装置や攪拌装置等の大掛かりな設備を必要とせず、且つ、大量施工が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2009-121167号公報
【文献】特開平11-28719号公報
【文献】特開2014-173285号公報
【文献】事前混合処理工法技術マニュアル(改訂版) 沿岸技術研究センター 平成20年12月 61頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述の如き乗り継ぎ部落下衝撃式混合装置において、十分な混合促進効果を得るためには、一定の高さから改質材供給済み軟弱土を混合用反発体に向けて落下衝突させる過程を複数回(少なくとも3回以上)行う必要があることが実験により確認されており、フローティングコンベア等の使用や改質土の投入先に形成された法面を利用して当該必要な落下衝突回数を確保している。
【0014】
しかしながら、施工現場によっては、スペース的に複数のベルトコンベアを配置できず、ベルトコンベアの構成によって必要な落下衝突回数を確保できない場合があり、また、浅場、干潟、潜堤の構築に際し、改質土を海上施工・海中投入する場合には、投入先の法面を混合用反発体として利用することができないという課題があった。
【0015】
また、乗り継ぎ部落下衝撃式混合装置では、一定の塊状でベルトコンベアから投下された改質材供給済み軟弱土が混合用反発体に衝突させた際にその衝撃で複数に分散した場合、その状態で次の混合用反発体に衝突させても落下衝突による混合促進効果が十分に活用できていないという課題があった。
【0016】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、浚渫土等の軟弱土と製鋼スラグ等の改質材とを省スペース且つ効率よく混合することができる軟弱土の混合装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、排出側端部が投下先の上面より所望の落下高さ分だけ高くなるように設置されたベルトコンベアを備え、軟弱土に所定の比率で改質材が供給された改質材供給済み軟弱土を前記ベルトコンベアより投下させ、前記軟弱土と前記改質材との混合を促進するようにした軟弱土の混合装置において、前記ベルトコンベアの排出側端部下に前記ベルトコンベアの排出側端部及び前記投下先よりそれぞれ一定の距離を隔てて配置された混合促進手段を備え、前記混合促進手段は、所定の角度に傾けて設置された混合促進用衝突板部と、該混合促進用衝突板部の下縁より水平又は略水平に延出した一時貯留部とを備え、前記ベルトコンベアの排出側端部より順次投下された前記改質材供給済み軟弱土が前記混合促進用衝突板部に衝突するとともに、該混合促進用衝突板部で反発した改質材供給済み軟弱土が前記一次貯留部で受け止められ、塊状となって前記投下先に落下するようにしたことを特徴としてなる軟弱土の混合装置。
ことにある。
【0018】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記ベルトコンベアの投下先に土運船が配置され、該土運船の貯泥部には、所定の角度に傾けて設置された補助混合促進用衝突板部を有する補助混合促進手段を備え、前記補助混合促進用衝突板部に前記塊状の改質材供給済み軟弱土が衝突するようにしたことにある。
【0019】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記ベルトコンベアの投下先が法肩手前の地面であって、該法肩手前の地面には、所定の角度に傾けて設置された補助混合促進用衝突板部を有する補助混合促進手段を備え、前記補助混合促進用衝突板部に前記塊状の改質材供給済み軟弱土が衝突するようにしたことにある。
【0020】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1~3の何れか一の構成に加え、前記改質材供給済み軟弱土が上流側のベルトコンベアより下流側のベルトコンベアに向けて落下する乗り継ぎ部を備え、前記下流側のベルトコンベアがその排出側端部が投下先の上面より所望の落下高さ分だけ高くなるように設置され、該排出側端部下に前記下流側のベルトコンベアの排出側端部及び前記投下先よりそれぞれ一定の距離を隔てて前記混合促進手段が配置されていることにある。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る軟弱土の混合装置は、請求項1に記載の構成を具備することによって、落下の際のエネルギを活用した混合効果とともに、混合促進用衝突板部に衝突した際の衝撃による製鋼スラグ等の改質材の軟弱土へののめり込みによる混合作用とともに、製鋼スラグ等の改質材と軟弱土とが混合促進用衝突板部より受ける反発力による混合作用によって製鋼スラグ等の改質材と軟弱土とが好適に混合される。そして、衝突により分散した改質材供給済み軟弱土が一時貯留部上に留まって集合し、塊状となることにより次の落下衝撃作業を効率よく行え、より高い混合促進効果を得ることができる。
【0022】
さらに、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、海上施工等のようにベルトコンベアの配置や投下先に法面がない場合等に簡易な構造で落下混合の回数を確保することができる。
【0023】
また、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、法肩部分を利用して落下混合の回数を確保することができる。
【0024】
また、本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、ベルトコンベアの乗り継ぎ部を利用して効率よく混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る軟弱土の混合装置の一例を示す概略側面図である。
図2図1中の混合促進手段による混合の状態を示す部分拡大側面図である。
図3】同上の概略正面図である。
図4】本発明に係る混合装置の効果確認実験における一軸圧縮強さを比較した結果を示すグラフである。
図5】同上の一軸圧縮強さの頻度分布を示すグラフであって、(a)は混合促進手段を備えていない場合、(b)は同混合促進手段を備えている場合である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明に係る軟弱土の混合装置の実施の態様を図1図3に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1はリクレーマ船、符号2はリクレーマ船1から投入された改質土Bを運搬する土運船である。
【0027】
この混合装置3は、排出側端部4aが投下先より所望の落下高さH分だけ高くなるように設置されたベルトコンベア4と、ベルトコンベア4の排出側端部4a下に配置された混合促進手段5とを備え、ベルトコンベア4上を移動する改質材供給済み軟弱土Aをベルトコンベア4より混合促進手段5に向けて投下させ、改質材供給済み軟弱土Aを移送しつつ軟弱土6と改質材7との混合を促進するようになっている。
【0028】
本実施例では、図1に示すように、水上に浮かべた揚土船(リクレーマ船1)上において、バックホウ8等により土運船9より浚渫土等の軟弱土6を揚土し、それを一定量毎に切り出して最上流のベルトコンベア10に順次供給し、ベルトコンベア10上で製鋼スラグ等の改質材7を軟弱土6に供給した後、ベルトコンベア4に乗り継ぎ、ベルトコンベア4より混合促進手段5に向けて投下させ、混合促進手段5を経て改質材供給済み軟弱土Aが土運船2に投下されるようになっている。
【0029】
尚、図中符号11は、吐出量を調節可能なフィーダを備えた軟弱土供給用ホッパ11であって、バックホウ8等により土運船9より揚土した浚渫土等の軟弱土6を軟弱土供給用ホッパ11に投入し、それを一定量毎に切り出して最上流のベルトコンベア10に順次供給するようになっている。
【0030】
尚、この混合装置3は、特に図示しないが軟弱土6の含水比を調整する含水比調整手段を備え、軟弱土6を製鋼スラグ等の改質材7との混合に最適な含水比に調整するようにしてもよい。
【0031】
尚、改質材7に製鋼スラグを用いる場合、軟弱土6の含水比は、液性限界(wL)の1.2~1.8倍とし、軟弱土6が適度な粘性及び流動性を有する状態、詳しくは、シリンダフロー試験(NEXCO 試験法313)によるフロー値が85~250mmとなるように調整されることが望ましい。
【0032】
また、この混合装置3は、製鋼スラグ等の改質材7を軟弱土6に向けて供給する改質材供給手段12を備え、軟弱土6に対し所定の比率で改質材7を供給するようになっている。
【0033】
改質材供給手段12は、例えば、吐出量を調節可能なフィーダを備えたホッパ13と、最上流のベルトコンベア10上に配置された改質材供給用ベルトコンベア14とを備え、フィーダにより一定量毎に切り出した製鋼スラグ等の改質材7を改質材供給用ベルトコンベア14によりベルトコンベア10上の軟弱土6に順次供給し、軟弱土6に所定の比率(10~40vol%)で製鋼スラグ等の改質材7を供給するようになっている。
【0034】
尚、製鋼スラグは、ある程度粒径が大きく重量のあるものであると軟弱土6中での攪乱効果が高く、粒径10mm~25mmのものが製鋼スラグ全体の20%以上含まれることが好ましい。
【0035】
そして、最上流のベルトコンベア10上で改質材7が供給された改質材供給済み軟弱土Aは、最上流のベルトコンベア10の排出側端部より投下され、ベルトコンベア4の投入側端部4bに向けて落下し、乗り継ぎ部の落下を利用して軟弱土6と改質材7との混合を促進する。
【0036】
ベルトコンベア4は、図1に示すように、投入側端部4bを低く、排出側端部4aが高くなるように傾けた配置に設置され、排出側端部4aが投入先より鉛直方向で所定の落下高さH分だけ高い位置となるように配置されている。
【0037】
そして、改質材供給済み軟弱土Aがベルトコンベア4の排出側端部4aより排出されて落下し、その際の落下エネルギを利用して軟弱土6と製鋼スラグ等の改質材7との混合を促進するようになっている。
【0038】
落下高さHは、軟弱土6と製鋼スラグとの混合に際し、落下エネルギを利用した混合効果が期待できる程度の高さとする。
【0039】
混合促進手段5は、鋼板等によって一体に形成され、所定の角度に傾けた平板状の混合促進用衝突板部15と、混合促進用衝突板部15の下縁より水平又は略水平に延出した平板状の一時貯留部16とを備えている。
【0040】
この混合促進手段5は、ベルトコンベア4の排出側端部4aと投入先(ここでは土運船2)との間において、ベルトコンベア4の排出側端部4a及び投入先からそれぞれ一定の距離d1,d2を隔てて配置され、且つ、一時貯留部16が投入先側に位置するように配置されている。
【0041】
ベルトコンベア4の排出側端部4aから混合促進用衝突板15までの距離d1及び混合促進用衝突板15から投入先までの距離d2は、混合促進用衝突板部15からそれぞれ少なくとも1m以上であって、望ましくは2m以上である。本実施例では、投入先である運搬用の土運船2端部に設置用部材17を設置し、混合促進手段5を設置用部材17に支持させることにより、高さd1,d2が調整されている。
【0042】
混合促進用衝突板部15は、水平面に対し角度θを成すように配置され、軟弱土6及び製鋼スラグ等の改質材7に反発力を生じさせるようになっている。尚、角度θは、軟弱土6の状態、改質材7の種類、落下高さH等の諸条件を考慮し、0~60度に設定される。
【0043】
一時貯留部16は、投入先側に向けて一定の幅を有し、ベルトコンベア4の排出側端部4aより投下された改質材供給済み軟弱土Aが混合促進用衝突板部15と衝突した後、衝突時の反発により分散した状態で混合促進用衝突板部15上を滑り落ち、順次一時貯留部16に移動し、受け止められるようになっている。
【0044】
そして、一時貯留部16上に移動した改質材供給済み軟弱土Aは、一時貯留部16上に留まった後、一時貯留部16上の改質材供給済み軟弱土Aが一定量に達すると、押し出されて塊状A1となって投下先である運搬用の土運船2に落下される。
【0045】
土運船2には、所定の角度に傾けて設置された補助混合促進用衝突板部20を有する補助混合促進手段を備え、補助混合促進用衝突板部20に塊状の改質材供給済み軟弱土A1が衝突し、混合が促進されるようになっている。
【0046】
補助混合促進用衝突板部20は、鋼板等によって構成され、土運船2の貯泥部21の縁部にその上縁から船底21bに向けて傾いた形状に形成されている。
【0047】
そして、塊状で落下した改質材供給済み軟弱土A1が補助混合促進用衝突板部20に衝突し、その衝撃によって軟弱土6と改質材7との混合が促進されるようになっている。
【0048】
次に、このような混合装置3を使用した混合方法について説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一の符号を付して説明する。
【0049】
まず、土運船9にて運搬された浚渫土等の軟弱土6の含水比を事前に計測した上で、含水比調節手段により加水する等して、軟弱土6を製鋼スラグ等の改質材7との混合に適した状態、適度な粘性及び流動性を有する状態(製鋼スラグの場合には、軟弱土6の含水比が液性限界の1.2~1.8倍、シリンダフロー試験(NEXCO 試験法 313)のフロー値が85~250mm)となるように調整する。
【0050】
次に、含水比が調整された軟弱土6をバックホウ8等により揚土し、それを軟弱土供給用ホッパ11に投入する。
【0051】
軟弱土供給用ホッパ11に投入された軟弱土6は、一定量毎に切り出されて最上流のベルトコンベア10に投入され、ベルトコンベア10上を均された状態で移送される。
【0052】
そして、この移送される一定量の軟弱土6に改質材供給手段12より所定の比率で製鋼スラグ等の改質材7を供給する。即ち、製鋼スラグ等の改質材7をフィーダにより一定量毎に切り出し、それを改質材供給用ベルトコンベア14でベルトコンベア10上に順次移送し、軟弱土6に所定の比率で供給する。
【0053】
そして、この製鋼スラグ等の改質材7が供給された軟弱土6(改質材供給済み軟弱土A)をベルトコンベア10,4間の乗継ぎ部を利用して落下混合させ、製鋼スラグ等の改質材7と軟弱土6とを混合する(1回目混合)。
【0054】
次に、改質材供給済み軟弱土Aをベルトコンベア4上で移送し、ベルトコンベア4の排出側端部4aより混合促進手段5に向けて落下させ、混合促進用衝突板部15に衝突させる(2回目混合)。
【0055】
その際、軟弱土6が混合に適した含水比(液性限界wLの1.2~1.8倍)に調整され、軟弱土6が適度な粘性及び流動性を備えることにより、落下の際のエネルギを活用した混合効果とともに、混合促進用衝突板部15に衝突した際の衝撃による製鋼スラグ等の改質材7の軟弱土6へののめり込みによる混合作用とともに、製鋼スラグ等の改質材7と軟弱土6とが混合促進用衝突板部15より受ける反発力による混合作用によって製鋼スラグ等の改質材7と軟弱土6とが混合される。
【0056】
そして、ベルトコンベア4の排出側端部4aより投下された改質材供給済み軟弱土Aは、混合促進用衝突板部15と衝突した後、衝突により分散した状態で混合促進用衝突板部15上を滑り落ち、順次一定幅を有する平板状の一時貯留部16上に移動し、受け止められる。
【0057】
その後、一時貯留部16上に移動した改質材供給済み軟弱土Aは、一時貯留部16上に留まって集合し、一時貯留部16上の改質材供給済み軟弱土Aが一定量に達すると、押し出されて塊状となって投下先である運搬用の土運船2に落下する。
【0058】
一時貯留部16より押し出され塊状となって落下した改質材供給済み軟弱土A1は、補助混合促進用衝突板部20に衝突する(3回目混合)。
【0059】
そして、落下の際のエネルギを活用した混合効果とともに、補助混合促進用衝突板部20に衝突した際の衝撃による製鋼スラグ等の改質材7の軟弱土6へののめり込みによる混合作用とともに、製鋼スラグ等の改質材7と軟弱土6とが補助混合促進用衝突板部20より受ける反発力による混合作用によって製鋼スラグ等の改質材7と軟弱土6とが混合される。
【0060】
その際、改質材供給済み軟弱土Aは、一時貯留部16に受け止められ、塊状A1となって落下するので、一時貯留部16を経ずに落下した場合と比べてより高い混合促進効果を得ることができる。
【0061】
これによって、複数回の落下混合が繰り返され、軟弱土6に所定の比率で製鋼スラグ等の改質材7が混合された改質土Bが生成され、該生成された改質土Bが土運船2の貯留部21に順次貯留される。
【0062】
このように構成された混合装置3及びそれを使用した混合方法では、ベルトコンベア4から排出された改質材供給済み軟弱土Aが混合促進用衝突板部15に衝突することで混合が促進されるとともに、衝撃によって分散した状態で一時貯留部16に受け止められて一時的に貯留され、その状態から集合して塊状A1をなした後、投入先に落下する。
【0063】
よって、この混合装置3では、一時貯留部16を有する混合促進手段5を用いることによって、改質材供給済み軟弱土Aが塊状で3回目の落下混合に向けて投下されるので、土運船2に設置された簡易的な補助混合促進用衝突板部20による落下混合効果を高めることができ、海上施工や海中投入の場合のように複数の落下混合回数を確保し難い状況にあっても土運船2に設置された簡易的な補助混合促進手段によって落下混合の機会を確保することができる。
【0064】
尚、図4及び図5は、ベルトコンベア4より直接投入先へ改質材供給済み軟弱土Aを落下させた場合と本願発明を使用した場合との効果を比較した実験の結果を示している。
【0065】
当該実験は、軟弱土6を含水比200%(液性限界115%)、製鋼スラグ添加量30vol%に調整し、ベルトコンベア10,4間の乗り継ぎ部落下高さを2m、落下高さHを4.5m、高さd1およびd2をそれぞれ2mとし、材令28日の供試体20本の一軸圧縮強度を比較することにより混合促進手段5による効果を確認した。
【0066】
その結果、図4に示すように、本願発明を使用した場合に混合促進手段5を用いない場合よりも一軸圧縮強さが大きくなることが確認された。
【0067】
尚、上述の実施例では、リクレーマ船1を用いた場合について説明したが、本願発明は、このような構成に限定されず、例えば、地上に設置される複数のベルトコンベア4の各乗り継ぎ部にそれぞれ混合促進手段5を設けるようにしてもよい。
【0068】
また、本発明に係る混合装置の各構成は、適宜変更し得るものであり、例えば、製鋼スラグ上に軟弱土を投入することによって軟弱土に製鋼スラグを供給するようにしてもよい。
【0069】
また、上述の実施例では、改質材7として製鋼スラグを例に説明したが、改質材7は製鋼スラグに限定されない。
【0070】
また、上述の実施例では、ベルトコンベア4の投下先に土運船2が配置され、土運船2の貯泥部に補助混合促進用衝突板部を有する補助混合促進手段20を備えた場合について説明したが、補助混合促進手段20を経ずに土運船2の貯泥部21に直接投下させてもよい。
【0071】
その際、一定量の改質土Bが貯留された貯泥部21に混合促進手段5を経た改質材供給済み軟弱土A1を投下させることによって、落下の衝撃により軟弱土6が既存の改質土Bの上層部と混合されるとともに、軟弱土6よりも比重の大きい改質材7が貯泥部21内の改質土B中に拡散する。
【0072】
そして、新たな改質材供給済み軟弱土A1が順次投下され、この過程が繰り返されることによって軟弱土6と改質材7とが満遍なく拡散し混合される。
【0073】
さらに、上述の実施例では、ベルトコンベア4の投下先を土運船2とした場合について説明したが、投入先は土運船に限定されず、例えば、投下先を法肩手前の地面とし、法面を流下させて改質土を埋立地に投入するようにしたものであってもよい。
【0074】
その場合、上述の実施例と同様に、法肩手前の地面に所定の角度に傾けて設置された補助混合促進用衝突板部を有する補助混合促進手段を備え、補助混合促進用衝突板部に塊状の改質材供給済み軟弱土を衝突させ、混合促進された改質土が法肩を超えて法面を流下するようにする。
【符号の説明】
【0075】
1 揚土船(リクレーマ船)
2 土運船
3 混合装置
4 ベルトコンベア
5 混合促進手段
6 軟弱土
7 改質材(製鋼スラグ)
8 バックホウ
9 土運船
10 ベルトコンベア
11 軟弱土供給用ホッパ
12 改質材供給手段
13 ホッパ
14 改質材供給用ベルトコンベア
15 混合促進用衝突板部
16 一時貯留部
17 設置用部材
20 補助混合促進用衝突板部
21 貯泥部
図1
図2
図3
図4
図5