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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】釣り具
(51)【国際特許分類】
   A01K 97/12 20060101AFI20220107BHJP
   A01K 97/00 20060101ALI20220107BHJP
   A01K 91/06 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A01K97/12 Z
A01K97/00 Z
A01K91/06 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018047602
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2019154355
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 鋼
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-86475(JP,U)
【文献】実開平3-5372(JP,U)
【文献】実開昭49-57481(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 97/12
A01K 97/00
A01K 91/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドとリールとを有する釣り具において、
前記リールから延びる釣糸を誘導する開口が形成された開口部材を有し、前記開口部材と前記ロッドの先端部とは、2つの連結部材により連結されており、
一方の前記連結部材は、前記開口部材と前記ロッドの先端部との間において所定以上の力により分離されるようになっており、
一方の前記連結部材が分離されたときに他方の前記連結部材が前記開口部材と前記ロッドの先端部との間で連結状態となっていることを特徴とする釣り具。
【請求項2】
一方の前記連結部材は、前記ロッドに接続される第1分割体と、前記開口部材に接続される第2分割体と、有し、前記第1分割体と前記第2分割体とが着脱可能に構成された断接装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の釣り具。
【請求項3】
前記第1分割体と前記第2分割体とは磁力結合されていることを特徴とする請求項2に記載の釣り具。
【請求項4】
前記第1分割体及び前記第2分割体の一方には、前記第1分割体及び前記第2分割体の他方を収容する略有底筒状の収容部が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の釣り具。
【請求項5】
前記第2分割体は、前記開口部材を一体に備えることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の釣り具。
【請求項6】
他方の前記連結部材は、一方の前記連結部材よりも長く形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の釣り具。
【請求項7】
前記第1分割体と前記第2分割体との間の磁力を調整可能であることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の釣り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドとリールとを有する釣り具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に魚を釣る際には、釣竿であるロッドと、釣糸の巻き取り及び送り出しを行うリールと、を有する釣り具が用いられており、リールから延びる釣糸をロッドのガイド(開口部材)に通して誘導し、釣糸をロッドの動きにより操作可能となっている。
【0003】
また、ロッドとリールとを有する釣り具を用いた漁法の一つとして、釣糸に付けた疑似餌を海中に投入し、船を走らせながら疑似餌を引く引き縄漁があり、マグロ、カツオ、サワラ等の比較的大きな魚を釣る際に多く用いられる。このような引き縄漁においては、船の動きに加えて、ロッドにより釣糸を動かし、海中の疑似餌に小魚のような動きを与えるしゃくり動作を行うことで、魚が食いつくように誘う方法が知られている。しゃくり動作には、水の抵抗などにより大きな力が必要であるため、モータを有する駆動装置によりロッドを駆動させてしゃくり動作を行うことが一般的に行われている。
【0004】
上記のようにしゃくり動作を駆動装置により行う場合には、ロッドのしなりを目視で確認して魚が食いついたこと(以下では、単に当たりということもある)を判断することとなるが、食いついた魚の種類や潮の流れ及び風等のコンディションによりロッドのしなりが変化するため、その判断が難しかった。そこで、特許文献1に示されるような釣り具が開発されている。
【0005】
特許文献1に示される釣り具は、光ファイバで構成された釣糸と、釣糸の先端に取付けられる釣針と、該釣針に設けられる歪検出器と、歪検出器の光歪信号により魚が食いついたか否かを判断する制御装置と、を備え、歪検出器は、釣糸を介して制御装置に接続されている。釣針に歪が生じた際には、その歪を歪検出器が検出し、歪検出器は、釣糸を通して光歪信号を制御装置に送信し、制御装置は、光歪信号の大きさが所定以上の場合に魚の当たりを判断できるようになっている。また、このような釣り具を用いれば、魚の当たりを判断したときに、魚の当たりを周知の報知手段により報知したり、駆動装置に操作信号を送信してロッドやリールを釣り上げ方向に操作することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-309125号公報(第2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の釣り具にあっては、魚の当たりを報知するために、歪検出器、光ファイバ、制御装置、報知手段などにより電気回路を構成する必要があり、部品点数も多くなるため、複雑な構造となってしまうという問題があった。また、該電気回路の一部を水中で使用することから、衝撃や水没などにより故障してしまう虞があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、簡素な構成で魚の当たりを報知することができる釣り具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の釣り具は、
ロッドとリールとを有する釣り具において、
前記リールから延びる釣糸を誘導する開口が形成された開口部材を有し、前記開口部材と前記ロッドの先端部とは、2つの連結部材により連結されており、
一方の前記連結部材は、前記開口部材と前記ロッドの先端部との間において所定以上の力により分離されるようになっており、
一方の前記連結部材が分離されたときに他方の前記連結部材が前記開口部材と前記ロッドの先端部との間で連結状態となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、魚が餌に食いついたときに、釣糸がロッドから離れる方向に所定以上の力で引っ張られることにより、一方の連結部材が分離され、他方の前記連結部材が開口部材とロッドの先端部との間で連結状態となっているため、魚の当たりを視覚的に報知することができ、簡素な構造とすることができる。
【0010】
一方の前記連結部材は、前記ロッドに接続される第1分割体と、前記開口部材に接続される第2分割体と、有し、前記第1分割体と前記第2分割体とが着脱可能に構成された断接装置を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、第1分割体と第2分割体とが着脱可能であるため、一方の連結部材を繰り返し使用することができる。
【0011】
前記第1分割体と前記第2分割体とは磁力結合されていることを特徴としている。
この特徴によれば、磁力以上の力が第1分割体と第2分割体との間に作用することにより、第1分割体と第2分割体とが即座に分離するため、作動応答性が良好である。
【0012】
前記第1分割体及び前記第2分割体の一方には、前記第1分割体及び前記第2分割体の他方を収容する略有底筒状の収容部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、収容部により第1分割体と第2分割体との他方の移動方向がガイドされるため、所定以上の力が作用したときに第1分割体と第2分割体との分離方向を安定させることができる。
【0013】
前記第2分割体は、前記開口部材を一体に備えることを特徴としている。
この特徴によれば、開口部材に作用する力を第2分割体に直接伝えることができるため、第1分割体と第2分割体とを即座に分離させることができる。
【0014】
他方の前記連結部材は、一方の前記連結部材よりも長く形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、一方の連結部材の連結状態から他方の連結部材の連結状態への移行を簡単な構成で行うことができる。
【0015】
前記第1分割体と前記第2分割体との間の磁力を調整可能であることを特徴としている。
この特徴によれば、狙う魚の種類やコンディションなどに対する汎用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1における釣り具を示す図であり、(a)は、第1連結部材による第1連結状態を示す側面図であり、(b)は、第2連結部材による第2連結状態を示す側面図である。
図2】(a)は、実施例1における第1連結部材の構造を示す側面図であり、(b)は、実施例1における第2連結部材の構造を示す側面図である。
図3】(a)及び(b)は、実施例1における第1連結部材を構成するクラッチ装置の構造を示す分解斜視図である。
図4】実施例1における第1連結部材を構成するクラッチ装置の構造を示す断面図である。
図5】(a)及び(b)は、実施例1における第1連結部材の第1連結状態におけるクラッチ装置の配置関係を示す側面図である。
図6】(a)及び(b)は、クラッチ装置の変形例1を示す断面図である。
図7】クラッチ装置の変形例2を示す断面図である。
図8】本発明の実施例2における釣り具を示す図であり、(a)は、第1連結部材を構成するクラッチ装置の構造を示す斜視図であり、(b)は、同じく側面図である。
図9】本発明の実施例3における釣り具を示す図であり、(a)及び(b)は、第1連結部材を構成するクラッチ装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る釣り具を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
実施例1に係る釣り具につき、図1から図5を参照して説明する。以下、図1の紙面正面側から釣り具を見たときの上下左右方向を基準として説明する。
【0019】
図1に示されるように、釣り具1は、ロッド2と、リール3と、リール3から延びる釣糸4とロッド2の先端部2aとの間を連結する第1連結部材5(一方の連結部材)及び第2連結部材6(他方の連結部材)と、から主に構成されており、釣糸4とロッド2の先端部2aとの間を第1連結部材5にテンションが作用した状態で連結する第1連結状態(図1(a)参照)と、第2連結部材6にテンションが作用した状態で連結する第2連結状態(図1(b)参照)と、に変更可能となっている。尚、本実施例における釣り具1は、釣糸4に付けた疑似餌(図示略)を海中に投入し、船を走らせながら疑似餌を引く引き縄漁に適用される形態を例示する。
【0020】
図1に示されるように、ロッド2は、リング状の先端部2aを備えており、先端部2aには、第1連結部材5及び第2連結部材6の右端部がそれぞれ挿通された状態で接続されている。また、ロッド2の下端部は、モータを有する駆動装置(図示略)に接続されており、ロッド2を釣糸4の送り出し方向(紙面左側)と釣り上げ方向(紙面右側)とにそれぞれ所定角度傾けるように往復駆動可能となっている。
【0021】
リール3は、ロッド2よりも釣糸4の送り出し側、かつロッド2の先端部2aよりも下方に設置され、ロッド2の先端部2aに接続される第1連結部材5(後述するクラッチ装置50)の左端部に形成される貫通孔53a(開口)に対して、リール3から延びる釣糸4を挿通した状態で巻き取り及び送り出しを行なっている。尚、本実施例のリール3は、よく知られた構成であるため、詳しい説明を省略する。
【0022】
尚、リール3から延びる釣糸4を第1連結部材5の左端部に形成される貫通孔53aに挿通してガイドすることにより、ロッド2の往復駆動に合わせてロッド2の剛性が第1連結部材5を介して釣糸4に作用するため、釣糸4に付けた海中の疑似餌にしゃくり動作を付与することができる。
【0023】
図1及び図2(a)に示されるように、第1連結部材5は、第1分割体51と第2分割体52とが着脱可能に構成されるクラッチ装置50(断接装置)と、クラッチ装置50(第1分割体51)の右端部に形成される貫通孔51dに対して挿通された状態で接続され、クラッチ装置50とロッド2の先端部2aとの間を連結する線材56と、から主に構成されている。尚、線材56には、強度の高い釣糸や金属製のワイヤ等が用いられることが好ましい。
【0024】
図1及び図2(b)に示されるように、第2連結部材6は、弾性を有する2本のゴム部材60,61から構成され、ゴム部材60,61の一端部にそれぞれ設けられる端部が開放したフック60a,61a同士が係合することにより着脱可能に接続されている。また、ゴム部材60の他端部(右端部)は、ロッド2の先端部2aに挿通された状態で接続され、ゴム部材61の他端部(左端部)は、第1連結部材5(クラッチ装置50)の左端部に形成される貫通孔53aに挿通された状態で接続されている。尚、第2連結部材6は、線状のゴム部材60,61から構成されるものに限らず、例えば金属ワイヤ等から構成されていてもよい。
【0025】
また、第2連結部材6の長さL2は、第1連結部材5の長さL1よりも長く形成されている(L2>L1)。
【0026】
次いで、第1連結部材5を構成するクラッチ装置50について詳しく説明する。図3に及び図4示されるように、クラッチ装置50は、軸方向右側(ロッド2側)を構成する第1分割体51と、軸方向左側(釣糸4側)を構成する第2分割体52と、から主に構成されている。
【0027】
第1分割体51は、ステンレス鋼等の金属製であり、円筒部51aと、円筒部51aの軸方向右端の径方向中心から右方に突出する略円柱状の突出部51cと、から構成され、円筒部51aには、軸方向左側に開口する有底円筒状の収容部51bが形成されている(図3(a)参照)。また、突出部51cには、径方向に貫通する貫通孔51dが形成され、貫通孔51dには、第1連結部材5を構成する線材56の左端部が挿通された状態で接続されている(図1及び図2(a)参照)。
【0028】
第2分割体52は、軸方向左端部に径方向に貫通する貫通孔53aが形成される略円柱状の開口部材53と、略円柱状の磁石54と、から構成され、磁石54の軸方向左端の径方向中心に形成される雌ネジ部54a(図3(a)参照)に対して、開口部材53の軸方向右端部に形成される雄ネジ部53bが螺合されることにより、開口部材53と磁石54とが一体に接続されている。尚、磁石54は、いわゆる永久磁石であり、外径が第1分割体51の収容部51bの内径よりも僅かに小さく形成されることにより、第1分割体51の収容部51bの内周面に磁石54の外周面をガイドさせた状態で挿嵌可能となっている。
【0029】
このように、クラッチ装置50は、第1分割体51の収容部51b内に第2分割体52を構成する磁石54を挿嵌することにより、第1分割体51と第2分割体52とを磁力結合させることができる。また、第1分割体51の収容部51bの底面と第2分割体52の磁石54の軸方向右端との間に生分解性の樹脂や紙等の非磁性体から成る円板状の調整シム55を介在させることにより、第1分割体51と第2分割体52との間に作用する磁力を調整し、第1分割体51と第2分割体52を軸方向に作用する所定以上の力により分離可能な状態で連結することができる。尚、調整シム55は、繰り返し使用する場合には、第1分割体51の収容部51bの底面または第2分割体52の軸方向右端に対して粘着材等により仮固定されることが好ましい。さらに尚、調整シム55を金属から構成することにより、磁石54に付着させ、繰り返し使用できるようにしてもよい。
【0030】
また、クラッチ装置50は、釣り具1の第1連結状態において、第1分割体51と第2分割体52とを磁力結合させた状態で、第2分割体52の軸方向左端部を構成する開口部材53の貫通孔53aに釣糸4が挿通され、第1分割体51の軸方向右端部を構成する突出部51cの貫通孔51dに線材56が接続されている。これによれば、ロッド2を釣糸4の送り出し方向(図5(a)参照)または釣り上げ方向(図5(b)参照)にそれぞれ所定角度傾けるように往復駆動しても、開口部材53の貫通孔53aを介して送り出し方向に延びる釣糸4の延長線上にクラッチ装置50の軸心が保持されるため、クラッチ装置50に対して釣糸4から伝達されるテンションが常時作用した状態なっている。すなわち、釣糸4から伝達されるテンションの変化に対するクラッチ装置50の作動応答性が高められている。
【0031】
尚、本実施例のクラッチ装置50は、ロッド2を往復駆動させて海中の疑似餌にしゃくり動作を付与する際に釣糸4から伝達されるテンションによって第1分割体51と第2分割体52との間に作用する軸方向の力よりも、第1分割体51と第2分割体52との間の磁力結合力が大きくなるように調整される。
【0032】
次いで、釣り具1の使用方法について説明する。釣り具1は、先ず、ロッド2の先端部2aに対して第1連結部材5の線材56及び第2連結部材6のゴム部材60をそれぞれ接続し、第1連結部材5を構成する第1分割体51の貫通孔53aに第2連結部材6のゴム部材61を接続した後、釣糸4を挿通し、釣糸4の一端をリール3に固定することにより組み付けられる(図1(a)参照)。
【0033】
次に、釣糸4の他端部に付けた疑似餌を船から海中に投入し、船を走らせながら疑似餌を引くとともに、ロッド2を往復駆動させて海中の疑似餌にしゃくり動作を付与する。このとき、釣り具1は、釣糸4とロッド2の先端部2aとの間を第1連結部材5にテンションが作用した状態で連結する第1連結状態となっている(図5参照)。
【0034】
次に、魚が疑似餌に食いつくことにより、釣糸4が送り出し側(ロッド2から離れる方向)に所定以上の力で引っ張られると、クラッチ装置50に対して釣糸4から伝達されるテンションが第1分割体51と第2分割体52との間の磁力結合力を上回ることにより、第1分割体51の収容部51b内から第2分割体52の磁石54が抜け出し、第1分割体51と第2分割体52とが分離する。これにより、釣り具1は、釣糸4とロッド2の先端部2aとの間を第2連結部材6にテンションが作用した状態で連結する第2連結状態(図1(b)参照)となり、魚の当たりを視覚的に報知することができる。
【0035】
このとき、第2連結部材6を介して第2分割体52がロッド2の先端部2aに接続されているため、第1分割体51と第2分割体52とが分離した際に、第2分割体52が釣糸4の送り出し側に飛んでいくことを防止できるとともに、過剰な釣糸4の送り出しを抑制することができる。また、第1分割体51と第2分割体52とが分離することにより、第1連結部材5と第2連結部材6の長さの違い(L2>L1)によって釣糸4が僅かに送り出された後、釣り具1が第2連結状態に変更されるため、魚の食いつきに合わせて釣糸4のテンションを変化させ疑似餌の針のかかりを大きくすることができる。さらに、第2連結部材6は、ゴム部材60,61から構成されているため、ゴム部材60,61の弾性により釣り具1が第2連結状態に変更された際の衝撃を緩和することができる。
【0036】
また、釣り具1の第2連結状態から、第2連結部材6を構成するゴム部材60,61におけるフック60a,61aの係合を解除することにより、リール3の巻き上げ操作を行いやすくすることができる。
【0037】
また、クラッチ装置50を構成する第1分割体51と第2分割体52とは、磁力結合されているため、第1分割体51と第2分割体52との間に磁力結合力を上回る力が作用することにより、第1分割体51と第2分割体52とが確実に分離するため、第1連結部材5の作動応答性及び作動安定性が良い。また、クラッチ装置50を繰り返し使用することができる。
【0038】
また、第1分割体51と第2分割体52とが分離する際に、第1分割体51の収容部51bの内周面に対して第2分割体52の磁石54の外周面が摺接することにより、第2分割体52の軸方向への移動がガイドされるため、第1分割体51と第2分割体52との分離方向を軸方向に安定させることができる。さらに、第1分割体51と第2分割体52との分離方向が軸方向となることから、釣糸4から伝達されるテンションに対するクラッチ装置50の応答性を高めることができる。
【0039】
また、第2分割体52は、開口部材53と磁石54とが一体に接続されているため、釣糸4を介して開口部材53に作用する力を磁石54に直接伝えることができ、釣糸4から伝達されるテンションに対する応答性を高めることができる。
【0040】
また、クラッチ装置50における第1分割体51と第2分割体52との間の磁力を調整シム55により調整可能であるため、狙う魚の種類や天候等のコンディションの変化に対する汎用性が高い。
【0041】
尚、実施例1における調整シム55の変形例1として、図6(a)に示されるように、軸方向の厚みを変更した調整シム155を介在させる、あるいは、図6(b)に示されるように、複数枚の調整シム55を介在させることにより、第1分割体51の収容部51bの底面と第2分割体52の磁石54の軸方向右端との間隔を広げて磁力を調整してもよい。また、第1分割体51の収容部51bの底面または第2分割体52の磁石54の軸方向右端に対してネジを螺合させ、ネジの締め具合により軸方向の突出量を調整可能に構成してもよい。
【0042】
また、実施例1における第1分割体51の変形例1として、図7に示されるように、第1分割体51に形成される収容部51bの内周面に沿って低摩擦層57を設けることにより、第1分割体51と第2分割体52とが分離する際に第1分割体51の収容部51bから第2分割体52の磁石54を抜け出しやすくし、釣糸4から伝達されるテンションに対する作動応答性を高めることができる。
【実施例2】
【0043】
次に、実施例2に係る釣り具につき、図8を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0044】
実施例2における釣り具について説明する。図8に示されるように、本実施例において、クラッチ装置250を構成する第1分割体251には、円筒部251aの軸方向右端部に周方向に延びるスリット251eが形成されることにより、例えばスリット251eからマイナスドライバ等を差し込んで第1分割体51の収容部51bの底面に対して粘着材等により仮固定される調整シム55を取外しやすくすることができる。
【実施例3】
【0045】
次に、実施例3に係る釣り具につき、図9を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0046】
実施例3における釣り具について説明する。図9(a)に示されるように、本実施例において、クラッチ装置350を構成する第1分割体351には、収容部351bの軸方向左側の内周面に径方向に凹部351eが形成され、凹部351e内には略三角形状の規制片351fがバネ351gにより内径方向に付勢された状態で配置されることにより、収容部351b内において、規制片351fが径方向に出没可能に構成されている。また、クラッチ装置350を構成する第2分割体352の円柱部材354は、軸方向の長さが第1分割体351の収容部351bの底面から凹部351eの軸方向右側までの軸方向の長さと略同一に形成されている。
【0047】
これによれば、魚が疑似餌に食いつくことにより、釣糸4が送り出し側(ロッド2から離れる方向)に所定以上の力で引っ張られると、クラッチ装置350に対して釣糸4から伝達されるテンションが第2分割体352に作用し、第2分割体352の円柱部材354の軸方向左方に移動しながら規制片351fをバネ351gの付勢力に抗して凹部351e内に向けて外径方向に押し込み、規制片351f全体が凹部351e内に埋没することにより、第1分割体351の収容部351b内から第2分割体352の円柱部材354が抜け出し、第1分割体351と第2分割体352とが分離する(図9(b)参照)。
【0048】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0049】
例えば、前記実施例1では、第1連結部材5は、クラッチ装置50を構成する第1分割体51と第2分割体52とが磁力結合される構成として説明したが、第1分割体と第2分割体とを所定以上の力により分離可能に連結できるものであれば、例えば第1分割体と第2分割体との間に面ファスナや粘着材等が設けられていてもよい。また、クラッチ装置は、磁石による磁力結合力と、面ファスナや粘着材等による接着力とを組み合わせて構成されてもよい。
【0050】
また、前記実施例1では、第2分割体52を構成する開口部材53と磁石54が一体に接続されるものとして説明したが、磁石54と第2分割体52とは別体に設けられていてもよく、磁石54は、第1分割体の収容部内に設けられていてもよい。さらに、開口部材は、磁石54とは別体で設けられていてもよく、この場合、開口部材は、磁石に対して線材を介して接続されることにより、釣糸4の延長線上にクラッチ装置の軸心が配置されやすくなる。また、開口部材を磁石に対して軸方向に伸縮可能なバネを介して接続することにより、クラッチ装置に対して釣糸4から伝達されるテンションの一部をバネにより吸収し、第1分割体と第2分割体とを分離させるために必要な力を調整するようにしてもよい。
【0051】
また、前記実施例におけるクラッチ装置において、ロッド2に接続される第1分割体と開口部材53に接続される第2分割体は、逆方向に入れ替えて構成されていてもよい。
【0052】
また、第1分割体と第2分割体は、円柱状または円筒形状に構成されるものに限らない。
【0053】
また、前記実施例では、第1連結部材5は、第1分割体と第2分割体とが着脱可能に構成されることにより、繰り返し使用可能なクラッチ装置を備えるものとして説明したが、これに限らず、一度だけ使用可能なものであってもよく、第1連結部材は、第2連結部材よりも脆弱な線材等から構成されることにより、所定以上の力により第1連結部材が破断するものであってもよい。
【0054】
また、第2連結部材6は、2本のゴム部材60,61は一端にそれぞれ形成される端部が開放したフック60a,61bにより係合され一体に接続されるものとして説明したが、どちらか一方は端部が開放しないリング状に構成されていてもよい。また、一方のフックは、外力により開閉する、いわゆるスイベル等の構成になっていてもよい。
【0055】
また、第2連結部材6は、第1連結部材が分離する所定の力により破断することがなく、かつ第1連結部材よりも長い部材であれば、1本の部材により構成されていてもよい。
【0056】
また、前記実施例では、釣り具は、引き縄漁において使用されるものとして説明したが、投げ釣りやぶっこみ釣り等の手持ちの釣りでも使用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 釣り具
2 ロッド
2a 先端部
3 リール
4 釣糸
5 第1連結部材(一方の連結部材)
6 第2連結部材(他方の連結部材)
50 クラッチ装置(断接装置)
51 第1分割体
51a 円筒部
51b 収容部
51c 突出部
51d 貫通孔
52 第2分割体
53 開口部材
53a 貫通孔(開口)
54 磁石
55,155 調整シム
56 線材
60,61 ゴム部材
60a,61a フック
250 クラッチ装置
251 第1分割体
251e スリット
350 クラッチ装置
351 第1分割体
351b 収容部
351e 凹部
351f 規制片
351g バネ
352 第2分割体
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9