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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】改良されたアクリル酸製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/09 20060101AFI20220128BHJP
   C07C 57/04 20060101ALI20220128BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220128BHJP
   B01J 29/40 20060101ALN20220128BHJP
   B01J 29/08 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C07C51/09
C07C57/04
C07B61/00 300
B01J29/40 Z
B01J29/08 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018549946
(86)(22)【出願日】2017-03-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 US2017023269
(87)【国際公開番号】W WO2017165323
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】62/311,262
(32)【優先日】2016-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511046391
【氏名又は名称】ノボマー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スークラジ, サデシュ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ツェイトリン, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ポクロフスキー, コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】ムクダム, ワヒード
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-001205(JP,A)
【文献】特開昭61-213206(JP,A)
【文献】特開2013-173088(JP,A)
【文献】特表2014-532650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0319849(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0113822(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/00
C07C 57/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-プロピオラクトンからアクリル酸を製造する方法であって、
β-プロピオラクトンを、気相条件下で、任意選択でラジカル重合阻害剤の存在中で、結晶性微孔質固体を含む不均一系触媒と接触させるステップであって、前記接触させるステップが、
β-プロピオラクトンを含む気相原料流を、変換条件で、ゼオライト触媒の固定床を有する反応ゾーンに流通させること、
前記固定床からアクリル酸を含有する生成物流を回収すること、および
分離ゾーンにおいて前記生成物流からアクリル酸を分離することを含む、
方法。
【請求項2】
前記気相原料流が窒素を含み、β-プロピオラクトン対窒素の重量比が、0.05:1から1.5:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が、ルイス酸性および/またはブレンステッド酸性を有するアルミナシリケートモレキュラーシーブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記不均一系触媒が、ゼオライトY、ベータゼオライト、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、MCM-22、ZSM-35、ゼオライトA、またはそれらの組合せを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ゼオライト触媒が、水素型または金属カチオン交換型であ前記金属カチオンが、Na、K、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Cuである、請求項2から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記不均一系触媒が、利用可能なカチオン交換部位による少なくとも50%のカリウムカチオンの交換率を有し、20から120の間の範囲のシリカ対アルミナ比を有する、ナトリウム型ZSM-5またはベータゼオライトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ラジカル重合阻害剤が、フェノチアジンである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記β-プロピオラクトンが、0.1h-1~2.1h-1の間のWHSVで提供される、または、
前記β-プロピオラクトンが、0.3h-1から0.9h-1までのWHSVで提供される、または、
製造された前記アクリル酸が、連続的に単離される、または、
前記アクリル酸が、少なくとも50%の収率で製造される、または、
前記アクリル酸が、100℃から300℃の間の温度で製造される、または、
前記β-プロピオラクトン、および前記触媒がさらに、溶媒と合わせられる、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
製造された前記アクリル酸が、95%より高い純度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
記変換条件が、200~20mmHgの範囲の圧力を含む、および/または、
前記触媒が、ZSM-11、ZSM-5、およびZSM-5/ZSM-11を含む、または、
前記蒸気原料流が、前記重合阻害剤を含む、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記接触させるステップが
固定床から少なくとも部分的に非活性化された触媒を定期的に引き出し、前記移動床から引き出された触媒よりも、β-プロピオラクトンのアクリル酸への変換に対する活性が高い新しい触媒で、非活性化された触媒を入れ替えること
を含み、任意に
(i)前記固定床に進入する前記触媒が、前記原料流に接触する前に加熱される、および/または、
(ii)前記非活性化された触媒が、再生ゾーンに通流し、前記再生ゾーンで再生ガスと接触して前記非活性化された触媒の活性を少なくとも部分的に回復し、再生触媒を生成し、前記再生触媒の少なくとも一部が、前記新しい触媒として前記固定床に戻される、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記接触させるステップが
(i)前記生成物流が、少なくとも1つのサイクロン分離器で分離を受ける、または、
(ii)前記ゼオライト触媒および前記気相原料流が、1立方フィート当たり少なくとも25ポンドの触媒密度を有する前記ゼオライト触媒に注入され、前記気相生成物流が、前記ゼオライト触媒から回収される、または、
(iii)前記気相原料流が、希薄相移送モードで前記ゼオライト触媒と接触し、ここで前記希薄相は、1立方フィート当たり20ポンド未満の触媒密度を有する
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
不活性ガスが、前記気相原料流を提供され、および
(i)前記触媒粒子とβ-プロピオラクトン原料との接触が、前記触媒粒子上に炭素を含有する使用済み触媒を生成し;使用済み触媒粒子の少なくとも一部が再生ゾーンに進入し、前記再生ゾーンにおいて、再生ガスが前記触媒粒子と接触して前記触媒から炭素を除去し、再生触媒を生成し;前記再生触媒が、前記反応ゾーンに戻される、または、
(ii)アクリル酸を単離するステップをさらに含む、または、
(iii)前記アクリル酸が、蒸留により単離される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記β-プロピオラクトンが、エチレンオキシドおよび一酸化炭素から製造される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
高吸収性ポリマーを製造する方法であって、
請求項1に記載の方法に従って製造されたアクリル酸を架橋剤の存在下で重合させて、前記高吸水性ポリマーを製造するステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、アクリル酸の製造のための改良されたプロセス、より詳細にはβ-プロピオラクトン(bPL)からのアクリル酸の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
最近の数十年、ポリアクリル酸系高吸水性ポリマー(SAP)に対する需要が増えるにつれて、アクリル酸(AA)の製造および使用が大きく増えている。SAPは、おむつ、成人用失禁製品、および女性用衛生製品の製作向けに、ならびに農業用途において広範囲に使用されている。
【0003】
現在、市販のアクリル酸は、プロピレン酸化から通常には得られる。プロピレンは主に精油製品であり、その価格および入手可能性は、原油価格と密接に関係している。このため、アクリル酸の価格は、オイル価格とその変動に依然として密接に関係している。
【0004】
したがって、アクリル酸を合成する代替方法に対するニーズが当技術分野にある。同時に、再生可能資源からアクリル酸を製造することが好ましいであろう。2015年7月2日に公開された米国特許出願公開第2015/0183708号および2014年1月15日に出願された米国特許出願公開第2014/0018574号には、多種多様な生物学的に活性な材料を使用してポリ3-ヒドロキシプロピオネートからバイオ系のアクリル酸を製造することが開示されている。
【0005】
他の参考文献では、無機触媒を使用してbPL(β-プロピオラクトン)からアクリル酸を製造することが開示されている。米国特許第3,176,042号によって、bPLからアクリル酸を製造するためのリン酸触媒プロセスが開示された。リン酸の腐食性および遅い反応速度のために、このプロセスは大きな資本を必要とする。さらに、水を反応器に絶えず供給して、反応器内部のリン酸の組成を所望のレベルに維持する必要がある。これが原因で、製造されたアクリル酸から水を分離する必要があり、その結果、さらなる設備および運転コストを招くことになる。
【0006】
米国特許第9,096,510号B2には、少なくとも部分的なガス相条件で固体触媒を使用する、bPLからのアクリル酸の製造が教示されている。
WO20133191には、二ステッププロセスにおけるbPLからのアクリル酸の製造が教示されている。すなわち、最初にbPLを重合して、ポリプロピオラクトンを製造し、次いでポリプロピオラクトンの熱分解によりアクリル酸を製造する。このプロセスは、非常に発熱性の重合反応の後に、非常に吸熱性の熱分解反応が続くので、大きな資本を必要とし、運転コストが高い。
【0007】
したがって、非炭化水素資源、好ましくは再生可能資源からアクリル酸、特に高純度のアクリル酸を製造する改良方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2015/0183708号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0018574号明細書
【文献】米国特許第3,176,042号明細書
【文献】米国特許第9,096,510号明細書
【文献】国際公開第20133191号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本明細書では、当技術分野で公知のプロセスと比較して、経済的に有利なベータ-プロピオラクトン(bPL)からのアクリル酸の製造向けの改良された一ステッププロセスによる、bPLからアクリル酸を製造するための方法およびプロセスが提供される。
【0010】
一部の態様では、bPL、不均一系触媒、および任意選択で溶媒または希釈剤を合わせること;触媒と接触させている間bPLおよび任意の溶媒または希釈剤を気相に維持すること;ならびにbPLの少なくとも一部からアクリル酸を製造することによってbPLからアクリル酸を製造するための方法およびプロセスが提供される。不均一系触媒は、結晶性微孔質固体を含む。本発明に特に適した触媒の種類には、アルカリ土類リン酸塩、担持リン酸塩、カルシウムヒドロキシアパタイト、無機塩、およびゼオライトが含まれる。好ましい実施形態では、不均一系触媒はアルミナシリケートモレキュラーシーブであり、より好ましくはルイス酸性および/またはブレンステッド酸性を有するゼオライトである。ゼオライトは、水素型またはカチオン交換型であってもよい。適切なカチオンは、NaまたはKなどのアルカリ金属;Ca2+、Mg2+、Sr2+、またはBa2+などのアルカリ土類カチオン;Zn2+、Cu、およびCu2+である。
【0011】
bPLのアクリル酸への変換は、固定床連続反応器または連続反応器および再生システム、すなわち、新しい触媒または再生触媒を反応ゾーンに連続的に提供できる、反応器および再生器で行うことができる。連続再生反応器には、移動床反応器構成および流動床反応器構成が含まれる。
【0012】
一実施形態では、本発明は、アクリル酸の製造方法であって、bPLおよび重合阻害剤を含む気相原料流を、液相または混合相変換条件で、結晶性微孔質固体を含む触媒に通流させるステップ;気相生成物流を回収するステップ;および固定床からアクリル酸を含有する生成物流を回収するステップ;および分離ゾーンにおいて生成物流からアクリル酸を分離するステップを含む製造方法である。別の実施形態では、変換全体が単一の反応器内で行われる。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、アクリル酸の製造方法であって、bPLを含む気相原料流を、変換条件で、ゼオライト触媒の固定床に通流させるステップ;気相生成物流を回収するステップ;および固定床からアクリル酸を含有する生成物流を回収するステップ;および分離ゾーンにおいて生成物流からアクリル酸を分離するステップを含む方法である。
【0014】
任意選択で、bPLは、変換反応器に供給されるのに先立って、不活性溶媒または不活性ガスで希釈することができる。アクリル酸は、1つまたは複数の蒸留塔において粗反応生成物から回収することができる。任意選択で、不活性ガスまたは不活性溶媒を使用してbPLを希釈することができ、未反応のbPLを変換反応器に戻して再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、ゼオライトおよび重合阻害剤の存在中でbPLからアクリル酸を製造する例示的なプロセスを描く。
【0016】
図2図2は、本明細書に記載の方法に従い、bPLからアクリル酸を製造する例示的な反応システムを描く。
【0017】
図3図3は、本発明の方法に従い、bPLからアクリル酸を製造する、反応器システムの固定床作動のプロセスフロー構成図である。
【0018】
図4図4は、本発明の方法に従い、bPLからアクリル酸を製造する、反応器システムの移動床作動のプロセスフロー構成図である。
【0019】
図5図5は、本発明の方法に従い、bPLからアクリル酸を製造する、反応器システムの流動床作動のプロセスフロー構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本出願は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することによって最も良く理解することができ、図面において、同様の部分は同一番号で参照することができる。
【0021】
以下の説明では、bPLからアクリル酸を製造するための方法、プロセス、パラメータ等が記載されている。しかし、かかる説明は、本発明の範囲を限定するものではなく、例示的な実施形態の説明として提供されているものであることを認識されたい。
【0022】
本明細書では、不均一系触媒を使用してbPLからアクリル酸を製造する方法が提供されている。適切な不均一系触媒には、シリカ-アルミナモレキュラーシーブ、特にリン酸化合物で修飾されたものが含まれる。本発明に特に適した触媒の種類には、アルカリ土類リン酸塩、担持リン酸塩、カルシウムヒドロキシアパタイト、無機塩、金属酸化物、およびゼオライトが含まれる。好ましい実施形態では、不均一系触媒はアルミナシリケートモレキュラーシーブであり、より好ましくはルイス酸性および/またはブレンステッド酸性を有するゼオライトである。ゼオライトは、水素型またはカチオン交換型であってもよい。適切なカチオンは、NaまたはKなどのアルカリ金属;Ca2+、Mg2+、Sr2+、またはBa2+などのアルカリ土類カチオン;Zn2+、Cu、およびCu2+である。かかる方法によって、単一ステップ反応でbPLからアクリル酸を製造する。かかる方法はまた、ポリプロピオラクトンおよびポリアクリル酸などの、形成する可能性のある他の副生成物を最小限にすることによって、高収率でアクリル酸を製造することができる。
【0023】
本発明の反応ゾーン向けに複数のプロセス構造が存在する。反応ゾーンは、好ましくは、原料流に関して連続的であり、固定床反応器、移動床反応器または流動化粒子反応器を利用する。反応器は気相中で作動する。固定床反応器構成は、大気圧で作動しても、準大気圧(減圧下)で作動しても、超大気圧下で作動してもよく、bPLは気相で反応器に進入する。bPLは、希釈された状態で反応器に進入しても、希釈されていない状態で反応器に進入してもよい。連続再生反応器の移動床形態は、同一様式で作動することが可能である。連続再生反応器の流動化粒子形態の場合、bPLは、不活性ガス(窒素など)と一緒に反応ゾーンに進入することができ、このガスは一緒に、ガスの流れに懸濁化/流動化した触媒を提供する。任意選択で、bPLを、上記のプロセス構成のいずれかにおいて溶媒に希釈することが可能である。
【0024】
種々の反応器構成は、様々な条件下で作動可能である。bPLのアクリル酸への変換は、100℃から300℃までの、好ましくは150℃から250℃までの、より好ましくは150℃から225℃までの温度範囲で実施することができる。適切な圧力条件は、減圧条件から最高で100psigの圧力に及ぶ。
【0025】
反応の生成物流は、アクリル酸およびプロセスの作動に付随する他の材料を含有する。このような他の材料としては、低沸点の副生成物(エチレンおよびCOなど)、任意選択で不活性ガス(窒素など)、未反応bPLおよびジアクリル酸(アクリル酸の二量体)、さらなる副生成物および希釈剤を挙げることができる。アクリル酸は、1つまたは複数の蒸留塔での蒸留などの当技術分野で公知の手段によって、反応生成物から回収される。高温で(80℃より高い温度で)縮合させると、アクリル酸がジアクリル酸およびポリアクリル酸を形成する傾向があることは、当技術分野において周知である。したがって、形成されたアクリル酸は、反応器から出たらすぐに急速に冷却する必要がある。
【0026】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法で使用するbPLは、エポキシドカルボニル化によって製造することができる。例えば、bPLは、カルボニル化反応によってエチレンオキシドおよび一酸化炭素から製造することができる。例えば、WO2010/118128を参照されたい。一変形形態では、bPLは、カルボニル化触媒および任意選択で溶媒の存在中で、エチレンオキシドを一酸化炭素と反応させることによって製造される。
【0027】
一部の変形形態では、bPLは、一酸化炭素の初期圧力で反応に添加される。方法が連続的である他の変形形態では、bPLを添加するのに初期圧力は不要である。
【0028】
一部の実施形態では、bPLのアクリル酸への変換において重合阻害剤を使用する。重合阻害剤は、ラジカル重合阻害剤であってもよい。適切な重合阻害剤には、例えば、フェノチアジンが含まれ得る。他の実施形態では、ラジカル重合阻害剤は、気相変換反応器の後、アクリル酸生成物回収ステップで添加される。
【0029】
本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、bPLのアクリル酸への変換はニートで行われる。他の実施形態では、bPLのアクリル酸への変換は、溶媒または希釈剤の存在中で行われる。
【0030】
一部の変形形態では、選択される溶媒は、(i)bPLを溶解するか、もしくは少なくとも部分的に溶解するが、bPLと反応しないか、もしくは最小限しか反応しない;または(ii)溶媒が反応器中に留まりながら製造されたアクリル酸が蒸留され得るように高沸点を有する、あるいは(i)と(ii)との組合せである。ある特定の変形形態では、溶媒は極性非プロトン性溶媒である。例えば、溶媒は、高沸点の極性非プロトン性溶媒であってもよい。一変形形態では、溶媒にはスルホランが含まれる。
【0031】
使用する溶媒の量を変更して、添加するbPLの計量と反応混合物中の試薬の全体的濃度とのバランスをとることができる。例えば、一変形形態では、反応におけるbPLと溶媒との比は、約3:1から約1:5までである。
【0032】
溶媒は、使用に先立って当技術分野で公知の適切な任意の方法または技法を使用して乾燥させることができる。
【0033】
本明細書に記載の溶媒のいずれの組合せも使用することができる。
【0034】
いくつかの可変要素がプロセスに影響を及ぼす可能性があり、例えば、bPLの添加速度がアクリル酸の収率に影響を及ぼす可能性がある。一部の変形形態では、方法は、bPLの添加速度を制御するステップをさらに含む。bPLの添加速度がより遅いと、ポリプロピオラクトンやポリアクリル酸などの他の生成物の形成が減少することも予期せず観察された。一部の変形形態では、方法は、bPLの少なくとも一部からのポリプロピオラクトンの製造を最小化または抑制するステップをさらに含む。一変形形態では、ポリプロピオラクトンがほとんどまたは全く製造されない。前述のものと組合せ可能な他の変形形態では、方法は、製造されたアクリル酸の少なくとも一部からのポリアクリル酸の製造を最小化または抑制するステップをさらに含む。一変形形態では、ポリアクリル酸がほとんどまたは全く製造されない。
【0035】
添加するbPLの量は、当技術分野の適切な任意の方法または技法によって計量することができる。かかる添加方法は、その方法が用いられる製造規模によって変更することになる。かかる添加方法は、1つのニードルバルブを介して反応器へと計量することによる実験室規模の量でのbPL添加から、1つまたは複数のバルブおよびマニホールド構成を通しての大規模添加までに、及ぶことができる。固定床および移動床の作動については、接触ステップは、0.1h-1~2.1h-1の間または0.3h-1から0.9h-1の間のbPLの相対的な毎時重量空間速度(WHSV)の範囲のスループットであってよい。
【0036】
製造されたアクリル酸の取り出しもまた、アクリル酸の収率に影響を及ぼす場合がある。製造されたアクリル酸のストリッピングによって、製造されたアクリル酸の収率が高まることもまた、予想外に観察された。一部の変形形態では、方法は、製造されたアクリル酸の少なくとも一部をストリッピングするステップ(例えば、蒸留によって)をさらに含む。前述のある特定の変形形態では、製造されたアクリル酸の少なくとも一部をストリッピングするステップにより、アクリル酸の重合が、ひいてはポリアクリル酸の形成が最小限に抑えられる。
【0037】
一部の実施形態では、アクリル酸は、製造されたアクリル酸の少なくとも一部をストリッピングする圧力で製造することができる。例えば、一変形形態では、方法は、100mmHg(絶対)の準大気圧で行うことができる。他の変形形態では、20mmHgから200mmHgの間の絶対圧力で反応を実施することができる。さらに別の変形形態では、bPLは、0.5~100psigの範囲の超大気圧でアクリル酸に変換される。
【0038】
アクリル酸は、本明細書に記載の方法に従い、高温で製造することができる。一部の実施形態では、温度は少なくとも100℃、少なくとも150℃、少なくとも200℃、少なくとも250℃または少なくとも300℃であり、100℃~300℃の間、150℃から250℃の間、および/または190℃から240℃の間の範囲であってもよい。
【0039】
一部の変形形態では、方法が行われる反応器、bPL、重合阻害剤、触媒および/または溶媒は、反応ゾーンにおいて本明細書に記載の温度に加熱される。他の変形形態では、bPL、重合阻害剤、触媒および/または溶媒は、本明細書に記載の温度で反応器に提供される。
【0040】
本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、アクリル酸は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の収率で製造される。
【0041】
本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、製造されたアクリル酸は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、または少なくとも98%の純度を有する。製造されたアクリル酸が、例えば蒸留によって単離される一部の変形形態では、アクリル酸は、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の純度を有する。
【0042】
触媒の非活性化は、有機材料が触媒の表面上に堆積すること、細孔内およびゼオライトの表面上でのコークスの生成、ならびに/または極性の酸性化合物の蓄積のうちの少なくとも1つの結果として、経時的に起こる。作動条件、主として温度とともに触媒の組成が、コークス形成による触媒非活性化の速度を決定することになる。高温での燃焼によってコークスおよび有機材料を除去すると、触媒の活性を効果的に回復させることができる。再生については、450℃またはそれより高い温度で典型的には行われる。好ましくは、再生は450℃から550℃の間の範囲内となる。
【0043】
固定床反応器の場合、非活性化された触媒のin situでの焼成によって、再生がもたらされ、その活性が回復し得る。典型的には、焼成は、酸素含有再生ガス、ほとんどの場合空気を、450℃またはそれより高い温度で触媒床に通流させる。再生は、典型的には450℃またはそれより高い温度で行われる。好ましくは、再生は450℃から550℃の間の範囲内であり、4から10時間までの間である。ガス流は、触媒から非活性化堆積物の少なくとも一部を除去するために選択された時間の間継続することが可能であるか、または、再生ステップからの使用済みガス(燃焼排ガス)中に燃焼生成物が無いことによって証明される、コークスおよび任意の有機材料の本質的に完全な除去が起こるまで、継続することが可能である。他の実施形態では、固定床触媒または移動床触媒の再生は、再生触媒を不活性ガス流で400℃未満の温度でパージすることを含み、より好ましくは不活性ガス流は窒素を含む。
【0044】
結晶性微孔質固体を含む不均一系触媒には、アルカリ土類リン酸塩、担持リン酸塩、カルシウムヒドロキシアパタイト、無機塩、およびゼオライトが含まれる。好ましい実施形態では、不均一系触媒はモレキュラーシーブであり、より好ましくはアルミナシリケートモレキュラーシーブである。ほとんどの実施形態では、不均一系触媒はルイス酸性および/またはブレンステッド酸性を有し、より好ましくはルイス酸性をもつゼオライトである。他の実施形態では、かかるモレキュラーシーブは、リン酸化合物で有利に修飾されていてもよい。本発明に特に適した触媒の種類には、アルカリ土類リン酸塩、担持リン酸塩、カルシウムヒドロキシアパタイト、無機塩、およびゼオライトが含まれる。好ましい実施形態では、不均一系触媒はアルミナシリケートモレキュラーシーブであり、より好ましくはルイス酸性および/またはブレンステッド酸性を有するゼオライトである。ゼオライトは、水素型またはカチオン交換型であってもよい。適切なカチオンは、NaまたはKなどのアルカリ金属カチオン;Ca2+、Mg2+、Sr2+、またはBa2+などのアルカリ土類カチオン;Zn2+、Cu、およびCu2+である。
【0045】
好ましいゼオライト触媒に関連して、広い範囲のゼオライトおよびゼオライト骨格種を、本発明を実施するために有利に使用することができる。本発明において最も有利に使用し得る様々なゼオライト骨格種は、MFI(ペンタシル)、FAU(ホージャサイト)、MAU(モルデナイト)、BEA(ベータ)およびMWWゼオライト構造を含む。こういったクラスからの有用なゼオライトは、1次元(1D:ZSM-22)、2次元(2D:MCM-22およびZSM-35)、または3次元(3D:ZSM-5、ZSM-11、ZSM-5/ZSM-11、およびβ)の結晶構造を含み得る。一実施形態では、好ましいゼオライトには、ZSM-5、ゼオライトベータ、ゼオライトY、およびゼオライトAが含まれる。
【0046】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ゼオライト中のシリカアルミナ比がより高いことは、骨格Alの集団がより少ないこと、したがって交換可能な電荷補償アルカリイオン(K++Na+)の容量がより少ないことを意味する。かかる場所は、ルイス酸性部位として働く。したがって、表面酸性は、ほとんどのゼオライト触媒に関してシリカアルミナ比が高まるにつれて低下すると考えられる。したがって、一実施形態では、固体触媒は、弱酸性部位および弱塩基性部位の両方を所有する。さらなる一実施形態では、固体触媒は、表面の酸性と塩基性との間のバランスを有する。別の実施形態では、好ましいゼオライトは、1.1~120;10~50;または10~20の間の範囲のSiO2/Al2O3比を有することになる。
【0047】
好ましくは、ゼオライトは、NaまたはKなどのアルカリ金属カチオン;Ca2+、Mg2+、Sr2+、またはBa2+などのアルカリ土類カチオン;Zn2+、Cu、およびCu2+のうちの1つまたは複数でイオン交換されている。この群のうち、ゼオライトは好ましくはカリウムカチオンでイオン交換されている。特に好ましいゼオライトは、カリウム交換されたZSM-5、BEAゼオライト、ゼオライトAおよびゼオライトYである。別の実施形態では、ゼオライトは、マイルドな酸性部位およびマイルドな塩基性部位の両方を含有する、アルカリ金属またはアルカリ土類金属で修飾されたゼオライトYである。一部の好ましい実施形態では、K+の交換比率は70%より高い、80%より高い、または90%より高い。
【0048】
一部の実施形態では、ゼオライトは少なくとも30%のミクロ細孔容積を有する。好ましい一実施形態では、ゼオライトは、30~80%または60~80%の間の範囲のミクロ細孔容積を有する。別の好ましい実施形態では、ゼオライトは、30から45%までの範囲のミクロ細孔容積を有するZSM-5ゼオライトまたはYゼオライトである。
【0049】
別の実施形態では、触媒は、好ましくは、利用可能なカチオン交換部位による少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%のカリウムカチオンの交換率を有する、ナトリウム型のZSM-5またはベータゼオライトである。別の実施形態では、触媒は、好ましくは、利用可能なカチオン交換部位による少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%のカリウムカチオンの交換率を有し、そして20から120の間の、20から50の間のまたは20から30の間の範囲のSiO2/Al2O3比を有する、ナトリウム型ZSM-5である。
【0050】
一部の実施形態では、粒径は0.1~1.8μm、好ましくは0.2~1.8μmの間の範囲であった。
【0051】
ある特定の実施形態では、本発明は良好な選択性で高い収率を製造する。本発明により、50%、60%、または80%を超えるAAへの選択性を達成することができる。AAの収率は、50%、60%、または75%を超える可能性がある。
【0052】
一次元の10環ゼオライトを有するゼオライト(ZSM-22)は、連続再生反応器構成での使用に特に適している可能性がある。かかるゼオライトによって提供されるより大きな格子空間は、この一分子反応にとってより適切であり得、bPLのAAへの選択性および/または変換の改良を提供し得る。しかし、より大きな格子空間と関連してゼオライトの容積当たりの細孔の数が減少することは、炭素堆積物および有機材料での細孔容積のより速い充填につながることがある。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、酸性部位、特にルイス酸部位がほとんどゼオライトのミクロ細孔に存在する場合、かかる細孔はコークスまたは他の材料による細孔閉塞によって容易に非活性化するが、かかるミクロ細孔の単位容積がより大きいとゼオライトの全体的な非活性化を遅らせる可能性があると考えられる。対照的に、二次メソポーラスネットワークを含有する脱アルミニウムおよび塩基処理されたゼオライトによれば、より大きいサイズの細孔が提供されるが、全体として細孔容積は減少する。したがって、かかる構造に関して大きめの開環の存在度がより高いと、全体的な細孔容積の減少に起因する非活性化へのより高い感受性およびより速い非活性化速度という負担において、AAの製造を改良することができる。ゼオライト触媒の頻繁な再生のために反応器をオフラインとする必要性を回避しながら、連続再生反応器構成によって、bPLからのAA製造における効果を得る方法が可能となる。
【0053】
逆に、固定床構成で方法を実施する場合、2次元のまたは3次元の細孔構造を提供するゼオライトを使用することが有利であろう。かかる結晶構造の使用により、選択性または変換におけるどんな低下でも、固定床中のゼオライト触媒のより長い寿命とバランスをとることができる。この点に関して、ペンタシル構造を有するゼオライト、すなわちZSM-11およびZSM-5は、最も少ない量の炭素堆積物を生じることが可能なので好ましい。
【0054】
本明細書に記載の触媒のいずれの組合せも使用することができる。
【0055】
本発明の方法は、多種多様な構成で実施することが可能である。特定のプロセス構成に関する以下の説明は、本明細書に記載のプロセス構成の任意の特定の構造のいずれかに本発明を限定することを意図するものではない。
【0056】
本発明の反応器システムの1つの可能な構成では、反応器システムは連続固定床反応器である。本発明の別の可能な構成では、反応器システムは、任意選択の連続触媒再生を伴う移動床反応器を含む。これらの実施形態のいずれにおいても、反応器は、準大気圧または超大気圧で作動可能である。具体的には、反応器は、好ましくは、40mmHgから250mmHGの間の絶対圧力または0.5psigから100psigまでの絶対圧力で作動される。bPLを80℃から150℃の間の温度で気化させ、次いで触媒を充填した反応器の入口にbPL蒸気を供給する。反応器は、100℃から300℃までの、好ましくは150℃から250℃までの温度範囲で作動される。温度制御および反応中に生じた熱の除去を円滑化するために、反応器は、管状のシェルアンドチューブ反応器であってもよく、触媒が管に装填されており、そして熱伝達流体をシェル側に供給する。任意選択で、反応器は、いくつかのセクションと、セクション間に取り付けられたさらなる熱交換器からなることができる。一実施形態では、すべてのbPLは、50%より大きい、90%より大きい、好ましくは95%より大きい、最も好ましくは99%より大きい、アクリル酸への選択性をもって反応器内部で変換される。別の実施形態では、bPLの一部のみがアクリル酸に変換され、bPLの別の部分は未変換で反応器から出る。未変換のbPLは、回収され、反応器の入口に戻され再利用されることができる。この実施形態におけるbPLのAA変換は、50%より大きい、70%より大きい、80%より大きい、90%より大きいまたは95%より大きい。反応器中の滞留時間は、所望のbPL変換を達成するのに十分であり、0.1秒から2分までの範囲である。
【0057】
任意選択で、触媒活性が低下する場合、これを空気または希薄酸素の流れにおいて再生させて、堆積コークスを除去することができる。かかる再生はバッチベースで実施することができ、この場合、反応器への入力流の流れが一時停止されている間に、再生ガスおよび他の再活性化ガス(rejuvenating gas)を反応器容器内の触媒に通流させる。再生は、典型的には、触媒上に存在し、触媒の非活性化を引き起こしているかまたは一因となっているコークスおよび他の揮発性化合物を酸化する酸素含有ガスを含む。再生ガスを加熱して非活性化化合物の燃焼を開始することができる。燃焼ガスの加熱は、典型的には、再生を開始するときのみ必要であり、コークスおよび揮発性化合物の再生ガスとの発熱反応によって放出された熱は反応ゾーンにおいて十分な熱を、そしてほとんどのガスの場合、過剰な熱をもたらすことになる。このため、再生にあたっては酸素または他の酸化反応物の濃縮物が、再生を開始するまたは継続するときに、希薄相にある非活性化された触媒に普通には供給される。
【0058】
再生ガスの反応器への通流は、所望量の炭素質化合物および揮発性化合物が触媒から除去されるまで続けられる。これは、ほとんどの場合、触媒からすべての炭素質堆積物および揮発性化合物が除去されることよって示されるように、再生が本質的に完了するまで続けられる。ほとんどの場合、酸化ガスの添加は、燃焼の波を生じさせることになり、この波は、再生触媒が触媒床に最初に接触するところから始まり、触媒床が完全に再生されるまでガス流の方向に床を通して進行する。
【0059】
再生が完了すると、さらなるガスを床に通流させることができる。不活性ガスを床に通流させて触媒を冷却することができる。他のガス流を触媒床に通流させて触媒を調整することができ、触媒の含浸およびイオン交換などのステップを含み得る。
【0060】
さらなる任意の調整に続いて、反応器をAAの製造のためにオンラインに戻すことができる。これは、反応ゾーンのボイドスペースの任意の残留ガスをパージすることによって始まり得、その後、気相bPLを反応器に添加することができる。
【0061】
再生に関して他の方法を用いることができ、これは本明細書で先に記載したものを含む。具体的には、反応器は移動床として作動可能であり、この場合、触媒が再生のために反応ゾーンの底部から引き出されるにつれて、触媒が重力流の下で床を通してゆっくりと、典型的には間欠的に移動する。かかるシステムは、米国特許第3,647,680号に示されており、その教示は、参照により本明細書に組み込まれる。このような作動の一実施形態では、再生向けの触媒が反応器の底部から取り出され、再生ゾーンの頂部にそれを通過するために持ち上げられるときに、非活性化された触媒粒子が間欠的に反応器を通って下方へ下降する。
【0062】
再生ゾーンでは、典型的には、固定床反応ゾーンにおける触媒のin-situ再生について先に記載のものと同じステップが行われる。再生では、触媒粒子が反応ゾーンを通って、再生および処理に関する様々な段階を経て間欠的に下降するような、バッチフロー様式のステップが提供され得る。
【0063】
移動床反応ゾーンは、準大気圧で、大気圧でまたは加圧で作動可能である。触媒は、各ゾーンにおいて本質的に同じ圧力条件を維持する様式で反応器と再生ゾーンとの間で移送させることができ、または反応ゾーンおよび再生ゾーンは、反応ゾーンにおける減圧条件での作動を含めて異なる圧力で作動可能である。本発明では、反応器と再生ゾーンとの間に、しばしばロックホッパと呼ばれる、1つまたは複数の圧力隔離チャンバを用いて、ゾーン間の圧力相対圧力を変更させることができる。
【0064】
別の可能な反応器システム構成では、反応器システムはここでも、連続固定床反応器または連続触媒再生を伴う移動床反応器である。この場合、反応器システムは、大気圧で、大気圧より低い圧力で、または大気圧を超える圧力で作動可能である。一実施形態では、反応器は250mmHgから50psigの間の圧力で作動される。好ましくは、反応器は5psigから30psigまでの圧力で作動される。反応器は、100℃から300℃の間の、好ましくは150℃から250℃の間の温度範囲で作動可能である。bPLは、窒素または別の不活性ガスの流れの中で反応器に供給される。bPLと不活性ガスの重量比は、0.05:1から約1.5:1までである。一実施形態では、不活性ガス中でbPLの所望の濃度を得るのに必要な温度に維持されている液体bPLを含有する容器に不活性ガスを供給する。次いで、bPLと不活性ガスとの混合物を反応器の入口に供給する。別の実施形態では、bPLは、反応器の入口近くで不活性ガス流の中へと注入される。さらに別の実施形態では、bPLは、不活性溶媒中の溶液として供給される。bPL溶液の濃度は10%から99%の間の範囲である。
【0065】
温度制御および反応中に生じた熱の除去を円滑化するために、反応器は、管状のシェルアンドチューブ反応器であってもよく、触媒が管に装填されており、そして熱伝達流体をシェル側に供給する。任意選択で、反応器は、いくつかのセクションと、セクション間に取り付けられたさらなる熱交換器からなることができる。一実施形態では、すべてのbPLは、90%より大きい、好ましくは95%より大きい、最も好ましくは99%より大きい、アクリル酸への選択性をもって反応器内部で変換される。別の実施形態では、bPLの一部のみがアクリル酸に変換され、bPLの別の部分は未変換で反応器から出る。未変換のbPLは、回収され、反応器の入口に戻され再利用されることができる。この実施形態におけるbPL変換は、75%より大きい、好ましくは90%より大きい、最も好ましくは95%より大きい。反応器中の滞留時間は、所望のbPL変換を達成するのに十分であり、0.1秒から2分までの範囲である。
【0066】
不活性ガスは、反応生成物から分離され、反応器に戻されて再利用される。任意選択で、触媒活性が低下する場合、これを空気または希薄酸素の流れの中で再生させて、堆積コークスを除去することができる。
【0067】
代替的に、触媒非活性化についてはここでも、本明細書で先に記載の通り移動床モードにおいて目的の反応器構成を作動させることによって、対処し得る。
【0068】
本発明の方法はまた、流動輸送モードで触媒を維持する、流動する反応ゾーンおよび再生ゾーンで作動可能である。こういった構成は、触媒の表面にまたは細孔中にコークスおよび他の有機または無機化合物が蓄積することによる急速な非活性化という状態に置かれる、触媒の使用にとって好ましい。好ましくは、反応器は再生ゾーンを備えている:非活性化された触媒を反応ゾーンから再生ゾーンに運び、次に再生した触媒を反応ゾーンにフィードバックする。反応物および再生ガスとの触媒の循環接触に流動状態の固体触媒粒子を使用するプロセスは周知である。(それらの内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,567,531号;第9,388,095号および第9,238,210号を参照されたい。)
【0069】
反応器はまた、大気圧より下で、大気圧でまたは大気圧より上で作動可能である。一実施形態では、反応器は40mmHgから100psigの間の圧力で作動される。好ましくは、反応器は5psigから50psigまでの圧力で作動される。反応器は、100℃から300℃までの、好ましくは150℃から250℃までの温度範囲で作動される。
【0070】
一実施形態では、流動反応ゾーンの反応セクションは、固体触媒粒子の流動床を含み、この場合、流動ガスが通過しても、流動床からかなりの量の触媒が輸送されることはなく、bPL原料流は流動床へと通流している。流動床における触媒の密度は、典型的には1立方フィート当たり少なくとも25ポンドであり、より典型的には、触媒は1立方フィート当たり30~35ポンドの間の範囲の密度を有することになる。別の実施形態では、bPL原料流の全部または一部によって、流動床中の流動化粒子の流動化を維持するのに必要なガスの一部を供給することができる。別の実施形態では、さらなるガスを添加して流動床中の触媒粒子の流動化を維持する。
【0071】
別の実施形態では、流動反応ゾーンの反応セクションは輸送反応ゾーンを含み、この場合、気相原料流と触媒粒子との間で接触が起こると、触媒粒子は流動化ガスに巻き込まれ、これによって運ばれる。輸送反応ゾーンの場合、気相流は流動化ガスの少なくとも一部を供給する。輸送反応ゾーンにおける触媒密度は、典型的には1立方フィート当たり20ポンド未満、より典型的には1立方フィート当たり5から15ポンドまでの範囲である。
【0072】
連続再生も提供される場合、再生ガスによって、再生ゾーン内のおよびそこからの触媒の流動化移動のために、流動ガスの少なくとも一部が提供される。窒素などの不活性ガスもまた、さらなる流動化媒体として反応ゾーンおよび/または再生ゾーンに供給されて、反応ゾーンと再生ゾーンとの間の触媒の輸送をさらに促進することができる。
【0073】
反応器に進入するガス流の温度は、反応器を所望の温度に維持するように調節することができる。好ましい実施形態では、bPLは反応器の底部に注入され、反応生成物(アクリル酸)、副生成物、および不活性ガスは反応器の頂部から出てくる。不活性ガスは、反応生成物から分離され、反応器の入口へと再利用される。
【0074】
別の実施形態では、触媒粒子は、流動床反応ゾーンまたは輸送反応ゾーンからのその回収物の一部として気相生成物流から取り出される。流動床構成の一部の実施形態では、サイクロンまたは他のガス分離装置によって、反応ゾーンまたは再生ゾーンから流れ出るガス流に巻き込まれてくる、触媒粒子、特に触媒微粒子が取り出されることになる。(触媒微粒子は、触媒粒子がその流動状態で互いにおよびプロセス設備の表面と接触すると触媒粒子の摩耗によって生じる、小さな触媒粒子および触媒残渣とともに破損した触媒粒子を含む。)
【0075】
一実施形態では、すべてのbPLは、90%より大きい、好ましくは95%より大きい、最も好ましくは99%より大きい、アクリル酸への選択性をもって反応器内部で変換される。別の実施形態では、bPLの一部のみがアクリル酸に変換され、bPLの別の部分は未変換で反応器から出る。未変換のbPLは、回収され、反応器の入口に戻され再利用されることができる。この実施形態におけるbPL変換は、75%より大きい、好ましくは90%より大きい、最も好ましくは95%より大きい。反応器中の滞留時間は、所望のbPL変換を達成するのに十分であり、0.1秒から2分までの範囲である。
【0076】
不活性ガスは、反応生成物から分離され、反応器に戻されて再利用される。
【0077】
アクリル酸、任意選択で未反応のbPL、任意選択で溶媒、および任意選択で不活性ガスからなる、反応器から出てくる反応生成物は、急速に冷却され、次いでアクリル酸が1つまたは複数の蒸留塔において反応生成物から分離される。
【0078】
一部の態様では、ベータ-プロピオラクトン、ゼオライト、および任意選択で重合阻害剤を合わせること;ならびにベータ-プロピオラクトンの少なくとも一部からアクリル酸を製造することによって、ベータ-プロピオラクトンからアクリル酸を製造する方法が提供される。例えば、図1を参照すると、プロセス100は、アクリル酸を製造する例示的なプロセスである。ベータ-プロピオラクトン102は、ゼオライト104および重合阻害剤106と組み合わされてアクリル酸110が製造される。一部の変形形態では、プロセス100はニートで行われる。他の変形形態では、プロセス100は溶媒の存在中で行われる。一部の実施形態では、方法は、製造されたアクリル酸を連続的に単離するステップをさらに含む。一部の変形形態では、アクリル酸は、蒸留により単離される。他の態様では、本明細書においてアクリル酸を製造するためのシステムが提供される。例えば、図2を参照すると、例示的なアクリル酸製造システムが描かれている。システム200は、本明細書に記載の方法に従って、bPLからアクリル酸を製造するように設定されている。
【0079】
システム200は、本明細書に記載の方法に従って、bPL、ゼオライト、および重合阻害剤を受け取るように、さらにbPLの少なくとも一部からアクリル酸を製造するように設定された反応器210を含む。反応器210は、高温でアクリル酸を製造するように設定されている。方法に関して本明細書に記載される温度のいずれもシステムで用いることができる。例えば、一変形形態では、反応器210は、170℃から200℃の間の温度でアクリル酸を製造するように設定されている。適切な反応器には、例えば、Parr反応器が含まれ得る。
【0080】
一部の変形形態では、反応器210は、添加されるbPL、ゼオライト、および重合阻害剤のうちの1つまたは複数の添加速度を制御するように設定されている。例えば、一変形形態では、bPLおよび重合阻害剤の混合物を、溶媒中の触媒の混合物へと制御バルブを使用してゆっくりと添加することが可能である。
【0081】
再び図2を参照すると、反応器210は蒸気ポート214をさらに含む。一部の変形形態では、反応器210は、製造されたアクリル酸の少なくとも一部を連続的にストリッピングするように設定され、そして蒸気ポート214は、アクリル酸蒸気を収集容器220に通流させるように設定されている。
【0082】
再び図2を参照すると、システム200は、収集容器220からアクリル酸を受け取るように設定された酸/塩基スクラバー230をさらに含む。システムの他の変形形態では、酸/塩基スクラバー230を省略してもよい。さらに、図2を参照すると、要素212、216および222は浸漬管である。
【0083】
図3には、固定床構造における本発明の商業的実施に適した構成における本発明の方法が提示されている。溶媒と任意選択で混和可能なbPL原料がライン312を介してプロセスへと進入する。触媒の複数の管状の床をそれぞれ保持する一対の反応器310および312は、bPLの添加速度を制御するように供給ポンプ314によって制御された速度で原料ライン312からbPLを受け取るように設定されている。反応器の管状形態は、反応中に触媒床から熱を除去するのに好ましいが、必要ではなく、他の種類の反応器および構成を使用してもよい。特に、2つの反応器の描出は専ら例示を目的とするものであり、プロセスは単一の反応器を使用してもよく、任意の数の反応器を使用してもよい。入力ライン316によって、任意選択で、希釈剤などのさらなるプロセス入力流を供給してライン324の内容物と混和させ、反応器入力流326を生成することが可能である。
【0084】
反応器入力流326は加熱を受けて気相原料流を生成する。熱交換器320は、熱入力を反応器入力流326に供給する。熱は、内部プロセス流に由来しても外部熱源に由来してもよい。加熱は、反応器入口流が反応器326に進入する前に完全気相にあることを確実とするのに十分である。
【0085】
原料流の内容物は、反応器310および反応器312においてアクリル酸に少なくとも部分的に変換される。移送ライン330によって、bPLと一緒に添加されたさらなる任意の入力材料とともに未変換bPLおよびアクリル酸を含有する中間体流を反応器312へと通流させる。任意選択の熱交換器332を加えて、中間体流が反応器312に進入する前に、典型的には熱の除去により、中間体流の温度を制御し調整することができる。流出物流334が反応器312から回収される。反応器流出物流334は、任意の未変換bPL、アクリル酸、および反応器入力流326に添加されたかもしれないさらなる任意の入力材料を含有する。
【0086】
典型的には、生成物分離セクション(図示せず)は、流出物流334を受け取ってアクリル酸生成物を回収する。アクリル酸生成物を回収するとともに、分離セクションによってまた、ほとんどの場合、未変換のbPL(普通はリサイクルである)および希釈剤、ならびに原料と一緒に添加されたかもしれない、なお回収可能である他の添加物流を回収するが、一方、望まれない副生成物を拒絶もする。
【0087】
図4には、移動床構造における本発明の商業的実施に適した構成における本発明の方法が提示されている。反応器容器410は、触媒の床416を保持する上部反応セクション412と、触媒の床418を保持する下部反応セクション414とを収容し、両反応器床は、各反応セクションを横切る反応物の半径流のために構成されている。
【0088】
流体流に関して、反応器容器410は、bPLを含む組合せbPL原料流を受け取るように設定されている。組合せ原料422への組合せのために、原料ライン420はbPL原料を送達し、添加物ライン426は任意の添加物を送達し、この組合せ原料422はヒーター424を通流する。このヒーターによって、組合せ原料を加熱して気相の組合せ原料流のすべてが反応器セクション412へと送達されることを確実とする。組合せ原料は、触媒移送ライン450を介して反応器容器410に進入してくる触媒を加熱するために一部の実施形態で備えられている熱交換容器430を通流する。組合せ原料は、触媒床416の周囲にこれを分配する輪形分配隙間432へと下方に流れる。組合せ原料が床416を通流した後、中央パイプ436によって、容器からライン438を通して再熱器(inter-heater)440への移送のために、AA、未反応組合せ原料および任意の残留添加物を含む上部反応器流出物を取集する。再熱器440は、第1の反応器セクション流出物の温度を上昇させ、加熱された上部反応器流出物の通流をライン428を介して下部反応器セクション414へと戻す。輪形隙間442によって、加熱された上部反応器流出物を下部触媒床418の周囲に分配する。下部反応器流出物は、中央パイプ444を通って輪形隙間446へと通流する。ライン448が、下部反応器流出物を回収し、AA生成物の回収および未変換bPLに関する任意選択のリサイクル、添加物の回収、ならびに副生成物の除去に関して先に記載のものに類似した施設へと下部反応器流出物を流通させる。
【0089】
この実施形態では、触媒は、定期的に、ライン443によって反応器容器410の底部から取り出され、ライン450によって反応器容器410の頂部で入れ替えられる。触媒は、輪形の触媒床418から触媒を引き出す収集パイプ452からライン460へと脱落することによって容器を通って流れる。触媒が床412を脱落すると、移送パイプ454が触媒床416から触媒を添加し、触媒床418の周囲に分配する。次に触媒が触媒床416から脱落したら、移送管456はそれを、触媒供給ライン450から新しいおよび/または再生された触媒を受け取る熱交換器430の熱交換セクション458から引き出された触媒で入れ替える。
【0090】
反応器容器は、連続再生の有無にかかわらず作動可能である。後者の場合、ライン460によって引き出された非活性化されたまたは部分的に非活性化された触媒は、廃棄するか、または使用済み触媒の再活性化および再使用のために現地もしくはオフサイトに位置する遠隔再生施設に移送することができる。触媒がライン460を介して引き出されると、ライン450を使用して、反応器容器410に再活性化されたまたは新しい触媒を供給する。
【0091】
連続再生を使用する実施形態では、図4に再生システム462が示されており、これは、ライン471を介して反応容器420から少なくとも部分的に非活性化された触媒を受け取り、再活性化されて任意選択で処理された触媒を、ライン450を介して反応器容器410に戻す。
【0092】
この実施形態では、再生システム462への触媒の移送は、上部制御バルブ460の開閉時に触媒がライン443を通ってロックホッパ464へと間欠的に通流することで始まる。別の制御バルブ463は、ロックホッパ464からリフト容器466への触媒の移動を調節する。触媒はライン471を通る再生移送への用意ができると、制御バルブ463が閉じられ、リフトガスがライン468を介してリフト容器470に進入し、そしてリフトガス管470によってリフト容器466の底部へと運ばれる。リフトガスは、再生システム462の触媒ホッパ472へと触媒を上方へと運ぶ。リフトガスは、容器472内で触媒から離脱し、導管475によって再生セクション479から除去される。
【0093】
触媒は、再生システム462の頂部から底部まで間欠的に流れる際に再生される。触媒の間欠的な通流は、ライン491内のバルブ490が開口することで始まるが、ロックホッパ492の中へと落下した触媒を入れ替えるために、触媒が燃焼容器476の下部488へと落下すると、その開口によって、ホッパ472からの触媒が、ライン473を通って燃焼容器476の上部チャンバ477へと下方に通流する結果となる。バルブ491は、リフト容器496へと触媒を移送するためにロックホッパ492を隔離している。バルブ494を閉じ、先に記載の様式4でライン447を介してリフトガスをリフト容器496に注入することによって、リフト容器496からライン450へと触媒が輸送される。
【0094】
様々な実施形態では、そういった再生システムは、再生セクションを通して、再生ガスを通流させ、任意選択で、1つまたは複数の処理ガスおよび/またはパージガスを通流させることができる。バッフル467は、燃焼容器を上部チャンバ477と下部チャンバ488とに分割している。一次再生ガスは、ライン478を介して再生セクション462に進入し、非活性化された触媒の床482を横切って上部チャンバ477の底部へと通流する。ライン474は、上部チャンバ477の頂部から再生ガスを引き出す。さらなる再生ガスまたは処理ガスが、ライン487を介して下部チャンバ488の底部に進入する。さらなるガス流、典型的には処理ガスはまた、ライン461を介して下部接触ゾーン489へと進入することもできる。ライン479はバッフル467の下の下部チャンバ488からガスを引き出す。下部接触ゾーン489は燃焼容器476と連通しているので、導管479はまた下部接触ゾーン489へと進入するガスも引き出す。
【0095】
図5には、流動反応構造における本発明の商業的実施に適した構成における本発明の方法が提示されている。図5に、触媒接触ゾーンとして希薄相移送ゾーン(ライザとも呼ばれる)を使用する流動反応器構成を示す。図5に、再生ゾーンと一体化されている流動化触媒接触向けの典型的な流動反応器構成10を示す。ユニット10では、原料流を反応器12内で本発明の再生された変換触媒と接触させる。一実施形態では、再生器導管18から進入する再生された変換触媒が、bPLならびに1つまたは複数の希釈剤流動化ガス、および本明細書に記載の他の添加物を含むbPL組合せ原料流と接触する。ほとんどの実施形態では、再生触媒は組合せ原料よりも実質的に高い温度にあり、再生触媒と接触させて原料をさらに加熱すると、さらなる流動化がもたらされて、触媒を持ち上げ、反応器12のライザ20を運び上がることができる。再生器導管18は再生器14と下流で連通している。ライザ20は、前記再生器導管18と下流で連通する入口19を有する。再生器導管19は、下端でライザ20に連結している。再生器導管のセクション18と19との間に位置する制御バルブは、再生触媒導管からの触媒の流れを調節し、再生導管のセクション18への原料流の実質的な任意の上方への流れを防止する圧力降下をもたらす。
【0096】
本発明の別の態様では、リサイクル触媒導管19およびライザ入口管23から進入する使用済み分解触媒は、使用済み触媒が再生されることなく、反応器12の組合せbPL原料流ライザ20と接触する。ここでも、ライザ入口管23の頂部にあるバルブは、管23を通る触媒の流れを調節する。この態様では、使用済み触媒のリサイクルによって、反応器12内の温度および/または触媒の活性をさらに制御することが可能となり、反応器12内の触媒のコークス濃度を高め、その結果、再生器温度および触媒再生の調節を助けることができる。
【0097】
リサイクル触媒導管を通しての使用済み触媒のリサイクルを使用して反応器中の触媒対原料の比を高めることもできる。一実施形態では、触媒対原料重量比は5から20の間、好ましくは10から15の間の範囲である。一部の実施形態では、bPL原料の一部を、上昇する分配器16によってライザ20に供給することができ、ライザ20を触媒が上へ通流する際に、これを使用してbPLの変換を維持することができる。
【0098】
リサイクル導管19は、ライザ出口25と下流で連通している。リサイクル導管19は、ライザ管23によってリサイクル導管の出口端でライザ20に連結している。リサイクル導管19は、ライザ出口25と、リサイクル導管と直接下流で連通しているライザ管23と、下流で連通していることによって再生器14を迂回している。その結果、任意の使用済み触媒が再生器14に進入する前に、リサイクル導管19に進入する使用済み触媒は、ライザ20に通流して戻される。リサイクル導管19は、再生器14と直接には連通していない。
【0099】
ライザ20内のAA含有生成物ガスおよび使用済み触媒は、その後、ライザ出口25から、ライザ出口を収容する離脱チャンバ27へと排出される。AA生成物を含有するガス流は、ラフカット分離器26を使用して、離脱チャンバ27内で触媒から離脱される。反応器容器22内の1または2段のサイクロン28を含み得るサイクロン分離器は、AA生成物から触媒をさらに分離する。生成物含有ガスは、下流の生成物分離施設への輸送のために、出口31を通って反応器容器22から出て、その結果、AAが回収され、bPL、希釈剤および添加物がリサイクルされる。別の実施形態では、リサイクル導管19および再生器導管18は、離脱チャンバ27と下流で連通している。ライザ20を離れる生成物含有ガスの出口温度は、325℃未満、好ましくは300℃未満であるべきである。
【0100】
生成物含有ガスから分離された後、触媒は、不活性ガスがノズル35を通して注入され、分配されて残留する任意の生成物蒸気またはガスをパージする、ストリッピングセクション34に落ち込む。ストリッピングの作動の後、使用済み触媒の一部は、使用済み触媒導管36を通して触媒再生器14に供給される。触媒再生器14は、ライザ20、具体的にはライザ出口25と下流で連通し得る。ある特定の実施形態では、使用済み触媒の一部は、先に記載の通り、リサイクル触媒導管19を通ってライザ20へと再利用される。
【0101】
図5には、コークスの燃焼および触媒表面からの他の揮発性化合物の排除によって触媒を再生するための主要ゾーンとしての燃焼器41を有する触媒の再生向けの容器14が描かれている。本発明の他の実施形態では、再生器の他の構造および構成を使用することができる。触媒再生器14では、空気などの酸素含有ガス流が分配器38を通ってライン37から導入され、その結果、コークス化触媒と接触し、その上に堆積したコークスを燃焼させ、再生触媒と、燃焼の生成物を含み、一般には燃焼排ガスと呼ばれるガス流とが提供される。触媒および空気は、触媒再生器14内に位置する燃焼器41を通って、さらに燃焼器ライザ40に沿って、一緒に上方に流れる。離脱器42を通して、少なくとも部分的に再生された触媒を放出して、燃焼排ガスからの触媒の最初の分離をもたらす。サイクロン44および46における一連のサイクロン分離ステップによって、再生触媒および燃焼排ガスのさらなる分離がもたらされる。サイクロンは、そこで分離された触媒を、サイクロンから下方に延びディップレグ(dipleg)と呼ばれる導管へと誘導する。触媒が相対的に存在しない燃焼排ガスは、サイクロン44、46を出て、ライン48を通って再生器容器14から流れ出る。再生触媒は、再生触媒導管18を通って反応器ライザ20に戻されて再利用される。
【0102】
燃焼排ガスは、典型的には、二酸化炭素、水蒸気、およびそれより少ない量の一酸化炭素を含有する。触媒の種類および侵食特性に依存して、燃焼排ガスはまた、典型的には0.2から2マイクロメートルの間の範囲の非常に細かい触媒粒子を少量含有する場合もあり、こういった少量については、一部の用途では、かかる粒子を取り出すために燃焼排ガスをさらに処理することが必要となる。
【0103】
本明細書に記載の方法に従って製造されたアクリル酸は、様々な用途に使用することができる。例えば、アクリル酸を使用して、超吸収性ポリマー(SAP)のためのポリアクリル酸を作製することができる。SAPは、とりわけ、おむつ、成人用失禁製品、および女性用衛生製品に使用されている。
【0104】
一部の態様では、本明細書に記載の方法のいずれかに従って製造されたアクリル酸を架橋剤の存在下で重合させて、超吸収性ポリマーを製造することによって、超吸収性ポリマーを製造するための方法が提供される。
【実施例
【0105】
以下の実施例は単に例示であって、本開示のいかなる態様をもなんら限定することを意味しない。
(実施例1)
ゼオライトを使用するbPLのアクリル酸への変換
【0106】
本実施例ではゼオライトを使用するbPLからのアクリル酸の製造を実証する。
【0107】
bPL(3.0g)とフェノチアジン(9.0mg)の混合物を、165℃で、50psiの一酸化炭素で、スルホラン(40.0g)とゼオライトY水素(20.0g)の混合物にニードルバルブを使用して添加した。ゼオライトY水素(80:1のモル比のSiO2/Al2O3、粉末S.A.780m/g)を使用前に減圧中100℃で1日間乾燥させた。フェノチアジンが、使用した重合阻害剤であった。スルホランが、使用した溶媒であり、使用に先立ち3Åモレキュラーシーブで乾燥させた。ニードルバルブを使用して約8.6分にわたってbPLをゆっくりと添加した。反応混合物を170℃に加熱してアクリル酸を製造した。
【0108】
反応を赤外分光法(IR)によってモニターした。bPLがIRによって検出されなかった約3時間後に反応が完了することが観察された。次いで、ゼオライトを反応混合物から濾別し、得られた混合物の試料を核磁気共鳴(NMR)分析のために重水素(DO)およびクロロホルム(CDCl)に溶解させた。H NMRにおいてδ5.80と6.47ppmとの間にビニルのピークが観察されることによって、アクリル酸の製造を確認した。
【0109】
(実施例2)
H-ZSM5を使用するbPLのアクリル酸への気相変換
β-プロピオラクトンのアクリル酸への気相変換を、触媒としてH-ZSM-5(ACS Materials LLC、Si:Al=38、直径2mm、表面積>=250m/g)を使用して、充填床反応器中で行った。11グラムのH-ZSM-5触媒を、ジャケット付きステンレス鋼316パイプ反応器(ID 0.5インチ)に装填し、触媒をガラスビーズカラムの間で支えた(ステンレス鋼ウールをガラスビーズの下および上に置いた)。マルチポイント熱電対を反応器の中心に挿入し、熱油を反応器ジャケットに循環させて所望の反応器温度を維持した。bPLを飽和器によって反応器に供給した:28g/hrの速度でNを、a=94℃で液体bPLを含有する容器の底部に流したが、これは5g/hrのbPL原料速度となった。反応器および飽和器の圧力を9.5psigに維持した。反応生成物を10℃に冷却したジクロロメタンに吸収させ、反応生成物のジクロロメタン溶液をガスクロマトグラフィーで分析した。飽和器と反応器との間のラインおよび反応器と吸収器との間のラインをヒートトレースして、bPLとアクリル酸の凝縮を防止した。反応を210℃の反応器温度で実施した。この条件で、アクリル酸生成物の選択性が98%より大きい状態で、99.9%より大きいbPL変換が観察された(これらの条件でのWHSVは0.45h-1であった)。
図1
図2
図3
図4
図5