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特許6997494飛行体、着荷方法、システム、プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】飛行体、着荷方法、システム、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B64D 9/00 20060101AFI20220107BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B64D9/00
B64C39/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021539007
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044369
【審査請求日】2021-07-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社エアロネクストが、令和2年11月12日に、小菅村村内採石場にて、鈴木陽一が発明した飛行体について公開した。会見には、株式会社TBSテレビ、NHK甲府放送局、読売新聞東京本社、株式会社テレビ山梨、山梨日日新聞社、毎日新聞社が参加した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517331376
【氏名又は名称】株式会社エアロネクスト
(72)【発明者】
【氏名】鈴木陽一
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109941432(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107878754(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0031473(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 9/00
B64C 39/02
B64C 27/08
B64D 1/08, 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載物を保持可能な保持部を含む保持機構を備える飛行体であって、
前記保持部は、鉛直方向に延伸する部材を少なくとも介して機体に接続されており、前記部材に沿って鉛直方向に移動し、
前記保持部は、鉛直方向の上端部と下端部の間に機体外側に変形可能な変形部を有し、当該変形部を変形して前記搭載物の保持を解放する、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行体であって、
当該飛行体は、前記変形部の変形を抑えるカバー部をさらに備え、
前記変形部は、前記カバー部の下端よりも下方に移動することで前記カバー部から解放され、前記機体外側に変形する、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の飛行体であって、
前記部材は、棒状部材である、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項4】
請求項に記載の飛行体であって、
前記棒状部材は、ねじ棒である、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の飛行体であって、
前記保持部は、前記搭載物の底部を保持する、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかにに記載の飛行体であって、
前記保持部は、前記搭載物の側面部を保持する、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかにに記載の飛行体であって、
前記保持部は、前記搭載物の上部を保持する、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の飛行体であって、
前記搭載物は、所定の高さを有する下駄部材を底部に有する、
ことを特徴とする飛行体。
【請求項9】
搭載物を保持可能な保持部を含む保持機構を備える飛行体による着荷方法であって、
前記保持部は、鉛直方向に延伸する部材を少なくとも介して機体に接続されており、
前記保持部は、鉛直方向の上端部と下端部の間に機体外側に変形可能な変形部をさらに有し、
前記鉛直方向に延伸する部材に沿って鉛直方向に前記保持部を移動し、前記変形部を変形して前記搭載物の保持を解放するステップ、を含む、
ことを特徴とする着荷方法。
【請求項10】
搭載物を保持可能な保持部を含む保持機構を備える飛行体が備えるプロセッサに着荷方法を実行させるシステムであって、
前記保持部は、鉛直方向に延伸する部材を少なくとも介して機体に接続されており、
前記保持部は、鉛直方向の上端部と下端部の間に機体外側に変形可能な変形部をさらに有し、
前記着荷方法は、
前記鉛直方向に延伸する部材に沿って鉛直方向に前記保持部を移動し、前記変形部を変形して前記搭載物の保持を解放するステップ、を含む、
ことを特徴とするシステム。
【請求項11】
搭載物を保持可能な保持部を含む保持機構を備える飛行体が備えるプロセッサに着荷方法を実行させるプログラムであって、
前記保持部は、鉛直方向に延伸する部材を少なくとも介して機体に接続されており、
前記保持部は、鉛直方向の上端部と下端部の間に機体外側に変形可能な変形部をさらに有し、
前記着荷方法は、
前記鉛直方向に延伸する部材に沿って鉛直方向に前記保持部を移動し、前記変形部を変形して前記搭載物の保持を解放するステップ、を含む、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体、着荷方法、システム、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン(Drone)や無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの飛行体(以下、「飛行体」と総称する)を用いたサービスの実用化に向けた研究や実証実験が進められている。飛行体の自律飛行システムまたは遠隔操作飛行システムによる宅配サービスの開発においては、ECサイトにおける商品の注文から受け取りまでの速度向上や、離島などへの即時配送の実現などについて、早期の実用化が望まれる他、運搬の品質向上が求められている。
【0003】
特に即時性を求められる配送品として、医療機器および医療検体等の緊急性の高い物品や、エンドユーザーが購入する食事などが挙げられ、現在これらの多くは四輪車や二輪車を利用して運搬されている。陸路での運搬は、舗装路の有無や交通状況により所要時間が大きく異なり、山中や離島などは車両による直線距離でのアクセスが困難であることから、運搬に長い時間を要するケースがある。
【0004】
特許文献1においては、荷物の搭載が可能な飛行体が自動で飛行および搭載物の切り離しを行うことで、所定の場所への空路を利用した宅配が可能な飛行体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第9536216号明細書
【文献】米国特許第10618655号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、荷物を搭載可能な飛行体が、GPS信号を利用して目的地まで飛行した後、荷物を解放することで、飛行体による自動の配送サービスを提供可能な飛行体及び配達システムが開示されている。
【0007】
これにより、荷物は、道路の有無や、道路状況等による影響を受けることなく目的地に到達可能となる。
【0008】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示される荷物の切り離し方法は、いずれも荷物の切り離し作業において振動や衝撃が発生し、配送の品質が低下する。
【0009】
特許文献1における上空からの投下は、落下中は荷物の重心位置により姿勢を維持可能だが、地面と接触した後の跳ね返りなどにより荷物の姿勢を制御することは困難となるほか、地面に接触した際に衝撃を受け、荷物の形が崩れる、混ざる、破損するなどの危険がある。
【0010】
また、特許文献2のように紐状の部材で荷物を懸垂し、飛行体を着陸させずに荷物を降下させる場合、地面に到達する際の衝撃は低減される可能性はあるが、荷物の降下中に発生する揺動は防ぐことが困難である。たとえば、地表付近で飛行体が横風を受けたとき、飛行体はその場に留まるため飛行部を風上に傾ける。この飛行体の振れは懸垂する荷物に伝達され、荷物も揺動する。荷物が軽量である場合、この現象は顕著になる。
【0011】
特に、調理済みの食品のように、商品が崩れたり混ざったりすることで味や見た目などの品質が損なわれる搭載物や、医療機器や精密機器のようにできる限り衝撃を避けることが望まれ、衝撃の程度によっては破損が予想される搭載物においては、搭載物を落下させることで着荷面に打ちつけたり、ワイヤー等により飛行中の飛行体から搭載物を降下させることで揺動したりする荷下ろし方法が最適とは言えない。
【0012】
そこで、本発明は、着陸後の飛行体から、搭載物の姿勢を保持した状態で下降させ、切り離し時に搭載物に発生する衝撃が所定の衝撃の範囲内となるように解放することで、荷下ろし時に搭載物に与える衝撃を減少させ、配送の品質を向上しうる飛行体等を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、搭載物を保持する保持機構を備える飛行体であって、前記保持機構は、前記飛行体の着陸脚が接地後に、前記搭載物を水平を保持しながら、少なくとも鉛直下方に移動させて接地させる飛行体等を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、荷下ろし時に搭載物に与える衝撃を減少させ、配送の品質を向上させる飛行体等を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による飛行体を側面から見た概念図である。
図2図1の飛行体の巡航時の側面図である。
図3図1の飛行体の上面図である。
図4図1の飛行体の着陸状態の側面図である。
図5図4の飛行体が搭載物を降下させたときの側面図である。
図6図4の飛行体の正面図である。
図7図5の飛行体の正面図である。
図8】飛行体の搭載物降下方法の一例を側面から見た図である。
図9】本発明による飛行体の搭載物降下方法の一例の側面図である。
図10】本発明による飛行体の搭載物降下方法の一例の側面図である。
図11図10飛行体の搭載物降下時の側面図である。
図12図1の飛行体の機能ブロック図である。
図13】本発明による飛行体の保持機構の実施の一例の側面図である。
図14図9の保持機構の一部正面図である。
図15】本発明による飛行体が着陸した後の保持機構の正面図である。
図16図15の飛行体の搭載物降下時の正面図である。
図17】本発明による飛行体が備える保持機構の正面図である。
図18図17の保持機構の搭載物降下時の正面図である。
図19図17の保持機構の搭載物解放時の正面図である。
図20図17の保持機構の搭載物解放後の正面図である。
図21図17の保持機構の搭載物解放後の正面図である。
図22】本発明による飛行体の保持機構構成例の、着陸時の正面図である。
図23図22の保持機構の搭載物解放時の正面図である。
図24図22の保持機構の搭載物解放後の正面図である。
図25】本発明による飛行体の保持機構構成例の、着陸時の正面図である。
図26図19の保持機構の搭載物解放時の正面図である。
図27図19の保持機構の搭載物解放後の正面図である。
図28】保持部の差し込み部材の一例を側面から見た図である。
図29図22の保持部の差し込み部材の正面図である。
図30】本発明による飛行体の保持機構構成例の、着陸時の正面図である。
図31図24の保持機構の搭載物解放時の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による飛行体、着荷方法、システム、プログラムは、以下のような構成を備える。
[項目1]
搭載物を保持する保持機構を備える飛行体であって、
前記保持機構は、
前記飛行体の着陸脚が接地後に、前記搭載物を水平を保持しながら、少なくとも鉛直下方に移動させる、
ことを特徴とする飛行体。
[項目2]
項目1に記載の飛行体であって、
前記保持機構は、前記搭載物が接地するまで移動させる、
ことを特徴とする飛行体。
[項目3]
項目1または2のいずれかに記載の飛行体であって、
前記保持機構は、前記搭載物の底部を保持する保持部を有する、
ことを特徴とする飛行体。
[項目4]
項目1ないし3のいずれかに記載の飛行体であって、
前記搭載物は、所定の高さを有する下駄部材を底部に有する、
ことを特徴とする飛行体。
[項目5]
項目1または2のいずれかにに記載の飛行体であって、
前記保持機構は、前記搭載物の側面部を保持する保持部を有する、
ことを特徴とする飛行体。
[項目6]
項目1または2のいずれかにに記載の飛行体であって、
前記保持機構は、前記搭載物の上部を保持する保持部を有する、
ことを特徴とする飛行体。
[項目7]
搭載物を保持する保持機構を備える飛行体による着荷方法であって、
前記保持機構により、前記飛行体の着陸脚が接地後に、前記搭載物を水平を保持しながら、少なくとも鉛直下方向に移動させるステップ、を含む、
ことを特徴とする着荷方法。
[項目8]
搭載物を保持する保持機構を備える飛行体が備えるプロセッサに着荷方法を実行させるシステムであって、
前記着荷方法は、
前記保持機構により、前記飛行体の着陸脚が接地後に、前記搭載物を水平を保持しながら、少なくとも鉛直下方向に移動させるステップ、を含む、
ことを特徴とするシステム。
[項目9]
搭載物を保持する保持機構を備える飛行体が備えるプロセッサに着荷方法を実行させるプログラムであって、
前記着荷方法は、
前記保持機構により、前記飛行体の着陸脚が接地後に、前記搭載物を水平を保持しながら、少なくとも鉛直下方向に移動させるステップ、を含む、
ことを特徴とするプログラム。
【0017】
<本発明による実施形態の詳細>
以下、本発明の実施の形態による飛行体、着荷方法、システム、プログラムについて、図面を参照しながら説明する。
【0018】
<第1の実施の形態の詳細>
【0019】
図1に示されるように、本発明の実施の形態による飛行体100は飛行を行うために少なくともプロペラ110及びモータ111からなる複数の回転翼部や、回転翼部等をつなぐフレーム120等の要素を含む飛行部140を備えており、それらを動作させるためのエネルギー(例えば、二次電池や燃料電池、化石燃料等)を搭載していることが望ましい。飛行体は、シングルローター機や固定翼機を用いることも可能だが、特に、個人宅への宅配用途においては、垂直離着陸が可能なVTOL機や、複数の回転翼を持ついわゆるマルチコプターと呼ばれる回転翼機を用いることが望ましい。垂直離着陸が可能な機体を用いることで、離着陸用のポートを始めとする周辺設備を小型化することが出来る。
【0020】
なお、図示されている飛行体100は、本発明の構造の説明を容易にするため簡略化されて描かれており、例えば、制御部等の詳しい構成は図示していない。
【0021】
飛行体100は図の矢印Dの方向(-Y方向)を前進方向としている(詳しくは後述する)。
【0022】
なお、以下の説明において、以下の定義に従って用語を使い分けることがある。前後方向:+Y方向及び-Y方向、上下方向(または鉛直方向):+Z方向及び-Z方向、左右方向(または水平方向):+X方向及び-X方向、進行方向(前方):-Y方向、後退方向(後方):+Y方向、上昇方向(上方):+Z方向、下降方向(下方):-Z方向
【0023】
プロペラ110は、モータ111からの出力を受けて回転する。プロペラ110が回転することによって、飛行体100を出発地から離陸させ、移動させ、目的地に着陸させるための推進力が発生する。なお、プロペラ110は、右方向への回転、停止及び左方向への回転が可能である。
【0024】
本発明の飛行体が備えるプロペラ110は、1以上の羽根を有している。任意の羽根(回転子)の数(例えば、1、2、3、4、またはそれ以上の羽根)でよい。また、羽根の形状は、平らな形状、曲がった形状、よじれた形状、テーパ形状、またはそれらの組み合わせ等の任意の形状が可能である。なお、羽根の形状は変化可能である(例えば、伸縮、折りたたみ、折り曲げ等)。羽根は対称的(同一の上部及び下部表面を有する)または非対称的(異なる形状の上部及び下部表面を有する)であってもよい。羽根はエアホイル、ウイング、または羽根が空中を移動される時に動的空気力(例えば、揚力、推力)を生成するために好適な幾何学形状に形成可能である。羽根の幾何学形状は、揚力及び推力を増加させ、抗力を削減する等の、羽根の動的空気特性を最適化するために適宜選択可能である。
【0025】
また、本発明の飛行体が備えるプロペラは、固定ピッチ、可変ピッチ、また固定ピッチと可変ピッチの混合などが考えられるが、これに限らない。
【0026】
モータ111は、プロペラ110の回転を生じさせるものであり、例えば、駆動ユニットは、電気モータ又はエンジン等を含むことが可能である。羽根は、モータによって駆動可能であり、モータの回転軸(例えば、モータの長軸)の周りに回転する。
【0027】
羽根は、すべて同一方向に回転可能であるし、独立して回転することも可能である。羽根のいくつかは一方の方向に回転し、他の羽根は他方方向に回転する。羽根は、同一回転数ですべて回転することも可能であり、夫々異なる回転数で回転することも可能である。回転数は移動体の寸法(例えば、大きさ、重さ)や制御状態(速さ、移動方向等)に基づいて自動又は手動により定めることができる。
【0028】
飛行体100は、フライトコントローラやプロポ等により、風速と風向に応じて、各モータの回転数や、飛行角度を決定する。これにより、飛行体は上昇・下降したり、加速・減速したり、方向転換したりといった移動を行うことができる。
【0029】
飛行体100は、事前または飛行中に設定されるルートやルールに準じた自律的な飛行や、プロポを用いた操縦による飛行を行うことができる。
【0030】
上述した飛行体100は、図12に示される機能ブロックを有している。なお、図12の機能ブロックは最低限の参考構成である。フライトコントローラは、所謂処理ユニットである。処理ユニットは、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央処理ユニット(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。処理ユニットは、図示しないメモリを有しており、当該メモリにアクセス可能である。メモリは、1つ以上のステップを行うために処理ユニットが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。メモリは、例えば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラやセンサ類から取得したデータは、メモリに直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ等で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。
【0031】
処理ユニットは、回転翼機の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θ、θ及びθ)を有する回転翼機の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために回転翼機の推進機構(モータ等)を制御する。制御モジュールは、搭載物10、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。
【0032】
処理ユニットは、1つ以上の外部のデバイス(例えば、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部と通信可能である。送受信機は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。例えば、送受信部は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。送受信部は、センサ類で取得したデータ、処理ユニットが生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0033】
本実施の形態によるセンサ類は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0034】
図1及び図2に示されるように、本発明の実施の形態における飛行体100が備える飛行部140は、進行時に進行方向に向かい前傾する。前傾した回転翼は、上方への揚力と、進行方向への推力を生み出し、これにより飛行体100が前進する。
【0035】
飛行体100は、目的地へと運搬する荷物または荷物等を格納する格納部など(以下、搭載物10と総称する)を保持可能な保持機構20を備えている。保持機構20は、飛行部140と固定して接続される、もしくは、図1および図2に示されるように、回動軸や1以上の自由度を有するジンバルといった接続部22を介して独立変位可能に接続することで、飛行体100の姿勢にかかわらず、搭載物10を所定の姿勢(例えば水平)に保つことが可能となるように接続される。
【0036】
また、搭載物10を所定の姿勢に保つ方法として、飛行部140と保持機構20との間に接続部22を設けるほか、保持機構20と搭載物10との間に接続部22を設けることでも同様の効果を得る。すなわち、飛行部140と搭載物10が接続される間のいずれかの位置に接続部22を設けることが望ましい。
【0037】
保持機構20もしくは搭載物10の変位に使用される回動軸50の位置や方向は、飛行体100が飛行時に取る姿勢により決定される。前進もしくは後退のみを行う飛行体であれば、飛行部は前後方向に傾くため、少なくともピッチ方向に回動可能な1軸を備えることで飛行時の飛行部の傾きをキャンセルし、搭載物の姿勢を保つことが可能となる。さらに他の軸方向(ロール、ヨー)への傾きに対応させる場合には、2軸以上の回動軸を設ける。
【0038】
保持機構20もしくは搭載物10の変位は、夫々姿勢を保つべき物の自重により姿勢を保つパッシブ制御により行われてもよいし、モータ等を利用して姿勢を制御するアクティブ制御により行われてもよい。より精密に姿勢を制御する場合は、アクティブ制御を行うことが望ましいが、機構の追加による重量増加等につながるため、制御方法については目的に応じて適切に決定されるべきである。
【0039】
保持機構20は、搭載物10を保持したまま、飛行や離着陸に耐え得る強度を持つ素材を含んで構成されている。例えば、樹脂、FRP等は、剛性があり、軽量のため、保持機構の構成素材として好適である。また、金属を用いる場合には、アルミやマグネシウム等、比重の軽いものを用いることで、強度を向上させながらも重量増加を防ぐことができる。なお、これらの素材は、飛行部140に含まれるフレーム120と同じ素材であってもよいし、異なる素材であってもよい。
【0040】
また、飛行部140が備えるモータマウント(不図示)、フレーム120は、夫々の部品を接続して構成してもよいし、モノコック構造や一体成形を利用して、一体となるように成形してもよい(例えば、モータマウントとフレーム120を一体に成形する等)。部品を一体とすることで、各部品のつなぎ目を滑らかにすることが可能となるため、抗力の軽減や燃費の向上が期待できる。
【0041】
飛行体100が備える着陸脚130は、搭載物10が、飛行体の着陸時に着陸面200へ直接触れることによって衝撃を受けないよう、少なくとも平面への着陸状態の側面視において、搭載物10より下方向(-Z方向)に長くなるよう構成されていることが好ましい。着陸脚130は、さらにダンパ等の衝撃吸収装置131を備えていてもよい。
【0042】
飛行体100は、飛行中や離着陸中など意図しないタイミングで搭載物10を落下させないように保持可能な保持機構20を備え、保持機構20は、所定のタイミングで搭載物10を飛行体から解放可能な保持部21を備えている。
【0043】
搭載物10を搭載した飛行体100は、目的地点上空まで飛行した後、着陸する。
【0044】
飛行体100が着陸後、保持機構20は搭載物10を保持した状態で下降させた後、搭載物10を解放する。このとき、搭載物にかかる衝撃または搭載物の傾斜は、所定の範囲内となるよう解放される。また、解放された搭載物が接する面(以下、着荷面200と総称する)は、着陸施設やポートの着陸パッドなど、平坦で、解放された搭載物が姿勢を崩したり、傾いたりしない形状であることが望ましい。
【0045】
図1図7に示されるように、保持機構20は、保持部21により搭載物10の底面を支持することにより保持してもよい。搭載物10を搭載した飛行体100は、目的地に向かい前進する。このとき、飛行部140と保持機構20とを独立して変位可能に接続した場合、図2に示されるように、飛行体100が前進姿勢になっても搭載物10は姿勢が変化しない。
【0046】
保持機構20は、飛行体100が目的地に着陸した後、図4および図5に示されるように搭載物10を解放する。図5においては、保持機構20が備える保持部21が鉛直下方に動くことにより、搭載物10に備えられている下駄部材11が着荷面200に接地する。下駄部材11が接地した後、さらに保持部21が下降することで、搭載物10は保持されなくなり、解放される。
【0047】
搭載物10を昇降させる方法として、モータ、サーボ等による保持部21の昇降、ギアやベルトによる送り出し、紐状部材や帯状部材の巻き上げ・巻き下げ、ダンパ等により速度を制限した状態での自重による降下などが挙げられるが、飛行体が着陸した状態において、搭載物に与えられる衝撃が所定の衝撃の範囲内となるように下降および解放を行うという課題を達成し得るものであればよく、この限りではない。また、昇降の際、搭載物の移動は鉛直方向のみに限られたものではなく、必要に応じて左右方向や前後方向への水平及び斜め移動を行ってもよい。なお、降下の際の移動方向が鉛直方向でない場合においても、例えば図8のようにスライダーを利用すると、搭載物10の姿勢が大きく傾く可能性が高くなるため、例えば図9に例示するように搭載物の姿勢は所定の角度より傾きが大きくならないよう、搭載物の姿勢を水平に維持したままスライドさせたり、図10-11に例示するように、平行リンク機構と回動軸とを組み合わせた機構を用い、リンクの揺動運動を利用して搭載物の姿勢を水平に維持したまま降下させたりすることが望ましい。
【0048】
底面を保持する場合には、搭載物10を確実に着荷面200へ降ろし、かつ保持部21からスムーズに解放するため、着荷面200もしくは搭載物10に保持部動作用の逃げ部が備えられていることが望ましい。着荷面200に設ける場合には、図30及び図31に示されるように、搭載物10が安定して自立可能な面積の凸部を設け、周囲を保持部21の逃げ部とすることで、搭載物10に衝撃を与えずに解放可能となる。
【0049】
保持部21の下降方法や速度、搭載物10が解放される位置(高さ等)は、搭載物の種類、大きさ、重量や、着陸面200の素材等の様々な条件を踏まえ、搭載物へかかる衝撃が所定の大きさとなるよう決定されるべきである。より衝撃を小さくする場合には、搭載物が接地する際の下降速度を遅く、且つ、解放位置を搭載物10の一部が接地する位置とすることが望ましいが、この場合、荷下ろし全体の速度低下が起こる。
【0050】
また、宅配飛行体の着陸専用ポート等の設置なしに行う場合には、搭載物10に逃げ部を設けることで同様の効果を得る。例えば、図6または図7に示されるように、直方体である搭載物10の下部に細い直方体の下駄部材11を設けることで、搭載物10は下駄部材11により着荷面200に安定して自立し、且つ、保持部21は搭載物10と摩擦したり、搭載物10に衝撃を与えたりすることなくスムーズに解放動作を行う。
【0051】
図13および図14には、搭載物10の底面を保持した場合の保持機構20の構成例の拡大図が示されている。搭載物10の底面を支える保持部21は、全ねじ棒41に接続されたモータ40の回転による昇降が可能であり、さらに、垂直方向中央に設けられたヒンジ23により、搭載物10が着荷面200に到達した後、保持部21を夫々左右方向(+-X方向)外側に向かって回動させ、搭載物10を解放することが可能となる。ヒンジ23による解放は、例えば、ばね反力を利用してヒンジがカバー部24より下方に移動した際開くヒンジ(一般に、ばね丁番やスプリング丁番と呼ばれる)を用いたり、左右方向外側にサーボ等と接続するロッドを設けることで引き開けたりすることが可能である。
【0052】
なお、図13に示されるサーボ30及びホーン31は、ロッド32を介してカバー部24に接続され、サーボ30が動作することにより、接続部22を軸としてカバー部24および搭載物10が回動し、搭載物10の姿勢を制御する。
【0053】
また、図15および図16に示されるように、飛行体100の飛行中には、搭載物10が前後方向にずれることを防ぐため、押さえ部26が設けられている。押さえ部26は、保持部21や搭載物を覆うカバー等(以下、覆い部と総称する)から内向きに設けられる部材(例えば、覆い部と一体の突起、板材、ローラー機構、クッション材など)である。搭載物10の滑りや揺動を防ぐためには、搭載物10と覆い部との間に、搭載物10が動く余地なく搭載されることが望ましい。しかし、搭載物10と覆い部との隙間が少ないほど、飛行体100が搭載物10を解放後に離陸する際、搭載物10に覆い部が接触して、衝撃を与える可能性が高まる。
【0054】
風の影響を受ける屋外などでは、一度着陸した飛行体100を正確に鉛直上方に離陸させることは困難である。そのため、搭載物10と覆い部とは、飛行体100が斜め上方に離陸した場合の接触を防止するため、クリアランスをとることが望ましい。飛行中の搭載物10の揺動防止と、飛行体100の再離陸時の覆い部との接触防止を両立するため、押さえ部26を設ける位置は、少なくとも飛行中には搭載物10の意図しない動きを抑制し、且つ、搭載物10が保持機構21により下降を完了した時点では、搭載物10の動きを抑制しない高さであることが望ましい。押さえ部26により、飛行中の搭載物10のがたつきを抑えながら、飛行体100の再離陸時には、搭載物10と覆い部のクリアランスをとることができる。
【0055】
図17図21において、図14の機構の飛行体着陸後から、搭載物の解放を行い、再度離陸するまでの流れを概念図で示している。図17図21は、荷下ろしを行う構造の説明を容易にするため簡略化されて描かれており、例えば、飛行体の着陸脚130やフレーム120等の要素は図示していない。
【0056】
まず、図17に示されるように、飛行体が着陸した状態で、着荷面200と搭載物10の距離は離れている。搭載物10と、それを底面から支える保持部21と、は、全ねじ棒41にガイドを介して接続され、図18に示されるように、モータ40が回転することにより下降する。下降が続くと、最初に、下駄部材11が着荷面200に接触し、さらに下降が進むと保持部21は搭載物10の保持を行わなくなり、搭載物は解放される。更に下降が進むと、左右方向外側に開こうとするばね丁番が用いられているヒンジ23の位置がカバー部24を下回る。すると、押さえつけるカバー部24を失ったヒンジ23は、図19に示されるように、外側へと押し開かれる。
【0057】
ヒンジ23が押し開かれた状態で、飛行体が再度離陸を行うことで、保持部21などが着荷面に解放された搭載物10に触れることなく保持機構を抜き取ることが可能となる。離陸し、搭載物との間に十分な距離を確保した後、保持部21はモータ40の回転により上昇し、開かれたヒンジ23は、カバー部に押さえつけられることで閉じられる。
【0058】
保持部21は、飛行体が再離陸の際にふらつくなどして搭載物10に触れてしまった場合のひっかかりを防ぐため、端部分にローラー25等を設けていても良い。
【0059】
<第2の実施の形態の詳細>
本発明による第2の実施の形態の詳細において、第1の実施の形態と重複する構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明は省略する。
【0060】
図22図24に示されるように、保持機構20を搭載物10の側面と接続し、保持してもよい。このとき、接続方法は、針状の部材を搭載物側面に刺す方法、搭載物側面に穴部やスリット部を設け、保持部21を差し込む方法、磁力や負圧による吸着と解除を行う方法等が挙げられるが、搭載物が意図せず落下したり揺動したりすることのないように接続されていればよく、これに限らない。
【0061】
側面で保持する場合には、底面から搭載物を支える第1の実施の形態のように、保持部21の引き抜きスペースとなる逃げ部を必要としないことから、搭載物下部に下駄部材等を設けたり、着荷面200に凸部を設けたりする必要がない。
【0062】
また、側面保持においては底面に蓋のような部材を設けずとも搭載物の保持が可能だが、防水、防塵等の効果のある蓋を設け、搭載物の降下及び解放時に障害とならないよう開閉するものとしてもよい。
<第3の実施の形態の詳細>
本発明による第3の実施の形態の詳細において、第1の実施の形態および第2の実施の形態と重複する構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明は省略する。
【0063】
図25図27に示されるように、保持機構20を搭載物10の上面と接続し、保持してもよい。このとき、接続方法は、磁力や負圧による吸着や、保持部21をひっかける等が挙げられるが、搭載物が意図せず落下したり揺動したりすることのないように接続されていればよく、これに限らない。
【0064】
保持部21をひっかける方法を用いる場合、例えば、図28および図29に示されるような穴部を備える板状の部材を保持部の差し込み部材12としてもよい。
【0065】
上面で保持する場合には、底面から支える第1の実施の形態のような保持部材の引き抜きスペースとなる逃げ部を必要としないことから、搭載物下部に下駄部材等を設けたり、着荷面200に凸部を設けたりする必要がない。
【0066】
また、底面や側面で保持する方法では、多くの場合に左右夫々に保持部を設けることなるが、上面と接続して保持する方法では、保持機構は1つとなるため、軽量化が期待できる。
【0067】
各実施の形態における飛行体の構成は、複数を組み合わせて実施することが可能である。飛行体の製造におけるコストや、飛行体が運用される場所の環境や特性に合わせて、適宜好適な構成を検討することが望ましい。
【0068】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
10 搭載物
11 下駄部材
12 差し込み部材
20 保持機構
21 保持部
22 接続部
23 ヒンジ
24 カバー部
25 ローラー
40 モータ
41 全ねじ棒
50 回動軸
100 飛行体
110a~110h プロペラ
111a~111h モータ
120 フレーム
130 着陸脚
131 ダンパ
140 飛行部
200 着陸面(着荷面)

【要約】
【課題】着陸後の飛行体から、搭載物の姿勢を保持した状態で下降させ、切り離し時に搭載物に発生する衝撃が所定の衝撃の範囲内となるように解放することで、荷下ろし時に搭載物に与える衝撃を減少させ、配送の品質を向上しうる飛行体等を提供すること。
【解決手段】搭載物を保持する保持機構を備える飛行体であって、前記保持機構は、前記飛行体の着陸脚が接地後に、前記搭載物を水平を保持しながら、少なくとも鉛直下方に移動させる。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図26
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図28
図29
図30
図31