IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アイホーの特許一覧

<>
  • 特許-炊飯器 図1
  • 特許-炊飯器 図2
  • 特許-炊飯器 図3
  • 特許-炊飯器 図4
  • 特許-炊飯器 図5
  • 特許-炊飯器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/14 20060101AFI20220107BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A47J27/14 G
A47J27/00 109A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017209066
(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公開番号】P2019080708
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(72)【発明者】
【氏名】辻井 恵一
(72)【発明者】
【氏名】今泉 唯晴
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-141911(JP,A)
【文献】特開2005-349226(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0473941(KR,B1)
【文献】特開2011-062412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯が行われる加熱室を有した炊飯器本体と、加熱室内に収容される炊飯釜と、
炊飯釜を加熱する加熱手段と、炊飯釜の温度を感知する温度センサと、
温度センサの温度情報に基づいて加熱手段を制御する制御部と、
炊飯の開始を入力する炊飯開始ボタンを有した操作部を備えた炊飯器であって、
前記制御部は、
前記炊飯釜を前記加熱室内に収容し前記炊飯開始ボタンを押しておくことで、前記温度センサの温度が炊飯開始可能温度まで下降した時に前記炊飯釜の炊飯を自動的に開始させ
前記温度センサの温度が所定時間内に前記炊飯開始可能温度まで下降した場合は、前記加熱室内に収容した前記炊飯釜の炊飯を開始し、
前記温度センサの温度が所定時間を経過して前記炊飯開始可能温度まで下降した場合は、加熱完了温度を変更した上で前記加熱室内に収容した前記炊飯釜の炊飯を開始する
ことを特徴とする、炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続して炊飯が行われることで、炊飯釜の温度を感知する感知部が高温となった状態から冷えるのを待って炊飯を自動的に開始する炊飯待機機能を持った炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、温度センサを用いて炊飯を行う炊飯器が知られている。炊飯釜の下方に、炊飯釜の平坦な底面に接するように設けられた釜底の温度を感知する温度センサを備え、炊飯中に炊飯釜の温度が所定温度を超えたことを感知すると、炊飯釜内に水が残っていないと判断して加熱を停止し、蒸らしに入る。ところが、連続して炊飯が行われていくと、温度センサ自身の温度が十分に下がりきらず高温のまま次の炊飯をスタートさせる為、炊飯釜の温度を正確に感知することができずに早切れを起こすようになり、2回目以降のご飯の炊き上がりにばらつきが生じていた。
【0003】
下記文献1に示される連続調理用加熱調理装置は、かかる問題を解消するために温度センサの周囲に冷却手段を設け、温度センサが所定温度まで下降してから連続的に炊飯ができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-349226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された連続調理用加熱調理装置は、温度センサの周囲に冷媒を流入させる管を配置する構成としており、冷媒を使って温度センサを冷やすことによって温度センサの周囲に結露が発生し、温度センサがショートして故障の原因となる問題が生じる。
【0006】
本発明はこのような問題点を考慮してなされたもので、冷媒を使うことなく高温となった温度センサを冷やす手段として次に投入された加熱前の炊飯釜と接触させて冷却させ、続けて炊飯ができるようにし、また、従来は温度センサが冷えるまで炊飯開始ボタンを押すことができなかったが、炊飯開始ボタンを予め押しておけば、温度センサが所定温度まで冷えるのを待って自動的に炊飯を開始させることができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成および手段を有する。
【0008】
請求項1記載の発明は、炊飯が行われる加熱室を有した炊飯器本体と、加熱室内に収容される炊飯釜と、炊飯釜を加熱する加熱手段と、炊飯釜の温度を感知する温度センサと、温度センサの温度情報に基づいて加熱手段を制御する制御部と、炊飯の開始を入力する炊飯開始ボタンを有した操作部を備えた炊飯器であって、前記制御部は、前記炊飯釜を前記加熱室内に収容し前記炊飯開始ボタンを押しておくことで、前記温度センサの温度が炊飯開始可能温度まで下降した時に前記炊飯釜の炊飯を自動的に開始させ、前記温度センサの温度が所定時間内に前記炊飯開始可能温度まで下降した場合は、前記加熱室内に収容した前記炊飯釜の炊飯を開始し、前記温度センサの温度が所定時間を経過して前記炊飯開始可能温度まで下降した場合は、加熱完了温度を変更した上で前記加熱室内に収容した前記炊飯釜の炊飯を開始することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明においては、強制冷却のように短時間で冷却はできないが、炊飯釜をセットして炊飯開始ボタンを押しておけば、温度センサは新たに投入された炊飯釜により冷却され、温度センサ自体の温度が炊飯開始可能温度まで下がるのを待って自動的に炊飯を開始させるため、作業者は温度センサの温度が下がるまで待って炊飯開始ボタンを押す必要がなく、予め炊飯開始ボタンを押しているので炊飯開始ボタンを押し忘れることもなく他の作業に取り掛かることができるとともに、温度センサの温度が下がりにくい場合、加熱完了温度を自動的に変更することで、炊飯の加熱を早く完了してしまうのを防ぎ、初回の炊飯と同様の炊き上がりを安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る炊飯器の側面断面図であり、(a)は扉を開放した時、(b)は扉を閉めた時の状態を示す。
図3】本発明の実施形態に係る炊飯器のブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る炊飯器の制御フロー図である。
図5】本発明の実施形態に係る炊飯器の初回炊飯時の炊飯曲線を示した図である。
図6】本発明の実施形態に係る炊飯器の前回の炊飯完了後から次の炊飯完了までの炊飯曲線を示したものであり、(a)は温度センサの温度が所定時間内に炊飯開始可能温度まで下降した場合(実線)と、所定時間を超えて炊飯開始可能温度まで下降した場合(一点鎖線)であり、(b)は加熱完了温度を変更した場合の炊飯曲線の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1、2に示す通り、炊飯器1は、箱型の炊飯器本体11と、炊飯器本体11の内部を上下方向に1つ以上に区切られた複数の矩形状からなる加熱室4と、各加熱室4の前面開口をそれぞれ開閉する扉2と、加熱室4内に出し入れ可能に収納される炊飯釜3と、炊飯釜3を加熱するバーナ5と、炊飯釜3の温度を感知する温度センサ6を有し、炊飯器本体11の上部に配設し作業者が炊飯器1を操作する操作部7、および温度センサ6や操作部7からの情報を基にバーナの運転を制御する制御部8とで構成されている。
【0015】
炊飯釜3は、下面を有底とし上面が開口した円筒状を形成し、加熱室4内を出し入れ自在に収容されている。炊飯釜3の釜底の中央付近には、後述する温度センサ6が接触する部分で平面状にくぼみを有した凹状部31を備える。なお、炊飯釜3は加熱室4の形状に合わせた矩形状としてもよい。
【0016】
温度センサ6は、炊飯中に炊飯釜3の釜底にある凹状部31と接触しながら釜底の温度を感知する感知部61と、この感知部61の周囲を覆ってバーナ5の火炎や輻射熱の影響を受けにくくするためのハウジング63を備えている。
【0017】
感知部61は、後述する制御部8と電気的に接続され、ハウジング63内に上下動可能に配置され、その下方に設けたスプリング62によって常に上方に付勢されている。また、感知部61は凸形の上下2段構造を成し、上面部が炊飯釜3の凹状部31と当接して釜底の温度を感知するようになっている。
【0018】
ハウジング63は、加熱室4の底部中央に位置した円筒状を形成する。ハウジング63は、金属製からなる4層に構成されており、外側の大筒体64と、大筒体64の内側に形成された2層の中筒体65と、さらに中筒体65の内側に形成された小筒体66からなる。各筒体64、65、66の間には、加熱室4内のバーナ5によってハウジング63の側面から受けた熱を中央の感知部61に伝えにくくするための断熱材67がそれぞれ挟み込まれている。なお、小筒体66の上端の開口は、側面上縁から垂直に内側へ折り曲げた折り曲げ部を有しており、小筒体66の上部に位置している感知部61は、凸形の上部分が折り曲げ部より上方へ突出し、下部分が折り曲げ部より上方へと抜けないようになっている。
【0019】
そして炊飯釜3を加熱室4内に収容して扉2を閉めると、感知部61はハウジング63の上昇と共に釜底の凹状部31と接触し、さらに下降可能となっている感知部61を釜底が押し下げた状態となる。かかる構造により、感知部61の上面部は炊飯中、常に炊飯釜3の釜底の凹状部31と接触し続けて釜底の温度を感知するようになっている。
【0020】
また、ハウジング63は扉2の開閉に連動して上下方向に昇降する。扉2を開放している時のハウジング63の上面は出し入れされる炊飯釜3の釜底に接触しない程度に下方に離間して位置している(図2(a)参照)。扉2を閉めると、ハウジング63は上昇する。ハウジング63の下方に設けたスプリング68によって加熱室4内に収容した炊飯釜3の釜底とハウジング63の上面とが接触し、さらに下降可能となっているハウジング63を釜底が押し下げた状態となっている。(図2(b)参照)。なお、釜底の凹状部31の直径はハウジング63の大筒体64の直径より大きく、上昇したハウジング63の上面が凹状部31に接触するようになっている。かかる構造により、ハウジング63の上面は炊飯中、常に炊飯釜3の釜底の凹状部31と接触し続けて、ハウジング63が感知部61を囲んだ状態とし、炊飯中に感知部61がバーナ5の火炎や輻射熱の影響を受けにくくするようになっている。
【0021】
バーナ5は、ガス接続口51から供給されたガスと吸気口52から取り入れた空気を混合し、ドーナツ状のバーナヘッド53から混合ガスを噴出させて燃焼する。バーナヘッド53の中央部分には、温度センサ6が位置している。バーナ5のオンオフや火力調節は、後述する制御部8と電気的に接続されたガス供給路の電磁弁(図示せず)によって行われる。
【0022】
図3に示す通り、操作部7には電源ボタン71、炊飯開始ボタン72、取消ボタン73、炊飯開始灯74、および点火灯75を設けおり、操作部7で入力した情報は、電気的に接続された制御部8へ送信される。
【0023】
制御部8は、予め記憶されたプログラムから各炊飯工程(予熱工程、昇温工程、沸騰維持工程、蒸らし工程)に適した加熱時間や加熱開始時刻を実行してバーナ5へのガスの供給を制御する。また、炊飯開始から完了までの各炊飯工程の温度制御を、温度センサ6の感知温度に基づいて行う。さらに、炊飯開始前の温度センサ6の感知温度に基づいて、炊飯釜3の炊飯開始時期を制御する。
【0024】
具体的な制御は、図4のフローチャートに示す。まず、操作部7の電源ボタン71をオンにし(ステップ1)、炊飯開始ボタン72を押す(ステップ2)と、炊飯開始ボタン72を押してから温度センサの温度TSが炊飯開始可能温度T1以下になるまでの時間(以下、待機時間W)の計測を開始する(ステップ3)。次に、温度センサの温度TSが炊飯開始可能温度T1以下であるかを判断する。温度センサの温度TSが炊飯開始可能温度T1を上回っている場合は、炊飯開始温度T1以下になるまで次のステップには進まない。温度センサの温度TSが炊飯開始可能温度T1以下になれば、次のステップに進む。次のステップでは、ステップ3で計測した待機時間Wが所定時間を経過しているかを判断する。待機時間Wが所定時間以下のときは、次のステップに進む。待機時間Wが所定時間を超えている場合は、沸騰維持工程から蒸らし工程へ移行する際のトリガとなる加熱完了温度T3を変更して(ステップ4)、次のステップに進む。次のステップでは、ガスを供給してバーナ5の加熱を開始する(ステップ5)。予め設定した炊飯工程を完了すれば、制御部8はガスの供給を止めてバーナ5の加熱を停止し、操作部7の電源ボタン71または取消ボタン73を押して炊飯を完了する(ステップ6)。同じ加熱室4を用いて連続して炊飯を行なう場合は、電源ボタン71を押す手前のステップ1まで戻り、炊飯を終える場合は制御フローを終了する。
【0025】
次に、本発明に係る炊飯器1の動作について実施例に基づいて説明する。
【0026】
本実施例における炊飯器1は、炊飯器本体11に上下3段に重ねた加熱室4を備える立体型の炊飯器である。炊飯釜3に米と水を所定量投入して蓋をし、ある段の加熱室4を開口する扉2を開いて加熱室4内へ収容する。
【0027】
扉2を閉めると、下降していた温度センサ6が上昇し、感知部61およびハウジング63はスプリング62、68の付勢力を常に受けた状態で炊飯釜3の釜底の凹状部31と当接する。
【0028】
まず、初めて炊飯する場合の実施例を説明する。操作部7の電源ボタン71を押して電源を投入する。操作部8の炊飯開始ボタン72を押すと、操作部8の炊飯開始灯74が点灯する。初回の炊飯であるため、温度センサの温度TSは炊飯開始可能温度T1よりも低く、待機時間Wも所定時間以下であるため、制御部8は直ぐにガスを供給してバーナ5の加熱を開始する。図示しない炎検知手段により制御部7が炎を検知すると点火灯75が点灯し、作業者はバーナに炎が点火し炊飯が開始されたことを知ることができる。
【0029】
制御部8は、予め記憶した炊飯工程に基づいて炊飯を開始する。図5に示す通り、予熱工程では、炊飯釜3内の米が浸漬し易い温度を維持するように所定時間バーナ5のオンオフを行う。なお、炊飯前に予め浸漬を済ませた米を用いる場合は、予熱工程を省略した炊飯工程を制御部8に記憶させて炊飯を開始してもよい。
【0030】
予熱工程の後、昇温工程に入り、炊飯釜3内の米と水が沸騰温度に到達するまで加熱を続ける。バーナ5による加熱を続け、温度センサの温度TSが沸騰維持温度T2(例えば、102℃)を感知した時に昇温工程は終了し、次の沸騰維持工程に入る。
【0031】
沸騰維持工程では、制御部8は、沸騰維持温度T2を維持するように所定時間加熱を行う。炊飯釜3内の水は蒸発して次第に少なくなり、釜底に水が殆ど無い状態になると釜底の温度は上昇する。制御部8は、温度センサの温度TSが加熱完了温度T3(例えば、104℃)を感知した時にバーナ5の加熱を止める。温度センサの温度TSは、やがて下降して次の蒸らし工程に入る。
【0032】
蒸らし工程では、制御部8は、蒸らし温度を維持するように所定時間バーナ5のオンオフを行う。なお、蒸らし工程ではバーナ5による加熱を行わず、炊飯釜3の余熱と加熱室4内の輻射熱のみで蒸らしを行ってもよい。以上の工程を終えて、操作部7の電源ボタン71または取消ボタン73を押すと炊飯開始灯74は消灯し、初回の炊飯が完了する。
【0033】
次に、連続して炊飯する場合の実施例を説明する。扉2を開けると、温度センサ6が下降し、温度センサ6の感知部61およびハウジング63と炊飯釜3の釜底の凹状部31とが離間して炊飯釜3が加熱室4から取り出せる状態となる。炊飯を終えた炊飯釜3を取り出し、米と水が入った次に炊飯を行う炊飯釜3を加熱室4内へ投入して扉2を閉める。作業者は、操作部7の電源ボタン71を押した後、炊飯開始ボタン72を押す。
【0034】
この時、温度センサ6は上昇し、釜底に当接しているが、炊飯完了直後の温度センサ6の感知部61自体は、初回の時に加熱された炊飯釜3の釜底から熱を受けて高く、その影響によって温度センサの温度TSは炊飯開始可能温度T1より高いため、待機状態となる。このことから、炊飯開始ボタン72を押すと炊飯開始灯74は待機状態を示す点滅状態となり、バーナ5の加熱を開始しない。そして温度センサ6の感知部61自体の熱は、炊飯釜3により早く下がり、温度センサの温度TSが炊飯開始可能温度T1(例えば、60℃)まで下降すると、炊飯開始灯74は点灯状態となってバーナの加熱が開始される。
【0035】
このようなことから、作業者は次の炊飯釜3をセットして炊飯開始ボタン72を押しておけば、温度センサ6が炊飯開始可能温度T1まで下がるのを待って炊飯開始ボタン72を押す必要が無くなるため、他の作業に取り掛かることができる。待機中、温度センサ6の感知部61は加熱室4内に投入した加熱前の炊飯釜3と当接しているため、次の炊飯釜3を投入せずに感知部61が冷えるのを待つときと比べて感知部61の冷却はより促進される。
【0036】
なお、同じ加熱室4を用いて初回から連続炊飯の炊飯回数が少ない時点では、温度センサ6のハウジング63部分が加熱されていたとしてもまだ比較的高温になっておらず、次に炊飯を行う炊飯釜3の釜底の凹状部31と当接した感知部61自体の温度は、ハウジング63部分の温度の影響をあまり受けることなく炊飯開始可能温度TSまで比較的早く下がり、図6(a)の実線で示す通り、正常に炊飯を行うことができる。
【0037】
つまり、炊飯釜3の底面と接触した温度センサの温度TSが所定時間内に炊飯開始可能温度T1まで下がる場合は、初回と同様の炊飯工程により炊飯が行われる。このように繰り返し炊飯が行われることで温度センサ6のハウジング63部分や、加熱室4全体が熱を持つようになったとしても、投入された炊飯釜の表面に受ける熱が初回に炊飯するときと同じ炊飯工程によって炊飯釜3を加熱したときの釜底の温度変化にさほど影響を与えることなく炊飯が完了するまで行われる。
【0038】
しかし、さらに連続的な炊飯が行われていくと、温度センサ6の感知部61は、たとえ周囲を断熱性のあるハウジング63に囲まれていてもハウジング63自体が高温の熱を保持し、その影響を受けるようになる。また、加熱室4内全体が繰り返し加熱されていくことで高温の熱を持つようになり、そこへ投入された炊飯釜3の表面さえも温度が上昇してしまい、温度センサ6の感知部61は、たとえ釜底に接触していても温度が下がりにくくなる。結果として温度センサの温度TSは所定時間内に炊飯開始可能温度T1まで下降することがなく、そのまま炊飯を開始しても初回の炊飯曲線とは異なった温度カーブを描くようになる。
【0039】
このため、温度センサの温度TSが炊飯開始可能温度T1まで下がってから炊飯を開始したとしても、図6(a)の一点鎖線で示す通り、待機時間Wは長くなり、また沸騰維持工程ではガスで加熱されているだけでなく、加熱室4全体が持つ熱の影響によって炊飯釜3の表面も初回の炊飯の時より熱くなることから、通常の沸騰維持温度T2よりも高温を維持した状態となる。かかる状態で炊飯を行うと、通常なら釜底に水が殆ど無い状態と判断される加熱完了温度T3に予定より短い時間で到達することによって炊飯途中でバーナ5の加熱を止めてしまい、制御部8は釜内にまだ水が残って米が十分に炊き上がらないまま蒸らし工程に入ってしまうので、適切な仕上がりのご飯を得ることができない。
【0040】
そこで、温度センサの温度TSが炊飯開始可能温度T1まで下降するまでの待機時間Wが所定時間(例えば、2分)を経過した場合において、制御部8は、炊飯の加熱完了温度T3を、予め設定してある加熱完了温度T3へと自動的に上げて加熱を行う。
【0041】
以下に示す実施例では、加熱完了温度T3を例えば104℃から106℃に変更した上で、次の炊飯を開始する。連続的に炊飯を行った温度センサ6は、ハウジング63部分が熱を保持して高温となり、また加熱室4全体からの輻射熱を受けて既に熱を持って高温となっているため、次の炊飯釜3の釜底に温度センサ6が接触しても感知部61の温度が下がりにくい状況となり、炊飯開始可能温度T1まで感知部61の温度が下がるのに時間が掛かることとなる。
【0042】
また、炊飯を開始する炊飯釜3においても、加熱室4内が高温状態となっているため、バーナ5だけの加熱時と比べて炊飯釜3表面に対する加熱が強くなり、早く温度上昇するだけでなく沸騰時の炊飯釜3の温度は沸騰維持温度T2よりも高く維持されることになる。
【0043】
このような状態の中にある温度センサの温度TSは、初回および連続回数が少ない場合の沸騰維持温度T2より早い時間で高い温度(例えば、103℃)にまで上昇してしまう状況にある。そして沸騰維持工程が終わりに近づいた時、具体的には図6(b)に示す通り、炊飯釜3内の水が無くなり始めたとして温度センサの温度TSがほんのわずか上昇し始めたとき、加熱完了温度T3が変更前の104℃のままだと、温度センサ6は沸騰維持温度T2から1℃上がる間の短い時間(△t1)で直ぐに加熱完了温度T3を感知してしまう。このため、制御部8は炊飯釜3内の水がまだ十分に蒸発し切らないままバーナ5の加熱を止め、次の蒸らし工程に入ってしまう。しかし、加熱完了温度T3を106℃に変更すれば、温度センサの温度TSが3℃上昇する迄の時間分(△t2)バーナ5はより長く加熱を続ける為、その間に炊飯釜3内の水は蒸発し、バーナ5が早切れすることなく炊飯釜3内の水は蒸発した上で次の蒸らし工程に入ることができる。
【0044】
このようにして、連続して炊飯を行うとき、温度センサ6の温度TSが下がりにくい場合でも加熱室4内に炊飯釜3を投入し、炊飯開始ボタン72を押しておくことで、自動で加熱完了温度T3を変更した上で炊飯器1が適切なときに炊飯を開始するので、炊飯開始ボタン72の押し忘れを防ぐことができる。また、連続的に炊飯しても初回の炊飯と同様の炊き上がりを安定して得ることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0046】
本実施形態の制御部8ではガス式の炊飯器を用いているが、これに限定されず、カーボンヒータ等を用いた電気式の炊飯器でも同様の作用効果を奏することが可能である。
【0047】
また、温度センサ6に安全機構を設け、炊飯釜3の釜底がスプリング62、68の付勢力に抗しながら感知部61およびハウジング63を押し下げたときに、バーナ25の加熱を許可する構成としてもよい。
【0048】
また、本実施例では蒸らし工程が完了するとバーナ5の加熱を止めてそのまま炊飯工程を終えているが、蒸らし工程後に焼き上げ工程を追加してもよい。
【0049】
なお、本実施例において、制御部8は、温度センサの温度TSが炊飯開始可能温度T1まで下がるのを待ってから自動的に炊飯を開始する構成としているが、これに限定されず、温度センサの温度TSが炊飯開始可能温度T1まで下がると予測される時間を予め設定し、予測時間を経過した後、自動的に炊飯を開始する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 炊飯器
11 炊飯器本体
2 扉
3 炊飯釜
31 凹状部
4 加熱室
5 バーナ
51 ガス接続口
52 吸気口
53 バーナヘッド
6 温度センサ
61 感知部
62 スプリング
63 ハウジング
64 大筒体
65 中筒体
66 小筒体
67 断熱材
68 スプリング
7 操作部
71 電源ボタン
72 炊飯開始ボタン
73 取消ボタン
74 炊飯開始灯
75 点火灯
8 制御部
TS 温度センサの温度
T1 炊飯開始可能温度
T2 沸騰維持温度
T3 加熱完了温度
W 待機時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6