(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】印字ユニット
(51)【国際特許分類】
B41J 2/32 20060101AFI20220107BHJP
B41J 2/325 20060101ALI20220107BHJP
B41J 3/407 20060101ALI20220107BHJP
B41J 25/304 20060101ALI20220107BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20220107BHJP
B41J 11/70 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B41J2/32 C
B41J2/325 A
B41J3/407
B41J25/304 U
B41J11/42
B41J11/70
(21)【出願番号】P 2016021969
(22)【出願日】2016-02-08
【審査請求日】2019-01-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松浦 圭来
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-302522(JP,A)
【文献】特開2010-208323(JP,A)
【文献】特開平11-240187(JP,A)
【文献】特開2010-023455(JP,A)
【文献】実開平07-004041(JP,U)
【文献】特開平06-262786(JP,A)
【文献】特開平05-155074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0293648(US,A1)
【文献】中国実用新案第201685536(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/315 - 2/345
B41J 2/42 - 2/425
B41J 2/475 - 2/48
B41J 23/00 - 25/34
B41J 11/00 - 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字物
とサーマルリボン
とを
プラテンローラ上で接触させて前記被印字物に印字を行う印字ユニットであって、
前記プラテンローラの少なくとも下流側に位置して、前記プラテンローラ上の前記被印字物を下流に向けて送る被印字物送り機構と、
前記プラテンローラの上流側に位置して、前記プラテンローラ上の前記被印字物を上流に向けて引っ張る力付与機構と、
前記被印字物の印字面に接触し得る接触面を有するサーマルリボンと、
前記サーマルリボンを前記被印字物の搬送に連動して送るリボン送り機構と、
前記サーマルリボンの前記接触面を
前記プラテンローラ上の前記被印字物に押し当てる第1状態、又は前記サーマルリボンの前記接触面を前記被印字物から離す第2状態のいずれかの状態を採るサーマルヘッドと、
前記被印字物に印字を行うときは前記サーマルヘッドを前記第1状態とし、印字を行わないときは前記サーマルヘッドを前記第2状態とするヘッド状態切換機構と、
を備え、
前記力付与機構は、
鉛直方向に移動することにより前記被印字物に対して張力を付与する可動ローラを有し、前記サーマルヘッドが前記第1状態から前記第2状態に切り換えられ
ると、前記可動ローラが鉛直方向に移動し、前記被印字物に対して張力を付与することにより前記プラテンローラ上の前記被印字物を前記
上流に
向けて引っ張る、
印字ユニット。
【請求項2】
前記ヘッド状態切換機構を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記リボン送り機構が前記サーマルリボンを送り出す毎に、或いは定期的に前記サーマルヘッドを前記第2状態にする、
請求項1に記載の印字ユニット。
【請求項3】
前記制御部は、運転停止時に、前記サーマルヘッドを前記第1状態及び前記第2状態のいずれとも異なる第3状態に切り換える、
請求項
2に記載の印字ユニット。
【請求項4】
前記被印字物はフィルムであり、
前記被印字物送り機構は、前記サーマルヘッド
および前記プラテンローラの
上流側および下流側に前記フィルムを支持して送り出すローラを複数備え、そのうちの一つが駆動部を有する、
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の印字ユニット。
【請求項5】
前記フィルムは、
前記プラテンローラの下流側において、前記フィルムの送り方向と直交する
方向に切断される、
請求項
4に記載の印字ユニット。
【請求項6】
前記ヘッド状態切換機構は、ステッピングモータを駆動源として前記サーマルヘッドを上下に移動させる、
請求項1
または請求項2に記載の印字ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字ユニットに関し、特に、包装用フィルムに印字するために包装機と連動するプリンタに搭載される印字ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印字ユニットは生産設備の一要素としても広く普及するようになった。例えば、特許文献1(特開2015-74467号公報)に開示されている帯掛け包装装置では、印刷処理部がフィルム供給部から供給されるフィルムに印刷を施し、その印刷処理されたフィルムは一定ピッチで切断され、搬送方向と直交する方向に長い帯状のフィルム片となり、その両端部が物品の底面に巻き掛けられている。
【0003】
印刷処理部では、下向きに装備されたサーマルヘッドがフィルムの上面に接触し、走行するフィルムの各感熱域へ所定の印刷が連続して行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記帯掛け包装装置は、帯の長手方向をフィルムの搬送方向と直交する方向にして、印刷し、フィルムを切断するので、フィルム端部から印刷開始までの距離が短く、サーマルヘッドを常に降ろしている必要がある。
【0005】
印刷処理部はフィルムの送りに転写リボンの送りを同期させて印字するが、フィルムの送りと転写リボンの送りに僅かなズレがあるとき、転写リボンの巻取り時にフィルムが余分に進み、それが多数回累積して弛みが発生する。
【0006】
本発明の課題は、フィルムの送りに転写リボンの送りを同期させて印字しても、フィルムの弛みを生じさせない印字ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点に係る印字ユニットは、被印字物にサーマルリボンを接触させて被印字物に印字を行う印字ユニットであって、被印字物送り機構と、力付与機構と、サーマルリボンと、リボン送り機構と、サーマルヘッドと、ヘッド状態切換機構とを備えている。被印字物送り機構は、プラテンローラの少なくとも下流側に位置して、プラテンローラ上の被印字物を下流に向けて送る。力付与機構は、プラテンローラの上流側に位置して、プラテンローラ上の被印字物を上流に向けてを引っ張る。サーマルリボンは、被印字物の印字面に接触し得る接触面を有している。リボン送り機構は、サーマルリボンを被印字物の搬送に連動して送る。サーマルヘッドは、サーマルリボンの接触面をプラテンローラ上の被印字物に押し当てる第1状態、又はサーマルリボンの接触面を被印字物から離す第2状態のいずれかの状態を採る。ヘッド状態切換機構は、被印字物に印字を行うときはサーマルヘッドを第1状態とし、印字を行わないときはサーマルヘッドを第2状態とする。力付与機構は、鉛直方向に移動することにより前記被印字物に対して張力を付与する可動ローラを有し、サーマルヘッドが第1状態から第2状態に切り換えられると、前記可動ローラが鉛直方向に移動し、前記被印字物に対して張力を付与することにより前記プラテンローラ上の被印字物を上流に向けて引っ張る。
【0008】
この印字ユニットでは、被印字物の送り量とサーマルリボンとの送り量との間に生じる「ずれ」によって、被印字物に弛みが発生するが、印字後にサーマルヘッドがサーマルリボンの接触面を被印字物から離す第2状態になることによって、被印字物は力付与機構によって送り方向とは反対方向に引っ張られるので、上記「ずれ」は解消される。その結果、被印字物の弛みを未然に防止することができる。
【0009】
本発明の第2観点に係る印字ユニットは、第1観点に係る印字ユニットであって、ヘッド状態切換機構を制御する制御部をさらに備えている。制御部が、リボン送り機構がサーマルリボンを送り出す毎に、或いは定期的にサーマルヘッドを第2状態にする。
【0010】
この印字ユニットでは、サーマルリボンを送り出す毎に、或いは定期的にサーマルヘッドを第2状態にすることによって、印字の都度、或いは定期的に上記「ずれ」が解消されるので、「ずれ」の累積が防止され、被印字物の弛みを未然に防止することができる。
【0011】
本発明の第3観点に係る印字ユニットは、第2観点に係る印字ユニットであって、制御部が、運転停止時にサーマルヘッドを第1状態及び第2状態のいずれとも異なる第3状態に切り換える。
【0012】
この印字ユニットでは、運転停止時に採る第3状態を原位置とすることができるので、電源投入直後、異常停止後の復帰時など、制御部がサーマルヘッドの位置を把握できなくなっていても、第3状態に戻ることで制御部はサーマルヘッドの原位置を基準に第1状態又は第2状態へ移行することができる。
【0013】
本発明の第4観点に係る印字ユニットは、第1観点から第3観点のいずれか1つに係る印字ユニットであって、上記被印字物がフィルムである。被印字物送り機構は、サーマルヘッドおよびプラテンローラの上流側および下流側にそのフィルムを支持して送り出すローラを複数備え、そのうちの一つが駆動部を有している。
【0014】
本発明の第5観点に係る印字ユニットは、第4観点に係る印字ユニットであって、フィルムが、プラテンローラの下流側において、フィルムの送り方向と直交する方向に切断される。
【0015】
この印字ユニットでは、フィルムの搬送方向と直交する方向がフィルムの長手方向となり、印字開始位置がフィルム端から短くなり、印字サイクルを短期化できる反面、フィルムの送り量とサーマルリボンとの送り量との間に生じる「ずれ」が累積し易くなるが、かかる場合にこそ、フィルムの送り量とサーマルリボンとの送り量との間に生じる「ずれ」を解消する第2状態が有用となる。
【0016】
本発明の第6観点に係る印字ユニットは、第1観点または第2観点に係る印字ユニットであって、ヘッド状態切換機構が、ステッピングモータを駆動源としてサーマルヘッドを上下に移動させる。
【0017】
この印字ユニットでは、ステッピングモータは、入力するパルス数によって回転量を制御することができ、パルスの入力モード(例えば、4端子A,B,C,Dへの信号入力順序をA→B→C→Dとするモード、及びD→C→B→Aとするモード)によって正・逆回転が可能であるので、サーマルヘッドの第1状態及び第2状態それぞれの位置に位置検出センサ又は位置検出スイッチを設ける必要がなく、ユニットの小型化、低コスト化を図ることができる。また、ステッピングモータはパルス数によって制御が可能であることにより、サーマルヘッドを下げて搬送されるフィルムの所望する位置に接触させて印字を行うタイミングについて、微細かつ正確な調整が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る印字ユニットでは、フィルムの送り量とサーマルリボンとの送り量との間に生じる「ずれ」によって、フィルムに弛みが発生するが、印字後にサーマルヘッドがサーマルリボンの接触面をフィルムから離す第2状態になることによって、フィルムは力付与機構によって送り方向とは反対方向に引っ張られるので、上記「ずれ」は解消される。その結果、フィルムの弛みを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印字ユニットを含む帯掛け包装装置の当該印字ユニットまでの概略構成図。
【
図2】サーマルヘッドのポジション別の状態を示す表。
【
図4】各ポジションに至るに必要なヘッド上下移動モータへの入力パルス数を示す表。
【
図7】第1変形例に係る印字ユニットの動作タイムチャート。
【
図8】第2変形例に係る印字ユニットの動作タイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0021】
(1)印字ユニットを含む帯掛け包装装置の概略構成
図1は、本発明の一実施形態に係る印字ユニット70を含む帯掛け包装装置の当該印字ユニット70までの概略構成図。
図1において、帯掛け包装装置は、フィルム送り機構40、力付与機構50、エンコーダ60、及び印字ユニット70を備えている。さらに、帯掛け包装装置は、フィルムFの送り方向における印字ユニット70の下流側に、上記特許文献1(特開2015-74467号公報)の帯掛け包装装置と同様の物品搬送装置、フィルム片形成部、フィルム片搬送機構、フィルム片押付け機構、フィルム片貼着機構をさらに備えているが、特許文献1に記載されているのでそれらを纏めて下流側設備Mと称して説明を省略し、ここではフィルム送り機構40、力付与機構50、エンコーダ60及び印字ユニット70についてのみ説明する。
【0022】
(1-1)フィルム送り機構40
フィルム送り機構40は、連続した幅広のフィルムFを送り出す。フィルム送り機構40は、シャフト41にフィルムが巻かれたフィルムロールRと、シャフト41を回転駆動するモータ43を有している。
【0023】
(1-2)力付与機構50
力付与機構50は、鉛直方向に移動可能な可動ローラ51と、鉛直方向に移動しない固定ローラ52とを有している。フィルムFは鉛直下方に導かれ可動ローラ51に掛け渡され、今度は鉛直上方に導かれ固定ローラ52に掛け渡される。固定ローラ52に掛け渡されたフィルムFは印字ユニット70に向かって略水平に導かれる。
【0024】
可動ローラ51は、フィルムFに適切な張力が作用するようにバネ51aを解して鉛直下方に引っ張られている。なお、フィルムFに張力を作用させるバネ51aに替えて、錘を用いてもよい。
【0025】
(1-3)エンコーダ60
エンコーダ60は、フィルムFの送り動作の有無を検知する。エンコーダ60の検知信号は、後述の印字ユニット70によるサーマルリボンTRの巻取動作と巻取停止のトリガー信号となる。
【0026】
(1-4)印字ユニット70
印字ユニット70は、サーマルヘッド71、プラテンローラ72、サーマルリボンTR、リボン送り機構73、ヘッド状態切換機構74、及び制御部75(
図3参照)を備えている。
【0027】
印字ユニット70は、フィルムFの上面所定位置に物品の各種情報を印刷するために、サーマルヘッド71をフィルムFの上面に接触させ、走行するフィルムFの所定域へ所定の印刷を行う。以下、印字ユニット70の構成について説明する。
【0028】
(2)印字ユニット70の構成
図1に示すように、印字ユニット70では、サーマルヘッド71とプラテンローラ72とがフィルムFが搬送される隙間を形成し、フィルムFをサーマルヘッド71とプラテンローラ72との間で挟んだ状態で、プラテンローラ72が回転することによって隙間内を搬送する。
【0029】
この搬送過程で、サーマルヘッド71が複数の発熱体(図示せず)のうちの必要な発熱体を発熱させることによってサーマルリボンTRに塗布されたインクを融解させて、フィルムFの上面所定位置に日付、商品名、原材料など予め入力設定された情報の印字を行う。
【0030】
印字されたフィルムFは、下流側設備Mの送りローラ81,82を介してさらに下流側へ搬送される。
【0031】
(2-1)サーマルヘッド71
サーマルヘッド71は、プラテンローラ72に対向して配置されている。サーマルヘッド71は、その長手方向がプラテンローラ72の軸心方向と平行となっている。サーマルヘッド71は、プラテンローラ72との隙間に搬送されるフィルムFに印字を行う。
【0032】
また、サーマルヘッド71は付勢部材(図示せず)によってプラテンローラ72へ向けて付勢されている。
【0033】
(2-2)プラテンローラ72
プラテンローラ72は、円筒形状に形成され、その中空部には支軸72aが挿入され、その支軸72aに固定されている。支軸72aの両端部は、プラテンローラ72から突出しており、この突出部分を軸部72bという。軸部72bは回転可能に支持されている。
【0034】
軸部72bはモータ(図示せず)の連結されており、当該モータが回転することによって支軸72aが回転し、プラテンローラ72も回転する。
【0035】
(2-3)サーマルリボンTRとリボン送り機構73
サーマルリボンTRは、サーマルヘッド71にかけられている。サーマルリボンTRは、リボン送り機構73によって送り出される。このリボン送り機構73は、リボン送り出しコア73aと、リボン巻き取りコア73bと、張力調整ローラ73cとを有している。
【0036】
外観上、サーマルリボンTRは、その両端をリボン送り出しコア73aとリボン巻き取りコア73bとによって巻き取られた状態で支持されている。リボン送り出しコア73aにはサーマルリボンTRの未使用側が巻き取られており、リボン巻き取りコア73bにはサーマルリボンTRの使用済側が巻き取られている。
【0037】
リボン巻き取りコア73bの軸にはリボン巻取モータ731が連結されており、リボン巻取モータ731が回転することによって、リボン巻き取りコア73bが回転してサーマルリボンTRを巻取り、サーマルリボンTRの送り動作が行われる。
【0038】
張力調整ローラ73cは、サーマルヘッド71とリボン巻き取りコア73bとの間に掛け渡されたサーマルリボンTRを外側へ押して、サーマルリボンTRの張力を調整する。
【0039】
(2-4)ヘッド状態切換機構74
ヘッド状態切換機構74は、サーマルヘッド71を上下に移動させる機構である。ヘッド状態切換機構74は、サーマルヘッド71のコーナーに連結される軸74aと、その軸74aを回転させるヘッド上下移動モータ741とを有している。ヘッド状態切換機構74は、ヘッド上下移動モータ741へ予め設定されたパルス数を入力することによって、サーマルヘッド71を3つの位置へ移動させることができる。
【0040】
図2は、サーマルヘッド71のポジション別の状態を示す表である。
図2において、第1ポジションP1は、サーマルリボンTRの接触面をフィルムFに押し当てる位置である。サーマルヘッド71が第1ポジションP1にある状態を第1状態という。
【0041】
第2ポジションP2は、サーマルリボンTRの接触面をフィルムFから所定距離だけ離したポジションである。サーマルヘッド71が第2ポジションP2にある状態を第2状態という。
【0042】
第3ポジションは、ヘッド上下移動モータ741がサーマルヘッド71を所定位置へ移動させる際の原点であり、ホームポジションP0という。サーマルヘッド71がホームポジションP0にあるか否かは、原位置センサ711によって検知する。ホームポジションP0にあるサーマルヘッド71の状態を第3状態という。
【0043】
(2-5)制御部75
図3は、印字ユニット70の制御ブロック図である。
図3において、制御部75は、エンコーダ60、原位置センサ711、リボン送り機構73のリボン巻取モータ731、及びヘッド状態切換機構74のヘッド上下移動モータ741と接続されている。
【0044】
エンコーダ60は、フィルムFの搬送の開始と停止とを検知し、その検知信号を制御部75に送る。制御部75は、エンコーダ60からの検知信号に基づき、リボン巻取モータ731の駆動、及び停止を行うと共に、ヘッド上下移動モータ741の回転方向と回転量を制御する。
【0045】
なお、ヘッド上下移動モータ741は正転、逆転が可能である。本実施形態では、
図1に示す軸74aを正面にして視たとき、当該軸74aが時計方向(CW)に回転することを正転とし、当該軸74aが反時計方向(CCW)に回転することを逆転としている。
【0046】
ヘッド上下移動モータ741はステッピングモータであるので、制御部75には予め第各ポジションに移動するためにステッピングモータに入力すべき必要十分なパルス数が設定されている。
【0047】
図4は、各ポジションに至るに必要なヘッド上下移動モータ741への入力パルス数を示す表である。
図4において、サーマルヘッド71がホームポジションP0にあるとき、制御部75がヘッド上下移動モータ741に正転モードでパルス数Xだけ入力することによって、サーマルヘッド71は降下し所定の第1ポジションP1へ移動する。
【0048】
また、サーマルヘッド71が第1ポジションP1にあるとき、制御部75がヘッド上下移動モータ741にパルス数Yを逆転モードで入力することによって、サーマルヘッド71は上昇し所定の第2ポジションP2へ移動する。
【0049】
また、サーマルヘッド71が第1ポジションP1にあるとき、制御部75はヘッド上下移動モータ741にパルス数Zを逆転モードで入力することによって、サーマルヘッド71はホームポジションP0に移動する。パルス数Zは、サーマルヘッド71を第1ポジションP1からホームポジションP0へ到達させるパルス数Xよりも若干多めに設定されている。
【0050】
ホームポジションP0に到達したサーマルヘッド71は原位置センサ711に検知される。制御部75は、原位置センサ711の検知信号に基づき、サーマルヘッド71がホームポジションP0に到達したと判断し、入力するパルス数がパルス数Zに達していなくてもヘッド上下移動モータ741へのパルス入力を停止し、サーマルヘッド71の移動を終了する。
【0051】
さらに、サーマルヘッド71が第2ポジションP2にあるとき、制御部75はヘッド上下移動モータ741にパルス数Y+αを逆転モードで入力することによって、サーマルヘッド71を第1ポジションP1へ移動する。
【0052】
理論的には第1ポジションP1から第2ポジションP2の移動に要したパルス数Yと同じだけのパルス数を正転モードで入力することによって第2ポジションP2から第1ポジションP1に移動することができる。
【0053】
しかし、現実には誤差も生じるのでパルス数Yよりも若干多めのパルス数Y+αを正転モードで入力することによって、サーマルヘッド71が確実に第1ポジションP1に到達し、サーマルリボンTRの接触面をフィルムFに押し当てることができる。
【0054】
サーマルヘッド71が第1ポジションP1に到達し、残りのパルス数が消化されるまでヘッド上下移動モータ741が駆動しているので、その間、サーマルヘッド71がサーマルリボンTRの接触面をフィルムFに押し続けることになるが、ヘッド上下移動モータ741と軸74aとの間にはスプリングなどを用いた押し力緩和手段(図示せず)が設けられているので、サーマルリボンTRの接触面は許容範囲の力でフィルムFに押しつけられる。
【0055】
(3)動作
ここでは、図面を参照しながら、印字ユニット70の動作を説明する。
図5は、印字ユニット70の制御フローチャートである。また、
図6は、印字ユニット70の動作タイムチャートである。
【0056】
(ステップS1)
先ず、制御部75はサーマルヘッド71がホームポジションP0にあるか否かを判定し、サーマルヘッド71がホームポジションP0にあると判定したときはステップS2へ進み、サーマルヘッド71がホームポジションP0にないと判定したときはステップS11へ進む。
【0057】
(ステップS2)
次に、制御部75はステップS2において、サーマルヘッド71を第1ポジションP1へ移動する。制御部75は、ヘッド上下移動モータ741に正転モードでパルス数Xだけ入力することによって、サーマルヘッド71は所定の第1ポジションP1に移動する。
【0058】
(ステップS3)
次に、制御部75はステップS3において、フィルムFの搬送が開始されたか否かを判定する。
図6に示すように、フィルムFの移動はエンコーダ60によって検知することができる。フィルムFが停止している間はエンコーダ60からLo信号が出力され、フィルムFが移動している間はエンコーダ60からHi信号が出力される。
【0059】
したがって、制御部75はエンコーダ60からの信号がLoからHiに切り換わった時点をフィルムFの搬送が開始されたと判定することができる。制御部75は、フィルムFの搬送が開始されたと判定したときはステップS2へ進み、フィルムFの搬送が開始されていない判定したときは、引き続きエンコーダ60からの信号を監視する。
【0060】
(ステップS4)
次に、制御部75はステップS4において、サーマルリボンTRの送り動作を開始する。制御部75は、エンコーダ60からの信号がLoからHiに切り換わったことをトリガーとして、リボン巻取モータ731を駆動する(
図6参照)。
【0061】
(ステップS5)
次に、制御部75はステップS5において、フィルムFの搬送が停止されたか否かを判定する。上述の通り、フィルムFが停止しているときはエンコーダ60からLo信号が出力され、フィルムFが移動しているときはエンコーダ60からHi信号が出力されるので、制御部75はエンコーダ60からの信号がHiからLoに切り換わった時点でフィルムFの搬送が停止されたと判定することができる。制御部75は、フィルムFの搬送が停止されたと判定したときはステップS6へ進み、フィルムFの搬送が停止していないと判定したときは、引き続きエンコーダ60からの信号を監視する。
【0062】
(ステップS6)
次に、制御部75はステップS6において、サーマルリボンTRの送り動作を停止する。制御部75は、エンコーダ60からの信号がHiからLoに切り換わったことをトリガーとして、リボン巻取モータ731を停止する(
図6参照)。
【0063】
(ステップS7)
次に、制御部75はステップS7において、サーマルヘッド71を第2ポジションP2へ移動する。制御部75がヘッド上下移動モータ741に逆転モードでYパルスだけ入力することによって、サーマルヘッド71は所定の第2ポジションP2に移動する。
【0064】
このとき、サーマルリボンTRの接触面がフィルムFをプラテンローラ72に押し付けていないので、可動ローラ51の重み及びバネ51aによってフィルムFに適切な張力が作用し、プラテンローラ72よりも搬送方向下流側に生じたフィルムFの弛みが解消される。
【0065】
(ステップS8)
次に、制御部75は、ステップS8において、運転停止指令が有るか否かを判定する。先の印字が終了したタイミングでオペレータが設備(印字ユニット70を含む帯掛け包装装置)を停止させること、或いは、設備異常により運転停止指令を発することもあり得るからである。
【0066】
制御部75は、運転停止指令があると判定したときはステップS9へ進み、運転停止指令がないと判定したときはステップS10へ進む。
【0067】
(ステップS9)
次に、制御部75はステップS9において、サーマルヘッド71をホームポジションP0へ移動する。制御部75は、ヘッド上下移動モータ741に逆転モードでパルス数Zだけ入力し、原位置センサ711からの検知信号の入力を待って、ヘッド上下移動モータ741へのパルスの入力を終了する。
【0068】
(ステップS10)
一方、制御部75が先のステップS9において運転停止指令がないと判定してステップS10へ進んだ場合、制御部75はステップS10において、サーマルヘッド71を第1ポジションP1へ移動する。そして、制御部75はステップS10の処理の後、ステップS3へ戻る。
【0069】
(ステップS11)
なお、制御部75が最初のステップS1において、サーマルヘッド71がホームポジションP0にないと判定しステップS11へ進んだときは、制御部75はステップS11において、サーマルヘッド71をホームポジションP0へ移動する。
【0070】
例えば、印字ユニット70を含む帯掛け包装装置が異常により強制停止させられていた場合、サーマルヘッド71はホームポジションP0以外の位置で停止している可能性が高いので、電源投入後は一律にサーマルヘッド71をホームポジションP0へ移動させる。
【0071】
制御部75は、ヘッド上下移動モータ741に逆転モードでパルス数Zだけ入力して、サーマルヘッド71を移動させる。制御部75は、原位置センサ711の検知信号に基づいてホームポジションP0に到達したと判断し、ヘッド上下移動モータ741へのパルス数Zの入力がまだ完了していなくても、ヘッド上下移動モータ741へのパルス入力を停止する。
【0072】
以上のように、制御部75が、上記ステップS1からステップS11のフローに基づいて制御を行うことにより、印字ユニット70が印字を行うごとにサーマルヘッド71を上下に移動させてサーマルヘッド71がフィルムFから離れる機会を与えるので、フィルムFへの適正な張力付与が行われ、弛みの原因を解消する。
【0073】
(4)特徴
(4-1)
印字ユニット70では、フィルムFの送り量とサーマルリボンTRとの送り量との間に生じる「ずれ」によって、フィルムFに弛みが発生するが、印字後にサーマルヘッド71がサーマルリボンTRの接触面をフィルムFから離す第2状態になることによって、フィルムFは力付与機構50によって送り方向とは反対方向に引っ張られるので、上記「ずれ」は解消される。その結果、フィルムFの弛みを未然に防止することができる。
【0074】
(4-2)
印字ユニット70では、サーマルリボンTRを送り出す毎に、或いは定期的にサーマルヘッド71を第2状態にすることによって、印字の都度、或いは定期的に上記「ずれ」が解消されるので、「ずれ」の累積が防止されるので、フィルムFの弛みを未然に防止することができる。
【0075】
(4-3)
印字ユニット70では、力付与機構50によってフィルムFにはその送り方向と反対方向の張力が作用しているので、フィルムFの弛み発生を抑制しているが、サーマルリボンTRとフィルムFとの接触部はサーマルヘッド71によってサーマルリボンTR側からフィルムFに押し力が作用しているので、力付与機構50による張力の影響が弱まり、その上、サーマルリボンTRの送り量がフィルムFの送り量を上回った分だけ「ずれ」が生じる。それゆえ、サーマルヘッド71を第2状態にしてサーマルリボンTRの接触面をフィルムFから離すことに技術的意義がある。
【0076】
(4-4)
印字ユニット70では、エンコーダ60によってフィルムFが送られているか否かを検知することができるので、制御部75はエンコーダ60の検知信号によって、印字開始直前から印字終了、及び印字終了から印字開始までを把握することができる。
【0077】
(4-5)
印字ユニット70では、運転停止時に採る第3状態を原点位置とすることができるので、電源投入直後、異常停止後の復帰時など、制御部75がサーマルヘッド71の位置を把握できなくなっていても、第3状態に戻ることで制御部75はサーマルヘッド71の原位置を基準に第1状態又は第2状態で移行することができる。
【0078】
(4-6)
印字ユニット70では、フィルムFの搬送方向と直交する方向がフィルムFの長手方向となり、印字開始位置がフィルム端から短くなるが、かかる場合にこそ、フィルムFの送り量とサーマルリボンTRとの送り量との間に生じる「ずれ」を解消する第2状態が有用となる。
【0079】
(4-7)
印字ユニット70では、ヘッド上下移動モータ741はステッピングモータであり、入力するパルス数によって回転量を制御することができ、パルスの入力パターン(モード)によって正・逆回転が可能であるので、サーマルヘッドの第1状態及び第2状態それぞれの位置に位置検出センサ又は位置検出スイッチを設ける必要がなく、ユニットの小型化、低コスト化を図ることができる。
【0080】
(5)変形例
図6に示すように、上記実施形態では、実質、印字終了直後にサーマルヘッド71を第1状態から第2状態に移行している。しかし、それに限定されるものではなく、[第1状態から第2状態への移行及び第2状態から第1状態への移行]は、制御上、次の印字が開始されるまでの間に行われればよい。
【0081】
(5-1)第1変形例
図7は、第1変形例に係る印字ユニット70の動作タイムチャートである。
図7において、サーマルヘッド71の[第1状態から第2状態への移行及び第2状態から第1状態への移行]は、印字直後から次の印字開始までの区間の中間域で行っている。
【0082】
(5-2)第2変形例
一方、
図8は第2変形例に係る印字ユニット70の動作タイムチャートであるが、
図8において、サーマルヘッド71の[第1状態から第2状態への移行]及び[第2状態から第1状態への移行]は、ともに印字直後から次の印字開始までの区間で行うが、[第1状態から第2状態への移行]と[第2状態から第1状態への移行]との間に待機時間を設けてもよい。
【0083】
(6)その他の実施形態
(6-1)
上記実施形態において、制御部75は、印字ユニット70が印字を行うごとにサーマルヘッド71を上下に移動させてサーマルヘッド71がフィルムFから離れる機会を与えているが、サーマルヘッド71を上下に移動させる動作は、必ずしも印字の都度行う必要はなく、定期的に行っても、フィルムFへの適正な張力付与が行われ、弛みの原因を解消することができる。
【0084】
(6-2)
また、上記実施形態では、制御部75は、エンコーダ60の検知信号をトリガーにしてリボン巻取モータ731の駆動制御を行っているが、印字ユニット70が搭載される帯掛け包装装置側からフィルムFの送り動作の周期パルスを得てリボン巻取モータ731の駆動制御を行ってもよい。
【0085】
(6-3)
また、上記実施形態では、エンコーダ60からの信号がLoからHiに切り替わった時点をフィルムFの搬送が開始されたと判定することができるとしているが、エンコーダ60からの信号は一定角度以上回転する毎にパルス信号がオン・オフし、そのオン・オフの信号が始まったことを検出することにより、フィルムFの搬送が開始されたと判定するようにしてもよい。
【0086】
(6-4)
また、上記実施形態では、長手方向がフィルム送り方向と直交する帯状に切断される場合特に有効としているが、短手方向がフィルム送り方向と直交する帯状に切断される場合に本発明を実施してもよい。
【0087】
(6-5)
また、上記実施形態では、ステッピングモータによりサーマルヘッドを上下させているが、ACサーボモータ、ブラシレスモータ等の他の形式のモータや、エア源を使ったシリンダー等を、サーマルヘッド71を上下させるのに使用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
40 フィルム送り機構
50 力付与機構
60 エンコーダ
70 印字ユニット
71 サーマルヘッド
73 リボン送り機構
74 ヘッド状態切換機構
741 ヘッド上下移動モータ(ステッピングモータ)
75 制御部
F フィルム
TR サーマルリボン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】