IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンデン・オートモーティブコンポーネント株式会社の特許一覧

特許6997536ソレノイド制御弁及びこれを備えた可変容量圧縮機
<>
  • 特許-ソレノイド制御弁及びこれを備えた可変容量圧縮機 図1
  • 特許-ソレノイド制御弁及びこれを備えた可変容量圧縮機 図2
  • 特許-ソレノイド制御弁及びこれを備えた可変容量圧縮機 図3
  • 特許-ソレノイド制御弁及びこれを備えた可変容量圧縮機 図4
  • 特許-ソレノイド制御弁及びこれを備えた可変容量圧縮機 図5
  • 特許-ソレノイド制御弁及びこれを備えた可変容量圧縮機 図6
  • 特許-ソレノイド制御弁及びこれを備えた可変容量圧縮機 図7
  • 特許-ソレノイド制御弁及びこれを備えた可変容量圧縮機 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ソレノイド制御弁及びこれを備えた可変容量圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/18 20060101AFI20220107BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F04B27/18 A
F16K31/06 305K
F16K31/06 305E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017093387
(22)【出願日】2017-05-09
(65)【公開番号】P2018189191
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】515098886
【氏名又は名称】サンデン・オートモーティブコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】田口 幸彦
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-25274(JP,A)
【文献】特開2001-082624(JP,A)
【文献】特開2004-257288(JP,A)
【文献】特開平09-268974(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0220825(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路の一部を構成する弁孔が形成されたバルブボディと、
前記弁孔を開閉する弁体を含む弁ユニットと、
固定鉄心、可動鉄心、コイル及びこれらを保持又は収容するソレノイドハウジングを含み、前記コイルが通電されて前記可動鉄心が前記固定鉄心に向かって移動することによって閉弁方向の付勢力を前記弁ユニットに作用させるソレノイド部と、
外部圧力に応答して開弁方向の付勢力を前記弁ユニットに作用させる感圧装置と、
を含み、
前記固定鉄心は、前記ソレノイドハウジングの端面に形成された第1嵌合穴に嵌合された嵌合部と、前記ソレノイドハウジングの前記端面から前記バルブボディに向かって突出すると共に内部空間を有する突出部とを有し、
前記突出部の先端側部位が前記バルブボディに形成された第2嵌合穴に嵌合されて前記バルブボディと前記ソレノイドハウジングとが前記固定鉄心を介して一体化されており、
前記固定鉄心の前記突出部の前記内部空間が、前記弁体を収容する弁室又は前記外部圧力が作用する感圧室を構成しており、
前記嵌合部の外径と前記突出部の前記先端側部位の外径とが等しい
ソレノイド制御弁。
【請求項2】
流体通路の一部を構成する弁孔が形成されたバルブボディと、
前記弁孔を開閉する弁体を含む弁ユニットと、
固定鉄心、可動鉄心、コイル及びこれらを保持又は収容するソレノイドハウジングを含み、前記コイルが通電されて前記可動鉄心が前記固定鉄心に向かって移動することによって閉弁方向の付勢力を前記弁ユニットに作用させるソレノイド部と、
外部圧力に応答して開弁方向の付勢力を前記弁ユニットに作用させる感圧装置と、
を含み、
前記固定鉄心は、前記ソレノイドハウジングの端面に形成された第1嵌合穴に嵌合された嵌合部と、前記ソレノイドハウジングの前記端面から前記バルブボディに向かって突出すると共に内部空間を有する突出部とを有し、
前記突出部の先端側部位が前記バルブボディに形成された第2嵌合穴に嵌合されて前記バルブボディと前記ソレノイドハウジングとが前記固定鉄心を介して一体化されており、
前記固定鉄心の前記突出部の前記内部空間が、前記弁体を収容する弁室又は前記外部圧力が作用する感圧室を構成しており、
前記内部空間は、前記突出部の先端面に開口しており、
前記突出部の前記先端側部位以外の部位には、前記内部空間と前記突出部の外側空間とを連通させる第1連通孔が形成されている、
レノイド制御弁。
【請求項3】
前記弁孔は、前記第2嵌合穴の内底面の略中央に形成され、
前記突出部の前記先端側部位は、前記先端面が前記第2嵌合穴の前記内底面に当接するように前記第2嵌合穴に嵌合されており、
前記内部空間が前記弁室を構成し、前記第2嵌合穴の前記内底面の前記弁孔の周囲が前記弁体の弁座部を構成する、
請求項に記載のソレノイド制御弁。
【請求項4】
前記バルブボディには、前記弁孔と前記バルブボディの外側空間とを連通させる第2連通孔が形成され、
前記第2連通孔、前記弁孔、前記弁室及び前記第1連通孔によって前記流体通路が形成されている、
請求項に記載のソレノイド制御弁。
【請求項5】
前記固定鉄心は、前記ソレノイドハウジングに収容された一端面側の小径部と、前記小径部よりも大径の他端面側の大径部とを有し、前記大径部の前記小径部側の部位が前記嵌合部を構成し、前記大径部の前記嵌合部以外の部位が前記突出部を構成している、請求項1~4のいずれか一つに記載のソレノイド制御弁。
【請求項6】
圧縮前の冷媒が導かれる吸入室と、前記吸入室内の冷媒を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部によって圧縮された圧縮後の冷媒が吐出される吐出室と、内部圧力に応じて前記圧縮部の状態を変化させて吐出容量を変化させる制御圧室とを含む可変容量圧縮機に用いられ、
前記流体通路が前記吐出室内の冷媒を前記制御圧室に供給する供給通路の一部を構成し、前記外部圧力が前記吸入室の圧力である、
請求項1~のいずれか一つに記載のソレノイド制御弁。
【請求項7】
圧縮前の冷媒が導かれる吸入室と、
前記吸入室内の冷媒を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部によって圧縮された圧縮後の冷媒が吐出される吐出室と、
内部圧力に応じて前記圧縮部の状態を変化させて吐出容量を変化させる制御圧室と、
前記吐出室内の冷媒を前記制御圧室に供給する供給通路と、
前記供給通路に配置された請求項に記載のソレノイド制御弁と、
を含む、可変容量圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイド制御弁に関し、特に可変容量圧縮機に好適に用いられるソレノイド制御弁及びこれを備えた可変容量圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のソレノイド制御弁の一例として、特許文献1に記載のソレノイドバルブが知られている。特許文献1に記載のソレノイドバルブ1は、弁体3bを収容する弁室3aと弁座(弁孔)3cとが形成されたバルブボディ(バルブハウジング)4と、バルブボディ4の一方の側に配置され、弁体3bに閉弁方向の付勢力を与えるソレノイド部2と、バルブボディ4の他方の側に配置され、圧力に応答して弁体3bに開弁方向の付勢力を与えるベローズ組立体10と、を備えている。ソレノイド部2は、コイル2aと、バルブロッド5及びソレノイド側ロッド5cを介して弁体3bに連結されたプランジャ(可動鉄心)2bと、センタポスト(固定鉄心)2cとを含み、コイル2aに電流が供給されることによってプランジャ2bがセンタポスト2cに引き付けられ、電流値に応じた付勢力を発生させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-82624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のソレノイドバルブ1においては、バルブボディ4のソレノイド部2側の端部に、センタポスト2cの端部が内嵌合されていると共にソレノイド部2のハウジング部材が外嵌合されて構成されている。つまり、バルブボディ4のソレノイド部2側の前記端部は、内外二重の嵌合部を有している(図1参照)。このため、バルブボディ4の寸法管理が容易ではなく、製造コストや管理コストが高くなるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、従来に比べて、製造コストや管理コストを低減することのできるソレノイド制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、ソレノイド制御弁は、流体通路の一部を構成する弁孔が形成されたバルブボディと;前記弁孔を開閉する弁体を含む弁ユニットと;固定鉄心、可動鉄心、コイル及びこれらを保持又は収容するソレノイドハウジングを含み、前記コイルが通電されて前記可動鉄心が前記固定鉄心に向かって移動することによって閉弁方向の付勢力を前記弁ユニットに作用させるソレノイド部と;外部圧力に応答して開弁方向の付勢力を前記弁ユニットに作用させる感圧装置と;を含む。前記固定鉄心は、前記ソレノイドハウジングの端面に形成された第1嵌合穴に嵌合された嵌合部と、前記ソレノイドハウジングの前記端面から前記バルブボディに向かって突出すると共に内部空間を有する突出部とを有し、前記突出部の先端側部位が前記バルブボディに形成された第2嵌合穴に嵌合されて前記バルブボディと前記ソレノイドハウジングとが前記固定鉄心を介して一体化されている。また、前記固定鉄心の前記突出部の前記内部空間は、前記弁体を収容する弁室又は前記外部圧力が作用する感圧室を構成している。
【発明の効果】
【0007】
前記ソレノイド制御弁においては、前記固定鉄心の前記嵌合部が前記ソレノイドハウジングの前記端面に形成された前記第1嵌合穴に嵌合されていると共に、前記固定鉄心の前記突出部の前記先端側部位が前記バルブボディに形成された前記第2嵌合穴に嵌合されており、これによって、前記バルブボディと前記ソレノイドハウジングとが前記固定鉄心を介して一体化されている。すなわち、前記バルブボディには前記固定鉄心の前記突出部の前記先端側部位が内嵌合されるだけである。このため、バルブボディが内外二重の嵌合部を有する従来技術に比べて、バルブボディの寸法管理が容易であり、製造コストや管理コストが低減される。また、前記固定鉄心の前記突出部の前記内部空間が前記弁室又は前記感圧室を構成するので、前記固定鉄心が前記突出部を有する場合であっても、前記ソレノイド制御弁の軸方向の長さが増大することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明が適用された可変容量圧縮機の概略構成を示す断面図である。
図2】前記可変容量圧縮機に用いられる制御弁(ソレノイド制御弁)の第1実施形態の構成を示す断面図である。
図3】前記第1実施形態の変形例を示す要部図である。
図4】前記第1実施形態の変形例を示す要部図である。
図5】前記制御弁の第2実施形態の構成を示す断面図である。
図6図5の要部拡大図である。
図7】前記制御弁の第3実施形態の構成を示す断面図である。
図8図7の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用された斜板式の可変容量圧縮機の概略構成を示す断面図である。この可変容量圧縮機は、主に車両用のエアコンシステムに適用されるクラッチレス圧縮機として構成されている。
【0010】
可変容量圧縮機100は、複数のシリンダボア101aが形成されたシリンダブロック101と、シリンダブロック101の一端側に設けられたフロントハウジング102と、シリンダブロック101の他端側にバルブプレート103を介して設けられたシリンダヘッド104と、を含む。そして、シリンダブロック101、フロントハウジング102、バルブプレート103及びシリンダヘッド104は、複数の通しボルト105によって締結されて圧縮機ハウジングを構成している。
【0011】
また、シリンダブロック101とフロントハウジング102とによってクランク室140が形成され、クランク室140内を横断するように駆動軸110が設けられている。駆動軸110は、前記圧縮機ハウジングに回転自在に支持されている。なお、図では省略しているが、フロントハウジング102とシリンダブロック101との間にはセンターガスケットが配置され、シリンダブロック101とシリンダヘッド104との間には、バルブプレート103の他にも、シリンダガスケット、吸入弁形成板、吐出弁形成板及びヘッドガスケットが配置されている。
【0012】
駆動軸110の軸方向の中間部の周囲には、斜板111が配置されている。斜板111は、駆動軸110に固定されたロータ112にリンク機構120を介して連結され、駆動軸110と共に回転する。また、斜板111は、駆動軸110の軸線Oに直交する平面に対する角度(以下「傾角」という)が変更可能に構成されている。
【0013】
リンク機構120は、ロータ112から突設された第1アーム112aと、斜板111から突設された第2アーム111aと、一端側が第1連結ピン122を介して第1アーム112aに対して回動自在に連結され、他端側が第2連結ピン123を介して第2アーム111aに対して回動自在に連結されたリンクアーム121と、を含む。
【0014】
駆動軸110が挿通される斜板111の貫通孔111bは、斜板111が最大傾角と最小傾角の範囲で傾動可能な形状に形成されている。貫通孔111bには駆動軸110と当接する最小傾角規制部が形成されている。斜板111が駆動軸110の軸線Oに直交するときの斜板111の傾角(最小傾角)を0°とした場合、貫通孔111bの前記最小傾角規制部は、斜板111の傾角がほぼ0°となると駆動軸110に当接し、斜板111のそれ以上の傾動を規制するように形成されている。また、斜板111は、その傾角が最大傾角となるとロータ112に当接してそれ以上の傾動が規制される。
【0015】
駆動軸110には、斜板111の傾角を減少させる方向に斜板111を付勢する傾角減少バネ114と、斜板111の傾角を増大させる方向に斜板111を付勢する傾角増大バネ115とが装着されている。傾角減少バネ114は、斜板111とロータ112との間に配置され、傾角増大バネ115は、斜板111と駆動軸110に固定されたバネ支持部材116との間に装着されている。
【0016】
ここで、斜板111の傾角が前記最小傾角であるとき、傾角増大バネ115の付勢力の方が傾角減少バネ114の付勢力よりも大きくなるように設定されており、駆動軸110が回転していないとき、斜板111は、傾角減少バネ114の付勢力と傾角増大バネ115の付勢力とがバランスする傾角に位置決めされる。
【0017】
駆動軸110の一端(図1における左端)は、フロントハウジング102のボス部102a内を貫通してフロントハウジング102の外側まで延在している。そして、駆動軸110の前記一端に図示省略の動力伝達装置が連結されている。駆動軸110とボス部102aとの間には軸封装置130が設けられており、軸封装置130によってクランク室140内は外部から遮断されている。
【0018】
駆動軸110とロータ112の連結体は、ラジアル方向においては軸受131、132で支持され、スラスト方向においては軸受133、スラストプレート134で支持されている。そして、駆動軸110(及びロータ112)は、外部駆動源からの動力が前記動力伝達装置に伝達されることにより、前記動力伝達装置の回転と同期して回転するように構成されている。なお、駆動軸110の他端、すなわち、スラストプレート134側の端部と、スラストプレート134との隙間は、調整ネジ135によって所定の隙間に調整されている。
【0019】
各シリンダボア101a内には、ピストン136が配置されている。ピストン136のクランク室140内に突出する突出部の内側空間には、一対のシュー137を介して、斜板111の外周部及びその近傍が収容され、これにより、斜板111は、ピストン136と連動する。そして、駆動軸110の回転に伴う斜板111の回転によってピストン136がシリンダボア101a内を往復動する。また、斜板111はピストン136のストローク量は、斜板111の傾角に応じて変化する。
【0020】
シリンダヘッド104には、ほぼ中央に吸入室141が形成されると共に、吸入室141を環状に取り囲むように吐出室142が形成されている。吸入室141は、バルブプレート103に設けられた連通孔103a及び前記吸入弁形成板(図示省略)に形成された吸入弁(図示省略)を介してシリンダボア101aに連通している。吐出室142は、前記吐出弁形成板(図示省略)に形成された吐出弁(図示省略)及びバルブプレート103に設けられた連通孔103bを介してシリンダボア101aに連通している。
【0021】
吸入室141は、吸入通路104aを介して図示省略の前記エアコンシステムの冷媒回路の低圧側に接続されている。
【0022】
シリンダブロック101の上部には、冷媒の圧力脈動による騒音・振動を低減するために、マフラ160が設けられている。マフラ160は、シリンダブロック101の上部に区画形成されたマフラ形成壁101bと、マフラ形成壁101bに図示省略のシール部材を介して締結された蓋部材106とによって形成されている。マフラ160内のマフラ空間143には、逆止弁200が配置されている。
【0023】
逆止弁200は、吐出室142とマフラ空間143とを連通する連通路144のマフラ空間143側の端部に配置されている。逆止弁200は、連通路144(上流側)とマフラ空間143(下流側)との圧力差に応答して動作する。具体的には、逆止弁200は、前記圧力差が所定値より小さい場合には連通路144を遮断し、前記圧力差が前記所定値より大きい場合には連通路144を開放するように構成されている。
【0024】
吐出室142は、連通路144、逆止弁200、マフラ空間143及び吐出ポート106aで構成される吐出通路を介して、前記エアコンシステムの前記冷媒回路の高圧側に接続されている。また、前記エアコンシステムの前記冷媒回路の高圧側から吐出室142に向かう冷媒ガスの逆流が逆止弁200によって抑制される。
【0025】
前記エアコンシステムの前記冷媒回路の低圧側の冷媒(圧縮前の冷媒)は、吸入通路104aを介して吸入室141に導かれる。吸入室141内の冷媒は、ピストン136の往復運動によってシリンダボア101a内に吸入され、圧縮されて吐出室142に吐出される。すなわち、本実施形態においては、シリンダボア101a及びピストン136によって吸入室141内の冷媒を圧縮する圧縮部が構成されている。そして、前記圧縮部で圧縮されて吐出室142に吐出された冷媒(圧縮後の冷媒)は、前記吐出通路を介して前記エアコンシステムの前記冷媒回路の高圧側へと導かれる。
【0026】
シリンダヘッド104には、さらにソレノイド制御弁(以下単に「制御弁」という)300が設けられている。制御弁300は、シリンダヘッド104に形成された弁収容室104bに配置されている。
【0027】
弁収容室104bに配置された制御弁300は、吐出室142内の冷媒(吐出冷媒)をクランク室140に供給する供給通路145の一部を構成する内部通路を有する。そして、制御弁300は、前記内部通路(すなわち、供給通路145)の開度(通路断面積)を調整し、これによって、前記吐出冷媒のクランク室140への供給量(つまり、圧力供給量)を制御するように構成されている。なお、供給通路145及び制御弁300については後述する。
【0028】
また、クランク室140は、シリンダブロック101に形成された連通路101c及び空間部101dと、バルブプレート103に形成された固定絞り103cとで構成される排出通路を介して吸入室141に連通しており、クランク室140内の冷媒は、前記排出通路を介して吸入室141へと流れるようになっている。
【0029】
したがって、制御弁300が前記吐出冷媒のクランク室140への供給量を制御することによってクランク室140の圧力を変化させる(調整する)ことができ、これによって、斜板111の傾角、つまり、ピストン136のストローク量を変化させて可変容量圧縮機100の吐出容量を変化させることができる。
【0030】
詳細には、クランク室140の圧力を変化させることにより、各ピストン136の前後の圧力差、換言すると、ピストン136を挟むシリンダボア101a内の圧縮室とクランク室140との圧力差を利用して斜板111の傾角を変化させることができ、その結果、ピストン136のストローク量が変化して可変容量圧縮機100の吐出容量が変化する。具体的には、クランク室140の圧力を低下させると、斜板111の傾角が大きくなってピストン136のストローク量が増加し、これによって、可変容量圧縮機100の吐出容量が増加するようになっている。
【0031】
換言すれば、可変容量圧縮機100において、クランク室140は、内部圧力に応じて前記圧縮部の状態(具体的にはピストン136のストローク量)を変化させて可変容量圧縮機100の吐出容量を変化させる機能を有している。したがって、本実施形態においてはクランク室140が本発明の「制御圧室」に相当する。そして、制御弁300は、主にクランク室140の圧力を調整するために用いられる。
【0032】
次に、供給通路145について説明する。図1に示されるように、制御弁300の外周面には、4つのOリング300a~300dが取り付けられている。そして、これら4つのOリング300a~300dによって、弁収容室104b内が外部空間から遮断されると共に、弁収容室104b内における制御弁300の外側空間が、第1外側空間104b1と、第2外側空間104b2と、第3外側空間104b3と、に区画されている。
【0033】
第1外側空間104b1は、シリンダヘッド104に形成された連通路104cを介して吐出室142に連通している。したがって、第1外側空間104b1には、吐出室142の圧力Pdが作用する。第2外側空間104b2は、シリンダヘッド104に形成された連通路104d及びシリンダブロック101に形成された連通路101eを介してクランク室140に連通している。したがって、第2外側空間104b2には、クランク室140の圧力Pcが作用する。第3外側空間104b3は、シリンダヘッド104に形成された連通路104eを介して吸入室141に連通している。したがって、第3外側空間104b3には、吸入室141の圧力Psが作用する。
【0034】
そして、本実施形態においては、連通路104c、第1外側空間104b1、制御弁300の前記内部通路、第2外側空間104b2、連通路104d及び連通路101eによって供給通路145が形成されている。
【0035】
次に、図2を参照して制御弁300の第1実施形態について説明する。図2は、制御弁300の第1実施形態を示す断面図である。
【0036】
図2に示されるように、制御弁300は、バルブボディ311と、キャップ部材312と、感圧装置320と、ソレノイドハウジング331と、固定鉄心332と、可動鉄心333と、付勢部材334と、収容部材335と、コイル組立体336と、弁ユニット340と、を含む。
【0037】
バルブボディ311は、略円柱状に形成されている。キャップ部材312は、有底円筒状に形成されており、バルブボディ311の一端(ソレノイドハウジング331側とは反対側の端部)に固定されている。キャップ部材312は、バルブボディ311の一端面に形成された凹部311aと協働して感圧室313を形成する。本実施形態において、バルブボディ311は、鉛フリー銅合金(例えばC69300)で形成されており、キャップ部材312は、鋼板で形成されている。また、感圧室313は、キャップ部材312の側面に形成された連通孔312aを介して、キャップ部材312の外側空間、ここでは、吸入室141の圧力Psが作用する第3外側空間104b3に連通している。つまり、感圧室313には、吸入室141の圧力Psが作用している。
【0038】
バルブボディ311の他端面(ソレノイドハウジング331側の端面)311bには、円柱状の嵌合穴314が形成されている。また、バルブボディ311には、嵌合穴314の内底部の中央部に開口する弁孔315と、弁孔315から感圧室313まで直線状に延びる第1ロッド挿通孔316と、連通孔317と、が形成されている。連通孔317は、弁孔315と、バルブボディ311の外側空間、ここでは、吐出室142の圧力Pdが作用する第1外側空間104b1とを連通させるように形成されており、連通孔317の一端は、弁孔315の内周面に開口し、連通孔317の他端は、バルブボディ311の外周面に開口している。
【0039】
感圧装置320は、感圧室313に配置されている。感圧装置320は、ベローズ組立体321を含む。ベローズ組立体321は、一端が開放され他端が封止された蛇腹状のベローズ321aと、ベローズ321aの一端を閉塞する端部部材321bと、ベローズ321a内に配置されてベローズ321aの収縮を規制するストッパ部材321cと、ベローズ321aの内部に配置されてベローズ321aを伸長させる方向に付勢する付勢部材(圧縮コイルバネ)321dとで構成されている。なお、本実施形態において、感圧装置320は、ベローズ組立体321に加えて、端部部材321bとバルブボディ311との間に配置されてベローズを収縮させる方向に付勢する付勢部材(圧縮コイルバネ)322を有している。
【0040】
ベローズ321aの内部は、真空状態となっており、ベローズ321aは、感圧室313の圧力(すなわち、吸入室141の圧力Ps)に応答して伸縮する。具体的には、ベローズ321aは、感圧室313の圧力(すなわち、吸入室141の圧力Ps)の低下に伴って伸長する。
【0041】
ソレノイドハウジング331は、固定鉄心332、可動鉄心333、付勢部材334、収容部材335及びコイル組立体336を保持又は収容する。
【0042】
ソレノイドハウジング331は、円筒状の周壁部331aと、周壁部331aの一端(バルブボディ311側の端部)に固定された端壁部331bとを含む。本実施形態において、周壁部331aは、磁性鋼板で形成され、端壁部331bは、磁性快削鋼で形成されている。
【0043】
固定鉄心332は、段付き円柱状に形成され、一端面側の小径部332aと、小径部332aよりも大径の他端面側の大径部332bとを有する。小径部332aには、第2ロッド挿通孔332cが軸方向に貫通形成されている。大径部332bは、円筒状に形成されている。本実施形態において、固定鉄心332は、磁性快削鋼で形成されている。
【0044】
固定鉄心332は、大径部332bの小径部332a側の所定部位がソレノイドハウジング331の端壁部331bの端面(すなわち、バルブボディ311側の端面)331dに形成された円柱状の嵌合穴331eに嵌合されて固定されており、これによって、ソレノイドハウジング331に保持されている。ここで、本実施形態において、固定鉄心332の大径部332bの小径部332a側の前記所定部位は、嵌合穴331eに圧入嵌合されている。しかし、これに限られるものではなく、固定鉄心332は、大径部332bの前記所定部位が嵌合穴331eに嵌合されて固定されていればよい。
【0045】
固定鉄心332の小径部332aは、ソレノイドハウジング331に収容されている。また、固定鉄心332の大径部332bの前記所定部位以外の部位は、ソレノイドハウジング331のバルブボディ311側の端面331dからバルブボディ311に向かって突出している。つまり、固定鉄心332の大径部332bは、ソレノイドハウジング331のバルブボディ311側の端面331dに形成された嵌合穴331eに嵌合された嵌合部332b1と、ソレノイドハウジング331のバルブボディ311側の端面331dからバルブボディ311に向かって突出する突出部332b2と、を有している。ここで、上述のように、大径部332bは、円筒状に形成されている。このため、固定鉄心332の大径部332bの突出部332b2は、その先端面に開口すると共に小径部332aに形成された第2ロッド挿通孔332cよりも大径の内部空間を有している。
【0046】
固定鉄心332の大径部332bの突出部332b2は、その先端側部位332b3がバルブボディ311の他端面311bに形成された嵌合穴314に嵌合されて固定されている。具体的には、固定鉄心332の大径部332bの突出部332b2の先端側部位332b3は、前記先端面が嵌合穴314の前記内底面に当接するように嵌合穴314に圧入嵌合されている。これにより、バルブボディ311とソレノイドハウジング331とが固定鉄心332の大径部332b(嵌合部332b1+突出部332b2)を介して一体化されている。
【0047】
そして、本実施形態において、突出部332b2の前記内部空間は、弁室337を構成している。突出部332b2の先端側部位332b3以外の部位には、前記内部空間と、突出部332b2の外側空間、ここでは、クランク室140の圧力Pcが作用する第2外側空間104b2とを連通させる連通孔332b4が形成されている。つまり、弁室337は、連通孔332b4を介して第2外側空間104b2に連通している。また、弁室337は、バルブボディ311に形成された弁孔315及び連通孔317を介してバルブボディ311の外側空間である第1外側空間104b1にも連通している。したがって、本実施形態においては、連通孔317、弁孔315、弁室337及び連通孔332b4によって、供給通路145の一部を構成する制御弁300の前記内部通路が形成される。
【0048】
ここで、上述のように、本実施形態において、固定鉄心332の突出部332b2の先端側部位332b3は、バルブボディ311の他端面311bに形成された嵌合穴314に圧入嵌合されている。しかし、これに限られるものではなく、固定鉄心332の突出部332b2の先端側部位332b3は、バルブボディ311の他端面311bに形成された嵌合穴314に嵌合されて固定されていればよい。例えば、固定鉄心332の突出部332b2の先端側部位332b3が嵌合穴314にネジ嵌合されてもよいし、突出部332b2の先端側部位332b3が嵌合穴314に嵌合された後にカシメなどによって固定されてもよい。
【0049】
可動鉄心333は、固定鉄心332の前記一端面との間に所定の隙間を有して配置されている。本実施形態において、可動鉄心333は、固定鉄心332と同様、磁性快削鋼で形成されている。
【0050】
付勢部材334は、固定鉄心332と可動鉄心333との間に配置され、可動鉄心333を固定鉄心332の前記一端面から離れる方向に付勢する。本実施形態においては、圧縮コイルバネが付勢部材334として用いられている。
【0051】
収容部材335は、非磁性材料で有底円筒状に形成され、その開口端側がソレノイドハウジング331の端壁部331bに保持されている。収容部材335は、その内部に固定鉄心332の小径部332a、可動鉄心333及び付勢部材334を収容する。可動鉄心333は、収容部材335の内周面に沿って摺動自在に設けられ、収容部材335内において、固定鉄心332の前記一端面に対して離接方向に移動可能である。
【0052】
コイル組立体336は、ソレノイドコイル(以下単に「コイル」という)336aと、閉塞部材336bと、を含む。コイル336aは、樹脂で覆われており、収容部材335の周囲に配置されている。本実施形態において、コイル336aは、ソレノイドハウジング331の周壁部331aの内側に形成された収容空間に収容されている。閉塞部材336bは、ソレノイドハウジング331の周壁部331aの他端を閉塞する部材であり、例えば磁性快削鋼で形成されている。閉塞部材336bは、可動鉄心333の径方向の周囲に配置され、樹脂によってコイル336aと一体化されている。なお、図2中の336cは、コイル組立体336の樹脂部である。
【0053】
そして、コイル336aが通電されると、ソレノイドハウジング331、固定鉄心332(より具体的には、固定鉄心332の突出部332b2以外の部位)、可動鉄心333及びコイル組立体336の閉塞部材336bは、磁気回路を形成し、付勢部材334の付勢力に抗して可動鉄心333を固定鉄心332の前記一端面に向かって移動させる電磁力(磁気吸引力)を発生する。
【0054】
弁ユニット340は、弁体341と、第1ロッド342と、第2ロッド343と、を含む。本実施形態においては、弁体341、第1ロッド342及び第2ロッド343が一体に形成されて弁ユニット340を構成している。
【0055】
弁体341は、弁室337に収容されて嵌合穴314の前記内底部に開口する弁孔315を開閉する。具体的には、弁体341は、その弁孔315側の端部の周縁部が嵌合穴314の前記内底面の弁孔315の周囲の弁座部338に離接することによって弁孔315を開閉する。
【0056】
第1ロッド342は、バルブボディ311に形成された第1ロッド挿通孔316に摺動自在に挿通されている。第1ロッド342の一端は、弁孔315よりも小径に形成されて弁体341の弁孔315側の前記端部の中央部に連結されており、第1ロッド342の他端は、感圧装置320の端部部材321bに離間可能に連結されている。
【0057】
第2ロッド343は、固定鉄心332の小径部332aに形成された第2ロッド挿通孔332cに隙間を有して挿通されている。第2ロッド343の一端は、弁体341の弁孔315側とは反対側の端部に連結され、第2ロッド343の他端は、可動鉄心333に連結されている。
【0058】
ここで、上述のように、感圧装置320(ベローズ組立体321)において、ベローズ321aは、感圧室313の圧力、すなわち、吸入室141の圧力Psに応答して伸縮する。そして、吸入室141の圧力Psの低下に伴ってベローズ321aが所定長さ以上に伸長すると、端部部材321bが弁ユニット340の第1ロッド342の前記他端に連結されて、弁ユニット340は、弁体341が弁孔315を開く方向に付勢される。つまり、感圧装置320は、外部圧力である吸入室141の圧力Psに応答して開弁方向の付勢力を弁ユニット340に作用させる。
【0059】
また、上述のように、コイル336aが通電されると、ソレノイドハウジング331、固定鉄心332(の突出部332b2以外の部位)、可動鉄心333及びコイル組立体336の閉塞部材336bは、磁気回路を形成し、付勢部材334の付勢力に抗して可動鉄心333を固定鉄心332の前記一端面に向かって移動させる電磁力(磁気吸引力)を発生する。そして、発生した電磁力によって可動鉄心333が固定鉄心332に向かって移動すると、弁ユニット340は、弁体341が弁孔315を閉じる方向に付勢される。したがって、本実施形態においては、ソレノイドハウジング331、固定鉄心332(の突出部332b2以外の部位)、可動鉄心333、コイル336a及び閉塞部材336bによって、本発明の「ソレノイド部」が構成される。
【0060】
次に、制御弁300の組立手順の一例を説明する。
まず、固定鉄心332の突出部332b2の先端側部位332b3がバルブボディ311の他端面311bに形成された嵌合穴314に圧入嵌合される。これにより、バルブボディ311と固定鉄心332とが一体化されると共に、突出部332b2の前記内部空間によって弁室337が形成される。
【0061】
次いで、弁ユニット340と可動鉄心333との一体構成物が第1ロッド342側から固定鉄心332の第2ロッド挿通孔332cに挿入され、同時に、付勢部材334が固定鉄心332と可動鉄心333との間に配置される。これにより、バルブボディ311と固定鉄心332との前記一体構成物中に弁ユニット340が配置される。具体的には、第1ロッド342が第1ロッド挿通孔316に配置され、弁体341が弁室377内に配置され、第2ロッド343が第2ロッド挿通孔332cに配置される。
【0062】
次いで、バルブボディ311の前記一端面に形成された凹部311a内に感圧装置320が配置され、バルブボディ311の前記一端にキャップ部材312が圧入嵌合される。これにより、感圧室313が形成されると共に感圧室313内に感圧装置320が配置される。
【0063】
次いで、収容部材335が可動鉄心333、付勢部材334及び固定鉄心332(の小径部332a)の順に収容するように、ソレノイドハウジング331と収容部材335との一体構成物がバルブボディ311に対して配置される。
【0064】
次いで、固定鉄心332の大径部332bの小径部332a側の前記所定部位(嵌合部332b1)が、ソレノイドハウジング331の端壁部331bの端面331dに形成された嵌合穴331eに圧入嵌合される。これにより、バルブボディ311とソレノイドハウジング331とが固定鉄心332の大径部332bを介して一体化される。
【0065】
次いで、コイル336aがソレノイドハウジング331の周壁部331aの内側の前記収容空間に収容されるようにコイル組立体336が配置され、閉塞部材336bがカシメなどによってソレノイドハウジング331の周壁部331aの前記他端に固定される。
【0066】
そして、4つのOリング300a~300dが所定の部位に取り付けられて制御弁300が完成する。なお、4つのOリング300a~300dは、制御弁300が可変容量圧縮機100に装着される直前、すなわち、弁収容室104bに配置される直前に所定の部位に取り付けられてもよい。
【0067】
ここで、好ましくは、ソレノイドハウジング331の表面(嵌合穴331eの内周面を含む)には、防錆用被膜として、亜鉛めっき等のめっきによる被膜(めっき被膜)や黒染め等の化学処理による被膜(化学処理被膜)が形成される。このようにすると、固定鉄心332の大径部332bの小径部332a側の前記所定部位(嵌合部332b1)がソレノイドハウジング331の端壁部331bの端面331dに形成された嵌合穴331eに圧入嵌合される際に、すなわち、同種の金属材料で形成された部材同士が圧入嵌合される際に、両者の間に前記防錆用被膜が介在するため、圧入荷重の安定化が図れる。なお、嵌合穴331eの前記内周面に前記防錆用被膜が形成されることに代えて又は加えて、固定鉄心332の材料の硬度とソレノイドハウジング331の端壁部331bの材料の硬度とを異ならせたり、固定鉄心332の前記所定部位の表面形状(表面粗さ等)と嵌合穴331eの前記内周面の表面形状(表面粗さ等)とを異ならせたりしてもよい。このようにしても、前記圧入荷重の安定化が図れる。
【0068】
また、本実施形態では、磁性快削鋼で形成された固定鉄心332の突出部332b2(より具体的には、突出部332b2の先端側部位332b3以外の部位)が外部に露出している。そのため、主に制御弁300が可変容量圧縮機100に装着されるまでの間の固定鉄心332の露出部の防錆を目的として、固定鉄心332の突出部332b2には防錆処理が施されている。前記防錆処理は、固定鉄心332の突出部332b2に防錆油を塗布することや防錆用被膜を形成することなどを含む。なお、このような固定鉄心332の突出部332b2への防錆処理も前記圧入荷重の安定化に寄与する。
【0069】
次に、可変容量圧縮機100における制御弁300の動作を簡単に説明する。
前記エアコンシステムの作動時、つまり可変容量圧縮機100の作動状態では、空調設定(車室設定温度)や外部環境などに基づき、図示省略の制御装置によってコイル336aの通電量が設定される。すると、制御弁300は、吸入室141の圧力Psが前記通電量に対応する所定値になるように、弁ユニット340(の弁体341)によって弁孔315(すなわち、供給通路145)の開度を調整して可変容量圧縮機100の吐出容量を制御する。具体的には、制御弁300は、吸入室141の圧力Psの圧力に応答して弁孔315(すなわち、供給通路145)の開度を自律的に調整するように動作する。
【0070】
また、前記エアコンシステムの作動が停止される、つまり可変容量圧縮機100が作動状態から非作動状態に切り替わると、前記制御装置によってコイル336aへの通電がOFFされる。すると、付勢部材334に付勢力によって可動鉄心333が固定鉄心332の前記一端面から離れる方向に移動し、可動鉄心333の移動に伴って弁ユニット340(の弁体341)が弁孔315を開く方向に移動し、弁孔315(すなわち、供給通路145)が最大に開かれる。これにより、前記吐出冷媒がクランク室140に供給されてクランク室140の圧力が上昇し、可変容量圧縮機100の吐出容量が最小となる。
【0071】
本実施形態に係る制御弁300において、バルブボディ311とソレノイドハウジング331とは、固定鉄心332の大径部332bを介して一体化されている。具体的には、固定鉄心332の大径部332bの嵌合部332b1がソレノイドハウジング331の端壁部331bの端面331dに形成された嵌合穴331eに圧入嵌合されると共に、固定鉄心332の大径部332bの突出部332b2の先端側部位332b3がバルブボディ311の他端面311bに形成された嵌合穴314に圧入嵌合されており、これによって、バルブボディ311とソレノイドハウジング331とが一体化されている。つまり、バルブボディ311の他端面311bには固定鉄心332の突出部332b2の先端側部位332b3が内嵌合されるだけであり、バルブボディ311の他端面311bに外嵌合される部材が存在しない。したがって、バルブボディが内外二重の嵌合部を有する従来技術に比べて、バルブボディ311の寸法管理が容易であり、製造コストや管理コストが低減される。
【0072】
また、固定鉄心332の突出部332b2は、弁室377を構成する前記内部空間を有している。このため、固定鉄心332が突出部332b2を有することによって制御弁300の軸方向の長さが増大してしまうことが抑制される。
【0073】
また、本実施形態に係る制御弁300において、固定鉄心332の大径部332bは、円筒状に形成されており、ソレノイドハウジング331の端面331dに形成された嵌合穴331eに嵌合される嵌合部332b1の外径と、バルブボディ311に形成された嵌合穴314に嵌合される突出部332b2の先端側部位332b3の外径とが等しくなっている。このため、バルブボディ311とソレノイドハウジング331との軸心のずれ等が抑制され、例えば、制御弁300の弁収容室104bへの安定した設置が可能になる。
【0074】
また、本実施形態に係る制御弁300において、固定鉄心332の突出部332b2の前記先端面は、嵌合穴314の前記内底面、すなわち、弁体341が離接する弁座部338と同一面に当接している。すなわち、弁座部338から固定鉄心332の前記一端面までの距離は、固定鉄心332における前記先端面(他端面)から前記一端面までの距離と同じである。このため、固定鉄心332の前記一端面と可動鉄心333との隙間のバラツキ(公差積み上げ量)が低減し、その結果、弁ユニット340に作用する前記閉弁方向の付勢力のバラツキが抑制される。
【0075】
また、一般的なソレノイド制御弁において、バルブボディの材料は、固定鉄心の材料に比べて材料単価が高い場合や加工性が劣る場合が多い。この点、本実施形態に係る制御弁300においては、固定鉄心332が突出部332b2を有することによって、従来、主にバルブボディが有していた構成(例えば、弁室)を固定鉄心332(の突出部332b2)側に持たせることが可能である。このため、従来に比べて、バルブボディ311の長さが短縮されると共にその加工量も低減され、コストの低減が図れる。
【0076】
さらに、本実施形態に係る制御弁300においては、コイル336aが通電された際、固定鉄心332の大径部332bの外周面がソレノイドハウジング331の端壁部331bへの磁気受け渡し面を構成するので、従来に比べて、磁気の受け渡しが良好となり、前記磁気回路が安定して形成され得る。
【0077】
ここで、固定鉄心332の大径部332bの形状は、図2に示された形状に限られるものではない。例えば図3に示されるように、嵌合穴331eに嵌合される嵌合部332b1と嵌合穴314に嵌合される突出部332b2の先端側部位332b3との間に凹部332b5が形成され、凹部332b5に連通孔332b4が形成されてもよい。このようにすると、嵌合部332b1の外周面と先端側部位332b3の外周面とを精度よく形成(加工)すればよく、大径部332bの外周面全体を精度よく形成する必要がない。このため、加工コストの低減が図れる。なお、嵌合部332b1の外径と突出部332b2の先端側部位332b3の外径とは等しいことが好ましいが、嵌合部332b1の外径と突出部332b2の先端側部位332b3の外径とが異なってもよい。
【0078】
また、固定鉄心332の突出部332b2の前記先端面は、必ずしも弁座部338と同一面に当接する必要はなく、固定鉄心332の突出部332b2の前記先端面が弁座部338とは異なる面に当接してもよい。
【0079】
また、感圧室313の大部分がキャップ部材312によって形成されるようにしてもよい。この場合においては、例えば、図4に示されるように、キャップ部材312がバルブボディ311の前記一端面に形成された嵌合穴311cに嵌合(内嵌合)され、嵌合穴311cの径方向外側にOリング300dが装着されるように構成される。このようにすると、バルブボディ311の長さがさらに短縮されてコストの低減が図れる。
【0080】
次に、図5及び図5の要部拡大図である図6を参照して制御弁300の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は対応する要素には同一符号を付してその説明は省略し、主に第1実施形態と相違する構成について説明する。
【0081】
図5図6に示されるように、第2実施形態において、嵌合穴314は環状に形成されており、固定鉄心332の突出部332b2の前記内部空間は、弁室ではなく、第1感圧室351を構成している。また、第1感圧室351は、連通孔332b4を介して突出部332b2の外側空間、ここでは、吸入室141の圧力Psが作用する空間(第1実施形態における第3外側空間104b3に相当する空間)に連通されている。
【0082】
また、第2実施形態において、バルブボディ311の一端側には、キャップ部材312で閉塞されると共に感圧装置としてのベローズ組立体321が配置される第2感圧室352が形成されている。そして、第2感圧室352は、バルブボディ311の側面に形成された連通孔311dを介してクランク室140の圧力Pcが作用する空間(第1実施形態における第2外側空間104b2に相当する空間)に連通している。
【0083】
また、バルブボディ311には、弁孔353を介して第2感圧室352に連通する弁室354と、弁孔353と同一軸線上に配置されて一端が弁室354に開口すると共に他端が他端面311bの中央部に開口する支持孔355と、弁室354とバルブボディ311の外側空間、ここでは、吐出室142の圧力Pdが作用する空間(第1実施形態における第1外側空間104b1に相当する空間)とを連通させる連通孔356と、が形成されている。
【0084】
第2実施形態において、弁ユニット360は、弁体361と、連結部材362と、ソレノイドロッド363と、を含む。弁体361は、弁室354内に配置されて弁孔353を開閉する弁部361aと、支持孔355に摺動自在に支持された軸部361bと、第1感圧室351内に配置されて第1感圧室351の圧力(すなわち、吸入室141の圧力Ps)を受ける受圧部361cとを有する。また、弁体361には、弁体361を軸方向に貫通する内部通路361dが形成されている。連結部材362は、一端がベローズ組立体321の端部部材321bに離間可能に連結され、他端が弁孔353よりも小径に形成されて弁体361の弁孔353側の端部に連結されている。連結部材362には、連結部材362を軸方向に貫通すると共に弁体341の内部通路361dに連通する内部通路362aが形成されている。ソレノイドロッド363は、第1実施形態における第2ロッド343と同様、一端が弁体361の弁孔353側とは反対側の端部に連結され、他端が可動鉄心333に連結されている。
【0085】
第2実施形態においては、連通孔356、弁室354、弁孔353、第2感圧室352及び連通孔311dによって、供給通路145の一部を構成する制御弁300の前記内部通路に相当する。
【0086】
また、第2実施形態において、ベローズ組立体321の伸縮方向の受圧面積と、弁体361の弁孔353側の受圧面積とは、ほぼ同等に設定されており、第2実施形態においても、制御弁300は、可変容量圧縮機100の作動状態では、吸入室141の圧力Psの圧力に応答して弁孔353(すなわち、供給通路145)の開度を自律的に調整するように動作する。
【0087】
第2実施形態においても、バルブボディ311とソレノイドハウジング331とが固定鉄心332の大径部332bを介して一体化されており、第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、製造コストや管理コストが低減され、制御弁300の軸方向の長さが増大してしまうことが抑制され、制御弁300の弁収容室104bへの安定した設置が可能になる。
【0088】
次に、図7及び図7の要部拡大図である図8を参照して制御弁300の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は対応する要素には同一符号を付してその説明は省略し、主に第1実施形態と相違する構成について説明する。
【0089】
図7図8に示されるように、第3実施形態において、バルブボディ311に形成された嵌合穴314は、段付き円柱状の穴であり、大径穴部314aと小径穴部314bとを有している。また、バルブボディ311には、小径穴部314bの内底部の中央部に開口する第1弁孔315と、第1弁孔315から感圧室313まで直線状に延びる第1ロッド挿通孔316と、第1弁孔315と吐出室142の圧力Pdが作用する空間(第1実施形態における第1外側空間104b1に相当する空間)とを連通させる連通孔317と、第1ロッド挿通孔316に平行に形成され、一端が小径穴部314bの前記内底部の周縁部に開口すると共に他端が感圧室313に開口する連通孔371と、が形成されている。なお、第3実施形態において、感圧室313は、第2実施形態における第2感圧室352と同様に、キャップ部材312の側面に形成された連通孔312aを介してクランク室140の圧力Pcが作用する空間(第1実施形態における第2外側空間104b2に相当する空間)に連通している。
【0090】
固定鉄心332の突出部332b2には、その先端面に開口する弁収容穴(内部空間)372と、弁収容穴372の内底部の中央部に開口する第2弁孔373と、第2弁孔373と吸入室141の圧力Psが作用する空間(第1実施形態における第3外側空間104b3に相当する空間)とを連通させる連通孔374と、が形成されている。
【0091】
そして、固定鉄心332の突出部332b2の先端側部位332b3が大径穴部314aに嵌合されることによって、小径穴部314bと弁収容穴372とで構成される弁室375が形成される。すなわち、固定鉄心332の突出部332b2に形成された弁収容穴372(突出部332b2の内部空間)が弁室375を構成している。なお、弁室375は、連通孔371を介して感圧室313に連通している。
【0092】
弁体341は、弁室375に配置されている。より具体的には、弁体341は、弁室375内において弁収容穴372に収容されている。本実施形態において、弁体341は、第1弁孔315を開閉する第1弁部341aと、第2弁孔373を開閉する第2弁部341bと、第1弁部341aと第2弁部341bとの間に設けられた区画部341cと、を有している。区画部341cは、その外周面が弁収容穴372の内周面に微小隙間を介して対面し、弁室375内を第1弁孔315側の第1弁室375aと第2弁孔373側の第2弁室375bとに区画する。なお、第1実施形態と同様、弁体341、第1ロッド342及び第2ロッド343が一体に形成されて弁ユニット340を構成している。
【0093】
第3実施形態においては、連通孔317、第1弁孔315、弁室375(第1弁室375a)、連通孔371、感圧室313及び連通孔312cによって、供給通路145の一部を構成する制御弁300の前記内部通路が形成される。
【0094】
ここで、第3実施形態における弁体341は、第1弁部341aが第1弁孔315を閉じたときに第2弁部341bが第2弁孔373を最大に開放し、第2弁部341bが第2弁孔373を閉じたときに第1弁部341aが第1弁孔315を最大に開放するように構成されている。
【0095】
したがって、第3実施形態においては、弁体341の第1弁部341aが第1弁孔315を閉じたとき、クランク室140内の冷媒を吸入室141へと流す(排出する)通路として、連通路101c、空間部101d及び固定絞り103cとで構成される前記排出通路に加えて、制御弁300内を経由する第2の排出通路が形成される。具体的には、連通路104d、連通路101e、第2外側空間104b2に相当する前記空間、連通孔312a、感圧室313、連通孔371、第1弁室375a、弁体341の区画部341cの前記外周面と弁収容穴372の前記内周面との間の前記微小隙間、第2弁室375b、第2弁孔373、連通孔374、第3外側空間104b3に相当する前記空間及び連通路104eによって、前記第2の排出通路が形成される
【0096】
また、第1弁部341aが第1弁孔315の開度を調整しているとき、第2弁部341bは第2弁孔373を開いている。このため、第1弁室375aから区画部341cと弁収容穴372の内周面との間の前記微小隙間を介して第2弁室375bへと冷媒が流出することになる。但し、第1弁部341aが第1弁孔315を最大に開放したときには、第2弁部341bが第2弁孔373を閉じるので、前記微小隙間を介する第1弁室375aから第2弁室375bへの冷媒の流出はなくなる。
【0097】
なお、第3実施形態において、弁体341は、第2弁孔373側の端面に吸入室141の圧力Psを受け、第1弁孔315側の面にクランク室140の圧力Pcを受けることになる。但し、区画部341cの外径で規定される弁体341のクランク室140の圧力Pcの受圧面積は、ベローズ組立体321の伸縮方向の受圧面積とほぼ同等に設定されている。このため、弁ユニット340の開閉方向に作用するクランク室140の圧力Pcはほとんど相殺される。また、第1弁部341aは、開弁方向に吐出室142の圧力Pdを受け、第1ロッド342は、閉弁方向に吐出室142の圧力Pdを受ける。このため、弁ユニット340の開閉方向に作用する吐出室142の圧力Pdもほとんど相殺される。したがって、第3実施形態においても、制御弁300は、可変容量圧縮機100の作動状態では、吸入室141の圧力Psの圧力に応答して第1弁孔315(すなわち、供給通路145)の開度を自律的に調整するように動作する。
【0098】
第3実施形態においても、バルブボディ311とソレノイドハウジング331とが固定鉄心332の大径部332bを介して一体化されており、第1、2実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、製造コストや管理コストが低減され、制御弁300の軸方向の長さが増大してしまうことが抑制され、制御弁300の弁収容室104bへの安定した設置が可能になる。
【0099】
なお、本発明は、上述の各実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0100】
100…可変容量圧縮機、101a…シリンダボア、111…斜板、136…ピストン、140…クランク室(制御圧室)、141…吸入室、142…吐出室、145…供給通路、300…制御弁、311…バルブボディ、311d…連通孔、312…キャップ部材、312a…連通孔、313…感圧室、314…嵌合穴(第2嵌合穴)、315…弁孔、316…第1ロッド挿通孔、317…連通孔(第1連通孔)、320…感圧装置、321…ベローズ組立体、331…ソレノイドハウジング、331d…ソレノイドハウジングのバルブボディ側の端面、331e…嵌合穴(第1嵌合穴)、332…固定鉄心、332a…小径部、332b…大径部、332b1…嵌合部、332b2…突出部、332b3…突出部の先端側部位、332b4…連通孔(第2連通孔)、332c…第2ロッド挿通孔、336…コイル組立体、336a…コイル、337…弁室、338…弁座部、341…弁体、351…第1感圧室、352…第2感圧室、353…弁孔、354…弁室、361…弁体、374…連通孔、375…弁室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8