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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】電力機器用減震装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/06 20060101AFI20220107BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01F27/06
F16F15/08 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017097422
(22)【出願日】2017-05-16
(65)【公開番号】P2018195669
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000224994
【氏名又は名称】特許機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 純司
(72)【発明者】
【氏名】大原 宏行
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-129709(JP,A)
【文献】特開2016-001656(JP,A)
【文献】特開2013-211510(JP,A)
【文献】特開2002-295052(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0114632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/06
H01F 30/10
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形立体枠状のキャビネットフレームに周壁と天井壁と前面扉を備えてキャビネットが構成され、該キャビネットの内部に矩形立体枠状に組まれた耐震フレームが設置され、該耐震フレームの内側に底部を防振架台に支持された電力機器が設置されるとともに、
前記電力機器上部と前記耐震フレームとの間に横向きに、かつ、弾性部材を介し架設されて前記電力機器上部を拘束支持する複数のアーム部材が設けられ、
前記耐震フレームの上部コーナー部と該耐震フレームの上部コーナー部に隣接する前記キャビネットフレームとの間に変位抑制ブロックが介挿されたことを特徴とする電力機器用減震装置。
【請求項2】
前記変位抑制ブロックが、前記耐震フレームと前記キャビネットフレームとの間に介挿される基板と、該基板の少なくとも3つの辺からそれぞれ立設された側板と、前記基板をその厚さ方向に貫通して該基板の厚さ方向にスライド移動自在に設けられたボルト型の支持軸部材と、該支持軸部材に螺合されて前記基板に対する前記支持軸部材の挿通位置を調節する複数の調整ナットと、前記支持軸部材の一端側に取り付けられて前記基板に対向する前記キャビネットフレームの側部に押し付けられるフット部材とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力機器用減震装置。
【請求項3】
前記耐震フレームの上部コーナー部にそれぞれ前記変位抑制ブロックが取り付けられ、前記各変位抑制ブロックが各フット部材をそれらに隣接する前記キャビネットフレームに押し当て、前記各支持軸部材の他端側の調整ナットを前記キャビネットの内側に向けて配置されたことを特徴とする請求項2記載の電力機器用減震装置。
【請求項4】
前記キャビネットフレームが鋼材製の4本の支柱とこれら4本の支柱の上端部を連結した上部フレーム材と前記4本の支柱の下端部を連結した下部フレーム材を備えて矩形立体枠状に組まれ、
前記耐震フレームが、鋼材製の4本の支柱部材とこれら4本の支柱部材の上端部を連結した上部フレーム部材と前記4本の支柱部材の下端部を連結した下部フレーム部材を備えて矩形立体枠状に組まれ、
前記キャビネットフレームの支柱の内側の近接した位置に前記耐震フレームの支柱部材が配置され、前記支柱部材の上端部に前記変位抑制ブロックが取り付けられたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電力機器用減震装置。
【請求項5】
前記変位抑制ブロックが前記支柱部材の上端部に厚さ調整用ライナーを介し取り付けられたことを特徴とする請求項4に記載の電力機器用減震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器などの電力機器を地震動から保護する減震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器はトランスや変成器とも称され、電力会社から供給された6600V等の高電圧に対し電磁誘導コイルを利用して100Vや200Vに降圧するための電力機器であり、ビルや工場等に数多く設置されている。
従来、前記変圧器から発生する振動の伝搬を防止するため、防振ゴム等の防振材を用いて変圧器を弾性支持することがなされている。(特許文献1、2等参照)
例えば、図13(a)に示すように架台100上に変圧器101を設置し、架台100に組み込まれた防振ゴムあるいはスプリングダンパーなどの防振材102により変圧器101を弾性支持し、架台100を床103に設置している。この支持構造により変圧器101は床103上に弾性支持され、変圧器101の振動が防振材102で吸収される結果、周囲に変圧器101の振動騒音が伝達されないようになっている。
【0003】
この種の一般的な防振機能を備えた架台100は、変圧器101を設置するための上部架台100aと、床103に設置するための下部架台100bと、両架台間に介装された防振材102を備えており、変圧器101の稼動により発生する振動を防振材102で吸収することができる。
しかし、大きな地震などが発生した場合、変圧器101が想定以上の振幅で揺れるおそれがある。例えば、図13(b)に示すようにキャビネット105の内部に収容されている変圧器101が想定以上の振幅で横揺れした場合、キャビネット105の側壁に変圧器101の上部が激突してキャビネット105に損傷を与えるか、変圧器101の配線などに問題を発生させるおそれがある。
そこで、本願出願人は先に以下の特許文献3、4において変圧器の上部を水平方向に延在するボルトアームによって支持し、該ボルトアームを弾性材によって支持した構成の変圧器用減震装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-8122号公報
【文献】特開2005-251842号公報
【文献】特開2013-211510号公報
【文献】特開2016-001656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先の特許文献3、4に記載した減震装置は、鋼材で組み付けた矩形枠状の耐震フレームの内側に変圧器を収容し、耐震フレームの内側に弾性材を介し複数のボルトアームを設け、複数のボルトアームで変圧器上部を弾性支持した構造となっている。
先の特許文献3、4に記載した減震装置によって変圧器上部の想定外の横揺れを抑えることができ、地震の振動による変圧器上部の断線やショートなどを防止できる減震装置を提供することができた。
【0006】
しかし、本願発明者らの更なる研究の結果、東日本大震災などの場合のように揺れが激しく、強い振動が作用した場合、変圧器上部をボルトアームで拘束していたとしても、鋼材性の耐震フレーム上部がキャビネットの内部で大きく横揺れする結果、耐震フレームの上部がキャビネットに衝突する可能性があることがわかった。そして、本願発明者らが行った加振試験の結果、大きな横揺れを受けて耐震フレームの上部がキャビネットに衝突した場合、状況によってはキャビネットの扉を施錠していたとしてもキャビネットの扉が衝撃により開いてしまう問題を生じるおそれがあり、また、キャビネット底部の一部が浮き上がるように変形するなどの問題を生じることが分かった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、耐震フレームで囲んだ電力機器をキャビネットに収容した構造において、大きな地震による横揺れが作用しても耐震フレームがキャビネットの内面に激しく衝突することがなく、キャビネットの損傷や変形および電力機器の損傷を防止できる電力機器用減震装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の電力機器用減震装置は、矩形立体枠状のキャビネットフレームに周壁と天井壁と前面扉を備えてキャビネットが構成され、該キャビネットの内部に矩形立体枠状に組まれた耐震フレームが設置され、該耐震フレームの内側に底部を防振架台に支持された変圧器が設置されるとともに、前記変圧器上部と前記耐震フレームとの間に横向きに、かつ、弾性部材を介し架設されて前記変圧器上部を拘束支持する複数のアーム部材が設けられ、前記耐震フレームの上部コーナー部と該耐震フレームの上部コーナー部に隣接する前記キャビネットフレームとの間に変位抑制ブロックが介挿されたことを特徴とする。
【0009】
防振架台に支持された変圧器は更にその上部を複数のアーム部材により弾性支持されて揺れ止めされる。このため、変圧器の振動が外部に伝わることを抑制できる。
地震などにより大きな揺れが加わると、変圧器を複数のビームを介し弾性支持している耐震フレームがキャビネットフレームの内部で横揺れし、耐震フレームの上部が大きく横揺れしようとする。しかし、耐震フレームの上部コーナー部に設置されている変位抑制ブロックが耐震フレームの上部とキャビネットフレームの間を埋めているので、耐震フレームの上部は変位抑制ブロックを介しキャビネットフレームに当たって揺れ止めされる結果、耐震フレームの上部がキャビネットフレームの内側に激しく衝突しない。
【0010】
このため、地震などにより大きな揺れが変圧器を収容したキャビネットに作用したとしても、耐震フレームがキャビネットフレームに大きな衝撃を付加することがないので、大きな地震の際でもキャビネットの扉が不意に開いてしまうことが無く、キャビネットの一部が変形や損傷することもない。
地震などの揺れにより耐震フレームの上部が最も大きく横揺れしようとするが、耐震フレームの上部とキャビネットフレームの間を変位抑制ブロックが埋めているので、耐震フレームの激しい揺れを効率良く抑制することができ、キャビネットフレームに対する耐震フレームの衝突現象を抑制できる。
【0011】
本発明の電力機器用減震装置において、前記変位抑制ブロックが、前記耐震フレームと前記キャビネットフレームとの間に介挿される基板と、該基板の少なくとも3つの辺からそれぞれ立設された側板と、前記基板をその厚さ方向に貫通して該基板の厚さ方向にスライド移動自在に設けられたボルト型の支持軸部材と、該支持軸部材に螺合されて前記基板に対する前記支持軸部材の挿通位置を調節する複数の調整ナットと、前記支持軸部材の一端側に取り付けられて前記基板に対向する前記キャビネットフレームの側部に押し付けられるフット部材を備えたことを特徴とする構成を採用できる。
【0012】
変位抑制ブロックは基板の周囲に少なくとも3つの側板を有するブロック状に構成され、耐震フレームとキャビネットフレームの間に介挿される。このため、側板のいずれかを耐震フレームに固定して耐震フレームとキャビネットフレームとの間に変位抑制ブロックを介挿した場合、耐震フレームとキャビネットフレームの間の間隙を変位抑制ブロックで確実に埋めることができる。また、基板を貫通した支持軸部材の一端にフット部材を備えているならば、耐震フレームの上部とキャビネットフレームの間の間隙に変位抑制ブロックを介挿した状態においてフット部材の位置を調節し、フット部材をキャビネットフレームの内面に押し付けることができる。この場合、変位抑制ブロックの側板のいずれかに加えてフット部材で耐震フレームとキャビネットフレームの間隙を塞ぐので、大きな地震により耐震フレームの上部側がキャビネットフレームの中でいずれの方向に揺れたとしても変位抑制ブロックの側板あるいはフット部材が耐震フレームの横揺れを抑制し、耐震フレームの上部がキャビネットフレームに激しく衝突する現象を防止できる。
【0013】
本発明の電力機器用減震装置において、前記耐震フレームの上部コーナー部にそれぞれ前記変位抑制ブロックが取り付けられ、前記各変位抑制ブロックが各フット部材をそれらに隣接する前記キャビネットフレームに押し当て、前記各支持軸部材の他端側の調整ナットを前記キャビネットの内側に向けて配置された構成を採用できる。
【0014】
耐震フレームの上部コーナー部のそれぞれに変位抑制ブロックを設けることで、耐震フレーム上部とキャビネットフレームの間の周囲4方向全ての隙間を変位抑制ブロックで埋めることができる。このため、大きな地震の揺れによって耐震フレームの上部がいずれの方向に横揺れしたとしても、耐震フレームがキャビネットフレームに衝突する衝撃を緩和できるので、キャビネットの変形や損傷を防止でき、地震の揺れによりキャビネットの扉が開いてしまう現象を抑制できる。また、大きな地震の揺れにより耐震フレームがキャビネットフレーム内面に衝突してキャビネットを損傷させることも抑制できる。
【0015】
本発明の電力機器用減震装置において、前記キャビネットフレームが鋼材製の4本の支柱とこれら4本の支柱の上端部を連結した上部フレーム材と前記4本の支柱の下端部を連結した下部フレーム材を備えて矩形立体枠状に組まれ、前記耐震フレームが、鋼材製の4本の支柱部材とこれら4本の支柱部材の上端部を連結した上部フレーム部材と前記4本の支柱部材の下端部を連結した下部フレーム部材を備えて矩形立体枠状に組まれ、前記キャビネットフレームの支柱の内側近接した位置に前記耐震フレームの支柱部材が配置され、前記支柱部材の上端部に前記変位抑制ブロックが取り付けられた構成を採用できる。
【0016】
鋼材製の4本の支柱と上部フレーム材および下部フレーム材により強固なキャビネットフレームを構築することができ、鋼材製の4本の支柱部材と上部フレーム部材および下部フレーム部材により強固な耐震フレームを構築できる。鋼材により構築した強固なキャビネットフレームおよび耐震フレームであっても大きな地震などの揺れにより部分的に両フレームが内部衝突を起こす恐れがあり、その場合に変位抑制ブロックが効果的に両フレームの衝突を緩和するので、キャビネットの変形防止、損傷防止に寄与する。
【0017】
本発明の電力機器用減震装置において、前記変位抑制ブロックが前記支柱部材の上端部に厚さ調整用ライナーを介し取り付けられたことが好ましい。
支柱部材に対し変位抑制ブロックを取り付けるにあたり、好適な厚さの調整用ライナーを用いて支柱部材に取り付けることで変位抑制ブロックとキャビネットの支柱との間の隙間を適切に埋めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電力機器用減震装置は、地震などにより大きな揺れが加わり、耐震フレームの上部がキャビネットフレームの内部で横揺れし、耐震フレームの上部がキャビネットフレームに接触するおそれのある大きな揺れであった場合、耐震フレームの上部コーナー部に設置されている変位抑制ブロックが耐震フレームの上部とキャビネットフレームの衝突による衝撃を緩和する。
このため、地震などにより大きな横揺れが変圧器などの電力機器を収容したキャビネットに作用したとしても、キャビネットの扉が不要に開いてしまうことが無く、キャビネットの一部が変形や損傷することがない。
地震などの揺れにより耐震フレームの上部が最も大きく横揺れしようとするが、耐震フレームの上部とキャビネットフレームの間を変位抑制ブロックが埋めているので、耐震フレーム上部の横揺れを抑制することができ、キャビネットフレームに対する耐震フレーム上部の激しい衝突現象を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る第1実施形態の電力機器用減震装置を適用した変圧器収納キャビネットの一例を示す正面図。
図2】前記キャビネットのフレームと該キャビネットに収容されている耐震フレームおよび変圧器(電力機器)の一例を示す斜視図。
図3】前記変圧器を載置する防振架台の一例を示す斜視図。
図4】前記耐震フレームの右上部側のコーナー部と前記キャビネットフレームとの間に介挿された変位抑制ブロックの一例を示す斜視図。
図5】前記耐震フレームの左上部側のコーナー部とそれに隣接する前記キャビネットフレームの位置関係を示す斜視図。
図6】前記耐震フレームの左上部側のコーナー部と前記キャビネットフレームとの間に介挿された変位抑制ブロックの一例を示す斜視図。
図7】前記変圧器と前記耐震フレームと前記キャビネットフレームの相互位置関係を示す平面図。
図8】前記キャビネットフレームと前記耐震フレームと変圧器の位置関係の一例を示す説明図。
図9】前記変位抑制ブロックの一例を示す斜視図。
図10】前記変位抑制ブロックの取付状態の一例を示す平面図。
図11】前記変圧器の前記耐震フレームに対する取付状態の一例を示す斜視図。
図12】前記変位抑制ブロックを備えていない構造における振動試験結果の一例を示す斜視図。
図13】従来の変圧器の設置状況の一例を示すもので、(a)は地震の揺れが作用していない通常状態を示す正面図、(b)は地震の揺れが作用した状態の一例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態である電力機器用減震装置について、図1図11を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る第1実施形態の電力機器用減震装置を適用した変圧器収納用のキャビネット1を示すもので、このキャビネット1は、図2に示すような矩形立体枠状のキャビネットフレーム2の外側に左右の側壁と背面壁からなる周壁2Aと、天井壁2Bと前面扉2C、2Cを設けて構成されている。この実施形態において前面扉2Cは観音開きタイプの扉が採用され、前面扉2Cの隣接部分中央にレバーハンドル錠2Kが設けられている。
図2に示すようにキャビネットフレーム2はいずれもL型鋼材からなる4本の支柱2aと、この4本の支柱2aの上端部を接続した4本の上部フレーム材2bと、4本の支柱2aの下端部を接続した4本の下部フレーム材2dとから矩形立体枠状に形成されている。支柱2aは2枚の帯板2fを角部2eでL字型に一体化したL型鋼材からなる。
キャビネットフレーム2を構成する4本の支柱2aのうち、左右に離間された支柱2aの間隔よりも前後に離間された支柱2aの間隔の方が小さくされている。従って、この実施形態のキャビネット1は左右の幅が前後の奥行きよりも大きく形成されている。
【0022】
キャビネットフレーム2において各支柱2aはそれらの角部2eをキャビネット1の外側に向けてキャビネット1の4隅のコーナー部分を占めるように配置されている。また、L型鋼材からなる上部フレーム材2b、下部フレーム材2dについてもそれぞれの角部2eをキャビネット1の外側向きに配置され、これらのフレーム材2b、2dと支柱2aは例えば溶接等の接合手段により一体化されている。
キャビネット1はキャビネット1を設置する床面にボルト止めなどの固定手段により固定され、キャビネット1の内部中央側には防振架台3に支持された変圧器(電力機器)5が収容されている。
【0023】
防振架台3は、一例として図3に示すように、平面視長方形の枠状の下部架台3Aと上部架台3Bからなる。これらの架台3A、3Bは、それぞれ4つのコーナー部分に配置されたコーナー部材6とコーナー部材6どうしの間に掛け渡すように架設されたフレーム枠7とからなる。防振架台3においてコーナー部分に上下に配置されたコーナー部材6を部分的に上下に貫通するようにストッパーボルト8が設けられ、上下の架台3A、3Bの離間可能な距離が制限されている。
コーナー部材6は上板6aと下板6bと側板6cからなるコ字型に形成され、上方に位置するコーナー部材6の下板6bと下方に位置するコーナー部材6の上板6aを貫通するストッパーボルト8に複数の規制ナット10が螺合されている。規制ナット10は上方のコーナー部材6の下板6bを上下から挟む位置と下方のコーナー部材6の上板6aを上下から挟む位置にそれぞれ配置されている。ストッパーボルト8に対するこれら規制ナット10の螺合位置を調整することで下部架台3Aと上部架台3Bの離間可能な距離が制限されている。
【0024】
例えば、上方のコーナー部材6の下板6bと下方のコーナー部材6の上板6aとの間の距離よりも少し長いストッパーボルト8を設けておき、ストッパーボルト8の上端と下端に規制ナット10を螺合しておくことができる。この構造により、上方のコーナー部材6と下方のコーナー部材6の両者を上下の規制ナット10に当たるまで所定距離離間できるように両者がストッパーボルト8を介し連結されている。
防振架台3において、上下のフレーム枠7、7の間の部分にコイルバネあるいは弾性樹脂などの弾性体からなる複数の防振部材9が介在されている。また、防振架台3はその長辺側をキャビネット1の底部長辺側と平行に配置させてキャビネット1の底部側中央の床面にボルト止めなどの手段により固定されている。
【0025】
この実施形態において図2に示すように変圧器5は3相交流対応の電力機器であり、電磁誘導用の巻線が施されたコイル体5aが3基、起立状態で並列配置され、防振架台3の上にボルト止めなどの固定手段により取り付けられている。変圧器5において3基のコイル体5aの上方に位置する天井部5bの左右のコーナー側にはそれぞれ固定基板5dが設けられている。なお、キャビネット1において変圧器5を設置した位置の上方には変圧器用の配線や配線設備などが設けられているが、本願明細書の図面ではこれらの配線や配線設備などの表示を略している。
【0026】
次に、変圧器5の周囲を取り囲み、キャビネットフレーム2の内側に位置するように矩形立体枠状の耐震フレーム12が設けられている。
耐震フレーム12は、キャビネットフレーム2の支柱2aより若干内側に配置され、変圧器5の最上部よりも若干高い位置まで延在された4本のL型鋼材からなる支柱部材12aを有している。図4図6などに示すように、支柱部材12aは角部12bを介し2枚の帯板12c、12cをL字型に一体化してなる。
以下、説明の便宜上、図7に示すキャビネット1の概形において、右側の側面をキャビネット1の前面1D、左側の側面をキャビネット1の背面1E、上側の側面をキャビネット1の右側面1F、下側の側面をキャビネット1の左側面1Gとして説明する。
図7に示すようにキャビネット1の前面1D側に立設されている2本の支柱部材12aはそれらの角部12bをキャビネット1の前面側と中央側に対向するように、一方の帯板12cをキャビネット1の前面に対し平行に、他方の帯板12cをキャビネット1の前面に対し直角に向けて配置されている。
また、キャビネット1の背面1E側に立設されている2本の支柱部材12aはそれらの角部12bをキャビネット1の背面側と中央側に対向するように、一方の帯板12cをキャビネット1の背面に対し平行に、他方の帯板12cをキャビネット1の背面に対し直角に向けるように配置されている。
【0027】
図2に示すようにキャビネット1の左側面側に立設されている2本の支柱部材12aの最上部を接続するようにL型鋼材からなる上部フレーム部材12dが設けられ、キャビネット1の右側面側に立設されている2本の支柱部材12aの最上部を接続するようにL型鋼材からなる上部フレーム部材12dが設けられている。上部フレーム部材12dは角部12eを介し帯板12f、12fをL字型に一体化したもので、キャビネット1の左側面側に配置されている上部フレーム材12dは図5に示すように角部12eをキャビネット1の左端側に向け、一方の帯板12fを水平に他方の帯板12fを垂直に向けて左側2本の支柱部材12aに一体化されている。支柱部材12aに対し上部フレーム部材12dはボルト止めなどの接合手段により一体化されている。
キャビネット1の右側面側に配置されている上部フレーム部材12dは角部12eをキャビネット1の右端側に向け、一方の帯板12fを水平に他方の帯板12fを鉛直に向けて右側2本の支柱部材12aに一体化されている。
【0028】
図2に示すようにキャビネット1の前面側に配置されている2本の支柱部材12aの最上部から若干低い位置を連結するように支柱部材12aの外側にコ字型鋼材からなる上部フレーム部材12hが接続され、キャビネット1の背面側に配置されている2本の支柱部材12aの最上部から若干低い位置を連結するように支柱部材12aの外側にコ字型鋼材からなる上部フレーム部材12hが設けられている。
図2に示すように耐震フレーム12の右側面側と左側面側にそれぞれ補強用のブレース部材13がX型に接続され、耐震フレーム12の右側の2本の支柱部材12aの高さ方向中央部に補強用の中央フレーム部材14aが架設されている。耐震フレーム12の左側の2本の支柱部材12aの高さ方向中央部にも補強用の中央フレーム部材14aが架設されている。耐震フレーム12の右側の2本の支柱部材12aの底部側に補強用の底部フレーム部材14bが架設され、耐震フレーム12の左側の2本の支柱部材12aの底部側にも補強用の底部フレーム部材14bが架設されている。
【0029】
キャビネット1の前面側に配置されている左右2本の支柱部材12aの底部と、キャビネット1の前面側の上部フレーム部材12hの中央部にかけて、ハの字型に架設された補強用の傾斜フレーム部材12iが架設されている。キャビネット1の背面側にも同様の位置に傾斜フレーム部材12iが架設されている。
【0030】
次に、支柱部材12aと上部フレーム部材12hを接合した部分の内側に、図2図5図7に示すように平面視三角型のボックスフレーム15が溶接などの接合手段により一体化されている。このボックスフレーム15から下方に支持板15aが垂下され、この支持板15aと変圧器5の上部の固定基板5dを接続するロッド状のアーム部材17が設けられている。アーム部材17の一端側には円環状の接続リング17aが形成され、他端側には穴あき円柱状の弾性体17bが挿通されている。
【0031】
前記支持板15aはボックスフレーム15から下方に延在されて支持板15aの下部はその内側に位置する変圧器5の固定基板5dと同等高さに配置されている。
図7図11に示すように変圧器5において固定基板5dのコーナー部分に形成された図示略のねじ穴に接続ボルト18が螺合され、接続ボルト18の上端部が固定基板5dから上方に所定長さ突出されている。
固定基板5dの接続ボルト突出部分にアーム部材17の接続リング17aが接続され、アーム部材17の他端側がボックスフレーム15の支持板15aに形成された透孔を通過してボックスフレーム15の下方側に延出され、この延出部分に弾性体17bが図示略のフランジ板やナットを介し装着されている。アーム部材17の他端側に形成されたねじ軸部にナット部材17cが螺合されていて、このナット部材17cの螺合位置を調整することにより、アーム部材17に張力を印加することができ、接続ボルト18を介して変圧器5をボックスフレーム15側に引きつけるように引張力が印加されている。
【0032】
変圧器5の天井部5bにはその4隅のコーナー部分のそれぞれに接続ボルト18が立設され、天井部5bの4隅のコーナー部分に対しそれぞれの外側にボックスフレーム15が配置され、各ボックスフレーム15と接続ボルト18を接続するように4本のアーム部材17が配置されている。4本のアーム部材17は図7に示すように平面視変圧器5を取り囲むように放射状に配置されている。これら放射状かつ水平に配置されたアーム部材17により変圧器5の上部側を支持することにより、変圧器5は水平方向に揺れ止め支持されている。また、アーム部材17においてボックスフレーム15側には弾性体17bが設けられ、この弾性体17bを介しアーム部材17が変圧器5の上部を支持しているので、変圧器5の上部は4本のアーム部材17によって弾性支持されている。
【0033】
次に、耐震フレーム12の上端側コーナー部分のそれぞれに以下に説明する変位抑制ブロック20が取り付けられている。即ち、耐震フレーム12において各支柱部材12aの上端部とその外側に位置するキャビネットフレーム2の間の部分に変位抑制ブロック20が取り付けられている。
変位抑制ブロック20は図4図6図9に示すように矩形状の基板20aとこの基板20aの3つの周辺部から立設された側板20bとを具備したブロック状に形成され、基板20aにおいて側板20bを設けていない側の周辺部に近い部分をその厚さ方向に貫通するねじ孔20cが形成され、このねじ孔20cにボルト型の支持軸部材21が螺合されている。
【0034】
支持軸部材21は側板20bの高さよりも若干長く形成され、支持軸部材21の長さ方向一端側(側板20bに沿って延在された側の端部)にはキノコ型のフット部材25が一体化され、支持軸部材21の長さ方向他端側(側板20aが設けられていない側)には調整ナット26が螺合されている。また、支持軸部材21が基板20aを貫通した部分とフット部材25の間の部分にも調整ナット27が螺合されている。
基板20aのねじ孔20cに挿通した支持軸部材21を回転操作することにより支持軸部材21のねじ孔通過位置を変更することができ、これによって基板20aに対するフット部材21の突出位置を変更することができる。支持軸部材21においてねじ孔20cを挿通した位置を挟むように調整ナット26、27の位置調節を行い、調整ナット26、27によって基板20aを挟み込むことで、支持軸部材21の最終的な位置決めを行ってフット部材25の位置を固定することができる。なお、フット部材25の外面には図9図10に示すように弾性体の板材からなるダンパー25aが貼着されていることが好ましい。
【0035】
変位抑制ブロック20において3つの側板20aのうち、中央の側板20aには2つの挿通孔20dが離間し形成されている。また、図5に示すように耐震フレーム12の支柱部材12aの上端部において変位抑制ブロック20を固定するべき部分に2つの透孔12gが形成されている。変位抑制ブロック20の中央の基板20aを耐震フレームの支柱部材の上端部に接触させて透孔12gと挿通孔20dの位置合わせを行い、図10に示すように基板20aと支柱部材12aの上端部の間に適切な厚さ調整用ライナー28を挟み込み、これらの透孔を貫通するボルト29によって変位抑制ブロック20が支柱部材12aの上端部に取り付けられている。
【0036】
耐震フレーム12の4つのコーナー部分に固定されている変位抑制ブロック20の取付状態をまとめて図7に示す。
キャビネット1において前面1D側に位置する左右2本の支柱部材12aはいずれもL型鋼材からなり、それらの角部12bはキャビネット1の前面側かつ中央側に向けられている。このため、図7に示すようにキャビネット1の前面左側(図7では前面1Dの下側)の支柱部材12aに取り付けられている変位抑制ブロック20は、フット部材25をキャビネット1の前面左側(図7では下側)に向けて配置され、フット部材25はキャビネット1の左隅側の支柱2aの帯板2fに押し付けられている。また、キャビネット1の前面右側(図7では前面1Dの上側)の支柱部材12aに取り付けられている変位抑制ブロック20は、フット部材25をキャビネット1の右側(図7では上側)に向けて配置され、フット部材25はキャビネット1の右隅側(図7では右上側)の支柱2aの帯板2fに押し付けられている。
【0037】
図7に示すようにキャビネット1の背面左側(図7では背面1Eの下側)の支柱部材12aに取り付けられている変位抑制ブロック20は、フット部材25をキャビネット1の左側(図7では背面1Eの下側)に向けて配置され、フット部材25はキャビネット1の左奥隅側の支柱2aの帯板2fに押し付けられている。また、キャビネット1の背面右側(図7では背面1Eの上側)の支柱部材12aに取り付けられている変位抑制ブロック20は、フット部材25をキャビネット1の右側(図7では背面1Eの上側)に向けて配置され、フット部材25はキャビネット1の右奥隅側の支柱2aの帯板2fに押し付けられている。
【0038】
一方、変位抑制ブロック20は調整用ライナー28を介し各支柱部材12aの上端部に取り付けられている。この調整用ライナー28の厚さを適切な厚さに調整することにより、支柱部材上端部に取り付けた変位抑制ブロック20の側板20a、20aをキャビネットフレーム2の帯板2bの内面に接触する位置に調整することができ、これによって変位抑制ブロック20が適正な位置に位置決めされている。先のフット部材25の位置調節と調整用ライナー28による変位抑制ブロック20の位置調節によって、支柱部材12aとキャビネットフレーム2の間の隙間を変位抑制ブロック20により確実に塞ぐことができる。
変位抑制ブロック20が支柱2aと支柱部材12aの間を埋めるように設けられている状態の概要とアーム部材17が変圧器5の上部を弾性支持している状態の概要を図8に略図で示しておく。
【0039】
以上説明した構造のキャビネット1では、防振架台3によって変圧器5を弾性支持しているので、変圧器5に生じる振動を防振架台3の防振部材9が吸収し、キャビネット1の外部に変圧器5による振動騒音を伝達することがない。
また、防振架台3のコーナー部分に設けたストッパーボルト8と規制ナット10の作用により下部架台3Aと上部架台3Bの離間距離を制限できるので、地震などの震動により変圧器5が多少の横揺れを起こしたとしても、変圧器5の傾きの上限を一定角度以内に規制できる。このため、地震により多少の横揺れを受けた場合であっても変圧器5に生じる傾きの少ない構造を提供できる。
また、キャビネット1では、変圧器5の上部に対し弾性部材17bを介し横向きに設けたアーム部材17で弾性支持しているので、変圧器5に地震などにより多少の横揺れが作用しても変圧器5が大きく横揺れすることがない。
【0040】
次に、前記構成のキャビネット1にあっては、大きな地震により強い揺れが作用した場合において、キャビネットフレーム2が横揺れし、耐震フレーム12も横揺れする場合がある。
この場合、変圧器5を複数のアーム部材17を介し弾性支持している耐震フレーム12がキャビネットフレーム2の内部で横揺れし、耐震フレーム12の上部が最も大きく横揺れしようとする。しかし、耐震フレーム12の上端部コーナー部分に設置されている変位抑制ブロック20が耐震フレーム12の上部とキャビネットフレーム2の間を図7図8に示すように埋めているので、耐震フレーム12の上部は変位抑制ブロック20を介しキャビネットフレーム2に当たって揺れ止めされる結果、耐震フレーム12の上部がキャビネットフレーム2の内側に激しく衝突する現象は生じない。
このため、大きな地震が発生した場合であっても耐震フレーム12がキャビネット1に大きな衝撃を与えないので、前面扉2Cが不意に開放されてしまうことが無く、耐震フレーム12の衝突によって生じるキャビネット1の損傷や変形を生じないキャビネット1を提供できる。
また、耐震フレーム12の上部の揺れを変位抑制ブロック20で抑えることができるので、変圧器5の上部側に存在する配線の断線や配線周り部分の損傷も防止できる。
【0041】
上述の構成の変位抑制ブロック20は基板20aの周囲に少なくとも3つの側板20bを有するブロック状に構成され、耐震フレーム12とキャビネットフレーム2の間に介挿されている。このため、側板20bのいずれかを耐震フレーム12に固定して耐震フレーム12とキャビネットフレーム2との間に変位抑制ブロック20を介挿した場合、耐震フレーム12とキャビネットフレーム2の間の間隙を変位抑制ブロック20で確実に埋めることができる。
【0042】
耐震フレーム12の上部コーナー部のそれぞれに合わせて4つの変位抑制ブロック20を設けることで、耐震フレーム12の上部4隅周りの全ての隙間を変位抑制ブロック20で埋めることができる。このため、大きな地震の揺れによって耐震フレーム12の上部がいずれの方向に横揺れしたとしても、耐震フレーム12がキャビネットフレーム2に衝突する衝撃を緩和できるので、キャビネット1の変形や損傷を防止でき、地震の揺れによりキャビネット1の前面扉2Cが開いてしまう現象を抑制できる。
また、変位抑制ブロック20において、基板20aを貫通した支持軸部材21の一端にフット部材25を備えているので、耐震フレーム12の上部とキャビネットフレーム2の間の間隙に変位抑制ブロック20を介挿した状態においてフット部材25の位置を調節し、フット部材25をキャビネットフレーム2の内面に確実に押し付けることができる。
【0043】
この場合、変位抑制ブロック20の側板20bのいずれかに加えてフット部材25で耐震フレーム12とキャビネットフレーム2の間隙を塞ぐので、耐震フレーム12の上部側がキャビネットフレーム2の中でいずれの方向に横揺れたとしても変位抑制ブロック20の側板20bあるいはフット部材25が耐震フレーム12の横揺れを抑制し、耐震フレーム12の上部がキャビネットフレーム2に激しく衝突する現象を防止できる。
【0044】
前述の構成のキャビネット1であるならば、L型鋼材製の4本の支柱2aと上部フレーム材2bおよび下部フレーム材2dにより強固なキャビネットフレーム2を構築することができ、L型鋼材製の4本の支柱部材12aと上部フレーム部材12dおよび下部フレーム部材14bにより強固な耐震フレーム12を構築できる。L型鋼材により構築した強固なキャビネットフレーム2および耐震フレーム12であっても大きな地震などの揺れにより部分的に両フレームが内部衝突を起こす恐れがあり、その場合に変位抑制ブロック20が効果的に両フレームの衝突を緩和するので、キャビネット1の変形防止、損傷防止に寄与する。
【0045】
前述の構成のキャビネット1においては、耐震フレーム上部のコーナー部分の4か所にそれぞれ変位抑制ブロック20を取り付け、変位抑制ブロック20の側板20bをキャビネットフレーム2の内面に接触させ、フット部材25をキャビネットフレーム2の内面に押し付けることが好ましい。
変位抑制ブロック20の側板20をキャビネットフレーム2の内面に接触させるには、支柱部材12aの上端部に変位抑制ブロック20をボルト止めする際の調整用ライナー28の厚さ調整により調節可能となる。また、変位抑制ブロック20において支持軸部材21の位置調節によりフット部材25の位置調節ができる。
【0046】
ここで、図7に示すようにキャビネット1の平面視においてキャビネット1の右側(図7では上側)2つの変位抑制ブロック20のフット部材25を右向き(図7では上向き)に、キャビネット1の左側(図7では下側)2つの変位抑制ブロック20のフット部材25を左側向き(図7では下向き)に配置することで、各フット部材25の位置調節が容易となる。
フット部材25の位置調節のためには、各変位抑制ブロック20の支持軸部材21の位置を調節する必要があるが、図7の配置では支持軸部材21の位置決めを行うための支持軸部材21の端部位置と調整ナット26をキャビネット1の中央側向きに配置できる。このため、キャビネット1の中央側の空きスペースを利用して作業者が楽な作業姿勢で支持軸部材21の位置調節、調整ナット26の締め付け作業ができる。
これに対し、支持軸部材21の向きや調整ナット26の位置がキャビネット1の側壁より、あるいは、背面側向きの場合は、ナットの締め付け作業のためのスペース確保が難しくなるか、作業姿勢が悪くなり、変位抑制ブロック20の取り付け調整作業が容易ではなくなる。
【0047】
「試験例」
一辺の幅50mmのL字鋼板から溶接により矩形立体形状に組まれた図2に示す高さ2350mm、幅1600mm、奥行き1000mmのキャビネットフレームを有するキャビネットを用意した。キャビネットフレームには鋼板製の側壁と天井壁と観音開き状の前面壁が取り付けられている。前面扉には施錠可能なレバーハンドル式の開閉機構と鍵が設けられている。
このキャビネットフレームを加振装置の鉄製の基盤上にボルト止めし、その内部に幅1060mm、奥行き650mm、高さ209mmの防振架台(特許機器(株)製商品名、OS式防振装置OMT-K11029)を設置し、この防振架台上に幅1130mm、高さ1135mm、奥行き645mm、重量1360kgの変圧器をボルト止めにより設置した。
【0048】
変圧器の周囲に一辺の幅60mmのL字鋼板からなる支柱部材と上部フレーム部材と下部フレーム部材と下部ブレース部材と傾斜ブレース部材からなる図2に示す構成の幅120mm、奥行き800mm、高さ1650mmの耐震フレームを各部ボルト止めにより構成し、キャビネットの内側に、変圧器を囲むように配置した。耐震フレームの底部はコンクリート製の基盤にボルト止めにより固定した。
耐震フレームの上部前面側と上部背面側に幅175mm、側壁高さ1400mmのU字型鋼板からなる上部フレーム部材をボルト止めし、上部フレーム材と支柱部材との交差部分に設けたボックスフレームに穴あき円柱状のゴム弾生体を介し長さ300mmのアーム部材4本によって変圧器の上部コーナー部分4か所を抑えた。
厚さ5mm、長さ96mm、幅50mmの鋼板からなる基板の3辺に高さ1650mmの側板を立設した変位抑制ブロックを用い、基板のねじ孔を貫通する長さ63mmの支持軸部材の一端に直径40mmの円盤状フット部材を設けた。フット部材の表面に厚さ6mmのゴムダンパーを張り付けた。
この変位抑制ブロックを4基用い、耐震フレームの最上部とその周囲のキャビネットフレームとの間の隙間埋めを行い、実施例のキャビネットを構成した。
【0049】
この実施例のキャビネットを振動台に設置し、震度7の地震に相当する振動を140秒間付加する加振試験を行った。
その結果、前面扉の施錠状態は保持され、キャビネット各部に損傷や変形は見られなかった。
【0050】
「比較例」
前記キャビネットに変位抑制ブロックを設けていないこと以外は実施例と同等のキャビネットを構成し、上述の試験と同じ条件で震度7に相当する振動を140秒間付加する加振試験を行った。
その結果を図12に示すが、キャビネット前面扉のレバーハンドル錠は施錠していたにも係わらず、鍵が外れて開放してしまい、キャビネットの左側壁底部に浮き上がり変形部分が生じた。なお、図12ではキャビネットの内部に収容されている変圧器の記載は略し、キャビネットの概形のみ示している。
以上の対比から、耐震フレームを内部に設けたキャビネットにおいて変位抑制ブロックを設けて耐震フレームとキャビネットフレームの隙間埋めを行った構造の耐震性向上効果を確認することができた。また、変位抑制ブロックを設けていない場合、大きな地震が発生すると、レバーハンドル式のフック錠で施錠しているにも拘わらずフック部の変形により鍵が外れて前面扉が開放してしまうほどの衝撃が変圧器と耐震フレームからキャビネットフレームに負荷される恐れがあることも分かった。
【符号の説明】
【0051】
1…キャビネット、2…キャビネットフレーム、2A…周壁、2a…支柱、2B…天井壁、2C…前面扉、3…防振架台、3A…下部架台、3B…上部架台、5…変圧器(電力機器)、5a…コイル体、5d…固定基板、6…コーナー部材、7…フレーム枠、8…ストッパーボルト、12…耐震フレーム、12a…支柱部材、12c…帯板、12d、12h…上部フレーム部材、15…ボックスフレーム、15a…支持板、17…アーム部材、17b…弾性体、18…接続ボルト、20…変位抑制ブロック、20a…基板、20b…側板、20c…ねじ孔、21…支持軸部材、25…フット部材、26、27…調整ナット、28…厚さ調整用ライナー。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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