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  • 特許-靴補正部品及び靴 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】靴補正部品及び靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 7/14 20220101AFI20220107BHJP
   A43B 17/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A43B7/14 A
A43B17/00 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017113530
(22)【出願日】2017-06-08
(65)【公開番号】P2018202040
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2017109809
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517194999
【氏名又は名称】渡邊 幸枝
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英一
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04360027(US,A)
【文献】登録実用新案第3008293(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 7/14-7/30
A43B 17/00-21/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の中の足の踵部に沿うように半円の弓状に開口された開口部を有し、幅方向縦断面が弓型又は三日月型をなし、前記開口部を位置合わせの基準として、前記靴の形状と足との間を埋めるように前記弓型又は三日月型をなす凸曲面側が前記靴の内側方向の側壁部から底部にかけて貼りあわせられる側となり、靴の内壁に沿って靴補正部品の中心線が側壁面との底面の接する稜線に添うように張り付ける靴補正部品。
【請求項2】
靴の中の足の踵部に沿うように半円の弓状に開口された開口部を有し、前記開口部の周辺部を除く部分が、前記靴の内側方向の側壁部から底部の前記靴の中心線までの領域内に設けられる幅を有し、幅方向縦断面が弓型又は三日月型をなし、前記開口部を位置合わせの基準として、前記靴の形状と足との間を埋めるように前記弓型又は三日月型をなす凸曲面側が前記靴の内側方向の側壁部から底部にかけて貼りあわせられる側となり、靴の内壁に沿って靴補正部品の中心線が側壁面との底面の接する稜線に添うように張り付ける靴補正部品。
【請求項3】
最大長が、前記靴の中の前記足の踵部の端部から、前記足の第一中趾骨の骨頭までの長さである請求項1又は2に記載の靴補正部品。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の靴補正部品が装着された靴。
【請求項5】
前記靴補正部品の前記開口部の周辺部を除く部分が、前記靴の内側方向の側壁部から底部の前記靴の中心線までの領域内に設けられた請求項に記載の靴。
【請求項6】
前記靴補正部品が前記靴の中の前記足の踵部の端部から、前記足の第一中趾骨の骨頭までの範囲内に設けられた請求項又はに記載の靴。
【請求項7】
請求項1又は3に記載の靴補正部品が装着され、曲面が前記靴の内側方向の側壁部及び前記底部に貼られている靴。
【請求項8】
前記靴補正部品が接着剤又は面ファスナーにより装着された請求項からのいずれか1項に記載の靴。
【請求項9】
前記靴補正部品の中心線が前記靴の内側方向の側壁部と前記底部とが接する稜線に添うように、前記靴補正部品が貼られた請求項からのいずれか1項に記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴補正部品及び靴に関し、特にオーバープロネーションを抑制する靴補正部品及び靴に関する。
【背景技術】
【0002】
人は、歩く時又は走る時に、踵から接地することから始まり、体の様々な機能を使う。その一連の機能の動きが正しいアライメント(一連系)でなされることで、健全な歩行運動ができる。
特許文献1は、足の底面を正しいアライメントで、歩行運動ができるように提案された足底板を開示している。
特許文献1では、足の踵骨部の外方に足の外側の形状に沿って三日月形の楔状の第1の足底板を配置するとともに、足の小趾球部の外方に足の外側の形状に沿って三日月形の楔状の第2の足底板を配置することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-275716号公報(図2図4及び段落[0009]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、履用者の靴と同じ傾斜面上に位置するフットプリンタ上で履用者の足の足底圧を調査することで、足底圧減弱部を見つけ、この足底圧減弱部を三日月形の楔状の第1及び第2の足底板で補強し、足底圧の平均的な分散を図るものである。
【0005】
本発明の目的は、特許文献1に記載の発明と別な観点から、正しいアライメントで、歩行運動又は走行運動ができる靴補正部品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の靴補正部品は、靴の中の足の踵部に沿うように弓状に開口された開口部を有し、縦断面が弓型又は三日月型をなし、凸曲面側が前記靴の内側方向の側壁部から底部にかけて貼りあわせられる側となる靴補正部品である。
【0007】
(2) 本発明の靴補正部品は、靴の中の足の踵部に沿うように弓状に開口された開口部を有し、前記開口部の周辺部を除く部分が、前記靴の内側方向の側壁部から底部の前記靴の中心線までの領域内に設けられる幅を有する靴補正部品である。
【0008】
(3) 上記(1)又は(2)の靴補正部品において、最大長が、前記靴の中の前記足の踵部の端部から、前記足の第一中趾骨の骨頭までの長さであってもよい。
【0009】
(4) 上記(2)又は(3)の靴補正部品において、縦断面が弓型又は三日月型であってもよい。
【0010】
(5) 本発明の靴は、上記(1)から(4)のいずれかの靴補正部品が装着された靴である。
【0011】
(6) 上記(5)の靴において、前記靴補正部品の前記開口部の周辺部を除く部分が、前記靴の内側方向の側壁部から底部の前記靴の中心線までの領域内に設けられてもよい。
【0012】
(7) 上記(5)又は(6)の靴において、前記靴補正部品が前記靴の中の前記足の踵部の端部から、前記足の第一中趾骨の骨頭までの範囲内に設けられてもよい。
【0013】
(8) 本発明の靴は、上記(1)又は(3)の靴補正部品が装着され、曲面が前記靴の内側方向の側壁部及び前記底部に貼られるようにしてもよい。
【0014】
(9) 上記(5)から(8)のいずれかの靴において、前記靴補正部品が接着剤又は面ファスナーにより装着されてもよい。
【0015】
(10) 上記(5)から(9)のいずれかの靴において、前記靴補正部品の中心線が前記靴の内側方向の側壁部と前記底部とが接する稜線に添うように、前記靴補正部品が貼られるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、歩行運動又は走行運動等の荷重時の運動が正しいアレライメントでできるようにする靴補正部品及び靴を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】非荷重時の靴と右足の動きと、荷重時にオーバープロネーションが生じたときの靴と右足の動きを示す説明図である。
図2】本実施形態の靴補正部品及び靴補正部品を靴に装着することでオーバープロネーションを軽減する様子を示す説明図である。
図3】本実施形態の靴補正部品を靴に装着する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は非荷重時と、オーバープロネーションが生じた荷重時との靴と右足の動きを示す説明図である。図2は本実施形態の靴補正部品及び靴補正部品を靴に装着することでオーバープロネーションを軽減する様子を示す説明図である。図3は本実施形態の靴補正部品を靴に装着する様子を示す図である。なお、図1図3では右足に対応する靴及び靴補正部品について説明しているが、左足に対応する靴及び靴補正部品は、右足に対応する靴及び靴補正部品に対してほぼ線対称とするような形状であり、機能、作用、材質は右足に対応する靴及び靴補正部品と同じなので説明を省略する。
なお、非荷重時とは、足が地面から離れている状態をいい、荷重時とは、立位時や歩行時、走行時のように、接地している足に身体重量がかかり、地面からの反力を受けている状態をいう。
【0019】
歩く時又は走る時に、一連の機能の動きが正しいアライメントで行われないと、足の痛み、腰痛、膝痛、シンスプリント、胼胝(たこ)、又はマメ等の症状が生ずる場合がある。このような症状を改善するために、歩行や走行による症状の大きな原因である過度なプロネーション(オーバープロネーション)を軽減することが求められる。プロネーションそのものは、足が床に着くときの床反力や衝撃吸収のクッションの役目をするが、オーバープロネーションが行われるとさまざまな障害を起こす原因になる。
【0020】
図1の左側には、非荷重時の靴と右足の動きを示す断面図が示され、図1の右側には、オーバープロネーションが生じた荷重時の靴と右足の動きを示す断面図が示されている。図1の断面1-1’、断面2-2’、断面3-3’、断面4-4’は、図2の足の上面図の切断線1-1’、切断線2-2’、切断線3-3’、切断線4-4’の断面にそれぞれ対応している。
図1の左側に示す非荷重時では、靴20の内側(図中左側)に示すように、足30と靴20の間に空間がある。図1の右側に示すオーバープロネーションが生じた荷重時では、非荷重時の足30及び靴20は、足30a及び靴20aのように変形する。
【0021】
本実施形態の靴補正部品は、オーバープロネーションを軽減し正しい足のアライメントを保持し前方へと推進させるようにしたものである。本実施形態の靴補正部品による正しい足のアライメントで歩行や走行することは足にかかる負担や特定部分のストレスを軽減する。
図2に示すように、本実施形態の靴補正部品10は、足の踵部直下に対応する部分が開口部OPにより円弧状に開口されている。オーバープロネーションは、図1の右側の断面図に示すように、歩行時又は走行時等の荷重時に足の関節が斜め方向に過度に動きすぎることで生ずる。靴の底面と接する足の踵部直下はオーバープロネーションが生じにくい点に着目し、本実施形態では、靴の中の足の踵部に沿うように弓状に開口されるように開口部OPを設けている。開口部OPは靴補正部品を靴に貼り合わせるときの位置合わせの基準となり、図3に示すように、開口部OPが足の踵部に配置されるように靴補正部品10を靴20に貼り合わせる。
【0022】
靴補正部品10は、図2に示すように側面が弓型となっており、縦断面も弓型となっている。縦断面は三日月型となっていてもよい。靴補正部品10の凸曲面側が靴20の内側方向の側壁部から底部(底面)にかけて貼りあわせられる側となる。縦断面が弓型又は三日月型となるのは、図2の左側に示すように、靴補正部品10を靴20と足30との間の空間に配置しやすい形状とするためである。
【0023】
また、本実施形態の靴補正部品10は、開口部OPの周辺部を除く部分が、靴20の内側方向の側壁部から底部の靴20の中心線までの領域内に設けられる幅を有する。そして、靴補正部品10の開口部OPの周辺部を除く部分が、靴20の内側方向の側壁部から底部の靴20の中心線までの領域内に設けられる。このような領域に靴補正部品10を配置することで、図1の右側に示すオーバープロネーションを効果的に抑制できる位置に靴補正部品10を配置することができる。靴の中心線は靴の最大幅の中心と靴の踵部分の端部とを結ぶ線であり、図2では、靴の中心線は足の第2指の中心と足の踵部分の端部とを結ぶ線に対応している。
【0024】
図1の左側に示す非荷重時では、靴20の内側(図中左側)に示すように、足30と靴20の間に空間がある。図1の右側に示すオーバープロネーションが生じた荷重時では、非荷重時の足30及び靴20は、足30a及び靴20aのように変形する。このとき、足にかかる力は図1右側に矢印で示すように、内側の斜め下方向である。よって、オーバープロネーションを抑制するには、靴の上方から見た中心線から外側には靴補正部品10を配置せず、靴の中心線から内側に配置するようにすればよい。
本実施形態では、図2の左側に示すように、靴補正部品10を靴の中心線から内側に配置することで、歩行時又は走行時等の荷重時のオーバープロネーションを抑制している。
【0025】
靴補正部品10の具体的な形状及び厚さは、歩行又は走行の荷重時と足底の関係だけを考慮するだけでなく、各人の体全体のバランスを考え、その人が履く靴との関係を考慮して決められる。足から体全体を補助するために患者の足の形状と歩行又は走行の荷重時の動作を鑑みて、患者の使用する靴に合わせて作成される。
【0026】
靴補正部品10の靴への設置は、靴内部に足の踵の端部(図2のA)から第一中趾骨の骨頭(図2のB)までの間で立体的な部品となる靴補正部品10を付加して行われる。靴補正部品10の最大長は、靴20の中の足の踵部の端部(図2のA)から、足の第一中趾骨の骨頭(図2のB)までの長さである。当然、左足、右足の大きさ、形状の違いや履く靴の形状に合わせて作成され、取り付けられる。また、歩行動作の荷重時の改善に合わせて都度、調整して制作設置されることとなる。これにより、足整効果が向上し、歩行のアライメントがこれまで以上に安定する。成長期の子供の足の正常な発達や成年、壮年期の靴によるトラブルの解消、スポーツ時の運動能力向上、そして、高齢者の足首、膝や股関節などの歩行障害の改善にも効果を発揮できる。
【0027】
靴補正部品10の材料は、発泡プラスチックを用いることができ、特に、荷重時となる歩行による足での圧縮で、ある程度は変形するが、靴内部の温度変化により硬化し、長期に使用しても一定の形状を保てるものが望ましい。一例として、ポリオレフィン系発泡プラスチック、発泡ポリウレタン、及びEVAスポンジが挙げられる。
【0028】
靴補正部品10は次のようにして作製され、靴に装着される。
靴補正部品10の基本形状は足サイズ分類と靴の形状タイプで複数種類用意する。靴補正部品10の基本形状は図2に示すA_B値、幅W1+W2の値、厚さtによって複数用意される。幅W1は靴底幅の1/2、幅W2は基本的には幅W1と同等であるが、靴内側面の高さ(靴内の底面からの高さ)によって調整する。ここで、図2のAは足の踵の端部の位置と靴補正部品10の踵側の端部の位置、Bは足の第一中趾骨の骨頭の位置と靴補正部品10の踵側と反対側の端部の位置、Cは舟状骨の下端cの位置と靴補正部品10の位置Cc、Dは楔状骨の下端dの位置と靴補正部品10の位置Dd、Eは踵骨の先端の下端eの位置と靴補正部品10の位置Ee、及びFは第一中趾骨の中央での下端fの位置と靴補正部品10の位置Ffを示している。
【0029】
次に、施術、処方者は患者の足を計測し、図2に示す各長さである、A_B値、A_C値、A_D値、A_E値を得る。次に、歩行による荷重時のオーバープロネーションの状況や使用する靴の形状から靴補正部品10の厚みt、幅W2を選定する。
これらのデータから、処方を作成して、用意された複数の靴補正部品10の基本形状から靴補正部品10の基本形状を選定する。選定された靴補正部品10の基本形状から切削して、患者に適合した靴補正部品10を作成する。
完成した個人に特定した靴補正部品10の曲面(裏面)側に接着剤を塗布するか、面ファスナーを張る。
【0030】
靴補正部品10は曲面(裏面)側を靴内壁に沿わせて張り付ける。踵部の形状を基準として合わせ、靴の内壁に沿って靴補正部品10の中心線が側壁面との底面の接する稜線に添うよう靴補正部品10を靴に貼る。こうすることで、靴の形状と足との間を埋め、足整効果が発揮される。靴補正部品10を設置した靴は数か月使用することで足になじみ、歩行アライメントが安定する。
【0031】
面ファスナー等で着脱可能な状態で張り付けた靴補正部品10は形状が安定した時点で、同種の別の靴に面ファスナーなどを接して、取り付けることも可能となる。靴補正部品10は、個人の足と靴を特定して、処方され、特定の靴内部に制作設置される。しかし、面ファスナー等を利用して、靴の内足側面と足底面に張り付けることで、靴補正部品10の形状が足と靴になじむ一定の期間を経たのちには同種の別の靴へ同じ貼り付け方により、使いまわすことができる。
【0032】
一般的で別機能の平面な中敷き(インソール)と靴補正部品10とを組み合わせて、靴を取り換えたときに入れ替えられるタイプを作ることも可能となる。
以上説明した本実施形態の靴補正部品10によれば、荷重時となる歩行の動きに伴う足の内側部や足底面へ影響のある動きに適格に対応でき、既成靴の構造や患者それぞれの個別な足の形状、運動機能の違いにも対応できる。
【0033】
以上、本発明の代表的な各実施形態について説明したが、本発明は、本願の請求の範囲によって規定される、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の種々の形で実施することができる。そのため、前述した各実施形態は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるべきではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書や要約書の記載には拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更はすべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0034】
10 靴補正部品
20 靴
30 足
図1
図2
図3