(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ノッキングセンサユニット
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
G01H17/00 B
(21)【出願番号】P 2017147525
(22)【出願日】2017-07-31
【審査請求日】2020-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】青井 克樹
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-201814(JP,A)
【文献】実開昭52-132972(JP,U)
【文献】実開昭60-040816(JP,U)
【文献】実開平03-026063(JP,U)
【文献】実開平05-079825(JP,U)
【文献】米国特許第05872307(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01M 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ取付用のねじ部材と、
前記ねじ部材が挿通されるねじ挿通孔が形成されたノッキングセンサと、
前記ねじ挿通孔に挿通された前記ねじ部材が、前記ねじ挿通孔から脱落することを防止するねじ部材脱落防止部材と、
を備えたノッキングセンサユニットにおいて、
前記ねじ部材のねじ部が前記ねじ挿通孔に対向し、
前記ねじ部材脱落防止部材は樹脂からなり、かつ前記ねじ部材の隣接するねじ山の頂点間の間隔より薄い厚みの環状をなして前記ねじ山
を跨いで該ねじ山の間の谷部に係合すると共に、自身の外縁が径方向に突没する凹凸状をなして前記ねじ挿通孔に接触していることを特徴とするノッキングセンサユニット。
【請求項2】
前記ねじ部材脱落防止部材の内縁が径方向に突没する凹凸状をなしている請求項1記載のノッキングセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関で発生するノッキングを検出するための、ノッキングセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の内燃機関で発生するノッキングの検出センサとして、そのノッキングに伴う振動を、圧電素子を用いて検出するものが広く用いられている。このようなノッキングセンサの取付形態の一つとして、センサを貫通して形成されたねじ挿通孔にセンサとは別体のねじ部材を通し、そのセンサ底面から突出するねじ部先端を、取付部側のねじ孔にねじ込む方式がある。
ところで、別体のねじ部材を用いて取り付けるノッキングセンサの場合、ねじ部材を探すのに手間取ったり、紛失等すると取付の作業効率が低下する。又、ねじ挿通孔に合わないねじ部材を使用して取付不良等が生じる恐れがある。さらに、センサのねじ挿通孔は多くの場合、センサの両端面のどちらからでも挿通できるため、本来の挿通方向と逆向きに誤って取付けると、センサの所定の取付座面が正しく取付部に向かなくなるという不具合もある。
【0003】
そこで、ノッキングセンサのねじ挿通孔に対し予めねじ部材を挿通してこれらを1セットにパッケージ包装すると共に、ねじ部材の軸部表面からねじ部材脱落防止部材を突出して形成させ、ねじ挿通孔の内面との間の摩擦によりねじ部材の脱落を防止した技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この技術においては、ねじ部材の外表面に樹脂等を一体成形して、ねじ部材脱落防止部材を形成するため、コストアップや、汎用のねじ部材を使用し難い点で改良の余地がある。
そこで、本発明は、ノッキングセンサに、ねじ部材を低コストでかつ脱落を防止して確実にセットしたノッキングセンサユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のノッキングセンサユニットは、センサ取付用のねじ部材と、前記ねじ部材が挿通されるねじ挿通孔が形成されたノッキングセンサと、前記ねじ挿通孔に挿通された前記ねじ部材が、前記ねじ挿通孔から脱落することを防止するねじ部材脱落防止部材と、を備えたノッキングセンサユニットにおいて、前記ねじ部材のねじ部が前記ねじ挿通孔に対向し、前記ねじ部材脱落防止部材は樹脂からなり、かつ前記ねじ部材の隣接するねじ山の頂点間の間隔より薄い厚みの環状をなして前記ねじ山を跨いで該ねじ山の間の谷部に係合すると共に、自身の外縁が径方向に突没する凹凸状をなして前記ねじ挿通孔に接触していることを特徴とする。
【0007】
このノッキングセンサユニットによれば、環状のねじ部材脱落防止部材にてねじ部材をねじ挿通孔の内部に係止するので、ねじ部材の外表面に脱落防止用の樹脂等を一体成形等する必要がなく、ノッキングセンサに、ねじ部材を低コストでかつ脱落を防止して確実にセットできる。又、ねじ部材を加工する必要がないので、汎用のねじ部材を使用できる。
又、ねじ部材脱落防止部材を、ねじ部材の隣接するねじ山の頂点間の間隔より薄い厚みの環状とすることで、安価に市販されている汎用の樹脂シート等からねじ部材脱落防止部材を容易に製造(打ち抜き等)することができ、コストダウンをさらに図ることができる。
さらに、ねじ部材脱落防止部材の外縁を凹凸状にすることで、薄いねじ部材脱落防止部材が凸部で適度に撓んでねじ挿通孔に接触するので、ねじ挿通孔との係止力が向上する。
なお、「ねじ部材脱落防止部材の外縁が径方向に突没する」とは、ねじ部材脱落防止部材を厚み方向から見たときに、外縁の輪郭が径方向に突没することをいう。以下の「ねじ部材脱落防止部材の内縁が径方向に突没する」も同様である。
【0008】
本発明のノッキングセンサユニットにおいて、前記ねじ部材脱落防止部材の内縁が径方向に突没する凹凸状をなしていてもよい。
このノッキングセンサユニットによれば、ねじ部材脱落防止部材と、ねじ部材のねじ山との接触面積が低減し、ねじ部材脱落防止部材をねじ部材に挿入し易くなる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ノッキングセンサに、ねじ部材を低コストでかつ脱落を防止して確実にセットしたノッキングセンサユニットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るノッキングセンサユニットの外観を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るノッキングセンサの断面図である。
【
図3】ねじ部材脱落防止部材がねじ挿通孔に接触した状態を示す断面図である。
【
図4】ねじ部材脱落防止部材がねじ部材に係合した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~
図3を参照し、本発明の実施形態に係るノッキングセンサについて説明する。
図1はノッキングセンサの外観を示し、
図2はノッキングセンサを軸方向に破断した断面図を示し、
図3はねじ部材脱落防止部材がねじ挿通孔に接触した状態を示す断面図を示し、
図4はねじ部材脱落防止部材がねじ部材に係合した状態を示している。
図1において、ノッキングセンサ1は、内燃機関のシリンダブロック等へ取付けるためのねじ挿通孔11(
図2参照)を中心部に有する、いわゆるセンターホール式非共振型のノッキングセンサである。ノッキングセンサ1は、樹脂モールド材料である合成樹脂(例えばナイロン66)製のケース3により覆われている。このケース3は、上部がテーパ状に成形された円柱形状の素子収納部5と、図示しない点火時期制御装置からのコネクタを接続するコネクタ部7とから構成されている。
図2に示すように、ノッキングセンサ1は、金属材料(例えばSPHD、SWCH25K)からなる主体金具9を備えており、主体金具9は、ねじ部材(六角ボルト)30を挿通するためのねじ挿通孔11を有する円筒形状の筒状部13と、筒状部13の一端側(
図1の下側)にて外周面から周方向外側に張り出す鍔部15とを有している。
この主体金具9の鍔部15の厚み方向の一面(
図1の上面)側には、筒状部13の外周に嵌められる環状(円筒形状)で、圧電セラミックス(例えばPZT)からなる圧電素子17が載置されている。
また、圧電素子17の上面側には、筒状部13の外周に嵌められる環状(円筒形状)で、錘としての効果を発揮する比重を有する金属材料(例えばSMF4050)からなるウェイト19が載置されている。
【0012】
鍔部15と圧電素子17との間、及びウェイト19と圧電素子17との間、即ち圧電素子17の厚み方向の両側には、導電材料(例えば黄銅)からなる出力端子21、23が、それぞれ圧電素子17と接するように配置されている。なお、出力端子21、23のうち圧電素子17と接する部分は環状である。
また、鍔部15と出力端子21との間、及び出力端子23とウェイト19との間には、絶縁性を有するフィルム状の合成樹脂(例えばPET)からなる環状の絶縁体25、27がそれぞれ配置され、出力端子21、23が主体金具9の鍔部15やウェイト19と短絡しないようにされている。
なお、圧電素子17とウェイト19と出力端子21、23(環状部分)と絶縁体25、27との内周面と、筒状部13の外周面との間には、環状の空間20が形成されており、この環状の空間20にも上記合成樹脂が充填されている。更に、主体金具9には、金属材料(例えばSK-5M)からなり、ウェイト19を鍔部15方向(同図下方)へ押圧する環状の板バネ29が取り付けられている。
【0013】
さらに、板バネ29の上側の位置において、筒状部13の外周面には、筒状部13の内面13aから周方向外側に向かって塑性変形して突出する突出部13pが設けられている。そして、突出部13pが板バネ29の上面に接することによって、板バネ29が下方に押圧され、さらに板バネ29の弾性力によりウェイト19が係止され、ウェイト19と鍔部15との間の積層構造体(圧電素子17、出力端子21、23、絶縁体25、27)が主体金具9に固定される。
【0014】
一方、ねじ部材30は、六角形のねじ頭30aと、雄ネジが設けられたねじ部30bとを一体に有し、ねじ頭30aはねじ挿通孔11の内径よりも径大になっている。そして、ノッキングセンサ1の板バネ29側からねじ部材30をねじ挿通孔11に挿通することで、ねじ頭30aがノッキングセンサ1の一端面1e(
図2の上面)に係止しつつ、ねじ部30bがねじ挿通孔11に挿通されてノッキングセンサ1の反対側の端面(
図2の下面)をなす取付座面1fから突出している。つまり、端面1eから端面1fに向かう方向Fが「取付挿通方向」となる。
さらに、円環シート状のPET樹脂からなる、ねじ部材脱落防止部材40がねじ部30bとねじ挿通孔11の間に配置され、取付挿通方向Fと逆向きにねじ部材30が移動して脱落するのを防止している。
【0015】
図3に示すように、ねじ部材脱落防止部材40は、自身の外縁40eの輪郭が径方向に突没する凹凸状をなしてねじ挿通孔11の内面に接触している。又、本例では、ねじ部材脱落防止部材40の内縁40iの輪郭も径方向に突没する凹凸状をなしている。
そして、
図3、
図4に示すように、ねじ部材脱落防止部材40は、ねじ部材30の隣接するねじ山30s1、30s2の頂点間の間隔(ピッチ)より薄い厚みtの円環状をなし、ねじ山30s1、30s2に係合している。
厚みtは限定されないが、例えば0.1~0.7mmとすることができる。又、ねじ部材脱落防止部材40は環状であればよく、円環の他、例えば円環の一部を切り欠いたC環状等でもよい。
【0016】
以上のように、環状のねじ部材脱落防止部材40にてねじ部材30をねじ挿通孔11の内部に係止するので、ねじ部材30の外表面に脱落防止用の樹脂等を一体成形等する必要がなく、ノッキングセンサ1に、ねじ部材30を低コストでかつ脱落を防止して確実にセットできる。又、ねじ部材30を加工する必要がないので、汎用のねじ部材を使用できる。
又、ねじ部材脱落防止部材40を、ねじ部材の隣接するねじ山の頂点間の間隔より薄い厚みの環状とすることで、安価に市販されている汎用の樹脂シート等からねじ部材脱落防止部材40を容易に製造(打ち抜き等)することができ、コストダウンをさらに図ることができる。
さらに、ねじ部材脱落防止部材40の外縁40eの輪郭を凹凸状にすることで、薄いねじ部材脱落防止部材40が凸部で適度に撓んでねじ挿通孔11に接触するので、ねじ挿通孔11との係止力が向上する。
【0017】
なお、
図4に示すように、ねじ部材脱落防止部材40の内縁40iの輪郭も凹凸状とすると、ねじ部材脱落防止部材40と、ねじ部材30のねじ山30s1、30s2との接触面積が低減し、ねじ部材脱落防止部材40をねじ部材30に挿入し易くなる。
又、ねじ部材脱落防止部材40のヤング率が1.2~4.2MPaであると、ねじ部材脱落防止部材40が適度に撓むので、ねじ部材脱落防止部材40をねじ部材30に挿入し易くなると共に、ねじ部材脱落防止部材40とねじ挿通孔11との間の係止力がさらに向上する。
【0018】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
ねじ部材脱落防止部材40としては、PETの他、PA(ポリアミド)樹脂を用いることができる。ねじ部材脱落防止部材40の形状も上記に限定されない。
ノッキングセンサ1の構成も上記に限定されない。
【符号の説明】
【0019】
1 ノッキングセンサ
11 ねじ挿通孔
30 ねじ部材
30s1,30s2 隣接するねじ山の頂点
40 ねじ部材脱落防止部材
40e ねじ部材脱落防止部材の外縁
40i ねじ部材脱落防止部材の内縁
100 ノッキングセンサユニット
t ねじ部材脱落防止部材の厚み