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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】毛髪洗浄用組成物および毛髪洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20220107BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220107BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/39
A61K8/44
A61K8/37
A61Q5/02
A61K8/73
A61K8/42
A61K8/46
A61K8/33
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017162976
(22)【出願日】2017-08-28
(65)【公開番号】P2019038785
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】特許業務法人河崎・橋本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川越 紘
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138052(JP,A)
【文献】特開2016-013984(JP,A)
【文献】特開平11-263715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)が配合されたことを特徴とする毛髪洗浄用組成物。
(A)ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-47及び/又はポリクオタニウム-53
(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及び/又はその塩
(C)脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン
(D)モノカプリン酸グリセリル及び/又はモノカプリル酸グリセリル
【請求項2】
前記成分(B)が1.0質量%以上の配合量である請求項1に記載の毛髪洗浄用組成物。
【請求項3】
下記成分(E)が、10質量%未満又は無配合である請求項1又は2に記載の毛髪洗浄用組成物。
(E)脂肪酸N-メチルエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム及び/又はカチオン化カッシア
【請求項4】
前記成分(E)である脂肪酸N-メチルエタノールアミド及び脂肪酸ジエタノールアミドが、3.0質量%未満の配合量、又は、無配合である請求項に記載の毛髪洗浄用組成物。
【請求項5】
前記成分(E)であるカチオン化セルロース、カチオン化グアーガム及びカチオン化カッシアが、0.5質量%未満の配合量、又は、無配合である請求項3又は4に記載の毛髪洗浄用組成物。
【請求項6】
下記成分(F)が配合された請求項1~5のいずれか1項に記載の毛髪洗浄用組成物。
(F)ピロ亜硫酸塩、亜硫酸塩、アセチルシステイン及び/又はジブチルヒドロキシトルエン
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の毛髪洗浄用組成物を使用する毛髪洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪を洗浄するための毛髪洗浄用組成物、当該組成物を使用する毛髪洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸は、皮膚への刺激性が低く、毛髪や身体を洗浄するための毛髪洗浄用組成物に配合するアニオン界面活性剤として適する。例えば、特許文献1には、毛髪洗浄剤組成物において、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウムと共に、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及びカチオン化セルロース(塩化0-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース)又はカチオン化グアーガム(塩化O-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕グアーガム)を配合する開示がある(引用文献1の表1参照)。この組成物において、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガムは、洗い流す際の指通りを高める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-222314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1が開示するようなポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及び/又はその塩が配合された組成物であれば、皮膚への低刺激性を期待できるが、洗い流す際の指通りについては、カチオン化セルロースやカチオン化グアーガム以外のカチオン化高分子を配合する際にも、優れることが望まれる。
【0005】
また、公知の毛髪洗浄用組成物の中には、保管中に、その組成物が黄色に変色する黄変が見られることがあった。この黄変は、実際に使用する上での毛髪洗浄用組成物の品質に問題はなくても、使用者に悪い印象を与える場合がある。特に容器が透明であると、収容された毛髪洗浄用組成物の色を視認可能なので、品質が疑われる虞がある。そのため、毛髪洗浄用組成物の黄変を、必要に応じて抑制可能な提案が望まれる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、少なくとも洗い流す際の指通りに優れる毛髪洗浄用組成物、及び、当該組成物を使用する毛髪洗浄方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意検討を行った結果、洗い流す際の指通りに関して、カチオン化セルロースおよびカチオン化グアーガムよりも優れるポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-47及び/又はポリクオタニウム-53を配合する際に、モノカプリン酸グリセリル及び/又はモノカプリル酸グリセリルを配合すれば、その指通りに優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る毛髪洗浄用組成物は、下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)が配合されたことを特徴とする。なお、成分(C)は、成分(A)の溶解性を向上させる。
(A)ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-47及び/又はポリクオタニウム-53
(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及び/又はその塩
(C)脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン
(D)モノカプリン酸グリセリル及び/又はモノカプリル酸グリセリル
【0009】
本発明に係る毛髪洗浄用組成物において、前記成分(B)が1.0質量%以上の配合量であると良い。この配合量であれば、当該成分(B)以外のアニオン界面活性剤の配合量を抑えたとしても、良好な洗浄力と、皮膚へ低刺激性を期待できる。
【0010】
本発明に係る毛髪洗浄用組成物は、下記成分(E)が、10質量%未満又は無配合であると良い。
(E)脂肪酸N-メチルエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム及び/又はカチオン化カッシア
毛髪洗浄用組成物の黄変は、前記成分(B)と成分(E)との併用により生じる知見を得、黄変を抑えるには、成分(E)が、10質量%未満の配合量、又は、無配合が好ましい。
【0011】
本発明に係る毛髪用組成物において、黄変を抑制するためには、前記成分(E)である脂肪酸N-メチルエタノールアミド及び脂肪酸ジエタノールアミドが、3.0質量%未満の配合量、又は、無配合が好ましい。また、黄変を抑制するためには、前記成分(E)であるカチオン化セルロース、カチオン化グアーガム及びカチオン化カッシアが、0.5質量%未満の配合量、又は、無配合が好ましい。
【0012】
本発明に係る毛髪洗浄用組成物は、黄変の進行を抑制するために、記成分(F)が配合されたものが良い。
(F)ピロ亜硫酸塩、亜硫酸塩、アセチルシステイン及び/又はジブチルヒドロキシトルエン
黄変は、前記成分(B)と(E)で生じるよりも程度が小さいが、前記成分(B)と(C)でも生じる場合がある。この場合において、成分(F)の配合は好適である。
【0013】
本発明に係る毛髪洗浄方法は、本発明に係る毛髪洗浄用組成物を使用するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る毛髪洗浄用組成物によれば、成分(C)である脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインにより、洗い流す際の指通りを良好とする成分(A)であるポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-47及び/又はポリクオタニウム-53の溶解性を高め、成分(D)であるモノカプリン酸グリセリル及び/又はモノカプリル酸グリセリルの配合により、洗い流す際の指通りが更に良好となる。また、成分(B)であるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及び/又はその塩の配合により、皮膚への低刺激性を期待できる。
【0015】
また、本発明に係る毛髪洗浄方法によれば、成分(C)である脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインにより、溶解性が高まった成分(A)であるポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-47及び/又はポリクオタニウム-53により、洗い流す際の指通りが良好であり、成分(D)であるモノカプリン酸グリセリル及び/又はモノカプリル酸グリセリルにより、洗い流す際の指通りがより良好となる。また、成分(B)であるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及び/又はその塩により、皮膚への低刺激性を期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態の毛髪洗浄用組成物は、後記の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び水が配合されたものである(なお、本実施形態の毛髪洗浄用組成物における水の配合量は、例えば65質量%以上である。)。また、本実施形態の毛髪洗浄用組成物を毛髪洗浄のために使用する場合、公知の毛髪洗浄用組成物に配合されている成分を、任意に配合しても良い。
【0017】
(成分(A))
本実施形態の毛髪洗浄用組成物には、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-47及び/又はポリクオタニウム-53が成分(A)として配合される。
【0018】
本実施形態の毛髪洗浄用組成物に配合されるポリクオタニウム-22は、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドとアクリル酸との共重合体であり、例えばLubrizol社製「Merquat280」、「Merquat295」が市販されている。上記ポリクオタニウム-47は、アクリル酸、アクリル酸メチル及び塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムを重合して得られるものであり、例えばLubrizol社製「Merquat2001」が市販されている。ポリクオタニウム-53は、アクリル酸、アクリルアミド及びメタクリルアミドプロピルトリモニウムクロリドの共重合体であり、例えばLubrizol社製「Merquat2003PR」が市販されている。
【0019】
本実施形態の毛髪洗浄用組成物には、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-47及びポリクオタニウム-53から選ばれた一種又は二種以上が成分(A)として配合される。本実施形態の毛髪洗浄用組成物における成分(A)の配合量は、例えば0.2質量%以上1.0質量%以下である。
【0020】
(成分(B))
本実施形態の毛髪洗浄用組成物には、アニオン界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及び/又はその塩が成分(B)として配合される。
【0021】
本実施形態の毛髪洗浄用組成物に配合されるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸は、下記一般式(I)で表されるものである。
-(OCHCH)n-OCHCOOH (I)
[上記一般式(I)において、Rは、アルキル基を表し、例えば炭素数10以上16以下の直鎖状アルキル基である。また、上記一般式(I)において、nは、酸化エチレンの平均付加モル数を表し、例えば12以下である。]
【0022】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸としては、例えば、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(2)トリデシルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(3)トリデシルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(7)トリデシルエーテル酢酸が挙げられる(これらの例示したポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸における括弧内の数値は、酸化エチレンの平均付加モル数を表す。)。
【0023】
成分(B)がポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩である場合、その塩の形態としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
【0024】
本実施形態の毛髪洗浄用組成物には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及びその塩から選ばれた一種又は二種以上が成分(B)として配合される。本実施形態の毛髪洗浄用組成物における成分(B)の配合量は、使用時の起泡性を良好にするため、1.0質量%以上が良く、1.5質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。一方、成分(B)の配合量の上限は、例えば5.0質量%である。なお、成分(B)の配合量を高めると、後記成分(C)又は(E)の配合による黄変が生じやすくなる場合があるが、成分(F)を配合すれば、黄変の進行を抑制できる。
【0025】
(成分(C))
本実施形態の毛髪洗浄用組成物には、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインが成分(C)として配合される。成分(C)の配合により、成分(A)の溶解性が高まる。また、成分(C)を成分(B)と共に配合すると、黄変が生じやすくなるが、その黄変は、成分(F)の配合により抑えられる。
【0026】
上記脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインは、下記一般式(II)で表されるものである。この脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインとしては、例えば、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。
【0027】
【化1】
[上記一般式(II)において、Rは、アルキル基を表し、例えば炭素数10以上16以下の直鎖状アルキル基である。]
【0028】
本実施形態の洗浄用組成物には、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインから選ばれた一種又は二種以上が成分(C)として配合される。本実施形態の毛髪洗浄用組成物における成分(C)の配合量は、3.0質量%以上10質量%以下が良く、5.0質量%以上9.0質量%以下が好ましい。3.0質量%であると、使用時の泡立ち及び成分(A)の溶解性に適し、10質量%以下であると、黄変の抑制に適する。
【0029】
本実施形態の毛髪洗浄用組成物を製造する際には、上記の通り、成分(C)が成分(A)の溶解性を高める。そして、その製造においては、水に成分(A)を溶解させてから、その水溶液に成分(C)を混合すると良い。
【0030】
(成分(D))
本実施形態の毛髪洗浄用組成物には、モノカプリン酸グリセリル及び/又はモノカプリル酸グリセリルが成分(D)として配合される。この成分(D)の配合により、洗い流す際の指通り、使用時の泡立ちが向上する。また、成分(B)を配合した毛髪洗浄用組成物の粘度は、他のアニオン界面活性剤の配合よりも低くなる傾向となるが、成分(D)は、モノラウリン酸グリセリルなど他のモノ脂肪酸グリセリルよりも、粘度が高まる。この粘度ついて、トリオレイン酸PEG-120メチルグルコースなどの高分子量の増粘剤で高めることができるが、成分(D)の方が、経時的な粘度変化が小さい。更に、成分(D)は、下記成分(E)である脂肪酸N-メチルエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミドの配合による黄変を、生じさせない。
【0031】
本実施形態の毛髪洗浄用組成物には、モノカプリン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、又は、モノカプリン酸グリセリル及びモノカプリル酸グリセリルが成分(D)として配合され、粘度を高める観点からは、モノカプリン酸グリセリル、又は、モノカプリン酸グリセリル及びモノカプリル酸グリセリルの配合が良い。本実施形態の毛髪洗浄用組成物における成分(D)の配合量は、洗い流す際の指通り、泡立ちを十分とするために、0.3質量%以上が良く、0.5質量%以上が好ましく、0.8質量%以上がより好ましい。一方、成分(D)の配合量の上限は、例えば3.0質量%である。
【0032】
(任意成分)
本実施形態の毛髪洗浄用組成物には、成分(A)、(B)、(C)及び(D)以外にも、毛髪洗浄用組成物に配合する成分として公知のものを、任意に配合しても良い。この任意成分として、下記成分(E)、(F)を配合しても良い。また、成分(E)、(F)以外の任意成分は、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、多価アルコール、糖類、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤などが挙げられる。
【0033】
成分(E)
本実施形態の毛髪洗浄用組成物には、脂肪酸N-メチルエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム及び/又はカチオン化カッシアを、成分(E)として配合しても良い。成分(E)の少なくとも一種を成分(B)と共に配合した場合、黄変が生じやすくなるが、その黄変は、成分(F)の配合により抑えられる。
【0034】
本実施形態の毛髪洗浄用組成物には、脂肪酸N-メチルエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム及びカチオン化カッシアから選ばれた成分(E)の一種又は二種以上を配合しても良い。この成分(E)の配合量は、本実施形態の毛髪洗浄用組成物において、10質量%未満が良く、8.0質量%未満が好ましく、7.0質量%未満がより好ましく、6.0質量%未満が更に好ましく、5.0質量%未満がより更に好ましい。成分(E)の配合量が多いと黄変が生じ易くなる傾向があるので、10質量%未満であれば、黄変の抑制に適する。
【0035】
成分(E)の中でも、脂肪酸N-メチルエタノールアミド及び脂肪酸ジエタノールアミドは、黄変を生じさせ易い。黄変をより抑制する観点からは、本実施形態の毛髪洗浄用組成物において、脂肪酸N-メチルエタノールアミド及び脂肪酸ジエタノールアミドが、3.0質量%未満の配合量が良く、2.5質量%未満の配合量が好ましく、2.0質量%未満の配合量がより好ましく、1.0質量%未満の配合量が更に好ましい(無配合がより更に好ましい。)。
【0036】
上記脂肪酸N-メチルエタノールアミドとしては、例えば、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミドが挙げられる。また、上記脂肪酸ジエタノールアミドとしては、例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドが挙げられる。
【0037】
本実施形態の毛髪洗浄用組成物において、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム及びカチオン化カッシアの配合量は、黄変をより抑制する観点からは、0.5質量%未満の配合量が良く、0.3質量%未満の配合量が好ましく、0.2質量%未満の配合量がより好ましい(無配合が更に好ましい。)。
【0038】
上記カチオン化セルロースとしては、例えば、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。上記カチオン化グアーガムとしては、例えば、塩化O-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕グアーガムが挙げられる。また、カチオン化カッシアとしては、例えば、塩化O-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕カッシアが挙げられる。
【0039】
成分(F)
本実施形態の毛髪洗浄用組成物には、黄変を抑制するため、ピロ亜硫酸塩、亜硫酸塩、アセチルシステイン及び/又はジブチルヒドロキシトルエンを成分(F)として配合すると良い。
【0040】
上記ピロ亜硫酸塩としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウムが挙げられる。また、上記亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウムが挙げられる。
【0041】
本実施形態の毛髪洗浄用組成物には、ピロ亜硫酸塩、亜硫酸塩、アセチルシステイン及びジブチルヒドロキシトルエンから選ばれた一種又は二種以上を、成分(F)として配合すると良い。本実施形態の毛髪洗浄用組成物における成分(F)の配合量は、黄変の抑制を良好とするために、0.005質量%以上が良く、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましい。一方、成分(F)の配合量の上限は、例えば0.15質量%である。
【0042】
成分(B)以外のアニオン界面活性剤を本実施形態の毛髪洗浄用組成物に配合する場合、当該アニオン界面活性剤としては、例えば、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルグリシジルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-アシルメチルタウリン塩などのスルホン酸系アニオン界面活性剤;アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩などの硫酸系アニオン界面活性剤;が挙げられる。本実施形態の毛髪洗浄用組成物において、成分(B)を含めたアニオン界面活性剤の配合量は、例えば7.0質量%以上20質量%以下である。
【0043】
成分(C)である脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン以外の両性界面活性剤を本実施形態の毛髪洗浄用組成物に配合する場合、当該両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、スルホベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリンベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。本実施形態の毛髪洗浄用組成物において、成分(C)を含めた両性界面活性剤の配合量は、例えば3質量%以上10質量%以下である。
【0044】
また、成分(D)、(E)であるモノカプリン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、脂肪酸N-メチルエタノールアミド及び脂肪酸ジエタノールアミド以外のノニオン界面活性剤を本実施形態の毛髪洗浄用組成物に配合する場合、当該ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。本実施形態の毛髪洗浄用組成物において、モノカプリン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、脂肪酸N-メチルエタノールアミド及び脂肪酸ジエタノールアミドを含めたノニオン界面活性剤の配合量は、例えば0.5質量%以上5質量%以下である。
【0045】
(剤型)
本実施形態の毛髪洗浄用組成物の剤型は、毛髪の洗浄を行う場合には、液状が良い。液状にに調整する場合、B型粘度計を使用して25℃で計測した60秒後の粘度が、例えば100mPa・s以上2000mPa・s以下である。
【0046】
(pH)
本実施形態の毛髪洗浄用組成物の25℃におけるpHは、泡立ちの観点から、4.5以上7.0以下が良く、5.0以上6.5以下が好ましい。
【0047】
(使用方法)
本実施形態の毛髪洗浄用組成物は、公知の毛髪洗浄用組成物と同様に用いられる。つまり、毛髪を水洗し、本実施形態の毛髪洗浄用組成物を毛髪に塗布して泡立ててから、当該組成物を水洗除去すると良い。
【0048】
(毛髪洗浄用製品)
本実施形態の毛髪洗浄用組成物は、容器に収容した毛髪洗浄用製品とすると良い。この場合、洗毛髪洗浄用組成物を収容する容器が透明であっても、毛髪洗浄用組成物の黄変の進行を抑制することで、使用者への悪印象の付与が抑えられる。
【実施例
【0049】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0050】
(実施例、比較例)
実施例及び比較例の透明の液状毛髪洗浄用組成物を、ポリクオタニウム-22(Lubrizol社製「Merquat280」)、ポリクオタニウム-7(Lubrizol社製「Merquat740」)、ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ミリスチン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、モノカプリン酸グリセリル、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド、プロピレングリコールモノラウレート、オレフィン(C14-16)スルホン酸ナトリウム、N-ラウロイル-L-アスパラギン酸ナトリウム、マカデミアナッツ油PEG-16エステルズ、エデト酸2ナトリウム、抗炎症剤、ピロ亜硫酸ナトリウム、防腐剤、及び香料から選んだ成分と、水とを配合して製造した。この製造において、水と配合した成分及びその配合量は、下記表1~3の通りである。また、クエン酸を適量配合し、各毛髪洗浄用組成物のpHを5.7~6.2に調整した。
【0051】
(「洗い流す際の指通り」評価)
製造した実施例及び比較例の毛髪洗浄用組成物を、予洗いした毛髪に塗布し、泡立てた後に、温水で洗い流した。その洗い流し中、洗い流し後の指通りを、「洗い流す際の指通り」として評価した。その評価を行った際の詳細は、下記の通りである。
【0052】
上記評価においては、(1)実施例1と比較例1との比較、(2)比較例2aと比較例2bとの比較、(3)実施例3と比較例3との比較を行った。その(1)及び(2)の比較では、酸化染毛処理履歴がある日本人女性から採取した毛束(長さ30cm程度、質量5g程度)に対して、各毛髪洗浄用組成物を使用した。また、(3)の比較では、女性頭髪(酸化染毛処理履歴がある日本人女性の頭髪)の左右に対して、異なる毛髪洗浄用組成物を使用した。
【0053】
そして、「洗い流す際の指通り」の評価においては、基準を定めた比較を評価者4名で行い、引っ掛かりが少なく、滑らかな指通りが基準よりも良いと判断した評価者が3名以上の場合、「○」の評価を行った。
【0054】
下記表1において、実施例1と比較例1とを比較した評価結果を、下記表2において、比較例2aと比較例2bとを比較した評価結果を、下記表3において、実施例3と比較例3とを比較した評価結果を、配合した成分、配合量と共に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
上記表1~2からは、モノカプリン酸グリセリル(実施例1)、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド(比較例1、比較例2a)、プロピレングリコールモノラウレート(比較例2b)の順に、「洗い流す際の指通り」の評価に優れていたことを確認できる。つまり、成分(D)が配合された毛髪洗浄用組成物は、洗い流す際の指通りを良好とする。
【0058】
【表3】
【0059】
上記表3における実施例3と比較例3とを対比すると、成分(A)及び(D)が配合された毛髪洗浄用組成物は、洗い流す際の指通りが良好であったことを確認できる。
【0060】
(参考例1a~1e、参考例2a~2f)
参考例1a~1eの組成物を、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド又はラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインと、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースと、水とを配合して製造した。この製造において、水と配合した成分の濃度は、下記表4の通りである。
【0061】
また、参考例2a~2fの組成物を、ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミドから選ばれた成分と、水とを配合して製造した。この製造において、水と配合した成分の濃度は、下記表5の通りである。
【0062】
参考例1a~1e、参考例2a~2fの組成物の黄変の確認を、次の通り行った。透明のバイアル瓶(高さ12cm、直径4cm程度)に各組成物を注入し、その容器を密閉した。その後、5℃又は50℃の温度条件で4か月放置した。そして、製造時の組成が同じ組成物について、5℃で放置したものと、50℃で放置したものとを目視にて対比し、着色の程度をもって黄変を確認した。
【0063】
下記表4に、参考例1a~1eの組成物について、黄変の有無と共に、水と配合した成分及びその配合量を示す。表4に示す通り、成分(B)であるポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム又はポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸ナトリウムと、成分(E)である塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースとを配合した参考例1b、1cにおいて、黄変が確認された。
【0064】
【表4】
【0065】
下記表5に、参考例2a~2fの組成物について、黄変の有無と共に、水と配合した成分及びその配合量を示す。表5に示す通り、参考例2b~2eにおいて黄変が確認された。そして、成分(B)と脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン)との配合(参考例2b、2d)の方が、成分(B)と脂肪酸N-メチルエタノールアミド(ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド)との配合(参考例2c、2e)よりも、黄変の程度が小さい結果であった。
【0066】
【表5】
【0067】
(参考例3a~3d)
参考例3a~3dの透明の液状毛髪洗浄用組成物を、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(酸化エチレンの平均付加モル数が4.5のものと、10のものとを併用)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、亜硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、システイン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、安息香酸ナトリウム及びフェノキシエタノールから選んだ成分と、水とを配合して製造した。この製造において、水と配合した成分及びその配合量は、下記表6の通りである。また、クエン酸と水酸化ナトリウムを適量配合し、各毛髪洗浄用組成物のpHを5.0~6.0に調整した。
【0068】
参考例3a~3dの毛髪洗浄用組成物の黄変の確認を、次の通り行った。透明のバイアル瓶(高さ12cm、直径4cm程度)に各毛髪洗浄用組成物を注入し、その容器を密閉した。その後、60℃の温度条件で23日間放置した。そして、参考例3cを基準として、着色の程度をもって黄変を確認した。
【0069】
下記表6に、参考例3a~3dの毛髪洗浄用組成物について、黄変の確認結果と共に、水と配合した成分及びその配合量を示す。表6に示す「○」は基準よりも黄変が抑えられていたことを意味し、「◎」は「○」よりも黄変が抑えられていたことを意味し、「×」は基準よりも黄変が進んでいたことを意味する。つまり、表6においては、成分(F)により黄変を抑制可能であって、アセチルシステインが黄変を抑制し、亜硫酸塩である亜硫酸ナトリウムがより黄変を抑制したことを確認できる。
【0070】
【表6】
【0071】
(参考例4a~4c)
参考例4a~4cの透明の液状毛髪洗浄用組成物を、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(酸化エチレンの平均付加モル数が4.5のものと、10のものとを併用)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、安息香酸ナトリウム及びフェノキシエタノールから選んだ成分と、水とを配合して製造した。この製造において、水と配合した成分の配合量は、下記表7の通りである。また、クエン酸と水酸化ナトリウムを適量配合し、各毛髪洗浄用組成物のpHを5.0~6.0に調整した。
【0072】
参考例4a~4cの毛髪洗浄用組成物の黄変の確認を、次の通り行った。透明のバイアル瓶(高さ12cm、直径4cm程度)に各毛髪洗浄用組成物を注入し、その容器を密閉した。その後、60℃の温度条件で30日間放置した。そして、参考例4aを基準として、着色の程度をもって黄変を確認した。
【0073】
下記表7に、参考例4a~4cの毛髪洗浄用組成物について、黄変の確認結果と共に、水と配合した成分及びその成分濃度を示す。表7に示す「◎」は、基準である「○」よりも黄変が抑えられていたことを意味する。つまり、表7においては、成分(F)により黄変を抑制可能であって、亜硫酸塩である亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムよりも、ピロ亜硫酸塩であるピロ亜硫酸ナトリウムの方が黄変を抑制したことを確認できる。
【0074】
【表7】