(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】車両用のシートパッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/14 20060101AFI20220107BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20220107BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20220107BHJP
A47C 7/00 20060101ALI20220107BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A47C27/14 A
B60N2/90
B60N2/64
A47C7/00 C
A47C7/40
(21)【出願番号】P 2017183039
(22)【出願日】2017-09-22
【審査請求日】2020-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】松本 真人
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-050119(JP,A)
【文献】特開昭51-046254(JP,A)
【文献】実開平02-112141(JP,U)
【文献】実開平05-093816(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0239678(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1241018(KR,B1)
【文献】特許第5203691(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/14
B60N 2/90
B60N 2/64
A47C 7/00
A47C 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割型で構成した成形型内で発泡原料を発泡させることにより発泡体からなるパッド基材を形成するようにした車両用のシートパッドの製造方法において、
前記パッド基材の湾曲した外周縁に倣うよう形成した補強部材に設けた突出部の突出端部で開口する嵌合孔を、前記成形型を構成する嵌合突部を形成した分割型の当該嵌合突部に嵌合させて、当該突出部の突出端部が当該分割型の成形面に当接した状態で当該補強部材を設置し、
前記成形型の型閉めにより前記嵌合突部を形成した分割型と対向する別の分割型に設けた係合突部を前記補強部材に当接させて、当該嵌合突部を形成した分割型と当該係合突部とにより当該補強部材を挟持し、
前記補強部材を挟持した状態で、前記成形型内で発泡原料を発泡させて前記パッド基材を形成し、
前記パッド基材を前記成形型から脱型することで、湾曲した外周縁に沿うよう外表面側に前記補強部材が埋設された状態で当該補強部材の前記嵌合孔が外表面で開口するシートパッドを製造するようにした
ことを特徴とする車両用のシートパッドの製造方法。
【請求項2】
前記成形型を型閉めした状態で、前記嵌合突部に前記嵌合孔が嵌合する嵌合位置から偏倚して延在する前記補強部材の補強部に対して、前記成形型を構成する何れかの前記分割型に設けた位置規制突部を当該補強部の前記嵌合突部を形成した分割型の前記成形面の他端側の縁部に当接させた状態で、前記成形型内で発泡原料を発泡させるようにした請求項1記載の車両用のシートパッドの製造方法。
【請求項3】
前記嵌合突部を形成した分割型において前記パッド基材の本体部を成形する第1の成形面の一端側に、当該第1の成形面より上方に位置して当該パッド基材における本体部の上部後方に位置する後側支持壁部を成形する第2の成形面を設けると共に、当該第2の成形面の一側部に、当該第2の成形面より下方に位置して当該パッド基材における本体部の上部左側に位置する左側支持壁部を成形する第3の成形面を設け、当該第2の成形面の他側部に、当該第2の成形面より下方に位置して当該パッド基材における本体部の上部右側に位置する右側支持壁部を成形する第4の成形面を設けるよう構成し、
前記第2の成形面における前記第1成形面から離間する端縁部、前記第3の成形面および第4の成形面における前記第2の成形面から離間する下縁部に沿って延在するよう前記補強部材を設置し、
前記成形型内で発泡原料を発泡させた前記パッド基材を前記成形型から脱型することで、前記本体部の上部に形成された上方および前方に開放する凹形状のヘッドレスト装着部の前方の開口縁および上方の開口縁に沿って前記補強部材を埋設するようにした請求項1または2記載の車両用のシートパッドの製造方法。
【請求項4】
前記第1の成形面に形成した前記嵌合突部に前記嵌合孔を嵌合させて、前記突出部の突出端部が前記第1の成形面の成形面に当接した状態で前記補強部材を設置し、
前記成形型を型閉めした状態で、前記第2の成形面における前記第1の成形面から離間する端縁部に沿って延在する前記補強部材の前記補強部に対して、前記成形型を構成する何れかの前記分割型に設けた前記位置規制突部を当該補強部の前記第1の成形面の他端側の縁部に当接させた状態で、前記成形型内で発泡原料を発泡させるようにした請求項3記載の車両用のシートパッドの製造方法。
【請求項5】
前記成形型の型閉めした際に、前記突出部において前記嵌合孔と反対側で開口する開口部を、前記係合突部により塞ぐようにした請求項1~4の何れか一項に記載の車両用のシートパッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成形型内で発泡原料を発泡させることにより発泡体からなるパッド基材を形成する車両用のシートパッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の乗員室内に設置されるシート100は、例えば
図12に示すように、着座した乗員の下半身を支えるシートクッション102と、このシートクッション102の後部に傾動可能に設置されて乗員の上半身を支えるシートバック104と、シートバック104の上部に設置されて乗員の頭部を保護するヘッドレスト106とを備えるよう構成されていることが一般的である。このようなシートクッション102やシートバック104は、ポリウレタンフォーム等の発泡樹脂部材により形成されたシートパッドの表面をファブリックや合成皮革または皮革等の表皮材により形成されたシートカバーで覆う(カバーリングする)ように形成されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、シートカバーは、所要のデザイン形状に形成したシートパッドに対して弛みがないように張設することが求められることから、前記特許文献1のように、ファブリックや合成皮革または皮革等の表皮材を縫製して袋状に形成するよう形成されたシートカバーの縫い代を、シートパッドに形成されたホグリング用の溝に引き込むことにより、シートパッドの表面形状に対して弛みなく張設される。このような袋状のシートカバーをシートパッドに被せる際や、表皮材の縫い代をホグリング用の溝に引き込む際に、シートパッドの外周縁が変形してしまうと、シートパッドのデザインが損なわれてしまう。このようなシートパッドの変形は、前述した特許文献1のように、シートパッドの上端部や側部等のシートパッドの外周縁側を構成する発泡樹脂部材の剛性を高くすることで抑制することができる。しかしながら、シートパッドを構成する発泡樹脂部材の硬度を完全に制御して製造することは極めて困難で、発泡体の硬度にばらつきが必然的に生じることから、カバーリング時のシートパッドの変形を完全に防止することは困難である。また、シートパッド自体が発泡樹脂部材により構成されるため、その弾性的な変形を防ぐことはできないことから、カバーリング時のシートパッドの変形を完全に防止することは困難である。このようなシートパッドの変形を防止するために、カバーリングを行う際にシートパッドの変形し易い部分に別に用意した部品を接着等してその剛性を高めることが行われているが、作業工数が増大するばかりでなく、作業者毎に部品の取付精度にばらつきが生じ、一定の品質を維持できない問題が発生することが懸念される。
【0005】
また、近年は、シートデザインに対する要求の高まりを受け、シートパッドを複雑な曲面形状を有する立体形状に形成されることがあり、このようなケースではシートパッドの変形が起き易くなる。またシートパッドのデザイン性が高まるにつれ、肉厚が部分的に極めて薄くなる立体形状に形成されることがあり、このような場合は、カバーリング時のシートパッドの変形に限らず、例えば乗員によりシートパッドの外周縁が押されるなどによってシートパッドの変形を生じ易い問題が指摘される。
【0006】
すなわち本発明は、パッド基材の変形を効果的に防止し得る車両用のシートパッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、
複数の分割型で構成した成形型内で発泡原料を発泡させることにより発泡体からなるパッド基材を形成するようにした車両用のシートパッドの製造方法において、
前記パッド基材の湾曲した外周縁に倣うよう形成した補強部材に設けた突出部の突出端部で開口する嵌合孔を、前記成形型を構成する嵌合突部を形成した分割型の当該嵌合突部に嵌合させて、当該突出部の突出端部が当該分割型の成形面に当接した状態で当該補強部材を設置し、
前記成形型の型閉めにより前記嵌合突部を形成した分割型と対向する別の分割型に設けた係合突部を前記補強部材に当接させて、当該嵌合突部を形成した分割型と当該係合突部とにより当該補強部材を挟持し、
前記補強部材を挟持した状態で、前記成形型内で発泡原料を発泡させて前記パッド基材を形成し、
前記パッド基材を前記成形型から脱型することで、湾曲した外周縁に沿うよう外表面側に前記補強部材が埋設された状態で当該補強部材の前記嵌合孔が外表面で開口するシートパッドを製造するようにしたことを要旨とする。
このように、パッド基材の外周縁に沿うよう補強部材を外表面側に埋設したシートパッドを製造することができるから、パッド基材を剛性の高い高密度な発泡樹脂部材から形成することなく、パッド基材の剛性を高め外周縁が変形するのを効果的に防止することができる。更に、パッド基材に補強部材を埋設することで、変形を防止する部材を別に取り付ける必要がないから、作業工数を低減できると共に一定の品質を維持することができる。
また、補強部材の嵌合孔を分割型に設けた嵌合突部に嵌合して、当該嵌合突部を形成した分割型と別の分割型に設けた係合突部とにより補強部材を挟持することで、成形型内で位置ずれすることなく補強部材を位置決めすることができ、パッド基材において変形防止が求められる部位に補強部材を正確に配置することができる。このとき、嵌合突部を嵌合孔に嵌合することにより、当該嵌合孔をパッド基材の外表面に開口させることができるから、シートパッドを装飾する装飾部材等を容易に取り付けることができる。
更に、補強部材を挟持することで、当該補強部材において嵌合孔を設けた突出部の突出端部を分割型の成形面に密着させることができるから、当該嵌合孔の内部に発泡原料が侵入するのを防ぐことができ、発泡原料を発泡させることで形成される発泡体により嵌合孔が塞がれるのを防止できる。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記成形型を型閉めした状態で、前記嵌合突部に前記嵌合孔が嵌合する嵌合位置から偏倚して延在する前記補強部材の補強部に対して、前記成形型を構成する何れかの前記分割型に設けた位置規制突部を当該補強部の前記嵌合突部を形成した分割型の前記成形面の他端側の縁部に当接させた状態で、前記成形型内で発泡原料を発泡させるようにしたことを要旨とする。
このように、嵌合位置から偏倚して延在する補強部材の補強部に対して、位置規制突部を当該補強部の嵌合突部を形成した分割型の成形面の他端側の縁部に当接させることで、発泡原料を発泡した際の発泡圧により補強部材がずれるのを防ぐことができ、パッド基材において変形防止が求められる部位に補強部材を配置することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記嵌合突部を形成した分割型において前記パッド基材の本体部を成形する第1の成形面の一端側に、当該第1の成形面より上方に位置して当該パッド基材における本体部の上部後方に位置する後側支持壁部を成形する第2の成形面を設けると共に、当該第2の成形面の一側部に、当該第2の成形面より下方に位置して当該パッド基材における本体部の上部左側に位置する左側支持壁部を成形する第3の成形面を設け、当該第2の成形面の他側部に、当該第2の成形面より下方に位置して当該パッド基材における本体部の上部右側に位置する右側支持壁部を成形する第4の成形面を設けるよう構成し、
前記第2の成形面における前記第1成形面から離間する端縁部、前記第3の成形面および第4の成形面における前記第2の成形面から離間する下縁部に沿って延在するよう前記補強部材を設置し、
前記成形型内で発泡原料を発泡させた前記パッド基材を前記成形型から脱型することで、前記本体部の上部に形成された上方および前方に開放する凹形状のヘッドレスト装着部の前方の開口縁および上方の開口縁に沿って前記補強部材を埋設するようにしたことを要旨とする。
このように、ヘッドレスト装着部の前方の開口縁および上方の開口縁に倣う形状に形成した補強部材を埋設することで、ヘッドレスト装着部の形状保持性を高めつつシートパッドのデザイン性を向上することができる。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記第1の成形面に形成した前記嵌合突部に前記嵌合孔を嵌合させて、前記突出部の突出端部が前記第1の成形面の成形面に当接した状態で前記補強部材を設置し、
前記成形型を型閉めした状態で、前記第2の成形面における前記第1の成形面から離間する端縁部に沿って延在する前記補強部材の前記補強部に対して、前記成形型を構成する何れかの前記分割型に設けた前記位置規制突部を当該補強部の前記第1の成形面の他端側の縁部に当接させた状態で、前記成形型内で発泡原料を発泡させるようにしたことを要旨とする。
このように、嵌合位置から偏倚して延在する補強部材の補強部に対して、位置規制突部を当該補強部の第1の成形面の他端側の縁部に当接させることで、発泡原料を発泡した際の発泡圧により補強部材がずれるのを防ぐことができ、ヘッドレスト装着部において変形防止が求められる部位に補強部材を正確に配置することができる。
【0011】
請求項5に係る発明は、
前記成形型の型閉めした際に、前記突出部において前記嵌合孔と反対側で開口する開口部を、前記係合突部により塞ぐようにしたことを要旨とする。
このように、突出部において嵌合孔と反対側で開口する開口部を係合突部により塞ぐことで、当該開口部をシール材等により塞ぐ必要がなく、作業工数を低減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パッド基材の変形を効果的に防止可能なシートパッドを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のシートパッドからヘッドレストを分離した状態を示す正面図である。
【
図2】シートパッドにおけるヘッドレスト装着部を拡大して示す要部拡大正面図である。
【
図3】シートパッドにおけるヘッドレスト装着部を拡大して示す要部拡大平面図である。
【
図4】(a)は補強部材の正面図であり、(b)は補強部材の平面図である。
【
図5】補強部材を後方右下方から見た状態で示す斜視図である。
【
図6】補強部材の第1の支持片の形成位置でシートパッドを縦断した切断部端面図である。
【
図7】型開きした成形型に補強部材を設置する状態を示す概略で示す断面図である。
【
図8】補強部材を設置した成形型を型閉めした状態を示す概略で示す断面図である。
【
図10】補強部材を設置した成形型を、
図4におけるA-A線に相当する位置で縦断した状態を概略で示す断面図である。
【
図11】別実施例に係る成形型を型閉めした状態で、
図4におけるA-A線に相当する位置で縦断した状態を概略で示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る車両用のシートパッドの製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、車両用のシートパッドとして、乗用車等の乗員室内に設置されるシートのシートバックに用いられるものを例にして説明するが、これに限られるものではない。なお、本発明において、シートパッドを基準として乗員の背中を支持する支持面側を「前」とすると共に当該支持面の裏側を「後」とする。また、シートパッドに乗員が着座した際の乗員の右腕側となる側を「右」とすると共に左腕側となる側を「左」とする。
【0015】
本発明に係る製造方法により製造されるシートパッド10は、ポリウレタン樹脂等の発泡原料をシートバックの外形形状に合わせて発泡成形させて形成されたパッド基材12と、パッド基材12に埋設されると共にパッド基材12の外周縁に倣うよう形成した補強部材30とを備えている。そして、シートの骨格を形成するシートフレームSF(
図6参照)に対して、全体を前側から覆うようにパッド基材12を被せた状態でシートフレームSFに支持されるようになっている。このパッド基材12は、
図1に示すように、乗員の背中を主として支持する本体部13と、本体部13の上部に設けられて乗員の頭部を支持するヘッドレストHRを取り付けるヘッドレスト装着部18とを主として備えるよう構成されている。ここで、パッド基材12の本体部13は、前面に形成された溝部12aにより乗員の上体を支持する複数のサポート部に区分するよう構成されている。具体的には、パッド基材12は、乗員の上体を後方から支持する中央サポート部14と、中央サポート部14の左右側部から前方へ張り出して乗員の上体を横から支持する左右のサイドサポート部16とを有する所謂バケットシート形状に形成されている。より細かくは、中央サポート部14は、乗員の背中を主に支持する上側のサポート領域14aと、乗員の腰部周辺を主に支持する下側のサポート領域14bとを有しており、左右のサイドサポート部16の夫々は、乗員の肩周り周辺部を横から主に支持する上側のサポート領域16aと、乗員の腰部周辺を主に支持する下側のサポート領域16bとを有するよう構成されている。そして、中央サポート部14と左右のサイドサポート部16の境界部分および各サポート部14,16における各サポート領域14a,14b,16a,16bの境界部分に溝部12aを設けるよう構成され、溝部12aの適宜位置に、シートカバーSC(
図6参照)の固定用の固定部材(図示せず)が配置されている。ここで、シートカバーSCは、各サポート部14,16(サポート領域14a,14b,16a,16b)の形状に合わせて形成した複数の表皮材を縫い合わせることによりパッド基材12の外表面に密着する袋状に形成され、シートカバーSCをパッド基材12に被せた状態で、表皮材の縫い代を前側からパッド基材12の溝部12aに引き込んで固定部材に固定することで、シートカバーSCをパッド基材12に弛みなく固定し得るようになっている。
【0016】
また、ヘッドレスト装着部18の底面には、上下に貫通するステー挿通孔20が左右に離間する位置に設けられており、ヘッドレストHRから下方に延在する支持ステーHRaを上方からステー挿通孔20に挿入し得るよう構成されている。なお、ステー挿通孔20に挿通された支持ステーHRaは、シートフレームSFに設けられた図示しないステー固定部に支持されるようになっている。
【0017】
ここで、このヘッドレスト装着部18は、中央サポート部14よりも上方に延在してヘッドレストHRの左右側部に対向する左右のサイドサポート部16と、中央サポート部14の上部において左右のサイドサポート部16の後端部に連設する支持壁部26とにより前方および上方に開口する凹形状に形成されている。すなわち、ヘッドレスト装着部18にヘッドレストHRの下部側を収容した状態で取り付け得るようになっており、シートパッド10とヘッドレストHRとが連続した一体のデザイン形状を形成するようになっている。このように、左右のサイドサポート部16は、ヘッドレストHRにより支持された乗員の側頭部を支持する機能を併せ持った部位である。なお、以下の説明において、左右のサイドサポート部16の内で、ヘッドレスト装着部18を形成する部位を左側支持壁部22および右側支持壁部24と、左右のサイドサポート部16の後端部に連設する支持壁部26を後側支持壁部26と特に指称する場合がある。すなわち、左側支持壁部22がパッド基材12の外周左側部を形成し、右側支持壁部24がパッド基材12の外周右側部を形成している。
【0018】
ここで、左側支持壁部22、右側支持壁部24および後側支持壁部26の外側面は、ヘッドレスト装着部18の開口縁に近づくにつれて厚みが漸減する丸みを帯びた曲面形状に形成されて、ヘッドレスト装着部18の開口縁の断面が鋭角状をなすよう形成されている。また、左側支持壁部22および右側支持壁部24の前縁部は、上端部から下方に向かうにつれて相互に離間する傾斜状に形成されて、ヘッドレスト装着部18の前方開口が略台形状をなすよう形成されている。また左側支持壁部22および右側支持壁部24の上縁部は、前端部から後方に向かうにつれて僅かに近接するよう形成され、後側支持壁部26の上縁部は、左右方向の中心で後方に僅かに突出する円弧状に形成されると共に、左側支持壁部22、右側支持壁部24の上縁部と後側支持壁部26の上縁部との連設部が円弧状に湾曲して連続した湾曲形状に形成されている。
【0019】
補強部材30は、
図2、
図3に示すように、パッド基材12の外周上部の上縁に沿うようパッド基材12の外表面側に埋設されており、ヘッドレスト装着部18を補強してその変形を防止するよう構成される。この補強部材30は、ヘッドレスト装着部18の前方の開口縁(左側支持壁部22の前端縁、右側支持壁部24の前端縁)および上方の開口縁(左側支持壁部22の上端縁、右側支持壁部24および後側支持壁部26の上端縁)に倣う湾曲形状に形成されており、ヘッドレスト装着部18の外周縁を補強して座屈等の変形を防止するよう構成される。
【0020】
具体的に、本実施例の補強部材30は、ヘッドレスト装着部18の前端縁を補強する左側補強部32および右側補強部33と、ヘッドレスト装着部18の上端縁を補強する上側補強部44とを備えており、ヘッドレスト装着部18の外周左右側部の前縁から外周上部の上縁に亘って延在する湾曲形状に形成されている。ここで、左側補強部32は、パッド基材12の外周左側部の前縁に倣うようヘッドレスト装着部18における左側支持壁部22の前縁に沿って延在し、右側補強部33は、パッド基材12の外周右側部の前縁に倣うようヘッドレスト装着部18における右側支持壁部24の前縁に沿って延在するよう形成されている。なお、この補強部材30は、ポリプロピレン等の合成樹脂により一体成形された左右対称の部材として構成されている。
【0021】
左側補強部32および右側補強部33の夫々は、内側補強壁部34と、内側補強壁部34の外側に対向する外側補強壁部36と、内側補強壁部34および外側補強壁部36の前端部を連結すると共に対応する左側支持壁部22および右側支持壁部24の前端縁に沿って延在する連設部38とを備えている。そして、補強部材30を埋設した状態で、左側補強部32および右側補強部33の各内側補強壁部34が、対応する左側支持壁部22および右側支持壁部24においてヘッドレスト装着部18に臨む壁面側に位置し、左側補強部32および右側補強部33の各外側補強壁部36が、対応する左側支持壁部22および右側支持壁部24の外側面側に位置し、左側補強部32および右側補強部33の連設部38が、対応する左側支持壁部22および右側支持壁部24の前端縁(外表面)に近接位置するよう構成されている。また、連設部38の縁部は円弧状に湾曲するよう形成され、左側補強部32および右側補強部33の剛性を高めるよう構成してある。更に、内側補強壁部34と外側補強壁部36との間に、内側補強壁部34および外側補強壁部36を連結する支持部40(
図5参照)が設けられており、内側補強壁部34および外側補強壁部36が近接または離間するように撓み変形するのを防止するよう構成されている。これにより、左側補強部32および右側補強部33が埋設された左側支持壁部22および右側支持壁部24の夫々の厚み方向の剛性を高め、左側支持壁部22および右側支持壁部24の夫々を左右から圧縮するような力の作用に伴う変形を防止している。また、外側補強壁部36の後端部は、外側に向けて円弧状に湾曲して折り返す第1の湾曲支持部42が設けられており、外側補強壁部36の剛性を高めて、左側支持壁部22および右側支持壁部24の形状安定性を高めるようにしてある。
【0022】
上側補強部44は、左側支持壁部22および右側支持壁部24の上端縁に沿って延在する第1の上側補強壁部46と、後側支持壁部26の上端縁に沿って延在する第2の上側補強壁部48とを備えて平面視でコ字状をなすよう形成されており、補強部材30を埋設した状態で、第1の上側補強壁部46および第2の上側補強壁部48が対応する左側支持壁部22、右側支持壁部24および後側支持壁部26の上端縁(外表面)に近接位置するよう構成されている。また、第1の上側補強壁部46および第2の上側補強壁部48の外側端部には、下側に向けて円弧状に湾曲して折り返す第2の湾曲支持部50が設けられており、上側補強部44の剛性を高めてその変形を防止するようになっている。
【0023】
また、補強部材30は、
図4、
図5に示すように、左側補強部32および右側補強部33の各内側補強壁部34の後端部に連設する補強支持部52が左右方向に延在するよう設けられている。この補強支持部52には、前方へ突出する突出部56が左右方向に離間する複数箇所(実施例では3箇所)に形成されると共に、各突出部56の突出端部に前後に貫通する嵌合孔56aが開口するよう設けられている。本実施例では、補強支持部52における左右の中間および左右の両端部に位置するよう突出部56を夫々設けてある。そして、補強部材30をパッド基材12に埋設した状態で、この突出部56の嵌合孔56aがヘッドレスト装着部18の下部前面側に露出するよう構成されており、シートを装飾する飾り部材K(
図6参照)に設けた係合部Kaを嵌合孔56aに前側から差し込んで係合させることにより、飾り部材Kをパッド基材12に取り付け得るようになっている。なお、飾り部材Kは、突出部56の嵌合孔56aに合わせて形成されたシートカバーSCの開口部を挿通した状態で係合部Kaを差し込んで係合されるものである。なお、各突出部56は、中空状に形成されると共に後方に開口するよう形成されており、突出部56の後方開口部56bをシール材57により塞ぐよう構成されて、突出部56の後方の開口から突出部56の内部に発泡原料が侵入しないよう構成されている。
【0024】
また、補強支持部52の後面側には、左右方向に離間する複数箇所(実施例では6箇所)に、後方へ突出する支持片58,60が形成されている。本実施例では、補強支持部52の後面側において、各突出部56を挟む左右に隣接位置するよう支持片58,60を夫々設けてある。すなわち、左右の中間に位置する突出部56に対応して一対の第1の支持片58が設けられ、左右の両端部に位置する突出部56の夫々に対応して一対の第2の支持片60が設けられている。各支持片58,60は、シートパッド10を支持するシートフレームSFの前側に位置するよう設けられており、補強部材30(補強支持部52)が後方へ撓むよう変形した際に、パッド基材12を挟んでシートフレームSFにより各支持片58,60が支持されることで、撓み変形を抑制して補強部材30の破損を防止するようになっている。
【0025】
ここで、第1の支持片58は、補強支持部52の上下方向に延在する板状に形成されると共に後端部に円弧状凹部58aが形成されている。ここで、円弧状凹部58aは、シートフレームSFを構成する金属管の管径に合わせた曲率で形成されており、乗員がシートパッド10に凭れる様な姿勢を採った場合などに補強支持部52の中央部が後方へ撓むことで、パッド基材12を挟んでシートフレームSFが第1の支持片58の円弧状凹部58aに噛み合うようになっている。また、第2の支持片60は、補強支持部52の上下方向に延在する板状に形成されると共に、その後端部が下方へ向かうにつれて後方へ傾斜する傾斜状に形成されており、パッド基材12を挟んで第2の支持片60の傾斜部がシートフレームSFにより支持されるようになっている。
【0026】
次に、前述したシートパッド10の製造方法に関して説明する。本発明に係るシートパッド10は、型閉め状態および型開き状態に変位可能な複数の型(分割型)により構成された成形型70に画成されるキャビティに補強部材30を配置した状態で、ポリウレタン樹脂等の発泡原料を発泡硬化させることにより、発泡体からなるパッド基材12に補強部材30が埋設されるよう形成される。この成形型70は、
図7に示すように、シートパッド10において乗員の背中を支持する支持面(前面)を成形する下型72と、下型72に対して回動可能に支持されてシートパッド10の裏面(後面)を成形する上型81,82とを備えており、上型81,82に接続されたシリンダ等の駆動手段(図示せず)を駆動することで、下型72に対して上型81,82が開いた型開き状態と、下型72に対して上型81,82が閉じた型閉め状態とに変位し得るよう構成されている。そして、下型72に対して上型81,82を閉じた型閉め状態において、シートパッド10の外形形状と同じ空間形状をなすキャビティが成形型70の内部に画成されるようになっている。
【0027】
ここで、下型72は、シートパッド10(パッド基材12)における本体部13の前面(乗員の背中を支持する支持面)を成形する本体部成形面(第1の成形面)73の一端側(
図7における左端側)に、ヘッドレスト装着部18の底面を形成する底部成形面74が連なるよう形成されると共に、底部成形面74の上端部に、ヘッドレスト装着部18の後側支持壁部26の前面を形成する後側支持壁部成形面(第2の成形面)75が連なるよう形成されている。また、下型72には、
図10に示すように、ヘッドレスト装着部18の左側支持壁部22を成形する左側支持壁部成形面(第3の成形面)76が後側支持壁部成形面75の一側部(
図10では右側の側部)および底部成形面74に連なるよう形成されると共に、ヘッドレスト装着部18の右側支持壁部24を成形する右側支持壁部成形面(第4の成形面)77が後側支持壁部成形面75の他側部(
図10では左側の側部)および底部成形面74に連なるよう形成されている。
【0028】
また、
図7、
図9に示すように、下型72の本体部成形面73には、底部成形面74との連設位置の近傍に上方へ突出するよう嵌合突部78が設けられている。この嵌合突部78は、本体部成形面73と底部成形面74との連設縁部の延在方向に離間する複数箇所(この実施例では3箇所)に設けられている。この複数の嵌合突部78は、補強部材30に形成した各突出部56の嵌合孔56aに対応するよう設けられており、型開き状態としたもとで、補強部材30に形成した各突出部56の嵌合孔56aを、各嵌合突部78に対して上方から嵌合させ得るようになっている。また、各嵌合突部78は、
図9、
図10に示すように、突出端側に向けて先細りとなる形状に形成されており、補強部材30の各嵌合孔56aを対応する各嵌合突部78に容易に嵌合させ得るよう構成されている。すなわち、補強部材30の各嵌合孔56aを対応する各嵌合突部78に嵌合することで、後側支持壁部成形面75において後側支持壁部26の上端部を成形する縁部に沿って補強部材30の第2の上側補強壁部48が延在し(
図9参照)、左側支持壁部成形面76の底部に沿って補強部材30における左側補強部32の連設部38が延在すると共に、右側支持壁部成形面77の底部に沿って補強部材30における右側補強部33の連設部38が延在する位置で補強部材30が支持されるようになっている(
図10参照)。また、図示を省略するが、同様に補強部材30の各嵌合孔56aを対応する各嵌合突部78に嵌合することで、左側支持壁部成形面76において左側支持壁部22の上端部を成形する縁部に沿って補強部材30の左側の第1の上側補強壁部46が延在し、右側支持壁部24成形面において右側支持壁部24の上端部を成形する縁部に沿って補強部材30の右側の第1の上側補強壁部46が延在する位置で補強部材30が支持される。
【0029】
また、上型81,82は、
図7に示すように、下型72に対して回動可能に支持された第1の上型81と、第1の上型81に支持されて第1の上型81と下型72との間に位置する第2の上型82とを備えるよう構成されている。この第1の上型81は、ヘッドレスト装着部18の後側支持壁部26の後面を成形する第1の上成形面84aを有する第1成形部材84と、シートパッド10(パッド基材12)の下端部の後面を成形する第2の上成形面85aを有する第2成形部材85とを連結部材86で連結して構成されており、第1の上成形面84aおよび第2の上成形面85aの間を第2の上型82が繋ぐ成形位置と、第1の上成形面84aおよび第2の上成形面85aから第2の上型82が離間した分離位置とに変位可能にし得るよう第2の上型82が連結部材86に支持されている。すなわち、第2の上型82が成形位置に位置することで、第1の上型81および第2の上型82によりシートパッド10(パッド基材12)の後面側の形状を成形するようになっている。ここで、第2の上型82を連結部材86に支持する構成としては、
図7、
図8に示すように、第2の上型82の上面側に形成したスライド溝87に、連結部材86に固定されたガイドバー88の端部を挿入することで、第1の上型81に対して第2の上型82が成形位置および分離位置に移動可能に支持されると共に、連結部材86に設けた係止部89に対して分離位置で係合する係合部材90を第2の上型82に設けることで構成されている。なお、第2の上型82を連結部材86に支持する構成は、このような構成に限られるものではなく、適宜に形成することができる。
【0030】
また、第2の上型82には、
図7~
図9に示すように、型閉めした際に、下型72の嵌合突部78に嵌合させた補強部材30に対して上方から当接する係合突部92が設けられている。すなわち、下型72に対して第2の上型82を型閉めした際に、第2の上型82に設けた係合突部92が補強部材30に当接して、下型72と係合突部92とにより補強部材30を挟持するようになっている。そして、補強部材30を挟持した状態において、補強部材30における前述した左側補強部32の連設部38、右側補強部33の連設部38、第1の上側補強壁部46、第2の上側補強壁部48の夫々が、対応する各成形面76,77,75から僅かに離間した姿勢で補強部材30が保持されるようになっている。
【0031】
ここで、係合突部92は、
図9、
図10に示すように、嵌合突部78を嵌合孔56aに嵌合させた姿勢の補強部材30の補強支持部52に対して上方から当接する(すなわち補強支持部52の後面側に当接する)ようになっている。この係合突部92は、左右の中間に位置する突出部56を挟む左右に隣接した位置で当接するよう第1の支持片58の近接位置に設けられると共に、左右の両端部に位置する突出部56に対して、中間に位置する突出部56側に隣接した位置で当接するよう第2の支持片60の近接位置に設けられている。ポリウレタン樹脂等の発泡原料をキャビティ内に注入すると、下型72の後側支持壁部成形面75と、補強部材30の第2の上側補強壁部48との間に発泡原料が入り込み、発泡硬化する際の発泡圧により第2の上側補強壁部48が押し上げられ、配置された補強部材30の位置がずれる力が作用する。このとき、補強部材30の補強支持部52に対して係合突部92が当接することで、発泡原料の発泡圧に伴う成形型70の上下方向に対する補強部材30のずれを規制するようになっている。すなわち、補強部材30に設けた各突出部56に近接した位置で係合突部92を補強支持部52に当接させることで、各突出部56の突出端部が下型72から浮き上がらないよう固化的に押さえることができる。
【0032】
また、
図9、
図10に示すように、第1の上型81には、後側支持壁部成形面75と対向する位置に、型閉め状態で後側支持壁部成形面75側へ向けて突出する位置規制突部94が設けられている。この位置規制突部94は、成形型70を型閉めした状態で、後側支持壁部成形面75の縁部に沿って延在する補強部材30の第2の上側補強壁部48に対して、本体部成形面73の他端側の縁部に当接するよう構成されている。キャビティ内に注入された発泡原料の発泡圧により、第2の上側補強壁部48が本体部成形面73の他端側に押されても、補強部材30の第2の上側補強壁部48に対して位置規制突部94が当接することで、発泡原料の発泡圧に伴う成形型70の一端側および他端側方向に対する補強部材30のずれを規制するようになっている。なお、
図4において、係合突部92が補強部材30(補強支持部52)に当接する位置の前面側に対応する位置、および第2の上側補強壁部48に対して位置規制突部94が当接する位置の夫々を、二点鎖線で示している。
【0033】
次に、前述のように構成した成形型70を使用したシートパッドの製造手順に関して説明する。下型72に対して上型81,82を型開き状態としたもとで、補強部材30の各突出部56に設けた嵌合孔56aを、下型72に設けた対応する嵌合突部78に嵌合させて、突出部56の突出端部を下型72の本体部成形面73に当接させるよう補強部材30を設置する(
図7参照)。これにより、補強部材30の左側補強部32の連設部38、右側補強部33の連設部38、第1の上側補強壁部46、第2の上側補強壁部48の夫々が対応する各成形面76,77,75に沿って延在する所定位置に補強部材30が位置決めされる。
【0034】
次いで、型開き状態のまま下型72により形成されるキャビティ内に所定量の発泡原料を注入し、下型72に対して上型81,82を型閉じする。このとき、
図9、
図10に示すように、第2の上型82に設けた係合突部92が下型72に設置した状態の補強部材30を下型72の方向に押し付けるように当接して、嵌合突部78を形成した下型72と係合突部92とにより補強部材30を挟持すると共に、第1の上型81に設けた位置規制突部94が補強部材30の第2の上側補強壁部48に対して、本体部成形面73の他端側の縁部に当接し、この状態で発泡原料が発泡することによりパッド基材12を形成する。その後、下型72に対して上型81および上型82を型開き状態に変位させてパッド基材12を脱型することにより、湾曲した外周縁に沿うよう外表面側に補強部材30が埋設された状態で補強部材30の嵌合孔56aが外表面で開口するシートパッド10を得ることができる。
【0035】
このように、補強部材30の嵌合孔56aを下型72に設けた嵌合突部78に嵌合して、嵌合突部78を形成した下型72と別の分割型(第2の上型82)に設けた係合突部92とにより補強部材30を挟持することで、成形型70のキャビティ内に位置ずれすることなく補強部材30を正確に位置決めすることができ、シートパッド10において変形防止が求められる部位に補強部材30を配置することができる。また、補強部材30の嵌合孔56aが下型72の嵌合突部78に嵌合することで、発泡原料が発泡硬化する際の発泡圧により補強部材30が位置ずれするのを防止できる。
【0036】
また、補強部材30を挟持することで、補強部材30において嵌合孔56aを設けた突出部56の突出端部を下型72に密着させることができるから、嵌合孔56aの内部に発泡原料が侵入するのを防ぐことができ、発泡原料を発泡させることで形成される発泡体により嵌合孔56aが塞がれたり、突出部56の内部に発泡体が浸入するのを防止できる。そして、嵌合突部78を嵌合孔56aに嵌合することにより、嵌合孔56aをシートパッド10の外表面で開口させることができるから、シートパッド10を装飾する飾り部材Kを取付ける際に、発泡体により嵌合孔56aが塞がれたり、突出部56の内部に侵入した発泡体を取り除く等の作業が不要となり、飾り部材Kを容易に取付けることができる。
【0037】
更に、嵌合突部78が嵌合孔56aに嵌合する嵌合位置から偏倚した位置で延在する補強部材30(補強支持部52)に対して、係合突部92を当接させることで、発泡原料を発泡した際の発泡圧により補強部材30がずれるのを防ぐことができ、パッド基材12において変形防止が求められる部位に補強部材30を正確に配置することができる。また、補強部材30がずれるのを防ぐことで、発泡圧により補強部材30が歪められた状態でパッド基材12に埋設されるのを防止できるから、成形後に補強部材30の復元力によりパッド基材12が変形するのを防止できる利点がある。また、補強部材30のずれを防ぐことで、突出部56の突出端部が下型72の本体部成形面73からずれるのを防止でき、発泡体により嵌合孔56aが塞がれたり、突出部56の内部に発泡体が浸入するのをより効果的に防止できる。
【0038】
また、前述した本発明に係る製造方法により製造された車両用のシートパッド10は、シートパッド10の外周縁に沿うよう補強部材30を外表面側に埋設することにより、パッド基材12の外周縁が補強部材30により支持され、カバーリング時等にパッド基材12の外周縁が変形するのを効果的に防止できる。特に、パッド基材12の外周左右側部の前縁から外周上部の上縁に亘って延在する形状に補強部材30を形成することで、パッド基材12の上部側の剛性を効果的に高めることができる。また、パッド基材12を高密度の発泡体により形成することなくパッド基材12の外周縁に必要な剛性を確保して変形を防止できる。更に、補強部材30がパッド基材12に埋設されていることにより、パッド基材12の変形を防止するための部材をパッド基材12に後工程で取り付ける等の工程が必要なく、作業効率が格段に高くなると共に一定の品質を維持することができる。
【0039】
また、パッド基材12の外表面側に位置するよう補強部材30を埋設することで、パッド基材12の肉厚を薄くしても剛性を確保して形状安定性を維持することができる。すなわち、本発明に係るシートパッド10のように、ヘッドレストHRとのデザインの一体性を実現するためにヘッドレスト装着部18の薄肉状部分を形成した場合でも、ヘッドレスト装着部18の前方の開口縁および上方の開口縁に倣う形状に形成した補強部材30を埋設することで、ヘッドレスト装着部18の剛性を確保することができ、ヘッドレスト装着部18の形状保持性を高めつつシートパッド10のデザインを多様化することが容易に実現可能となる。
【0040】
また、補強部材30の左側補強部32および右側補強部33を補強支持部52で連結するようにしたことで、補強部材30のねじれ剛性を高めることができる。更に、シートパッド10を支持するシートフレームSFの前側に対応する位置に補強部材30(補強支持部52)を埋設すると共に、補強部材30(補強支持部52)に支持片58,60を形成して、補強部材30が後方へ撓むよう変形した際にパッド基材12を介してシートフレームSFで各支持片58,60が支持されるようにすることにより、補強部材30の変形を抑制して損傷等を防止することができるから、補強部材30によるパッド基材12の補強効果が損なわれることはない。また、乗員がシートパッド10に凭れる様な姿勢を採った場合などに補強支持部52の中央部が後方へ撓んだ際に、パッド基材12を挟んでシートフレームSFが第1の支持片58の円弧状凹部58aに噛み合うことで、埋設された補強部材30がパッド基材12の所定位置に保持され、パッド基材12の内部で補強部材30が位置ずれするような不具合を効果的に防止できる。
【0041】
また、補強部材30の左右の端部側に位置するよう第2の支持片60を設けることで、シートパッド10のサイドサポート部16(ヘッドレスト装着部18の左側支持壁部22や右側支持壁部24)を後方へ力が作用した場合に、パッド基材12を介してシートフレームSFで第2の支持片60が支持して補強部材30の変形を抑制することで、サイドサポート部16の変形を抑制でき、サイドサポート部16の形状保持性を高めることができる。更に、各支持片58,60を補強部材30の突出部56に対応して設けることで、シートを装飾する飾り部材Kに設けた係合部Kaを、突出部56に設けた嵌合孔56aに前側から差し込んだ際に補強部材30がシートフレームSFで支持され、係合部Kaを嵌合孔56aに容易に係合することができる。
【0042】
(別実施例)
次に、車両用のシートパッドの製造方法の別実施例について説明する。なお、別実施例に係る車両用のシートパッドの製造方法は、基本的に前述した実施例の構成と共通しており、共通する部分に関しては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
別実施例に係る車両用のシートパッドの製造方法では、補強部材30における突出部56の後方開口部56bをシール材57により塞ぐことなく、突出部56が後方に開口した状態のままパッド基材12に埋設するように構成される。この別実施例に係る成形型110を構成する第2の上型102には、
図11に示すように、型閉めした際に、第2の上型102に設けた係合突部104が補強部材30(補強支持部52)に当接すると共に、突出部56の後方開口部56b(嵌合孔56aと反対側で開口する開口部)を、係合突部104により塞ぐよう構成されている。このように、突出部56において嵌合孔56aと反対側で開口する後方開口部56bを係合突部104により塞ぐことで、後方開口部56bをシール材57等により塞ぐ必要がなく、作業工数を低減できる利点がある。
【0044】
(変更例)
本発明に係る車両用のシートパッドの製造方法は、実施例に例示した形態に限らず種々の変更が可能である。以下に、変更例の一例を示す。
(1) 車両用シートのシートバックに用いられるシートパッドの製造を例にしたが、これに限られるものではなく、乗員が着座するシートクッションに用いられるシートパッドの製造に採用することもできる。
(2) 実施例では、係合突部と位置規制突部とを成形型を構成する異なる分割型(第1の上型と第2の上型)に設けるようにしたが、同一の分割型に設けることもできる。また、成形型を構成する分割型の形状や数は、実施例に示したものに限られるものではなく、シートパッドの形状に合わせて適宜に決定することができる。
(3) 補強部材は左右対称に形成する必要はなく、パッド基材の外周縁に倣う形状に形成されていればよい。また、パッド基材の外周前縁に倣うよう補強部材を形成したが、パッド基材の外周後縁に倣うよう補強部材を形成して後縁に沿うようパッド基材の外表面側に補強部材を埋設するようにしてもよい。
(4) 補強部材を合成樹脂により一体成形するようにしたが、金属等により形成してもよく、また複数の部材を組み合わせて補強部材を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
12 パッド基材,18 ヘッドレスト装着部,22 左側支持壁部,
24 右側支持壁部,26 後側支持壁部,30 補強部材,
48 第2の上側補強壁部(補強部),56 突出部,56a 嵌合孔,70 成形型
72 下型(分割型),73 本体部成形面(成形面、第1の成形面)
75 後側支持壁部成形面(第2の成形面),76 左側支持壁部成形面(第3の成形面)
77 右側支持壁部成形面(第4の成形面),78 嵌合突部
82 第2の上型(別の分割型),92 係合突部,94 位置規制突部