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特許6997573路側アンテナ、無線通信システム及び路側アンテナの設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】路側アンテナ、無線通信システム及び路側アンテナの設置方法
(51)【国際特許分類】
   G07B 15/00 20110101AFI20220107BHJP
【FI】
G07B15/00 L
G07B15/00 510
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017189723
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019067008
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】尾張 伸行
(72)【発明者】
【氏名】飯田 敦志
(72)【発明者】
【氏名】中山 博之
(72)【発明者】
【氏名】小島 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山西 直哉
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-231383(JP,A)
【文献】特開2000-011291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の発信により車線を走行する車両と安定した無線通信を行うことが可能な安定通信領域を形成するアンテナ本体と、
前記アンテナ本体に取り付けられた第1レーザスキャナおよび第2レーザスキャナと、
を備え、
前記第1レーザスキャナおよび第2レーザスキャナは、前記安定通信領域に含まれる前記車線上の範囲として規定された規定範囲の端部に沿って検出光を走査するように、前記アンテナ本体に取り付けられており、
前記第1レーザスキャナは、前記規定範囲の端部のうち車線方向手前側に位置する端部に沿って第1検出光を走査するように取り付けられ、
前記第2レーザスキャナは、前記規定範囲の端部のうち車線方向奥側に位置する端部に沿って第2検出光を走査するように取り付けられている
路側アンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載の路側アンテナと、
前記第1レーザスキャナおよび第2レーザスキャナが投光する前記検出光による車両の検出位置を計測する位置計測部と、
計測された前記検出位置に基づいて、前記車両が前記規定範囲を走行しているか否かを判定する判定部と、
前記車両が前記規定範囲を走行している間、前記アンテナ本体から電波を発信させるアンテナ制御部と、
を備える無線通信システム。
【請求項3】
前記判定部は、
前記検出位置の高さと、予め規定された判定閾値との対比に基づいて、前記車両が前記規定範囲を走行中であるか否かを判定する
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
電波の発信により車線を走行する車両と安定した無線通信を行うことが可能な安定通信領域を形成するアンテナ本体に対し、第1レーザスキャナおよび第2レーザスキャナを取り付けた路側アンテナを用意するステップと、
前記安定通信領域に含まれる前記車線上の範囲である規定範囲を当該車線上に規定するステップと、
前記路側アンテナを、前記第1レーザスキャナおよび第2レーザスキャナが投光する検出光が前記規定範囲の端部に沿って走査されるように設置するステップと、
を有し、
前記設置するステップにおいて、
前記規定範囲の端部のうち車線方向手前側に位置する端部に沿って前記第1レーザスキャナの第1検出光が走査され、かつ、前記規定範囲の端部のうち車線方向奥側に位置する端部に沿って前記第2レーザスキャナの第2検出光が走査されるように、前記路側アンテナを設置する、
路側アンテナの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路側アンテナ、無線通信システム及び路側アンテナの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路等の有料道路における料金所では、路側に設置された路側アンテナと、車線を走行する車両に搭載された車載器との間で無線通信による情報のやり取りを行い、必要な料金を収受する電子式料金収受システム(ETC:Electronic Toll Collection System(登録商標)、「自動料金収受システム」ともいう)が利用されている場合がある。
【0003】
このような料金収受システムでは、車線上に、路側アンテナと無線通信を行うべき範囲(以下、「規定範囲」とも記載する。)が予め規定されている。料金収受システムは、料金収受の対象とする車両(以下、「対象車両」とも記載する。)以外の車両(対象車両の後続車両、他の車線を走行する車両等)との誤通信を抑制する目的で、対象車両が規定範囲を走行中の場合に限って電波を発信する態様とされているのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
“対象車両が規定範囲に含まれているか否か”の判断には、通常、車線の路側帯(アイランド)上に設置された車両検知器が用いられる。一般的な車両検知器は、高さ方向に延びる筐体を有するとともに、当該筐体において、投光部及び受光部が高さ方向に複数配列されてなる。
なお、透過型の車両検知器の場合、投光部と受光部とが車線を挟んで対向するように設置される。この場合、受光部は、投光部から投光された検出光そのもの(透過光)を検出する。
他方、反射型の車両検知器の場合、投光部及び受光部は、共に、車線の一方側のアイランドのみに設置される。この場合、受光部は、投光部から投光された検出光の反射光を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-103182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、路側アンテナと車両(車載器)との無線通信には、狭域通信(Dedicated Short Range Communications:DSRC)が利用される。この場合、車線上空に設置された路側アンテナが、下方(車線の路面)に向けて電波を放射することで、アンテナの設置位置から当該車線にかけて、安定した無線通信が可能な領域(以下、「安定通信領域」とも記載する。)を形成する。
規定範囲に対する車両の進入、退出を、上述したような車両検知器を用いて検知する態様の場合、路側アンテナが形成する安定通信領域の境界と、当該車両検知器によって車線上に規定される規定範囲の端部との間に空間的なずれが生じ得る。そのため、走行する車両に対し、適切なアンテナ制御を実現することに限界が生じている。
【0007】
本発明の目的は、走行する車両に対し、適切なタイミングで電波の発信、停止の制御を行うことができる路側アンテナ、無線通信システム及び路側アンテナの設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、路側アンテナ(11)は、電波の発信により車線(L)を走行する車両(A)と安定した無線通信を行うことが可能な安定通信領域(F1)を形成するアンテナ本体(110)と、前記アンテナ本体に取り付けられたレーザスキャナ(111a、111b)と、を備え、前記レーザスキャナは、前記安定通信領域に含まれる前記車線上の範囲として規定された規定範囲(XR)の端部に沿って検出光(P1、P2)を走査するように、前記アンテナ本体に取り付けられている。
このようにすることで、アンテナ本体が形成する安定通信領域の境界と、レーザスキャナによって車両の進入判定、退出判定がなされる規定範囲の端部との空間的なずれが低減される。したがって、走行する車両に対し、適切なタイミングで電波の発信、停止の制御を行うことができる。
【0009】
また、本発明の第2の態様によれば、上述の路側アンテナは、前記レーザスキャナである第1レーザスキャナ(111a)と、第2レーザスキャナ(111b)と、を備え、前記第1レーザスキャナは、前記規定範囲の端部のうち車線方向手前側に位置する端部(X1)に沿って第1検出光(P1)を走査するように取り付けられ、前記第2レーザスキャナは、前記規定範囲の端部のうち車線方向奥側に位置する端部(X2)に沿って第2検出光(P2)を走査するように取り付けられている。
このようにすることで、安定通信領域の車線方向手前側の境界と、第1レーザスキャナによって車両の進入判定がなされる規定範囲の端部との空間的なずれが低減される。また、安定通信領域の車線方向奥側の境界と、第2レーザスキャナによって車両の退出判定がなされる規定範囲の端部との空間的なずれが低減される。
【0010】
また、本発明の第3の態様によれば、無線通信システム(1)は、上述の路側アンテナと、前記レーザスキャナが投光する前記検出光による車両の検出位置を計測する位置計測部(1001)と、計測された前記検出位置に基づいて、前記車両が前記規定範囲を走行しているか否かを判定する判定部(1002、1003)と、前記車両が前記規定範囲を走行している間、前記アンテナ本体から電波を発信させるアンテナ制御部(1004)と、を備えている。
このようにすることで、レーザスキャナによって検出された車両の検出位置に基づいて、車両が規定範囲を走行しているか否かが判定されるので、走行する車両に対し、適切なタイミングで電波の発信、停止の制御を行うことができる。
【0011】
また、本発明の第4の態様によれば、前記判定部は、前記検出位置の高さと、予め規定された判定閾値(Zth)との対比に基づいて、前記車両が前記規定範囲を走行中であるか否かを判定する。
このようにすることで、検出された車両の高さが判定閾値以上(未満)となったか否かの判定結果に基づいて、車両の進入、退出が判断されるので、当該車両の進入、退出の誤検知を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の第5の態様によれば、路側アンテナの設置方法は、電波の発信により車線を走行する車両と安定した無線通信を行うことが可能な安定通信領域を形成するアンテナ本体に対し、レーザスキャナを取り付けた路側アンテナを用意するステップと、前記安定通信領域に含まれる前記車線上の範囲である規定範囲を当該車線上に規定するステップと、前記路側アンテナを、前記レーザスキャナが投光する検出光が前記規定範囲の端部に沿って走査されるように設置するステップと、を有する。
このようにすることで、路側アンテナの施工担当者は、レーザスキャナから投光される検出光が規定範囲の端部を走査するように位置合わせをしながら、当該路側アンテナの設置位置、設置角度の調整を行うことができる。これにより、路側アンテナの設置位置、設置角度の調整に要する労力を大幅に低減することができる。
【0013】
また、本発明の第6の態様によれば、上述の路側アンテナの設置方法は、前記レーザスキャナを取り付けるステップにおいて、前記アンテナ本体に対し、前記レーザスキャナである第1レーザスキャナと、第2レーザスキャナと、を取り付け、前記設置するステップにおいて、前記規定範囲の端部のうち車線方向手前側に位置する端部に沿って前記第1レーザスキャナの第1検出光が走査され、かつ、前記規定範囲の端部のうち車線方向奥側に位置する端部に沿って前記第2レーザスキャナの第2検出光が走査されるように、前記路側アンテナを設置する。
このようにすることで、路側アンテナの施工担当者は、第1検出光と規定範囲の車線方向手前側の端部との位置合わせ、及び、第2検出光と規定範囲の車線方向奥側の端部との位置合わせを一度に行うことができる。これにより、路側アンテナの設置位置、設置角度の調整に要する労力を一層低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
上述の発明の各態様によれば、走行する車両に対し、適切なタイミングで電波の発信、停止の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る料金収受システムの全体構成を示す第1図である。
図2】第1の実施形態に係る料金収受システムの全体構成を示す第2図である。
図3】第1の実施形態に係る路側アンテナの構造の詳細を示す第1の図である。
図4】第1の実施形態に係る路側アンテナの構造の詳細を示す第2の図である。
図5】第1の実施形態に係る車線制御装置の機能構成を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る車線制御装置の処理フローを示す図である。
図7】第1の実施形態に係る路側アンテナによる作用、効果を説明するための図である。
図8】第1の実施形態に係る路側アンテナの設置方法を示す図である。
図9】第2の実施形態に係る車線制御装置の処理フローを示す図である。
図10】第2の実施形態に係る車線制御装置の処理を説明するための図である。
図11】第2の実施形態に係る路側アンテナによる作用、効果を説明するための第1の図である。
図12】第2の実施形態に係る路側アンテナによる作用、効果を説明するための第2の図である。
図13】第2の実施形態の変形例に係る料金収受システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る料金収受システムについて、図1図8を参照しながら説明する。
【0017】
(料金収受システムの全体構成)
図1図2は、第1の実施形態に係る料金収受システムの全体構成を示す図である。
図1は、車線L及びその路側帯(アイランドI)に設置された料金収受システム1の側面図を示しており、図2は、料金収受システム1の上面図を示している。
なお、以下の説明においては、車線Lが延在する方向を±X方向とし、「車線方向」とも記載する。また、水平面において車線方向(±X方向)に直交する方向を±Y方向とし、「車線幅方向」とも記載する。また、料金所を通過しようとする車両は、車線Lを-X方向側から+X方向側に走行するものとし、+X方向を「車線方向奥側」、-X方向を「車線方向手前側」とも記載する。更に、水平面(±X方向及び±Y方向)に直交する鉛直方向を±Z方向とし、「高さ方向」とも記載する。
【0018】
第1の実施形態に係る料金収受システム1は、高速道路等の有料道路の料金所に設置され、当該料金所を走行する車両Aとの無線通信により自動的に料金収受処理を実行する電子式料金収受システムである。
料金収受システム1は、路側アンテナ11を通じて、車線L上に規定される規定範囲XRを走行中の車両Aと無線通信を行うことで、当該車両Aから必要な料金を収受する。
なお、第1の実施形態に係る料金収受システム1は、「無線通信システム」の一態様である。他の実施形態に係る無線通信システムは、必ずしも料金収受処理を行わなくともよく、例えば、入口料金所や有料道路の中間地点を走行する車両に対し、走行経路の特定のための無線通信を行う態様であってもよい。
【0019】
第1の実施形態に係る料金収受システム1は、車線Lを走行する対象車両(車両A)以外の車両(車両Aの後続車両、他の車線を走行する車両等)との誤通信を抑制する目的で、車両Aが、車線L上に規定された規定範囲XR内を走行中の場合に限って電波を発信する態様とされている。ここで、規定範囲XRは、車線Lの車線方向(±X方向)に規定される2つの端部、即ち、車線方向手前側(-X方向側)の端部X1と車線方向奥側(+X方向側)の端部X2とによって規定される。端部X1から端部X2までの距離は、例えば4メートル程度とされる。
【0020】
図1図2に示すように、料金収受システム1は、車線制御装置10と、路側アンテナ11と、を備えている。
【0021】
車線制御装置10は、路側アンテナ11を通じて、車線L上に規定される規定範囲XRを走行中の車両Aに対し、無線通信による料金収受処理を行う装置である。車線制御装置10は、一つの車線Lに対応して一つずつ設置され、当該車線Lに関連して設置された各種装置等の動作を制御する。本実施形態においては、車線制御装置10は、特に、規定範囲XRに対する車両Aの進入検知、退出検知、及び、当該検知結果に応じた電波の発信、停止の制御を司る。
車線制御装置10の詳細な機能については後述する。
【0022】
路側アンテナ11は、車線制御装置10による制御に従い、車両Aとの無線通信を行うための電波の発信、停止を行う。図1図2に示すように、路側アンテナ11は、車線Lを跨ぐように設置されたガントリGに取り付けられることで車線Lの車線幅方向(±Y方向)の中央付近にて、その上空に設置され、当該設置位置から下方(車線Lの路面)に向けて電波を放射する。
本実施形態に係る路側アンテナ11は、狭域通信アンテナ(DSRCアンテナ)として、限定された所定領域内に存在する通信対象(車両)のみと安定した無線通信が可能となるように設計されている。具体的には、図1図2に示すように、路側アンテナ11は、電波の発信に伴い、空間に、安定通信領域F1と、不安定通信領域F2とを形成する。ここで、「安定通信領域F1」とは、路側アンテナ11との間で、安定した無線通信が保証される空間領域である。また、「不安定通信領域F2」とは、安定通信領域F1よりも大きい空間領域であって、路側アンテナ11との間で安定した無線通信が保証されない空間領域である。また、不安定通信領域F2の更に外側の領域は、路側アンテナ11との間で無線通信が全くできない領域である。以下、この領域を「通信不可領域」と称呼する。
なお、便宜上、図面では安定通信領域F1と不安定通信領域F2との境界を破線で図示し、また、不安定通信領域F2と通信不可領域との境界を一点鎖線で図示しているが、実際には、電波の特性上、安定通信領域F1と不安定通信領域F2との境界、及び、不安定通信領域F2と通信不可領域との境界は曖昧であり、当該境界を明確に(可視的に)特定することは困難である。また、安定通信領域F1と不安定通信領域F2との境界、及び、不安定通信領域F2と通信不可領域との境界は、環境条件(温度、湿度、天候等)に応じて変動し得る。
上述の規定範囲XRは、安定通信領域F1に含まれる車線L上の範囲として規定される。即ち、規定範囲XRは、理想的には、当該規定範囲XRによって規定される車線Lの全範囲が、如何なる環境条件においても安定通信領域F1内に属するような範囲として規定される。
【0023】
なお、図1図2には、第1の実施形態に係る料金収受システム1の主要な構成装置として、車線制御装置10、及び、路側アンテナ11のみを図示しているが、実際には、他の装置、センサ等が更に設置されていてもよい。例えば、アイランドI上には、更に、走行する車両Aの車種区分の判別を行うためのナンバープレート読取装置、車両Aの発進を制御する発進制御機(開閉バー)、利用者に向けて収受料金を提示する路側表示器、車線Lを遠隔監視するための監視カメラ等が設置されていてもよい。
【0024】
(路側アンテナの構造の詳細)
図3図4は、それぞれ、第1の実施形態に係る路側アンテナの構造の詳細を示す第1の図、第2の図である。
図3は、路側アンテナ11の斜視図であり、図4は、路側アンテナ11の側面図である。
以下、図1図2に加えて図3図4を参照しながら、路側アンテナ11の構造的特徴について説明する。
【0025】
図1図4に示すように、路側アンテナ11は、アンテナ本体110と、第1レーザスキャナ111aと、第2レーザスキャナ111bと、を有してなる。
【0026】
アンテナ本体110は、車線制御装置10の制御に応じて電波を発信(放射)するアンテナ装置である。アンテナ本体110は、例えば、複数のアンテナ素子が配列されてなるパッチアンテナを内部に含み、所望する方向(図4に示す放射方向N)に強い指向性を有するように設計されている。アンテナ本体110は、ガントリGに取り付けられた位置(車線Lの上空)から放射方向Nに沿って指向性が強い電波を放射することで、空間内に、図1図2に示すような安定通信領域F1及び不安定通信領域F2を形成する。
アンテナ本体110は、放射方向Nに沿う軸線Oが、車線方向(±X方向)に対し、角度θ(θ<90°)だけ車線方向手前側(-X方向側)に傾斜するように設置される(図4参照)。
【0027】
第1レーザスキャナ111a及び第2レーザスキャナ111bは、共に、タイムオブフライト(Time of Flight:TOF)方式のレーザ測距センサであって、図1図4に示すように、それぞれ、アンテナ本体110の筐体に取り付けられている。
第1レーザスキャナ111a、第2レーザスキャナ111bは、それぞれ、第1検出光P1、第2検出光P2を投光可能とし、一定の走査周期(例えば、10ミリ秒オーダ)で繰り返し各検出光の走査を行う。なお、検出光(第1検出光P1、第2検出光P2)は、例えば、赤外光、近赤外光等とされる。
また、第1レーザスキャナ111a、第2レーザスキャナ111bは、タイムオブフライト方式により、走査中における各方位(後述する走査角度φ)に投光された検出光の反射光を検出することで、自身の設置位置から検出位置(投光された検出光が対象物に当たった位置)までの距離計測を可能とする。
【0028】
第1レーザスキャナ111aは、車線Lの上空に位置するアンテナ本体110の筐体に取り付けられ、当該取り付けられた位置から車線Lの路面に向かって第1検出光P1を投光する(図1参照)。更に、第1レーザスキャナ111aは、第1検出光P1を、車線幅方向(±Y方向)に沿って走査する。ここで、第1レーザスキャナ111aは、車線L上に規定される規定範囲XRの端部のうち車線方向手前側に位置する端部X1に沿って第1検出光P1を走査するように取り付けられている(図2参照)。
【0029】
同じく、第2レーザスキャナ111bは、車線Lの上空に位置するアンテナ本体110の筐体に取り付けられ、当該取り付けられた位置から車線Lの路面に向かって第2検出光P2を投光する(図1参照)。更に、第2レーザスキャナ111bは、第2検出光P2を、車線幅方向(±Y方向)に沿って走査する。ここで、第2レーザスキャナ111bは、車線L上に規定される規定範囲XRの端部のうち車線方向奥側に位置する端部X2に沿って第2検出光P2を走査するように取り付けられている(図2参照)。
【0030】
以上のように、アンテナ本体110の筐体に取り付けられた各レーザスキャナ(第1レーザスキャナ111a、第2レーザスキャナ111b)は、安定通信領域F1に含まれる車線L上の範囲として規定された規定範囲XRの端部に沿って検出光を走査するように、アンテナ本体110に取り付けられている。
【0031】
なお、図4に示すように、第1レーザスキャナ111aは、車線方向(±X方向)に対し、角度θa(θa<θ)で第1検出光P1を投光するように、アンテナ本体110に取り付けられている。また、第2レーザスキャナ111bは、車線方向(±X方向)に対し、角度θb(θ<θb)で第2検出光P2を投光するように、アンテナ本体110に取り付けられている。(図4参照)。
ここで、アンテナ本体110に対する第1レーザスキャナ111aの取り付け角度(出θ-θa)、及び、アンテナ本体110に対する第2レーザスキャナ111bの取り付け角度(θb-θ)は、予め把握されているアンテナ本体110の指向性に基づいて決定される。理想的には、各取り付け角度(θ-θa、θb-θ)は、各レーザスキャナから各方位に投光される検出光が、アンテナ本体110が形成する安定通信領域F1と不安定通信領域F2との境界面に沿って投光されるように調整される。
【0032】
なお、第1の実施形態に係る路側アンテナ11は、図1図4に示す例のように、アンテナ本体110の筐体の側面(-Y方向側のXZ面)に第1レーザスキャナ111a及び第2レーザスキャナ111bが取り付けられる態様で説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。即ち、他の実施形態に係る路側アンテナ11は、アンテナ本体110の筐体の側面以外の面に第1レーザスキャナ111a及び第2レーザスキャナ111bが取り付けられる態様であってもよい。
また、第1の実施形態に係る路側アンテナ11は、第1レーザスキャナ111a及び第2レーザスキャナ111bがアンテナ本体110の別体として取り付けられている(外付けされている)態様として説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。例えば、他の実施形態に係る路側アンテナ11は、アンテナ本体110、第1レーザスキャナ111a及び第2レーザスキャナ111bが一体とされ、単一の筐体に収められている態様であってもよい。「第1レーザスキャナ111a、第2レーザスキャナ111bがアンテナ本体110に取り付けられている」との表現は、このような態様も含むものとする。
【0033】
(車線制御装置の機能構成)
図5は、第1の実施形態に係る車線制御装置の機能構成を示す図である。
図5に示すように、車線制御装置10は、CPU100と、接続インタフェース101とを備えている。
CPU100は、車線制御装置10の動作全体を司るプロセッサであって、所定のプログラムに従って動作することで後述する各種機能を発揮する。
接続インタフェース101は、路側アンテナ11(アンテナ本体110、第1レーザスキャナ111a及び第2レーザスキャナ111b)との間で情報の送受を行うための接続インタフェースである。
【0034】
CPU100は、プログラムに従って動作することで、位置計測部1001、車両進入判定部1002、車両退出判定部1003及びアンテナ制御部1004としての機能を発揮する。
【0035】
位置計測部1001は、第1レーザスキャナ111a、第2レーザスキャナ111bから、各々が投光する検出光及びその反射光に係る各種情報を取得して、車両Aの検出位置(各検出光が当たった位置)を特定する。
具体的には、位置計測部1001は、第1レーザスキャナ111aから、1回の走査における第1検出光P1の各走査角度(走査角度φ)と、当該走査角度φで第1検出光P1を投光してからその反射光を受光した時間差(時間差Δt)とを取得する。ここで、時間差Δtに所定の係数をかけることで第1レーザスキャナ111aの設置位置から第1検出光P1による検出位置までの距離(距離l)が特定される。また、第1レーザスキャナ111aは、車線方向に対し下方(-Z方向)に角度θaだけ傾斜して取り付けられている(図4参照)。位置計測部1001は、極座標(l,θa,φ)を直交座標系に変換することで、第1検出光P1による検出位置を直交座標(Xa,Ya,Za)によって特定する。
同様に、位置計測部1001は、第2レーザスキャナ111bから、1回の走査における第2検出光P2の各走査角度(走査角度φ)と、当該走査角度φで第2検出光P2を投光してからその反射光を受光した時間差(時間差Δt)とを取得する。第2レーザスキャナ111bは、車線方向に対し下方(-Z方向)に角度θbだけ傾斜して取り付けられている(図4参照)。位置計測部1001は、極座標(l,θb,φ)を直交座標系に変換することで、第2検出光P2による検出位置を直交座標(Xb,Yb,Zb)によって特定する。
【0036】
車両進入判定部1002及び車両退出判定部1003は、位置計測部1001によって計測された検出位置(Xa,Ya,Za)、(Xb,Yb,Zb)に基づいて、車両Aが規定範囲XR内を走行しているか否かを判定する判定部である。
より具体的には、車両進入判定部1002及び車両退出判定部1003は、検出位置(Xa,Ya,Za)、(Xb,Yb,Zb)の高さ(Z軸成分Za、Zb)と予め規定された判定閾値Zthとの対比の結果に基づいて、車両Aが規定範囲XR内を走行しているか否かを判定する。
【0037】
車両進入判定部1002は、位置計測部1001から、第1検出光P1を通じて特定された車両Aの検出位置(Xa,Ya,Za)を取得する。そして、車両進入判定部1002は、当該検出位置の高さ(Z軸成分Za)が予め規定された判定閾値Zth以上となった場合に、車両Aが規定範囲XRに進入したと判定する。
なお、判定閾値Zthは、車線Lを走行する主要な車両のフロントガラス下端相当の高さとして、例えば、路面上70cm~100cmの高さ程度に規定される。
【0038】
車両退出判定部1003は、位置計測部1001から、第2検出光P2を通じて特定された車両Aの検出位置(Xb,Yb,Zb)を取得する。そして、車両退出判定部1003は、当該検出位置の高さ(Z軸成分Zb)が判定閾値Zth以上となった後、続いて、判定閾値Zth未満となった場合に、車両Aが規定範囲XRから退出したと判定する。
【0039】
アンテナ制御部1004は、車両Aが規定範囲XRを走行している場合に、路側アンテナ11(アンテナ本体110)から電波を発信させるように制御する。具体的には、アンテナ制御部1004は、車両Aが規定範囲XRに進入したと判定されてから、車両Aが規定範囲XRから退出したと判定されるまでの間、路側アンテナ11から電波を発信させる。
【0040】
(車線制御装置の処理フロー)
図6は、第1の実施形態に係る車線制御装置の処理フローを示す図である。
以下、図6を参照しながら、第1の実施形態に係る車線制御装置10が行う処理の流れについて説明する。
【0041】
図6に示す処理フローは、稼働中の車線Lにおいて、車線制御装置10によって繰り返し実行される。
車線制御装置10の位置計測部1001は、第1レーザスキャナ111a、第2レーザスキャナ111bの各々において検出光の走査が行われる度に、1回の走査で複数方位(複数の走査角度φ)に投光した検出光それぞれによる複数の検出結果(走査角度φ、時間差Δt)を取得する。そして、位置計測部1001は、1回の走査が完了する度に、取得した検出結果の各々に対応する検出位置(Xa、Ya、Za)、(Xb、Yb、Zb)を特定する。
【0042】
車線制御装置10の車両進入判定部1002は、第1検出光P1による所定数以上の検出位置(Xa,Ya,Za)が、判定閾値Zth以上の高さとなっているか否かを判定する(ステップS01)。具体的には、車両進入判定部1002は、まず、第1レーザスキャナ111aが1回の走査で投光した複数の第1検出光P1それぞれの検出位置(Xa,Ya,Za)を取得する。そして、車両進入判定部1002は、そのうちの所定数(例えば、5つ)以上の検出位置のZ軸成分Zaが判定閾値Zth以上となっているか否かを判定する。
第1検出光P1による所定数以上の検出位置(Xa,Ya,Za)が判定閾値Zth以上の高さとなっていない場合(ステップS01:NO)、車両進入判定部1002は、車両Aが規定範囲XRに進入したとは判定しない。この場合、車両進入判定部1002は、ステップS01の判定処理を繰り返し行う。
【0043】
第1検出光P1による所定数以上の検出位置(Xa,Ya,Za)が判定閾値Zth以上の高さとなっている場合(ステップS01:YES)、車両進入判定部1002は、車両Aが規定範囲XRに進入したと判定する。この場合、アンテナ制御部1004は、路側アンテナ11(アンテナ本体110)に対し、電波発信の指令信号を出力する。これにより、路側アンテナ11から電波の発信が開始される(ステップS02)。
電波が発信された後、車線制御装置10は、直ちに、車両Aに搭載された車載器と無線通信を行い、料金の収受に必要な情報(個人識別情報等)のやり取りを行う。なお、無線通信を介した料金収受処理については、既知の通りであるため、詳細な説明を省略する。
【0044】
次に、車線制御装置10の車両退出判定部1003は、第2検出光P2による所定数以上の検出位置(Xb,Yb,Zb)が、判定閾値Zth以上の高さとなっているか否かを判定する(ステップS03)。具体的には、車両進入判定部1002は、まず、第2レーザスキャナ111bが1回の走査で投光した複数の第2検出光P2それぞれの検出位置(Xb,Yb,Zb)を取得する。そして、車両退出判定部1003は、そのうちの所定数(例えば、5つ)以上の検出位置のZ軸成分Zbが判定閾値Zth以上となっているか否かを判定する。
【0045】
第2検出光P2による所定数以上の検出位置(Xb,Yb,Zb)が判定閾値Zth以上の高さとなっていない場合(ステップS03:NO)、車両退出判定部1003は、車両Aの車頭(+X方向側の端部)が規定範囲XRの車線方向奥側(+X方向側)の端部X2に到達していないと判定する。そして、車両退出判定部1003は、ステップS03の判定処理を繰り返し行う。
第2検出光P2による所定数以上の検出位置(Xb,Yb,Zb)が判定閾値Zth以上の高さとなっている場合(ステップS03:YES)、車両退出判定部1003は、車両Aの車頭が規定範囲XRの車線方向奥側(+X方向側)の端部X2に到達したと判定する。この場合、続いて、車両退出判定部1003は、第2検出光P2による全ての検出位置(Xb,Yb,Zb)が、判定閾値Zth未満の高さとなっているか否かを判定する(ステップS04)。
第2検出光P2による全ての検出位置(Xb,Yb,Zb)が、判定閾値Zth未満の高さとなっていない場合(ステップS04:NO)、車両退出判定部1003は、車両Aが規定範囲XRを退出したとは判定しない。この場合、車両退出判定部1003は、車両Aが未だ規定範囲XR内を走行しているものと判断し、ステップS04の判定処理を繰り返し行う。
他方、第2検出光P2による全ての検出位置(Xb,Yb,Zb)が、判定閾値Zth未満の高さとなっている場合(ステップS04:YES)、車両退出判定部1003は、車両Aが規定範囲XRを退出したと判定する。この場合、アンテナ制御部1004は、路側アンテナ11(アンテナ本体110)に対し、電波停止の指令信号を出力する。これにより、路側アンテナ11から発信されていた電波が停止される(ステップS05)。
【0046】
(作用・効果)
以上の通り、第1の実施形態に係る路側アンテナ11は、電波の発信により車線Lを走行する車両Aと安定した無線通信を行うことが可能な安定通信領域F1を形成するアンテナ本体110と、アンテナ本体110に取り付けられた第1レーザスキャナ111a及び第2レーザスキャナ111bと、を備えている。そして、第1レーザスキャナ111a、第2レーザスキャナ111bは、安定通信領域F1に含まれる車線L上の範囲として規定された規定範囲XRの端部X1、X2に沿って検出光を走査するように、アンテナ本体110に取り付けられている。
【0047】
図7は、第1の実施形態に係る路側アンテナによる作用、効果を説明するための図である。
以下、上記特徴を有する路側アンテナ11による作用、効果について、図7を参照しながら説明する。
【0048】
上記特徴を有する路側アンテナ11によれば、車線制御装置10は、車両Aが図7に示す位置α1に到達したタイミングで車両Aが規定範囲XRに進入したと判定する(図6のステップS01:YES)。即ち、車線Lを走行する車両Aが位置α1に到達したタイミングで、第1検出光P1による検出位置Q1の高さが判定閾値Zth以上となり、路側アンテナ11から電波の発信が開始される(図6のステップS02)。そうすると、車両Aのフロントガラス下端周辺(車載器のアンテナの設置が想定される位置)が、ちょうど安定通信領域F1内に入るタイミングで電波が発信されることになる(図7参照)。
同様に、車線制御装置10は、車両Aが図7に示す位置α2に到達したタイミングで車両Aが規定範囲XRから退出したと判定する(図6のステップS04:YES)。即ち、車線Lを走行する車両Aが位置α2に到達したタイミングで、第2検出光P2による検出位置Q2の高さが判定閾値Zth未満となり、路側アンテナ11から発信されていた電波が停止される(図6のステップS05)。そうすると、車両Aの車尾(-X方向側の端部)が、ちょうど安定通信領域F1から出ていくタイミングで電波が停止されることになる(図7参照)。
【0049】
このように、第1の実施形態に係る路側アンテナ11によれば、各レーザスキャナから投光される検出光が、安定通信領域F1と不安定通信領域F2との境界に沿うように投光される。そのため、アンテナ本体110が形成する安定通信領域F1と不安定通信領域F2との境界と、レーザスキャナによって車両の進入判定、退出判定がなされる規定範囲XRの端部との空間的なずれが低減される。これにより、車線制御装置10は、車両Aの走行に合わせて過不足のない適切なタイミングで電波を発信することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る路側アンテナ11は、第1レーザスキャナ111aと、第2レーザスキャナ111bと、の2つを備え、第1レーザスキャナ111aは、規定範囲XRの端部のうち車線方向手前側に位置する端部X1に沿って第1検出光P1を走査するように取り付けられている。また、第2レーザスキャナ111bは、規定範囲XRの端部のうち車線方向奥側に位置する端部X2に沿って第2検出光P2を走査するように取り付けられている。
このようにすることで、安定通信領域F1の車線方向手前側の境界と、第1レーザスキャナ111aによって車両Aの進入判定がなされる端部X1との空間的なずれが低減される。また、安定通信領域F1の車線方向奥側の境界と、第2レーザスキャナ111bによって車両Aの退出判定がなされる端部X2との空間的なずれが低減される。
【0051】
また、本実施形態に係る料金収受システム1は、上述の路側アンテナ11と、レーザスキャナが投光する検出光(第1検出光P1、第2検出光P2)による車両Aの検出位置を計測する位置計測部1001と、計測された検出位置に基づいて、車両Aが規定範囲XRを走行しているか否かを判定する判定部(車両進入判定部1002、車両退出判定部1003)と、車両Aが規定範囲XRを走行している間、アンテナ本体110から電波を発信させるアンテナ制御部1004と、を備えている。
このようにすることで、各レーザスキャナによって検出された車両Aの検出位置に基づいて、当該車両Aが規定範囲XRを走行しているか否かが判定されるので、走行する車両Aに対し、適切なタイミングで電波の発信、停止の制御を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態に係る料金収受システム1は、検出位置の高さ(Z軸成分Za、Zb)と、予め規定された判定閾値Zthとの対比に基づいて、車両Aが規定範囲XRを走行中であるか否かを判定する。
このようにすることで、検出された車両Aの高さが判定閾値Zth以上(未満)となったか否かの判定結果に基づいて、車両Aの進入、退出が判断されるので、鳥や虫、ゴミ等に起因する、車両Aの進入、退出の誤検知を抑制することができる。
【0053】
以上より、第1の実施形態に係る路側アンテナ11によれば、走行する車両に対し、適切なタイミングで電波の発信、停止の制御を行うことができる。
【0054】
なお、第1の実施形態に係る路側アンテナ11は、第1レーザスキャナ111aと、第2レーザスキャナ111bと、の2つを備えている態様としたが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。例えば、他の実施形態に係る路側アンテナ11は、第1レーザスキャナ111a、及び、第2レーザスキャナ111bの何れか一方のみが取り付けられた態様としてもよい。
例えば、路側アンテナ11が第1レーザスキャナ111aのみを具備する態様であっても、少なくとも、第1検出光P1により、車両Aの規定範囲XRへの進入を、過不足のない適切なタイミングで検知することができる。また、路側アンテナ11が第2レーザスキャナ111bのみを具備する態様であっても、少なくとも、第2検出光P2により、車両Aの規定範囲XRからの退出を、過不足のない適切なタイミングで検知することができる。
【0055】
また、料金収受システムの実際の運用では、車種判別処理(車軸数検知)や課金額の提示等の目的で、アイランド上に種々の装置、センサ等が設置される場合がある。そうすると、特に、アイランド長が短いショートアイランドの料金所では、アイランド上における装置、センサ等を設置可能な面積が制約されることにより、料金収受システムの構築が物理的に困難となるケースが想定される。
他方、第1の実施形態に係る路側アンテナ11によれば、規定範囲XRに対する車両の進入、退出を検知するための車両検知手段(第1レーザスキャナ111a、第2レーザスキャナ111b)が、アンテナ本体110とともに車線Lの上空に配置される。したがって、車両検知手段をアイランドI上に設置しなくともよくなるため、アイランドI上における装置の設置数を低減することができる。
【0056】
(路側アンテナの設置方法)
図8は、第1の実施形態に係る路側アンテナの設置方法を示す図である。
次に、第1の実施形態に係る路側アンテナの設置方法の流れについて、図8を参照しながら説明する。
【0057】
新たな料金収受システム1の設置に際し、施工担当者は、アンテナ本体110に第1レーザスキャナ111a、第2レーザスキャナ111bが取り付けられてなる路側アンテナ11を用意する(ステップS11)。
ここで、アンテナ本体110に対する第1レーザスキャナ111a及び第2レーザスキャナ111bの取り付け角度(θ-θa、θb-θ)(図4参照)は、安定通信領域F1についての事前の実測結果、シミュレーション結果等に基づいて、適切に調整されているものとする。
【0058】
次に、施工担当者は、路側アンテナ11を設置しようとする車線L上に、当該路側アンテナ11と無線通信を行うべき範囲(規定範囲XR)の端部X1、X2を規定する(ステップS12)。
【0059】
次に、施工担当者は、第1レーザスキャナ111aから投光される第1検出光P1が端部X1を車線幅方向に走査し、かつ、第2レーザスキャナ111bから投光される第2検出光P2が端部X2を車線幅方向に走査するように、路側アンテナ11の設置位置、設置角度を調整しながら設置する(ステップS13)。
【0060】
ここで、一般的な路側アンテナの施工担当者は、通常、電磁界センサ等を用いて電波強度を確認しながら、規定した全範囲(規定範囲XRの全範囲)が安定通信領域F1に含まれるように路側アンテナを設置する。しかしながら、上述したように、電波の特性上、安定通信領域F1と不安定通信領域F2との境界は曖昧であり、環境条件によって変動し得るため、設置位置、設置角度の調整には多大な労力を要する。
他方、路側アンテナ11を上述したような手順(ステップS11~ステップS13)で設置することで、施工担当者は、各レーザスキャナから投光、走査される検出光の位置合わせをしながら設置位置、設置角度の調整を行う。これにより、設置位置、設置角度の調整に要する労力を大幅に低減することができる。
特に、路側アンテナの施工担当者は、第1検出光P1と規定範囲XRの車線方向手前側の端部X1との位置合わせ、及び、第2検出光P2と規定範囲XRの車線方向奥側の端部X2との位置合わせを一度に行うことができる。これにより、路側アンテナ11の設置位置、設置角度の調整に要する労力を一層低減することができる。
【0061】
なお、図8に示した路側アンテナの設置方法は、第1検出光P1が端部X1を走査し、かつ、第2検出光P2が端部X2を走査するように、路側アンテナ11の設置位置、設置角度を調整しながら設置するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、他の実施形態においては、ステップS12で端部X1のみを規定し、ステップS13で第1検出光P1が端部X1を走査するように設置することで、第2検出光P2が成り行きで走査する車線L上の位置を“端部X2”として規定する態様であってもよい。
このようにすることで、車線Lに対する路側アンテナ11の設置位置、設置角度の調整に要する負担を一層軽減することができる。
【0062】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る料金収受システムについて、図9図12を参照しながら説明する。なお、第2の実施形態に係る料金収受システム及び路側アンテナの構成については第1の実施形態(図1図4)と同様であるため、図示を省略する。
【0063】
第2の実施形態に係る車線制御装置10の機能構成は、第1の実施形態(図5)と同様である。
ただし、第2の実施形態に係る車両進入判定部1002は、位置計測部1001から、第1検出光P1を通じて特定された車両Aの検出位置(Xa,Ya,Za)を取得する。そして、車両進入判定部1002は、当該検出位置の高さ(Z軸成分Za)が予め規定された進入用判定閾値Zth1以上となった場合に、車両Aが規定範囲XRに進入したと判定する。ここで、「進入用判定閾値Zth1」は、第1の実施形態における判定閾値Zthと同じ判定閾値であって、車線Lを走行する主要な車両のフロントガラス下端相当の高さとして、例えば、路面上70cm~100cmの高さ程度に規定される。
また、第2の実施形態に係る車両退出判定部1003は、位置計測部1001から、第2検出光P2を通じて特定された車両Aの検出位置(Xb,Yb,Zb)を取得する。そして、車両退出判定部1003は、当該検出位置の高さ(Z軸成分Zb)が退出用判定閾値Zth2以上となった場合に、車両Aが規定範囲XRから退出したと判定する。ここで、本実施形態に係る車両退出判定部1003は、「退出用判定閾値Zth2」を、第1検出光P1を通じて取得された車両Aの検出位置の高さ(Z軸成分Za)のうち、最大の高さ(最大値Zm)に基づいて決定する。より具体的には、車両退出判定部1003は、最大値Zmから所定のオフセット値ΔZを差し引いた高さを退出用判定閾値Zth2とする。
【0064】
(車線制御装置の処理フロー)
図9は、第2の実施形態に係る車線制御装置の処理フローを示す図である。
また、図10は、第2の実施形態に係る車線制御装置の処理を説明するための図である。
以下、図9及び図10を参照しながら、第2の実施形態に係る車線制御装置10が行う処理の流れについて説明する。
【0065】
図9に示す処理フローは、稼働中の車線Lにおいて、車線制御装置10によって繰り返し実行される。
車線制御装置10の位置計測部1001は、第1の実施形態と同様に、第1レーザスキャナ111a、第2レーザスキャナ111bの各々において検出光の走査が行われる度に、1回の走査で複数方位に投光した検出光それぞれによる複数の検出結果(走査角度φ、時間差Δt)を取得する。そして、位置計測部1001は、1回の走査が完了する度に、取得した検出結果の各々に対応する複数の検出位置(Xa、Ya、Za)、(Xb、Yb、Zb)を特定する。
【0066】
車線制御装置10の車両進入判定部1002は、第1検出光P1による所定数以上の検出位置(Xa,Ya,Za)が、進入用判定閾値Zth1以上の高さとなっているか否かを判定する(ステップS21)。
第1検出光P1による所定数以上の検出位置(Xa,Ya,Za)が進入用判定閾値Zth1以上の高さとなっていない場合(ステップS21:NO)、車両進入判定部1002は、車両Aが規定範囲XRに進入したとは判定しない。この場合、車両進入判定部1002は、ステップS21の判定処理を繰り返し行う。
【0067】
第1検出光P1による所定数以上の検出位置(Xa,Ya,Za)が進入用判定閾値Zth1以上の高さとなっている場合(ステップS21:YES)、車両進入判定部1002は、車両Aが規定範囲XRに進入したと判定する。この場合、アンテナ制御部1004は、路側アンテナ11(アンテナ本体110)に対し、電波発信の指令信号を出力する。これにより、路側アンテナ11から電波の発信が開始される(ステップS22)。
【0068】
次に、車線制御装置10の車両退出判定部1003は、位置計測部1001を通じて、第1レーザスキャナ111aの第1検出光P1によって計測された検出位置(Xa,Ya,Za)を取得しながら、現時点における高さ(Z軸成分Za)の最大値Zmを特定する(ステップS23)。
更に、車両退出判定部1003は、ステップS23で特定した検出位置(Xa,Ya,Za)の高さの最大値Zmから所定のオフセット値ΔZを差し引いた値を退出用判定閾値Zth2として決定する(ステップS24)。
そして、車両退出判定部1003は、第2検出光P2による所定数以上の検出位置(Xb,Yb,Zb)が、ステップS24で決定した退出用判定閾値Zth2以上の高さとなっているか否かを判定する(ステップS25)。
第2検出光P2による所定数以上の検出位置(Xb,Yb,Zb)が退出用判定閾値Zth2以上の高さとなっていない場合(ステップS25:NO)、車両退出判定部1003は、ステップS23に戻り、ステップS23~S25の処理を繰り返す。他方、第2検出光P2による所定数以上の検出位置(Xb,Yb,Zb)が退出用判定閾値Zth2以上の高さとなっている場合(ステップS25:YES)、車両退出判定部1003は、車両Aが規定範囲XRを退出したと判定する。この場合、アンテナ制御部1004は、路側アンテナ11(アンテナ本体110)に対し、電波停止の指令信号を出力する。これにより、路側アンテナ11から発信されていた電波が停止される(ステップS26)。
【0069】
ここで、図10を参照しながら、上述したステップS21~S26の処理について詳細に説明する。
【0070】
図10は、縦軸を各検出光による検出位置の高さ(Z軸成分Za,Zb)とし、横軸を時刻とするグラフである。車両Aが車線Lを走行した場合、図10に示すように、第1検出光P1による車両Aの検出位置の高さ(Z軸成分Za)の時系列(第1時系列情報U1)と、第2検出光P2による車両Aの検出位置の高さ(Z軸成分Zb)の時系列(第2時系列情報U2)と、が得られる。
【0071】
車両Aが車線Lに進入すると、まず、時刻t0で、第1検出光P1が車両Aの車頭を検出する(第1時系列情報U1参照)。この時点では、検出位置の高さ(Z軸成分Za)は進入用判定閾値Zth1以上となっていないので(ステップS21:NO)、路側アンテナ11から電波は発信されない。
その後、車両Aが更に車線方向奥側(+X方向側)に走行し、時刻t1で検出位置の高さが進入用判定閾値Zth1以上となると(ステップS21:YES)、路側アンテナ11から電波が発信される(ステップS22)。
【0072】
また、第1時系列情報U1によれば、更なる車両Aの走行に伴い、時刻t1から時刻t2にかけて検出位置の高さ(Z軸成分Za)が単調増加した後、時刻t2から時刻t3にかけて当該検出位置の高さが単調減少している。時刻t1~t3の間、車両退出判定部1003は、ステップS23~S24を繰り返し実行する中で、時刻t2で検出した検出位置の高さの最大値Zmを特定し(ステップS23)、当該最大値Zmから所定のオフセット値ΔZを差し引くことで退出用判定閾値Zth2を決定する(ステップS24)。
【0073】
その後、車両Aが更に走行を続けることで、時刻t4で、第2検出光P2が車両Aの車頭を検出する(第2時系列情報U2参照)。この時点では、検出位置の高さ(Z軸成分Zb)は、時刻t2(ステップS24)で決定された退出用判定閾値Zth2以上となっていないので(ステップS25:NO)、路側アンテナ11から発信されている電波は停止されない。
その後、車両Aが更に車線方向奥側(+X方向側)に走行し、時刻t5で検出位置の高さが退出用判定閾値Zth2以上となると(ステップS25:YES)、路側アンテナ11から発信されていた電波が停止される(ステップS26)。
【0074】
(作用・効果)
以上の通り、第2の実施形態に係る車線制御装置10は、規定範囲XRの車線方向手前側の端部X1に投光される第1検出光P1を通じて車両Aの検出位置(Xa,Ya,Za)を取得するとともに、当該検出位置の高さ(Za)が予め規定された進入用判定閾値Zth1以上となった場合に、車両Aが規定範囲XRに進入したと判定する。
また、車線制御装置10は、規定範囲XRの車線方向奥側の端部X2に投光される第2検出光P2を通じて車両Aの検出位置(Xb,Yb,Zb)を取得するとともに、当該検出位置の高さ(Zb)が退出用判定閾値Zth2以上となった場合に、車両Aが規定範囲XRから退出したと判定する。ここで、車線制御装置10は、退出用判定閾値Zth2を、第1検出光P1を通じて取得された車両Aの検出位置の高さ(Za)のうち、最大の高さZmに基づいて決定する。
【0075】
図11図12は、それぞれ、第1の実施形態に係る路側アンテナによる作用、効果を説明するための第1の図、第2の図である。
図11は、普通車である車両Aが車線Lを走行する例を示しており、図12は、大型車(観光バス)である車両Bが車線Lを走行する例を示している。
以下、上記特徴を有する車線制御装置10による作用、効果について、図11図12を参照しながら説明する。
【0076】
上記特徴を有する車線制御装置10は、普通車である車両Aが図11に示す位置α1に到達したタイミングで車両Aが規定範囲XRに進入したと判定する(図9のステップS21:YES)。即ち、車線Lを走行する車両Aが位置α1に到達したタイミングで、第1検出光P1による検出位置Q1の高さが進入用判定閾値Zth1以上となり、路側アンテナ11から電波の発信が開始される(図9のステップS22)。そうすると、車両Aのフロントガラス下端周辺に設置される車載器が、ちょうど安定通信領域F1内に入るタイミングで電波が発信されることになる(図11参照)。
同様に、車線制御装置10は、車両Aが図11に示す位置α2’に到達したタイミングで車両Aが規定範囲XRから退出したと判定する(図9のステップS25:YES)。即ち、車線Lを走行する車両Aが位置α2’に到達したタイミングで、第2検出光P2による検出位置Q2の高さが退出用判定閾値Zth2以上となり、路側アンテナ11から発信されていた電波が停止される(図9のステップS26)。ここで、退出用判定閾値Zth2は、第1検出光P1を通じて取得された最大の高さ(最大値Zm)から所定のオフセット値ΔZを差し引いた高さとされている。これにより、退出用判定閾値Zth2が、車線Lを走行する主要な車両のフロントガラス上端相当の高さとなる。したがって、車両Aのフロントガラス上端が、ちょうど安定通信領域F1から出ていくタイミングで電波が停止されることになる(図11参照)。
【0077】
また、上記特徴を有する車線制御装置10は、大型車である車両Bが図12に示す位置β1に到達したタイミングで車両Bが規定範囲XRに進入したと判定する(図9のステップS21:YES)。そうすると、大型車である車両Bのフロントガラス下端周辺に設置される車載器が、ちょうど安定通信領域F1内に入るタイミングで電波が発信されることになる(図12参照)。
同様に、車線制御装置10は、車両Bが図12に示す位置β2に到達したタイミングで車両Bが規定範囲XRから退出したと判定する(図9のステップS25:YES)。即ち、車線Lを走行する車両Bが位置β2に到達したタイミングで、第2検出光P2による検出位置Q2の高さが退出用判定閾値Zth2以上となり、路側アンテナ11から発信されていた電波が停止される(図9のステップS26)。これにより、大型車両(車両B)の場合であっても、フロントガラス上端が、ちょうど安定通信領域F1から出ていくタイミングで電波が停止されることになる(図12参照)。
【0078】
なお、車両退出判定部1003は、退出用判定閾値Zth2を決定する際に、第1検出光P1による検出位置を、走行する車両の車体全体に渡って取得する必要はない。例えば、図12に示す例では、第1検出光P1は、車両Bの車体のうち、車頭付近の一部(検出位置Q1から検出位置Q1’まで)の範囲しか検出していない。このように、走行する車両の車長が大きい場合は、車両退出判定部1003は、当該車両の車頭付近の一部の範囲について検出された検出位置の中から特定された最大の高さ(最大値Zm)に基づいて、退出用判定閾値Zth2を決定する。
【0079】
このように、第2の実施形態に係る車線制御装置10によれば、第2検出光P2により、走行する車両A(車両B)の車高に応じた所定の高さ(退出用判定閾値Zth2)が検出された場合に電波の発信が停止される。
ここで、車両に搭載される車載器のアンテナは、通常、フロントガラス(車両の車頭近傍)の何処かに取り付けられている。また、車両の一般的な車体形状によれば、車両の最大車高が検出された場合には、既に、車両のフロントガラスが通過したと判断できる。したがって、上記のような特徴を有することで、車両のフロントガラスが安定通信領域F1内に属している時間に合わせて、一層、過不足のない適切なタイミングで電波を発信することができる。
特に、車長が大きい車両(車両B)の場合、規定範囲XRに対する車両の車尾抜けを待つことなく電波を停止することができる。
【0080】
また、第2の実施形態に係る車線制御装置10は、最大の高さ(最大値Zm)から所定のオフセット値ΔZを差し引いた高さを退出用判定閾値Zth2とする。
このようにすることで、オフセット値ΔZに基づいて、退出用判定閾値Zth2を、フロントガラス上端相当の高さとすることができる。したがって、走行する車両(車両A、車両B)のフロントガラスが安定通信領域F1内に属している時間に合わせて、一層、過不足のない適切なタイミングで電波を発信することができる。
【0081】
また、第2の実施形態において、進入用判定閾値Zth1は、車線Lを走行する車両A、Bのフロントガラス下端相当の高さとして予め規定されている。
このようにすることで、進入用判定閾値Zth1を、フロントガラス下端相当の高さとすることができる。したがって、走行する車両(車両A、車両B)のフロントガラスが安定通信領域F1内に属している時間に合わせて、一層、過不足のない適切なタイミングで電波を発信することができる。
【0082】
以上より、第2の実施形態に係る車線制御装置10によれば、走行する車両に対し、適切なタイミングで電波の発信、停止の制御を行うことができる。
【0083】
<第2の実施形態の変形例>
次に、第2の実施形態の変形例に係る料金収受システムについて、図13を参照しながら説明する。
【0084】
第2の実施形態の変形例に係る料金収受システム1は、第1レーザスキャナ111a及び第2レーザスキャナ111bを具備しない代わりに、アイランド上に設置された第1車両検知器111a’及び第2車両検知器111b’を備えている。
【0085】
第1車両検知器111a’、第2車両検知器111b’は、アイランドI上に設置された透過型車両検知器である。第1車両検知器111a’及び第2車両検知器111b’は、一般に良く知られている透過型の車両検知器であって、高さ方向に延びる筐体を有するとともに、当該筐体において、投光部及び受光部が高さ方向に複数配列されてなる。透過型である第1車両検知器111a’、第2車両検知器111b’は、投光部と受光部とが車線Lを挟んで対向するように設置される。一方のアイランドIに設置された受光部は、他方のアイランドIに設置された投光部から投光された検出光そのもの(透過光)を検出する。
第1車両検知器111a’は、車線方向(±X方向)における端部X1に設置され、高さ方向(±Z方向)に配列された複数の第1検出光P1’を車線幅方向(+Y方向)に投光する。
同様に、第2車両検知器111b’は、車線方向(±X方向)における端部X2に設置され、高さ方向(±Z方向)に配列された複数の第2検出光P2’を車線幅方向(+Y方向)に投光する。
【0086】
第2の実施形態の変形例に係る車線制御装置10の処理は、第2の実施形態に係る車線制御装置10(図9に示す処理フロー)と同様であり、具体的には、以下の通りである。
【0087】
第2の実施形態の変形例に係る車線制御装置10(車両進入判定部1002)は、第1検出光P1’による車両Aの検出位置Q1’の高さが進入用判定閾値Zth1以上となった場合に、車両Aが規定範囲XRに進入したと判定する(図9のステップS21:YES)。これにより、車線制御装置10は、路側アンテナ11から電波の発信を開始する(図9のステップS22)。
車線制御装置10(車両退出判定部1003)は、車両Aの走行に伴い、第1検出光P1’による車両Aの検出位置Q1’の高さの最大値Zmを取得するとともに(図9のステップS23)、当該最大値Zmから所定のオフセット値ΔZを差し引くことで退出用判定閾値Zth2を決定する(図9のステップS24)。
そして、車線制御装置10(車両退出判定部1003)は、第2検出光P2’による車両Aの検出位置Q2’の高さが、上記のように決定された退出用判定閾値Zth2以上となった場合に、車両Aが規定範囲XRから退出したと判定する(図9のステップS25:YES)。これにより、車線制御装置10は、路側アンテナ11から電波の発信を停止する(図9のステップS26)。
【0088】
以上のように、第2の実施形態の変形例に係る車線制御装置10のように、一般によく知られる車両検知器(第1車両検知器111a’、第2車両検知器111b’)を用いた態様であっても、第2の実施形態と同様の処理フローに基づいて、走行する車両に対し、適切なタイミングで電波の発信、停止の制御を行うことができる。
【0089】
即ち、第2の実施形態及びその変形例に係る料金収受システム1は、規定範囲XRの車線方向手前側の端部X1に投光される検出光(第1検出光P1、P1’)に関する投光部及び受光部を有する第1の車両検知手段(第1レーザスキャナ111a、第1車両検知器111a’)を備える。また、料金収受システム1は、規定範囲XRの車線方向奥側の端部X2に投光される検出光(第2検出光P2、P2’)に関する投光部及び受光部を有する第2の車両検知手段(第2レーザスキャナ111b、第2車両検知器111b’)と、を備える。
「第1の車両検知手段」の具体的態様は、第1レーザスキャナ111a、第1車両検知器111a’に限定されることはなく、例えば、反射型の車両検知器であってもよいし、アイランドI上に設置されたレーザスキャナであってもよい。
「第2の車両検知手段」の具体的態様についても、同様である。
【0090】
(その他の変形例)
以上、第1、第2の実施形態(及びその変形例)に係る料金収受システム1について説明したが、上述の各実施形態に係る料金収受システム1の具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
【0091】
例えば、上述の各実施形態においては、第1検出光P1(P1’)による検出位置の高さの最大値Zmから所定のオフセット値ΔZを差し引いた値を、フロントガラス上端相当の高さとみなして退出用判定閾値Zth2を決定するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
即ち、他の実施形態に係る車線制御装置10は、例えば、単に、第1検出光P1(P1’)による検出位置の高さの最大値Zmそのものをフロントガラス上端相当の高さとみなして、退出用判定閾値Zth2としてもよい。このような態様であっても、走行する車両に対し、適切なタイミングで電波の発信、停止の制御を行うことができる。
【0092】
また、第1、第2の実施形態(及びその変形例)に係る車線制御装置10の車両進入判定部1002は、第1検出光P1による所定数以上の検出位置(Xa,Ya,Za)が判定閾値Zth(Zth1)以上の高さとなっている場合に、車両Aが規定範囲XRに進入したと判定するものとして説明した。しかし、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、他の実施形態に係る車両進入判定部1002は、第1検出光P1による所定数以上の検出位置(Xa,Ya,Za)が、判定閾値Zth(Zth1)以上、かつ、所定の上限値Zth_max以下の範囲に属する場合に、車両Aが規定範囲XRに進入したと判定するようにしてもよい。ここで、上限値Zth_maxは、判定閾値Zth(Zth1)よりも大きい値として規定される。
例えば、飛来物(鳥、紙片など)が第1レーザスキャナ111aの下方を、極めて狭い間隔で通過した場合について説明する。この場合、飛来物(鳥、紙片など)と第1レーザスキャナ111aとの間隔が狭いため、1回の走査で第1レーザスキャナ111aから投光される複数の検出光のうち、当該飛来物に照射される検出光の数が多くなる。そうすると、第1、第2の実施形態(及びその変形例)の場合、所定数以上の検出位置(Xa,Ya,Za)が判定閾値Zth(Zth1)以上の高さとなる条件を満たすこととなり、進入の誤検知が発生し得る。
そこで、上述したように、車両Aの進入検知処理において上限値Zth_maxを規定し、当該上限値Zth_max以下となる検出位置のみを有効とすることで、鳥等の飛来物に起因する進入の誤検知を抑制することができる。
なお、上記他の実施形態に係る進入検知処理の態様(上限値Zth_max以下となる検出位置のみを有効とすること)は、第2レーザスキャナ111bの第2検出光P2による退出検知処理についても適用可能である。
【0093】
なお、上述の各実施形態においては、上述した車線制御装置10の各種処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0094】
上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
また、車線制御装置10は、それぞれの機能を全て具備する1台のコンピュータで構成されていても良いし、その機能の一部ずつを具備し、互いに通信可能に接続された複数のコンピュータで構成されていてもよい。
【0095】
以上のとおり、本発明に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1 料金収受システム(無線通信システム)
10 車線制御装置
100 CPU
1001 位置計測部
1002 車両進入判定部
1003 車両退出判定部
1004 アンテナ制御部
101 接続インタフェース
11 路側アンテナ
110 アンテナ本体
111a 第1レーザスキャナ(第1の車両検知手段)
111b 第2レーザスキャナ(第2の車両検知手段)
111a’ 第1車両検知器(第1の車両検知手段)
111b’ 第2車両検知器(第2の車両検知手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13