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  • 特許-縦長ブレード及び縦軸ロータ 図1
  • 特許-縦長ブレード及び縦軸ロータ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】縦長ブレード及び縦軸ロータ
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
F03D3/06 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017197625
(22)【出願日】2017-10-11
(65)【公開番号】P2019070368
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政彦
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169292(JP,A)
【文献】特開2010-096074(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102748207(CN,A)
【文献】特開2016-205204(JP,A)
【文献】特開2012-132335(JP,A)
【文献】特開2011-169267(JP,A)
【文献】特開2004-084590(JP,A)
【文献】特表2014-507605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
F03B 1/00-11/08
F03B 13/00-13/26;17/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸風車の縦主軸の周囲に、支持腕を介して垂直に固定される揚力型の縦長ブレードの翼端部分に、傾斜基端線に沿って前記縦主軸方向へ向いて傾斜する内向傾斜部を形成し、かつ前記内向傾斜部の内側の前記傾斜基端線における後縁部を、前縁部の位置よりも翼端方向へ向かって傾斜してなることを特徴とする縦長ブレード。
【請求項2】
前記傾斜基端線の基準水平線に対する傾斜角度は、前記基準水平線に対して後縁部が翼端方向へ向いて5°±2°の傾斜であることを特徴とする請求項1に記載の縦長ブレード。
【請求項3】
前記内向傾斜部の先端を、平面視で後縁方向へ向かって傾斜してなることを特徴とする請求項1または2に記載の縦長ブレード。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の縦長ブレードを、縦主軸の周囲に支持腕を介して垂直に、かつ内向傾斜部を縦主軸方向へ向けて傾斜させて配設してなることを特徴とする縦軸ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦軸風水車における揚力型の縦長ブレードの翼端に設けた内向傾斜部の傾斜基端部の角度を水平方向に対して、後縁の方を先端方向に傾斜させた縦長ブレードと、これを備える縦軸ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
縦軸風車における縦長ブレードの翼端部に、内向傾斜部を形成したものとしては、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-261415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている発明においては、垂直の主部に対して、傾斜部の基端部は水平とされている。この内向傾斜部の内側面を通過する気流は、後縁端部で、斜め上方向に通過するが、傾斜部の基端部が水平であるため、円滑に斜め上方へ抜けにくい。
本発明は、これに鑑みて、内向傾斜部の内側面に沿う気流を、円滑に後縁の斜め上方向に通過させるようにした縦長ブレードと、この縦長ブレードを備える風水車用の縦軸ロータを提供することを目的としているものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
【0006】
(1)縦軸風車の縦主軸の周囲に、支持腕を介して垂直に固定される揚力型の縦長ブレードの翼端部分に、傾斜基端線に沿って前記縦主軸方向へ向いて傾斜する内向傾斜部を形成し、かつ前記内向傾斜部の内側の前記傾斜基端線における後縁部を、前縁部の位置よりも翼端方向へ向かって傾斜してなる縦長ブレード。
【0007】
(2)前記傾斜基端線の前記基準水平線に対する傾斜角度は、前記基準水平線に対して後縁部が翼端方向へ向いて5°±2°の傾斜である前記(1)に記載の縦長ブレード。
【0008】
(3)前記内向傾斜部の先端は、平面視で後縁方向へ向かって傾斜している前記(1)または(2)に記載の縦長ブレード。
【0009】
(4)前記(1)~(3)のいずれかに記載の縦長ブレードを、縦主軸の周囲に支持腕を介して垂直に、かつ内向傾斜部を縦主軸方向へ向けて傾斜させて配設してなる縦軸ロータ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
【0011】
前記(1)に記載の発明においては、縦軸ロータにおける縦長揚力型ブレードの内向傾斜部の、内向傾斜部の内側の傾斜基端線における後縁部が、前縁部の位置よりも翼端方向へ向かって傾斜しているので、傾斜された内向傾斜部の先端は、平面視で後縁方向へ傾斜することになる。そのため、水平に傾斜したものに対して、内向傾斜部の後縁が前縁よりも翼端方向に傾斜する。ロータが回転すると、前縁に当って内側面に沿って通過する流体は、後縁で抵抗から解放される。
これに対し、外側面に沿って通過する流体は、迎角となる膨出面に当たって、コアンダ効果による内側面よりも高速で通過するため、内側面に沿う気流を内側に押え込むように通過し、その反作用により、ブレードを回転方向へ押し出す。
ブレードの内側面に当たって内向傾斜部の方へ移動する流体は、内向傾斜部の内側面が、前縁の方が後縁よりも内側にあるので、これを前縁方向へ押しながら、後方へ通過することになる。
【0012】
前記(2)に記載の発明における傾斜基端線の傾斜角度は、基準水平線に対して5°±2°としてあるので、内向傾斜部の先端を、5°前後、後向きにすることができる。その結果、内向傾斜部の内側面に当たって内向傾斜部へ移動する気流が、内向傾斜部を前縁方向へ押しながら通過することとなり、ブレードの回転効率は高められる。
【0013】
前記(3)に記載の発明における内向傾斜部の先端は、平面視で後縁方向へ向いて傾斜しているので、ブレードの回転に伴って、ブレードの回転トラック内に生じる竜巻状の上昇気流が、内向傾斜部の内側面に当り後縁方向に通過するため、その反作用により、ブレードの回転効率は高められる。
【0014】
前記(4)に記載の発明においては、ロータの回転にともなって、ブレードの内側面に当って内向傾斜部の内側面に沿って通過する流体の反作用が、ブレードの回転効率を高めるので、縦軸ロータの回転効率が高まり、風水力発電装置に使用して効率の良い発電をさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の縦長ブレードの内側面図である。
図2図1に示す縦長ブレードの拡大平面図である。
図3図1の縦長ブレードを備える縦軸ロータの正面図である。
図4図3におけるIV-IV線横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。図に示す揚力型の縦長ブレード1の主部2の上下の端に、内側方向へ35°~45°傾斜する内向傾斜部3、4が、上下対称に形成されている。
【0017】
回転にともなって縦長ブレード1の内側面に当たる気流は上下端部方向へ移動し、内向傾斜部3、4に当たることでこれを回転方向に押すため、内向傾斜部3、4のない縦長ブレードよりも回転効率が高まる。
【0018】
内向傾斜部3、4の上下方向の長さは、縦長ブレード1の弦長の約2分の1としてある。縦長ブレード1の弦長は、図4に示す縦軸ロータ7の回転半径のほぼ2分の1としてある。実地試験では、この数値を標準とするものが好ましい回転効率が得られた。
【0019】
図1において、内向傾斜部3、4の傾斜基端部と、主部2の前縁2Aにおける交点6Aと、内向傾斜部3、4の傾斜基端部と後縁2Bにおける交点6Bとを結ぶ傾斜基端線6は、前縁2Aにおける交点6Aを通る基準水平線5に対して、後縁2Bにおける交点6Bが、翼端3A、4A方向へ近くなるように傾斜されている。
この傾斜角度は5°±2°で、実験的に5°が最良で、3°より小であると効果が低く、7°よりも大であると回転抵抗が大となる。
【0020】
従来の縦長ブレードの内向傾斜部は、図1に示す基準水平線5を傾斜基端線として傾斜されているが、本発明では、水平ではなく傾斜している傾斜基端線6を傾斜基端として、内向きに傾斜されているので、翼端3A、4Aは、図2におけるA矢示線上になるように、中心線Sに近寄るように傾斜している。この内向傾斜部3、4の厚さは、主部2から内向傾斜部3、4の先端にかけて、同じ形で次第に薄く形成されている。
【0021】
図3は、縦主軸8の周囲に、固定具9に固定された支持腕10を介して複数(図では2枚)の縦長ブレード1、1を対称に配設した縦軸ロータ7(以下単にロータという)の正面図である。
【0022】
縦長ブレード1の長さは、回転半径の約2倍、弦長は回転半径の約2分の1としてあり、また縦長ブレード1の厚さは弦長のほぼ20%としてある。実験を重ねた結果、この数値が良好な回転効率が得られた。
【0023】
図3においてロータ7が回転すると、縦長ブレード1の内側面に当たる気流は、内向傾斜部3、4の方向に移動して当り、図2に示すように、平面視で前縁2A方向から後縁2Bの外側方向に向かってX矢示方向へ通過して、縦長ブレード1の回転効率を高める。
【0024】
また、図3における右側の縦長ブレード1の内向傾斜部3のように、内側面3Bは平坦であるが、外側面3Cは図4における主部2の断面のように、外側面2Dは膨らんでいるので、この外側面3Cを通過する気流は、内側面3Bを通過する気流よりも高速となって通過し、その反作用で縦長ブレード1の回転効率が高められる。
【0025】
図3の状態でロータ7が高速回転すると、縦長ブレード1の回転トラックの内側における空気は、気圧の差で外側へ押し出され、次第に内側は減圧され、その結果外側から常圧の気流が内側に吸い込まれ、竜巻現象を起こし、負圧で軽い気流は上昇する。
上部の内向傾斜部3の内側面に当たって、図3におけるX矢示方向に抜け、その反作用として、縦長ブレード1を回転方向に押し出し、回転効率を高める。
【0026】
ロータ7の回転に伴い縦長ブレード1の回転トラック内の気圧が下がることで、回転している縦長ブレード1の内側へ外部の大気圧が吸い込まれ、軽い渦流となって外部へ抜ける気流は、図1における内向傾斜部3の斜め後方へ、水平に対して、およそ5°程度上向きのX矢示方向へ抜けるので、その反作用は、水平に近い方向へ作用し、回転効率を高めることとなる。
【0027】
前記上昇する気流の抜ける方向は、平面視では、図2におけるX矢示方向であり、縦長ブレード1の前面2Cに対して約5°ほど後外向きになるので、このX矢示方向に高速で通過する気流の反作用により、縦長ブレード1は回転方向へ強く押し出されることとなる。
【0028】
このように、内向傾斜部3、4の傾斜基端線6を、前縁2Aよりも後縁2Bの方を翼端3A、4Aの方へ向かって傾斜させたことによって、縦長ブレード1に当たる気流を後縁2B方向へ導くことができ、その反作用により縦軸ロータ7の回転効率を容易に高くすることができ、これを風水力発電装置に利用するとき、高効率の発電をさせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
縦軸ロータの回転効率が高いので、これを利用して高効率の縦軸風車や水車を形成し、風水力発電装置とすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1.縦長ブレード
2.主部
2A.前縁
2B.後縁
3、4.内向傾斜部
3A、4A.
5.基準水平線
6.傾斜基端線
7.縦軸ロータ
8.縦主軸
9.固定具
10.支持腕
S.中央線
X.風流
図1
図2
図3
図4