(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】オイルポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/10 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
F04C2/10 341H
(21)【出願番号】P 2017218910
(22)【出願日】2017-11-14
【審査請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】小平 和生
(72)【発明者】
【氏名】木倉 崇晴
(72)【発明者】
【氏名】平脇 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】双木 勝之
(72)【発明者】
【氏名】山形 進
(72)【発明者】
【氏名】江口 則空
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-124284(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0192122(US,A1)
【文献】特開昭57-119174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に作動油が供給される供給溝を有すると共に回転可能なアウターローターと、
前記アウターローターの内側において回転可能なインナーローターと、
作動油を吸入する吸入ポートと前記吸入ポートから吸入された作動油をライン圧回路に吐出する吐出ポートと前記アウターローター及び前記インナーローターをそれぞれ回転可能に支持する支持凹部とを有するポンプハウジングと、
前記アウターローターの外周面に離接する方向へ移動可能にされ前記外周面に近付く方向へ付勢されると共に前記供給溝に供給される作動油の圧力を受ける摺動部材とを備え、
前記ポンプハウジングには前記ライン圧回路に流動される作動油の一部を前記供給溝に流動させる供給路と前記供給溝に供給された作動油を排出する排出路とが形成され、
前記供給溝には前記ライン圧回路に流動される作動油の油量に応じて前記供給路から作動油が供給され、
前記アウターローターの回転に伴って前記摺動部材が前記外周面に摺動されると共に
前記摺動部材が前記供給溝に突出され前記供給溝に供給された作動油によって前記アウターローターに回転方向への補助動力が付与される
オイルポンプ。
【請求項2】
前記ポンプハウジングには前記供給路に連通された与圧路が形成され、
前記摺動部材が前記与圧路に流動される作動油によって前記外周面に近付く方向へ付勢される
請求項1に記載のオイルポンプ。
【請求項3】
前記摺動部材を前記外周面に近付く方向へ付勢する付勢バネが設けられた
請求項1に記載のオイルポンプ。
【請求項4】
前記ライン圧回路と前記供給路に連通されたアシスト回路が設けられ、
前記ライン圧回路に連通され潤滑部へ向けて作動油を流動させる潤滑圧回路が設けられ、
前記アシスト回路には前記潤滑圧回路に流動される作動油の圧力に応じて開閉されるライン圧戻し弁が接続され、
前記潤滑圧回路に流動される作動油の圧力が一定以上にされたときに前記ライン圧戻し弁が開放されることにより前記ライン圧回路に流動される作動油の一部が前記アシスト回路から前記供給溝へ向けて流動される
請求項1に記載のオイルポンプ。
【請求項5】
前記供給溝が周方向に離隔して複数形成された
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載のオイルポンプ。
【請求項6】
前記排出路に前記供給溝へ向けての作動油の流動を規制する逆止弁が配置された
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載のオイルポンプ。
【請求項7】
前記排出路に流動された作動油がオイルタンクへ向けて流動される
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6に記載のオイルポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプハウジングに対して回転されるアウターローターとインナーローターを有するオイルポンプについての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるクラッチ機構やブレーキ機構や変速機構等の油圧によって動作される各種の油圧機構には、円滑な動作を行うためや保護のために作動油が供給される。このような油圧機構には、オイルポンプからライン圧回路を介して作動油が供給され、オイルポンプにはオイルタンクから作動油が吸入される。
【0003】
オイルポンプには、外歯を有するインナーローターと内歯を有するアウターローターが偏芯された状態でそれぞれケース体に対して回転自在に支持されたタイプがある。このようなタイプのオイルポンプには、ポンプハウジングのケース体に吸入ポートと吐出ポートが形成され、インナーローターとアウターローターの間にポンプ室として形成される空間の容積がインナーローターとアウターローターの回転に伴って変化されることにより、ポンプ室の圧力が変化されて吸入ポートからの作動油の吸入と吐出ポートからの作動油の吐出が行われる。
【0004】
このようなオイルポンプにおいては、上記したように、ポンプ室の圧力が変化されて吸入ポートからの作動油の吸入と吐出ポートからの作動油の吐出が行われるため、ポンプ室の圧縮過程においてポンプ室の圧力が上昇することによりインナーローターとアウターローターを回転させるための駆動トルクが増加して駆動ロスが生じるおそれがある。
【0005】
そこで、従来のオイルポンプには、ケース体に余剰の作動油を流動させる供給通路と供給通路に連通するポケット部とが形成され、ポンプ回転数が増加したときに余剰の作動油を供給通路からポケット部に流動させ、ポケット部に流動された作動油によって駆動トルクに対する補助動力を発生させる構成にされたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載されたオイルポンプにおいては、アウターローターに閉じ込み圧リーク用のロータ溝が形成され、ポケット部に供給された作動油がロータ溝からポンプ室に流動される構成にされている。
【0008】
従って、ロータ溝からポンプ室に流動される作動油によってポンプ室の圧力が増加して駆動トルクが増加したり、ポンプ室の圧力によってはポケット部からポンプ室への流動状態が不安定になるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、作動油の安定した流動状態を確保した上で駆動ロスの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るオイルポンプは、外周部に作動油が供給される供給溝を有すると共に回転可能なアウターローターと、前記アウターローターの内側において回転可能なインナーローターと、作動油を吸入する吸入ポートと前記吸入ポートから吸入された作動油をライン圧回路に吐出する吐出ポートと前記アウターローター及び前記インナーローターをそれぞれ回転可能に支持する支持凹部とを有するポンプハウジングと、前記アウターローターの外周面に離接する方向へ移動可能にされ前記外周面に近付く方向へ付勢されると共に前記供給溝に供給される作動油の圧力を受ける摺動部材とを備え、前記ポンプハウジングには前記ライン圧回路に流動される作動油の一部を前記供給溝に流動させる供給路と前記供給溝に供給された作動油を排出する排出路とが形成され、前記供給溝には前記ライン圧回路に流動される作動油の油量に応じて前記供給路から作動油が供給され、前記アウターローターの回転に伴って前記摺動部材が前記外周面に摺動されると共に前記摺動部材が前記供給溝に突出され前記供給溝に供給された作動油によって前記アウターローターに回転方向への補助動力が付与されるものである。
【0011】
これにより、供給溝に供給された作動油によってアウターローターに回転方向への補助動力が付与されると共に供給溝に供給されてアウターローターに補助動力を付与した作動油が排出路から排出される。
【0012】
第2に、上記した本発明に係るオイルポンプにおいては、前記ポンプハウジングには前記供給路に連通された与圧路が形成され、前記摺動部材が前記与圧路に流動される作動油によって前記外周面に近付く方向へ付勢されることが望ましい。
【0013】
これにより、与圧路に流動される作動油によって摺動部材がアウターローターの外周面に接する方向へ付勢されるため、摺動部材を付勢するための専用の部材を必要としない。
【0014】
第3に、上記した本発明に係るオイルポンプにおいては、前記摺動部材を前記外周面に近付く方向へ付勢する付勢バネが設けられることが望ましい。
【0015】
これにより、付勢バネによって摺動部材がアウターローターの外周面に接する方向へ付勢されるため、作動油の圧力に拘わらず摺動部材が付勢される。
【0016】
第4に、上記した本発明に係るオイルポンプにおいては、前記ライン圧回路と前記供給路に連通されたアシスト回路が設けられ、前記ライン圧回路に連通され潤滑部へ向けて作動油を流動させる潤滑圧回路が設けられ、前記アシスト回路には前記潤滑圧回路に流動される作動油の圧力に応じて開閉されるライン圧戻し弁が接続され、前記潤滑圧回路に流動される作動油の圧力が一定以上にされたときに前記ライン圧戻し弁が開放されることにより前記ライン圧回路に流動される作動油の一部が前記アシスト回路から前記供給溝へ向けて流動されることが望ましい。
【0017】
これにより、潤滑圧回路に流動される作動油の圧力に応じて作動油がアシスト回路から供給溝に供給されるため、余剰の作動油によってアウターローターに補助動力が付与される。
【0018】
第5に、上記した本発明に係るオイルポンプにおいては、前記供給溝が周方向に離隔して複数形成されることが望ましい。
【0019】
これにより、アウターローターの回転時に複数の供給溝に順次作動油が供給されてアウターローターに回転力が付与される。
【0020】
第6に、上記した本発明に係るオイルポンプにおいては、前記排出路に前記供給溝へ向けての作動油の流動を規制する逆止弁が配置されることが望ましい。
【0021】
これにより、逆止弁により供給溝から排出路に流動された作動油の逆流が防止される。
【0022】
第7に、上記した本発明に係るオイルポンプにおいては、前記排出路に流動された作動油がオイルタンクへ向けて流動されることが望ましい。
【0023】
これにより、供給溝から排出路に流動されオイルポンプの外部へ排出される作動油がオイルタンクに流動される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、供給溝に供給された作動油によってアウターローターに回転方向への補助動力が付与されると共に供給溝に供給されてアウターローターに補助動力を付与した作動油が排出路から排出されるため、作動油の安定した流動状態を確保した上で駆動ロスの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図2乃至
図9と共に本発明オイルポンプの実施の形態を示すものであり、本図は、オイルポンプの分解斜視図である。
【
図5】供給溝に作動油が供給されていない状態を示す模式図である。
【
図6】供給溝に作動油が供給されている状態を示す模式図である。
【
図7】アウターローターに作動油の油圧が付与されている状態を示す断面図である。
【
図8】供給溝から作動油が排出される状態を示す断面図である。
【
図9】摺動部材が付勢バネによって付勢された構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明のオイルポンプを実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。
【0027】
尚、以下の説明においては、オイルポンプの回転軸方向を上下方向として上下前後左右の方向を示すものとする。但し、以下に示す上下前後左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0028】
<オイルポンプの構成>
オイルポンプ1はアウターローター2とインナーローター3とポンプハウジング4を有している(
図1及び
図2参照)。
【0029】
アウターローター2は上下に貫通された筒状に形成され、内部の空間が配置孔2aとして形成されている。アウターローター2の内周部には内歯2b、2b、・・・が設けられている。
【0030】
アウターローター2の外周部には外方に開口された供給溝5、5、・・・が周方向に等間隔に離隔して形成されている(
図1乃至
図3参照)。従って、アウターローター2の外周面6は供給溝5、5、・・・が形成されていない部分である外方に凸の円弧面状の曲面部7、7、・・・と供給溝5、5、・・・が形成された部分である溝形成部8、8、・・・とが交互に形成されて成る。
【0031】
溝形成部8は、曲面部7に対して略直交する垂直面8aと、アウターローター2の略半径方向を向き垂直面8aに略直交する中間面8bと、中間面8bから離隔するに従って外方に変位する傾斜面8cとが順に連続されて成る。
【0032】
インナーローター3はアウターローター2の配置孔2aに回転可能な状態で配置され、中央部に上下に貫通された結合孔3aを有している。インナーローター3の外周部には外歯3b、3b、・・・が設けられている。インナーローター3の外歯3b、3b、・・・はアウターローター2の内歯2b、2b、・・・の数よりも一つ少なくされている。
【0033】
インナーローター3にはシャフト9が結合孔3aに挿入された状態で結合されている。シャフト9は図示しない駆動源の駆動力によって軸回り方向へ回転される。
【0034】
インナーローター3はアウターローター2に対して偏芯された状態で配置孔2aに配置されている。アウターローター2とインナーローター3によってローターユニット10が構成されている。
【0035】
ポンプハウジング4はケース11とカバー12が上下で結合されて構成されている。
【0036】
ケース11には上方に開口された円形状の支持凹部13が形成されている。支持凹部13を形成する周面14は曲率がアウターローター2の外周面6における曲面部7、7、・・・の曲率と略同じにされている。
【0037】
ケース11には支持凹部13を形成する底面部15の中央部に、上下に貫通されたシャフト挿通孔16が形成されている。ケース11には底面部15に、それぞれ上方に開口された吸入ポート17と吐出ポート18が形成されている。吸入ポート17と吐出ポート18は周方向に離隔して形成されている。
【0038】
ケース11には支持凹部13を挟んだ反対側にそれぞれ上方に開口された吸入穴19と吐出穴20が形成されている。吸入穴19はケース11の内部において吸入ポート17と連通され、吐出穴20はケース11の内部において吐出ポート18と連通されている。
【0039】
ケース11には作動油が流入される供給路21が形成されている(
図3参照)。供給路21は一端が支持凹部13を形成する周面14に開口されている。ケース11には供給路21に連通された与圧路22が形成され、与圧路22は一端が周面14に開口され他端が供給路21に連通されている。
【0040】
与圧路22には一端側において摺動部材23が移動可能に支持されている。摺動部材23は板状又は軸状に形成され、一部が支持凹部13に突出可能な状態で与圧路22に対して移動可能にされている。摺動部材23は支持凹部13に突出される側の端部23aが外方に凸の曲面状に形成されている。摺動部材23は与圧路22に供給路21を介して流入される作動油によって支持凹部13に突出される方向へ付勢される。
【0041】
ケース11には排出路24が形成されている。排出路24は一端が支持凹部13を形成する周面14に開口されている。排出路24の中間部分には逆止弁25が配置されている。逆止弁25は開閉ロッド25aとバネ部材25bを有し、開閉ロッド25aがバネ部材25bによって排出路24を閉塞する方向へ付勢されている。
【0042】
ケース11には逆止弁25が配置された空間にエアー抜き孔26の一端が連通されている。エアー抜き孔26の他端はケース11の外面に開口されている。エアー抜き孔26によって逆止弁25が配置された空間が大気開放され、開閉ロッド25aの安定した移動状態が確保されている。
【0043】
カバー12の略中央部には挿入孔27が形成されている。カバー12には挿入孔27を挟んだ反対側にそれぞれ上下に貫通された吸入孔28と吐出孔29が形成されている。
【0044】
カバー12は支持凹部13にアウターローター2とインナーローター3が配置された状態においてケース11に上方から結合される。カバー12がケース11に結合された状態において、シャフト9はケース11のシャフト挿通孔16とインナーローター3の結合孔3aとカバー12の挿入孔27とに挿通され、結合孔3aに固定される。従って、シャフト9はポンプハウジング4に対してインナーローター3と一体になって回転される。このときアウターローター2の内歯2b、2b、・・・とインナーローター3の外歯3b、3b、・・・との噛合と離隔が順次繰り返され、アウターローター2にインナーローター3の回転力が付与されてアウターローター2がポンプハウジング4に対してインナーローター3と異なる回転数で回転される。
【0045】
カバー12がケース11に結合された状態においてカバー12の吸入孔28とケース11の吸入穴19とが上下で連通され、吸入孔28と吸入穴19によって作動油の吸入路30が形成される。また、カバー12がケース11に結合された状態においてカバー12の吐出孔29とケース11の吐出穴20とが上下で連通され、吐出孔29と吐出穴20によって作動油の吐出路31が形成される。
【0046】
支持凹部13にアウターローター2とインナーローター3が配置された状態においてケース11とカバー12が結合されることにより、アウターローター2とインナーローター3とケース11の底面部15とカバー12の下面とによって複数の空間が形成され、これらの各空間がポンプ室32、32、・・・とされる。
【0047】
<オイルポンプの動作>
上記のように構成されたオイルポンプ1においては、吸入路30から作動油が吸入され、吸入された作動油が吸入ポート17からポンプ室32、32、・・・に流動される。このときアウターローター2とインナーローター3が同じ方向へ異なる回転数で回転され、ポンプ室32、32、・・・が容積の拡大と縮小を繰り返す。ポンプ室32、32、・・・の容積が拡大と縮小を繰り返すことにより、各ポンプ室32、32、・・・に流入された作動油の圧力が変化され、作動油が吐出ポート18から吐出路31に流動され、流動された作動油が吐出路31から吐出される。
【0048】
<作動油の流動回路等の構成>
次に、オイルポンプ1に吸入され又はオイルポンプ1から吐出される作動油の流動回路等の構成について説明する(
図4参照)。
【0049】
流動回路としては、オイルポンプ1に作動油50を吸入する吸入回路40と、オイルポンプ1から吐出された作動油50が流動されるライン圧回路41と、潤滑部100に作動油50を供給する潤滑圧回路42と、アウターローター2に対する補助動力を付与するためのアシスト回路43と、アシスト回路からオイルポンプ1に供給された作動油50を排出する排出回路44とが設けられている。
【0050】
吸入回路40はオイルポンプ1の吸入路30に連通され、オイルタンク200から流動される作動油50を吸入路30へ向けて流動させる油路である。
【0051】
ライン圧回路41はオイルポンプ1の吐出路31に連通され、吐出路31から吐出された作動油50を、例えば、クラッチ機構やブレーキ機構や変速機構等の油圧機構300へ向けて流動させる油路である。ライン圧回路41には第1の分岐路41aと第2の分岐路41bが設けられている。
【0052】
第1の分岐路41aにはライン圧調整弁45が接続されている。ライン圧調整弁45はライン圧回路41を流動される作動油50の圧力を調整する機能を有している。第2の分岐路41bにはライン圧戻し弁46が接続されている。
【0053】
第1の分岐路41aはライン圧調整弁45を介して潤滑圧回路42に連通されている。従って、潤滑圧回路42に流動される作動油50の油量がライン圧調整弁45によって制御される。
【0054】
潤滑圧回路42は作動油50を、例えば、各種の歯車機構や回転機構やエンジンの各部等の潤滑部100へ向けて流動させる油路である。潤滑圧回路42にはオリフィス47が接続され、オリフィス47によって潤滑圧回路42から潤滑部100へ向けて流動される作動油50の油量が制限されている。
【0055】
潤滑圧回路42にはオリフィス47の上流側に戻し用分岐路42aが設けられ、戻し用分岐路42aはライン圧戻し弁46に連通されている。
【0056】
アシスト回路43はライン圧戻し弁46とオイルポンプ1の供給路21とに連通されている。従って、アシスト回路43に作動油50が流動されると、流動された作動油50は供給路21を介してアウターローター2の供給溝5、5、・・・に供給されると共に与圧路22に流動される。
【0057】
排出回路44はオイルポンプ1の排出路24に連通されている。
【0058】
<流動回路等の動作>
上記の構成において、オイルポンプ1のローターユニット10が低回転状態の場合には、ライン圧回路41と潤滑圧回路42に流動される作動油50の油量が少なく潤滑圧回路42における潤滑圧が小さくされている。この場合には、ライン圧戻し弁46が閉塞状態にされ、ライン圧戻し弁46によって第2の分岐路41bからアシスト回路43への流動が行われない状態にされている(
図5参照)。従って、供給路21からアウターローター2の供給溝5、5、・・・への作動油50の供給は行われない。
【0059】
一方、オイルポンプ1のローターユニット10が高回転状態の場合には、ライン圧回路41と潤滑圧回路42に流動される作動油50の油量が多くなり、潤滑圧回路42における潤滑圧が高くされている。この場合には、潤滑圧によってライン圧戻し弁46が閉塞状態から開放状態にされ、ライン圧戻し弁46によって第2の分岐路41bとアシスト回路43が連通される(
図6参照)。
【0060】
第2の分岐路41bとアシスト回路43が連通されると、ライン圧回路41からアシスト回路43に作動油50が流動され、アシスト回路43に流動された作動油50が供給路21からアウターローター2の供給溝5、5、・・・に順次供給される。作動油50はアウターローター2の回転方向S(
図3参照)により、供給溝5の摺動部材23と垂直面8aの間に供給されていく。
【0061】
このように作動油50が供給溝5に供給されると、溝形成部8の各面と摺動部材23の垂直面8a側の面とに油圧が付与されると共に与圧路22の作動油50によって付勢されている摺動部材23の端部23aがアウターローター2の溝形成部8と曲面部7に順に摺動され、作動油50の油圧がアウターローター2の回転に対する補助動力として作用される(
図7参照)。
【0062】
従って、ローターユニット10はシャフト9を介して伝達される駆動源の駆動力とライン圧回路41からアシスト回路43と供給路21を介して供給された作動油50の油圧による補助動力とによって回転方向Sに回転される。
【0063】
上記のように、オイルポンプ1においては、ポンプハウジング4には供給路21に連通された与圧路22が形成され、摺動部材23が与圧路22に流動される作動油50によって外周面6に近付く方向へ付勢されている。
【0064】
従って、与圧路22に流動される作動油50によって摺動部材23がアウターローター2の外周面6に接する方向へ付勢されるため、摺動部材23を付勢するための専用の部材を必要とせず、部品点数の削減を図った上で摺動部材23を確実に付勢することができる。
【0065】
作動油50が供給された供給溝5がアウターローター2の回転により排出路24に対応する位置に達すると、供給溝5に供給されている作動油50が排出路24に流動される(
図8参照)。作動油50が供給溝5から排出路24に流動されると、排出路24に流動される作動油50の油圧によって逆止弁25が開放され、作動油50が排出路24から排出回路44を介して、例えば、オイルタンク200へ向けて流動される。
【0066】
尚、供給溝5から排出路24に作動油50が流動されない状態においては、逆止弁25によって排出回路44から供給溝5へ向けての作動油50の逆流が防止されている(
図7参照)。
【0067】
<その他>
上記には、摺動部材23が与圧路22に供給路21を介して流入される作動油50によって付勢される例を示したが、摺動部材23は付勢バネ48によって付勢される構成にされていてもよい(
図9参照)。
【0068】
例えば、ケース11には与圧路22が形成されておらず、ケース11には支持凹部13に開口された配置空間49が形成され、配置空間49に付勢バネ48が配置され、摺動部材23が支持凹部13に突出可能な状態で付勢バネ48に付勢された構成にされていてもよい。
【0069】
このように構成されることにより、付勢バネ48によって摺動部材23がアウターローター2の外周面6に接する方向へ付勢されるため、作動油50の圧力に拘わらず摺動部材23が付勢され、供給溝5、5、・・・に供給される作動油50の圧力に拘わらず摺動部材23を確実に付勢することができる。
【0070】
<まとめ>
以上に記載した通り、オイルポンプ1にあっては、供給溝5に供給される作動油50の圧力を受ける摺動部材23が設けられ、ポンプハウジング4に供給路21と排出路24が形成され、供給溝5にはライン圧回路41に流動される作動油50の油量に応じて供給路21から作動油50が供給され、アウターローター2の回転に伴って摺動部材23が外周面6に摺動されると共に供給溝5に供給された作動油50によってアウターローター2に回転方向への補助動力が付与される。
【0071】
従って、供給溝5に供給された作動油50によってアウターローター2に回転方向への補助動力が付与されると共に供給溝5に供給されてアウターローター2に補助動力を付与した作動油50が排出路24から排出されるため、作動油50の安定した流動状態を確保した上で駆動ロスの低減を図ることができる。
【0072】
また、アシスト回路43には潤滑圧回路42に流動される作動油50の圧力に応じて開閉されるライン圧戻し弁46が接続され、潤滑圧回路42に流動される作動油50の圧力が一定以上にされたときにライン圧戻し弁46が開放されることによりライン圧回路41に流動される作動油50の一部がアシスト回路43から供給溝5へ向けて流動される。
【0073】
従って、潤滑圧回路42に流動される作動油50の圧力に応じて作動油50がアシスト回路43から供給溝5に供給されるため、余剰の作動油50によってアウターローター2に補助動力が付与され、作動油50の高い作動効率を確保した上でオイルポンプ1の駆動ロスの低減を図ることができる。
【0074】
さらに、供給溝5、5、・・・が周方向に離隔して複数形成されているため、アウターローター2の回転時に複数の供給溝5、5、・・・に順次作動油50が供給されてアウターローター2に回転力が付与され、アウターローター2の回転時に断続的に補助動力を付与することができる。
【0075】
さらにまた、排出路24に供給溝5へ向けての作動油50の流動を規制する逆止弁25が配置されているため、逆止弁25により供給溝5から排出路24に流動された作動油50の逆流が防止され、排出路24に流動される作動油50をオイルポンプ1の外部へ確実に排出してアウターローター2に対する補助動力の低下を防止することができる。
【0076】
加えて、排出路24に流動された作動油50がオイルタンク200へ向けて流動されるため、供給溝5から排出路24に流動されオイルポンプ1の外部へ排出される作動油50がオイルタンク200に流動され、作動油50の利用効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0077】
1…オイルポンプ、2…アウターローター、3…インナーローター、4…ポンプハウジング、5…供給溝、6…外周面、13…支持凹部、17…吸入ポート、18…吐出ポート、21…供給路、22…与圧路、23…摺動部材、24…排出路、25…逆止弁、41…ライン圧回路、42…潤滑圧回路、43…アシスト回路、44…排出回路、46…ライン圧戻し弁、200…オイルタンク、48…付勢バネ