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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】光学読取装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20220214BHJP
   G06K 7/015 20060101ALI20220214BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20220214BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20220214BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20220214BHJP
   G02B 7/28 20210101ALN20220214BHJP
【FI】
G06K7/10 408
G06K7/10 400
G06K7/10 416
G06K7/015
G06K7/10 372
G06K7/10 436
G03B13/36
G02B7/04 Z
G01C3/06 110A
G02B7/28 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017229193
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2019101555
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100107847
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 聡
(72)【発明者】
【氏名】西澤 有翼
(72)【発明者】
【氏名】坂 知樹
【審査官】梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-208797(JP,A)
【文献】特開2011-034360(JP,A)
【文献】特開2006-221349(JP,A)
【文献】特開2006-209208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
G06K 7/015
G03B 13/36
G02B 7/04
G01C 3/06
G02B 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに付された光学情報をデコードする光学読取装置において、
前記ワークにエイマー光を照射するエイマー光照射部と、
前記エイマー光が照射されたワークを撮像して撮像画像を生成する撮像部と、
前記撮像部からの距離が第1の距離範囲内である領域において前記撮像部の合焦距離を調整する焦点調整部と、
前記撮像画像内における前記エイマー光の位置に基づいて、前記撮像部からの最大距離が、前記第1の距離範囲の最大距離よりも小さい第2の距離範囲内の領域において前記ワークまでの距離を測定する距離測定部と、
前記焦点調整部を制御する制御部と、
前記合焦距離の調整後に撮像された前記撮像画像に基づいて、前記光学情報をデコードするデコード部と、を備え、
前記距離測定部が距離の測定に成功した場合に、前記制御部は、測定された距離に基づいて前記焦点調整部を制御し、前記撮像部は、前記第2の距離範囲内のワークにピントが合った撮像画像を生成し、前記デコード部は、前記第2の距離範囲内のワークにピントが合った撮像画像に基づいて前記光学情報をデコードし、
前記距離測定部が距離の測定に失敗した場合に、前記制御部は、前記第1の距離範囲内であって、前記撮像部からの距離が前記第2の距離範囲よりも遠く、焦点ずれに対する焦点ぼけが前記第2の距離範囲内よりも相対的に小さいリカバリー領域内の予め定められたリカバリー位置に前記合焦距離が移動するように前記焦点調整部を制御し、前記撮像部は、前記リカバリー位置にピントが合った撮像画像を生成し、前記デコード部は、前記リカバリー位置にピントが合った撮像画像に基づいて前記第1の距離範囲内であって前記第2の距離範囲よりも遠い前記リカバリー領域内の前記光学情報をデコードすることを特徴とする光学読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記距離測定部が距離の測定に失敗した場合に、前記合焦距離が2以上の前記リカバリー位置に順次に移動するように前記焦点調整部を制御することを特徴とする請求項1に記載の光学読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記距離測定部が距離の測定に失敗し、前記合焦距離が3以上の前記リカバリー位置に順次に移動する際、両端のリカバリー位置よりも先に、両端以外のリカバリー位置の少なくとも一つに移動するように前記焦点調整部を制御することを特徴とする請求項2に記載の光学読取装置。
【請求項4】
前記3以上のリカバリー位置として、前記合焦距離が近い順に第1のリカバリー位置、第2のリカバリー位置及び第3のリカバリー位置が定められ、
前記制御部は、前記距離測定部が距離の測定に失敗した場合に、前記合焦距離が前記第2のリカバリー位置に移動した後に、前記第1のリカバリー位置又は前記第3のリカバリー位置の少なくとも一方に移動するように前記焦点制御部を制御することを特徴とする請求項3に記載の光学読取装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記距離測定部が距離の測定に失敗した場合に、前記合焦距離が2以上の前記リカバリー位置に順次に移動するように前記焦点調整部を制御するとともに、前記合焦距離が第2の距離範囲外の前記リカバリー位置へ移動した後に撮像された前記撮像画像に基づくデコードに失敗した場合に、前記合焦距離が前記第の距離範囲内の予め定められた2以上のサーチ位置に順次に移動するように前記焦点調整部を制御し、
前記第2の距離範囲外における前記サーチ位置間の間隔は、前記リカバリー位置間の間隔よりも狭くなるように定められていることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の光学読取装置。
【請求項6】
前記撮像部が選択可能な前記合焦距離に対応づけて制御量を記憶する制御量記憶部を備え、
前記制御部は、測定された距離に対応する前記制御量を前記制御量記憶部から読み出し、読み出された前記制御量に基づいて、前記焦点調整部を制御することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学読取装置。
【請求項7】
前記撮像部は、液体レンズを有し、
前記焦点調整部は、前記液体レンズの焦点距離を調整することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の光学読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学読取装置に係り、さらに詳しくは、エイマー光を利用してワークまでの距離を測定する光学読取装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バーコード、二次元コードなどのシンボルを光学情報として読み取り、様々なデータ処理を行う光学読取システムが広く普及している。例えば、店舗における精算処理、物流拠点における在庫管理、工場における工程管理などに利用されている。
【0003】
シンボルは、ワーク(読取対象物)に印刷され、あるいは、ラベル等に印刷されてワークに貼付される。シンボルを読み取る光学読取装置には、ワークを移動させてシンボルを読み取る据え置きタイプのものと、光学読取装置を移動させてシンボルを読み取るハンディタイプのものとがある。据え置きタイプの光学読取装置は、ワークを移動させて読み取るため、固定焦点である場合が多いのに対し、ハンディタイプの光学読取装置は、ワークまでの距離が変化するため、オートフォーカス機能を有するものが知られている。
【0004】
コストの増大を抑制してオートフォーカス機能を実現しようとする場合、例えば、コントラスト法のように、焦点距離を順に変化させながら撮像を繰り返して合焦点を求める方法が知られている。しかしながら、オートフォーカスの応答性は、読取作業の効率に大きな影響を与える。このため、高い応答性が求められる光学読取装置のオートフォーカスには、このような手法は採用することができず、例えば、超音波などを利用してワークまでの距離を測定し、測定した距離に焦点距離を一致させるオートフォーカス制御を行う必要があった。
【0005】
また、焦点調整前の撮影画像内におけるシンボルの大きさを検出することにより、ワークまでの距離を測定する光学読取装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の方法によれば、コストを増大させることなく、撮影画像からワークまでの距離を測定することができるが、焦点ぼけによりシンボルの大きさを検出できない場合には、シンボルの読み取りを行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-204792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ワークまでの距離の測定には様々な方法が考えられるが、エイマー光を利用してワークまでの距離を測定することができれば、コストを増大させることなく、ワークまでの距離を測定することができると考えられる。エイマー光は、ユーザに読取対象を示すための照準光である。一般に、ハンディタイプの光学読取装置は、エイマー光として赤色レーザ光などを照射する機能を有している。このエイマー光の光軸を撮像素子の受光軸に対し傾斜させれば、撮像画像内におけるエイマー光の位置に基づいて、エイマー光の反射面までの距離を求めることができると考えられる。
【0008】
しかし、ワークまでの距離が遠くなれば、ワーク表面におけるエイマー光の反射光量が減少し、反射面までの距離を計測することができなくなる。また、レーザ光を直視した場合の安全性を考慮すれば、エイマー光の強度を大きくして測定距離を伸ばすのにも限界がある。これに対し、照準光は目視で確認されるため、距離測定の限界よりも遠方のワークに対してもエイマー光は照準光として機能する。このため、このような遠方のシンボルを読み取り可能な光学読取装置の場合、シンボルを読み取ることができる距離範囲の一部にエイマー光による距離測定を行うことができない範囲が生じてしまう。つまり、エイマー光によって距離を測定することができる距離範囲が、シンボルを読み取ることができる距離範囲の一部をカバーしていない状態が発生する。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、応答性の良好なオートフォーカス機能を有する光学読取装置を提供することを目的とする。また、エイマー光を用いてオートフォーカス機能を安価に実現する光学読取装置を提供することを目的とする。また、エイマー光による測定限界よりも遠方のシンボルを読み取ることができる光学読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様による光学読取装置は、ワークに付された光学情報をデコードする光学読取装置において、前記ワークにエイマー光を照射するエイマー光照射部と、前記ワークを撮像して撮像画像を生成する撮像部と、第1の距離範囲内において前記撮像部の合焦距離を調整する焦点調整部と、前記撮像画像内におけるエイマー画像の位置に基づいて、第1の距離範囲よりも狭い第2の距離範囲内において前記ワークまでの距離を測定する距離測定部と、前記合焦距離の調整後に撮像された前記撮像画像に基づいて、前記光学情報をデコードするデコード部と、前記距離測定部が距離の測定に成功した場合に、測定された距離に基づいて前記焦点調整部を制御し、前記距離測定部が距離の測定に失敗した場合に、前記合焦距離が前記第2の距離範囲外の予め定められたリカバリー位置に移動するように前記焦点調整部を制御する制御部とを備える。
【0011】
この様な構成を採用することにより、ワークが第2の距離範囲内に存在する場合、ワークまでの距離が測定され、測定された距離に基づく焦点調整が行われるため、シンボルの読み取りを高速に行うことができる。また、ワークまでの距離の測定に失敗した場合、第2の距離範囲外の予め定められたリカバリー位置に合焦距離を移動させるため、ワークが第2の距離範囲外に存在する場合であっても、シンボルの読み取りを高速に行うことができる。
【0012】
本発明の第2の態様による光学読取装置は、上記構成に加えて、前記リカバリー位置が、前記第2の距離範囲よりも遠い位置になるように構成される。
【0013】
この様な構成を採用することにより、ワークが遠いためにエイマー光の反射強度が不足し、シンボルの読み取りは可能であるが、ワークまでの距離を測定することができない場合であっても、高速にシンボルの読み取りを行うことができる。
【0014】
本発明の第3の態様による光学読取装置は、上記構成に加えて、前記距離測定部が距離の測定に失敗した場合に、前記合焦距離が2以上の前記リカバリー位置に順次に移動するように前記制御部が前記焦点調整部を制御する。
【0015】
この様な構成を採用することにより、第1の距離範囲内であって、第2の距離範囲外の距離範囲が広い場合であっても、当該距離範囲に存在するシンボルを読み取ることができる。
【0016】
本発明の第4の態様による光学読取装置は、上記構成に加えて、前記距離測定部が距離の測定に失敗し、前記合焦距離が3以上の前記リカバリー位置に順次に移動する際、両端のリカバリー位置よりも先に、両端以外のリカバリー位置の少なくとも一つに移動するように前記制御部が前記焦点調整部を制御する。
【0017】
この様な構成により、3以上のリカバリー位置を順次に移動してシンボルをサーチする場合に、より高速にシンボルを読み取ることができる確率を高め、平均的な読取速度を向上させることができる。
【0018】
本発明の第5の態様による光学読取装置は、上記構成に加えて、前記合焦距離が第2の距離範囲外の前記リカバリー位置へ移動した後に撮像された前記撮像画像に基づくデコードに失敗した場合に、前記合焦距離が前記第2の距離範囲内の予め定められた2以上のサーチ位置に順次に移動するように前記制御部が前記焦点調整部を制御する。
【0019】
この様な構成を採用することにより、第2の距離範囲内に読取可能なシンボルが存在しているが、距離の測定に失敗した場合であっても、当該シンボルを読み取ることが可能になる。
【0020】
本発明の第6の態様による光学読取装置は、上記構成に加えて、前記撮像部が選択可能な前記合焦距離に対応づけて制御量を記憶する制御量記憶部を備え、前記制御部が、測定された距離に対応する前記制御量を前記制御量記憶部から読み出し、読み出された前記制御量に基づいて、前記焦点調整部を制御する。
【0021】
本発明の第7の態様による光学読取装置は、上記構成に加えて、前記撮像部が、液体レンズを有し、前記焦点調整部が、前記液体レンズの焦点距離を調整する。
【0022】
この様な構成を採用することにより、焦点調整を高速に行うことができ、シンボルの読取処理の高等性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、応答性の良好なオートフォーカス機能を有する光学読取装置を提供することができる。また、エイマー光を用いてオートフォーカス機能を安価に実現する光学読取装置を提供することができる。また、エイマー光による測定限界よりも遠方のシンボルを読み取る光学読取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態1による光学読取装置1の一例を示した図である。
図2図1の光学読取装置1がカバーする領域を示した図である。
図3】エイマー光を照射したときの撮像画像の一例を示した図である。
図4】エイマー光を照射したときの撮像画像の一例を示した図である。
図5図1の光学読取装置1の機能構成の一例を示したブロック図である。
図6】撮像レンズ131の一構成例を示した図である。
図7図5の制御量記憶部109が保持する制御量の一例を示した図である。
図8】エイマーの中心位置と制御量の関係を示した図である。
図9】シンボル読取動作の概略を示した説明図である。
図10】シンボル読取処理の一例を示したフローチャートである。
図11】シンボルの読取動作の概略を示した説明図である。
図12】実施の形態2によるシンボルの読取動作の概略を示した説明図である。
図13】実施の形態2によるシンボル読取処理の一例を示したフローチャートである。
図14】実施の形態3によるシンボルの読取動作の概略を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施の形態1.
(1)光学読取装置1の概要
図1は、本発明の実施の形態1による光学読取装置1の一例を示した図であり、図中の(a)には、光学読取装置1の操作面が示され、図中の(b)には、光学読取装置1の側面が示されている。
【0026】
光学読取装置1は、ワークに付された光学情報を読み取るための端末装置である。読取対象となる光学情報は、バーコード、2次元コードなどの光学コード、あるいは、文字などによって構成されるシンボルであり、ワークの表面に直接印刷され、あるいは、ワークの表面に貼付されたラベルに印刷されている。読み取られた光学情報は、デコードされた後にデータ出力、データ照合、その他の任意のデータ処理に用いられる。
【0027】
光学読取装置1は、片手で把持することができる形状を有し、携帯して移動することができる携帯型端末装置(ハンディーターミナル)である。光学読取装置1の操作面には、トリガーキー10tを含む多数の操作キー10と、表示画面11とが設けられている。
【0028】
光学読取装置1の先端をワークに向けてトリガーキー10tを押下すれば、光学読取装置1の先端からエイマー光が照射される。ユーザは、ワーク表面で反射されるエイマー光の反射光(以下、エイマーと呼ぶ)を目視しながら光学読取装置1の向きを調整し、エイマーを読取対象のシンボルに合わせれば、シンボルの読み取り及びデコードが自動的に行われ、読み取りの完了を報知するブザー音が鳴る。
【0029】
一例として、物流倉庫内におけるピッキング作業に光学読取装置1を用いる場合について説明する。受注した商品を物流倉庫から発送する場合、商品倉庫内の商品棚から必要な商品がピッキングされる。このピッキング作業は、バーコードが記載された受注伝票を持ったユーザが、商品棚まで移動した後、受注伝票のバーコードと、商品又は商品棚に付されたバーコードとを照合しながら行われる。この場合、受注伝票までの距離は10~20cm程度であるのに対し、商品棚までの距離は最大2m程度であり、このような全く異なる距離のバーコードを交互に読み取る作業が行われる。このため、シンボルの読み取りには焦点調整が必要になる。しかも、エイマーを読取対象のシンボルに合わせてから、読み取りが完了するまでの時間遅れは、作業効率に大きな影響を与えるため、高い応答性が求められる。
【0030】
例えば、エイマーをシンボルに合わせてからブザーが鳴るまでの時間遅れを1秒未満のごく僅かな時間とし、ほぼリアルタイムでシンボルを読み取ることが求められる。この僅かな時間遅れの間に、撮像部の焦点距離をワーク表面に一致させるオートフォーカス(自動焦点調整)が行われ、焦点調整後にシンボルの撮像及びデコードが行われる。このような高い応答性を実現するためには、オートフォーカスを短時間で終了する必要がある。このため、まずワーク表面までの距離を計測し、計測した距離に基づいて焦点距離を調整する手法が用いられている。
【0031】
ワーク表面までの距離の計測は、エイマー光を用いて行われる。エイマー光の出射光軸13は、撮像素子への入射光軸である撮像軸12に対し傾斜して配置され、三角測距の原理を利用して、エイマー光の反射面までの距離が測定される。例えば、図1に示したように、撮像軸12とエイマー光の出射光軸13は、ともに光学読取装置1の操作面に平行であるが、当該平面内において互いに角度を有するように配置されている。このようなエイマーを撮像すれば、反射面までの距離に応じて、撮像画像内におけるエイマーの位置が操作面と平行な方向に変化する。このため、撮像画像内におけるエイマーの位置に基づいて反射面までの距離を測定することができる。
【0032】
エイマー光は読取対象を示す照準光であり、このようなエイマー光を利用してワーク表面までの距離を測定することによって、新たな部品を追加することなく、ワーク表面までの距離を計測することが可能になる。つまり、コストを増大させることなく、ワーク表面までの距離を測定することが可能になる。
【0033】
(2)エイマー光による距離測定
図2及び図3は、エイマー光を利用した距離測定についての説明図である。図2は、図1の光学読取装置1がカバーする領域を示した図であり、図3は、エイマー光を照射したときの撮像画像201~204の一例を示した図である。
【0034】
距離A1~A4は、光学読取装置1からワークまでの距離の一例であり、順に遠くなっている(A1<A2<A3<A4)。また、撮像画像201~204は、光学読取装置1からの距離がそれぞれA1~A4のワーク表面のシンボルを撮像した画像であり、エイマー光の照射中に撮像されたものである。
【0035】
距離A1~A3の撮像画像201~203には、バーコードのシンボル20と、十字形状のエイマー21とが含まれている。エイマー光の出射光軸13は、光学読取装置1から見た場合、撮像軸12に対し右方向へ傾いている。このため、撮像画像201~203内におけるエイマー21の位置は、反射面までの距離が遠くなるほど右へ移動する。従って、画像処理により撮像画像201~203からエイマー21を抽出すれば、撮像画像201~203内における位置に基づいてワーク表面までの距離を求めることができる。
【0036】
最も遠い距離A4の撮像画像204には、シンボル20のみが写り、エイマー21は写っていない。反射面が遠くなれば、エイマー光の反射強度が低下するため、エイマーを撮像することができなくなる。特に、エイマーの撮像は、焦点調整前に行われるため、十分な反射強度が確保されていなければ、撮像画像からエイマーを検出することができない。なお、エイマー光の出射強度を増大させることにより反射強度を増大させることはできるが、安全性確保の観点から限界がある。
【0037】
図中に示した読取最大距離L1は、シンボルを読み取ることができる最大距離であり、例えば2mである。読取可能領域41は、光学読取装置1の直近から読取最大距離L1までの距離範囲であり、光学読取装置1は、読取可能領域41内に存在するシンボルを読み取ることができる。つまり、読取可能領域41内にあるワークに対し、照準光としてのエイマー光を目視可能に照射することができ、当該ワーク表面のシンボルを撮像し、デコードすることができる。
【0038】
測定最大距離L2は、エイマー光を用いてワーク表面までの距離を測定することができる最大距離であり、例えば40cmである。測定可能領域42は、光学読取装置1の直近から測定最大距離L2までの距離範囲であり、光学読取装置1は、測定可能領域42内に存在するワーク表面までの距離を測定することができる。
【0039】
測定最大距離L2は、読取最大距離L1よりも小さく、測定可能領域42は、読取可能領域41よりも狭い。このため、読取可能領域41内には、距離を測定することができないブラインド領域43が存在している。つまり、ブラインド領域43は、読取可能領域41内であって、測定可能領域42外となる距離範囲である。
【0040】
距離A1~A3は、測定可能領域42内にあるため、距離を測定することができるが、距離A4はブラインド領域43内にあるため、シンボルを読み取ることはできるが、距離を測定することはできない。距離を測定することができないブラインド領域43内にワークがある場合における読み取り動作については後述する。
【0041】
図4は、エイマー光を照射したときの撮像画像205の一例を示した図である。図中のシンボル20はワーク22の端辺近傍に付されている。このため、シンボル20を指示するエイマー光は、その一部がワーク22によって反射されず、エイマー21は一部が欠落した画像として撮影される。つまり、反射面に凹凸や傾斜の変化がある場合、エイマー画像は一部が欠落し、あるいは、歪んだ状態で撮影される。このような場合、画像処理によって撮影画像からエイマー21を抽出することが困難になり、測定可能領域42内であっても、ワークまでの距離の測定を行うことができない。
【0042】
(3)光学読取装置1の機能構成
図5は、図1の光学読取装置1の機能構成の一例を示したブロック図である。この光学読取装置1は、制御部100、エイマー光照射部101、照明光照射部102、撮像部103、焦点調整部104、距離測定部105、デコード部106、操作入力部107、表示出力部108及び制御量記憶部109を備えている。
【0043】
エイマー光照射部101は、エイマー光を照射する。エイマー光は、ワークに照射され、ワーク表面上において読取対象を視認可能に示す照準光であり、LED、LD(レーザダイオード)などによって生成される可視光からなる。例えば、十字形状の赤色レーザ光をエイマー光として用いることができるが、本発明に適用されるエイマー光は、照準光として利用可能な可視光であればよく、その波長、形状、強度などは限定されない。エイマー光の照射は、距離の測定時に行われ、シンボルの撮像時には行われないことが望ましい。
【0044】
照明光照射部102は、照明光を照射する光源である。照明光は、シンボルを撮像するために照射する光であり、例えば、白色光が用いられる。環境光が十分でない暗い環境下では、撮像対象に照明光を照射した状態で撮像が行われる。照明光の照射は、シンボルの撮像時に行われ、距離の測定時には行われないことが望ましい。なお、明るい環境下でのみ撮像する場合には、照明光照射部102を省略することができる。
【0045】
撮像部103は、撮像レンズ131及び撮像素子132を備え、エイマー光及びシンボルを撮像し、撮像画像を生成する。撮像部103は、制御部100からの撮像信号に基づいて撮像を開始し、生成した撮像画像を距離測定部105又はデコード部106へ出力する。撮像レンズ131は、入射光を集光し、撮像素子132の受光面上に結像させるレンズであり、例えば、液体レンズを用いることができる。撮像素子132は、撮像画像を生成する光電変換素子であり、例えば、CCD、CMOSイメージセンサを用いることができる。
【0046】
焦点調整部104は、撮像部103の合焦距離を調整する手段である。撮像レンズ131が液体レンズの場合、焦点調整部104は、ワークまでの距離に対応する電圧を撮像レンズ131に印加して焦点距離を調整する。
【0047】
距離測定部105は、撮像画像内におけるエイマーの位置に基づいて、ワーク表面までの距離を求める手段である。撮像画像内におけるエイマーの位置は、画像処理により撮像画像からエイマー画像を抽出することによって求められる。距離の測定は、焦点調整のために行われる処理であり、焦点調整前に撮像された画像に基づいて行われる。
【0048】
デコード部106は、画像処理により撮像画像からシンボル画像を抽出し、抽出されたシンボルをデコードする手段である。シンボル画像の抽出は、焦点調整後に撮像された画像に基づいて行われる。撮像画像内に複数のシンボルが含まれる場合、エイマーによって指示されたシンボルがデコード対象となる。
【0049】
操作入力部107は、ユーザによる操作入力を検出し、操作信号を制御部に出力する。例えば、トリガーキー10tの押下操作を検出すれば、制御部100へトリガー信号を出力する。
【0050】
表示出力部108は、ユーザに対し種々の情報を報知する表示手段であり、例えば、表示画面11を構成する液晶表示装置が用いられる。表示画面11には、光学読取装置1の動作状態が表示されるとともに、シンボルの読み取り結果が表示される。
【0051】
制御量記憶部109は、読取対象までの距離に対応づけて撮像レンズ131の制御量を記憶する記憶手段である。読取対象までの各距離に対応する制御量は予め与えられ、制御量記憶部109に保持されている。例えば、撮像レンズ131の印加電圧が制御量として保持されている。焦点調整部104は、制御量記憶部109内に保持されている制御量に基づいて撮像レンズ131に電圧を印加する。
【0052】
制御部100は、操作入力部107からトリガー信号が入力されると、エイマー光照射部101、照明光照射部102へ点灯信号を出力し、ワークに向けてエイマー光及び照明光が出射される。また、制御部100は、撮像部103へ撮像信号を出力し、撮像レンズ131の焦点調整を行うことなく撮像が開始され、撮像画像が生成される。制御部100は、距離測定部105がワークまでの距離を測定すれば、測定された距離に対応する制御量を制御量記憶部109から読み出し、当該制御量を焦点調整部104に出力する。焦点調整部104は、この制御量に基づいて撮像レンズ131の焦点調整を行う。また、制御部100は、デコード部106からデコード結果が出力されると、当該デコード結果を制御部100へ出力し、このデコード結果が読取結果として画面表示される。
【0053】
図6は、撮像レンズ131の一構成例を示した図であり、図中の(a)及び(b)には、焦点距離が異なる状態が示されている。撮像レンズ131には、液体レンズが用いられる。液体レンズは、屈折率の異なる液体311,312間に湾曲する界面313を形成したレンズであり、印加電圧に応じて界面313の曲率を変化させることができ、焦点距離を瞬時に調整することができる。
【0054】
例えば、互いに対向する2枚の透明基板301,302と、円筒形ホルダ303とによって密閉空間が形成され、この密閉空間内に屈折率の異なる非混和性の2種類の液体311,312が封入されている。円筒形ホルダ303は、光軸方向に2つの電極304,305が設けられ、一方の液体311には非導電性の油が用いられ、他方の液体312には導電性の水溶液が用いられている。このため、電極304,305間に電圧を印加し、導電性の液体312が一方の電極304に引き寄せられると、非導電性の液体311は液滴のような形状に変化し、両液体311,312間に湾曲した界面313が形成される。当該界面313の曲率は電圧に応じて変化するため、焦点距離を高速に変化させることができる。
【0055】
(4)焦点調整の制御量
図7は、図5の制御量記憶部109が保持する制御量の一例を示した図であり、横軸に読取対象までの距離をとり、縦軸に制御量としての電圧値をとって示されている。読取対象までの距離が長くなるほど、制御量が低下し、焦点距離が長くなる。一般に、光学レンズの被写体までの距離に対する焦点距離の変化率は、被写体が遠くなるほど小さくなる。このため、読取対象までの距離に対する制御量は、図示したように、読取対象までの距離が遠くなるほど、変化率が減少する曲線になる。
【0056】
読取可能領域41の幅は約2mであり、図中ではその一部(600mm以下)のみが示されている。なお、600mmを越える領域では、読み取り対象までの距離が変化しても、焦点距離はほとんど変化しない。また、光学読取装置1の直近、例えば20mm以下は、撮像レンズ131の焦点調整の限界であるため、制御量は一定になっているが、シンボルまでの距離が十分に近いため、多少の焦点ぼけが生じていてもシンボルを読み取ることができる。
【0057】
図8は、エイマーの中心位置と制御量の関係を示した図であり、横軸には、エイマーの中心位置をとり、縦軸に制御量をとって示されている。エイマー中心撮像画像内における左右方向の位置に基づいてワークまでの距離を求めることができ、求められた距離に基づいて制御量記憶部109を読み出すことにより、制御量が求められる。
【0058】
(5)シンボル読取処理
図9及び図10は、本発明の実施の形態1によるシンボルの読取処理の一例を示した図である。図9は、シンボルの読取動作の概略を示した説明図である。
【0059】
ワークが測定可能領域42内にあれば、エイマー光を利用してワークまでの距離を測定することができる。ワークまでの距離の測定に成功すれば、測定した距離にピントが合うように焦点調整を行った後にワークが撮像され、シンボルがデコードされる。一方、ワークまでの距離が測定可能領域42外であれば、ワークまでの距離を測定することができない。ワークまでの距離の測定に失敗すれば、リカバリー位置R1~R3にピントが合うように焦点調整を行った後にワークが撮像され、シンボルのデコードが行われる。
【0060】
2以上のリカバリー位置R1~R3は、それぞれリカバリー領域431~433内の任意のシンボルを読み取ることができる合焦距離であり、予め定められている。2以上のリカバリー領域431~433は、ブラインド領域43を分割した領域であり、予め定められている。このため、ワークがブラインド領域43内に存在する場合、合焦距離をリカバリー位置R1~R3に順次に移動させ、リカバリー位置R1~R3ごとに撮像及びデコードを行うことにより、デコードに成功することができる。
【0061】
つまり、ワークまでの距離の測定に成功した場合には、測定された距離にピントを合わせてシンボルの読み取りが高速に行われる。一方、ワークまでの距離の測定に失敗した場合には、2以上のリカバリー領域431~433に順次にピントを合わせ、デコード可能なシンボルを発見するためのサーチ処理が行われる。その結果、読取可能領域41の全体をカバーすることができる。
【0062】
合焦距離を3以上のリカバリー位置R1~R3に順次に移動させる場合、任意の順序で移動させることができる。ただし、焦点調整が撮像レンズ131の相対的移動によって行われる場合、焦点調整の応答性が悪く、更なる応答性の低下を回避するため、合焦距離を一方向に移動させる必要がある。つまり、合焦距離は、リカバリー位置R1~R3の配列順に沿って、R1、R2、R3の順序、又は、R3、R2、R1の順序で移動する必要がある。
【0063】
これに対し、液体レンズによる焦点調整は応答性が極めて高く、合焦距離の移動順序による応答性の低下は無視することができる。このため、撮像レンズ131に液体レンズを採用している場合、両端のリカバリー位置R1,R3よりも先に、両端以外のリカバリー位置R2に移動することが望ましい。つまり、合焦距離は、R2、R1、R3の順序、又は、R2、R3、R1の順序で移動することが望ましい。
【0064】
一般に、完全にはピントが合っておらず、撮影画像に多少の焦点ぼけが生じていたとしても、一定の確率でシンボルのデコードに成功する。しかも、ワークが遠くなるほど、合焦距離に対する焦点距離の変化率は減少し、焦点がずれていても、大きな焦点ぼけが生じにくい。このため、合焦距離をリカバリー位置R2に移動させた場合、対応するリカバリー領域432だけでなく、隣接するリカバリー領域431及び433内のシンボルも一定の確率で読み取ることができる。このため、両端以外のリカバリー位置R2に合焦距離を優先的に移動することにより、一定の確率でより早くデコードに成功することができる。
【0065】
各リカバリー位置R1~R3にピントを合わせるための制御量は、制御量記憶部109内に保持されている。また、各リカバリー位置R1~R3の移動順序も制御量記憶部109内に保持されている。表1は、制御量記憶部109内に保持されているリカバリー位置R1~R3に関する情報の一例である。リカバリー位置R1~R3までの距離は、それぞれ500mm、600mm、750mmであり、これらの距離に合焦させるための制御量が、それぞれ38.8V、38.3V、38.0Vである。また、移動順序は、R2,R1,R3の順である。これらの情報が予め定められ、制御量記憶部109内に保持されている。なお、制御量を保持していれば、距離は省略することができる。また、制御量記憶部109は、距離に対応づけて制御量を保持しているため、距離を保持していれば、制御量を省略することができる。
【表1】
【0066】
図10のステップS101~S110は、光学読取装置1によるシンボル読取処理の一例を示したフローチャートである。このシンボル読取処理は、ユーザがトリガーキー10tを操作することによって開始される。また、このシンボル読取処理のフローは、制御部100によって制御される。
【0067】
まず、撮像レンズ131の焦点距離が初期値に設定される(ステップS101)。焦点位置の初期値は、例えば、固定値又はシンボルの読み取りに最後に成功した焦点距離のいずれかがユーザによって予め選択される。シンボルの読み取りに最後に成功した焦点距離を焦点距離の初期値として用いる場合、最後に成功した読み取り時と比較して、シンボルまでの距離に大きな変化がなければ、最初の撮像でデコードに成功し、高い応答性が得られる。また、固定値が初期値として用いられる場合、当該固定値はユーザによって指定可能であってもよい。例えば、使用頻度が高い焦点距離が既知であれば、初期値として当該焦点距離を予め指定しておくことにより、最初の撮像でデコードに成功する確率を高くすることができる。また、Near側固定値又はFar側固定値のいずれかをユーザが選択するように構成することもできる。
【0068】
次に、撮像及びデコードが行われる(ステップS102)。つまり、ワークまでの距離測定及び焦点調整を行うことなく、撮像部103が撮像画像を生成し、デコード部106が、撮像画像からシンボルを抽出してデコードする。その結果、デコードに成功した場合には、デコード結果が読取結果として出力され、シンボル読取処理を終了する(ステップS106)。
【0069】
一方、ステップS103において、デコードに失敗した場合、ワークまでの距離を測定する(ステップS103)。ワークまでの距離は、エイマー光が照射されているワークを撮像して撮像画像を生成し、撮像画像内におけるエイマーの位置を検出することによって測定される。
【0070】
ステップS102において距離の測定に成功した場合、撮像部103の合焦距離が当該測定された距離に一致するように、焦点調整が行われる(ステップS104)。具体的には、制御部100が、測定された距離に対応する制御量を制御量記憶部109から読み出し、焦点調整部104が当該制御量に応じた電圧を撮像レンズ131に印加し、撮像レンズ131の焦点距離が調整される。
【0071】
次に、撮像及びデコードが行われる(ステップS105)。つまり、合焦距離の調整後に撮像部103が撮像画像を生成し、デコード部106が、撮像画像からシンボルを抽出してデコードする。その結果、デコードに成功した場合には、デコード結果が読取結果として出力され、シンボル読取処理を終了する(ステップS106)。一方、デコードに失敗した場合には、ステップS103に戻り、再び距離の測定が行われる。デコードの失敗は、例えば、撮像時に光学読取装置1が動いた場合、シンボルが汚損している場合、ワークの表面状態が良好でない場合などに発生し得る。
【0072】
一方、ステップS103において距離の測定に失敗すれば、所定の回数に達するまで距離の測定が繰り返される(ステップS107)。撮像画像からエイマーを抽出できなければ、距離の測定に失敗する。例えば、ワークまでの距離が、測定可能領域42外であった場合(例えば図3(d))や、エイマーの一部が欠落した状態で撮像された場合(例えば図4)に、距離の測定に失敗する。この様な場合には、再度、距離の測定が行われる。
【0073】
ステップS107において距離の測定に連続して失敗し、所定回数に達した場合、合焦距離を予め定められた2以上のリカバリー位置R1~R3に順次に移動させ、リカバリー位置R1~R3ごとに撮像及びデコードが行われる(ステップS108~S110)。つまり、ブラインド領域43内においてデコード可能なシンボルを発見するためのサーチ処理が行われる。その結果、いずれかのリカバリー位置R1~R3においてデコードに成功すれば、ステップS106に進み、読取結果を出力する。一方、全てのリカバリー位置R1~R3においてデコードに失敗すれば、ステップS103に戻り、再び距離の計測が行われる。
【0074】
なお、同一の合焦距離により、ブラインド領域43内の任意のシンボルを読み取ることができる場合には、ブラインド領域43を2以上のリカバリー領域431~433に分割する必要はない。
【0075】
図11は、本発明の実施の形態1によるシンボル読取処理の他の例を示した図であり、シンボルの読み取り時における動作の概略を示した説明図である。リカバリー位置Rは、ブラインド領域43内の任意のシンボルを読み取ることができる合焦距離であり、ブラインド領域43は、分割されることなく、そのままリカバリー領域430となる。このため、図10のステップS107において、距離の測定に所定回数失敗した場合、合焦距離をリカバリー位置Rに移動させ、撮像及びデコードを行うことにより、ブラインド領域43内のシンボルをデコードすることができる。この場合、ステップS110は不要になる。
【0076】
本実施の形態による光学読取装置1は、ワークにエイマー光を照射するエイマー光照射部101と、ワークを撮像して撮像画像を生成する撮像部103と、読取可能領域41内において撮像部103の合焦距離を調整する焦点調整部104と、撮像画像内におけるエイマー画像の位置に基づいて、読取可能領域41よりも狭い測定可能領域42内においてワークまでの距離を測定する距離測定部105と、合焦距離の調整後に撮像された撮像画像に基づいて光学情報をデコードするデコード部106と、距離測定部105が距離の測定に成功した場合に、測定された距離に基づいて焦点調整部104を制御し、距離測定部105が距離の測定に失敗した場合に、合焦距離が測定可能領域42外の予め定められたリカバリー位置R1~R3に移動するように焦点調整部104を制御する制御部100とを備える。
【0077】
このため、ワークが測定可能領域41内に存在する場合には、ワークまでの距離が測定され、測定された距離に基づく焦点調整が行われるため、シンボルの読み取りを高速に行うことができる。また、ワークまでの距離の測定に失敗した場合、測定可能領域42外のリカバリー位置R1~R3に合焦距離を移動させるため、ワークが測定可能領域41外に存在する場合でも、シンボルの読み取りを行うことができる。特に、ワークまでの距離の測定に失敗した場合に、読取可能領域41の全体について合焦距離を順次に移動させ、読取可能なシンボルを発見する方法に比べて、シンボルの読み取りを高速に行うことができる。
【0078】
実施の形態2.
実施の形態1では、ワークまでの距離を測定し、距離の測定に失敗した場合にはブラインド領域43内のシンボルをサーチし、シンボルのサーチにも失敗した場合には、再び距離の測定を行うシンボル読取処理の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、ブラインド領域43内におけるシンボルのサーチに失敗した場合、さらに測定可能領域42内のシンボルをサーチするシンボル読取処理について説明する。
【0079】
図12及び図13は、本発明の実施の形態2によるシンボルの読取処理の一例を示した図である。図12は、シンボル読取動作の概略を示した説明図である。図9と比較すれば、測定可能領域42が2以上のサーチ領域51に分割され、各サーチ領域51に対応するサーチ位置50が定められている点で異なる。
【0080】
ワークまでの距離の測定に失敗し、ブラインド領域43内におけるシンボルのサーチにも失敗した場合、測定可能領域42内の2以上のサーチ位置50にピントが合うように焦点調整を行った後にワークが撮像され、シンボルのデコードが行われる。
【0081】
2以上のサーチ位置50は、それぞれ対応するサーチ領域51内の任意のシンボルを読み取ることができる合焦距離であり、予め定められている。2以上のサーチ領域51は、測定可能領域42を分割した領域であり、予め定められている。このため、ワークが測定可能領域42内に存在する場合、合焦距離をサーチ位置50に順次に移動させ、サーチ位置50ごとに撮像及びデコードを行うことにより、デコードに成功することができる。
【0082】
つまり、ブラインド領域43内におけるシンボルのサーチに失敗した場合には、2以上のサーチ位置50に順次にピントを合わせ、デコード可能なシンボルを発見するためのサーチ処理が行われる。その結果、読取可能領域41の全てが、シンボルのサーチ処理によってカバーされる。
【0083】
測定可能領域42内にシンボルが存在し、かつ、読み取りが可能な場合であっても、ワークまでの距離の測定に失敗する場合がある。例えば、エイマーの一部が欠落した状態で撮像された場合(例えば図4)には距離の測定に失敗する。この様な場合であっても、測定可能領域42についてシンボルのサーチ処理を行うことにより、シンボルを読み取ることができる。
【0084】
図13のステップS201~S213は、実施の形態2によるシンボル読取処理の一例を示したフローチャートである。ステップS201~S210は、図12のステップS101~S110(実施の形態1)と同一であるため、重複する説明を省略する。
【0085】
ブラインド領域43内のサーチ処理(ステップS208~S210)において、全てのリカバリー位置R1~R3でデコードに失敗すれば、測定可能領域42内のサーチ処理が行われる(ステップS211~S213)。すなわち、合焦距離を予め定められた2以上のサーチ位置50に順次に移動させ(ステップS211)、サーチ位置50ごとに撮像及びデコードが行われる(ステップS212)。その結果、いずれかのサーチ位置50においてデコードに成功すれば、ステップS206に進み、読取結果を出力する。一方、全てのサーチ位置50においてデコードに失敗すれば、ステップS203に戻り、再び距離の計測が行われる。
【0086】
本実施の形態による光学読取装置1は、距離測定部105が距離の測定に失敗した場合に、合焦距離が2以上の前記リカバリー位置に順次に移動するように、制御部100が焦点調整部104を制御する。この様な構成を採用することにより、読取可能領域41内であって、第2の距離範囲外の距離範囲が広い場合であっても、当該距離範囲に存在するシンボルを読み取ることができる。
【0087】
本実施の形態による光学読取装置1は、合焦距離がブラインド領域43のリカバリー位置R1~R3へ移動した後に撮像された撮像画像に基づくデコードに失敗した場合に、合焦距離が測定可能領域42内の予め定められた2以上のサーチ位置50に順次に移動するように制御部100が焦点調整部104を制御する。このような構成を採用することにより、測定可能領域42内に読取可能なシンボルが存在しているが、距離の測定に失敗した場合であっても、当該シンボルを読み取ることができる。
【0088】
実施の形態3.
実施の形態2では、測定可能領域42における距離の測定に失敗し、ブラインド領域43におけるサーチにも失敗した場合に、測定可能領域42内においてシンボルのサーチを行うシンボル読取処理の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、ブラインド領域43において簡易的なサーチを行い、この簡易的なサーチに失敗した場合に、読取可能領域41の全体においてシンボルのサーチを行うシンボル読取処理について説明する。
【0089】
図14は、本発明の実施の形態3によるシンボルの読取処理の一例を示した図であり、シンボルの読取動作の概略を示した説明図である。なお、本実施の形態によるシンボル読取処理のフローチャートは、図12(実施の形態2)の場合と同一である。
【0090】
測定可能領域42内における距離の測定に失敗した場合、ブラインド領域43内においてデコード可能なシンボルを発見するための第1サーチが行われる。この第1サーチに失敗した場合、読取可能領域41内においてデコード可能なシンボルを発見するための第2サーチが行われる。つまり、ブラインド領域43については、第1サーチ及び第2サーチの両方が行われる。
【0091】
第2サーチは、読取可能領域41のサーチであり、サーチ位置50にピントが合うように焦点調整を行った後にワークが撮像され、シンボルのデコードが行われる。2以上のサーチ位置50は、それぞれサーチ領域51内の任意のシンボルを読み取ることができる合焦距離であり、予め定められている。2以上のサーチ領域51は、読取可能領域41を分割した領域であり、予め定められている。このため、ワークが読取可能領域41内に存在する場合、合焦距離をサーチ位置50に順次に移動させ、サーチ位置50ごとに撮像及びデコードを行うことにより、デコードに成功することができる。
【0092】
一方、第1サーチは、ブラインド領域43のサーチであり、リカバリー位置R1,R2にピントが合うように焦点調整を行った後にワークが撮像され、シンボルのデコードが行われる。1又は2以上のリカバリー位置R1,R2は、ブラインド領域43内のサーチ位置50よりも数が少なく、より広い間隔で配置された合焦距離であり、予め定められている。
【0093】
このため、合焦距離をリカバリー位置R1,R2に移動させただけでは、ブラインド領域43内の任意のシンボルに対しピントを合わせることはできない。その結果、第1サーチは、第2サーチに比べてより高速に実行することができる一方で、ブラインド領域43内に存在するデコード可能なシンボルを発見できない場合があり、第2サーチよりも不確実性を有している。
【0094】
しかしながら、上述した通り、完全にはピントが合っておらず、撮像画像に多少の焦点ぼけが生じていたとしても、一定の確率でシンボルのデコードに成功することができる。しかも、ワークが遠くなるほど、合焦距離に対する焦点距離の変化率は減少し、焦点がずれていても、大きな焦点ぼけが生じにくい。このため、リカバリー位置R1,R2の数と位置を適切に決定することにより、バーコードのような比較的読み取り易いシンボルについては、不確実性を抑制しつつ、シンボルの読取処理を高速化することができる。
【0095】
なお、本実施の形態では、第1サーチ及び第2サーチを行う場合の例について説明したが、第2サーチを省略し、第1サーチのみを行うように構成することもできる。つまり、測定可能領域42内における距離の測定に失敗した場合に、ブラインド領域43について簡易的なサーチのみを行う構成であってもよい。また、第1サーチに失敗した場合、その後に、実施の形態2の場合と同様にして、測定可能領域42についてのみサーチを行うように構成することもできる。
【符号の説明】
【0096】
1 光学読取装置
10 操作キー
10t トリガーキー
11 表示画面
12 撮像軸
13 エイマー光の出射光軸
20 シンボル
21 エイマー
22 ワーク
41 読取可能領域
42 測定可能領域
43 ブラインド領域
50 サーチ位置
51 サーチ領域
100 制御部
101 エイマー光照射部
102 照明光照射部
103 撮像部
104 焦点調整部
105 距離測定部
106 デコード部
107 操作入力部
108 表示出力部
109 制御量記憶部
131 撮像レンズ
132 撮像素子
201~205 撮像画像
301,302 透明基板
303 円筒形ホルダ
304,305 電極
311,312 液体
313 界面
430~433 リカバリー領域
A1~A4 ワークまでの距離
L1 読取最大距離
L2 測定最大距離
R,R1~R3 リカバリー位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14