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特許6997609壁構造、建物、及び連結部材の取り付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】壁構造、建物、及び連結部材の取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20220107BHJP
   F16F 15/073 20060101ALI20220107BHJP
   F16F 1/18 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
E04H9/02 321B
F16F15/073
F16F1/18 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017234911
(22)【出願日】2017-12-07
(65)【公開番号】P2019100140
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】中田 信治
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-013175(JP,A)
【文献】特開平09-250191(JP,A)
【文献】特開平04-238974(JP,A)
【文献】特開2014-169601(JP,A)
【文献】特開2016-079734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0258945(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0120063(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
F16F 15/073
F16F 1/18
E04B 2/56-2/70
E04B 2/88-2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層間変形時に搖動するように建物躯体に取り付けられた隣接する2枚の壁パネルと、
前記2枚の壁パネルを連結するように取り付けられ、前記2枚の壁パネルが搖動した際に、前記2枚の壁パネルに対する各取り付け部の間の部分の伸縮によりエネルギーを吸収するとともに、前記2枚の壁パネルによって圧縮時の座屈が抑制されるように構成された連結部材と、を備え
前記2枚の壁パネルの間に形成される接合部において、前記2枚の壁パネルによって挟まれた状態が保たれることで、前記連結部材の圧縮時の座屈が抑制される、壁構造。
【請求項2】
層間変形時に搖動するように建物躯体に取り付けられた隣接する2枚の壁パネルと、
前記2枚の壁パネルを連結するように取り付けられ、前記2枚の壁パネルが搖動した際に、前記2枚の壁パネルに対する各取り付け部の間の部分の伸縮によりエネルギーを吸収するとともに、前記2枚の壁パネルによって圧縮時の座屈が抑制されるように構成された連結部材と、を備え、
前記連結部材は板状であって、
前記2枚の壁パネルの互いに対向する面に挟まれた状態が保たれることで、前記連結部材の面外方向への座屈が抑制される、壁構造。
【請求項3】
層間変形時に搖動するように建物躯体に取り付けられた隣接する2枚の壁パネルと、
前記2枚の壁パネルを連結するように取り付けられ、前記2枚の壁パネルが搖動した際に、前記2枚の壁パネルに対する各取り付け部の間の部分の伸縮によりエネルギーを吸収するとともに、前記2枚の壁パネルによって圧縮時の座屈が抑制されるように構成された連結部材と、を備え、
前記連結部材は、前記2枚の壁パネルに内包されるように取り付けられている、壁構造。
【請求項4】
層間変形時に搖動するように建物躯体に取り付けられた隣接する2枚の壁パネルと、
前記2枚の壁パネルを連結するように取り付けられ、前記2枚の壁パネルが搖動した際に、前記2枚の壁パネルに対する各取り付け部の間の部分の伸縮によりエネルギーを吸収するとともに、前記2枚の壁パネルによって圧縮時の座屈が抑制されるように構成された連結部材と、を備え、
前記2枚の壁パネルの間に形成される接合部において、
前記2枚の壁パネルのうち一方の壁パネルには凸部が形成されるとともに他方の壁パネルには凹部が形成されており、
前記連結部材は、前記凸部の先端面と前記凹部の底面とに挟まれている、壁構造。
【請求項5】
前記壁パネルは、両端面に凹部が形成された壁部材と実とを備え、
前記凸部は、前記壁部材の一方の凹部に嵌め込まれるとともに該壁部材に一体に固定される前記実によって構成されている、請求項に記載の壁構造。
【請求項6】
前記連結部材は、前記2枚の壁パネルの対向する面のそれぞれに締結具で取り付けられ、
一方の壁パネルにおける、他方の壁パネルに前記連結部材を取り付ける前記締結具に対応する位置に、前記締結具を挿通可能な貫通孔が形成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の壁構造。
【請求項7】
前記連結部材と前記実との当接面において、
前記連結部材の前記壁パネルの厚さ方向の長さは、前記実の前記壁パネルの厚さ方向の長さよりも短い、請求項に記載の壁構造。
【請求項8】
請求項1~の何れか一項に記載の壁構造を備えた、建物。
【請求項9】
平面視での外形が、長辺と短辺を有する略矩形状の建物であって、
前記短辺を構成する壁が、請求項1~の何れか一項に記載の壁構造を備え、
前記長辺を構成する外壁が、軽量気泡コンクリートパネルを備える、建物。
【請求項10】
隣接する2枚の壁パネルの間に挟まれた状態で、前記2枚の壁パネルを連結するように連結部材を取り付ける、連結部材の取り付け方法であって、
第1の壁パネルに前記連結部材の第1の取り付け部を取り付ける工程と、
前記第1の壁パネルと第2の壁パネルとを当接または近接させる工程と、
前記第1の壁パネルに設けられた貫通孔を挿通させた締結具によって、前記連結部材の第2の取り付け部を前記第2の壁パネルに取り付ける工程と、を含む連結部材の取り付け方法。
【請求項11】
隣接する2枚の壁パネルの間に挟まれた状態で、前記2枚の壁パネルを連結するように連結部材を取り付ける、連結部材の取り付け方法であって、
第1の壁パネルは、実と壁部材とで構成され、
前記連結部材の前記第1の取り付け部を前記実に取り付ける工程と、
前記実に設けられた貫通孔を挿通させた締結具によって、前記連結部材の第2の取り付け部を第2の壁パネルに取り付ける工程と、
前記実を前記壁部材に取り付ける工程と、を含む連結部材の取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造、建物、及び連結部材の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物を構成する壁構造の一例として、建物の躯体に対して揺動可能に取り付けられた複数の壁パネルを備えるロッキング構法が知られている。このロッキング構法では、各壁パネルが上下端部において、梁や基礎等の躯体にそれぞれ揺動可能に取り付けられており、地震等により層間変形が生じた際には、隣接配置された壁パネルの相互間で目地長さ方向に相対的な変位が生じるよう構成されている。換言すると、隣接配置された壁パネル同士は、相互に目地長さ方向に沿って移動可能に保持されている。
【0003】
このようなロッキング構法の壁を有する建物の制振技術として、隣接配置された壁パネルの接合部に、粘弾性体を備えた制振部材を設けることが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の壁構造は、粘弾性体を一対の保持部材で挟持した接合部材を、接合部の両側の壁パネルに取り付ける、というものである。
【0004】
このような制振構造によれば、地震によって壁パネルが揺動(ロッキング動作)し、壁パネル相互間に目地長さ方向に沿う変位が生じた際に、接合部の粘弾性体に伝達された振動エネルギーが当該粘弾性体の内部摩擦によって吸収されることにより、振動を減衰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-155857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された壁構造のように、粘弾性体により制振効果を得ようとする場合、粘弾性体の材料特性のばらつき等に起因して、安定した性能が得られない場合がある。
【0007】
また、粘弾性体の変形が過度に進むと接合部が損傷する虞があり、比較的振幅が小さいレベルでは一定の制振効果を得ることができるものの、振幅が大きくなると、効果が十分に発揮されない虞がある。
【0008】
そこで本発明は、振動の大小に関わらず安定的な制振効果を十分に発揮し得る新たな壁構造、建物、及び連結部材の取り付け方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の壁構造は、層間変形時に搖動するように建物躯体に取り付けられた隣接する2枚の壁パネルと、
前記2枚の壁パネルを連結するように取り付けられ、前記2枚の壁パネルが搖動した際に、前記2枚の壁パネルに対する各取り付け部の間の部分の伸縮によりエネルギーを吸収するとともに、前記2枚の壁パネルによって圧縮時の座屈が抑制されるように構成された連結部材と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
なお、本発明の壁構造は、前記2枚の壁パネルの間に形成される接合部において、前記2枚の壁パネルによって挟まれた状態が保たれることで、前記連結部材の圧縮時の座屈が抑制されることが好ましい。
【0011】
また、本発明の壁構造は、前記連結部材は板状であって、
前記2枚の壁パネルの互いに対向する面に挟まれた状態が保たれることで、前記連結部材の面外方向への座屈が抑制されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の壁構造は、前記連結部材は、前記2枚の壁パネルに内包されるように取り付けられていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の壁構造は、前記2枚の壁パネルの間に形成される接合部において、
前記2枚の壁パネルのうち一方の壁パネルには凸部が形成されるとともに他方の壁パネルには凹部が形成されており、
前記連結部材は、前記凸部の先端面と前記凹部の底面とに挟まれていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の壁構造は、前記壁パネルは、両端面に凹部が形成された壁部材と実とを備え、
前記凸部は、前記壁部材の一方の凹部に嵌め込まれるとともに該壁部材に一体に固定される前記実によって構成されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の壁構造は、前記連結部材は、前記2枚の壁パネルの対向する面のそれぞれに締結具で取り付けられ、
一方の壁パネルにおける、他方の壁パネルに前記連結部材を取り付ける前記締結具に対応する位置に、前記締結具を挿通可能な貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明の壁構造は、前記連結部材と前記実との当接面において、
前記連結部材の前記壁パネルの厚さ方向の長さは、前記実の前記壁パネルの厚さ方向の長さよりも短いことが好ましい。
【0017】
また、本発明の建物は、上記の何れかの壁構造を備えることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の建物は、平面視での外形が、長辺と短辺を有する略矩形状の建物であって、
前記短辺を構成する壁が、上記の何れか一項に記載の壁構造を備え、
前記長辺を構成する外壁が、軽量気泡コンクリートパネルを備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の連結部材の取り付け方法は、隣接する2枚の壁パネルの間に挟まれた状態で、前記2枚の壁パネルを連結するように前記連結部材を取り付ける、連結部材の取り付け方法であって、
第1の壁パネルに連結部材の第1の取り付け部を取り付ける工程と、
前記第1の壁パネルと第2の壁パネルとを当接または近接させる工程と、
前記第1の壁パネルに設けられた貫通孔を挿通させた締結具によって、前記連結部材の第2の取り付け部を前記第2の壁パネルに取り付ける工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の連結部材の取り付け方法は、隣接する2枚の壁パネルの間に挟まれた状態で、前記2枚の壁パネルを連結するように前記連結部材を取り付ける、連結部材の取り付け方法であって、
第1の壁パネルは、実と壁部材とで構成され、
前記連結部材の前記第1の取り付け部を前記実に取り付ける工程と、
前記実に設けられた貫通孔を挿通させた締結具によって、前記連結部材の第2の取り付け部を第2の壁パネルに取り付ける工程と、
前記実を前記壁部材に取り付ける工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、振動の大小に関わらず安定的な制振効果を十分に発揮し得る新たな壁構造、建物、及び連結部材の取り付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る壁構造の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1における2枚の壁パネルの間に連結部材を取り付ける様子を示す斜視図である。
図3】制振部材の一例を示す斜視図である。
図4】平面視での隣接する壁パネルの接合部の一例を示す断面図である。
図5】壁パネルがロッキング動作する際の、制振部材に付加される力の一例を示す。
図6図5とは異なる方向に壁パネルがロッキング動作する際の、制振部材に付加される力の一例を示す。
図7】本発明に係る壁構造の他の実施形態を示す斜視図である。
図8図7の壁構造における、接合部の平面視における断面図である。
図9図7の壁構造における、組立て過程を示す図である。
図10】本発明に係る建物の一例を示す平面図である。
図11】本発明の壁構造の変形例における、接合部の平面視における断面図である。
図12】本発明の壁構造の他の変形例における、接合部の平面視における断面図である。
図13図11、12に示す壁構造の正面図の一例である。
図14図11、12に示す壁構造の正面図の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る壁構造の実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示す本実施形態の壁構造1は、建物の壁を構成する複数の壁パネル2と、隣接する壁パネル2の間に形成される接合部3に配置され、制振効果を発揮する連結部材4とを備える。
【0024】
ここで、壁構造1を備える建物の一例の全体構成について説明する。建物は、例えば、鉄骨造の軸組みを有する2階建ての住宅とすることができる。このような建物は、例えば、地盤に支持された鉄筋コンクリート造の布基礎等である基礎構造体(基礎7)と、柱部材や梁部材(梁11)などの軸組部材で構成された軸組架構を有し、基礎構造体に支持された上部構造体と、で構成される。なお、軸組架構を構成する軸組部材は、予め規格化(標準化)されたものであり、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられる。同様に、壁パネル2も予め工場にて製造することができる。また、壁構造1を構成する壁パネル2の端面(対向する面)6に連結部材4を固定した状態のものや、さらに複数の壁パネル2を接合部3に連結部材4を取り付けた状態で一体化したものを予め工場で製造し、建築現場で組み立てることも可能である。なお、本発明は、鉄骨および木材の梁材と柱材とによって骨組みが形成された複数の建物ユニットを連結させたユニット建物にも適用可能である
【0025】
上部構造体は、複数の柱部材及び柱部材間に架設された複数の梁部材から構成される軸組架構と、この軸組架構の外周部に配置される外壁と、軸組架構の内部に配置される間仕切壁と、を備える。なお、本発明の壁構造1は、建物の内部において空間を区画する間仕切壁としても、屋内と屋外とを区画する外壁としても採用することができる。
【0026】
図1に示す複数の壁パネル2は、所謂ロッキング構法によって建物を構成する躯体に取り付けられる。すなわち、各壁パネル2は、上下に設けられた壁パネル取付部5で躯体に支持されており、地震時の層間変形等により支持点(壁パネル取付部5)が変位した場合には、壁パネル2が2つの支持点(壁パネル取付部5)を軸として適度に揺動、つまりロッキング動作するようになっている。本例において、壁パネル取付部5は、各壁パネル2の長手方向両端部付近で、幅方向の中央にそれぞれ設けられている。また、隣接する壁パネル2は、端面6同士を突き合わせるように配置され、壁パネル2の境界に、接合部3が形成される。なお、本発明の壁構造1は、隣接する壁パネル2を有していれば、必ずしも所謂ロッキング構法で構成されていなくてもよい。
【0027】
図1に示すように、本例の壁パネル2の下部は、基礎7に予め埋設されたアンカーボルトを介して、基礎7に固定された断面がT字状の金物8と、当該金物8における垂直部8aに固定された取付金物9と、当該取付金物9に取り付けられるボルト10等の締結部材とを介して基礎7に取り付けられている。
【0028】
また、本例の壁パネル2の壁パネル2の上部は、梁11に固定されたアングル材等の壁受金物12、並びに、壁パネル2に取り付けられて壁受金物12の垂直部12aに係合するパネル取付金物16に取り付けられるボルト10等を介して、支持点(壁パネル取付部5)が当該梁11に対して揺動可能に取り付けられている。図示例は、壁構造1を外壁として採用する場合を示しており、この場合、躯体に壁パネル2を取り付けるための金物(金物8、取付金物9、壁受金物12、及びパネル取付金物16等)が壁パネル2の厚さ方向の一方側に配置されている。これにより、躯体に壁パネル2を取り付けるための金物が壁パネル2の外側から視認できないように配置することができる。なお、壁構造1を間仕切壁として使用する場合には、壁パネル2の外側に金物が露出するように配置してもよい。その場合、基礎または梁等の躯体に固定された金物の垂直部を壁パネル2の厚さ方向両側から挟み込むように配置することができる。なお、壁パネル2が基礎7及び梁11に対して相対的に揺動可能であれば、取り付け方法は特に限定されない。
【0029】
連結部材4は、長手方向両端部が、接合部3を挟んで隣接する壁パネル2にそれぞれ直接的または間接的に固定される。図3に示すように、本例における連結部材4は、長手方向の一端部である第1の取り付け部41と、他端部である第2の取り付け部42と、それらの間に位置する幅狭のくびれ部43とを有する。なお、本例では、第1の取り付け部41と第2の取り付け部42が同形状となっているが、これに限られない。くびれ部43は、第1の取り付け部41及び第2の取り付け部42に比べて幅が狭くなっている。すなわち、くびれ部43は、第1の取り付け部41及び第2の取り付け部42よりも座屈しやすくなっており、例えば連結部材4の長手方向に沿う伸縮方向(引張り方向もしくは圧縮方向)の力が付加された際に、当該くびれ部43が優先的に変形するように構成されている。なお、本例の連結部材4は、細長い略長方形状の鋼板により形成されているが、連結部材4の材質及び形状はこれに限られない。例えば、連結部材4の材質の一例としては、鋼材よりも降伏点が低い低降伏点鋼、または、エンジニアリングプラスチック等とすることができる。また、連結部材4の形状の一例としては、第1の取り付け部41及び第2の取り付け部42を直方体、立方体、もしくは円柱等の柱状とし、それらの間に位置するくびれ部43を、第1の取り付け部41及び第2の取り付け部42よりも細い柱状もしくは筒状の棒状部材とすることも可能である。その場合、くびれ部43の断面形状は円形、楕円形、多角形等とすることができ、くびれ部43は、直線状に延在していてもよいし、直線状ではなく湾曲したり、屈曲したりしていてもよい。
【0030】
第1の取り付け部41及び第2の取り付け部42には、複数の孔44が形成されており、ねじ13やくぎ等の締結具をこの孔44に挿通させることで、壁パネル2に連結部材4を容易に固定することができる。
【0031】
以下に、図2を参照して、本実施形態の壁パネル2の取り付け方法について説明する。先ず、隣接配置される2枚の壁パネル2a、2bのうちの一方の壁パネル2aに、連結部材4aを取り付ける。具体的には、壁パネル2aの端面6aにおける上側の窪み部61aに連結部材4aを配置し、一方の取り付け部(例えば第1の取り付け部41a)を、ねじ13a等の締結具を用いて(第1の取り付け部41aの孔44aに挿通させて)壁パネル2aに固定する。
【0032】
同様に、壁パネル2aにおける下側の窪み部61bにも、連結部材4bを取り付ける。具体的には、窪み部61bに連結部材4bを配置し、第1の取り付け部41bを、ねじ13b等の締結具を用いて(第1の取り付け部41bの孔44bに挿通させて)壁パネル2aに固定する。
【0033】
次いで、壁パネル2aと壁パネル2bとを当接または近接させる。具体的に、連結部材4a及び連結部材4bを、壁パネル2aの端面6aと、対向する壁パネル2bの端面6bとの間に挟むように他方の壁パネル2bを配置する。そして、壁パネル2aに予め形成された上側の貫通孔14aに、ねじ13c等の締結具を挿通させて、他方の取り付け部(この場合、第2の取り付け部42a)を他方の壁パネル2bに固定する。このとき、第2の取り付け部42aの孔44cにねじ13c挿通させて固定する。貫通孔14aは、一方の壁パネル2aにおける、他方の壁パネル2bに連結部材4aを取り付ける締結具(ねじ13c)に対応する位置に形成されている。
【0034】
上側と同様に、下側の貫通孔14bに、ねじ13d等の締結具を挿通させて、第2の取り付け部42bを壁パネル2bに固定する。このとき、第2の取り付け部42bの孔44dにねじ13dを挿通させて固定する。貫通孔14bは、一方の壁パネル2aにおける、他方の壁パネル2bに連結部材4bを取り付ける締結具(ねじ13d)に対応する位置に形成されている。
【0035】
このようにして、連結部材4a、4bは、隣接する2枚の壁パネル2a、2bの、対向する端面6a、6bに挟まれた状態で保持される。そのため、連結部材4a、4bのくびれ部43a、43bが長手方向以外の方向、特に連結部材4a、4bの厚さ方向(面外方向)に座屈変形しようとすると、壁パネル2a、2bに接触して当該面外座屈を抑制される。すなわち、連結部材4は、面外座屈を抑制された状態で配置されることとなる。なお、貫通孔14a、14bはそれぞれ、壁パネル2a、2bを幅方向に貫通している。貫通孔14a、14bは、1つでもよいし、複数でもよく、連結部材4a、4bの孔44c、44dに対応する位置に設ける。また、壁パネル2bにも貫通孔を設けて、当該貫通孔を挿通させたねじ等の締結具を用いて(第1の取り付け部41aの孔44aに挿通させて)、連結部材4の第1の取り付け部41aを、壁パネル2aに取付けてもよい。
【0036】
このように、本実施形態の連結部材4a、4bの取り付け方法は、隣接する2枚の壁パネル2a、2bの間に挟まれた状態で、2枚の壁パネル2a、2bを連結するように連結部材4a、4bを取り付ける、連結部材4a、4bの取り付け方法であって、第1の壁パネル2aに連結部材4a、4bの第1の取り付け部41a、41bを取り付ける工程と、第1の壁パネル2aと第2の壁パネル2bとを当接または近接させる工程と、第1の壁パネル2aに設けられた貫通孔14a、14bを挿通させた締結具13c、13dによって、連結部材4a、4bの第2の取り付け部42a、42bを第2の壁パネル2bに取り付ける工程と、を含むものである。
【0037】
このような方法によれば、図2に二点鎖線で示すように、壁パネル2bに予め隣接して配置された壁パネル2c等の他の構成(壁パネルに限られない)があった場合でも、壁パネル2bと壁パネル2aの間に連結部材4a、4bを取り付けることが可能となる。
【0038】
ここで、図4の平面視での断面図にも示すように、壁パネル2aの端面6aに窪み部61a(61b)を設けて、その窪み部61a(61b)に連結部材4a(4b)を配置する構成としてもよい。このように、連結部材4a(4b)を、壁パネル2a、2bに内包されるように取付けることで、接合部3に隙間が生じないため、接合部3の外側から連結部材4が視認し難くなり、壁構造1の外観性能を高めることができる。なお、図1に示す例では、窪み部61を省略している。また、図2、4に示す例では一方の壁パネル2aのみに窪み部61a(61b)を形成しているが、他方側の壁パネル2bのみに窪み部61を設けてもよいし、両方の壁パネル2a、2bに窪み部61を設けてもよい。
【0039】
図5、6は、地震等により壁パネル2a、2bがロッキング動作する際の、連結部材4に付加される力を示している。地震による層間変形等により、隣接する2枚の壁パネル2a、2bがロッキング動作した際には、壁パネル2aと壁パネル2bとの間で、接合部3の長手方向に沿う相対的な変位が生じる。
【0040】
例えば、図5に示す方向に壁パネル2a、2bがロッキング動作した場合、図5の右側の壁パネル2bに固定された連結部材4の第1の取り付け部41と、左側の壁パネル2aに固定された第2の取り付け部42とは、接合部3の長手方向(壁パネル2の長手方向)に沿って離間する方向に相対的な変位が生じる。すなわち、図5に矢印で示すように、連結部材4には、引張り方向の力が加わることとなる。
【0041】
一方で、図6に示す方向に壁パネル2a、2bがロッキング動作した場合には、連結部材4の第1の取り付け部41と第2の取り付け部42とが近接する方向に、壁パネル2a、2bの相対的な変位が生じる。すなわち、図6に矢印で示すように、連結部材4には、圧縮方向の力が加わることとなる。このとき、連結部材4は、接合部3両側の壁パネル2a、2bの対向する端面6a、6bに挟まれることで面外方向の座屈を抑制されている。このため、連結部材4の、特にくびれ部43が安定的に伸縮変形し、所期した制振効果を安定的に発揮することとなる。
【0042】
このように、地震によって建物に生じた振動エネルギーは、連結部材4に、伸縮方向の力に変換されて伝達される。そして、伝達された伸縮方向の力は、連結部材4の、特にくびれ部43の伸縮変形により吸収される(一部は熱エネルギーに変換される)。その結果、本実施形態の壁構造1によれば、建物の振動を減衰する安定した制振効果を得ることができる。
【0043】
また、鋼板により形成された本例の連結部材4は、粘弾性体のように材料特性のばらつきが少ないため、安定した制振性能を得ることができる。また、接合部3に粘弾性体を接着する場合に比べて、壁パネル2に対して固定される部分(本例では、第1の取り付け部41及び第2の取り付け部42)の強度が高いため、振幅が大きくなっても制振効果を十分に発揮することができる。すなわち、振動の大小に関わらず安定的な制振効果を十分に発揮することができる。なお、上記のような観点から、連結部材4は、金属製であることが好ましく、本例のように鋼材からなることがより望ましい。また、連結部材4は板状であることが好ましく、これによれば、接合部3に配置し易い。また、図4のように端面6aに設けた窪み部61a(61b)に連結部材4を配置する場合には、連結部材4は板状であると、当該窪み部61a(61b)の形状が複雑にならず、窪み部61a(61b)の形成が容易となる。
【0044】
ここで、壁パネル2は、木質板であることが好ましく、より好適には、厚さが40mm以上の木質の厚板であることが望ましい。なお、壁パネル2は、木質の集成材としてもよい。壁パネル2を木質板とすることにより、連結部材4の面外座屈を効果的に抑制することができるので、連結部材4による制振機能をより確実に発揮することができる。また、木質板は、貫通孔14を設ける加工等も容易であり、また、連結部材4の取り付けも容易である。なお、壁パネル2は、その端面6により連結部材4の面外座屈を拘束する拘束材として機能し得るものであれば、木質板に限られず、WOOD.ALC(登録商標)、CLT(Cross Laminated Timber:クロス・ラミネイティド・ティンバー)、またはLVL(Laminated Veneer Lumber:単板積層材)等の他の木質系パネル材や、プレキャストコンクリート板等で構成されていてもよい。また、同様の理由により、壁パネル2は、強度等級がE50以上であることが好ましい。
【0045】
図7は、本発明の他の実施形態としての壁構造20を示している。なお、上述した実施形態と基本的な機能が同一である部分は、図中、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
本例の壁構造20は、接合部3において、隣接する2枚の壁パネル2d、2eのうち一方の壁パネル2dには凸部21が形成されるとともに他方の壁パネル2eには凹部22が形成されており、連結部材4cは、凸部21の先端面23(実27の側面)と凹部22の底面24とに挟まれている。
【0047】
壁パネル2dは、両端面(両側の端面6d、6e)に凹部25a、25bが形成された壁部材26と、上記の凸部21を構成する実27(雇い実)とを備える。すなわち、壁パネル2dの凸部21は、壁部材26の一方の凹部25aに嵌め込まれるとともに壁部材26に一体に固定される実27によって構成されている。なお、実27は、例えばLVL、集成材、製材、鋼材等で構成される。
【0048】
本例の壁パネル2eは、壁パネル2dを構成する壁部材26と同形状となっている。また、壁パネル2eの端面6cの凹部22には、連結部材4cが入り込む窪み部28a、28bが形成されている。
【0049】
本例の壁構造20を組み立てる際には、先ず、連結部材4cの第1の取り付け部41cを実27の側面(端面)23にねじ13e等の締結具で(第1の取り付け部41cの孔44eに挿通させて)固定する。同様に、連結部材4cの下側において、実27の側面(端面)23に連結部材4dの取り付け部41dを、ねじ13f等の締結具で(第1の取り付け部41dの孔44fに挿通させて)取り付ける。
【0050】
次いで、実27に固定した連結部材4c、4dを実27と壁パネル2eで挟み込むように、壁パネル2eの凹部22に実27を嵌め込む。そして、実27に形成された貫通孔29aを挿通させたねじ13g等の締結具で(第2の取り付け部42cの孔44gに挿通させて)第2の取り付け部42cを壁パネル2eに固定する。同様に、実27に形成された貫通孔29bを挿通させたねじ13h等の締結具で(第2の取り付け部42dの孔44hに挿通させて)第2の取り付け部42dを壁パネル2eに固定する。
【0051】
そして、図8にも示すように、壁部材26の凹部25aに、一方の壁パネル2eから突出する実27を嵌め込み、図9に示すように、壁部材26の正面側及び背面側の少なくとも一方からねじ13i、13j等の締結具で固定する。これにより、実27と壁部材26とが一体に固定される。また、連結部材4cの第1の取り付け部41cは、一方の壁パネル2dに固定され、第2の取り付け部42cは他方の壁パネル2eに固定される。
【0052】
以上説明したように、本実施形態における連結部材4c、4dの取り付け方法は、隣接する2枚の壁パネル2d、2eの間に挟まれた状態で、2枚の壁パネル2d、2eを連結するように連結部材4c、4dを取り付ける、連結部材4c、4dの取り付け方法であって、第1の壁パネル2dは、実27と壁部材26とで構成され、連結部材4c、4dの第1の取り付け部41c、41dを実27に取り付ける工程と、実27に設けられた貫通孔29a、29bを挿通させた締結具(ねじ13g、13h)によって、連結部材4c、4dの第2の取り付け部42c、42dを第2の壁パネル2eに取り付ける工程と、実27を壁部材26に取り付ける工程と、を含む。
【0053】
本実施形態における連結部材4c、4dの取り付け方法は、第2の取り付け部42c、42dを、壁パネル2eに固定する工程において、実27に設けた貫通孔29a、29bを通過させた締結具(ねじ13g、13h)によって、第2の取り付け部42c、42dを壁パネル2eに固定することで、容易に連結部材4c、4dを壁パネル2eに取り付けることができる。
【0054】
なお、本実施形態においても、先の実施形態と同様に、連結部材4c、4dによる安定した制振効果を得ることができる。また、本例によれば、図2に示す壁パネル2aの貫通孔14a、14bのように、壁部材26に貫通孔を設ける必要がないため、加工が容易となり、また、壁部材26に貫通孔を設ける必要がないので、壁部材26の強度及び断熱性能等の点でも有利である。
【0055】
また、接合部3に実27を設けることにより、接合部3の止水機能(防水性能)や防火性能を高めることができる。このため、本例の壁構造20は、建物の外壁としての使用に特に適している。
【0056】
また、本例では、実27で構成される凸部21及び凹部22を介して隣接する壁パネル2d、2eを接続していることにより、当該隣接する壁パネル2d、2e相互の、厚さ方向のずれを防止することも可能となる。
【0057】
なお、本例では、壁パネル2dが、それぞれ別々に形成される壁部材26と実27で構成される構成としているが、これに限られず、壁パネル2dの端面に凸部を一体に設けた構成としてもよい。
【0058】
なお、本例のように、連結部材4c、4dと実27との当接面において、連結部材4c、4dの壁パネル2d、2eの厚さ方向の長さ(連結部材4c、4dの幅)は、実27の壁パネル2d、2eの厚さ方向の長さ(実27の幅)よりも短いことが好ましい。このように、連結部材4c、4dの幅が実27の幅よりも小さいことにより、連結部材4c、4dを壁パネル2eの凹部22内に収めることができる。
【0059】
ここで、図10は、軽量気泡コンクリートパネルからなる壁パネルを備えた壁構造である外壁31と、木質板からなる壁パネル2を備える本発明の壁構造の外壁32と、を組み合わせた建物30の平面図を示している。外壁32は、例えば上述の本発明の壁構造1または壁構造20とすることができる。
【0060】
建物30は、平面視での外形が長辺と短辺を有する略矩形状の建物である。ここで、「長辺と短辺を有する略矩形状の建物」とは、平面視での外形が長方形となる建物に限られず、部分的に、外側に突出する部分、及び内側に凹となる部分の少なくとも何れかを有する建物を含むものであり、少なくとも長辺方向及び短辺方向に延在する壁(外壁又は間仕切壁)を有していればよい。
【0061】
図10に示すように、平面視で長方形となっている建物30の短辺を構成する外壁32は、長辺を構成する外壁31に比べて地震等の揺れによる変形が生じ易いところ、当該外壁32に本発明の壁構造を採用することで、効果的に建物30の耐震性を高めることができる。また、図10に示す例では、短辺に平行な間仕切壁33にも本発明の壁構造を採用し、さらに耐震性を高めている。
【0062】
また、図10に示すように、隣接する他の建物40、50に面している建物30の外壁31を、軽量気泡コンクリートパネルを備えた壁構造とすることで、建物30の耐火性を効果的に高めることができる。
【0063】
図11、12は、連結部材4の取り付け方法の変形例を、平面視での断面図で示している。図11に示す例では、隣接する2枚の壁パネル2f、2gが、その接合部3において、部分的に厚さ方向に重なるように配置されている。また、連結部材4eは、壁パネル2fの端部に設けられた薄板部71と、壁パネル2gの端部に設けられた薄板部72との間で、2枚の壁パネル2f、2gを連結するように取り付けられ、壁パネル2f、2gの厚さ方向に挟まれている。これにより、連結部材4eは、伸縮変形の際に、圧縮による座屈変形が抑制される。本例では、連結部材4eが板状であり、壁パネル2f、2gの間で、連結部材4eが当該連結部材4eの厚さ方向に挟まれているため、連結部材4eの面外方向の座屈が抑制されている。
【0064】
壁パネル2f、2gに連結部材4eを取り付ける際には、先ず、第1の取り付け部41eを壁パネル2fの薄板部71に、ねじ13k等の締結具を用いて固定する。次いで、壁パネル2gの薄板部72に、薄板部71が重なるように壁パネル2fを配置し、薄板部71に形成された貫通孔73を挿通させたねじ13m等の締結具によって、第2の取り付け部42eを壁パネル2gの薄板部72に固定する。これにより、2枚の壁パネル2f、2gが連結部材4eによって連結された状態となる。
【0065】
このような構成とした場合、例えば、壁パネル2gの薄板部72の裏面側(薄板部71とは逆の面側)に柱や梁等の他の構造体が配置されていても、壁パネル2gに対して連結部材4e及び壁パネル2fを取り付けることができる。
【0066】
図12に示す例では、隣接する2枚の壁パネル2h、2iの端面6d、6eに形成された溝74、75に連結部材4fが、2枚の壁パネル2h、2iを連結するように取り付けられて配置されている。溝74、75の幅(壁パネル2h、2iの厚さ方向の長さ)は、連結部材4fの厚さと同等に形成されており、溝74、75に配置された連結部材4fは、伸縮変形の際に、圧縮による座屈変形が抑制される。本例では、連結部材4fが板状であり、連結部材4fが当該連結部材4fの厚さ方向に壁パネル2h、2iの溝74、75によって挟まれているため、連結部材4eの面外方向の座屈が抑制されている。
【0067】
壁パネル2h、2iに連結部材4fを取り付ける際には、例えば、壁パネル2hの溝74に連結部材4fの第1の取り付け部41fを挿入する。そして、壁パネル2hに形成された貫通孔76を挿通させたねじ13p等の締結具で取り付け部41fを壁パネル2hに取り付ける。次いで、壁パネル2iの溝75に連結部材4fの第2の取り付け部42fを挿入して、貫通孔77を挿通させたねじ13q等の締結具で取り付け部42fを壁パネル2iに取り付ける。これにより、2枚の壁パネル2h、2iが連結部材4fによって連結された状態となる。
【0068】
このような構成とした場合、連結部材4fは制振機能に加えて、実のように壁パネル2h、2i相互間での厚さ方向のずれを防止する機能も発揮することができる。なお、図11、12のように連結部材4e、4fを配置する場合、図13の正面図に示すように、連結部材4e、4fの延在方向が水平方向となるように配置してもよいし、図14の正面図に示すように、連結部材4e、4fの延在方向が水平方向に対して傾斜していてもよい。あるいは、連結部材4e、4fの延在方向が、図1等のように、鉛直方向となっていてもよい。
【0069】
本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。例えば、図1、2、7に示す例では、隣接する壁パネル2の上下の2箇所に連結部材4を取り付けているが、これに限られず、壁パネル2の上下方向に1箇所のみ、または3箇所以上に連結部材4を取り付けてよい。また、壁構造1において複数形成される接合部3の全てに連結部材4を設けてもよいし、一部の接合部3のみに連結部材4を設けてもよい。
【0070】
また、先の実施形態では、左右方向(水平方向)に隣接する2枚の壁パネル2の接合部に連結部材を取り付ける構成としていたが、上下方向(鉛直方向)に隣接する2枚の壁パネルの接合部に連結部材を配置する構成としてもよい。この場合、連結部材4を配置する位置は、同一階層の壁を構成する壁パネルの接合部でもよいし、異なる階層に位置する2枚の壁パネルの接合部に連結部材を配置してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:壁構造
2(2a~2i):壁パネル
3:接合部
4(4a~4f):連結部材
5:壁パネル取付部
6(6a~6e):端面(対向する面)
7:基礎
8:金物
9:取付金物
10:ボルト
11:梁
12:壁受金物
13(13a~13q):ねじ
14:貫通孔
16:パネル取付金物
20:壁構造
21:凸部
22:凹部
23:凸部の先端面
24:凹部の底面
25a、25b:凹部
26:壁部材
27:実
28a、28b:窪み部
29a、29b:貫通孔
30:建物
31:外壁(長辺を構成する外壁)
32:外壁(短辺を構成する外壁)
33:間仕切壁
41(41a~41f):第1の取り付け部
42(42a~42f):第2の取り付け部
43(43a、43b):くびれ部(壁パネルに対する各取り付け部の間の部分)
44:孔
40、50:隣接する建物
61(61a、61b):窪み部
71、72:薄板部
73:貫通孔
74、75:溝
76、77:貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14