(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20220107BHJP
F04D 29/16 20060101ALI20220107BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F04D29/44 P
F04D29/16
F04D29/44 Y
F04D29/44 N
F04D29/66 J
(21)【出願番号】P 2017246329
(22)【出願日】2017-12-22
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2017115184
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515134276
【氏名又は名称】サンデン・オートモーティブクライメイトシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川埼 真俊
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-028299(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0059893(KR,A)
【文献】特開2014-047750(JP,A)
【文献】特開平08-135599(JP,A)
【文献】特開平05-306699(JP,A)
【文献】特開昭60-145497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0141262(US,A1)
【文献】特開2004-360670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 29/16
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周りに互いに間隔をおいて回転軸と平行に延びる複数の翼と、複数の翼の軸方向一端部を連結する環状部と、複数の翼の軸方向他端部を連結する基板と、を有する羽根車と、
軸方向一端側に空気を吸入する円形の吸入口が設けられ、内部に収容された羽根車の径方向外側に渦巻通風路が形成されたケーシングと、を備え、
ケーシングにおける吸入口の開口縁部には、端部が軸方向他端側に向かって延出する内壁部を有し、
内壁部の先端部の内周面から軸方向他端側に向かって連続して延びるとともに、内壁部の内周面の先端部と環状部の軸方向他端部とを通る円弧の中心は、環状部の軸方向他端部を通る軸方向に延びる直線よりも径方向外側に位置し、
環状部の軸方向他端部を通る軸方向に延びる直線から円弧の中心までの距離は、回転軸の中心から環状部の軸方向他端部を通る軸方向に延びる直線までの距離に対して、
0.5から1.7倍の範囲内である
送風機。
【請求項2】
内壁部の内周面の先端部側には、周方向にわたって回転軸と平行を成す面を有する平行壁面が形成されている
請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
平行壁面の軸方向の寸法は、内壁部の軸方向に突出する寸法
の二分の一である
請求項2に記載の送風機。
【請求項4】
内壁部の内周面の先端部側には、周方向にわたって先端部に向かって径方向寸法が大きくなる湾曲壁面が形成されている
請求項1に記載の送風機。
【請求項5】
湾曲壁面の軸方向他端部の内径寸法は、周方向に配置された複数の翼の内径寸法に対して、0.95から1.05倍の範囲内であり、
湾曲壁面の軸方向一端部の内径寸法は、湾曲壁面の軸方向他端部の内径寸法に対して0.94から1倍の範囲内である
請求項4に記載の送風機。
【請求項6】
内壁部の外周面は、周方向にわたって回転軸と平行に延びている
請求項4または5に記載の送風機。
【請求項7】
内壁部は、周方向にわたって軸方向他端部に向かって厚さ寸法が小さく形成されている
請求項4乃至6のいずれかに記載の送風機。
【請求項8】
環状部は、軸方向他端部が屈曲部を介して径方向外側に向かって延びている
請求項1乃至7のいずれかに記載の送風機。
【請求項9】
屈曲部は、環状部の軸方向他端側を、軸方向に対して0度から90度の範囲で径方向外側に向けている
請求項8に記載の送風機。
【請求項10】
屈曲部は、環状部の軸方向における中央部よりも軸方向一端側に設けられている
請求項8または9に記載の送風機。
【請求項11】
屈曲部は、軸方向一端側と他端側との間を曲面によって接続している
請求項8乃至10のいずれかに記載の送風機。
【請求項12】
環状部は、軸方向の中間部が回転軸側に凸となる筒状に形成されている
請求項8乃至11のいずれかに記載の送風機。
【請求項13】
内壁部の内径寸法は、周方向に配置された複数の翼の径方向内側の径方向寸法以上の大きさである
請求項1乃至12のいずれかに記載の送風機。
【請求項14】
内壁部の先端部は、軸方向において、翼の軸方向一端と環状部の軸方向一端との間に位置している
請求項1乃至13のいずれかに記載の送風機。
【請求項15】
内壁部の先端部は、軸方向において、環状部の軸方向一端から1mmから10mmの範囲内に位置している
請求項14に記載の送風機。
【請求項16】
ケーシングには、渦巻通風路の終端部から空気の吐出口に向かって延びる吐出通風路と、渦巻通風路の始端部と吐出通風路とを仕切る舌部と、開口縁部の径方向外側において渦巻通風路の始端部から終端部に向かう所定の位置から舌部に向かって徐々に軸方向他端側への突出する寸法が大きくなる突部と、を有し、
突部は、軸方向における、内壁部の先端部と環状部の軸方向他端部との間に位置している
請求項1乃至15のいずれかに記載の送風機。
【請求項17】
突部の外周側には、突部の延びる方向にわたって径方向外側に向かって徐々に突出する寸法が小さくなる傾斜面が設けられている
請求項16に記載の送風機。
【請求項18】
突部の内周面の形状は、環状部の外周面の形状に沿って形成されている
請求項16または17に記載の送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用空気調和装置に用いられる送風機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の送風機としては、回転軸の周りに互いに間隔をおいて回転軸方向に延びる複数の翼と複数の翼の軸方向一端部を連結する環状部と複数の翼の軸方向他端部を連結する基板とを有する羽根車と、軸方向一端側に空気を吸入する円形の吸入口が設けられ、内部に収容された羽根車の径方向外側に渦巻通風路が形成されたケーシングと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記送風機では、軸方向一端側に位置する吸入口からケーシング内に流入した空気が、羽根車によって流通方向が回転軸の軸方向から径方向に向きを変えて流通し、羽根車の外周側の渦巻通風路を流通する。このため、前記送風機では、羽根車の軸方向における他端側に偏って空気が流れやすくなり、羽根車の軸方向における一端側の空気の流量が少なくなる。また、前記送風機では、吸入口の縁部に沿ってケーシング内に流入した空気が、ケーシング内の軸方向一端側において剥離し、ケーシング内の軸方向一端側における空気の流れに乱れが生じる。この場合に、前記送風機では、ケーシング内の軸方向一端側において空気の流れの乱れを原因とする音が発生するため、騒音の低減を図ることが困難である。
【0005】
本発明の目的とするところは、羽根車の軸方向における吸入口側を流れる空気の乱れを抑制することで静音性を向上させることのできる送風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、回転軸の周りに互いに間隔をおいて回転軸と平行に延びる複数の翼と、複数の翼の軸方向一端部を連結する環状部と、複数の翼の軸方向他端部を連結する基板と、を有する羽根車と、軸方向一端側に空気を吸入する円形の吸入口が設けられ、内部に収容された羽根車の径方向外側に渦巻通風路が形成されたケーシングと、を備え、ケーシングにおける吸入口の開口縁部には、端部が軸方向他端側に向かって延出する内壁部を有し、内壁部の先端部の内周面から軸方向他端側に向かって連続して延びるとともに、内壁部の内周面の先端部と環状部の軸方向他端部とを通る円弧の中心は、環状部の軸方向他端部を通る軸方向に延びる直線よりも径方向外側に位置し、環状部の軸方向他端部を通る軸方向に延びる直線から円弧の中心までの距離は、回転軸の中心から環状部の軸方向他端部を通る軸方向に延びる直線までの距離に対して、0.5から1.7倍の範囲内である。
【0007】
これにより、吸入口の外周側を通ってケーシング内に流入する空気が、開口縁部の内周面に沿って流通した後、環状部の内周面に沿って流通し、翼と翼との間の隙間を通って渦巻通風路に流入することから、開口縁部の内周面及び環状部の内周面に沿って流通する空気の流れの剥離が抑制され、羽根車の軸方向一端側における音の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、開口縁部の内周面及び環状部の内周面に沿って流通する空気の流れの剥離を抑制することができるので、羽根車の軸方向一端側における音の発生を抑制することが可能となり、静音性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態を示す送風機の全体斜視図である。
【
図4】第1側板の突部を説明するためのケーシングの断面図である。
【
図7】リムの軸方向他端部を通る軸方向に延びる直線から円弧の中心までの距離と回転中心から直線までの距離との比と、比騒音との関係を示すグラフである。
【
図9】本発明の他の例を示す羽根車及びケーシングの要部断面図である。
【
図10】本発明の他の例を示す羽根車及びケーシングの要部断面図である。
【
図11】本発明の他の例を示す羽根車及びケーシングの要部断面図である。
【
図12】本発明の他の例を示す羽根車及びケーシングの要部断面図である。
【
図13】羽根車の翼の内径寸法と外径寸法との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図8は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0011】
本発明の送風機1は、
図1に示すように、遠心式の送風機であり、例えば、車両用空気調和装置の送風手段として用いられる。
【0012】
この送風機1は、
図3に示すように、円筒状に形成された羽根車10と、羽根車10を回転させるための電動モータ20と、羽根車10が内部に収容されるケーシング30と、を備えている。
【0013】
羽根車10は、
図3に示すように、回転の中心軸の周りに互いに周方向に所定の間隔をおいて配置されると共にそれぞれ中心軸と平行に延びる複数の翼11と、複数の翼11の軸方向一端部を連結する環状部としてのリム12と、複数の翼11の軸方向他端部を連結する基板13と、を有している。
【0014】
複数の翼11は、それぞれ径方向内側から外側に向かって延びるように配置されている。複数の翼11は、それぞれ径方向外側が径方向内側に対して周方向の一方に向かって湾曲している。
【0015】
リム12は、複数の翼11の軸方向一端部が連結された円筒状の部材である。リム12は、軸方向一端部が複数の翼11の軸方向一端部から軸方向一端側に延びている。リム12は、軸方向一端側が軸方向と平行に延びており、軸方向他端側が屈曲部12aを介して径方向外側に斜めに延びている。屈曲部12aは、リム12の軸方向の中央部よりも一端部側に設けられている。屈曲部12aは、
図6に示すように、軸方向に延びるリム12の軸方向一端側に対して軸方向他端側を、0度~90度の範囲内の所定角度θで屈曲させている。屈曲部12aは、リム12の軸方向一端側と他端側とを曲面で接続している。
【0016】
基板13は、径方向外側に複数の翼11の他端部が連結された円板状の部材である。基板13の軸方向一端面には、
図3に示すように、各翼11が連結される外周部の径方向内側から中心部に向かって徐々に張り出す張出部が形成されている。また、基板13の軸方向他端面には、各翼11が連結される外周部の径方向内側から中心部に向かって徐々に窪む凹部が形成されている。
【0017】
羽根車10は、径方向の中心を回転軸として周方向一方に回転させると、軸方向一端側から内側に空気が流入し、各翼11の隙間から径方向外側に向かって放射状に空気を流出させる。
【0018】
電動モータ20は、
図3に示すように、羽根車10の軸方向一端側において、基板13の軸方向一端面の凹部に配置される。電動モータ20は、回転軸21が基板13の径方向の中心部に連結されており、翼11の湾曲している方向である周方向一方に向かって羽根車10を回転させる。
【0019】
ケーシング30は、
図3に示すように、羽根車10の軸方向一端側に設けられた第1側板31と、羽根車10の軸方向他端側に設けられた第2側板32と、第1側板31と第2側板32のそれぞれの外周部の間を羽根車10の周方向に延びる外周板33と、を有している。
【0020】
第1側板31の略中央部には、ケーシング30内に空気を吸入するための円形状の吸入口34が設けられている。また、第1側板31における吸入口34の縁部には、羽根車10のリム12の軸方向一端側、リム12の軸方向一端側の径方向内面側及び外面側を囲む開口縁部としてのベルマウス31aが設けられている。
【0021】
ベルマウス31aは、
図6に示すように、軸方向に直交する方向に延びる環状の基部31a1と、基部31a1の外周部から軸方向他端側に延びる環状の外壁部31a2と、基部31a1の内周部から軸方向他端側に延びる環状の内壁部31a3と、を有している。基部31a1と外壁部31a2との間、及び、基部31a1と内壁部31a3との間は、それぞれ曲面で接続されている。
【0022】
内壁部31a3は、周方向にわたって基部31a1から軸方向他端側に向かって延出している。内壁部31a3の内周面の軸方向他端側には、周方向にわたって回転軸と平行を成す面を有する平行壁面31a4が形成されている。平行壁面31a4の軸方向の寸法は、基部31a1から内壁部31a3が軸方向他端側に突出する寸法の略半分である。
【0023】
第2側板32の略中央部には、
図3に示すように、電動モータ20を貫通させた状態で支持するためのモータ支持孔32aが設けられている。
【0024】
外周板33は、
図4に示すように、羽根車10の回転軸から離れた所定の基準位置から羽根車10の回転方向に向かって羽根車10の回転軸からの距離が徐々に大きくなる渦巻状の渦巻部33aと、渦巻部33aの径方向外側の端部から直線状に延びる直線部33bと、渦巻部33aの径方向内側の端部から所定の曲率半径で、渦巻部33aと反対方向に湾曲して延びる舌部33cと、舌部33cから連続して直線部33bと間隔をおいて延びる延出部33dと、を有している。
【0025】
また、ケーシング30には、
図1に示すように、吸入口34を介してケーシング30内に吸入した空気を吐出するための吐出口35が設けられている。吐出口35は、第1側板31、第2側板32、直線部33b、延出部33dに囲まれる部分の端部に形成されている。
【0026】
ケーシング30内には、
図4に示すように、吸入口34から流入した空気を羽根車10の外周側を羽根車10の回転方向に流通させるための渦巻通風路36と、渦巻通風路36の終端部と吐出口35とを連通する吐出通風路37と、が設けられている。
【0027】
渦巻通風路36は、第1側板31と第2側板32との間、且つ、羽根車10の外周部と外周板33の渦巻部33a及び直線部33bにおける渦巻部33a側に位置する部分との間に設けられている。渦巻通風路36は、
図4に示すように、始端部から終端部に向かって径方向に通風路の幅寸法が徐々に大きくなる。
【0028】
吐出通風路37は、第1側板31と第2側板32との間で、且つ、直線部33bにおける吐出口35側に位置する部分と延出部33dとの間に設けられている。吐出通風路37は、
図4に示すように、渦巻通風路36の終端部から吐出口35に向かって径方向に通風路の幅寸法が徐々に大きくなる。また、吐出通風路37は、舌部33cによって渦巻通風路36の始端側と仕切られている。
【0029】
第1側板31の羽根車10の径方向外側に位置する部分(舌部33cが位置する部分)には、
図3に示すように、第2側板32側に向かって突出するとともに、舌部33cから羽根車10の回転方向と反対側に向かって周方向に延びる突部31bが設けられている。
【0030】
突部31bは、
図4に示すように、羽根車10の回転軸を中心として、渦巻部33aの径方向内側の端部の位置Sを基準として羽根車10の回転方向に向かって突出角度θUに位置する突出開始位置と舌部33cとの間に設けられている。突部31bは、
図3乃至
図5に示すように、突出開始位置から舌部33cに向かって最大の高さ寸法となるまで徐々に高さ寸法が大きくなる。
【0031】
また、突部31bの外周側には、突部31bの延びる方向にわたって径方向外側に向かって徐々に高さ寸法が小さくなる傾斜面31cが設けられている。
【0032】
ここで、
図6に示すように、ベルマウス31aの平行壁面31a4の軸方向他端部Aから平行壁面31a4に沿って軸方向他端側に向かって連続して延びるとともに、平行壁面31a4の軸方向他端部Aとリム12の軸方向他端部Bとを通る円弧の中心Cは、リム12の軸方向他端部を通る軸方向に延びる直線Dよりも径方向外側に位置している。
【0033】
また、リム12の軸方向他端部を通る軸方向に延びる直線Dから円弧の中心Cまでの距離Lは、回転中心Eから直線Dまでの距離Rに対して、0~1.7倍の範囲内に設定されている(0≦L/R≦1.7)。
【0034】
ベルマウス31aの内壁部31a3の内径寸法R1は、周方向に配置された複数の羽根車10の翼11の径方向内側の内径寸法R2以上の大きさに形成されている。
【0035】
ベルマウス31aの内壁部31a3の軸方向他端部Aは、軸方向において、複数の翼11の軸方向一端部とリム12の軸方向一端部との間に位置している。軸方向における内壁部31a3の軸方向他端部Aと翼11の軸方向一端部との距離は、1mm~10mmである。
【0036】
突部31bは、軸方向他端側に向かって、ベルマウス31aの内壁部31a3の軸方向他端部Aとリム12の軸方向他端部Bとの間まで突出している。突部31bは、舌部33cの近傍において、リム12の軸方向他端部Bの近傍に位置している。
【0037】
傾斜面31cは、突部31bの延びる方向にわたって突部31bの外周部から径方向外側に向かって斜めに延びている。
【0038】
以上のように構成された送風機1では、電動モータ20を駆動して羽根車10を周方向一方に回転させると、ケーシング30外の空気は、第1側板31に設けられた吸入口34を介してケーシング30内に吸入される。吸入口34を介してケーシング30内に吸入された空気は、羽根車10の軸方向他端側から内側に流入し、羽根車10の外周部から放射状に流出される。羽根車10の外周部から放射状に流出した空気は、ケーシング30の渦巻通風路36及び吐出通風路37を流通して吐出口35から吐出される。
【0039】
このとき、ベルマウス31aの平行壁面31a4は、軸方向に延びているので、吸入口34の外周側を通ってケーシング30内に流入する空気は、平行壁面31a4によって軸方向に案内される。
【0040】
また、平行壁面31a4の軸方向の寸法は、基部31a1から内壁部31a3の先端部との間の寸法の略半分である。このため、吸入口34の外周側を通ってケーシング30内に流入する空気は、平行壁面31a4によって確実に軸方向に案内される。
【0041】
また、平行壁面31a4の内径寸法R1は、周方向に配置された複数の翼11の内径寸法R2以上の大きさに形成されている。このため、吸入口34の外周側を通ってケーシング30内に流入する空気は、羽根車10の翼の径方向内側に案内されるが、吸入口34を通過する空気の流速の著しい上昇が抑制される。
【0042】
内壁部31a3の軸方向他端部Aは、軸方向において、複数の翼11の軸方向一端部と、リム12の軸方向一端部と、の間に位置している。また、内壁部31a3の軸方向他端部Aは、軸方向において、リム12の軸方向一端部から軸方向他端部に向かって1mm~10mmの範囲内に位置している。このため、リム12の軸方向一端部とベルマウス31aとの間における空気の流通が抑制される。
【0043】
ベルマウス31aの平行壁面31a4の軸方向他端部Aから平行壁面31a4に沿って軸方向他端側に向かって連続して延びるとともに、平行壁面31a4の軸方向他端部Aとリム12の軸方向他端部Bとを通る円弧の中心Cは、リム12の軸方向他端部を通る軸方向に延びる直線Dよりも径方向外側に位置している。また、直線Dから円弧の中心Cまでの距離Lは、回転中心Eから直線Dまでの距離Rに対して、0~1.7倍の範囲内に設定されている。このため、吸入口34の外周側を通ってケーシング30内に流入する空気は、ベルマウス31aの内壁部31a3の内周面に沿って流通した後、羽根車10のリム12の軸方向他端側の内周面に沿って流通し、翼11と翼11との間の隙間を通って羽根車10の径方向外側から渦巻通風路36に流入する。
【0044】
リム12は、屈曲部12aを介して軸方向他端側が径方向外側に斜めに延びている。屈曲部12aは、リム12の軸方向の中央部よりも軸方向一端側に配置されている。また、屈曲部12aは、リム12の軸方向一端側と他端側とを曲面によって接続している。このため、リム12の内周面に沿って流通する空気は、剥離することなく径方向外側に案内される。
【0045】
突部31bは、軸方向他端側に向かって、ベルマウス31aの内壁部31a3の軸方向他端部とリム12の軸方向他端部Bとの間まで突出している。突部31bは、舌部33cの近傍において、リム12の軸方向他端部Bの近傍に位置している。傾斜面31cは、突部31bの延びる方向にわたって突部31bの外周部から径方向外側に向かって斜めに延びている。このため、羽根車10の軸方向一端側から径方向外側に流通する空気は、流れが乱れることなく突部31b及び傾斜面31cに沿って渦巻通風路36に流入する。
【0046】
ここで、リム12の軸方向他端部Bを通る軸方向に延びる直線Dから円弧の中心Cまでの距離Lと羽根車10の回転中心Eから直線Dまでの距離Rとの比(L/R)について、適正値を得るために行った試験及び試験結果について説明する。
【0047】
図7は、直線Dから円弧の中心Cまでの距離Lと羽根車10の回転中心Eから直線Dまでの距離Rとの比(L/R)を変化させたときの騒音の大きさを測定した結果を示すグラフである。比騒音値は、
図7に示すように、直線Dから円弧の中心Cまでの距離Lと羽根車10の回転中心Eから直線Dまでの距離Rとの比(L/R)が、0~1.7の範囲であれば、低い状態となる。直線Dから円弧の中心Cまでの距離Lと羽根車10の回転中心Eから直線Dまでの距離Rとの比(L/R)は、0.5~1.3の範囲でより低い状態となる。
【0048】
図8は、直線Dから円弧の中心Cまでの距離Lと回転中心Eから直線Dまでの距離Rとの比(L/R)が0~1.7の範囲に設定された送風機1、本発明の構造を有しない従来の送風機において、それぞれ風量を変化させたときの騒音の大きさを測定した試験結果を示すグラフである。送風機1の比騒音値は、車両用空気調和装置として使用される風量の範囲において、従来の送風機の比騒音値と比較して小さくなっている。
【0049】
このように、本実施形態の送風機によれば、ベルマウス31aの平行壁面31a4の軸方向他端部Aから軸方向他端側に向かって連続して延びるとともに、平行壁面31a4の軸方向他端部Aとリム12の軸方向他端部Bとを通る円弧の中心Cは、リム12の軸方向他端部Bを通る軸方向に延びる直線Dよりも径方向外側に位置し、直線Dから円弧の中心Cまでの距離Lは、回転中心Eから直線Dまでの距離Rに対して、0から1.7倍の範囲内である。
【0050】
これにより、ベルマウス31aの内壁部31a3の内周面及びリム12の内周面に沿って流通する空気の流れの剥離を抑制することができるので、羽根車10の軸方向一端側における音の発生を抑制することが可能となり、静音性を向上させることが可能となる。
【0051】
また、内壁部31a3の内周面の軸方向他端側には、周方向にわたって軸方向に延びる平行壁面31a4が形成されている。
また、平行壁面31a4の軸方向の寸法は、基部31a1と内壁部31a3の先端部との間の寸法の略二分の一である。
【0052】
これにより、吸入口34の外周側を通ってケーシング30内に流入する空気を平行壁面31a4に沿って軸方向に案内することができるので、吸入口34の外周側における空気の流れの乱れを抑制することが可能となる。
【0053】
また、リム12は、軸方向他端部が屈曲部12aを介して径方向外側に向かって延びている。
また、屈曲部12aは、リム12の軸方向他端側を、軸方向に対して0度から90度の範囲で径方向外側に向けている。
また、屈曲部12aは、軸方向一端側と他端側との間を曲面によって接続している。
【0054】
これにより、吸入口34の外周側から軸方向に流通した空気を、リム12の内周面に沿って流通させることで、径方向外側に向きを変更することが可能となるので、リム12の内周面側における空気の流れの乱れを抑制することが可能となる。
【0055】
また、屈曲部12aは、リム12の軸方向における中央部よりも軸方向一端側に設けられている。
【0056】
これにより、リム12の内周面における径方向外側に向かって延びる距離を大きく設定することができるので、吸入口34の外周側から流入した空気を確実に径方向外側に案内することが可能となる。
【0057】
また、ベルマウス31aの平行壁面31a4の内径寸法R1は、周方向に配置された複数の翼11の内径寸法R2以上の大きさである。
【0058】
これにより、吸入口34の外周側を通ってケーシング30内に流入する空気を、羽根車10の翼11の径方向内側に案内することができるとともに、吸入口34を通過する空気の流速の著しい上昇を抑制することが可能となり、静音性を向上させることが可能となる。
【0059】
また、内壁部31a3の先端部は、軸方向において、翼11の軸方向一端部とリム12の軸方向一端部との間に位置している。
また、内壁部31a3の先端部は、軸方向において、リム12の軸方向一端部から1mmから10mmの範囲内に位置している。
【0060】
これにより、リム12の軸方向一端部とベルマウス31aとの間における空気の流通を抑制することができるので、リム12とベルマウス31aとの間の空気の流通による音の発生の防止を図ることが可能となる。
【0061】
突部31bは、軸方向において、内壁部31a3の軸方向他端部とリム12の軸方向他端部Bとの間に位置している。
また、突部31bの外周側には、突部31bの延びる方向にわたって径方向外側に向かって徐々に突出する寸法が小さくなる傾斜面31cが設けられている。
【0062】
これにより、ケーシング30内の軸方向一端側において、羽根車10の外周側から流出する空気の流れの乱れを抑制することが可能となり、静音性を向上させることが可能となる。
【0063】
図9及び
図10は、それぞれ、本発明のベルマウス31aの他の例を示すものである。
【0064】
図9及び
図10に示すベルマウス31aの内壁部31a3の内周面の軸方向他端側には、径方向寸法が軸方向他端部に向かって徐々に大きくなる湾曲壁面31a5が形成されている。
【0065】
また、湾曲壁面31a5の軸方向他端部の内径寸法R3は、周方向に配置された複数の翼11の内径寸法R4に対して、0.95から1.05倍の範囲内である。また、湾曲壁面31a5の軸方向一端部の内径寸法R5は、湾曲壁面31a5の軸方向他端部の内径寸法R3に対して0.94から1倍の範囲内である。
【0066】
内壁部31a3の外周面31a6は、周方向にわたって回転軸と平行を成している。
【0067】
内壁部31a3は、周方向にわたって軸方向他端部(先端部)に向かって厚さ寸法が小さく形成されている。特に、
図10に示す内壁部31a3の軸方向他端部(先端部)は、周方向にわたって湾曲壁面31a5と外周面31a6とから断面が鋭角をなすように形成されている。
【0068】
以上のように構成された送風機では、電動モータ20を駆動して羽根車10を周方向一方に回転させると、前記実施形態と同様に、吸入口34を介してケーシング30内に吸入された空気が、ケーシング30の吐出口35から吐出される。
【0069】
このとき、内壁部31a3の内周面の軸方向他端側には、径方向寸法が軸方向他端側に向かって徐々に大きくなる湾曲壁面31a5が形成されている。また、湾曲壁面31a5の軸方向他端部の内径寸法R3は、周方向に配置された複数の翼11の内径寸法R4に対して、0.95から1.05倍の範囲内である。さらに、湾曲壁面31a5の軸方向一端部の内径寸法R5は、湾曲壁面31a5の軸方向他端部の内径寸法R3に対して0.94から1倍の範囲内である。このため、吸入口34の外周側を通ってケーシング30内に流入した空気は、湾曲壁面31a5に沿って流通することで、流通方向が軸方向から径方向外側に変化するように案内される。
【0070】
このように、本実施形態の送風機によれば、前記実施形態と同様に、羽根車10の軸方向一端側における音の発生を抑制することが可能となるので、静音性を向上させることが可能となる。
【0071】
また、内壁部31a3の内周面の先端部側には、周方向にわたって先端部に向かって径方向寸法が大きくなる湾曲壁面31a5が形成されている。
また、湾曲壁面31a5の軸方向他端部の内径寸法R3は、周方向に配置された複数の翼11の内径寸法R4に対して、0.95から1.05倍の範囲内である。
また、湾曲壁面31a5の軸方向一端部の内径寸法R5は、湾曲壁面31a5の軸方向他端部の内径寸法R3に対して0.94から1倍の範囲内である。
【0072】
これにより、吸入口34の外周側を通ってケーシング30内に流入する空気は、湾曲壁面31a5によって、流通方向が軸方向から径方向外側に向けて変化するように案内される。このため、湾曲壁面31a5に沿って流通した空気は、リム12の内周面に沿って流れやすくなり、リム12の内周面における空気の剥離を抑制することが可能となる。
【0073】
内壁部31a3の外周面31a6は、周方向にわたって回転軸と平行に延びている。
【0074】
これにより、内壁部31a3の内周面に湾曲壁面31a5が形成される場合においても、軸方向に対を成す金型によってベルマウス31aを形成することが可能となる。
【0075】
内壁部31a3は、周方向にわたって軸方向他端部に向かって厚さ寸法が小さく形成されている。
【0076】
これにより、吸入口34の外周側を通ってケーシング30内に侵入する空気は、内壁部31a3の軸方向他端部を通過する際に、内壁部31a3の軸方向他端部の端面において流れが乱される状態を抑制することが可能となり、音の発生を抑制することが可能となる。
【0077】
図11は、突部31bのその他の例を示すものである。
【0078】
図11に示す突部31bは、内周面が、ベルマウス31aの外壁部31a2から連続して延びるとともに、リム12の外周面の形状に沿うように形成されている。
【0079】
以上のように構成された送風機では、突部31bの内周面とリム12の外周面との間隔が軸方向にわたって均一となり、突部31bの内周面とリム12の外周面との間を流れる空気の乱れが抑制される。
【0080】
このように、本実施形態の送風機によれば、前記実施形態と同様に、羽根車10の軸方向一端側における音の発生を抑制することが可能となるので、静音性を向上させることが可能となる。
【0081】
また、突部31bの内周面は、リム12の外周面の形状に沿って形成されている。
【0082】
これにより、突部31bの内周面とリム12の外周面との間隔が軸方向にわたって均一となるため、突部31bの内周面とリム12の外周面との間を流れる空気の乱れが抑制され、音の発生を抑制することが可能となる。
【0083】
尚、前記実施形態では、車両用空気調和装置の送付手段以外に、建築物の室内の空気調和装置や、換気装置等の送風手段に適用することも可能である。
【0084】
また、前記実施形態では、リム12の軸方向一端側を軸方向に延びる筒形状に形成し、軸方向他端側を径方向外側に延びるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。リム12は、軸方向他端側が屈曲部12aを介して径方向外側に延びるように形成されていればよく、例えば、
図12に示すように、リム12の軸方向一端側及び他端側がそれぞれ屈曲部12aを介して径方向外側に延びるように形成され、軸方向の中間部が径方向内側に凸となる形状であっても、本発明と同様の効果を奏する。
【0085】
また、前記実施形態において、周方向に配置された複数の翼11の内径寸法R6は、
図13に示すように、外径寸法R7に対して0.65~0.8倍の範囲に設定することが好ましい(0.65≦R6/R7≦0.8)。この範囲内で設定された翼11を有する羽根車10では、径方向中央部に流入した空気が、翼11と翼11との間を内周側から外周側に向かって流通する際に適切に整流されて羽根車10の外周部から流出することになり、騒音や流通抵抗の増加の原因となる乱れが抑制され、静音性の向上及び送風効率を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0086】
1…送風機、10…羽根車、11…翼、12…リム、12a…屈曲部、13…基板、30…ケーシング、31…第1側板、31a…ベルマウス、31a3…内壁部、31a4…平行壁面、31a5…湾曲壁面、31a6…外周面、31b…突部、31c…傾斜面、34…吸入口。