IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラボラトワール ゴエマールの特許一覧

特許6997621藻類の濃縮抽出物、その製造方法および農業におけるその使用
<>
  • 特許-藻類の濃縮抽出物、その製造方法および農業におけるその使用 図1
  • 特許-藻類の濃縮抽出物、その製造方法および農業におけるその使用 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】藻類の濃縮抽出物、その製造方法および農業におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   A01N 65/03 20090101AFI20220107BHJP
   A01C 1/06 20060101ALI20220107BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20220107BHJP
   A01M 29/12 20110101ALI20220107BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20220107BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A01N65/03
A01C1/06 Z
A01G7/00 604Z
A01M29/12
A01P17/00
A01P21/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017534011
(86)(22)【出願日】2015-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-11-09
(86)【国際出願番号】 FR2015052439
(87)【国際公開番号】W WO2016038320
(87)【国際公開日】2016-03-17
【審査請求日】2018-03-08
【審判番号】
【審判請求日】2020-02-10
(31)【優先権主張番号】1458561
(32)【優先日】2014-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517087303
【氏名又は名称】ラボラトワール ゴエマール
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ヘリー ポール
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】大熊 幸治
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特表昭60-500290(JP,A)
【文献】特表平7-508529(JP,A)
【文献】特開2008-120707(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0538091(EP,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0984217(KR,B1)
【文献】Tropical Plant Pathology,2014,39(2),111-118
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00- 65/48
A61K 35/00- 36/9068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮藻類抽出物であって、6~100%の割合の乾燥物質を有し、前記濃縮藻類抽出物の重量に対して0~5重量%のアルギン酸塩および0~5重量%のセルロースを含有し、
前記藻類は、アスコフィルム・ノドスム(Ascophyllum nodosum)、ブラダーラック(Fucus vesiculosus)、ラミナリア・ディギタータ(Laminaria digitata)、ラミナリア・ヒペルボレア(Laminaria hyperborea)、ラミナリア・サッカリナ(Laminaria saccharina)、エクロニア・マキシマ(Eklonia maxima)、ホンダワラ種(Sargassum spp.)およびそれらの混合物から選択される、
濃縮藻類抽出物。
【請求項2】
前記濃縮藻類抽出物は、9~70%の割合の乾燥物質を有する、請求項1に記載の濃縮藻類抽出物。
【請求項3】
前記濃縮藻類抽出物は、12~50%の割合の乾燥物質を有する、請求項1または2に記載の濃縮藻類抽出物。
【請求項4】
1.5~9のpHを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の濃縮藻類抽出物。
【請求項5】
2~7のpHを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の濃縮藻類抽出物。
【請求項6】
2.5~3のpHを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の濃縮藻類抽出物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の濃縮藻類抽出物を調製する方法であって、以下の工程:
細胞が破壊するまで藻類を粉砕する工程と、
粉砕した藻類物質を水溶液中に均質化する工程と、
凝集および濾過によってアルギン酸塩およびセルロースを除去する工程と、
任意に、濾液のpHを調整する工程と、
濾液を、6~100%の割合の乾燥物質になるように濃縮する工程と
を含む、方法。
【請求項8】
前記濾液を濃縮する工程は、濾液が12~50%の割合の乾燥物質になるように濃縮する工程である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
濾液を濃縮する工程は、逆浸透、水分蒸発または遠心分離によって実施される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
植物の発芽、成長、発育および/または繁殖を促進する方法であって、請求項1~6のいずれか一項に記載の濃縮藻類抽出物が、土壌への浸潤によって塗布され、植物の葉へ噴霧され、播種前に種子へ塗布され、または特に植物を植え付ける前の浸漬処理によって苗の根へ塗布される、方法。
【請求項11】
植物成長を促進するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の濃縮藻類抽出物の使用。
【請求項12】
植物発芽を刺激するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の濃縮藻類抽出物の使用。
【請求項13】
鳥忌避剤としての、請求項1~6のいずれか一項に記載の濃縮藻類抽出物の使用。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の濃縮藻類抽出物で被覆した種子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6~100%の割合の乾燥物質を有する濃縮藻類抽出物、その調製方法およびまた、特に植物発芽、成長、発育および繁殖を促進するため、ならびに鳥が種子を食べることを防ぐために、単独での、または別の栄養、生物刺激もしくは植物保護技術と組み合わせたその使用に関する。本発明はまた、本発明の濃縮藻類抽出物を適用する方法およびまた、前記抽出物で被覆した種子を目的とする。
【背景技術】
【0002】
農業従事者にとって収穫量の増加は最大の関心事である。収穫量は主に植物の良好な発育およびその結果としてのその成長、ならびにその良好な健康に依存する。
【0003】
植物成長は、無機元素の吸収および同化ならびに植物組織の伸長および分化を支配しているホルモンの循環に直接関連する。したがって、栄養素およびホルモンは植物成長において重要な役割を果たす。それらが移動できないことに起因して、植物は、それらの成長を促進するために利用可能な資源を最大限に使用することができる活性および活性化可能な機構を発達させている。肥料は、この成長を増加させるために使用される。
【0004】
藻類は、様々な土壌の種類ならびに様々な市場向け菜園および穀物についての有機濃縮剤として何年間も使用されてきている。藻類抽出物は、頻繁に植物の葉の上に噴霧される生物刺激剤として使用される。農業において藻類抽出物の使用に関連した多くの有益な効果が観察されており、特にそれらには、収穫量、栄養供給量、霜およびストレス条件に対する耐性の増加、果物の改善された保存期間ならびに菌類および昆虫による攻撃の減少が含まれる。
【0005】
藻類抽出物はまた、特に植物発芽を促進することによって良好な種子発芽を可能にすることが知られている。実際に、それらが発芽するとすぐに、苗は、リゾクトニア根腐病菌(rhizoctonia root rot)、フハイカビ(pythium)などの真菌種、または立枯れ病として知られている疾患を引き起こす細菌などの病原微生物に対して感受性になる。攻撃を受けた若い芽は、柄の基部がつままれているかのように最終的に横たわる。空気中の湿気および低温は立枯れ病の出現を促進する。
【0006】
多くの藻類抽出物が農業におけるそれらの使用のために販売されている。例えば、本出願人は、特許文献1において、以下の工程:
a)4~8時間、50~100℃の温度にて還元剤の存在下での少なくとも1種の褐藻類の塩基性加水分解、
b)6~8のpHが得られるまで、このように得られた加水分解物の強酸による中和
c)濾過、
d)任意に、工程c)の終わりに得られた浸透物の透析濾過または電気透析、および
e)任意に、工程c)の終わりに得られた浸透物または工程d)の終わりに得られた残余物を粉末にする工程
を含む方法に従って得られる海藻類に由来する組成物を記載している。
【0007】
それにも関わらず、還元剤の存在下で高温条件下での藻類の塩基性加水分解に起因して、藻類の細胞内液のいくつかの化合物は保存されず、特に多糖、脂質、タンパク質およびポリフェノールは、上記の方法により得られた組成物の生物刺激特性を減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第0538091号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、藻類の細胞内液の化合物が保存される藻類抽出物が、特定の割合の乾燥物質を達成するように濃縮した場合、優れた生物刺激活性を有することを見出した。驚くべきことに、本出願人は、同じ量の適用後、本発明の濃縮した藻類抽出物が、植物発芽の刺激および植物成長の促進において、希釈した抽出物より効果的であることを観察した。さらに、種子を被覆するために濃縮した藻類抽出物を使用した場合、それは被覆していない種子より、鳥による攻撃の頻度が少なくなる。
【0010】
本発明の主題は、6~100%、好ましくは9~70%、より好ましくは12~50%の割合の乾燥物質を有し、濃縮藻類抽出物の重量に対して0~5重量%、特に1~4重量%、より特には2~3重量%のアルギン酸塩および/またはセルロースを含有する濃縮藻類抽出物である。
【0011】
本発明の第2の主題は、本発明による濃縮藻類抽出物を調製する方法であって、以下の工程:
細胞が破壊するまで藻類を粉砕する工程と、
粉砕した藻類物質を水溶液中に均質化する工程と、
凝集および濾過によってアルギン酸塩およびセルロースを除去する工程と、
任意に、濾液のpHを調整する工程と、
濾液を、6~100%、好ましくは9~70%、より好ましくは12~50%の割合の乾燥物質になるように濃縮する工程と、
を含む、方法である。
【0012】
本発明の別の主題は、植物の発芽、成長、発育および/または繁殖を促進する方法であって、本発明による抽出物または本発明の方法によって調製された抽出物が、土壌への浸潤によって塗布され、植物の葉へ噴霧され、播種前に種子へ塗布され、または特に植物を植え付ける前の浸漬処理によって苗の根へ塗布される、方法である。
【0013】
本発明のさらに別の主題は、植物成長を促進するための、本発明による抽出物、または本発明の方法によって調製された抽出物の使用である。
【0014】
本発明の別の主題は、植物発芽を刺激するための、本発明による抽出物、または本発明の方法によって調製された抽出物の使用である。
【0015】
本発明の第6の態様は、鳥忌避剤としての、本発明による抽出物、または本発明の方法によって調製された抽出物の使用である。
【0016】
最後に、本発明の別の主題は、本発明による抽出物、または本発明の方法によって調製された抽出物で被覆された種子である。
【0017】
本発明の濃縮藻類抽出物は、特に、6~100%、好ましくは9~70%、より好ましくは12~50%の割合の乾燥物質を有する水性抽出物または乾燥抽出物である。
【0018】
本発明の意味において、乾燥物質の割合は、以下の式:
【数1】
(式中、
乾燥は、乾燥後に残存している物質の重量であり、m含水は乾燥前の藻類抽出物の重量である)
によって算出される。
【0019】
本発明の濃縮藻類抽出物はアルギン酸塩および/またはセルロースを含有しない。したがって、本発明による藻類抽出物は、藻類の細胞壁を破壊し、それらを凝集によって除去した後に得られる、藻類細胞内液を含む。特定の実施形態によれば、本発明の濃縮藻類抽出物は、前記抽出物の重量に対して0~5重量%、特に1~4重量%、より好ましくは2~3重量%のアルギン酸塩および/またはセルロースを含有する。
【0020】
得られる本発明の濃縮抽出物(藻類に由来する)は、特に、アスコフィルム・ノドスム(Ascophyllum nodosum)、ブラダーラック(Fucus vesiculosus)、ラミナリア・ディギタータ(Laminaria digitata)、ラミナリア・ヒペルボレア(Laminaria hyperborea)、ラミナリア・サッカリナ(Laminaria saccharina)、エクロニア・マキシマ(Eklonia maxima)、ホンダワラ種(Sargassum spp.)、およびそれらの混合物から選択されてもよい。特定の実施形態によれば、前記藻類はアスコフィルム・ノドスムである。
【0021】
本発明の濃縮藻類抽出物は、特に、1.5~9、好ましくは2~7、より好ましくは2.5~3のpHを有してもよい。
【0022】
本発明の濃縮藻類抽出物は藻類細胞内液を含む。それは特に、多糖、例えば特に、ラミナリンおよびフカン;遊離および結合した糖;ポリフェノール;マンニトール;成長ホルモン;脂質;タンパク質;アミノ酸;ビタミン;ベタイン;ステロイド;グルクロン酸および無機塩から選択される1種または複数の化合物を含んでもよい。特定の実施形態によれば、本発明の濃縮藻類抽出物は、ラミナリン;フカン;脂質;タンパク質およびポリフェノールを含む。
【0023】
特定の実施形態によれば、本発明の濃縮藻類抽出物は、前記抽出物と、ゲル化剤、増粘剤、植物保護製品、第2の植物および/または藻類抽出物、無機物、界面活性剤、油、防腐剤、ならびにそれらの混合物から選択される少なくとも1つの化合物とを含む組成物中に配合され得る。
【0024】
本発明の濃縮藻類抽出物は、特に、以下に記載される方法によって得られ得る。
【0025】
本発明による濃縮藻類抽出物を調製する方法は、以下の工程:
細胞が破壊するまで藻類を粉砕する工程と、
粉砕した藻類物質を水溶液中に均質化する工程と、
凝集および濾過によってアルギン酸塩およびセルロースを除去する工程と、
任意に、濾液のpHを調整する工程と、
濾液を、6~100%、好ましくは9~70%、より好ましくは12~50%の割合の乾燥物質になるように濃縮する工程と
を含む。
【0026】
有益には、本発明の方法は、例えば4~8時間、50~100℃の温度にて還元剤の存在下での加水分解の工程を含まない。実際には、これにより、藻類の細胞内液の化合物、特に多糖を保存することが可能となる。
【0027】
粉砕する工程は、特に、藻類の細胞壁を破壊することができるので、藻類の細胞内液を放出する。粉砕する工程は、好ましくは、新鮮な藻類で実施される。すなわち、藻類は少なくとも24時間以内に採取される。
【0028】
粉砕した藻類物質を均質化する工程は、特に、粉砕した藻類物質1kg当たり1~2リットルの量の水を加えることによって実施されてもよい。
【0029】
凝集および濾過の工程は、特に、藻類の細胞内液を回収するために藻類の細胞壁の残余物を除去することができる。藻類の細胞壁の残余物は、特に、凝集によって、酸、特に塩酸を粉砕した藻類物質に加えることによって沈殿し得る。本発明の特定の実施形態によれば、酸は、1.5~4、好ましくは2~3.5、より好ましくは2.5~3のpHを得るように加えられる。
【0030】
次いで酸性化した混合物は、40μmより大きいアルギン酸塩およびセルロースの塊を除去するために濾過される。
【0031】
濾液のpHは、任意に、1.5~9、好ましくは2~7、より好ましくは2.5~3のpHになるように酸または塩基を加えることによって調整されてもよい。
【0032】
濾液を濃縮する工程は、特に、逆浸透、水分蒸発、藻類濃縮または遠心分離などの種々の方法で実施されてもよい。
【0033】
逆浸透は、拡散による選択性のプロセスに基づいた膜分離技術である。異なる濃度の2つの藻類抽出物を透水性膜のいずれかの側に置く。圧力が大部分の濃縮藻類抽出物にかけられた場合、大部分の濃縮抽出物に含まれる水の一部は少なくとも濃縮抽出物の方へ移動する。
【0034】
水は、特に、例えばロータリーエバポレーターを使用して減圧下で藻類抽出物を加熱することによって蒸発され得る。加熱は、40~90℃、好ましくは60~80℃で実施されてもよい。
【0035】
藻類濃縮は、特に、本発明による方法の粉砕した藻類物質を均質化する工程において、水を本発明による方法によって得られた藻類懸濁液と置き換えることによって実施され得る。
【0036】
遠心分離は、特に、藻類抽出物を高速で回転する機械における遠心力に供することによって実施され得る。
【0037】
濾液を遠心分離する工程は、好ましくは、水分蒸発によって実施される。
【0038】
本発明による濃縮藻類抽出物は、有益には、与えられる植物の種類およびその濃縮藻類抽出物を使用している間の植物サイクルの期間に応じて多くの用途を有する農業で使用される。
【0039】
本発明の濃縮藻類抽出物は、特に、単独で使用されてもよく、または栄養素、生物刺激組成物もしくは植物保護組成物と組み合わせて使用されてもよい。
【0040】
本発明の濃縮藻類抽出物を使用することができる植物は、農学的に有用な植物、例えば野菜、果物および穀物ならびに観賞植物である。農学的に有用な植物は、セリ科(Apiaceae)、キク科(Asteraceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、アカザ科(Chenopodiaceae)、ヒルガオ科(Convolvulaceae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、マメ科(Fabaceae)、イネ科(Gramineae)、ユリ科(Liliaceae)、タデ科(Polygonaceae)、バラ科(Rosaceae)、ナス科(Solanaceae)、禾本科(Poaceae)およびブドウ科(Vitaceae)を含む群から選択される被子植物である。特定の実施形態によれば、本発明の濃縮藻類抽出物は、トマト、コメ、ダイズ、果樹、ブドウの木、コムギまたはトウモロコシにおいて使用される。
【0041】
このように、本発明の濃縮藻類抽出物を植物の成長を促進するために使用する場合、前記抽出物は、特に、葉面噴霧によって、または土壌もしくは根浸潤への塗布によって塗布される。塗布は、植物の成長の間の全体にわたって週に1回または複数回実施され得る。非常に有益な結果がトマト苗およびトウモロコシ苗において実証された。
【0042】
本発明の濃縮藻類抽出物を、植物発芽を刺激し、および/または鳥忌避効果を提供するために使用する場合、前記抽出物は、特に、植物を植え付ける前の種子または植物が発芽した直後の稚苗に塗布してもよい。種子は、特に、本発明の濃縮藻類抽出物で被覆され得る。被覆は、例えば、種子を前記抽出物で湿潤させ、それらを好ましくは周囲温度にて乾燥させることによって実施されてもよい。塗布は、種子100kg当たり10~120g、好ましくは20~110g、より好ましくは30~105gの量の濃縮藻類抽出物で実施されてもよい。非常に有益な結果がトウモロコシ種子で実証された。
【0043】
本発明の主題である被覆した種子は、特に、以前の段落で記載されるように調製され得る。本発明の濃縮藻類抽出物による種子の被覆により、植物のより迅速な発芽が可能となり、その種子を、被覆していない種子と比べて立枯れ病に対して、より耐性にする。さらに、本発明による被覆した種子は、被覆していない種子と比べて、特にカラス、ハト、ヒバリ、ヤマウズラおよびキジなどの鳥による攻撃を受ける頻度が非常に少なくなる。
【0044】
本発明を、例示目的のみのために与えている以下の実施例を使用して以下により詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】被覆していないトウモロコシ種子、本発明の藻類抽出物で被覆したトウモロコシ種子または実施例4に記載される従来の殺菌剤で被覆したトウモロコシ種子を播種してから3週間後に得たトウモロコシ苗の数の概略図である。
図2】被覆していないトウモロコシ種子、本発明の藻類抽出物で被覆したトウモロコシ種子または実施例5に記載される従来の殺菌剤で被覆したトウモロコシ種子を播種してから3週間後に得たトウモロコシ苗の数の概略図である。
【実施例
【0046】
実施例1:濃縮藻類抽出物の調製
本出願人の会社によってGOACTIVと示されている、5.1%の割合の乾燥物質を有するアスコフィラム・ノドサム(Ascophyllum nodosum)藻類の抽出物を、(ウォーターポンプ)真空下でロータリーエバポレーターにおいて50℃で抽出物を加熱することによる水分蒸発によって乾燥物質の割合が13%になるまで濃縮する。
【0047】
実施例2:トマト苗への濃縮藻類抽出物の塗布
以下の表に示される植物当たりの抽出物の量を、3つの葉の段階(3週間)でトマト苗の葉の上に1週間に1回噴霧する。
【0048】
【表1】
【0049】
このようにトマト苗を同等の量の各抽出物で処理する。
【0050】
処理の5週後、本発明の濃縮藻類抽出物(実施例1)で処理したトマト苗は、濃縮していない藻類抽出物(GOACTIV)で処理した苗より背が高く、茂っている。したがって、塗布される同等の量の抽出物に関して、本発明の濃縮藻類抽出物は、より希釈した抽出物よりトマト苗の成長を促進するのに効果的である。
【0051】
実施例3:濃縮藻類抽出物によるトウモロコシ種子の被覆
100kgのトウモロコシ種子を、ロータリーミキサーにおいて、実施例1で調製した100gの濃縮藻類抽出物で湿潤させる。次いで種子を20~25℃にて24時間静置して乾燥させる。
【0052】
実施例4:トウモロコシ苗の発芽に対する種子の被覆の効果
実施例3で調製した被覆したトウモロコシ種子を20mのプロットに播種する。処理していないトウモロコシ種子を用いて対照を実施する。25g/lのフルジオキソニルおよび9.7g/lのメタラキシル-Mを含む従来の殺菌剤で被覆したトウモロコシ種子を用いて比較試験を実施する。
【0053】
播種してから3週後、トウモロコシ苗の数を数える。結果を図1に示す。トウモロコシ苗の発芽は、種子が実施例1に従って調製した濃縮藻類抽出物で被覆した場合、被覆していない種子または殺菌剤で被覆した種子と比べて良好であることが観察される。実施例4を再現し、同様の結果を得た。
【0054】
実施例5:種子の被覆による鳥忌避効果
実施例4による実験の1つの間、畑を特にカラスによる積極的な攻撃を受けやすくなるようにした。鳥は土壌に埋められた種子を攻撃し、これにより、植え付けた種子の数に対する健常なトウモロコシ苗の数の減少が起こる。
【0055】
結果を図2に示し、y軸の値を、苗の理論的な数に対する健常なトウモロコシ苗の割合として表す。対照のプロットまたは殺菌剤で処理したプロットと、種子を実施例1の濃縮藻類抽出物で被覆したプロットとの間で攻撃の程度において有意差を観察した。このように、実施例1の濃縮藻類抽出物で処理した種子を播種したプロットは比較的鳥による攻撃を免れた。
【0056】
したがって本発明の濃縮藻類抽出物は鳥忌避効果を有する。実施例5を再現し、同様の結果を得た。
図1
図2