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特許6997623オリゴヌクレオチドを利用して細胞内の核酸を編集するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチドを利用して細胞内の核酸を編集するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20220128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
C12N15/09 100
A61K48/00 ZNA
A61K31/7088
A61P1/00
A61P3/06
A61P3/08
A61P7/00
A61P9/00
A61P11/00
A61P13/12
A61P13/02
A61P21/04
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/14
A61P27/02
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P3/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017550092
(86)(22)【出願日】2015-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 US2015065348
(87)【国際公開番号】W WO2016094845
(87)【国際公開日】2016-06-16
【審査請求日】2018-12-11
(31)【優先権主張番号】62/252,693
(32)【優先日】2015-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/091,027
(32)【優先日】2014-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/141,077
(32)【優先日】2015-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/180,175
(32)【優先日】2015-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517204357
【氏名又は名称】ウルフ、トッド エム.
(73)【特許権者】
【識別番号】517203877
【氏名又は名称】レベデブ、アレクサンドル
(73)【特許権者】
【識別番号】517203888
【氏名又は名称】ホグレフ、リチャード アイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ、トッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】レベデブ、アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ホグレフ、リチャード アイ.
【審査官】池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/144951(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/139008(WO,A1)
【文献】Nucleic Acid Therapeutics,2012年,vol.22, no.6,p.405-413
【文献】Nucleic Acids Research,2011年,vol.39, no.11,p.4783-4794
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患を引き起こさないアミノ酸を生じる、標的核酸内の変異コドンを修飾するための方法に用いられる医薬組成物であって、該方法は、前記変異コドンを有するかもしくは有する疑いのある個体に、一本鎖の化学修飾オリゴヌクレオチドを投与するステップを含み、前記オリゴヌクレオチドが、標的配列に対する1つ以上のミスマッチを例外として前記ゲノム配列内の標的配列に相補的であり、前記オリゴヌクレオチドの前記修飾が、各末端上に3個のホスホロチオエートを有するオリゴヌクレオチドと比較してヌクレアーゼ安定性を増加させることによって、編集の効率を上昇させ、
前記オリゴクレオチドは下記の修飾パターン
3’8個の2’高親和性ヌクレオチドアーム及びホスホロチオエート末端ブロック;
5’に非ホスホロチオエート末端ブロック(メチホスホネート)、3’に3個のs末端ブロック;および
5’メチルCにより置換された複数のC
の1つを含む方法である、
前記化学修飾オリゴヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項2】
タンパク質をコードする核酸を修飾して、前記タンパク質の活性を調整するための方法に用いられる医薬組成物であって、該方法は、
前記ゲノム配列の編集を補助する追加の外因性タンパク質または核酸を用いずに、個体に、一本鎖の化学修飾オリゴヌクレオチドを投与するステップを含み、前記オリゴヌクレオチドが、標的配列に対する1つ以上のミスマッチを例外として前記ゲノム配列内の標的配列に相補的であり、前記オリゴヌクレオチドの前記修飾が、各末端上に3個のホスホロチオエートを有するオリゴヌクレオチドと比較してヌクレアーゼ安定性を増加させることによって、編集の効率を上昇させ、前記タンパク質の活性が調整され、
前記オリゴクレオチドは下記修飾パターン
3’8個の2’高親和性ヌクレオチドアーム及びホスホロチオエート末端ブロック;
5’に非ホスホロチオエート末端ブロック(メチホスホネート)、3’に3個のs末端ブロック;および
5’メチルCにより置換された複数のC
の1つを含む方法である、
前記化学修飾オリゴヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項3】
変異タンパク質をコードする核酸を修飾して、その疾患による影響を抑制するための方法に用いられる医薬組成物であって、該方法は、個体に、一本鎖の化学修飾オリゴヌクレオチドを投与するステップを含み、前記オリゴヌクレオチドが、標的配列に対する1つ以上のミスマッチを例外として前記ゲノム配列内の標的配列に相補的であり、前記オリゴヌクレオチドの前記修飾が、各末端上に3個のホスホロチオエートを有するオリゴヌクレオチドと比較してヌクレアーゼ安定性を増加させることによって、編集の効率を上昇させ、前記変異タンパク質の疾患を引き起こす作用が、減少するか、抑制されるか、または排除され、
前記オリゴクレオチドは下記修飾パターン
3’8個の2’高親和性ヌクレオチドアーム及びホスホロチオエート末端ブロック;
5’に非ホスホロチオエート末端ブロック(メチホスホネート)、3’に3個のs末端ブロック;および
5’メチルsCにより置換された複数のC
の1つを含む方法である、
前記化学修飾オリゴヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項4】
前記疾患が、ベータサラセミア、嚢胞性線維症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、またはハーラー症候群である、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医学的状態が、アルツハイマー病、乳がん素因変異、嚢胞性線維症デルタ508変異、2型糖尿病(標的遺伝子PTP-1B)、家族性自律神経障害、家族性高コレステロール血症(PCSK9)、卵巣がん素因変異、鎌状赤血球症、および脊髄性筋萎縮症から成る群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医学的状態が、2型糖尿病であり、前記編集オリゴヌクレオチドが、前記PTP-1B遺伝子を標的にする、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医学的状態が、アデノシンデアミナーゼ欠損症、アルファ1アンチトリプシン欠損症、アミロイド病、ベッカー型筋ジストロフィー、カナバン病、シャルコー・マリー・トゥース病、嚢胞性線維症、1型糖尿病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ファブリー病、家族性大腸腺腫症、家族性アミロイド心筋症、家族性アミロイド多発ニューロパチー、フリートライヒ運動失調症、ゴーシェ病I型、ゴーシェ病II、糖原貯蔵障害II型、GM2ガングリオシドーシス、血色素症、血友病A、血友病B、血友病C、ヘキソサミニダーゼA欠損症、フェニルケトン尿症、多嚢胞性腎疾患、プリオン病、老人性全身性アミロイドーシス、スミス・レムリ・オピッツ症候群、ウィルソン病、および遺伝性盲目から成る群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
以下の出願は、2015年11月9日出願の仮特許出願第62/252,693号、2015年6月16日出願の同第62/180,175号、2015年3月31日出願の同第62/141,077号、および2014年12月12日出願の同第62/091,027号の優先権を主張するものである。
連邦政府資金による研究開発の記載
該当なし
共同研究契約の当事者の名称
該当なし
コンパクトディスクで提出された資料の参照による援用
該当なし
【0002】
本発明は、ヒトおよび動物の治療学(インビボおよびエクスビボの治療用途を含む)、美容手技、前臨床開発、基礎研究の分野における用途のため、また、農業における備蓄食糧の改善、畜産における望ましい特徴を与えるための動物(農業用動物および他の家畜化された動物)の品種改良、およびエネルギー生産のために、ゲノムまたはRNAの配列を修飾するオリゴヌクレオチドを使用することに関する。
【背景技術】
【0003】
過去10年間にわたるオリゴヌクレオチド化学およびインビボ核酸送達技術の進歩は、DNAおよびRNA修飾療法の潜在性を開いてきた。多数の臨床治験における肯定的なデータ、および米国における初めての全身用アンチセンス薬、ミポメルセン(Isis Pharmaceuticals,San Diego,CA)の認可は、オリゴヌクレオチド薬の臨床有用性をさらに実証している。
【0004】
RNAレベルの調整によりタンパク質発現を阻害するために治療用オリゴヌクレオチドを使用することの臨床的利益は実証されているが、核酸編集または修復手法の臨床的潜在性はおそらく、これらの阻害手法の利益を上回るであろう(T.M.Woolf,et al.,PNAS Vol.92:8298-8302,1995、およびT.M.Woolf,Nat.Biotech Vol.16:341-344,1998)。堅固な編集技術プラットフォームは、変異DNAの部位特異的な化学的補正、保護的アレルの創生、または、研究、治療、美容、もしくは農業目的で望ましい、生物全体、細胞、もしくは組織のゲノム内の変化を別法で創生することを可能にする。そのようなプラットフォームは、遺伝子点変異および他の遺伝子病変により生じる広範な疾患のための治療介入および潜在的な治療法として、幅広い有用性を有するであろう。
【0005】
核酸を用いた配列編集には、2つの一般的機構が存在する。それらは、化学修飾、および標的への核酸配列の組み込みである。化学修飾機構では、編集オリゴヌクレオチドは、標的ヌクレオチドのコーディングが変化するような標的ヌクレオチドの化学修飾を引き起こす。第2の一般的機構は、1個以上のオリゴヌクレオチドを標的RNAまたはDNA配列に組み込むことによる。この機構では、オリゴヌクレオチドは、「ドナー」DNAと称されることが多い。この機構は、漠然と相同組換え(HR)または相同指向修復と称されるが、遺伝子変換、トランススプライシング、または鎖侵入、その後の核酸合成のプライミングなどの、他の機構を含む場合もある。
【0006】
次世代シーケンシングおよびSNP分析に推進された、遺伝経路および分子経路に関する情報の急増は、一遺伝子性および多遺伝子性の疾患を治療するための治療的編集に関する多数の標的を提供している。これらの疾患の例としては、家族性アルツハイマー病、高血圧、高コレステロール、HIV(CCR5変異を誘導することによる)、鎌状赤血球貧血、肥満、糖尿病、いくつかの形態の筋ジストロフィー、および多くの先天性代謝異常が挙げられる。DNA編集修復の治療的潜在性は、有望なデータによって実証されてきた。操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(Sangamo Biosciences,Inc.,Richmond,CA)は、HIVの治療に使用されており、エクソンスキッピングアンチセンスモルホリノ(Sarepta Therapeutics,Inc.,Cambridge,MA)および2’-O-メチルホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(Prosensa,Leiden,The Netherlands)は、ある特定の形態のデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療に使用されている。加えて、編集効率の向上に対するCRISPR/Cas-9遺伝子編集手法は、治療用途におけるいくつかの研究成果および投資を生み出している。
【0007】
治療的なmRNA編集は、Woolfらによって脊椎動物モデル系で初めて示された(PNAS Vol.92:8298-8302,1995)。この系では、デュシェンヌ型筋ジストロフィーmRNAにおける標的となる終止コドン変異が、標的部位における編集アンチセンスRNAとの二重鎖形成によって修飾された。Woolfらによる研究は、特異性が限定された編集を誘導した。
【0008】
Montielら(PNAS 110(45):18285-90,2013)は、嚢胞性線維症のmRNA修復の関連機構を実証し、哺乳動物細胞において20%の補正が達成された。これは治療的編集の原理を示すことに成功したが、Montielの方法は、臨床用途への適用が容易ではない。この主要な理由は、Montielらの方法が、修飾遺伝子、mRNA、またはタンパク質を、遺伝子療法、mRNA療法、または他の方法によって細胞内に導入することを必要とすることである。このため、遺伝子療法およびmRNA療法に認められる既知の不利点のすべてが、Montielの治療的編集方法にも関連する。
【0009】
別の手法において、Singerら(Nucleic Acids Research,27(24):38-45,1999)は、RecAタンパク質に補助され、標的鎖にハイブリダイズした、アルキル化オリゴマーを有するDNAを標的にした。この研究では、反応性ナイトロジェンマスタード基が、アミノ-プロピルリンカーを介して、侵入オリゴヌクレオチドの内部dU残基の5位に接合された。このオリゴヌクレオチドの最大50%が、標的DNA配列と架橋することが観察され、標的配列の最大2%の変異が、1回の処置サイクル後の哺乳動物細胞への複合体のトランスフェクションに際して確認された。しかしながら、侵入オリゴヌクレオチドを標的DNAに架橋することは、典型的に、DNAのある領域にわたって分布する様々な変異をもたらし、複製の阻害をもたらし得る。オリゴヌクレオチドに対する反応性の塩基修飾性化学構造の接合、および標的dsDNA配列の配列特異性修飾が達成されている(F.Nagatsugi,et al.Nucleic Acids Research,Vol.31(6):e31 DOI:10.1093/nar/gng031,2003)。この研究では、2-アミノ-6-ビニルプリンヌクレオシド類似体が、三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)に合成的に組み込まれた。このTFOは、緩衝液中で標的DNAプラスミドと反応し、標的DNA配列の最大25~40%の修飾が達成された。この架橋されたTFOとDNA標的との混合物は、次いで、細胞内にトランスフェクトされ、変異原性のレベルが判定された。この研究は、標的塩基に対するいくらかの特異性、そして低いが有意な効率(1回の処置で0.3%)と共に、標的配列の部位特異性を実証した。しかしながら、この方法は、架橋をもたらすため、Singerらと同じ不利点を有する。
【0010】
Sasakiら(J.Am.Chem.Soc.,126(29):8864-8865,2004;米国特許第7,495,095号も参照されたい)は、一酸化窒素(NO)をDNA配列の特異的なシトシン部位に送達し、続いてシトシン塩基を特異的に脱アミノ化するための方法を開発した。この方法では、6-チオグアノシン含有オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)のニトロソ化が、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミンを用いて行われた。結果として生じたS-ニトロソチオグアニンは、次いで、鎖間のNO移動反応、続いて標的部位における脱アミノ化を行うために使用された。dmCからdTへの42%の形質転換比が観察されたが、標的部位にミスマッチのdT、dA、またはdGを有する相補的なODNでは、NO移動反応(および脱アミノ化)は観察されなかった。この技術は、反応の発生を可能にするための非生理学的なpH、および長いインキュベーション時間を必要としたが、これは治療介入に必ずしも適用可能ではないであろう。加えて、化学反応性のオリゴヌクレオチドによる方略は、細胞内で効率的にされたとしても、複雑な化学合成を必要とし、DNAを含む非標的細胞成分と反応性であり得、これは理想的ではない。それらはまた、塩基変化毎に異なる標的化学構造を必要とし、トランスバージョンではなくトランジションにのみ好適であり、これにより、それらの全体的な有用性が限定される。さらに、この方法は、欠失および挿入を修復せず、これは、何らかの変異を補正することに対するそれらの一般的な適用形態をさらに限定するものである。とはいえ、編集に対するこの化学修飾手法は、編集を促進するために細胞に外因性タンパク質を添加することを必要とせず、原理上は、より良好な組織分布および細胞取り込みを可能にし得る、高度に修飾されたオリゴヌクレオチド骨格と共に使用され得るという利点を有する。
【0011】
1つの研究グループは、1990年代にキメラオリゴヌクレオチド構築物を用いた編集を達成し、次いで2000年代に一本鎖オリゴヌクレオチドを用いた編集を達成した(Brachman and Kmiec,DNA Repair 4:445-457,2005)。この編集手法では、所望の編集された配列が編集オリゴヌクレオチド内に含有され、この配列が、ゲノム内の既存の配列に置き換わった(図1)。キメラオリゴヌクレオチド構築物を用いて1990年代に報告された編集の効率は不定であり、この手法は、相当の投資にもかかわらず臨床適用に成功しなかった。一本鎖編集オリゴヌクレオチドを用いて同じ研究グループにより行われた後続研究は、一貫した再現可能な編集をもたらしたが、効率は比較的低かった(約0.1~1%)。最も活性な一本鎖編集オリゴヌクレオチドは未修飾のDNA内部領域を有し、これが、細胞内での急速なヌクレアーゼ分解をもたらし、また、Toll様受容体活性化をもたらしたと思われる。編集効率は、以下の手法によって上昇した:
1. 3個のホスホロチオエート残基を編集オリゴヌクレオチドの各端部に付加すること(しかしながら、細胞内での急速なエンドヌクレアーゼ消化に依然として影響されやすい場合の結果として生じる編集オリゴヌクレオチド、そしてホスホロチオエートはそれらの毒性を増加させる);
2. 細胞がS期の間に編集オリゴヌクレオチドで処置されるように細胞周期を同調させること。残念ながら、これは編集効率をある程度上昇させたが、この手法は煩雑であり、必ずしもインビボ治療に実用的とは限らない;そして
3. 複製フォークの進行を減速させ、かつ/または細胞内でDNA鎖切断を誘導する試薬で、細胞を処置し、これにより細胞内のDNA修復の増加をもたらすこと(しかしながら、これは編集効率をある程度上昇させたが、この手法も煩雑であり、必ずしもインビボ治療に実用的とは限らない。
4. PNAクランプ、すなわち標的編集の近傍に結合する鎖侵入一本鎖PNAを付加すること(Bahal et al.Current Gene Therapy Vol.14(5):331-42(2014)、Chin et al.PNAS Vol 105(36):13514-13519(2008)、Rogers et al.PNAS Vol.99(26):16695-16700(2002)、米国特許第8,309,356号。
【0012】
これらの改善点は、インビトロの細胞系モデルにおいて編集効率を最大およそ5%上昇させたが、各手法は上述の制限を有した(Kmiec,Surgical Oncology 24:95-99,2015)。
【0013】
より近年では、CRISPR-Cas9系が、ゲノム編集の効率を向上させるために使用されている。しかしながら、CRISPR-Cas9系は、オフターゲット修飾を引き起こし、潜在的に危険かつ望ましくない染色体内の一本鎖および二本鎖切断を必要とすることが多い。この系はまた、外来性の細菌タンパク質が発現されるか、または機能的な形態で細胞に送達されることを厳密に必要とする。この細胞タンパク質すなわちCas9は免疫原性であり、したがって治療用途にあまり望ましくない。加えて、タンパク質の発現または細胞へのその送達は、臨床開発における重要課題である。1つの配列から別の規定の配列への特異的変更を行うために、CRISPR-Cas9系は、Cas9に加えて、70ヌクレオチドを超えるgRNAと、ゲノム内の挿入のための1個または2個の追加のオリゴヌクレオチドとを必要とする。このように、CRISPR/Cas9編集系は高度に複雑であり、この複雑性が臨床開発における課題を生み出す。
【0014】
その結果、一般に、そして特により短い編集オリゴヌクレオチドでより効率的に機能し、かつ、作用の方法として標的核酸の核酸塩基に編集オリゴヌクレオチドを架橋すること;修復をもたらすために標的核酸に切断を導入すること;送達ビヒクル;免疫原性タンパク質または未修飾の不安定RNAを細胞内に送達すること;ならびにベクター配列を標的核酸および/または細胞に導入することを厳密に必要としない、核酸編集化合物が、生物医学およびバイオテクノロジー産業で必要とされている。加えて、これらの核酸編集化合物は、ほとんどの点変異ならびに小さな挿入および欠失を修復することができ、薬物動態を向上させる化学修飾を含有し、編集活性を実質的に低減させることなく体内分布および細胞内ヌクレアーゼ安定性を有し、任意選択により、Toll様受容体の活性化を低減させ、かつ、標的DNA配列を、そしていくつかの実施形態ではRNA配列を編集することにより、潜在する遺伝的病因を補正することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、配列編集のために、ゲノムのDNA鎖のうちの1本またはRNAに相補的な一本鎖オリゴヌクレオチドを利用する方法である。本方法は、該ゲノム配列の編集を補助する外因性タンパク質または核酸を厳密に必要とすることなく、細胞または生物に、一本鎖オリゴヌクレオチドを導入するステップを含む。ある特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、標的配列に対する、挿入または欠失を含む1つ以上のミスマッチを例外として、標的配列に実質的に相補的である。そのようなオリゴヌクレオチドは、本明細書において、オリゴヌクレオチド、本発明のオリゴヌクレオチド、または編集オリゴヌクレオチドと称され得る。ある特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ゲノム内の標的配列に実質的に相補的であり、かつ、標的配列上のヌクレオチドと反応するか、またはそれとの反応を促進する、1個以上の化学修飾を含む。そのような反応の例としては、アルキル化、アセチル化、架橋、アミノ化、脱アミノ化、遊離(非共有結合)反応性化合物の生成が挙げられる。そのような化学修飾の一例はニトロソアミンである。そのようなオリゴヌクレオチドも、本明細書において、オリゴヌクレオチド、本発明のオリゴヌクレオチド、または編集オリゴヌクレオチドと称され得る。オリゴヌクレオチドは、好ましくは、1個以上の化学修飾を有し得る。この/これらの化学修飾(複数可)修飾(複数可)は、1個以上の骨格修飾(複数可)、糖修飾(複数可)、および/または核酸塩基修飾(複数可)を含み得る。オリゴヌクレオチドは、以下に記載されるように、ゲノム内の標的配列に相補的であり、ミスマッチを有する場合がある。修飾は、未修飾オリゴヌクレオチドと比較して、または各末端上に3個のホスホロチオエートを有するオリゴヌクレオチドと比較してヌクレアーゼ安定性を増加させることによって、編集の効率を上昇させ得る。
【0016】
所望の編集は、トランジションもしくはトランスバージョン、または欠失もしくは挿入であり得る。一実施形態において、編集オリゴヌクレオチド配列は、編集が完了した後に所望される配列である。特定の理論または機構に束縛されることを望むものではないが、編集オリゴヌクレオチドは、転写または複製などの細胞プロセス中に標的配列が反対側のゲノム鎖から分離するとき、部分的に相補的な標的ゲノムDNA配列に結合する。いくつかの場合では、二本鎖ゲノムDNA標的に対する編集オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、標的DNAの「ブリージング」または過渡的な融解の間に起こり得る。編集オリゴヌクレオチドと標的ゲノムDNA鎖との間にヘテロ二重鎖が形成されたら、不完全な相補性の領域が、細胞DNA修復によって補正される。編集オリゴヌクレオチドが修復のための「補正」鋳型として使用される場合、所望の編集が、標的ゲノムDNA鎖またはRNA鎖に組み込まれる。同様に細胞内で起こり得る第2の機構において、編集オリゴヌクレオチドは、DNAなどの標的核酸に相同組換え(HR)によって組み込まれるか、または、編集オリゴヌクレオチド配列が標的DNAまたはRNAに組み込まれることをもたらす他のプロセスによって組み込まれる。
【0017】
本発明の別の態様は、標的ヌクレオチドのコーディングが変化するような標的ヌクレオチドの部位特異的化学修飾を引き起こす、編集オリゴヌクレオチドを提供する。これらの編集オリゴヌクレオチドは、
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

の構造を含み得、式中、各オリゴヌクレオチドは、該標的核酸に実質的に相補的であり、約10~約50または10~約200ヌクレオチドであり、Xは、H、OH、ハロゲン、R、SR、またはORであり、ハロゲンは、Cl、F、Br、またはIであり、Rは、-CH、-CHCH、または-CHOCHである。標的核酸は、RNAまたはDNAであり得る。標的がRNAである場合、それはmRNAであることが好ましい。
【0018】
一実施形態において、編集オリゴヌクレオチドの各オリゴヌクレオチドは、次のヌクレオチド間結合または糖修飾、ホスホジエアテル(phosphodieater)、ホスホトリエステル(アルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール)、メチルホスホネート、ボラノホスフェート、モルホリノ、非架橋ジアルキルホスホロアミデート、架橋3’-NH-もしくは5’-NH-、架橋3’-S-もしくは5’-S-または2’修飾糖、あるいは図20および22に列記される他の修飾のうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
他の実施形態は、薬学的担体または送達ビヒクル、および編集オリゴヌクレオチドのうちの1つ以上を含む、薬学的組成物(該担体は、水、食塩水、または生理緩衝食塩水であり得る)、ならびに、編集オリゴヌクレオチドのうちの1つ以上を含有する細胞を含む。
【0020】
本発明の別の態様は、医学的状態の治療を必要とする個体の健康を改善するか、あるいは、医学的状態の治療を必要とする個体における該状態を低減させるか、または排除する方法であって、少なくとも1つの編集オリゴヌクレオチドを含有する組成物を個体に投与することを含む、方法である。投与は、筋肉内注射、硝子体内、腹腔内注射、皮下注射静脈内注射、経皮送達、エアロゾル吸入、直腸坐剤、または膣坐剤であり得る。治療され得る医学的状態としては、例えば、アデノシンデアミナーゼ欠損症、アルファ1アンチトリプシン欠損症、アルツハイマー病、アミロイド病、ベッカー型筋ジストロフィー、乳がん素因変異、カナバン病、シャルコー・マリー・トゥース病、嚢胞性線維症、1型糖尿病、2型糖尿病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ファブリー病、遺伝性高チロシン血症I型(HTI)、家族性大腸腺腫症、家族性アミロイド心筋症、家族性アミロイド多発ニューロパチー、家族性自律神経障害、家族性高コレステロール血症、フリートライヒ運動失調症、ゴーシェ病I型、ゴーシェ病II、糖原貯蔵障害II型、GM2ガングリオシドーシス、血色素症、血友病A、血友病B、血友病C、ヘキソサミニダーゼA欠損症、卵巣がん素因変異、肥満、フェニルケトン尿症、多嚢胞性腎疾患、プリオン病、老人性全身性アミロイドーシス、鎌状赤血球症、スミス・レムリ・オピッツ症候群、脊髄性筋萎縮症、ウィルソン病、および遺伝性盲目が挙げられる。他の疾患には、図23に列記される標的を含め、http://www.omim.org/のOnline Mendelian Inheritance in Man(商標登録)An Online Catalog of Human Genes and Genetic Disorders(2015年3月2日更新)に列記される、点変異または小さな欠失もしくは挿入、あるいは、それらの点変異または小さな欠失もしくは挿入によって補正され得る疾患が含まれる。
【0021】
本発明の他の態様は、少なくとも1つの編集オリゴヌクレオチドを、その投与によって治療され得る状態を有する疑いのある個体に投与する方法を含み、その状態は、標的核酸内の変異ヌクレオチドを野生型ヌクレオチドに復帰させること;標的核酸内の変異コドンの非変異ヌクレオチドを修飾して野生型コドンを生成すること;標的核酸内の中途終止コドンをリードスルー非野生型コドンに変換すること;または、標的核酸内の変異コドンを修飾して、疾患を引き起こさないアミノ酸をもたらし、また、いくつかのヌクレオチド(例えば、いくつかの場合では、約10個未満、約5個未満、または3個未満)を挿入または欠失させる編集をもたらす、非野生型コドンを生成すること、によって、低減するか、防止されるか、または排除され得る。これらの方法において、編集オリゴヌクレオチドで治療され得る状態または医学的状態には、例えば、ベータサラセミア、嚢胞性線維症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、およびハーラー症候群が含まれる。
【0022】
本発明の別の態様は、タンパク質もしくは機能性RNAをコードする核酸を修飾するか、または、遺伝子の転写レベルを制御して、該タンパク質もしくはRNAの活性を調整するか、または、変異タンパク質を修飾して、その疾患を引き起こす情動を抑制するための方法であって、細胞または個体に、少なくとも1つの編集オリゴヌクレオチドを投与するステップを含む、方法である。これらの方法において、編集のための標的核酸はDNAである。
【0023】
本発明の編集オリゴヌクレオチドは、以下を含む機能のうちの1つ以上を実行し得る:変異塩基から、野生型DNAまたはRNA配列のコーディング特異性を有する塩基への、正確な復帰;変異コドンを変化させて、疾患を引き起こさないアミノ酸を生じる非野生型をコードすること;終止コドンを、非野生型のリードスルーコドン、すなわち標的タンパク質の活性または部分的活性を依然として許容するコドンにする修飾;野生型コドンまたは非疾患アミノ酸コドンを生じる、変異コドンの非変異塩基を変化させること;タンパク質の核酸配列を変化させて、そのタンパク質のあるドメインの活性を増加または減少させる(もしくは排除する)こと;RNAまたはDNAの配列を変化させて、疾患を防ぐことで知られるアレルを生成すること;変異遺伝子の疾患を引き起こす作用を抑制する、標的変異タンパク質内にある変異または疾患異型コドン以外の部位を変化させること;変異遺伝子の疾患を引き起こす作用を抑制する、遺伝子もしくはRNA内にある変異または疾患異型以外の部位を変化させること(第2部位サプレッサー);病的状態が低減されるように、疾患関連遺伝子の発現を調整する、遺伝子のプロモーター、エンハンサー、またはサイレンシング領域を変化させること(環境の変化に対する遺伝子発現の応答の上方もしくは下方の制御または調整);標的配列のエピジェネティック状態を変化させる、DNA内の糖のメチル化、ならびに/あるいは、スプライス部位配列をDNAもしくはRNAレベルで変化させて、疾患状態を治療するスプライシングパターンに影響を及ぼすこと。
【0024】
他の実施形態は、可逆的に電荷を中和するホスホトリエステル骨格修飾を有する編集オリゴヌクレオチドを含む。これらの修飾は、オリゴヌクレオチドが標的細胞の細胞質に移動する際の改善された送達およびヌクレアーゼ安定性をオリゴヌクレオチドに与える利点を有する。これは、編集オリゴヌクレオチドがミスマッチ修復を使用するとき、中心的な編集領域において好ましい場合があり、また、自己送達性編集オリゴヌクレオチドを使用するときに特に有用となり得る。自己送達性オリゴヌクレオチドとは、送達ビヒクルなしで細胞の内側に効率的に侵入する化学構造、例えば、Gal-NAC接合オリゴヌクレオチド、親油性基接合編集オリゴヌクレオチド(米国特許出願第20120065243 A1号)、または、ホスホロチオエート尾部を有するか、さもなければ約8個以上のホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチド(米国特許出願第20120065243 A1号)などを指す。それは、ヌクレアーゼに富むエンド-リソソーム経路を生き延びなければならない]。標的細胞の細胞質内に入ると、細胞のエステラーゼによって修飾が除去され、細胞の相同組換えおよびミスマッチ修復機構によってより良好に認識される、天然またはより天然の構造を備える、編集オリゴヌクレオチドが遊離する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】Brachman,Erin E.およびEric B.Kmiecによって以前に説明された、編集機構の概略図である。
図2】編集有効性を百分率で示す、表1に提示されるオリゴヌクレオチドのいくつかからのデータを示すものである。Gen 3Aは、オリゴヌクレオチド100013番および100014番であり、Gen 3Bは、オリゴヌクレオチド100015番および100016番であり、Gen 3Cは、オリゴヌクレオチド100017番および100018番であり、Gen 1は、オリゴヌクレオチド100003番および100004番であり、Gen 2は、オリゴヌクレオチド100005番および100006番である。
図3】アデノシンからイノシンへの変換のための2’-デオキシウリジン-NOC-18接合体を含む編集オリゴヌクレオチドの合成、(A)5-カルボキシビニル-2’-デオキシウリジン残基を含有するオリゴヌクレオチド、(B)1-ヒドロキシ-2-オキソ-3,3-ビス(2-アミノエチル)-1-トリアゼン(NOC-18)、および(C)2’-デオキシウリジン-NOC-18接合体。
図4】5-(4,4’-ジメトキシトリチル)-ペンタン酸エチルエステル3-ホスホラミダイトの合成。(A)3,5-ビス-O,O-(tert-ブチルジメチルシリル)ペンタン酸の調製、(B)3,5-ビス-O,O-(tert-ブチルジメチルシリル)ペンタン酸エチルエステルの調製、(C)3-ヒドロキシ-5-(4,4’-ジメトキシトリチル)-ペンタン酸エチルエステルの調製、および(D)5-(4,4’-ジメトキシトリチル)-ペンタン酸エチルエステル3-ホスホラミダイトの調製。
図5】内部ペンタン酸残基のカルボン酸基を含有するオリゴヌクレオチドに対するNOC-18の接合。
図6】N-イソブチリル-7-デアザ-7-アミノメチル-2’-デオキシグアノシンの合成。(A)9-[3’,5’,N-トリ(tert-ブチル-ジメチルシリル)-β-D-2’-デオキシリボフラノシル]-7-デアザ-7-カルバミド-6-クロロプリンの調製、(B)9-β-D-2’-デオキシリボフラノシル-7-デアザ-7-カルバミド-6-クロロプリンの調製、(C)7-デアザ-7-カルバミド-2’-デオキシグアノシンの調製、(D)7-デアザ-7-カルバミド-N-イソブチリル-2’-デオキシグアノシンの調製、および(E)7-デアザ-7-アミノメチル-N-イソブチリル-2’-デオキシグアノシンの調製。
図7】5’-ジメトキシトリチル-N-イソブチリル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシグアノシン3’-ホスホラミダイトの合成。(A)5’-ジメトキシトリチル-N-イソブチリル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’デオキシグアノシンの調製、および(B)および5’-ジメトキシトリチル-N-イソブチリル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシグアノシン3’-ホスホラミダイトの調製。
図8】1-(4,4-ジメトキシトリチル)-2-d2-トリフルオロアセトアミド]エチル-3-ホスホラミダイトの合成。(A)2,2,2-トリフルオロ-N-[4-ヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)ブチル]アセトアミドの調製、(B)2,2,2-トリフルオロ-N-[4-ジメトキシトリチル-3-(ヒドロキシメチル)ブチル]アセトアミドの調製、および(C)1-(4,4-ジメトキシトリチル)-2-[2-トリフルオロアセトアミド]エチル-3-ホスホラミダイトの調製。
図9】2,2,2-トリフルオロ-N-(2,2,5-トリオキソオキサチオラン-4-イル)アセトアミドの合成。
図10】一級アミノ基を含むオリゴヌクレオチドに対する2,2,2-トリフルオロ-N-(2,2,5-トリオキソオキサチオラン-4-イル)アセトアミドの接合。
図11】GからO-Me-Gへの変換のための2-デオキシシチジン-ニトロソアルキル接合体を含むオリゴヌクレオチドの合成。5’-ジメトキシトリチル-5-(E)-(3-トリフルオロアセトアミドアリル)-N-ホルムアミジン-2’-デオキシシチジン(A)の調製、および5’-ジメトキシトリチル-5-(E)-(3-トリフルオロアセトアミドアリル)-N-ホルムアミジン-2’-デオキシシチジン3’-ホスホラミダイト(B)の調製。
図12】4-{[メチル(ニトロソ)アミノ]メトキシ}-4-オキソ-ブタン酸のN-ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステルの合成。
図13】一級アミノ基を含むオリゴヌクレオチドに対する4-{[メチル(ニトロソ)アミノ]メトキシ}-4-オキソ-ブタン酸のNHSエステルの接合。
図14】UからO-Me-Uへの変換のための2’-デオキシアデノシン-ニトロソ-N-メチル接合体を含む編集オリゴヌクレオチドの合成。(A)7-デアザ-7-メトキシカルボニル-N-ベンゾイル-2’-デオキシアデノシンの調製、(B)7-デアザ-7-アミノメチル-N-ベンゾイル-2’-デオキシアデノシンの調製、(C)5’-ジメトキシトリチル-N-ベンゾイル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシアデノシンの調製、および(D)5’-ジメトキシトリチル-N-ベンゾイル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシアデノシン3’-ホスホラミダイトの調製。
図15】一級アミノ基を含有する修飾オリゴヌクレオチドに対する4-{[メチル(ニトロソ)アミノ]メトキシ}-4-オキソ-ブタン酸のNHSエステルの接合。
図16】ニトロソアミンメチル化基を含有する編集オリゴヌクレオチドを使用した、mRNAにおけるUからO-Me-Uへの変換。
図17】ニトロソアミンメチル化基を含有する編集オリゴヌクレオチドを使用した、mRNAにおけるGからO-Me-Gへの変換。
図18】亜硫酸水素塩生成基を含有する編集オリゴヌクレオチドを使用した、mRNAにおけるCからUへの変換。
図19】標的核酸塩基を化学修飾することによって作用する編集オリゴヌクレオチドの実施形態の構成要素(大きな三角形はピリミジンを表し、より小さな三角形はプリンを表す)。
図20】骨格修飾の例示的一覧
図21】核酸塩基修飾の例示的一覧
図22】糖修飾の例示的一覧
図23】本発明のオリゴヌクレオチドで治療することのできる疾患および障害の例示的一覧。
図24】代表的な疾患および障害に関連する遺伝子を標的にする編集オリゴヌクレオチドの例示的一覧。アミノ酸位置は、標的配列との比較から明らかであるように、シグナルペプチドの始点または成熟タンパク質の始点から付番されている。「編集の主要な結果」は、一般的な標的変異の成功裏の編集または他の所望の編集の後にコードされる、結果として生じるアミノ酸である。編集部位は、記載される場合、小文字の配列で示される。「鎖」は、センスとして転写された配列に関するものである。
図25】任意選択のセグメントを有する編集オリゴヌクレオチドの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の開示全体にわたって参照される特許、特許出願、ウェブサイトの投稿、および刊行物はすべて、それらの全体において参照により援用される。本明細書における用語に複数の定義が存在する場合には、本節の定義が優先する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「G」、「C」、「A」、「T」、および「U」という文字は各々、概して、それぞれグアニン、シトシン、アデニン、チミン、およびウラシルを塩基として含有するヌクレオチドを表す。しかしながら、「ヌクレオチド」という用語が、以下にさらに詳述されるように、修飾されたヌクレオチドを指す場合があることは理解されよう。配列において、用いられる化学構造がRNAまたは修飾RNAである場合、「T」は「U」を指すと理解される。同様に、配列において、「U」は、DNAまたは修飾DNAでは「T」であると理解される。当業者は、グアニン、シトシン、アデニン、チミン、およびウラシルが、置換部分を保有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対合特性を実質的に変更することなく、他の部分で置き換えられ得ることを熟知している。例えば、限定されないが、イノシンをその塩基として含むヌクレオチドは、アデニン、シトシン、またはウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対合を形成し得る。また、例えば、5-メチルCが、Cの代わりに、標的部位DNA内、または編集オリゴヌクレオチド内に存在し得る。
【0028】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド(RNA)、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、またはペプチド核酸(PNA)などの他の代替物のいずれかの、ポリマー形態のヌクレオチドを指し、これは、TriLink Biotechnologies(San Diego,CA)、Exiqon(Woburn,MA)、あるいはより長いオリゴヌクレオチドについてはIntegrated DNA Technologies(Coralville,Iowa)を含む、多くの供給元から商業的に入手され得、当該技術分野で既知の方法(Oligonucleotide Synthesis:Methods and Applications,In Methods in Molecular Biology Volume 288(2005)Piet Herdewijn(Editor)ISBN:1588292339 Springer-Verlag New York,LLC)cを用いて作製され得る、少なくとも8、または概して約5~約200、または化学的に作製された場合は最大500、またはより一般的には~約100の範囲の長さの天然および非天然ヌクレオチドを組み込んだ、ポリマー形態の核酸塩基である。特殊な合成法が用いられる場合、例えば、一本鎖ベクターDNA、またはインビトロ転写プラスミドmRNAからの逆転写cDNAといった一本鎖DNAの非化学的合成源が用いられる場合、一本鎖の編集「オリゴヌクレオチド」またはドナーDNAは、最大2,000ヌクレオチドになり得る。したがって、この用語は、二本鎖および一本鎖のDNAならびに一本鎖RNAを含む。加えて、オリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ抵抗性であり得、2’-O-メチルリボヌクレオチド、拘束された(constrained)またはロックド核酸(LNA)、2’フルオロ、ホスホロチオエートヌクレオチド(キラル富化(chirally enriched)ホスホロチオエートヌクレオチドを含む)、ホスホロジチオエートヌクレオチド、ホスホロアミデートヌクレオチド、およびメチルホスホネートヌクレオチド(キラル富化メチホスホネート(methyphosphonates)を含む)を含むが、これらに限定されない。オリゴヌクレオチドはまた、PNAまたはモルホリノ核酸(MNA)中にあるような非天然のヌクレオシジル間(internucleosidyl)結合を含有してもよい。上記の定義は、「編集オリゴヌクレオチド」という表現に含まれる場合、標的配列上のヌクレオチドと反応するか、またはそれとの反応を促進する、1個以上の化学修飾(例えば、ニトロソアミン)をさらに含み得る、オリゴヌクレオチドを指す。
【0029】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、標準的なホスホジエステル結合もしくは他の結合によって共有結合した、窒素性の複素環式塩基もしくは塩基類似体を有する、ヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体を含む、オリゴヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチド化合物を指す。核酸には、2’修飾糖を有する核酸、DNA、RNA、キメラDNA-RNAポリマー、またはそれらの類似体が含まれる。核酸において、骨格は、糖-ホスホジエステル結合、ペプチド-核酸(PNA)結合(PCT出願国際公開第95/32305号)、ホスホロチオエート結合、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、様々な結合によって構成され得る。核酸内の糖部分は、リボース、デオキシリボース、または、置換、例えば、2’メトキシおよび2’ハロゲン化物(例えば、2’-F)、LNA(または他の立体構造的に制限された修飾オリゴヌクレオチド)、およびUNA(非連結核酸)の置換を有する、同様の化合物であってもよい。
【0030】
核酸に関して本明細書で使用される「2’修飾糖」という用語は、2’F、2’アミノ、2’-O-Xを指す(式中、Xは、限定されないが、アルキル基(例えば、メチル、エチル、もしくはプロピル)、またはメトキシエトキシなどの置換アルキル基、あるいは、限定されないが、LNAおよびcET-BNA、架橋3’-CH-もしくは5’-CH-、架橋3’-アミド(-C(O)-NH-)もしくは5’-アミド(-C(O)-NH-)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、2’リボースを4’リボース位に架橋する基(すなわち、拘束ヌクレオチドとしばしば称される)を含む、ハイブリダイゼーション可能オリゴヌクレオチドをもたらすことが当該技術分野で既知である修飾である。
【0031】
本明細書で使用される「標的配列」という用語は、編集オリゴヌクレオチドによって修飾される、細胞内のDNA配列または細胞内のRNA配列のヌクレオチド配列の近接部分を指す。
【0032】
「相補的」という用語は、第2のヌクレオチド配列に関する第1のヌクレオチド配列(例えば、編集オリゴヌクレオチドおよび標的核酸)を説明するために使用される場合、当業者には理解されるように、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、ある特定の条件下で、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイズし、二重鎖(または三重鎖)構造を形成する能力を指す。好ましい条件は、生物内部で経験され得るような生理的に適切な条件であり、適用することができる。当業者であれば、ハイブリダイズされたヌクレオチドの最終用途に従って2つの配列の相補性を試験するための最も適切な条件一式を決定することができるであろう。
【0033】
ハイブリダイゼーションは、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと、第1および第2のヌクレオチド配列の全長にわたって塩基対合を形成することを含む。そのような配列は、本明細書では互いに対して「完全に相補的」と称される場合があるが、本発明の編集オリゴヌクレオチドのいくつかの場合では、少なくとも1個の塩基が、標的配列の相補的塩基とは異なる。
【0034】
本明細書で使用される「実質的に相補的」という用語は、オリゴヌクレオチドのうち十分な割合のヌクレオチドが標的配列のヌクレオチドと対合を形成してハイブリダイゼーションを促進する、本発明のオリゴヌクレオチドと標的ゲノム配列との間の関係を指す。いくつかの実施形態では、その割合は、99パーセント超、95パーセント超、または90パーセント超である。いくつかの実施形態では、その割合は、80パーセント超、70パーセント超、または60パーセント超である。
【0035】
本明細書で使用される「相補的配列」という用語はまた、ハイブリダイズするそれらの能力に関する上記の要件が満たされる限り、非ワトソン-クリック塩基対、ならびに/または、非天然および修飾ヌクレオチドから形成される塩基対を含むか、または完全にそれらから形成されてもよい。
【0036】
本明細書で使用される「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズする」、「アニールする」、または「アニーリング」という用語は、適切な条件下で、実質的に相補的な配列を有する核酸が、ワトソン&クリック塩基対合によって互いに結合する能力を指す。核酸アニーリングまたはハイブリダイゼーション技術は、当該技術分野で周知である。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.(1989)、Ausubel,F.M.,et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Secaucus,N.J.(1994)、または細胞内の生理的条件を参照されたい。
【0037】
本明細書で使用される「細胞に導入すること」、「細胞への導入」という用語は、当業者に理解されているように、細胞内への取り込みまたは吸収を促進することを指す。編集オリゴヌクレオチドの吸収または取り込みは、補助のない拡散性または活発な細胞プロセスを通して、または補助的な薬剤もしくはデバイスによって起こり得る。この用語の意味はインビトロの細胞に限定されず、編集オリゴヌクレオチドは、細胞が生きている生物の一部である場合にも「細胞に導入され」得る。そのような事例において、細胞への導入は、生物への送達を含む。例えば、インビボ送達の場合、編集オリゴヌクレオチドは、組織部位に注入するか、または全身投与することができる。インビトロでの細胞への導入は、電気穿孔、微量注入、核穿孔(nucleoporation)、リポフェクション、または弾道的方法などの、当該技術分野で既知の方法を含む。
【0038】
「編集する」という用語は、標的配列に関して使用されるとき、本明細書では、標的遺伝子内の配列の変化によって顕在化する、標的遺伝子の少なくとも部分的な編集を指す。編集の範囲は、標的遺伝子が転写され、かつ、第1の細胞または細胞群と実質的に同一であるが同様に処置されていない第2の細胞または細胞群(対照細胞)と比較して編集オリゴヌクレオチドで処置されている、第1の細胞または細胞群から、RNAまたはDNAを単離することによって、決定され得る。
【0039】
代替的に、編集の程度は、標的遺伝子の転写に機能的に関連付けられたパラメータ、例えば、細胞により分泌される標的遺伝子によってコードされるタンパク質の量、または、ある特定の表現型、例えばアポトーシスを提示する細胞の数の、低減もしくは増加の観点から示されてもよい。原理上、編集は、標的を発現する任意の細胞内で、任意の適切なアッセイによって決定され得る。
【0040】
例えば、ある特定の事例では、標的遺伝子は、本発明の編集オリゴヌクレオチドの投与により、標的細胞の少なくとも約0.1%、1%、3%、5%、10%、20%、25%、35%、または50%において編集される。具体的な実施形態では、標的遺伝子は、発明の編集オリゴヌクレオチドの投与により、標的細胞の少なくとも約60%、70%、または80%において編集される。標的細胞は、多くの場合、標的遺伝子の2つのコピーを含有し、これらのコピーの一方または両方が編集され得る。いくつかの場合では、標的細胞は、編集の標的とされる遺伝子のコピーを1つしか含有せず、その結果、細胞1個当たり所望の編集1つしか発生しない場合がある。
【0041】
「治療する」、「治療」などの用語は、ある状態の緩和または軽減を指す。本発明の文脈では、本明細書で以下に列挙される他の状態のいずれかに関連する限りにおいて、「治療する」、「治療」などの用語は、そのような状態に関連する少なくとも1つの症状を緩和もしくは軽減すること、またはそのような状態の進行を減速もしくは逆転させること、または将来の疾患の形成を防ぐことを意味する。治療は、農業および工業用途の事例において、生物の特性を改変することを含んでもよい。
【0042】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」および「予防有効量」という表現は、ある状態もしくはその状態の顕性症状の治療、防止、または管理において治療利益を提供する量を指す。治療上有効である具体的な量は、通常の医師によって容易に決定することができ、例えば、疾患の種類、患者の病歴および年齢、疾患の段階、ならびに他の治療剤の投与の可能性などの、当該技術分野で既知の要因に応じて異なり得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」は、薬理学的有効量の編集オリゴヌクレオチド、および薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される場合、「薬理学的有効量」、「治療有効量」、または単に「有効量」とは、意図される薬理的、治療的、または予防的な結果をもたらすのに有効な、編集オリゴヌクレオチドの量を指す。例えば、疾患または障害に関連する測定可能なパラメータが少なくとも25%低減するときに、所与の臨床治療が有効と見なされる場合、その疾患または障害の治療のための薬物の治療有効量は、そのパラメータの少なくとも25%の低減をもたらすのに必要な量(可能性のある複数用量を含む)である。
【0044】
「薬学的に許容される担体」という用語は、治療剤の投与のための担体を指す。そのような担体としては、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。経口投与される薬物の場合、薬学的に許容される担体としては、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、着色剤、および防腐剤などの、薬学的に許容される賦形剤が挙げられるが、これらに限定されない。好適な不活性希釈剤としては、炭酸ナトリウムおよび炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カルシウム、ならびにラクトースが挙げられ、トウモロコシデンプンおよびアルギン酸は、好適な崩壊剤である。結合剤はデンプンおよびゼラチンを含み得、滑沢剤は、存在する場合、概してステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクである。所望の場合、錠剤をモノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリルなどの材料でコーティングして、編集オリゴヌクレオチドの消化管内での吸収を遅延させてもよい。
【0045】
本発明の一態様では、ゲノムのDNA鎖のうちの1本に相補的な一本鎖オリゴヌクレオチドが、配列編集のために利用される(図19参照)。所望の編集は、トランジションもしくはトランスバージョン、または欠失もしくは挿入であり得る。本発明のこの態様において、編集オリゴヌクレオチド配列は、編集が完了した後に所望される配列である。特定の理論または機構に束縛されるものではないが、編集オリゴヌクレオチドは、転写または複製などの細胞プロセス中に標的配列が反対側のゲノム鎖から分離するとき、部分的に相補的または完全に賛辞的な標的ゲノムDNA配列に結合する。いくつかの場合では、二本鎖ゲノムDNA標的に対する編集オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、標的DNAの「ブリージング」、過渡的な融解、または巻き戻しの間に起こり得る。編集オリゴヌクレオチドと標的ゲノムDNA鎖との間にヘテロ二重鎖が形成されたら、不完全な相補性の領域が、細胞DNA修復(相同組換え(HR)を含む)によって補正される。編集オリゴヌクレオチドが修復のための鋳型として使用されるとき、所望の編集が、標的ゲノムDNA鎖に組み込まれる。
【0046】
本発明の編集オリゴヌクレオチドは、5’から3’の順序で列記される次のセグメントのいくつかまたはすべてを含む:5’末端セグメント、5’近位セグメント、5’編集セグメント、編集部位、3’編集セグメント、3’近位セグメント、および3’末端セグメント。これらのセグメントは、それらの位置および/または化学修飾によって区別されるが、修飾されているか、または天然のDNAもしくはRNAかを問わず、核酸骨格によって近接して連結されている。
【0047】
これらのセグメントの各々におけるヌクレオチドは、任意選択により、編集オリゴヌクレオチドの次の特性のうちの1つ以上を改善するように修飾されてもよい:編集の効率;薬物動態特性;体内分布;血清中のヌクレアーゼ安定性;エンドソーム/リソソーム経路内のヌクレアーゼ安定性;細胞質および核細胞質内のヌクレアーゼ安定性;効率的な編集に必要な毒性(例えば、Toll様受容体の免疫刺激)および最小の長さ(例えば、より短いオリゴヌクレオチドは一般的に作製費用がより低く、インビボで細胞に送達するのがより容易である)。そのような修飾の非限定的な例が、本明細書に提供される。
【0048】
編集オリゴヌクレオチドは、上に列記した7つのセグメントの部分集合またはすべてを含み得、編集部位と、編集部位に対して5’および3’の少なくとも1つのセグメントとを含む。これらのセグメントの各々は、任意選択により、編集オリゴヌクレオチドの特性を向上させるために、同じかまたは異なる化学修飾を含有してもよく、この修飾は、いくつかの場合では、セグメント全体で均一であってもよく、他の場合では、セグメント内のヌクレオチドの一部分でのみ起こる。
【0049】
他の実施形態は、可逆的に電荷を中和するホスホトリエステル骨格修飾を有する編集オリゴヌクレオチドを含む。これらの修飾は、オリゴヌクレオチドが標的細胞の細胞質に移動する際の改善された送達およびヌクレアーゼ安定性をオリゴヌクレオチドに与える利点を有する。標的細胞の細胞質内に入ると、細胞のエステラーゼによって修飾が除去され、細胞の相同組換えおよびミスマッチ修復機序によってより良好に認識される、天然またはより天然の構造を備える、編集オリゴヌクレオチドが遊離する(Meade,B.R.et al.Efficient delivery of RNAi prodrugs containing reversible charge-neutralizing phosphotriester backbone modifications.Nature Biotechnology 32:1256-1261(2014).doi:10.1038/nbt.3078)。
【0050】
I. 編集オリゴヌクレオチド:
ある特定の実施形態において、本発明の編集オリゴヌクレオチドは、式(I)に従う構造を有する。
-P-E-S-E-P-T
(I)
【0051】
式(I)の概略表現については図25を参照されたい。
【0052】
A. 5’末端セグメント(T
3’末端はDNA延長のプライミングにおいて機能し得、これが3’末端セグメントを概して遊離した3’ヒドロキシルを有する修飾に限定し得るため、5’末端セグメントは、多数の異なる種類の修飾に3’末端よりも適している場合がある。このプライミング機能は、5’末端において通常は必要ではない。0~5ヌクレオチド長であり得る任意選択の5’末端セグメントは、さもなければ体液(例えば、血液もしくは間質液)、培養培地、飲食作用経路、または細胞質もしくは核細胞質において編集オリゴヌクレオチドを容易に分解し得る、5’エキソヌクレアーゼを遮断するよう機能する。このセグメントは、5’近位セグメントよりもヌクレアーゼ抵抗性である非ヌクレオチド末端ブロッキング基および/または修飾ヌクレオチド(複数可)(例えば、逆位Tなどの逆位塩基)を含んでもよい。5’末端セグメントが用いられない場合、5’近位セグメントは単純に、編集オリゴヌクレオチドの最も5’側の部分である。非ヌクレオチド末端ブロッキング基は、この作業の実行に使用するための当業者に既知の任意のリンカー、例えば、3’C3アミノリンカー、3’C7アミノリンカー、5’&3’C6アミノリンカー、5’C12アミノリンカー、5’光切断可能アミノリンカー、3’C3ジスルフィドリンカー、5’&3’C6、ジスルフィドリンカー、ジチオールリンカー、4-ホルミルベンズアミド、アルデヒド、C8-アルキン-チミジン、カルボキシ-dTリンカー、DADEリンカー(5’カルボキシルリンカー)、3’グリセリル、5’ヘキシニル、チミジン-5-C2およびC6アミノリンカー、2’-デオキシアデノシン、8-C6アミノリンカー、2’-デオキシシチジン-5-C6アミノリンカー、2’-デオキシグアノシン-8-C6アミノリンカー、C7、ならびに内部アミノリンカーなどを含んでもよい。リンカー長は、炭素1個から炭素約20個、または他の化学構造の同等の長さに及び得るが、好ましくは、炭素10個未満または10個の炭素と同等の長さである。
【0053】
5’末端ヌクレオチドエキソヌクレアーゼ抵抗性セグメントは、1個、2個、3個、または4個のホスホロチオエート修飾を含み得る。これら1個以上のホスホロチオエート修飾に加えて、またはそれらの代わりに、5’末端エキソヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼ安定性を向上させることで知られる2’糖修飾を含んでもよい。さらに、メチルホスホネート、モルホリノ、またはPNAなどの中性ヌクレオチド類似体は、エキソヌクレアーゼに対して高度に抵抗性であり、5’末端におけるそのような修飾のうちの1個、2個、3個、4個、または5個は、末端ブロッキング基として利用されてもよい。好ましい実施形態において、5’末端は、2個のメチルホスホネートである(表1)。これらの末端基は、必ずしも標的に相補的である必要はない。
【0054】
B. 5’近位セグメント(P
5’近位セグメントは、上記の5’末端セグメントに関して前述したものと同じ理由のうちのいくつかのために、多数の異なる種類の修飾に3’末端よりも適している場合がある。それは、1~150ヌクレオチド長、好ましくは約5~約20ヌクレオチド長であり得る。5’近位セグメントの主な機能は、標的配列にハイブリダイズする編集オリゴヌクレオチドの親和性および能力を向上させることである。したがって、このセグメントは、任意選択により、編集セグメントよりも実質的に修飾されていてもよい。5’近位セグメントは、本明細書で言及されるオリゴヌクレオチド修飾のいずれを含有してもよい。このセグメントは、DNAまたはRNA(任意選択により、LNAおよび他の拘束された骨格を含むよう広く定義されている2’修飾RNA)から構成されていてもよい。この領域内の追加のホスホロチオエート(例えば、向上したキラル純度を有するジホスホロチオエートおよびホスホロチオエート)は、ヌクレアーゼ安定性のために厳密には必要とされないが、追加のホスホロチオエートは、RNAおよびDNA結合のヌクレアーゼ安定性を向上させるために有用である。また、このセグメント内のホスホロチオエートがヌクレアーゼ安定性に必要でない場合であっても、それらは、全体的なホスホロチオエート含有量を増加させ得、これは、ホスホロチオエートの化学的に「粘着性の」性質に起因して、血清タンパク質結合および細胞結合を増加させ、動物およびヒトにおける血清中半減期の増加につながり、細胞質取り込みを向上させる。これらの理由のため、好ましい実施形態において、編集オリゴヌクレオチドの全ホスホロチオエート含有量は、5個、10個、15個、または20個を上回り得る。約20個のホスホロチオエートの含有量は、多くの場合、優れた血清タンパク質結合および細胞結合/取り込みをもたらす。しかしながら、編集オリゴヌクレオチドの相補的領域内のより多くの数(例えば、6個超)のホスホロチオエート結合は編集効率を抑制し得るため、ホスホロチオエートの尾部が、標的DNAに相補的な領域の5’または3’末端に付加され得る。この尾部は、1~約4、約5~約9ヌクレオチド、または約10~約25ヌクレオチドの長さであり得、好ましくは、標的に非相補的な領域内に位置付けられ得る。
【0055】
C. 5’編集セグメント(E
5’編集セグメントは、1~約10ヌクレオチド、または1~約100ヌクレオチド、または1~約200ヌクレオチドの長さであり、編集部位の5’末端に位置付けられ、この位置は、対向するゲノムDNA鎖の編集をもたらすように細胞機構に影響を及ぼすのに十分に編集部位に近接している。いかなる理論にも束縛されるものではないが、このDNAミスマッチ修復系は、編集セグメント(これは5’編集セグメント、編集部位、および3’編集セグメントである)を、編集のための鋳型鎖として使用する場合がある。したがって、5’編集セグメント、編集部位、および3’編集セグメント内のヌクレオチドは、天然DNAまたは天然DNA化学構造と好ましくは実質的に同様であり(例えば、図2において、化合物100013は、編集部位の5’に約8個の未修飾ヌクレオチドを有し、これは、親化合物と比較して全体的な編集効率を抑制しなかった)、また、未修飾であってもよく、または、ホスホロチオエート、5’S、2’F、2’アミノ、もしくは3’S、可逆的に電荷を中和するホスホホトリエステル(phosphophotriester)、および核酸塩基修飾などの、1個以上の修飾を含んでもよい。
【0056】
本発明の好ましい一実施形態では、編集オリゴヌクレオチド内のデオキシ-シトシンのうちの1つ、いくつか、またはすべてが、5メチルシトシン、特に、編集部位(複数可)の5’または3’の約5~約10個の塩基内のシトシンヌクレオシドになるように修飾される。5メチルシトシンを編集オリゴヌクレオチドに組み込む理由の1つは、複製、続いてミスマッチ修復の間、ミスマッチ修復機構が非メチル化シトシンを新生鎖と認識し、5メチルシトシンを含有するDNA鎖を修復のための鋳型鎖として優先的に使用することである。加えて、編集オリゴヌクレオチドが5メチルシトシンをほとんどまたは全く含有しない場合、修復機構は、編集を引き起こすDNA修復反応の間の鋳型として、この鎖を選択しない可能性が高い。当該技術分野における編集オリゴヌクレオチドが複数の5-メチルシトシンを含有していないという事実は、それらの編集における効率が比較的低い理由のうちの1つである。
【0057】
好ましい実施形態において、編集オリゴヌクレオチドは、編集部位におけるCpG配列内に5-メチルシトシンを有する。より好ましい実施形態では、編集部位内のこのCpGは、標的配列内のTpGと誤対合を形成する。この場合、細胞内の5-メチル結合タンパク質は、ミスマッチのメチル化CpGに結合し、細胞のミスマッチ修復系にミスマッチTをマッチしたCに変換させる。5’編集セグメントは、修飾を含有しなくてもよく、または、1個以上の修飾を最大でセグメント内の塩基の数まで含有してもよい。
【0058】
D. 編集部位(S
編集部位は、標的ゲノムDNAに相補的でないヌクレオチド(複数可)を含有し、1~6ヌクレオチド長であり得るが、必要に応じてより長くてもよい。トランジション/トランスバージョン修飾の場合、編集部位は、ミスマッチ塩基の数(例えば、1個~約6個、特に1個のヌクレオチド)に等しい。欠失を作り出すための編集の場合、編集部位は、ゲノムDNA内の塩基対合を形成しないヌクレオチドのちょうど反対側で標的ゲノムDNA鎖と塩基対合を形成する、2個の5’および3’ヌクレオチド間の接合部である。いくつかの場合では、1つの編集オリゴヌクレオチドが、集団内の異なる患者において発生し得る、標的DNAに対する相補性領域内にある近隣部位における異なる変異を治療するために使用され得る。この場合、患者の変異体遺伝子型に応じて、異なる編集部位が存在する。これらの場合において、編集部位は、最も5’側および最も3’側の変異、ならびにこれらの変異間の領域を含むことになる。好ましい一実施形態では、編集部位は、標的遺伝子内の全エクソンにハイブリダイズする。
【0059】
E. 3’編集セグメント(E
3’編集セグメントは、その位置が編集部位の3’にあることを除いて、Eの3’編集セグメントと同じ範囲の特徴、特性、およびパラメータを有する。
【0060】
F. 3’近位セグメント(P
3’近位セグメントは、他のセグメントに対するその位置を除いて、5’近位セグメントと同じ範囲の特徴およびパラメータを有する。好ましい実施形態において、3’近位セグメントは、2’修飾ヌクレオチドから構成され、より好ましい実施形態では、2’F修飾ヌクレオチドから構成される。最も好ましい実施形態では、それは、8個の2’F修飾ヌクレオチドを含む(図2)。
【0061】
G. 3’末端セグメント(T
3’末端セグメントは、以下に詳解することを除いて、5’末端セグメントと同じ範囲の特徴および特性を含み得る。3’末端セグメントは、DNA複製および修復間にDNA合成のプライマーとして機能し、ひいては編集オリゴヌクレオチドがゲノムDNA内に近接して組み込まれることを可能にし得る。その結果、一実施形態において、このセグメントは、遊離3’ヒドロキシを有することになり、天然様の修飾または未修飾のDNAもしくはRNAから成ってもよい。
【0062】
3’末端における非ヌクレオチド末端ブロッキング基は、いくつかの場合では、編集活性を低減させるか、または排除し得るが、編集部位と編集オリゴヌクレオチドの3’末端との間に、編集オリゴヌクレオチドを標的DNAにハイブリダイズするとRNアーゼHによって切断されるRNAの領域が存在する場合、鎖延長のプライマーとして好適な遊離3’ヒドロキシルが作り出される。また、ミスマッチ修復として知られる別の編集機構は、遊離3’ヒドロキシル、または3’末端において標的と塩基対合を形成する編集オリゴヌクレオチドの領域を必要としない場合がある。この場合、3’非ヌクレオチド末端ブロッキング基または他の実質的な修飾を、3’末端セグメント内に用いてもよい。これらの末端ブロッキング基または修飾は、5’末端セグメントの説明において上述した5’末端ブロッキング基と同様または類似である。3’特異的な修飾は、5’特異的部分に変更される。例えば、そして5’末端上に位置する逆位Tは、3’-5’結合を有することになる。
【0063】
式(I)のオリゴヌクレオチドは、20~2000個のヌクレオチドを含み得る。一実施形態において、このオリゴヌクレオチドは、100~250個のヌクレオチドを含んでもよい。別の実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、250~2000個のヌクレオチドを含んでもよい。具体的な実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、20~100個のヌクレオチドを含む。より具体的には、このオリゴヌクレオチドは、25~90個のヌクレオチドを含む。
【0064】
BrachmanおよびKmiecの方法を使用する一本鎖編集オリゴヌクレオチドの現行の設計は、編集にはあまり効率的でない未修飾DNAか、または、各末端上に3個のホスホロチオエートを有し、編集オリゴヌクレオチドの残部が未修飾DNAを含むものを用い、後者は編集により効率的であり、両方の場合において、およそ72ヌクレオチドの最適な長さを有する。BrachmanおよびKmiecは、S期に処置された同調細胞が最も効率的に編集されたことを見出したが(Engstrom and Kmiec,Cell Cycle 7(10):1402-1414,2008)、上述のKmiecの編集オリゴヌクレオチド設計は、細胞エンドヌクレアーゼに非常に影響されやすいことが現在分かっている。編集効率を上昇させ、かつ(例えば、細胞がS期に自然に入るまで、安定な編集オリゴヌクレオチドが各細胞内で持続することから)細胞同調の必要をなくすために、本発明は、向上したヌクレアーゼ抵抗性を有する編集オリゴヌクレオチドを提供する。表1~3は、これらの編集オリゴヌクレオチドの例を提供する。細胞エンドヌクレアーゼに対する抵抗性の増加は、ヌクレオチド結合のうちの1個以上を修飾して、5’および/または3’末端の近くに位置付けられるホスホロチオエート結合にすることによって達成され得る。一実施形態において、4個以上のホスホロチオエート結合が好ましい。抵抗性は、「編集セグメント」を除いて、ヌクレオチド結合のすべてをホスホロチオエート結合で置き換えることによっても達成され得る。いくつかの実施形態では、ホスホロチオエート修飾は、編集塩基(例えば、標的配列と異なる塩基)を包囲するヌクレオチド結合を、1個から最大7個まで含み得る。一実施形態において、結合はすべて、ホスホロチオエートDNAである。ホスホチオエート(phosphothioate)結合はまた、1個おきの結合がホスホロチオエート結合であるか、または3個おきの結合がホスホロチオエート結合であるか、または2個のホスホロチオエート結合が1個もしくは2個のホスホジエステル結合と交互になっているなど、完全または部分的に交互になっていてもよい。編集オリゴヌクレオチドは、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%のホスホロチオエート結合を含み得る。これらのホスホロチオエート構成は、本明細書に記載されるように、他の修飾または天然糖と組み合わせることができる。具体的には、DNA糖の一部が、RNA糖で置き換えられてもよい。好ましくは、RNA置換は、3’末端で始まり、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の塩基にわたって5’の方向に延びる、RNA結合ブロックを含む。これは、3’末端を天然のOkazaki断片のようにするためであり、これは、より自然な合成のプライミングおよびRNアーゼHによる除去をもたらす。しかしながら、RNアーゼHによって編集セグメントが除去されるのは望ましくないため、このRNA修飾は、「編集セグメント」においては好ましくない。
【0065】
H. 他の修飾
編集オリゴヌクレオチドをより効率的にする別の手法は、化学修飾によって親和性を増加させることである。本明細書に記載される修飾は、編集オリゴヌクレオチド内で組み合わされてもよく、2’-O-メチルRNA、2’F RNA、およびLNAを含む拘束核酸を含む。これらの修飾は、それらが免疫刺激を低減させることもできるという追加の利点を有する。修飾は、ハイブリダイゼーションのための高親和性「シード」領域を形成するようにグループ化され得る。好ましい実施形態において、このシード領域は、約2個~約12個の連続した修飾と共に、5’近位セグメント内に位置付けられることになる。他の実施形態では、シード領域は、3’近位セグメント内に位置付けられてもよい。あまり好ましくない実施形態では、修飾は、「編集セグメント」内に位置付けられ得る。編集セグメントは細胞修復機構と相互作用しなければならず、このセグメント内のある特定の修飾は修復に干渉し得るため、これはあまり好ましくない。修飾は、5’セグメント、編集セグメント、および/または3’セグメントにおいて、交互になっている、すなわち、3個おきまたは4個おきの結合であってもよい。5’セグメント、3’セグメント、または編集セグメント内にある化学修飾された核酸塩基の全割合は、独立して、約20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の範囲であり得る。
【0066】
本明細書では、式(I)のオリゴヌクレオチドの様々な実施形態が提供される。一実施形態において、式(I)は、RNAである。別の実施形態では、式(I)は、DNAである。具体的な実施形態では、式(I)は、一本鎖である。一実施形態において、式(I)は、修飾されない。一実施形態において、式(I)は、化学修飾される。化学修飾は、糖修飾(具体的には、例えば2’-O-メチルおよび2’-フルオロ)を含む。一実施形態において、式(I)は、骨格修飾を含む。別の実施形態では、式(I)は、本明細書に記載される骨格修飾を含む。別の実施形態では、式(I)は、本明細書に記載されるリンカーを含む。別の実施形態では、式(I)は、接合分子(例えば、gal-nacまたは親油性修飾)をさらに含む。前述の修飾は、様々な組み合わせで存在してよい。例えば、1個、2個、または3個の骨格修飾が、1個、2個、または3個の糖修飾、および/またはリンカー、および/または接合分子と共に存在してもよい。
【0067】
本発明のある特定のオリゴヌクレオチドは、標的配列上のヌクレオチドと反応するか、またはそれとの反応を促進する、1個以上の化学修飾を含む。そのような反応の例としては、アルキル化、アセチル化、架橋、アミノ化、脱アミノ化、遊離(非共有結合)反応性化合物の生成が挙げられる。
【0068】
本発明のオリゴヌクレオチドは、保護基を含んでもよい。好適な保護基は、合成、精製、貯蔵、および使用中の間に化学反応基を保護する(例えば、酸性、細胞内エステラーゼ、または還元条件を含む条件からオリゴヌクレオチドを保護するものとして、当業者に既知である。編集を達成するために単一のオリゴヌクレオチドのみを使用することは簡便であるが、本明細書の実施形態を向上させるものとしては、追加のオリゴヌクレオチドが挙げられる。「ヘルパー」オリゴヌクレオチドまたは「ヘルパー」オリゴヌクレオチド(複数)の使用、ここで、「ヘルパー」オリゴヌクレオチド(複数)とは、編集オリゴヌクレオチドに(例えば、3’末端、5’末端、または2個のヘルパーオリゴヌクレオチドの場合は両端、または、編集オリゴヌクレオチド結合部位から、例えば編集部位の5’もしくは3’に200ヌクレオチドだけさらに離れた位置でタンデム結合する、オリゴヌクレオチドを指す。ヘルパーオリゴヌクレオチドは、標的部位の構造を開くのに役立つか、または別様に編集オリゴヌクレオチドの結合効率を改善する。ヘルパーオリゴヌクレオチドの別の標的は、編集配列により標的とされるDNA鎖の反対側の鎖であり得る。この場合、ヘルパーオリゴヌクレオチド(複数可)は、編集オリゴヌクレオチド自体に強くハイブリダイズしないように、編集オリゴヌクレオチドの結合部位のちょうど5’側および/または3’側に結合することが好ましい。他の実施形態では、5’および/または3’のヘルパーオリゴヌクレオチドは、編集オリゴヌクレオチド結合部位と、約1~5個、約5~10個、または約1~15個の塩基だけ重複する。このようにすれば、ヘルパーオリゴヌクレオチドが編集オリゴヌクレオチドに過度に密接に結合して、標的に結合する編集オリゴヌクレオチドに悪影響を与えることはないであろう。これらのヘルパーオリゴヌクレオチドは、任意選択により、ホスホジエステルもしくは修飾ホスホジエステル結合によって、または他の共有結合リンカーによって、編集オリゴヌクレオチドに共有結合させてもよい。別の実施形態では、三重鎖形成オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド類似体が、約200ヌクレオチドの編集部位内の標的DNAに結合し、編集効率の上昇をもたらす(McNeer,N.A.et al.,Nature Comm.DOI:10.1038/ncomms 7952 pgs.1-11,2015)、Bahal et al.Current Gene Therapy 14(5)pp331-42(2014)、Chin et al.PNAS 105(36):13514-13519(2008)、Rogers et al.PNAS 99(26):16695-16700(2002)、および米国特許第8,309,356号。)。
【0069】
いくつかのヘルパーオリゴヌクレオチドは、編集オリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドを保護し、一本鎖特異的ヌクレアーゼによるヌクレアーゼ分解を遮断する。保護オリゴヌクレオチドは、編集オリゴヌクレオチドのすべてまたは所望の部分を覆う。それらは概して、編集オリゴヌクレオチドの一部分が一本鎖のまま残り、したがって標的DNAへのハイブリダイゼーションに利用可能であるように、編集オリゴヌクレオチドよりも短い。一実施形態において、プロテクターオリゴヌクレオチドは、編集オリゴヌクレオチドのDNA部分に相補的な、いくつかまたはすべてのRNA領域から構成され、その結果、それらが細胞内でRNアーゼHにより除去されて、編集オリゴヌクレオチドの一本鎖領域がさらに露出し得る。
【0070】
I. 外因性タンパク質
編集組成物中に外因性タンパク質を厳密に必要としないことが有利である一方で、ある特定の外因性タンパク質は、編集オリゴヌクレオチドをヌクレアーゼ分解から保護することによって、また標的ゲノムDNAに対する編集オリゴヌクレオチドの結合を強化することによって、上述の実施形態を向上させることができる。次のタンパク質またはリボ核タンパク質のうちの1つ以上が、編集オリゴヌクレオチドと併せて添加され得る。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Carroll D.Genetics 188:773e82.(2011))、TALEN、メガTALEN、他のホーミングエンドヌクレアーゼを含む、プログラム可能ヌクレアーゼ、CRISPR-Cas9(Jinek et al.Elife 2013;2:e00471)、または、相同のもしくは同様に作用するリボ核タンパク質(すなわち、Cpf1、C2C1、またはC2C3)(DNA結合親和性を低減させることによって標的特異性を増加させるように選択されているそれらの変異形態(eSpCas9、Slaymaker et al.,Rationally Engineered Cas9 Nucleases with Improved Specificity,Science(2015))と、「crRNA」が編集のためのドナーDNAとして作用し得るように、crRNA領域内のより多くのDNA置換に耐えるよう選択されている変異形態と、Cas9ヌクレアーゼが不活性化されている変異形態とを含む)、RecA、ラムダファージベータタンパク質(米国特許第7,566,535号)、ssDNA結合タンパク質、RAD、またはアルゴノート。
【0071】
タンパク質は、編集オリゴヌクレオチドから別々に製造し、精製し、次いで編集オリゴヌクレオチド(複数可)と前複合体化する(pre-complexed)ことができ(Kim et al.Genome Res.24:1012e9(2014))、または、タンパク質は、標的細胞/組織内で発現させてもよい。細胞または組織内での外因性タンパク質の発現は、遺伝子療法ベクター、ネイキッドDNAトランスフェクション、またはmRNAトランスフェクションを含む、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。
【0072】
Cas9の場合、好ましい実施形態は、両方のヌクレアーゼドメインが当該技術分野で既知の変異によって不活性化されたCas9を用いる。crRNAは、好ましくはtracRNAとは別であり、所望の編集された配列を有する。crRNAはまた、本明細書において定義されるように、編集部位内、かつ任意選択によりその周囲に、置換された少なくとも1個かつ最大約15個のDNA結合を有する。このようにして、Brachman Kmiec型ゲノム編集、または本明細書に記載されるような標的核酸塩基を修飾してそのコーディングを変更する化学反応基を含有するオリゴヌクレオチドを用いる編集の特異性および非染色体性切断の利点が、Cas9によって推進される向上したハイブリッド形成により、有効性において向上する。別の実施形態では、crRNAまたはtracRNAの約18ヌクレオチドのガイドRNA部分は、編集オリゴヌクレオチドにより、5’または3’まで延長される。編集オリゴヌクレオチドは、未修飾であっても、または本明細書に記載される様々な修飾を有してもよい。編集オリゴヌクレオチドは、crRNAまたはtracRNAガイドに、ホスホジエステル(またはホスホジエステル類似体)結合、もしくは化学リンカーによって共有結合するか、または、CRISPRガイドRNAの一部分との塩基対合形成、もしくはCRISPRガイドRNAの延長によって非共有結合することになる。好ましい実施形態において、編集オリゴヌクレオチド部分は、tracRNAまたはcrRNAのガイド部分に対して賛辞的な配列に近接してハイブリダイズし、標的DNAを有する二重鎖を標的変異の領域内まで延長する。Cas-9/CRISPRは鎖侵入の効率を向上させるため、この手法は、CRISPR-Cas9を使用しないオリゴヌクレオチド指向ゲノム手法よりも効率的となるであろう。この手法は、標的染色体を切断し、かつ別々のドナーオリゴを必要とする一般的なCas-9/CRISPR手法よりも、選択的かつ簡素となるであろう。
【0073】
各事例において、編集効率は、任意選択により、編集オリゴヌクレオチドへの曝露中またはその前にS期の細胞を同調させるか、複製フォークを減速させるか(Erin E.Brachman and Eric B.Kmiec DNA Repair 4:445-457(2005)、または別様に相同DNA修復機構の発現および/または活性を増加させる薬剤、例えばヒドロキシル尿素、HDAC阻害薬、またはカンプトテシン(Ferrara and Kmiec Nucleic Acids Research,32(17):5239-5248,2004)などで、標的となる細胞または生物を処置することによって、向上させることができる。
【0074】
本明細書に記載される化学修飾された編集オリゴヌクレオチドは、相同組換え編集のためのドナーオリゴヌクレオチドとして使用することができる。CRISPR-Cas9を用いた精確な編集はドナーDNAを使用するが、CRISPR-Cas9は、典型的には、本明細書に記載される化学修飾されたドナーDNAと共に使用されない。化学修飾された「ドナー」編集オリゴヌクレオチドの相同組換えの効率を向上させるための別の方法は、標的変異近くへのPNAクランプの付加である(Schleifman et al.,Chem.Biol.18(9):1189-1198,2011)。Glazerは、この技術を第2世代編集化学(例えば、ドナーDNAオリゴヌクレオチドの両端のうちの一方における3個のホスホチオエート修飾)に用いたが、PNAクランプは、本明細書に記載および参照される、第3世代のより重度に修飾されたドナーDNAには用いられていない。(Bahal et al.Current Gene Therapy 14(5):331-42(2014)、Chin et al.PNAS 105(36):13514-13519(2008)、Rogers et al.PNAS 99(26):16695-16700(2002)、および米国特許第8,309,356号)。
【0075】
J. 合成
本発明の編集オリゴヌクレオチドとして利用される特定のオリゴヌクレオチドの合成に関する教示は、次の米国特許に見出され得る:ポリアミン接合オリゴヌクレオチドに関する米国特許第5,138,045号および同第5,218,105号;キラルリン結合を有するオリゴヌクレオチドの調製のためのモノマーに関する米国特許第5,212,295号;修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドに関する米国特許第5,378,825および同第5,541,307号;骨格修飾オリゴヌクレオチドおよび還元カップリングによるその調製に関する米国特許第5,386,023号;3-デアザプリン環系に基づく修飾核酸塩基およびその合成方法に関する米国特許第5,457,191号;N-2置換プリンに基づく修飾核酸塩基に関する米国特許第5,459,255号;キラルリン結合を有するオリゴヌクレオチドを調製するためのプロセスに関する米国特許第5,521,302号;ペプチド核酸に関する米国特許第5,539,082号;.ベータ.-ラクタム骨格を有するオリゴヌクレオチドに関する米国特許第5,554,746号;オリゴヌクレオチドの合成のための方法および材料に関する米国特許第5,571,902号;アルキルチオ基を有するヌクレオシドに関する米国特許第5,578,718号(かかる基は、ヌクレオシドの様々な位置のいずれかにおいて結合した他の部分とのリンカーとして使用され得る);高いキラル純度のホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチドに関する米国特許第5,587,361および同第5,599,797号;2’-O-アルキルグアノシンおよび2,6-ジアミノプリン化合物を含む関連化合物の調製のためのプロセスに関する米国特許第5,506,351号;N-2置換プリンを有するオリゴヌクレオチドに関する米国特許第5,587,469号;3-デアザプリンを有するオリゴヌクレオチドに関する米国特許第5,587,470号;両方とも接合4’-デスメチルヌクレオシド類似体に関する米国特許第5,223,168号および米国特許第5,608,046号;骨格修飾オリゴヌクレオチド類似体に関する米国特許第5,602,240号および同第5,610,289号;2’-フルオロ-オリゴヌクレオチドの合成方法にとりわけ関する米国特許第6,262,241号および同第5,459,255号。
【0076】
2’-O-メチル、2’-O-エチル、2’-O-プロピル、2’-O-アリル、2’-O-アミノアルキル、または2’-デオキシ-2’-フルオロ基を、オリゴヌクレオチドのヌクレオシドに組み込むことは、向上したハイブリダイゼーション特性をオリゴヌクレオチドに与える。さらに、ホスホロチオエート骨格を含有するオリゴヌクレオチドは、向上したヌクレアーゼ安定性を有する。したがって、官能化され、連結された本発明のヌクレオシドは、LNA、拘束された糖、2’-デオキシ-2’-フルオロ基、ホスホロチオエート骨格、および/または2’修飾糖を含むようにさらに修飾されてもよく、糖は、2’-O-メチル、2’-O-エチル、2’-O-プロピル、2’-O-アミノアルキル、2’-O-アリル、または2’-メトキシエトキシを含むように修飾されてもよい。
【0077】
K. 保護基
多くの場合、保護基は、本発明の化合物の調製中に使用される。本明細書で使用される場合、「保護される」という用語は、指示される部分が、付加された保護基を有することを意味する。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、化合物は、1個以上の保護基を含有する。広範な保護基を本発明の方法に用いることができる。概して、保護基は、化学官能基を特定の反応条件に対して不活性にするものであり、分子の残部を実質的に損傷することなく、分子内のそのような官能基に付加し、そこから取り除くことができる。
【0078】
代表的なヒドロキシル保護基は、例えば、Beaucageらによって開示されている(Tetrahedron,48:2223-2311,1992)。さらなるヒドロキシル保護基、ならびに他の代表的な保護基は、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,Chapter 2,2d ed.,John Wiley & Sons,New York,1991、およびOligonucleotides And Analogues A Practical Approach,Ekstein,F.Ed.,IRL Press,N.Y,1991において開示されている。
【0079】
ヒドロキシル保護基の例としては、t-ブチル、t-ブトキシメチル、メトキシメチル、テトラヒドロピラニル、1-エトキシエチル、1-(2-クロロエトキシ)エチル、2-トリメチルシリルエチル、p-クロロフェニル、2,4-ジニトロフェニル、ベンジル、2,6-ジクロロベンジル、ジフェニルメチル、p,p’-ジニトロベンズヒドリル、p-ニトロベンジル、トリフェニルメチル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、トリフェニルシリル、ベンゾイルホルメート、アセテート、クロロアセテート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、ピバロエート、ベンゾエート、p-フェニルベンゾエート、9-フルオレニルメチルカーボネート、メシレート、およびトシレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
酸処理に対して安定なアミノ保護基は、塩基処理で選択的に除去され、置換に選択的に利用可能な反応性アミノ基を作製するために使用される。そのような基の例は、Fmoc(E.Atherton and R.C.Sheppard in The Peptides,S.Udenfriend,J.Meienhofer,Eds.,Academic Press,Orlando,1987,volume 9,p.1)、およびNsc基に例示される様々な置換スルホニルエチルカルバメートである(Samukov et al.,Tetrahedron Lett.,35:7821,1994、Verhart and Tesser,Rec.Trav.Chim.Pays-Bas,107:621,1987)。
【0081】
追加のアミノ保護基としては、2-トリメチルシリルエトキシカルボニル(Teoc)、1-メチル-1-(4-ビフェニルイル)エトキシカルボニル(Bpoc)、t-ブトキシカルボニル(BOC)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、およびベンジルオキシカルボニル(Cbz)などのカルバメート保護基;ホルミル、アセチル、トリハロアセチル、ベンゾイル、およびニトロフェニルアセチルなどのアミド保護基;2-ニトロベンゼンスルホニルなどのスルホンアミド保護基;ならびにフタルイミドおよびジチアスクシノイルなどのイミンおよび環状イミド保護基が挙げられるが、これらに限定されない。これらのアミノ保護基の均等物もまた、本発明の化合物および方法に包含される。
【0082】
L. 固体支持体
多くの固体支持体が市販されており、当業者であれば、固相合成ステップにおいて使用される固体支持体を容易に選択することができる。ある特定の実施形態において、ユニバーサルサポートが使用される。ユニバーサルサポートは、オリゴヌクレオチドの3’末端に位置する異常なまたは修飾されたヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドの調製を可能にする。Universal Support 500およびUniversal Support IIは、Glen Research(22825 Davis Drive,Sterling,Va)から市販されているユニバーサルサポートである。ユニバーサルサポートに関するさらなる詳細については、Scott et al.,Innovations and Perspectives in solid-phase Synthesis,3rd International Symposium,1994,Ed.Roger Epton,Mayflower Worldwide,115-124]、Azhayev,A.V.Tetrahedron,55,787-800,1999、およびAzhayev and Antopolsky Tetrahedron,57,4977-4986,2001を参照されたい。加えて、オリゴヌクレオチドが、塩基性加水分解をより容易に受けるsyn-1,2-アセトキシホスフェート基を介して固体支持体に結合しているとき、オリゴヌクレオチドは、より穏和な反応条件下でユニバーサルサポートから切断され得ることが報告されている。Guzaev,A.I.;Manoharan,M.J.Am.Chem.Soc.,125:2380,2003を参照されたい。
【0083】
本発明のリガンド接合オリゴヌクレオチドにおける使用に想定される好ましい修飾オリゴヌクレオチドの具体例としては、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸(MNA)、または他の修飾骨格などの修飾された骨格または非天然ヌクレオシド間結合を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。本明細書に定義されるように、修飾された骨格またはヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドには、骨格内にリン原子を保持するもの、および骨格内にリン原子を有しないものが含まれる。本発明では、糖間骨格内にリン原子を有しない修飾オリゴヌクレオチドもまた、オリゴヌクレオシドと見なすことができる。
【0084】
具体的なオリゴヌクレオチド化学修飾を以下に記載する。所与の化合物内のすべての位置が均一に修飾される必要はない。反対に、1個より多くの修飾が、単一の編集オリゴヌクレオチド化合物内、またはさらにはその単一のヌクレオチド内に組み込まれてもよい。
【0085】
M. ヌクレオシジル間結合
好ましい修飾されたヌクレオシド間結合または骨格としては、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルならびに3’-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデートを含むホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、および正常な3’-5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’-5’連結類似体、ならびにヌクレオシド単位の隣接する対が3’-5’対5’-3’または2’-5’対5’-2’で連結している逆転した極性を有するものが挙げられる。様々な塩、混合塩、および遊離酸形態も含まれる。図20も参照されたい。
【0086】
上記のリン原子含有結合の調製に関する代表的な米国特許としては、米国特許第3,687,808号、同第4,469,863号、同第4,476,301号、同第5,023,243号、同第5,177,196号、同第5,188,897号、同第5,264,423号、同第5,276,019号、同第5,278,302号、同第5,286,717号、同第5,321,131号、同第5,399,676号、同第5,405,939号、同第5,453,496号、同第5,455,233号、同第5,466,677号、同第5,476,925号、同第5,519,126号、同第5,536,821号、同第5,541,306号、同第5,550,111号、同第5,563,253号、同第5,571,799号、同第5,587,361号、同第5,625,050号、および同第5,697,248号が挙げられるが、これらに限定されず、これらの各々は、参照により本明細書に援用される。
【0087】
リン原子を中に含まない好ましい修飾されたヌクレオシド間結合または骨格(すなわち、オリゴヌクレオシド)は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖間結合、混合されたヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキル糖間結合、または1個以上の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式の糖間結合から形成される骨格を有する。これらには、ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成され得るモルホリノ結合を有するもの;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド、およびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに混合されたN、O、S、および-CH構成部分を有する他のものが含まれる。
【0088】
上記のオリゴヌクレオシドの調製に関する代表的な米国特許としては、米国特許第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,185,444号、同第5,214,134号、同第5,216,141号、同第5,235,033号、同第5,264,562号、同第5,264,564号、同第5,405,938号、同第5,434,257号、同第5,466,677号、同第5,470,967号、同第5,489,677号、同第5,541,307号、同第5,561,225号、同第5,596,086号、同第5,602,240号、同第5,610,289号、同第5,602,240号、同第5,608,046号、同第5,610,289号、同第5,618,704号、同第5,623,070号、同第5,663,312号、同第5,633,360号、同第5,677,437号、および同第5,677,439号が挙げられるが、これらに限定されない。可能性のある骨格修飾の一覧については、図20を参照されたい。
【0089】
N. ヌクレオシド模倣物
他の好ましいオリゴヌクレオチド模倣物において、ヌクレオシド単位の糖とヌクレオシド間結合との両方、すなわち骨格が、新規の基で置き換えられる。核酸塩基単位は、適切な核酸標的合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているそのようなオリゴヌクレオチド、すなわちオリゴヌクレオチド模倣物の1つは、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、具体的にはアミノエチルグリシン骨格で置き換えられる。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分の原子に直接的または間接的に結合している。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許としては、米国特許第5,539,082号、同第5,714,331号、および同第5,719,262号が挙げられるが、これらに限定されない。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al.,Science,254:1497,1991に見出すことができる。
【0090】
本発明のいくつかの好ましい実施形態は、ホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチド、ならびに、ヘテロ原子骨格、具体的には-CH-NH-O-CH-、-CH-N(CH)-O-CH-(メチレン(メチルイミノ)すなわちMMI骨格として知られる)、-CH-O-N(CH)-CH-、-CH-N(CH)-N(CH)-CH-、および上記に参照した米国特許第5,489,677号の-O-N(CH)-CH-CH-(ここで、天然ホスホジエステル骨格は-O-P-O-CH2-と表わされる)、および上記に参照した米国特許第5,602,240号のアミド骨格を有する、オリゴヌクレオシドを用いる。上記に参照した米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも好ましく、図20を参照されたい。
【0091】
O. 核酸塩基修飾
本発明の編集オリゴヌクレオチドに用いられるオリゴヌクレオチドは、追加または代替として、核酸塩基修飾または置換を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「未修飾」または「天然」の核酸塩基は、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)を含む。修飾された核酸塩基は、他の合成および天然の核酸塩基、例えば5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンならびにグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンならびにグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシン、およびチミン、5-ウラシル(シュードウラシルとしても知られる)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル、ならびに他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンなどを含む。図21および22も参照されたい。
【0092】
上述の修飾核酸塩基ならびに他の修飾核酸塩基のうちの特定のものの調製に関する代表的な米国特許としては、米国特許第3,687,808号、同第4,845,205号、同第5,130,302号、同第5,134,066号、同第5,175,273号、同第5,367,066号、同第5,432,272号、同第5,457,187号、同第5,459,255号、同第5,484,908号、同第5,502,177号、同第5,525,711号、同第5,552,540号、同第5,587,469号、同第5,594,121号、同第5,596,091号、同第5,614,617号、同第5,681,941号、および同第5,808,027号が挙げられる。
【0093】
ある特定の実施形態において、本明細書に提供されるアンチセンス化合物、またはそれらの特定の部分は、標的核酸、標的領域、標的セグメント、またはそれらの特定の部分に対して相補的であるか、または少なくとも70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%相補的である。可能性のある核酸塩基修飾の一覧については、図21を参照されたい。
【0094】
P. 相補性
編集オリゴヌクレオチドと標的核酸とは、所望の作用が起こる(例えば、ハイブリダイゼーション後に所望の塩基修飾が起こることを許容する)ように、オリゴヌクレオチドの十分な数の核酸塩基が、標的核酸の対応する核酸塩基と水素結合することができるとき、互いに相補的である。
【0095】
編集オリゴヌクレオチドと標的核酸との間の非相補的な核酸塩基は、編集オリゴヌクレオチドが標的核酸に特異的にハイブリダイズ可能なままであるならば、耐用され得る。ある特定の実施形態において、本明細書に提供される編集オリゴヌクレオチド、またはその特定の部分は、標的核酸またはその特定の部分に対して相補的であるか、または少なくとも70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%相補的である。編集オリゴヌクレオチドの標的核酸との相補性パーセントは、日常的な方法を使用して決定することができる。例えば、20個の核酸塩基のうち16個が標的核酸に相補的であり、したがって特異的にハイブリダイズするであろう編集オリゴヌクレオチドは、80%の相補性となる。この例において、残りの非相補的な核酸塩基は、クラスター状であっても、または相補的な核酸塩基が散在していてもよく、互いにもしくは相補的な核酸塩基に近接している必要はない。それらは、編集オリゴヌクレオチドの5’末端、3’末端、または内部位置にあってもよい。別の例では、標的核酸との完全な相補性をもつ2個のオリゴヌクレオチドが側面に位置する、1個の非相補的な核酸塩基を有する18個の核酸塩基の長さである編集オリゴヌクレオチドは、標的核酸と94.4%の全体的な相補性を有することになり、したがって本発明の範囲内に含まれる。
【0096】
標的核酸のある領域との編集オリゴヌクレオチドの相補性パーセントは、当該技術分野で既知のBLASTプログラム(塩基局所配列検索ツール)およびPowerBLASTプログラムを使用して日常的に決定することができる(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,215:403 410,1990、Zhang and Madden,Genome Res.,7:649-656,1997)。SmithおよびWatermanのアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,2:482-489,1981)を利用し、デフォルト設定を使用した、Gapプログラム(Wisconsin配列分析パッケージ、Unix用バージョン8、Genetics Computer Group,University Research Park,Madison WI)もまた、使用され得る。
【0097】
II. 作用様式:
A. ハイブリダイゼーション
編集オリゴヌクレオチドと標的核酸とのハイブリダイゼーションは、異なるストリンジェントな条件下で起こり得、配列依存性であり、ハイブリダイズされる核酸分子の性質および組成によって決定される。最も一般的なハイブリダイゼーション機構は、核酸分子の相補的な核酸塩基間の水素結合(例えば、ワトソン-クリック型、フーグスティーン型、または逆フーグスティーン型の水素結合)を伴う。
【0098】
配列が標的核酸に特異的にハイブリダイズ可能かどうかを判定する方法は、当該技術分野で周知である。ある特定の実施形態において、本明細書に提供される編集オリゴヌクレオチドは、標的核酸と特異的にハイブリダイズ可能である。
【0099】
B. 標的結合
本発明の編集オリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNAを標的にするように設計される。編集ヌクレオチド(複数可)の片側または両側には、標的核酸に対して完全に相補的または実質的に相補的なオリゴヌクレオチドが位置してもよい。
【0100】
好ましい結合方法は、DNAのワトソンもしくはクリック鎖のいずれかに対するハイブリダイゼーションをもたらす鎖置換によるものか、またはRNAが標的である場合は、センスRNA鎖に対するアンチセンス編集オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによるものである。
【0101】
C. 編集オリゴヌクレオチド
編集オリゴヌクレオチドは、任意選択により、送達部分をオリゴヌクレオチドに共有結合させる「リンカー」を含有してもよい。リンカー結合は、編集オリゴヌクレオチド内の任意の核酸塩基に対するもの、5’末端に対するもの、3’末端に対するもの、糖残基に対するもの、または骨格に対するものであってもよい。リンカーは、この作業の実行に使用するための、当業者に既知の任意のリンカーであってよい。代替的に、リンカーは、編集オリゴヌクレオチドにおけるその性能を決定するために利用および試験されてもよい。例えば、本発明で利用され得るリンカーとしては、3’C3アミノリンカー、3’C7アミノリンカー、5’&3’C6アミノリンカー、5’C12アミノリンカー、5’光切断可能アミノリンカー、3’C3ジスルフィドリンカー、5’&3’C6、ジスルフィドリンカー、ジチオールリンカー、4-ホルミルベンズアミドアルデヒド、C8-アルキン-チミジン、カルボキシ-dTリンカー、DADEリンカー(5’カルボキシルリンカー)、3’グリセリル、5’ヘキシニル、チミジン-5-C2およびC6アミノリンカー、2’-デオキシアデノシン、8-C6アミノリンカー、2’-デオキシシチジン-5-C6アミノリンカー、2’-デオキシグアノシン-8-C6アミノリンカー、C7、内部アミノリンカー、光切断可能リンカー、または、介入基が、反応性基を標的核酸塩基の付近に位置付けるように機能する、介入物質含有リンカーが挙げられる。リンカー長は、炭素1個から炭素約20個、または他の化学構造の同等の長さに及び得るが、好ましくは、炭素10個未満または10個の炭素と同等の長さである。
【0102】
化学修飾様式の編集の場合、編集オリゴヌクレオチドを用いた成功裏の処理は、「標的核酸」のいくらかの割合が修飾されることをもたらす。
【0103】
化学修飾様式の編集の場合、単一のヌクレオチドの変化から生じる核酸配列の変異は、トランジションまたはトランスバージョンであり得る。トランジションは、点変異がプリンヌクレオチドを別のプリンヌクレオチドに、例えばアデノシンをグアノシンに、または、ピリミジンヌクレオチドを別のピリミジンヌクレオチドに、例えばシチジンをチミジンに変化させるときに生じる。
【0104】
トランジションまたはトランスバージョンが遺伝コード内で生じるとき、それらは、mRNAから発現されるタンパク質に、その産生に干渉することによって、または翻訳中にタンパク質のアミノ酸配列に変化を導入することによって、直接影響を及ぼし得る。mRNAに転写されるDNA内に提供される情報は、タンパク質に翻訳される核酸の分離したセグメントまたは長さを提供する。加えて、これらのセグメントは、翻訳が始まり終わるべき場所を示す制御要素を含有し、その結果、リボソームが、適切なアミノ酸配列を有するタンパク質を産生することができる。終止コドンを産生するmRNAに沿った点変異は、翻訳の終結の合図となり、所望のタンパク質の産生を妨げるか、または、翻訳の早期終結をもたらし、機能しないタンパク質を産生する場合がある。開始コドンは、近くの配列または開始因子が翻訳を開始することを必要とするが、終結を開始するには、終止コドン単独で十分である。
【0105】
本発明は、標的配列を野生型もしくは均等物に戻し、コドンが野生型でないにもかかわらず適切なアミノ酸に翻訳するように点変異を修飾するか、または、終止コドンがリードスルーコドンになり、タンパク質の産生が可能になるように点変異を修飾する、点変異の補正を提供する。mRNAにおいて、リードスルーコドンに変換され得る点変異の例は、5’UAAからCAA、5’UAGからCAGもしくはUGG、または5’UGAからCGAもしくはUGGへのトランジションを含み、DNAにおいては、5’TAAからCAA、3’ATTからGTT、5’TAGからCAGもしくはTGG、3’ATCからGTCもしくはACC、5’TGAからCGAもしくはTGG、および3’ACTからGCTもしくはACCである。
【0106】
点変異がmRNAのタンパク質翻訳セグメント内で起こるとき、結果として生じるコドンは、異なるアミノ酸として読み取られる場合がある。例えば、アデニンからグアニンへのトランスバージョンから生じ得る具体的なコドン変化としては、MetからVal、TyrからCys、HisからArg、GlnからArg、AspからSer、LysからArg、AspからGly、およびGluからGlyが挙げられる。加えて、終止コドンは、例えばアンバーストップからTrp、またはUGA終止コドンからTrpのように、アミノ酸コドンに変異し得る。
【0107】
例えばTからCへのトランジションなどの点変異がDNAまたはRNA内で起こるとき、転写、続いて翻訳は、結果として生じるタンパク質内のアミノ酸を変化させ得る。例えば、TからCへの変化は、PheからLeu、CysからArg、TrpからArg、PheからSer、TyrからHis、IleからThr、MetからThr、ValからAla、6つの連続したセリンのうち4つのProへの変化、4つの連続したロイシンのうち2つからSer、または6つのロイシンのうち4つからProへの、アミノ酸変化をもたらし得る。加えて、終止コドンは、例えばUAAもしくはUAG終止コドンからTrp、またはUGA終止コドンからArgのように、アミノ酸コドンに変異し得る。
【0108】
D. 標的核酸塩基の化学修飾による編集
図19は、化学修飾様式の編集のために本発明の編集オリゴヌクレオチドを利用する編集の機構を示す。編集オリゴヌクレオチドの長さは、例えば、編集を行うために利用されている化学構造の種類、標的に対して行われる編集の種類、およびリンカーの長さを含む、編集プロセスのいくつかの物理的態様に応じて異なり得る。
【0109】
編集の化学修飾法における編集オリゴヌクレオチドは、「ガイドオリゴヌクレオチド」、「配列修飾反応基」をガイドオリゴヌクレオチドに共有結合させる「リンカー」を含む、少なくとも3つの構成要素を含む。図19中、リンカーは、編集オリゴヌクレオチドの核酸塩基に結合した状態で示されている。しかしながら、この結合は、編集オリゴヌクレオチド内の任意の核酸塩基に対するもの、5’末端に対するもの、3’末端に対するもの、糖残基に対するもの、または骨格に対するものであってもよい。リンカーは、この作業の実行に使用するための、当業者に既知の任意のリンカーであってよい。代替的に、リンカーは、編集オリゴヌクレオチドにおけるその性能を決定するために利用および試験されてもよい。例えば、本発明で利用され得るリンカーとしては、3’C3アミノリンカー、3’C7アミノリンカー、5’&3’C6アミノリンカー、5’C12アミノリンカー、5’光切断可能アミノリンカー、3’C3ジスルフィドリンカー、5’&3’C6、ジスルフィドリンカー、ジチオールリンカー、4-ホルミルベンズアミドアルデヒド、C8-アルキン-チミジン、カルボキシ-dTリンカー、DADEリンカー(5’カルボキシルリンカー)、3’グリセリル、5’ヘキシニル、チミジン-5-C2およびC6アミノリンカー、2’-デオキシアデノシン、8-C6アミノリンカー、2’-デオキシシチジン-5-C6アミノリンカー、2’-デオキシグアノシン-8-C6アミノリンカー、C7、内部アミノリンカー、光切断可能リンカー、または、反応性基を標的核酸塩基の付近に位置付ける介入基サーバー、介入物質含有リンカーが挙げられる。リンカー長は、炭素1個から炭素約20個、または他の化学構造の同等の長さに及び得るが、好ましくは、炭素10個未満または10個の炭素と同等の長さである。
【0110】
化学修飾様式における編集オリゴヌクレオチドを用いた成功裏の処理は、「標的核酸」のいくらかの割合が修飾されることをもたらす。図19中、「化学修飾」(三角形)は、化学部分(例えば、メチル基)の付加を表すが、本明細書に記載される修飾は、化学基の様々な付加、または標的核酸配列の標的核酸塩基からの除去のうちの1つ(例えば、脱アミノ化)であってもよい。
【0111】
単一のヌクレオチドの変化から生じる核酸配列の変異は、トランジションまたはトランスバージョンであり得る。トランジションは、点変異がプリンヌクレオチドを別のプリンヌクレオチドに、例えばアデノシンをグアノシンに、または、ピリミジンヌクレオチドを別のピリミジンヌクレオチドに、例えばシチジンをチミジンに変化させるときに生じる。トランジションは、酸化的脱アミノ化、互変異性化、およびアルキル化試薬の作用によって引き起こされ得る。トランスバージョンは、プリンヌクレオチドがピリミジンヌクレオチドに、またはピリミジンヌクレオチドがプリンヌクレオチドに、例えばシチジンがアデノシンに、そしてグアノシンがチミジンに変換されるときに起こる。トランスバージョンは、電離放射線およびアルキル化試薬の作用によって引き起こされ得る。
【0112】
本発明は、様々な変異から生じる作用を低減させるか、または排除することのできる、編集オリゴヌクレオチドを提供する。例えば、変異がトランジション変異である場合、潜在的な編集機能は、好ましくはシトシンと対合するイノシンの形成をもたらす、6位におけるアデニン塩基の一酸化窒素媒介性脱アミノ化によって達成され得るA-G様変換;好ましくはウラシルまたはチミン塩基と対合するO6-アルキルグアニンをもたらす、グアニン塩基のO6-アルキル化によって達成され得るG-A様変換;アデニン塩基と対合するウラシルの形成をもたらす、4位におけるシトシン塩基の一酸化窒素媒介性または亜硫酸水素塩媒介性脱アミノ化によって達成され得るC-T様変換;および、好ましくはグアニン塩基と対合する4-アルキルチミンまたは4-アルキルウラシル塩基をもたらす、チミンまたはウラシル塩基のO4-アルキル化によって達成され得るTまたはU-C様変換を含み得る。
【0113】
変異がトランスバージョン変異である場合、潜在的な編集機能は、次のものを含み得る:A-C様変換は、アデニン塩基の付加体を生成するベンゾ[a]ピレンとの反応であり、T7RNAポリメラーゼにより回避されるアデニンのN6-ベンゾ[a]ピレンジオールエポキシド(BPDE)付加体をもたらし、高い確率で修飾アデニンの反対側のGの誤取り込みを導く;A-T様変換は、アデニン塩基の付加体を生成するベンゾ[a]ピレンとの反応であり、T7RNAポリメラーゼにより回避されるアデニンのN6-ベンゾ[a]ピレンジオールエポキシド(BPDE)付加体をもたらし、高い確率で修飾アデニンの反対側のAの誤取り込みを導く;そしてG-T様変換は、8-オキソ-GへのGの酸化によって行われ得、これは、RNAポリメラーゼによって8-オキソ-G修飾の反対側のRNA鎖にAが約50%取り込まれることをもたらす。
【0114】
E. 化学構造
本発明の化学修飾様式を用いる編集オリゴヌクレオチドは、アルキル化および脱アミノ化を含む様々な特異的化学反応によって、それらの機能を実行する。各種の反応において、任意選択の反応性基は、特異性を増加させ(Singh,et al.The resurgence of covalent drugs Nature Reviews:Drug Discovery Volume 10 April 2011)、合成、精製、および貯蔵の間の反応性を回避するために用いられ得、また、標的細胞に達する前に、細胞のpH、例えばエンドソームまたはリソソーム内の低いpHなど、細胞内エステラーゼ、温度、光、または還元環境によって、放出され得る。
【0115】
F. 編集作用
本発明は、様々な変異から生じる作用を低減させるか、または排除することのできる、編集オリゴヌクレオチドを提供する。
【0116】
本発明の一実施形態において、西洋の人口において嚢胞性線維症を引き起こす一般的な変異配列である、デルタF508が補正され得る。detalF508のような欠失変異の修復は、編集オリゴヌクレオチドを用いて、欠失した3個のヌクレオチドを挿入し直すことによって達成され得る。McNeer,N.A.ら(Nature Comm.DOI:10.1038/ncomms 7952 pgs.1-11,2015)は、3個のホスホロチオエート修飾を各端部に有する編集オリゴヌクレオチドを用いる一例を提供する。改善された化学修飾パターンを有するオリゴヌクレオチド、および同じ領域を標的にする本発明の編集オリゴヌクレオチドの構成は、3個のホスホロチオエート修飾を各端部に有し、かつMcNeerらによって使用されたものと同様の編集オリゴヌクレオチドに置き換えることができる。しかしながら、単一塩基のトランジションまたはトランスバージョンは、挿入と比較して、編集によってより効率的に達成され得、したがって、デルタF508変異の有害作用を抑制するCFタンパク質コード配列におけるR553からM(R553M)への変化は、この変異の表現型作用を補正することに対する代替的な手法である(X.Liu1 et al.Biochemistry 51(25):5113-5124,2012.doi:10.1021/bi300018e。これは、デルタF508のサプレッサー変異を作り出すために治療的編集を初めて適用するものである。
【0117】
CFタンパク質コード配列における、R555からK(R555K)への別の変化は、デルタF508変異の有害作用を抑制する(X.Liu1 et al.上記)。
【0118】
本発明の別の態様は、1つ以上の疾患に対して保護的であるアレル配列を個体のDNAまたはRNA内に作り出すために、個体に編集オリゴヌクレオチドを投与することを含む。例えば、APPタンパク質の一般的なアレルから、アルツハイマー防御性のAPPのアレル配列への変化を、DNAレベルで脳内において誘導することは、個体がアルツハイマー病の発症に対して抵抗性になることにつながる(Jonsson,T.et al.Nature,488(7409):96-9,2012.PubMed and Kero,M.et al.Neurobiol Aging,34(5):1518,2013)。好ましいアレル配列は、アルツハイマー病に対して約80%の生涯保護作用を有する、Ala673Thrアレルである。この変更は、例えば、この位置におけるコドンであるGCAをACAに変化させることによって行うことができる。
【0119】
アルツハイマー病のリスクを低減させ、かつ/またはその進行を減速させるための、保護的アレルを作り出すことの別の例は、アルツハイマー病リスクアレルであるAPOE4をAPOE3アレルに変換するように、APOE内のArg112をコードする核酸配列のCys112への変化を編集することである。この変更は、任意選択により、Arg158からCys158への変化と併せて行うことができ、これは、アルツハイマー病リスクアレルであるAPOE4を保護的アレルであるAPOE2に変化させる。この二重の変化は、単一の長い編集鎖、またはより小さい2個の別々の編集オリゴヌクレオチドを用いて達成され得る。Arg158からCys158への単一の変化は、APOE3を、より保護的なアレルであるAPOE2に変換する。図24の例示的な編集オリゴ配列を参照されたい。
【0120】
保護的アレルを作り出すことの別の例は、中途終止コドンを作り出すことによる肝臓内のPCSK9の不活性か、または、PCSK9を不活性化させるか、もしくはその活性を低減させる、多数の修飾のうちの1つである。PCSK9における自然発生のヌル変異体アレルは、閉塞性脳卒中および冠動脈疾患などの動脈硬化に基づく疾患に対して、最大90%の保護的な生涯の情動を有する。さらに、機能PCSK9を中和する治療抗体は、血清コレステロールレベルを低減させる。これらの抗体は高価であり、慢性的に投与される必要があるのに対し、DNAレベルでの編集は、血清コレステロールレベルの恒久的な低減をもたらす。変異アレルを修復することに対して、編集オリゴヌクレオチドを使用して保護的アレルを作り出すことの非自明的な利点の1つは、ヒト疾患を引き起こす変異の多くは集団内で不均質であり、したがって、様々な遺伝子型を有する患者を治療するために、異なる編集オリゴヌクレオチドのパネルが利用可能であることが必要であるのに対し、保護的編集のための標的配列は、集団内で大幅により均質であることである。
【0121】
III. 治療
A. 疾患
本発明の編集オリゴヌクレオチドは、疾患の作用を低減させるか、減少させるか、または排除するために利用され得る。本発明の編集オリゴヌクレオチドで治療され得る疾患としては、アデノシンデアミナーゼ欠損症;アルファ1アンチトリプシン欠損症;アルツハイマー病;アミノアシラーゼ2欠損症;アスパルトアシラーゼ欠損症;動脈硬化、粥状動脈硬化、カナバン-ファン・ボガエール-バートランド病(Canavan-Van Bogaert-Bertrand disease);シャルコー・マリー・トゥース病;嚢胞性線維症;乳がん素因変異;インスリン受容体変異により生じる糖尿病1型;糖尿病2型(例えば、標的遺伝子PTP-1BおよびABCA1C69Tアレル(Alharbi et al.,J.Biosci.38(5):893-897(2013))、鎌形赤血球症;ファブリー病;家族性大腸腺腫症;家族性アミロイド心筋症;家族性アミロイド多発ニューロパチー;家族性自律神経障害;家族性高コレステロール血症;フリートライヒ運動失調症;ゴーシェ病I型;ゴーシェ病I型I;糖原貯蔵障害II型;GM2ガングリオシドーシス;血色素症;血友病A;血友病B;血友病C;遺伝性盲目(rd1の変異を補正する編集オリゴヌクレオチドの網膜への送達の一例について、Andrieu-Soler Molecular Vision 13:692-706,2007を参照されたい);遺伝性高チロシン血症I型(HTI)(フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(FAH)の変異により生じる、Yin,et al.Nature biotechnology 32(6),2014)ヘキソサミニダーゼA欠損症;高コレステロール血症、卵巣がん素因変異;フェニルケトン尿症;多嚢胞性腎疾患;プリオン病;老人性全身性アミロイドーシス;鎌状赤血球症;鎌状赤血球貧血;スミス・レムリ・オピッツ症候群;脊髄性筋萎縮症;およびウィルソン病が挙げられる。
【0122】
具体的な疾患標的としては、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子遺伝子(CFTR);ジストロフィン遺伝子(DMD);アミロイドベータ(A4)前駆体タンパク質遺伝子(APP);第XII因子遺伝子;第IX因子遺伝子;第XI因子遺伝子;HgbS;インスリン受容体遺伝子;アデノシンデアミナーゼ遺伝子;アルファ-1アンチトリプシン遺伝子;乳がん1遺伝子(BRCA1);乳がん2遺伝子(BRCA2);アスパルトシクラーゼ遺伝子(ASPA);ガラクトシダーゼアルファ遺伝子(GLA);大腸腺腫症遺伝子(APC);B細胞内のカッパ軽ポリペプチド遺伝子エンハンサーの阻害薬、キナーゼ複合体関連タンパク質(IKBKAP);グルコシダーゼベータ酸遺伝子(GBA);グルコシダーゼアルファ酸遺伝子(GAA);血色素症遺伝子(HFE);アポリポタンパク質B遺伝子(APOB);低密度リポタンパク質受容体遺伝子(LDLR)、低密度リポタンパク質受容体アダプタータンパク質1遺伝子(LDLRAP1);プロタンパク質コンバターゼサブチリシン/ケキシン9型遺伝子(PCSK9);多嚢胞性腎疾患1(常染色体優性)遺伝子(PKD-1);プリオンタンパク質遺伝子(PRNP);PTP-1B;7-デヒドロコレステロールレダクターゼ遺伝子(DHCR7);生存運動ニューロン1、テロメア遺伝子(SMN1);ビキチン(biquitin)様修飾因子活性化酵素1遺伝子(UBA1);ダイニン、細胞質1、重鎖1遺伝子(DYNC1H1)、生存運動ニューロン2、セントロメア遺伝子(SMN2);(シナプス小胞結合膜タンパク質)関連タンパク質BおよびC(VAPB);ヘキソサミニダーゼA(アルファポリペプチド)遺伝子(HEXA);トランスサイレチン遺伝子(TTR);ATPアーゼ、Cu++輸送、ベータポリペプチド遺伝子(ATP7B);フェニルアラニンヒドロキシラーゼ遺伝子(PAH);ロドプシン遺伝子;網膜色素変性症1(常染色体優性)遺伝子(RP1);網膜色素変性症2(X連鎖劣性)遺伝子(RP2)、ならびに他の既知の遺伝子標的が挙げられる。
【0123】
編集オリゴヌクレオチドは、2型糖尿病(例えば、標的遺伝子PTP-1B)、アルツハイマー病(APP)、および家族性高コレステロール血症(PCSK9)などにおける保護アレルを作り出すか、または、嚢胞性線維症デルタ508変異などの遺伝子内サプレッサーを作り出すように、変異がミスセンス変異であるときの疾患症状(例えば鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血(SCA)、もしくは鎌形赤血球症など)、ナンセンス変異(例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィーなどにおける)、スパイシング変異(例えば家族性自律神経障害などにおける)を寛解させるために、利用され得る。他のミスセンスまたはナンセンス変異としては、アデノシンデアミナーゼ欠損症、アルファ1アンチトリプシン欠損症、アミノアシラーゼ2欠損症、アミロイド病、アスパルトアシラーゼ欠損症、乳がん素因変異、カナバン-ファン・ボガエール-バートランド病、シャルコー・マリー・トゥース病、嚢胞性線維症、糖尿病1型(インスリン受容体変異により生じる)、ファブリー病、家族性大腸腺腫症、家族性アミロイド心筋症、家族性アミロイド多発ニューロパチー、フリートライヒ運動失調症、ゴーシェ病I型、ゴーシェ病II、糖原貯蔵障害II型、GM2ガングリオシドーシス、血色素症、血友病A、血友病B、血友病C、ヘキソサミニダーゼA欠損症、卵巣がん素因変異、フェニルケトン尿症、多嚢胞性腎疾患、プリオン病、老人性全身性アミロイドーシス、スミス・レムリ・オピッツ症候群、脊髄性筋萎縮症、ウィルソン病、および遺伝性盲目が挙げられる。
【0124】
本発明のオリゴヌクレオチドで治療することのできる疾患および障害の追加の例、ならびに該オリゴヌクレオチドを使用する方法は、図23に開示されている。
【0125】
代表的な疾患および障害に関連する遺伝子を標的にする編集オリゴヌクレオチドの非限定的な例は、図24に開示されている。
【0126】
B. 薬学的組成物
本発明の薬学的組成物は、標的遺伝子の発現をもたらすのに十分な投与量で投与される。概して、編集オリゴヌクレオチドの好適な用量は、受容者の体重1キログラム当たり1日に0.01~5.0ミリグラムの範囲、または必要であれば1キログラム当たり最大50ミリグラム、好ましくは体重1キログラム当たり1日に0.1~200マイクログラムの範囲、より好ましくは体重1キログラム当たり1日に0.1~100マイクログラムの範囲、さらにより好ましくは体重1キログラム当たり1日に1.0~50マイクログラムの範囲、最も好ましくは体重1キログラム当たり1日に1.0~25マイクログラムの範囲である。本薬学的組成物が1日1回投与されてもよく、あるいは、編集オリゴヌクレオチドが、1日を通して適切な間隔における2回、3回、4回、5回、6回、もしくはそれを超える部分用量で、またはさらには継続的輸注を使用して投与されてもよい。その場合、各部分用量に含有される編集オリゴヌクレオチドは、1日の全投与量を達成するために、相応により少量でなければならない。投与量単位は、例えば、数日の期間にわたって編集オリゴヌクレオチドの徐放をもたらす従来の徐放性製剤を使用した、数日間にわたる送達のために調合することもできる。徐放性製剤は、当該技術分野で周知である。この実施形態において、投与量単位は、対応する複数の1日用量を含む。
【0127】
i. 投与量
当業者であれば、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の全体的な健康および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むがこれらに限定されない、ある特定の要因が、対象を効果的に治療するために必要とされる投与量およびタイミングに影響し得ることを理解するであろう。さらに、治療有効量の組成物を用いた対象の治療は、単一の治療または一連の治療を含むことができる。本発明に包含される個別の編集オリゴヌクレオチドの有効な投与量およびインビボ半減期の推定は、従来の方法論を使用して、または本明細書の他の箇所に記載される適切な動物モデルを使用したインビボ試験に基づいて、行うことができる。
【0128】
ii. 投与経路
本発明に包含される薬学的組成物は、経口、または、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、直腸、膣、ならびに局所(口腔および舌下を含む)投与を含む非経口経路を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知の任意の手段によって投与されてよい。好ましい実施形態において、本薬学的組成物は、静脈内投与される。
【0129】
筋肉内、皮下、および静脈内の使用については、本発明の薬学的組成物は、概して、適切なpHおよび等張性に緩衝された、無菌水溶液または懸濁液中で提供される。好適な水性ビヒクルとしては、リンゲル液および等張塩化ナトリウムが挙げられる。好ましい実施形態において、担体は、もっぱら水性緩衝液から成る。この文脈において、「もっぱら」とは、標的遺伝子を発現する細胞における編集オリゴヌクレオチドの取り込みに影響を及ぼすかまたはそれを媒介し得る、補助的な薬剤またはカプセル化物質が存在しないことを意味する。そのような物質としては、例えば、以下に記載されるリポソームまたはカプシドなどのミセル構造体が挙げられる。本発明による水性懸濁液は、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、およびトラガントゴムなどの懸濁剤、ならびにレシチンなどの湿潤剤を含み得る。水性懸濁液のための好適な防腐剤としては、p-ヒドロキシ安息香酸エチルおよびp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピルが挙げられる。
【0130】
本発明による有用な薬学的組成物は、身体からの急速な排除から編集オリゴヌクレオチドを保護するカプセル製剤、例えばインプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤などを含む。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性かつ生体適合性のポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製法は、当業者には明らかであろう。これらの材料は、Johnson & Johnson,Inc.(New Brunswick,NJ)およびNova Pharmaceuticals,Inc.(Bella Vista,Australia)から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞を標的にするリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号、PCT出願国際公開第91/06309号、および欧州特許公開第EP-A-43075号に記載される、当業者に既知の方法に従って調製するか、または、Northern Lipids(Burnaby,British Columbia)、Avanti Polar Lipids(Alabaster,Alabama)、もしくはArbutus BioPharma(Burnaby,British Columbia)から商業的に入手することができる。ナノ粒子送達を使用してもよく、これは、J.Zhou et al.Pharmaceuticals,6:85-107,2013、doi:10.3390/ph6010085,McNeer et al.,Gene Ther.20(6):658-669,2013、doi:10.1038/gt.2012.82,McNeer et al.,Nature Comm.DOI:10.1038/ncomms 7952 pgs.1-11,2015、およびYuen Y.C.et al.Pharmaceuticals,5:498-507,2013、doi:10.3390/pharmaceutics5030498に記載されている。
【0131】
iii 毒性および有効性
かかる化合物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養液または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との用量比が治療指数であり、これは、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0132】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトにおいて使用するためのある範囲の投与量の処方に使用することができる。本発明の組成物の投与量は、毒性をほとんどまたは全く伴わないED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で異なってもよい。本発明の方法に使用されるいかなる化合物についても、治療有効用量は、細胞培養アッセイから初めに推定することができる。用量は、細胞培養液中で決定された場合に、IC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する被験化合物の濃度)を含む、化合物の、または適切な場合は標的配列のポリペプチド産物の循環血漿濃度範囲を達成する(例えば、ポリペプチドの濃度低下を達成する)ように、動物モデルにおいて処方され得る。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィによって測定され得る。
【0133】
IV. 組成物および方法
本発明のオリゴヌクレオチドは、組成物および方法において提供される。
【0134】
一態様において、生物内の単離細胞(複数可)内の核酸配列を修飾する方法であって、相補的な細胞核の修飾(複数可)が生じるようにオリゴヌクレオチドを該細胞に導入するステップを含む方法が、本明細書に提供され、該修飾は、疾患を防ぐアレルを作り出すか、変異を修復するか、または遺伝子をノックアウトする。
【0135】
別の実施形態では、疾患を防ぐアレルは、標的遺伝子の機能を不活性化させないが、標的遺伝子の機能を調整する。
【0136】
なおも別の実施形態において、本方法は、標的遺伝子の機能の調整をもたらす。標的遺伝子の機能の調整は、遺伝子産物の活性または発現を増加させ得る。標的遺伝子の機能の調整は、翻訳後にプロセシングされる遺伝子産物の活性または発現を部分的に減少させ得る。
【0137】
標的遺伝子の機能の調整は、翻訳後にプロセシングされる遺伝子産物の活性または発現を、修飾された細胞において50パーセント以下、部分的に減少させ得る。標的遺伝子の機能の調整は、翻訳後にプロセシングされる遺伝子産物の活性または発現を、修飾された細胞において75パーセント以下、部分的に減少させ得る。標的遺伝子の機能の調整は、翻訳後にプロセシングされる遺伝子産物の活性または発現を、修飾された細胞において90パーセント以下、部分的に減少させ得る。
【0138】
本方法のある特定の実施形態において、標的遺伝子産物は、プロテアーゼ切断によって翻訳後に修飾されたタンパク質である。具体的な実施形態では、標的遺伝子タンパク質はAPPであり、遺伝子の修飾は、APPの配列を変化させて、それをベータ-セクレターゼによる切断に影響されにくくする。APPにおける673位をコードする配列は、アラニンからスレオニンに変化させられ得る。
【0139】
別の態様において、本発明のオリゴヌクレオチドを含む組成物が、本明細書に提供される。本組成物は、本明細書に記載の方法において使用され得る。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドが、製剤(例えば、編集オリゴヌクレオチド製剤)中に存在する。一実施形態において、編集オリゴヌクレオチド製剤は、編集効率を上昇させる外因性タンパク質またはリボ核タンパク質(または該タンパク質もしくはリボ核タンパク質を発現する核酸)を含む。編集効率を上昇させる外因性タンパク質またはリボ核タンパク質は、プログラム可能ヌクレアーゼであり得る。編集効率を上昇させる外因性タンパク質またはリボ核タンパク質は、CRISPR-Cas9、ジンクフィンガー、またはTalenプログラム可能ヌクレアーゼであり得る。編集オリゴヌクレオチドは、一本鎖の未修飾DNAであり得る。編集オリゴヌクレオチドは、一本鎖であり、少なくとも10個のデオキシリボース糖を含有してもよい。編集オリゴヌクレオチドは、化学修飾されていてもよい。
【0140】
編集オリゴヌクレオチドの化学修飾は、ホスホロチオート(phosphorothiotes)を含み得る。編集オリゴヌクレオチドの化学修飾は、各末端における3個のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み得る。編集オリゴヌクレオチドの化学修飾は、末端における合計1~5個のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み得る。編集オリゴヌクレオチドの化学修飾は、合計7個以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み得る。一実施形態において、編集オリゴヌクレオチドの化学修飾は、合計7個以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含むが、ホスホロチオエート修飾されていない少なくとも10個のヌクレオチド間結合が残存する。一実施形態において、修飾は、いかなるホスホロチオエート修飾も含有しない。一実施形態において、修飾は、ホスホロチオートではないエキソヌクレアーゼ末端ブロッキング基を含む。
【0141】
ある特定の実施形態において、本組成物は、化学修飾された核酸塩基を有するオリゴヌクレオチドを含む。化学修飾された核酸塩基(複数可)は、5メチルデオキシシチジンとすることができる。いくつかの実施形態では、1個~約500個の5メチルデオキシシチジンが存在する。他の実施形態では、1個~約50個の5メチルデオキシシチジンが存在する。他の実施形態では、1個~約10個の5メチルデオキシシチジンが存在する。他の実施形態では、1個~約5個の5メチルデオキシシチジンが存在する。他の実施形態では、1個~約5個の5メチルデオキシシチジンが存在する。他の実施形態では、1個の5メチルデオキシシチジンが存在する。他の実施形態では、5メチルデオキシシチジンのうちの1個は、ミスマッチ5’TGにハイブリダイズされた5’CpG配列内に存在する。具体的な実施形態では、この5’TG標的部位が、メチオニン開始コドンのTGであり、編集は、機能性標的タンパク質の産生を低減させるか、または排除する。
【0142】
本明細書に記載される方法および組成物の具体的な実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、2’修飾を含む。本明細書に記載される方法および組成物の別の具体的な実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、2’修飾のみを含む。具体的な実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、編集部位の5’側に2’F、および編集部位の3’側に2’-O-mt、またはその両方を含む。別の具体的な実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、編集部位近くの親和性を増加させる修飾塩基を含み、該修飾塩基は、5メチルCではない。
【0143】
本明細書に記載される方法および組成物の具体的な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、送達ビヒクル内でカプセル化される(核酸の送達ビヒクルの説明については、Yin et al.Nature Reviews,Genetics.15:541-555(2014)を参照されたい)。
【0144】
本明細書に記載される方法および組成物の具体的な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、向上した細胞取り込みを与える接合分子をさらに含む。
【0145】
本明細書に記載される方法および組成物の具体的な実施形態では、本方法および組成物は、ヘルパーオリゴヌクレオチドをさらに含む。
【0146】
一態様において、編集オリゴヌクレオチドが本明細書に提供され、該編集オリゴヌクレオチドは、細胞内の相補的な標的配列を編集することができ、この編集オリゴヌクレオチドは、図20に列記される修飾から選択される1個以上の骨格修飾を含む。
【0147】
編集オリゴヌクレオチドの一実施形態において、骨格修飾は中性である。骨格修飾は、1個~約20個の中性修飾を含むことができる。具体的な実施形態では、骨格修飾は、2個~約4個の中性修飾を含む。
【0148】
別の実施形態では、骨格修飾は、メチルホスホネートである。骨格修飾は、1個~約20個のメチルホスホネートを含み得る。具体的な実施形態では、骨格修飾は、2~4個のメチルホスホネートを含む。具体的な実施形態では、骨格修飾は、2個のメチルホスホネートを含む。より具体的な実施形態では、骨格修飾は、2個のメチルホスホネートを5’末端上に含む。
【0149】
別の実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、1個~約20個の骨格修飾を、単一の修飾骨格編集オリゴヌクレオチド内に含み得る。一実施形態において、修飾のうちの少なくとも2個は、末端セグメント内にある。具体的な実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、2個の修飾を5’末端に含む。
【0150】
別の態様では、本明細書に記載される編集オリゴヌクレオチドを使用して、細胞または生物内の遺伝子を編集する方法が、本明細書に提供される。一実施形態において、細胞は、単離されたヒト細胞である。一実施形態において、生物は、ヒトである。ある特定の実施形態において、本方法は、図23に列記される適応症から選択される適応症を治療するために使用される。具体的な実施形態では、この適応症は、図24に列記される適応症から選択される。
【0151】
一実施形態において、遺伝子は、図24に列記される標的遺伝子である。具体的な実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、図24に列記される配列の少なくとも25パーセントを含む。別の具体的な実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、図24からの配列の少なくとも51パーセントを含む。
【0152】
別の態様において、編集オリゴヌクレオチドが本明細書に提供され、該編集オリゴヌクレオチドは、細胞内の相補的な標的配列を編集することができ、該編集オリゴヌクレオチドは、図21に列記される1個以上の骨格核酸塩基修飾を含む。一実施形態において、編集オリゴヌクレオチドは、図21からの修飾核酸塩基を、1個~約100個含む。一実施形態において、編集オリゴヌクレオチドは、図21からの修飾核酸塩基を、1個~約30個含む。一実施形態において、編集オリゴヌクレオチドは、図21からの修飾核酸塩基を、1個~約10個含む。具体的な実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、表1の修飾パターン種による修飾核酸塩基を、1個以上含む。
【0153】
編集オリゴヌクレオチドの別の実施形態では、修飾核酸塩基は、哺乳動物において、編集オリゴヌクレオチドによって免疫刺激を減少させる。具体的な実施形態では、修飾核酸塩基は、5’メチルC化学修飾を含む。別の具体的な実施形態では、核酸塩基修飾は、編集オリゴヌクレオチドの、その賛辞的な標的に対する親和性を増加させる。
【0154】
別の態様において、編集オリゴヌクレオチドが本明細書に提供され、該編集オリゴヌクレオチドは、細胞内の相補的な標的配列を編集することができ、この編集オリゴヌクレオチドは、図22に列記される1個以上の糖修飾を含む。一実施形態において、糖修飾は、2’糖修飾から選択される。2’糖修飾は、2’Fとすることができる。2’糖修飾は、2’O-メチルであり得る。2’糖修飾は、2’Fと2’O-メチル修飾との組み合わせであってもよい。
【0155】
編集オリゴヌクレオチドの一実施形態において、2’F修飾の過半数(例えば、50%超)は、編集部位の3’にある。編集オリゴヌクレオチドの別の実施形態では、2’O-メチル修飾の過半数(例えば、50%超)は、編集部位の5’にある。
【0156】
2’糖修飾は、オリゴヌクレオチドの、その標的核酸に対する親和性を増加させることができる。一実施形態において、編集オリゴヌクレオチドは、1~75個の糖修飾を含む。別の実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、2~30個の糖修飾を含む。別の実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、2~16個の糖修飾を含む。
【0157】
一実施形態において、編集オリゴヌクレオチドは、約5~100%化学修飾された塩基を含む。別の実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、約25~75%化学修飾された塩基を含む。別の実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、約40~60%化学修飾された塩基を含む。具体的な実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、2個の修飾を含む。具体的な一実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、2’Fおよび2’O-メチル修飾を含有する。
【0158】
一実施形態において、編集オリゴヌクレオチドは、図24に列記される遺伝子を標的にする。
【0159】
別の態様において、ゲノム編集によってヒト疾患を治療する方法であって、かかる治療を必要とする個人に、本明細書に記載される編集オリゴヌクレオチドを投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。
【0160】
なおも別の態様では、本明細書に提供されるのは編集オリゴヌクレオチドであり、1つ以上の送達接合体を含む。具体的な実施形態では、編集オリゴヌクレオチドは、1つの送達接合体を含む。送達接合体は、オリゴヌクレオチドの細胞取り込みを促進することができる。送達接合体は、生物における細胞内へのオリゴヌクレオチドの取り込みを向上させることができる。送達接合体は、編集オリゴヌクレオチド内のヌクレオチドに直接的あるいは間接的に共有結合している化学部分であり得る。直接的な共有結合は、例えば、オリゴヌクレオチドに対する化学部分の共有結合を含む。間接的な共有結合は、例えば、オリゴヌクレオチドと化学部分との両方に共有結合しているリンカーの使用を含む。一実施形態において、編集オリゴヌクレオチドは、生物における細胞内の取り込みを向上させる送達ビヒクルによってカプセル化されていない。
【0161】
一実施形態において、送達接合体は、受容体のリガンドである。具体的な実施形態では、リガンドは、1~10個のGal-Nacである。別の具体的な実施形態では、リガンドは、3個のGal-Nacである。一実施形態において、送達接合体は、親油性基である。親油性基は、約10個~約50個の炭素を有し得る。親油性基は、ある形態のコレステロールであってもよい。
【0162】
1つ以上の送達接合体を含む編集オリゴヌクレオチドは、疾患の治療に有用である。一態様において、ヒト疾患を治療または防止する方法であって、かかる治療を必要とする患者に、本明細書に記載される1つ以上の送達接合体を含む編集オリゴヌクレオチドを投与することによる方法が、本明細書に提供される。一実施形態において、本方法は、遺伝子を編集の標的にし、標的となる遺伝子は、図23に列記されるものである。別の実施形態では、治療のための標的遺伝子は、図24に列記されるものである。本方法の一実施形態において、編集オリゴヌクレオチド配列は、図24の配列のうちの1つを含む。
【0163】
V. 結果
表1に提示されるオリゴヌクレオチド構造物は、細胞培養液中のそれらの活性が親化合物未満であり得るとしても、研究および治療用途に有用であるが、それは、これらのオリゴヌクレオチドの各々が化学構造を付加し、免疫刺激の低減、ヌクレアーゼ安定性の上昇、標的特異性の上昇、化学毒性の低減、および/または親和性の上昇といった、他の予測される治療利益に寄与するからである。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【0164】
編集オリゴヌクレオチド100034は、5’および3’の2’Fアーム(5’および3’近位セグメント)を有し、低いが有意な編集を示す。2’Fは2’-O-メチルよりも立体的にDNAに類似しているため、これは予想外であり、2’Fは、3’アームに組み込まれると編集において高度に活性であった。5’アームでは、2’-O-メチル修飾が2’F修飾よりも良好に耐用され、これも同様に予想外であった。これは、編集オリゴヌクレオチド100058のような構造物が、各アーム内に同じ修飾を有する構築物と比べて好ましいことを暗示する。
【0165】
編集オリゴヌクレオチド100047で見られるような広範な修飾は編集と適合性があったが、これは、修飾の各々が、当該技術分野で使用されることの多い親オリゴヌクレオチド(5’および3’のホスホロチオエートDNAエキソヌクレアーゼブロッキング末端セグメントが、当該技術分野で一般的に使用されている)と比べて、予測される毒性を低下させるため、有用である。この毒性の低減の一部は、DNA内の2’HまたはRNA内の2’OHと比較して、2’修飾結合による、Toll様受容体の活性化の低減に起因すると考えられる。アームが効率的な編集部位として機能せず、したがってオフターゲット相互作用の潜在性が低いため、より高い標的特異性が達成される。
【0166】
5’のメチルホスホネートエキソヌクレアーゼブロッキング末端セグメントがかなり活性であった一方で、5’と3’と両方のメチルホスホネート末端セグメントを使用することは、有用ではあったが活性は低かった。この構造物は、多くのインビトロアッセイで細胞増殖の遮断に関連するすべてのホスホロチオエートを除去した。
【0167】
編集部位近くの単一の5’メチルC修飾は、複数の5’メチルC修飾がそうであったように、比較的高い編集効率と一致した。
【0168】
3’近位セグメント修飾の区間を3’編集セグメントに向かって延長することは、編集反応への干渉のためにあまり好ましくない場合があるが、これらの追加の修飾は、ヌクレアーゼ安定性をさらに増加させ、免疫刺激を低減させると予測される(例えば、編集オリゴヌクレオチド100062)。このことは、5’修飾にも当てはまる(例えば、編集オリゴヌクレオチド100066)。
【0169】
DNAよりもRNAに近い2’-O-メチル修飾を編集部位内に延長すること(例えば、編集オリゴヌクレオチド100068)は、編集活性を劇的に低減させるか、または排除すると予想される。また、3’の2’F修飾を編集部位内に延長すること(例えば、編集オリゴヌクレオチド100064)は、編集活性を低減させるか、または排除すると予想される。
【0170】
より長い編集オリゴヌクレオチドは、5’もしくは3’編集セグメント、または編集部位から離れた位置で修飾され得る結合を、より多く有する(例えば、編集オリゴヌクレオチド100072)。
【0171】
メチルホスホネートは優れた5’末端ブロックとなったが。編集オリゴヌクレオチド100074は、CY3の5’末端ブロック、および3’末端上に3つの賛辞的なホスホロチオエートDNAを有し、別の新規の組み合わせを提供する。
【0172】
ロックド核酸(LNA)も末端ブロッキング基として用いられ得るが、それらは、インビボ毒性を増加させる場合がある。この理由のため、本発明者らは、ヌクレアーゼ末端ブロックとして、末端の一方もしくは両方に、アンロックド核酸(UNA)(例えば、編集オリゴヌクレオチド100078)または簡素なリンカーを用いることを好む。エキソヌクレアーゼはDNAの単一の修飾を飛び越えることができるが、2’修飾末端残基と組み合わせれば(例えば、編集オリゴヌクレオチド100080)、この問題は軽減され得る。末端ブロッキングリンカーは、編集オリゴヌクレオチドに接合体を連結させるために使用することもできるという追加の利点を有する。これらの接合体(例えば、コレステロール(米国特許出願第20130131142 A1号)およびGal-Nacとの接合(米国特許第8,106,022号)は、培養液中および動物生体内での細胞へのオリゴヌクレオチドの取り込みを増加させることが示されている。編集オリゴヌクレオチドとのこれらの部分の接合体は、当該技術分野で既知の方法を利用して調製することができ、費用および/または毒性を付加する送達ビヒクル(例えば、リポソーム)の必要性を排除するであろう。
【0173】
一本鎖DNAが二重鎖よりも編集のために良好であるかどうかに関しては、いくらかの議論がある。編集オリゴヌクレオチド100082は、編集オリゴヌクレオチド100005、100031、およびこの修飾系列における他のものに対して賛辞的な末端ブロックを含有する。編集オリゴヌクレオチドは、賛辞的なオリゴヌクレオチドとは別々に細胞に付加されてもよく、または、二重鎖を形成するように、本明細書に記載される任意の修飾化学構造の賛辞的な編集オリゴヌクレオチドとプレハイブリダイズされてもよい。事前形成された二重鎖の利点は、二本鎖DNAは一本鎖ヌクレアーゼに抵抗性があることである。しかしながら、二重鎖に認められる不利点は、何らかの細胞修復/組換え機構が標的結合を促進しない限り、塩基が標的DNAと自由にハイブリダイズできないことであり得る。標的遺伝子、細胞型、および投与経路に応じて、一本鎖または二本鎖の編集オリゴヌクレオチドが編集により好適となり得る。
【0174】
編集オリゴヌクレオチド100083は、編集オリゴヌクレオチド100005、100031、および本明細書に開示される化学修飾された編集オリゴヌクレオチドGFP配列の系列における他のものに対して賛辞的な末端ブロックを有する、RNAプロテクターオリゴヌクレオチドである。このオリゴヌクレオチドは、賛辞的な編集ガイドオリゴヌクレオチドを、血清、エンド-リソソーム経路、および細胞質におけるヌクレアーゼから保護する。細胞質または核細胞質内にあるとき、RNA鎖は、内因性RNアーゼHによって最終的には分解され、一本鎖編集オリゴヌクレオチドが標的DNAへのハイブリダイゼーションのために遊離する。これは、おそらくは標的DNAへのハイブリダイゼーションに干渉することによって編集オリゴヌクレオチドの活性を低減させた、2’-O-メチル保護オリゴヌクレオチドを改善するものである。
【0175】
編集オリゴヌクレオチド(例えば、100085)は、5’近位領域がプロテクターオリゴヌクレオチド10086にハイブリダイズされると、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)内に充填することのできる二重鎖を形成するように、設計されている。相補的な標的核酸(RNAとDNA両方の標的;Saloman,et al.Cell 162:84-96,2015)に対するガイド鎖のハイブリダイゼーション速度は、アルゴノート内に充填される結果として劇的に上昇する。RISCによるハイブリダイゼーションオン速度のこの向上は、siRNAを対応するアンチセンスよりも約10~100倍強力にするものである(例えば、アンチセンスではRISCによる向上が観察されない)。したがって、アルゴノート内に充填された編集オリゴヌクレオチドの5’末端は、より急速に標的染色体DNAにハイブリダイズし、ゲノム編集の効力および/または効率を上昇させる。この機構は、内因性細胞機構を使用して標的結合を向上させ、したがって、標的結合を促進向上させるためにCas9のような外因性タンパク質の付加を必要としない。本発明のこの実施形態の利点は、それが外因性タンパク質を細胞に送達するという課題を回避することである。標的DNAへの結合が、アルゴノートと複合体形成した編集オリゴヌクレオチドの5’近位領域によってシーディングされると、残りの二重鎖が急速に生じる。
【0176】
編集オリゴヌクレオチド100037に関する本明細書のデータに基づくと、編集オリゴヌクレオチドの5’末端領域は、編集効率を維持しながら2’-O-メチルRNAで修飾され得、2’-O-メチル修飾でのオリゴヌクレオチドの部分修飾は、RISC充填と適合性があるようである(米国特許出願第20130317080号、同第20150267200号、同第20150105545号、同第20110039914号、および米国特許出願第12/824,011号)。プロテクターオリゴヌクレオチド(パッセンジャー鎖)は、好ましくは10~50個のヌクレオチド、より好ましくは12~30個のヌクレオチド、最も好ましくは19~27個のヌクレオチドであり、標的に対して完全または実質的に相補的である。この構造物において、編集オリゴヌクレオチドは、RNAiまたはマイクロRNA(miRNA)の調製に関する一般的に許容されるいくつかの設計規則に従って設計されている。例えば、パッセンジャー鎖の2塩基対3’オーバーハングが好ましいが、RNAiと適合性のある平滑末端および他の末端構造も有用である。ガイド(編集鎖)上の遊離5’ヒドロキシルまたはリン酸化5’ヒドロキシルも提供される。RNAiと適合性のある、ある範囲の化学修飾および構造が、この編集方略に用いられ得る。パッセンジャーRNAと二重鎖を形成する編集オリゴヌクレオチドの5’末端は、パッセンジャー鎖のRNアーゼH切断を活性化し、RISC充填を低減させ得る、パッセンジャー鎖内のRNAに結合したDNA結合を、約4個より多く有しないことが好ましい。好ましい実施形態において、ダイサー基質として機能するために十分に長い編集オリゴヌクレオチド内のRISC充填二本鎖領域を用いるとき、ダイサー切断部位(複数可)における2’-O-メチル修飾(複数可)の組み込みなどの、ダイサー切断を低減させるかまたは排除することが当該技術分野で既知である様式で、化学修飾またはミスマッチが挿入されてもよい(Salomon et al.Nucleic Acids Research,38(11):3771-9 Feb.2010)。ダイサー切断の低減が有益であるのは、編集部位に最も近い二重鎖の側面における編集オリゴヌクレオチドのダイサー切断が、編集オリゴヌクレオチドの残りからRISC充填領域を切り離し、これが標的DNA二重鎖内への鎖侵入の前に起こった場合、RISC充填の利点が排除されるからである。
【0177】
RISC内に充填することのできる二本鎖構造体は当該技術分野で既知であり、STEALTH RNAi化合物(Life Technologies,San Diego CAおよび米国特許第8,815,821号)、ダイサー基質(米国特許第8,349,809号、同第8,513,207号、および同第8,927,705号)、rxRNA ori(RXi Pharmaceuticals,Marlborough,Massachusetts)、短縮二重鎖を有するRNAiトリガ(2009年出願の米国特許出願第20120065243号)、およびsiRNA(米国特許第7,923,547号、同第7,956,176号、同第7,989,612号、同第8,202,979号、同第8,232,383号、同第8,236,944号、同第8,242,257号、同第8,268,986号、同第8,273,866号、および米国特許出願第13/693,478号)を含む。これらのRNAiトリガ構成は、RISC充填を支持し、またいくつかの場合では組織および細胞取り込みを向上させることで知られる、様々な化学修飾パターンにより、編集鎖上の遊離5’ヒドロキシルまたはリン酸化5’ヒドロキシルが維持されるか、または細胞内で遊離する限り、本明細書に記載のRISC充填編集オリゴヌクレオチド(ETAGEN整理番号100085を100086にハイブリダイズしたもの)におけるsiRNAで行われているように、編集オリゴヌクレオチドに組み込むことができる。
【0178】
VI. 利点
Kmiec法は、化学反応基が編集オリゴヌクレオチドに結合することを必要とせず、塩基を任意の他の天然塩基にする編集を達成し、小さな挿入または欠失を可能にするため、Kmiec法を用いる本発明の実施形態は、化学修飾法に勝るいくつかの利点を有する。
【0179】
化学修飾法は、標的核酸塩基の塩基対合特異性を変化させるための特定の基の付加または除去(すなわち、メチル化、エチル化、または脱アミノ化)を含み、したがって活発な細胞組換え機構を必要としないため、化学修飾法を用いる本発明の実施形態は、Kmiec法に勝るいくつかの利点を有する。
【0180】
本発明の編集オリゴヌクレオチドは、CRISPR、またはジンクフィンガーもしくは操作されたプログラム可能ヌクレアーゼなどのタンパク質を伴わずに利用され得る。CRISPRおよび/またはジンクフィンガーを利用する方法は、CRISPR内のガイドRNAではないが別々の一本鎖オリゴヌクレオチドである一本鎖オリゴヌクレオチドを、部位を修復するためのドナーとして使用している。しかしながら、本発明の方法および組成物は、これらの他の外因性タンパク質成分を厳密に必要とせず、現行の方法と同様または実質的に同様の効率の精確な編集をもたらす。
【0181】
本発明は、潜在的に危険な切断をDNA内に作り出すことなく、変異体配列を直接かつ正確に修復するため、CRISPR/Cas9、ジンクフィンガー、およびTalen DNA編集手法とは異なる核酸修復手法である。加えて、本発明は、任意選択により、送達粒子または免疫原性タンパク質を用いずに投与されてもよい。
【0182】
本発明は、転写を防止する所望の位置において、部位特異的変異、例えば終止コドンを作り出すことによって、任意の遺伝子をサイレンシングするために利用され得る。しかしながら、本発明の独自の適用形態の1つは、他の既知のサイレンシング方法では対処することができない、遺伝子の機能を調整または補正する点変異(例えば、優性変異により生じる機能獲得型変異)を標的にすることである。
【0183】
競合遺伝子療法およびmRNA置換方略などの他の手法は、変異遺伝子産物を置き換えることができる。しかしながら、本発明は、ベクター配列の組み込み、またはベクター挿入部位における染色体の損傷を引き起こすことなく、完全に正常な遺伝子の制御および発現レベルを達成するという利点を有する。
【0184】
上述の方法のいずれも、本明細書におけるある特定の他の方法と組み合わせて使用しても、またはそのような組み合わせで使用しなくてもよいことは理解されよう。さらに、上述の組成物のいずれも、任意選択により、本明細書に記載のある特定の方法と共に使用することができる。
【0185】
VII.実施例
表1および図2は、本発明の編集オリゴヌクレオチドの実施例を記載する。表1図2における編集オリゴヌクレオチド配列は、緑色蛍光タンパク質中のヌル変異を標的にし、この変異を補正して、蛍光のアッセイにより容易に監視することのできる機能性配列にする(Erin E.BrachmanおよびEric B.Kmiec(上記))。これらの化学修飾パターンは、変異を標的にする編集オリゴヌクレオチド、保護的アレルを作り出す編集オリゴヌクレオチド、または他の望ましいゲノムの変化を作り出す編集オリゴヌクレオチドに適用することができる。これらの実施例の各事例において、開示される配列により既に決定されていない場合、また本発明の他の実施形態において、編集部位は、編集オリゴヌクレオチドの中央領域内にあってもよく、または、5’末端もしくは3’末端の方に片寄っていてもよい。好ましい実施形態において、編集部位は、いずれかの末端から5ヌクレオチド超離れている。各事例において、未修飾であるか、または修飾されている場合は、依然として細胞のDNA修復および複製機構によりDNAと認識される保存的修飾(すなわち、ホスホロチオエートまたは5’メチルCを有する、DNAの領域内の編集部位を有することが好ましい場合もある。
【0186】
編集オリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAのいずれかの鎖に相補的であるように設計され得る。それらは、ラギング鎖合成のために鋳型鎖に結合するように設計されることが好ましく、それは、これがより効率的な編集をもたらす傾向があるためである。しかしながら、各鎖が標的にされてもよく、どの鎖がより効率的な編集をもたらすかは容易に判定することができる。
【0187】
図2は、表1のいくつかのオリゴヌクレオチドからのデータを示す。Gen 3Aは、オリゴヌクレオチド100013番および100014番であり、Gen 3Bは、オリゴヌクレオチド100015番および100016番であり、Gen 3Cは、オリゴヌクレオチド100017番および100018番であり、Gen 1は、オリゴヌクレオチド100003番および100004番であり、Gen 2は、オリゴヌクレオチド100005番および100006番である。
【0188】
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】

【表2-5】

【表2-6】

【表2-7】

【表2-8】

【表2-9】

【表2-10】

【表2-11】

【表2-12】

【表2-13】
【0189】
図2および表1の実験に用いられた方法
A. 細胞株および培養条件
HCT116細胞は、ATCC(American Type Cell Culture,Manassas,VA)から取得した。HCT116-19は、変異eGFP遺伝子を含有するpEGFP-N3ベクター(Clontech,Palo Alto,CA)を組み入れることによって作り出された。変異eGFP遺伝子は、非機能性eGFPタンパク質を生じる167位のナンセンス変異を有する。これらの実験では、10%のウシ胎仔血清、2mMのL-グルタミン、および1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充したマッコイ5A改変培地(Thermo Scientific,Pittsburgh,PA)中で、HCT116-19細胞を培養した。細胞は、37℃および二酸化炭素5%に維持した。
【0190】
B. HCT116-19細胞のトランスフェクション
同調細胞を利用した実験では、HCT116-19細胞を100mmの皿に2.5×10細胞で播種し、標的化の前に6mMアフィディコリンで24時間同調させた。細胞を4時間(または指示された時間)にわたって遊離させ、その後、PBS(2/2)で洗浄し、完全増殖培地を添加することによって、トリプシン処理およびトランスフェクションを行った。HCT116-19細胞を同調させたものと同調させていないものとに、4mmギャップのキュベット(BioExpress,Kaysville,UT)内で5×10細胞/100ulの濃度において、トランスフェクションを行った。Bio-Rad Gene Pulser XCell(商標)電気穿孔システム(Bio-Rad Laboratories,Hercules,CA)を使用して、一本鎖オリゴヌクレオチドを電気穿孔した(250V、LV、13msパルス長、2パルス、1秒間隔)。次いで、完全増殖培地を含む6ウェルプレートにおいて、細胞を37℃で指示された時間にわたって回復させ、その後分析した。遺伝子編集された細胞の分析。Guava EasyCyte 5 HT(商標)フローサイトメーター(Millipore,Temecula,CA)によって、蛍光(eGFP)を測定した。細胞をトリプシン処理により採取し、PBSで1回洗浄し、緩衝液(0.5% BSA、2mM EDTA、2mg/mLヨウ化プロピジウム(PI)を含むPBS)中に再懸濁させた。ヨウ化プロピジウムを使用して、細胞生存率をそのように測定し、生存細胞はPI(取り込み)に対して陰性に染色する。補正効率は、各試料中の全生細胞と比べた全eGFP陽性生細胞の割合として計算した。エラーバーは、標準誤差の計算値を使用して3セットのデータ点から生成される。
【0191】
例1
AからIへの変換のための2’-デオキシウリジン-NOC-18接合体を含む編集オリゴヌクレオチドの合成(G模倣体、図3A~C)。
5’-ジメトキシトリチル-(E)-5-(カルボメトキシビニル)-2’-デオキシウリジン-3’-ホスホラミダイトを、国際公開第2013150902号に記載のように調製する。5-カルボキシビニル-2’-デオキシウリジン残基を含有するオリゴヌクレオチド(図3A)を、ヌクレオシドホスホラミダイト構成要素を使用した標準的な自動オリゴヌクレオチド合成により調製する。このオリゴヌクレオチドに、1つ以上の所望の位置で、5’-ジメトキシトリチル-(E)-5-(カルボメトキシビニル)-2’-デオキシウリジン-3’-ホスホラミダイトを組み込む。このオリゴヌクレオチドを、室温で1時間にわたり0.5Mの水性水酸化ナトリウムを用いる処理、続いて50℃で3時間にわたり濃水酸化アンモニウムを用いる処理によって、脱保護する。粗製オリゴヌクレオチドを、アニオン交換と逆相HPLCとの組み合わせによって単離させ、精製する。配列および構造を質量分析によって確認する。
【0192】
1μmolのオリゴヌクレオチドを、0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.5~10.0)中で、20μmolの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)および20μmolのNOC-18と共にインキュベートすることによって、1-ヒドロキシ-2-オキソ-3,3-ビス(2-アミノエチル)-1-トリアゼン(NOC-18)(Aldrich;カタログ番号A5581、図1B)を、オリゴヌクレオチド内の1個以上の5’-ジメトキシトリチル-(E)-5-(カルボメトキシビニル)-2’-デオキシウリジン残基に接合させる。EDACを2μmolに分けて10分毎に添加する。反応が完了した後、2’-デオキシウリジン-NOC-18接合体(図3C)を、アニオン交換と逆相HPLCとの組み合わせによって単離させ、精製する。配列および構造を質量分析によって確認する。
【0193】
例2
AからIへの変換(G模倣体)およびCからUへの変換のための3,5-ペンタン酸-NOC-18接合体を含むオリゴヌクレオチドの合成
A. 5-(4,4’-ジメトキシトリチル)-ペンタン酸エチルエステル3-ホスホラミダイトの合成(図4
1. 3,5-ビス-O,O-(tert-ブチルジメチルシリル)ペンタン酸の調製(図4A
3,5-ジヒドロキシペンタン酸を、室温で12時間にわたり、2.2当量の塩化tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS-Cl)を含むピリジンで処理する。この混合物を、減圧下で蒸発させる。この残渣を精製せずに次のステップで使用する。
【0194】
2. 3,5-ビス-O,O-(tert-ブチルジメチルシリル)ペンタン酸エチルエステルの調製(図4B
粗製3,5-ビス-O,O-(tert-ブチルジメチルシリル)ペンタン酸を、無水ピリジンと無水エタノールとの混合物(9:1)中に溶解させる。5モル当量のN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドを添加し、この混合物を室温で4時間撹拌する。この溶液を濾過し、濾液を蒸発させる。この粗製生成物を次のステップで使用する。
【0195】
3. 3-ヒドロキシ-5-(4,4’-ジメトキシトリチル)-ペンタン酸エチルエステルの調製(図4C
3,5-ビス-O,O-(tert-ブチルジメチルシリル)ペンタン酸エチルエステルを、1Mのフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)を含むテトラヒドロフラン中に溶解させ、室温で24時間撹拌する。この混合物を蒸発させ、無水ピリジン中に溶解させる。塩化4,4’-ジメトキシイトリチル(4,4’-dimethoxyytrityl chloride)(DMT-Cl、1.2当量)を添加し、この混合物を12時間撹拌する。この生成物をジクロロメタン(DCM)/1M塩化ナトリウムで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。3-ヒドロキシ-5-(4,4’-ジメトキシトリチル)-ペンタン酸エチルエステルを、DCM-メタノール(0.1%ピリジン)でのシリカゲルクロマトグラフィによって精製する。純粋な生成物を含有する留分を合わせ、蒸発させ、高真空で乾燥させる。この化合物の構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0196】
4. 5-(4,4’-ジメトキシトリチル)-ペンタン酸エチルエステル3-ホスホラミダイトの調製(図4D
3-ヒドロキシ-5-(4,4’-ジメトキシトリチル)-ペンタン酸エチルエステルをDCM中に溶解させ、1当量のトリエチルアミンおよび1.1当量の2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホラミダイトを添加する。2時間後、この混合物を蒸発させ、残渣を酢酸エチル中に溶解させる。粗製の1-(4,4-ジメトキシトリチル)-2-[2-リフルオロアセト(rifluoroacet)-アミド]エチル-3-ホスホラミダイトを、0.1%のピリジンを含有するヘキサン-酢酸エチルでのシリカゲルクロマトグラフィによって精製する。純粋な生成物を含有する留分を合わせ、蒸発させ、高真空で乾燥させる。この化合物の構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0197】
B. 内部ペンタン酸残基に結合したカルボン酸基を含有するオリゴヌクレオチドの合成
1個以上の内部ペンタン酸残基を含有するオリゴヌクレオチドを、ヌクレオシドホスホラミダイト構成要素を使用した標準的な自動オリゴヌクレオチド合成により調製する。5-(4,4’-ジメトキシトリチル)-ペンタン酸エチルエステル3-ホスホラミダイトを、1つ以上の所望の位置でオリゴヌクレオチドに組み込むために使用する。このオリゴヌクレオチドを、室温で1時間にわたり0.5Mの水性水酸化ナトリウムを用いる処理、続いて50℃で3時間にわたり濃水酸化アンモニウムを用いる処理によって、脱保護する。粗製オリゴヌクレオチドを、アニオン交換と逆相HPLCとの組み合わせによって単離させ、精製する。配列および構造を質量分析によって確認する。
【0198】
C. 内部ペンタン酸残基のカルボン酸基を含有するオリゴヌクレオチドに対するNOC-18の接合(図5
ペンタン酸残基を含有する1μmolのオリゴヌクレオチドを、0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.5~10.0)中で、20μmolの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)および20μmolのNOC-18と共にインキュベートすることによって、オリゴヌクレオチドへのNOC-18の接合を行う。EDACを2μmolに分けて10分毎に添加する。NOC-18-オリゴヌクレオチド接合体を、アニオン交換と逆相HPLCとの組み合わせによって単離させ、精製する。配列および構造を質量分析によって確認する。
【0199】
例3
CからUへの変換のためのL-システイン酸接合体を含む編集オリゴヌクレオチドの合成
A. N-イソブチリル-7-デアザ-7-アミノメチル-2’-デオキシグアノシンの合成
1. 9-[3’,5’,N-トリ(tert-ブチル-ジメチルシリル)-β-D-2’-デオキシリボフラノシル]-7-デアザ-7-カルバミド-6-クロロプリンの調製(図6A
9-[3’,5’,N-トリ(tert-ブチル-ジメチルシリル)-β-D-2’-デオキシリボフラノシル]-7-デアザ-7-カルボメトキシ-6-クロロプリン(米国特許公開第2013/0035237号)を、室温で24時間にわたり、7Mアンモニアメタノール溶液で処理する。この溶液を蒸発させ、粗製の固体を精製せずに次のステップで使用する。
【0200】
2. 9-β-D-2’-デオキシリボフラノシル-7-デアザ-7-カルバミド-6-クロロプリンの調製(図6B
9-[3’,5’,N-トリ(tert-ブチル-ジメチルシリル)-β-D-2’-デオキシリボフラノシル]-7-デアザ-7-カルバミド-6-クロロプリンを、1MのTBAFを含むテトラヒドロフランで24時間処理する。この混合物を蒸発させ、粗製のヌクレオシドを逆相HPLCによって精製する。この化合物の構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0201】
3. 7-デアザ-7-カルバミド-2’-デオキシグアノシンの調製(図6C
9-β-D-2’-デオキシリボフラノシル-7-デアザ-7-カルバミド-6-クロロプリンを、5モル当量の1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を含有する水中に溶解させる。この溶液を一晩還流し、粗製のヌクレオシドを逆相HPLCによって精製する。化合物の構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0202】
4. 7-デアザ-7-カルバミド-N-イソブチリル-2’-デオキシグアノシンの調製(図6D
7-デアザ-7-カルバミド-2’-デオキシグアノシンを無水ピリジンと3回同時蒸発させる。この残渣をピリジンと無水イソ酪酸との混合物(3:1)中に溶解させ、結果として生じる混合物を室温で24時間撹拌する。フラスコを氷水浴中で冷却し、等体積のメタノールをゆっくり添加する。4時間後、この混合物を蒸発させ、残渣をピリジン中に溶解させ、氷水浴中で0℃に冷却し、等体積の1M水酸化ナトリウムを添加する。20分後、過剰量のピリジニウム形態のDowex樹脂を添加する。この混合物を濾過し、Dowex樹脂を50%水性ピリジンで洗浄する。この溶液を蒸発させ、粗製の7-デアザ-7-カルバミド-N-イソブチリル-2’-デオキシグアノシンを精製せずに次のステップで使用する。
【0203】
5. 7-デアザ-7-アミノメチル-N-イソブチリル-2’-デオキシグアノシンの調製(図6E
粗製の7-デアザ-7-カルバミド-N-イソブチリル-2’-デオキシグアノシンをメタノール中に溶解させ、厚肉ガラスバイアルに入れる。10%パラジウム炭素の粉末を添加する。この混合物を、40psiの水素圧力で24時間撹拌する。この溶液を濾過し、7-デアザ-7-アミノメチル-N-イソブチリル-2’-デオキシグアノシンを逆相HPLCによって精製する。この化合物の構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0204】
B. 5’-ジメトキシトリチル-N-イソブチリル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシグアノシン3’-ホスホラミダイトの合成
1. 5’-ジメトキシトリチル-N-イソブチリル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシグアノシンの調製(図7A
7-デアザ-7-アミノメチル-N-イソブチリル-2’-デオキシグアノシンを無水ピリジン中に溶解させ、10モル当量の無水トリフルオロ酢酸を添加する。混合物を室温で1時間撹拌する。フラスコを氷水浴中で0℃に冷却し、等体積のメタノールを添加し、30分後、この混合物を減圧下で蒸発させる。この混合物を、メタノールとさらに3回、そして無水ピリジンと2回、同時蒸発させる。結果として生じる残渣をピリジン中に溶解させる。
【0205】
塩化DMT(1.2当量)を添加し、この混合物を室温で6時間撹拌する。この混合物を減圧下で蒸発させ、残渣をDCM中に溶解させる。5’-ジメトキシトリチル-N-イソブチリル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシグアノシンを、メタノール/DCMの段階勾配を使用したシリカゲルクロマトグラフィによって精製する。純粋な生成物を含有する留分を合わせ、蒸発させ、高真空で乾燥させる。化合物の構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0206】
2. 5’-ジメトキシトリチル-N-イソブチリル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシグアノシン3’-ホスホラミダイトの調製(図7B
ジメトキシトリチル-N-イソブチリル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシグアノシンをDCM中に溶解させ、1当量のトリエチルアミンおよび1.1当量の2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホラミダイトを添加する。2時間後、この混合物を回転蒸発装置で蒸発させ、残渣を酢酸エチル中に溶解させる。粗製の5’-ジメトキシトリチル-N-イソブチリル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシグアノシン3’-ホスホラミダイトを、0.1%のピリジンを含有するヘキサン-酢酸エチルでのシリカゲルクロマトグラフィによって精製する。純粋な生成物を含有する留分を合わせ、蒸発させ、高真空で乾燥させる。化合物の構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0207】
C. 1-(4,4-ジメトキシトリチル)-2-[2-トリフルオロアセトアミド]エチル-3-ホスホラミダイトの合成
1. 2,2,2-トリフルオロ-N-[4-ヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)ブチル]アセトアミドの調製(図8A
2-(2-アミノエチル)プロパン-1,3-ジオールを、室温で1時間にわたり、過剰量の無水トリフルオロ酢酸を含むピリジンで処理する。等体積のメタノールを添加し、2時間後、この混合物を減圧下で蒸発させ、無水ピリジンと2回同時蒸発させる。この残渣を精製せずに次のステップで使用する。
【0208】
2. 2,2,2-トリフルオロ-N-[4-ジメトキシトリチル-3-(ヒドロキシメチル)ブチル]アセトアミドの調製(図8B
粗製の2,2,2-トリフルオロ-N-[4-ヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)ブチル]アセトアミドをピリジン中に溶解させ、1.1モル当量の塩化4,4-ジメトキシトリチルを溶液に添加する。この混合物を室温で4時間撹拌する。この溶液を蒸発させ、この生成物を、0.1%のピリジンを含有するDCM-メタノールでのシリカゲルクロマトグラフィによって精製する。純粋な生成物を含有する留分を合わせ、蒸発させ、高真空で乾燥させる。化合物の構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0209】
3. 1-(4,4-ジメトキシトリチル)-2-[2-トリフルオロアセトアミド]エチル-3-ホスホラミダイトの調製(図8C
2,2,2-トリフルオロ-N-[4-ジメトキシトリチル-3-(ヒドロキシメチル)ブチル]アセトアミドをDCM中に溶解させ、1当量のトリエチルアミンおよび1.1当量の2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホラミダイトを添加する。2時間後、この混合物を蒸発させ、残渣を酢酸エチル中に溶解させる。粗製の1-(4,4-ジメトキシトリチル)-2-[2-リフルオロアセト-アミド]エチル-3-ホスホラミダイトを、0.1%のピリジンを含有するヘキサン-酢酸エチルでのシリカゲルクロマトグラフィによって精製する。純粋な生成物を含有する留分を合わせ、蒸発させ、高真空で乾燥させる。化合物の構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0210】
D. 2,2,2-トリフルオロ-N-(2,2,5-トリオキソオキサチオラン-4-イル)アセトアミドの合成(図9
L-システイン酸(J.Mass Spectrometry,2012,V.47,pp.529-538)を、大過剰の無水トリフルオロ酢酸を含むピリジンで数時間処理する。この混合物を蒸発させ、ピリジンと2回、そしてトルエンと2回、同時蒸発させる。この粗製生成物を精製せずに使用する。
【0211】
E. CからUへの変換のための内部一級アミノ基を含むオリゴヌクレオチドの合成
7-デアザ-7-アミノメチル-2’-デオキシグアノシン残基または2-(2-アミノエチル)-1,3-プロピレン残基を含有するオリゴヌクレオチドを、ヌクレオシドホスホラミダイト構成要素を使用した標準的な自動オリゴヌクレオチド合成により調製する。5’-ジメトキシトリチル-N-イソブチリル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシグアノシン3’-ホスホラミダイトまたは1-(4,4-ジメトキシトリチル)-2-[2-トリフルオロアセトアミド]エチル-3-ホスホラミダイトを、1つ以上の特定の位置でオリゴヌクレオチドに組み込むために使用する。このオリゴヌクレオチドを、50℃で3時間にわたり濃水酸化アンモニウムを用いる処理によって脱保護する。粗製オリゴヌクレオチドを、アニオン交換と逆相HPLCとの組み合わせによって単離させ、精製する。構造および配列を質量分析によって確認する。
【0212】
F. 一級アミノ基を含むオリゴヌクレオチドに対する2,2,2-トリフルオロ-N-(2,2,5-トリオキソオキサチオラン-4-イル)アセトアミドの接合(図10
一級アミノ基を含有するオリゴヌクレオチドのトリエチルアンモニウム塩を乾燥DMF中に溶解させ、10モル過剰の2,2,2-トリフルオロ-N-(2,2,5-トリオキソオキサチオラン-4-イル)アセトアミドを添加する。この混合物を50℃で一晩撹拌する。この混合物を5体積の100mM TEABで希釈し、アニオン交換と逆相クロマトグラフィとの組み合わせによって精製する。
【0213】
例4
GからO-Me-Gへの変換のための2-デオキシシチジン-ニトロソアルキル接合体を含むオリゴヌクレオチド(A模倣体)の合成
1. 5’-ジメトキシトリチル-5-(E)-(3-トリフルオロアセトアミドアリル)-N-ホルムアミジン-2’-デオキシシチジンの調製(図11A
5-(E)-(3-トリフルオロアセトアミドアリル)-N-ホルムアミジン-2’-デオキシシチジン(Tetrahedron Letters,2011,V.52,pp.181-183)を無水ピリジン中に溶解させ、塩化DMT(1.2当量)を添加する。この混合物を室温で6時間撹拌する。この混合物を減圧下で蒸発させ、残渣をDCM中に溶解させる。粗製の5’-ジメトキシトリチル-5-(E)-(3-トリフルオロアセトアミドアリル)-N-ホルムアミジン-2’-デオキシシチジンを、メタノール/DCMの段階勾配を使用したシリカゲルクロマトグラフィによって精製する。純粋な生成物を含有する留分を合わせ、蒸発させ、高真空で乾燥させる。ヌクレオシドの構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0214】
2. 5’-ジメトキシトリチル-5-(E)-(3-トリフルオロアセトアミドアリル)-N-ホルムアミジン-2’-デオキシシチジン3’-ホスホラミダイトの調製(図11B
5’-ジメトキシトリチル-5-(E)-(3-トリフルオロアセトアミドアリル)-N-ホルムアミジン-2’-デオキシシチジンをDCM中に溶解させ、1当量のトリエチルアミンおよび1.1当量の2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホラミダイトを添加する。2時間後、この混合物を回転蒸発装置で蒸発させ、残渣を酢酸エチル中に溶解させる。粗製の5’-ジメトキシトリチル-E-5-(2-カルベトキシビニル)-N-ベンゾイル-2’-デオキシシチジン3’-ホスホラミダイトを、0.1%のピリジンを含有するヘキサン-酢酸エチルでのシリカゲルクロマトグラフィによって精製する。純粋な生成物を含有する留分を合わせ、蒸発させ、高真空で乾燥させる。ヌクレオシドの構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0215】
3. 4-[[メチル(ニトロソ)アミノ]メトキシ]-4-オキソ-ブタン酸の合成
ヒドロキシメチルメチルニトロソアミン(Kingston Chemistryカタログ番号KST-14259951)をピリジン中に溶解させ、1.1当量の無水コハク酸を添加する。この混合物を4時間撹拌する。この粗製生成物をヘキサンで沈殿させ、次のステップで使用する。
【0216】
4. 4-[[メチル(ニトロソ)アミノ]メトキシ]-4-オキソ-ブタン酸のNHSエステルの合成(図12
4-[[メチル(ニトロソ)アミノ]メトキシ]-4-オキソ-ブタン酸をピリジン中に溶解させ、1当量のN-ヒドロキシスクシンイミドを添加する。その混合物に、3当量のN,N’-ジシクロヘキシルカルボジアミドを添加する。この混合物を室温で8時間撹拌する。この混合物を濾過し、粗製生成物をヘキサンで沈殿させ、次のステップで使用する。
【0217】
5. GからO-MeGへの変換のための内部一級アミノ基を含むオリゴヌクレオチドの合成
5-アミノアリル-2’-デオキシシチジン残基または2-(2-アミノエチル)-1,3-プロピレン残基を含有するオリゴヌクレオチドを、ヌクレオシドホスホラミダイト構成要素を使用した標準的な自動オリゴヌクレオチド合成により調製する。5’-ジメトキシトリチル-5-(E)-(3-トリフルオロアセトアミドアリル)-N-ホルムアミジン-2’-デオキシシチジン3’-ホスホラミダイトまたは1-(4,4-ジメトキシトリチル)-2-[2-トリフルオロアセトアミド]エチル-3-ホスホラミダイトを、1つ以上の特定の位置でオリゴヌクレオチドに組み込むために使用する。このオリゴヌクレオチドを、50℃で3時間にわたり濃水酸化アンモニウムを用いる処理によって脱保護する。粗製オリゴヌクレオチドを、アニオン交換と逆相HPLCとの組み合わせによって単離させ、精製する。構造および配列を質量分析によって確認する。
【0218】
6. 一級アミノ基を含むオリゴヌクレオチドに対する4-{[メチル(ニトロソ)アミノ]メトキシ}-4-オキソ-ブタン酸のNHSエステルの接合
図13
一級アミノ基を含有する修飾オリゴヌクレオチドをDMF-0.1M炭酸水素ナトリウム(1:3)混合物中に溶解させ、10モル過剰の4-[[メチル(ニトロソ)アミノ]メトキシ]-4-オキソ-ブタン酸のNHSエステルを添加する。混合物を室温で2時間撹拌する。この混合物を5体積の100mM TEABで希釈し、オリゴヌクレオチド-4-[[メチル(ニトロソ)アミノ]メトキシ]-4-オキソ-ブタン酸接合体を、アニオン交換と逆相クロマトグラフィとの組み合わせによって精製する。非ヌクレオシド単位を含むオリゴヌクレオチドは、GからO-MeGへの変換アデノシン模倣体)のため、またはUからO-MeUへの変換(シチジン模倣体)のために使用することができる。
【0219】
例5
UからO-Me-Uへの変換のための2’-デオキシアデノシン-ニトロソ-N-メチル接合体を含む編集オリゴヌクレオチド(シチジン模倣体)の合成
A. 7-デアザ-7-アミノメチル-N-ベンゾイル-5’-DMT-dA-ホスホラミダイトの合成
1. 7-デアザ-7-カルボキサミド-N-ベンゾイル-2’-デオキシアデノシンの調製(図14A
2’-デオキシサンギバマイシン(Maruyama et.al.J.Med.Cmem.1983,vol.26 pp.25-29)を無水ピリジンと3回同時蒸発させる。次いでこの残渣をピリジンと塩化ベンゾイルとの混合物(9:1)中に溶解させ、結果として生じる混合物を室温で24時間撹拌する。フラスコを氷水浴中で冷却し、等体積のメタノールをゆっくり添加する。メタノールを添加したら、この混合物を1時間静置させる。この溶液を蒸発させ、粗製の7-デアザ-7-カルボキサミド-N-ベンゾイル-2’-デオキシアデノシンを、メタノール/DCMの段階勾配を使用したシリカゲルクロマトグラフィによって、または代替的に、アセトニトリル/100mM炭酸水素トリエチルアンモニウム勾配での逆相HPLCによって精製する。純粋な生成物を含有する留分を合わせ、蒸発させ、高真空で乾燥させる。ヌクレオシドの構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0220】
2. 7-デアザ-7-アミノメチル-N-ベンゾイル-2’-デオキシアデノシンの調製(図14B
7-デアザ-7-カルボキサミド-N-ベンゾイル-2’-デオキシアデノシンを、室温で12時間にわたり、水素化ジイソブチルアルミニウム(3モル当量)を含むTHFの1M溶液で処理する。この混合物を、勢いよく撹拌したロッシェル塩溶液(1.2Mの水性酒石酸カリウムナトリウム)中に注ぐ。この溶液を2時間勢いよく撹拌し、混合物をDCMで抽出する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させる。粗製の7-デアザ-7-アミノメチル-N-ベンゾイル-2’-デオキシアデノシンを、アセトニトリル/100mM炭酸水素トリエチルアンモニウム勾配での逆相クロマトグラフィによって精製する。純粋な7-デアザ-7-アミノメチル-N-ベンゾイル-2’-デオキシアデノシンを含有する留分を合わせ、蒸発させ、メタノールと、そして無水ピリジンと2回、同時蒸発させる。
【0221】
3. 5’-ジメトキシトリチル-N-ベンゾイル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシアデノシンの調製(図14C
7-デアザ-7-アミノメチル-N-ベンゾイル-2’-デオキシアデノシンを無水ピリジン中に溶解させ、10モル当量の無水トリフルオロ酢酸を添加する。混合物を室温で1時間撹拌する。フラスコを氷水浴中で0℃に冷却し、等体積のメタノールを添加し、30分後、この混合物を減圧下で蒸発させる。この混合物を、メタノールと3回、そして無水ピリジンと2回、同時蒸発させる。この残渣をピリジン中に溶解させる。
【0222】
塩化DMT(1.2当量)を添加し、この混合物を室温で6時間撹拌する。次いでこの混合物を減圧下で蒸発させ、残渣をDCM中に溶解させる。5’-ジメトキシトリチル-N-ベンゾイル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシアデノシンを、メタノール/DCMの段階勾配を使用したシリカゲルクロマトグラフィによって精製する。純粋な生成物を含有する留分を合わせ、蒸発させ、高真空で乾燥させる。ヌクレオシドの構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0223】
4. 5’-ジメトキシトリチル-N-ベンゾイル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシアデノシン3’-ホスホラミダイトの調製(図14D
5’-ジメトキシトリチル-N-ベンゾイル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシアデノシンをDCM中に溶解させ、1当量のトリエチルアミンおよび1.1当量の2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホラミダイトを添加する。2時間後、この混合物を回転蒸発装置で蒸発させ、残渣を酢酸エチル中に溶解させる。粗製の5’-ジメトキシトリチル-N-ベンゾイル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシアデノシン3’-ホスホラミダイトを、0.1%のピリジンを含有するヘキサン-酢酸エチルでのシリカゲルクロマトグラフィによって精製する。純粋な生成物を含有する留分を合わせ、蒸発させ、高真空で乾燥させる。ヌクレオシドの構造を、NMRおよび質量分析によって確認する。
【0224】
B. UからO-Me-Uへの変換のための内部一級アミノ基を含むオリゴヌクレオチドの合成
7-デアザ-7-アミノメチル-2’-デオキシアデノシン残基または2-(2-アミノエチル)-1,3-プロピレン残基を含有するオリゴヌクレオチドを、ヌクレオシドホスホラミダイト構成要素を使用した標準的な自動オリゴヌクレオチド合成により調製する。5’-ジメトキシトリチル-N-ベンゾイル-7-デアザ-7-(トリフルオロアセトアミド)メチル-2’-デオキシアデノシン3’-ホスホラミダイトまたは1-(4,4-ジメトキシトリチル)-2-[2-トリフルオロアセトアミド]エチル-3-ホスホラミダイトを、1つ以上の特定の位置でオリゴヌクレオチドに組み込むために使用する。このオリゴヌクレオチドを、50℃で3時間にわたり濃水酸化アンモニウムを用いる処理によって脱保護する。粗製オリゴヌクレオチドを、アニオン交換と逆相HPLCとの組み合わせによって単離させ、精製する。構造および配列を質量分析によって確認する。
【0225】
C. 一級アミノ基を含むオリゴヌクレオチドに対する4-[[メチル(ニトロソ)アミノ]メトキシ]-4-オキソ-ブタン酸のNHSエステルの接合(図15
一級アミノ基を含有する修飾オリゴヌクレオチドをDMF-0.1M炭酸水素ナトリウム(1:3)混合物中に溶解させ、10モル過剰の4-[[メチル(ニトロソ)アミノ]メトキシ]-4-オキソ-ブタン酸のエステルを添加する。この混合物を室温で2時間撹拌する。次いでこの混合物を5体積の100mM炭酸水素トリエチルアンモニウムで希釈し、オリゴヌクレオチド-4-[[メチル(ニトロソ)アミノ]メトキシ]-4-オキソ-ブタン酸接合体を、アニオン交換と逆相クロマトグラフィとの組み合わせによって精製する。
【0226】
例6
ニトロソアミンメチル化基を含有する編集オリゴヌクレオチドを使用した、mRNAにおけるUからO-Me-Uへの変換スキーム(図16
1つの概略的な合成法の一例を図16に示す。
【0227】
例7
ニトロソアミンメチル化基を含有する編集オリゴヌクレオチドを使用した、mRNAにおけるGからO-Me-Gへの変換スキーム(図17
1つの概略的な合成法の一例を図17に示す。
【0228】
例8
亜硫酸水素塩生成基を含有する編集オリゴヌクレオチドを使用した、mRNAにおけるCからUへの変換スキーム(図18
1つの概略的な合成法の一例を図18に示す。
【0229】
例9
編集オリゴヌクレオチドの長さおよび位置決めの最適化のためのプロセス
編集オリゴヌクレオチドが編集部位のおよそ中央(中央の編集部位)に位置するように編集オリゴヌクレオチドを位置付けることは、典型的にいくらかのレベルの編集効率をもたらすが、それは必ずしも最適とは限らない。変異補正、または他の標的配列変化を標的にする(例えば、特定の保護的アレルを作り出す)とき、全体的な標的部位は、所望の配列変化の位置によって決定される。この場合、任意選択の長さの最適化、および標的部位に沿った編集オリゴヌクレオチドの5’-3’位置決めは、いくぶんか拘束され、次のように行うことができる。DNA標的の場合、編集オリゴヌクレオチドは、標的DNAのセンスまたはアンチセンス鎖を標的にするように設計することができる。RNA標的の場合、編集オリゴヌクレオチドは、標的RNAに対して相補的にのみ設計することができる。DNAを標的にする場合とRNAを標的にする場合との両方において、最適化は、標的変異上のおよそ中央に位置する親編集オリゴヌクレオチドから開始することができる。この編集オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載される化学修飾パターンのうちの1つを有することができる。好ましくは、部位のスクリーニングのために使用される最初の編集オリゴヌクレオチドは、長さならびに5’および3’の位置決めが単純に変化してもよい、簡素な末端ブロック修飾パターンを有し得る。標的核酸塩基の化学修飾により機能する編集オリゴヌクレオチドの場合、その塩基修飾活性は、標的核酸塩基の付近に位置したままである必要がある。
【0230】
完全または部分的な不活性化のための遺伝子を標的にする場合、その遺伝子に沿った標的部位の選択は拘束が大幅に少なく、その遺伝子に沿って1つまたは多くの標的部位を使用およびスクリーニングのために選択することができる。例えば、ほとんどの遺伝子は、コード配列に沿った様々な配列のうちの1つにおいて中途終止コドンを作り出すことによって、完全または部分的に不活性化される。編集オリゴヌクレオチドは、これらの標的部位のうちの1つ以上に対して生成され、細胞または生物において、相対的な編集効率、そして場合により特異性について試験され得る。この初期スクリーニングに基づいて最も望ましい特性を有するいくつかの編集オリゴヌクレオチドが、以下に記載される位置および長さの最適化に供され得る。
【0231】
DNA標的では、約40~約72ヌクレオチドの長さを有する編集オリゴヌクレオチドから開始することが好ましい。RNAを標的にする場合、18~25ヌクレオチドの編集オリゴヌクレオチドから開始することが好ましい。次いで、この編集オリゴヌクレオチドは、5’方向および3’方向に1~約10ヌクレオチドの増分でシフトされ得る。結果として生じる各配列を細胞または生物における活性について試験して、編集効率そしてまた潜在的な編集特異性を判定することができる。これらの結果に基づいて、最適な位置(複数可)を決定することができる。この第1回目の最適化から所望される編集効率範囲の編集オリゴヌクレオチド配列から開始して、編集オリゴヌクレオチド配列は、1~約20ヌクレオチドの増分で5’末端、3’末端、または5’末端と3’末端との両方において、標的に相補的な塩基を付加するか、または除去することによって、長さを改変され得る。有効性および潜在的な特異性に関する細胞または生物における追加の試験は、1つのリードまたは複数のリードの編集オリゴヌクレオチド配列をもたらす。代替的に、親配列から開始して長さがまず最適化されてもよく、次いで、結果として生じるリード(複数可)が、編集オリゴヌクレオチドを5’および/または3’方向にシフトすることによってさらに最適化されてもよい。
【0232】
最適化された長さ、鎖(アンチセンスまたはセンス)、および5’-3’位置決めが決定されたら(または、このプロセスが行われない場合は、非最適化オリゴヌクレオチド配列を起点として使用することができる)、所望の有効性を有する任意の編集オリゴヌクレオチド配列は、化学修飾パターンに関して変更され、細胞または生物において試験され得る。最適化中に親編集オリゴヌクレオチドの長さを増加または減少させる場合、5’編集セグメント、編集部位、および3’編集セグメントは、長さおよび編集部位に対する位置付けが同じまたは実質的に同じのままである一方で、5’近位セグメントおよび3’近位セグメントは、長さが増加または減少することが好ましい。代替的に、5’末端セグメント、5’近位セグメント、3’近位セグメント、および3’末端セグメントは、長さおよび編集オリゴヌクレオチドの末端に対する位置が同じまたは実質的に同じのままであり、5’編集セグメントおよび3’編集セグメントは、長さが増加または減少する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
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図22
図23-1】
図23-2】
図23-3】
図23-4】
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図24-1】
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図24-4】
図24-5】
図24-6】
図24-7】
図25
【配列表】
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