(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】乾癬を治療するためのコルチコステロイドおよびレチノイドを含む局所用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/573 20060101AFI20220107BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220107BHJP
A61K 31/4436 20060101ALI20220107BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220107BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61K31/573
A61K9/107
A61K31/4436
A61K47/14
A61P17/06
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2017563568
(86)(22)【出願日】2016-06-06
(86)【国際出願番号】 US2016035991
(87)【国際公開番号】W WO2016205001
(87)【国際公開日】2016-12-22
【審査請求日】2019-06-06
(32)【優先日】2015-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】308015810
【氏名又は名称】ボシュ ヘルス ユーエス,エルエルシー.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ダウ,ゴードン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ピライ,ラーダークリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】バット,ヴァーシャ
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-503573(JP,A)
【文献】特表2008-543859(JP,A)
【文献】特表2012-518662(JP,A)
【文献】特表2013-542990(JP,A)
【文献】特表2001-512490(JP,A)
【文献】特開平05-178764(JP,A)
【文献】International Journal of Dermatology, 2001, 40, 64-66,2001年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾癬を治療するための局所用医薬組成物であって、該組成物が、
(a)前記組成物の0.01質量%の濃度でのプロピオン酸ハロベタゾール、
(b)前記組成物の0.045質量%の濃度でのタザロテン、および
(c)皮膚科学的に許容される担体、
を含む、局所用医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物が水中油エマルションである、請求項1記載の局所用医薬組成物。
【請求項3】
前記プロピオン酸ハロベタゾールおよび前記タザロテンが、前記エマルションの液体油成分中に溶けている、請求項2記載の局所用医薬組成物。
【請求項4】
前記液体油成分が、ジカルボン酸エステル(DCAE)、モノカルボン酸エステル(MCAE)、またはそれらの組合せを含む、請求項3記載の局所用医薬組成物。
【請求項5】
前記水中油エマルションの油相が、セバシン酸ジエチルおよび軽油を含む液体油成分を含む、請求項2記載の局所用医薬組成物。
【請求項6】
前記エマルションがローションである、請求項2記載の局所用医薬組成物。
【請求項7】
前記エマルションがクリームである、請求項2記載の局所用医薬組成物。
【請求項8】
前記エマルションの水相が、(C
10~C
30)アルキルアクリレートにより修飾され、アリルペンタエリトリトールと架橋した、アクリル酸の高分子であるカルボマーコポリマーおよびアリルスクロースまたはアリルペンタエリトリトールと架橋したアクリル酸の高分子であるカルボマーホモポリマーを含む、請求項
5記載の局所用医薬組成物。
【請求項9】
前記セバシン酸ジエチルが前記組成物の2.5~3.5質量%の濃度で存在し、前記軽油が前記組成物の7.5~8.5質量%の濃度で存在し、前記カルボマーコポリマ
ーが前記組成物の0.3~0.5質量%の濃度で存在し、前記カルボマーホモポリマ
ーが前記組成物の0.5~0.7質量%の濃度で存在する、請求項
8記載の局所用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2015年6月18日に出願された米国仮特許出願第62/181481号に優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、乾癬を治療するための局所用組成物および方法に関する。特に、本発明は、乾癬を治療するための、活性成分の組合せを含む局所用医薬組成物、およびそれを使用する方法に関する。より詳しくは、本発明は、乾癬を治療するための、コルチコステロイドおよびレチノイドの組合せを含む局所用医薬組成物、およびそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
乾癬は、世界人口のほぼ約2~4パーセントに影響を与える慢性皮膚病である。米国の七百万人を超える人々が影響を受けている。乾癬の原因はまだ完全には解明されていないが、有効な証拠は、皮膚の細胞免疫浸潤物に対する二次応答として表皮変化が生じることを示している。乾癬は、赤み、肥厚、強烈な皮剥け、およびある場合には、痒みを有する、皮膚炎の個々の区域により特徴付けられる。この皮膚病には、肉体的かつ心理的の両方で、罹患者の生活の質に多大な影響がある。今日、乾癬を治す方法はなく、治療は、乾癬プラークおよび関連症状の重症度および程度を低下させることに向けられている。乾癬を治療するための製品を評価する上で米国食品医薬品局により使用されている治療成功の一番の目安は、医師による全般重症度評価に基づく乾癬の重症度における著しい全体的改善である。
【0004】
メトトレキサートなどの全身療法、またはエタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブなどの生物製剤が、皮膚への浸潤が広範囲に及ぶ、例えば、体表面積の10パーセント以上である場合の好ましい治療法である。乾癬を患う人々の大多数は、それほど広範囲ではない疾患を持ち、これらの場合のほとんどにおいて、局所用薬物が、より安全かつより賢明な代替案と考えられる。局所療法の中に、抗炎症性コルチコステロイド;特に、プロピオン酸ハロベタゾールなどのすごくよく効くもの、カルシポトリエンなどのビタミンD誘導体、タザロテンとして知られているレチノイド、およびコールタールがある。局所療法の各々にはある程度の有効性があるが、各々に、達成できる乾癬プラークの改善の程度の限界または副作用の発生がある。
【0005】
プロピオン酸ハロベタゾール(局所用コルチコステロイド)は、市販されており、クリームや軟膏などの様々な剤形において0.05%の強度で約20年以上に亘り、乾癬を治療するために使用されてきた。ハロベタゾールは、乾癬の兆候および症状の改善において極めて効果的である;しかしながら、局所的および全身的の両方の副作用により、慢性使用が制限される。治療期間は、FDAにより2週間に制限され、乾癬の兆候および症状は、治療の終了後にしばしばリバウンド(悪化)してしまう。
【0006】
長年に亘り、タザロテン(レチノイド)が、市販されており、0.05%および0.1%のクリームおよびゲルとして局所的に乾癬を治療するために使用されてきた。タザロテンは、一般に、乾癬において中程度の有効性を示す;しかしながら、乾癬におけるその使用は、局所的な皮膚のかぶれによって厳しく制限されている。皮膚科医は、朝にコルチコステロイドを、夜にタザロテンを塗布する継続治療を使用して、乾癬を治療し、良好な臨床結果を達成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乾癬の管理のために、低下した副作用で、より効果的かつより安全な局所用薬物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概して、本発明は、乾癬を治療するための局所用組成物および方法を提供する。
【0009】
1つの態様において、本発明は、乾癬を治療するための、皮膚免疫応答調節剤および抗増殖剤からなる群より選択される活性成分の組合せを含む局所用医薬組成物、およびそれを使用する方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、乾癬を治療するための、(a)コルチコステロイドまたはその薬学的に許容される塩またはエステル;および(b)レチノイドまたはその薬学的に許容される塩またはエステルの組合せを含む局所用医薬組成物、およびそれを使用する方法を提供する。1つの実施の形態において、そのような乾癬は尋常性乾癬である。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、乾癬を治療するための、(a)ハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)タザロテンまたはその薬学的に許容されるタザロテン酸塩の組合せを含む局所用医薬組成物、およびそれを使用する方法に関する。1つの実施の形態において、そのような乾癬は尋常性乾癬である。
【0012】
また別の態様において、本発明は、乾癬を治療するための、(a)ハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)タザロテンまたはその薬学的に許容されるタザロテン酸塩またはタザロテン酸の薬学的に許容される非エチルエステルの組合せを含む局所用医薬組成物、およびそれを使用する方法であって、(a)ハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)タザロテンまたはその薬学的に許容されるタザロテン酸塩またはタザロテン酸の薬学的に許容される非エチルエステルの各々が、組成物の質量に基づいて0.09%未満の正濃度(positive concentration)でその組成物中に存在する、局所用医薬組成物、および方法を提供する。タザロテン酸の非エチルエステルは、エチルエステルではないタザロテン酸のエステルである。例えば、非エチルエステルは、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、アリール、フェニル、またはナフチルエステルであり得る。1つの実施の形態において、ハロベタゾールまたは薬学的に許容される塩の濃度は、約0.001から約0.049質量パーセント(「質量%」)の範囲にあり、タザロテンまたは薬学的に許容されるタザロテン酸塩の濃度は、約0.001から約0.049質量%の範囲にある。
【0013】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面並びに以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明白になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
概して、本発明は、乾癬を治療するための局所用組成物および方法を提供する。
【0015】
本開示を通じて、特に明記のない限り、組成物の成分の濃度は、全組成物の質量パーセントである。
【0016】
1つの態様において、本発明は、乾癬を治療するための、皮膚免疫応答調節剤および抗増殖剤からなる群より選択される活性成分の組合せを含む局所用医薬組成物、およびそれを使用する方法を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明の局所用医薬組成物は、中程度から重度の尋常性乾癬を患う患者における乾癬を治療または改善するために使用される。
【0018】
さらに別の態様において、本発明の局所用医薬組成物は、乾癬が体表面積の12パーセントまでを覆う患者における乾癬を治療または改善するために使用される。
【0019】
本出願の発明者等は、予期せぬことに、皮膚免疫応答調節剤および抗増殖剤からなる群より選択される2つの異なる活性成分を含む局所用皮膚用組成物が、各々が乾癬の治療における活性成分を一方しか含まない複数の組成物の総合効果よりも相乗的により効果があることを発見した。1つの態様において、一方の活性成分はコルチコステロイドであり、他方の活性成分はレチノイドである。コルチコステロイドは、あるいは、ステロイド、コルチコイドまたはグルココルチコステロイドとしても知られている。
【0020】
特に、本出願の発明者等は、意外なことに、ハロベタゾール(コルチコステロイド)およびタザロテン(レチノイド)を含む組成物が、各々がこれらの活性成分を一方しか含まない複数の組成物の総合効果(すなわち、効果の合計)よりも相乗的により効果があることを発見した。
【0021】
別の態様において、本発明は、乾癬を治療するための、(a)コルチコステロイドまたはその薬学的に許容される塩またはエステル;および(b)レチノイドまたはその薬学的に許容される塩またはエステルの組合せを含む局所用医薬組成物、およびそれを使用する方法を提供する。
【0022】
1つの態様において、本発明の組成物中に含まれるコルチコステロイドは、クラス1のコルチコステロイドから選択される。コルチコステロイドの分類およびその例が、表1に開示されている。
【0023】
【0024】
プロピオン酸クロベタゾールおよびプロピオン酸ハロベタゾールが、軟膏、クリーム、溶液、スプレー、およびゲルを含む様々な剤形で、通常、0.05%の濃度で、乾癬を含むステロイド反応性皮膚病の治療に使用されてきた。
【0025】
ジプロピオン酸ベータメタゾンが、軟膏、クリーム、ゲル、およびローションを含むいくつかの剤形で、通常、0.05%のベータメタゾンに相当する0.064%の濃度で、乾癬を含むステロイド反応性皮膚病の治療に使用されてきた。
【0026】
フルオシノニドが、軟膏、クリーム、ゲル、および溶液を含む様々な剤形で、0.001%から0.1%に及ぶ様々な濃度で、乾癬を含むステロイド反応性皮膚病の治療に使用されてきた。
【0027】
二酢酸ジフロラゾンが、軟膏およびクリームとして、0.05%の濃度で、乾癬を含むステロイド反応性皮膚病の治療に使用されてきた。軟膏製剤のみが、すごくよく効くと分類されてきた。
【0028】
プロピオン酸クロベタゾールおよびプロピオン酸ハロベタゾール並びに他のすごくよく効くコルチコステロイドを含有する局所用製剤の長期使用からのHPA軸抑制のために、FDAにより許可される治療期間が制限されてきた。すごくよく効く局所用コルチコステロイドの表示に許可された治療期間は、通常、2週間に制限される。
【0029】
1つの態様において、コルチコステロイドは、局所用製剤に現在利用されている濃度より低い濃度で存在する。その製剤は、0.05%w/w未満の正濃度でコルチコステロイドを含有する。
【0030】
本発明の特定の実施の形態において、コルチコステロイドまたはその薬学的に許容される塩またはエステルは、組成物の質量に基づいて0.05%未満の正濃度でその組成物中に存在する。あるいは、コルチコステロイドは、約0.001から約0.049質量%、または約0.005から約0.04質量%、または約0.005から約0.035質量%、または約0.005から約0.03質量%、または約0.005から約0.025質量%、または約0.005から約0.015質量%、または約0.005から約0.01質量%の範囲の濃度で組成物中に存在する。
【0031】
さらに別の態様において、本発明の組成物中に含まれるレチノイドは、タザロテン、ベキサロテン、およびアダパレンからなる群より選択される。これらのレチノイドは、第三世代のレチノイドとして一般に知られている。
【0032】
また別の態様において、第二世代のレチノイド(エトレチナートおよびアシトレチンなど)として知られている群に属するレチノイドを、乾癬症状を患う患者に、本発明の組成物中に使用してよい。
【0033】
1つの態様において、前記レチノイドは、局所用製剤に現在利用されている濃度より低い濃度で存在する。例えば、タザロテンまたはタザロテン酸塩は、0.05質量%未満の正濃度で、本発明の組成物中に含まれる。
【0034】
本発明の特定の実施の形態において、レチノイドまたはその薬学的に許容される塩またはエステルは、組成物の質量に基づいて0.09%未満の正濃度で、その組成物中に存在する。例えば、レチノイドは、約0.001から約0.09質量%、または約0.001から約0.08質量%、または約0.001から約0.07質量%、または約0.001から約0.06質量%、または約0.01から約0.09質量%、または約0.01から約0.08質量%、または約0.01から約0.07質量%、または約0.01から約0.06質量%、または約0.001から約0.049質量%、または約0.005から約0.045質量%、または約0.005から約0.04質量%、または約0.005から約0.03質量%、または約0.005から約0.02質量%、または約0.005から約0.01質量%、または約0.01から約0.049質量%、または約0.01から約0.045質量%、または約0.02から約0.045質量%、または約0.03から約0.045質量%の範囲の濃度で組成物中に存在する。
【0035】
別の態様において、前記医薬組成物は、乾癬を治療するための、(a)ハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)タザロテンまたはその薬学的に許容されるタザロテン酸塩またはタザロテン酸の薬学的に許容される非エチルエステルの組合せを含み、ここで、(a)ハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステルは、約0.005から約0.035質量%、または約0.005から約0.025質量%、または約0.01から約0.025質量%の範囲の濃度で組成物中に存在し、(b)タザロテンまたはその薬学的に許容されるタザロテン酸塩またはタザロテン酸の薬学的に許容される非エチルエステルは、約0.001から約0.049質量%、または約0.01から約0.049質量%、または約0.01から約0.045質量%、または約0.02から約0.04質量%、または約0.02から約0.045質量%、または約0.03から約0.045質量%の範囲の濃度で組成物中に存在する。
【0036】
さらに別の態様において、前記医薬組成物は、乾癬を治療するための、(a)0.01質量%の濃度でのハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)0.045質量%の濃度でのタザロテン、またはタザロテンとして0.045質量%を与える濃度での薬学的に許容されるタザロテン酸塩の組合せを含む。
【0037】
さらに別の態様において、前記医薬組成物は、乾癬を治療するための、(a)0.01質量%の濃度でのハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)0.045質量%の濃度でのタザロテン、またはタザロテンとして0.045質量%を与える濃度でのタザロテン酸の薬学的に許容される、エチルエステル以外のエステルの組合せを含む。タザロテン酸の非エチルエステルの非限定例は、この中に先に開示されている。
【0038】
また別の態様において、前記医薬組成物は、乾癬を治療するための、(a)0.01質量%の濃度でのプロピオン酸ハロベタゾール、および(b)0.045質量%の濃度でのタザロテンの組合せを含む。
【0039】
1つの態様において、本発明の局所用医薬組成物は、ゲル、エマルション(ローション、クリーム、および乳液を含む)、シャンプー、石鹸、懸濁液、液体、スプレー、ペーストまたは軟膏の剤形にある。特定の好ましい実施の形態において、本発明の局所用医薬組成物は、内部油相が連続水相中に分散している、水中油エマルションである。あるいは、水中油中水、油中水および油中水中油も考えられる。そのエマルションは、マクロエマルション、マイクロエマルション、またはナノエマルションであってよい。Espinozaの米国特許第6709663号明細書に開示されている、真のエマルションではない、多小包状エマルション(multivesicular emulsion)などの、製剤内に油相と水相が共存する他の製剤も考えられる。ゲル、クリームまたは他の剤形のリポソーム分散体も考えられる。半極性成分の有無にかかわらず、非極性および極性液体成分が製剤と共存する、他の製剤も考えられる。
【0040】
先に開示した活性成分に加え、本発明の組成物は、液体油、蝋、粘度調整剤、増粘剤、ゲル化剤、アルコール、界面活性剤、キレート剤、緩衝剤、防腐剤、保湿剤、皮膚軟化剤、安定剤、希釈剤、分散剤、乳化剤、湿潤剤、pH調整剤、溶媒または共溶媒などの1種類以上の皮膚科学的に許容される賦形剤を含む。
【0041】
本発明の製剤が、その製剤がローション、ゲル、クリーム、または軟膏の形態で提供されるような粘度を提供するために、増粘剤を含有することが望ましいであろう。増粘剤が液体中に混和性または可溶性であることが好ましいが、その必要はない。適切な増粘剤の非限定例としては、アカシア、アルギニン酸とその塩、ヒアルロン酸とその塩、カルボマー(架橋ポリアクリル酸である、カルボキシビニルポリマーとしても知られている)、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、トラガカント、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、およびベントナイトが挙げられる。その増粘剤は、製剤の油または親油性部分中にあることがある。適切な親油性増粘剤の例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、白蝋、微結晶蝋、水素化ポリイソブタンポリマー、および乳化蝋が挙げられる。
【0042】
増粘剤の適切な群は、Carbopol(登録商標)およびポリカルボフィル(オハイオ州、ウィクリフ所在のThe Lubrizol Corporation)などのカルボマーである。「Carbopol」ホモポリマーは、アリルスクロースまたはアリルペンタエリトリトールと架橋したアクリル酸の高分子である。「Carbopol」コポリマーは、アクリル酸およびアリルペンタエリトリトールと架橋したC10~C30アルキルアクリレートの高分子である。「Carbopol」インターポリマーは、ポリエチレングリコールおよび長鎖アルキル酸エステルのブロックコポリマーを含有するカルボマーホモポリマーまたはコポリマーである。Noveon(登録商標)ポリカルボフィルは、ジビニルグリコールと架橋したアクリル酸の高分子である。
【0043】
所望であれば、または必要であれば、界面活性剤または乳化剤が含まれる。本発明の組成物中に、薬学的に許容される陰イオン、陽イオン、または非イオン界面活性剤が含まれることがある。非イオン界面活性剤が好ましい。非イオン界面活性剤の非限定例に、Octoxynol(マクロゴール・テトラメチルブチルフェニルエーテル、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、またはポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルとしても知られている)、例えば、Octoxynol 1、3、5、8、9、10、12、13、16、30、40、70(ここで、数字は、繰り返すオキシエチレン単位の数を表す)、または側鎖に異なる数の繰り返し単位のオキシエチレンを有する他のOctoxynol、ソルビタンエステル(商標名Span 80およびSpan 60で一般に知られている、モノオレイン酸ソルビタンおよびモノステアリン酸ソルビタン)、ポリソルベート(Tween(登録商標)80、「Tween」60、「Tween」20の商標名で一般に知られている、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート))、ポロキサマー(Pluronic(登録商標)、例えば、「Pluronic」F127または「Pluronic」F108の商標名で一般に知られているものなどの、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの合成ブロックポリマー)、またはポロキサミン(Tetronic(登録商標)、例えば、「Tetronic」1508または「Tetronic」908などの商標名で一般に知られているものなどの、エチレンジアミンに結合したエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの合成ブロックポリマー)、Brij(登録商標)(CH3-(CH2)10-16-(O-C2H4)1-25-OHの式を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル)、Myrj(登録商標)(40~100の繰り返しオキシエチレン単位を有するポリオキシエチレンでエステル化されたステアリン酸)などの他の非イオン界面活性剤、および約12以上の炭素原子(例えば、約12から約24の炭素原子など)を有する炭素鎖を持つ長鎖脂肪アルコール(例えば、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ドコサヘキサエノイルアルコールなど)がある。
【0044】
その上、商標名Pemulen(商標)(オハイオ州、ウィクリフ所在のThe Lubrizol Corporation)で知られているものなどの高分子乳化剤が使用されることがある。これらは、長鎖(C10~C30)アルキルアクリレートにより修飾され、アリルペンタエリトリトールと架橋した、アクリル酸の高分子である。
【0045】
オレイン酸ナトリウムまたはカリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、およびドキュセート・ナトリウムなどの陰イオン乳化剤が使用されることがある。第四級アンモニウム塩などの陽イオン乳化剤はそれほど好ましくない。さらに他の乳化剤としては、グリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、オレイン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、トリエタノールアミンオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、およびポリオキシエチレンソルビタントリオレエートが挙げられる。
【0046】
前記製剤が、グリセリン、ソルビトール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、または尿素などの皮膚科学的に許容される保湿剤を含有することが望ましい。その上、その製剤は、ワセリン、ラノリン、鉱油、軽油、ステアリン酸、シクロメチコン、またはジメチコンなどの皮膚軟化剤を含有してもよい。EDTAとその塩などのキレート剤が本発明の製剤中に含まれることがある。
【0047】
前記組成物の液体油成分は、水中に実質的に不溶性または不溶性であり、室温で液体である材料を1種類以上含む。例えば、1つの実施の形態において、その組成物の液体油成分は、水中に実質的に不溶性または不溶性であり、22℃の室温で液体である材料を1種類以上含む。その液体油成分は、ジカルボン酸エステル(「DCAE」)、モノカルボン酸エステル(「MCAE」)、魚肝油、長鎖トリグリセリド(ここで、各側鎖は、14~18の炭素を有する、例えば、ピーナッツ油、ゴマ油、ヤシ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油、またはその誘導体)、プロピレングリコールジエステル、中鎖トリグリセリド(各側鎖が8~10の炭素を有するものなど;例えば、カプリン/カプリル酸トリグリセリド)、鉱油、軽油、スクアレン、およびスクアランのような炭化水素、脂肪アルコール(オクチルドデカノールおよびイソステアリルアルコールなど)、および脂肪酸(イソステアリン酸およびオレイン酸など)からなる群からの1種類以上の成分より選択されることがある。
【0048】
いくつかの実施の形態において、前記液体油成分は、ジカルボン酸エステルおよび軽油を含む。いくつかの他の実施の形態において、その液体油成分は、1種類以上の長鎖トリグリセリドを含む。
【0049】
前記製剤は、ジカルボン酸エステルおよび/またはモノカルボン酸エステルと混和性であるのに十分な量で他の親油性液体を含むことがある。その親油性液体は、ラノリン油、鉱油、軽油、イソステアリン酸、スクアレン、オクチルドデカノール、分留ヤシ油、シクロメチコン、またはジメチコンなどの皮膚軟化剤であってもよい。
【0050】
前記液体油成分に加え、前記製剤は、室温で液体ではないが、その液体油成分中に可溶性である、水不溶性成分または実質的に不溶性成分を含有することがある。
【0051】
本発明に適したDCAEは式R1OOC-(CH2)n-COOR2を有し、式中、R1およびR2は、1および4の間の炭素を含有するアルキル基またはアリール基であり、同じであっても異なってもよく、式中、(CH2)nは直鎖または分岐鎖であり、nは1と12の間である。1つ以上のアリール基を含有するDCAEの例に、ジカルボン酸のジベンジルエステルがある。好ましいジカルボン酸エステルはセバシン酸ジエチルであり、これは、式CH3CH2OOC-(CH2)8-COOCH2CH3を有する。他の適切なジカルボン酸エステル(R1およびR2が同じである)の例に、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、およびアゼライン酸などのジカルボン酸のジメチル、ジエチル、ジプロピル、ジイソプロピル、ジブチルおよびジイソブチルエステルがある。適切なジカルボン酸エステル(R1がR2とは異なる)の例には、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸などのジカルボン酸のメチルエチル、メチルプロピル、メチルブチル、メチルイソプロピル、エチルプロピル、エチルブチル、エチルイソプロピル、およびプロピルブチルエステルがある。
【0052】
代わりに、またはDCAEとの組合せで、前記製剤は、MCAEを含有することがある。本発明に適したMCAEは式CH3-(CH2)n-COOR1を有し、式中、R1は、1および4の間の炭素を含有するアルキル基またはアリール基であり、式中、(CH2)nは直鎖または分岐鎖であり、nは1と12の間である。そのようなモノカルボン酸エステルの例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸などのモノカルボン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはベンジルなどのアリールのエステルが挙げられる。好ましいモノカルボン酸エステルの例に、パルミチン酸イソプロピルおよびミリスチン酸イソプロピルがある。
【0053】
前記液体油相は、本発明の製剤のエマルションまたは他のタイプ内の活性成分の1種類以上を溶かすために、有益に使用されることがある。1つの実施の形態において、コルチコステロイドおよびレチノイドは両方とも、室温で前記製剤内の液体油相内に溶解している。別の実施の形態において、コルチコステロイドは液体油相内に溶解しており、レチノイドは室温で製剤内に懸濁されている。さらに別の実施の形態において、レチノイドは液体油相内に溶解しており、コルチコステロイドは室温で製剤内に懸濁されている。レチノイドまたはコルチコステロイドが製剤中に懸濁されている場合、懸濁されている活性成分が微粉化されていることが好ましい、すなわち、平均粒径が直径で約25マイクロメートル以下であることが好ましい。
【0054】
1つの態様において、本発明の組成物は、表2に示された濃度で各成分を含む。
【0055】
【0056】
本発明の組成物の非限定例が、表3に示されている。
【0057】
【0058】
表2の最後の列に示されたような組成を有するローションを以下のように調製した。
【0059】
別の水相を作製した。混合器具(プロペラなど)および温度制御装置を備えた製造槽内において、精製水およびエデト酸二ナトリウム二水和物を混ぜ合わせ、透明な溶液が得られるまで、混合物を撹拌した。次に、この混合物に、ソルビトール、メチルパラベン、およびプロピルパラベンを加えた。この混合物を連続的に混合し、約75℃に加熱した。溶液が得られるまで、この混合物を撹拌した。次に、混合物を熱源から取り出し、混合し続けながら、40℃未満に冷ませた。混合し続けながら、「Carbopol」981を混合物に加え、分散させた。「Carbopol」981が完全に分散し、水和するまで、混合を続けた。
【0060】
別の油相を作製した。プロペラなどの混合器具を備えた槽内において、セバシン酸ジエチル、プロピオン酸ハロベタゾール、およびタザロテンを混ぜ合わせた。溶液が得られるまで、その混合物を撹拌した。混合し続けながら、軽油およびソルビン酸モノオレエートを加えた。溶液が得られるまで、混合を続けた。
【0061】
別の槽内において、水酸化ナトリウムの1N溶液を調製する。
【0062】
高速混合により、活性成分(プロピオン酸ハロベタゾールおよびタザロテン)を含有する油相を水相に加えた。この混合物に「Pemulen」TR-1をゆっくりと加えた。均一エマルションが得られるまで、混合を続けた。混合速度を低下させ、10分から1時間の追加時間に亘り混合を続けた。混合し続けながら、適量の水酸化ナトリウム溶液を徐々に増やしながら加えて、5.5±0.5のpHを得た。均一ローションが得られるまで、30分から3時間などに亘り、さらに混合を続けた。
【0063】
あるいは、「Pemulen」TR-1を、作製したときに、水相に加えてもよい。
【0064】
乾癬患者の臨床研究を行って、プロピオン酸ハロベタゾールおよびタザロテンを含有する本発明の組成物(「IDP-118」);プラセボ(「ビヒクル」);プロピオン酸ハロベタゾールのみを含有する組成物(「HP」);およびタザロテンのみを含有する組成物(「Taz」)の効果を比較した。その臨床研究の組成物が、表4に示されている。
【0065】
【0066】
乾癬患者も治験責任医師も、割り当てられた試験ローションの正体が分からない、二重盲検臨床研究を行った。無分別に表示が付けられたローションを、一日一回、乾癬プラークに塗布した。研究されている活性成分が異なることを除いて、全ての試験ローションは同じであった。ほぼ212人の被験者を、以下のように、IDP-118(0.01%のプロピオン酸ハロベタゾールおよび0.045%のタザロテンを含む本発明の組成物)ローション、HP(0.01%のプロピオン酸ハロベタゾール)ローション、Tazローション(0.045%のタザロテン)、およびローションビヒクル(活性成分なし)を受けるために、2:2:2:1の比率で無作為化した:
・59人の被験者を、IDP-118ローションに(「IDP 118群」)、
・63人の被験者を、0.01%のHPローションに(「HP群」)、
・59人の被験者を、0.045%のTazローションに(「Taz群」)、
・31人の被験者を、ローションビヒクルに(「ビヒクル群」)。
【0067】
各々が同じプロトコルにしたがう、18の治験センターが臨床研究に参加した。
【0068】
重要な登録基準は、各被験者が少なくとも中程度の重症度の乾癬;すなわち、表5に示された医師による全般重症度評価(「IGA」)スケールにより定義されるような、3または4のスコアを有することであった。
【0069】
【0070】
各患者について、治験責任医師は、基線視察時に乾癬の影響を受けた治療可能な区域を決定し、記録した。治療可能な区域は、3%から12%の体表面積(BSA)を含む基線で特定され、研究薬物による治療に指定された乾癬の全ての区域と定義される。プロトコルにしたがって、治療可能な病気に冒された区域は、顔、頭皮、手のひら、足の裏、腋窩部、または間擦部位を含まなかった。手のひらおよび足の裏が病気に冒された場合、治験責任医師の裁量で研究薬物を塗布することができた;しかしながら、これらの区域は、治療可能なBSAまたは有効性評価には含めなかった。また、標的病変(乾癬プラーク)を特定し、基線視察時に、乾癬の3つの兆候:紅斑、プラークの腫れ上がり、および皮剥けの評価のみに使用した。
【0071】
指定された研究薬物を8週間に亘り一日一回、病気に冒された区域(基線で治験責任医師が決定した)に局所塗布した。最初の塗布は、研究のコーディネーターまたは被指名者からの指示により、日中に治験センターで行った。被験者は、日光皮膚炎を防ぐために、日光への直接暴露を避けるように指示された。各治験センターで研究のコーディネーターまたは被指名者により説明されたように、被験者は、自宅で毎日の治療を施した。被験者は、2、4、6および8週目にクリニックを訪問したときに、使用した研究薬物の容器を戻すように依頼された。被験者は、クリニックで評価が完了するまで、クリニックの訪問の日に、研究薬物を塗布しないように依頼された。各治験センターでの研究のコーディネーターまたは被指名者は、基線時と、2、4および6週目に、各被験者に、研究薬物の2つの新しい容器を分配した。8週間の治療期間の完了の際に、全ての研究薬物の補給物が治験センターに返却され、全ての被験者は、治療停止後の追跡調査来院(12週目)のために、治験センターに4週間後に戻るように依頼された。研究中、各被験者は、承認された非薬用クレンザーおよび保湿剤を使用することだけが許された;治療区域には、日焼け止め剤または他のスキンケア製品は許されなかった。
【0072】
治験責任医師は、治療可能な区域を評価し、乾癬の重症度についてのIGAスコアを決定し、各被験者における紅斑、プラークの腫れ上がり、および皮剥けについての標的の病変を等級付けすることによって、各研究訪問時に有効性をモニタした。
【0073】
報告され、観察された有害事象(「AE」)についての情報を、各訪問時に得た。簡易健康診断を、全ての被験者について、基線時、8週目(治療の終わり)、および12週目(治療停止から4週間後の追跡調査来院時)に行った。
【0074】
乾癬の兆候(紅斑、プラークの腫れ上がり、および皮剥け)を、表4に示された等級付けスケールを使用して、選択された標的の病変について評価した。これらの兆候における改善は、研究薬物の有効性の尺度である。治療段階中の2、4、6および8週目、および12週目の訪問(治療の4週間後の追跡調査来院)時に、有効性評価を行った。
【0075】
選択された局所兆候および症状(痒み、乾燥度、およびヒリヒリ/痛み)の評価により、耐容性を評価した。その上、治療区域を、有意な公知の薬物関連有害事象:皮膚萎縮、線、毛細血管拡張症、および毛嚢炎の存在または不在について、各訪問時に評価者が調査した。
【0076】
時間の経過によるIGA乾癬重症度スコアの改善である、4種類の研究薬物の有効性をIGAスコアに基づいて評価した。
【0077】
臨床的有効性は、治療がうまくいった被験者の割合に基づいて決定した。
【0078】
IDP-118群を、他の治療群:(1)HP群、(2)Taz群、および(3)ビヒクル群の各々と比べた。
【0079】
治療がうまくいったと判断されるためには、被験者は、基線からIGAにおける2等級の改善を示し、評価時に「異常なし、またはほぼ異常なし」のIGAスコアを有さなければらなかった。この基準により治療の成功を達成しなかった被験者は、その被験者が乾癬においてある程度の改善を経験したとしても、治療の失敗と考えられた。
【0080】
結果
0.01%のプロピオン酸ハロベタゾールおよび0.045%のタザロテンを含むIDP-118の有効性が、示され、論じられている。
【0081】
臨床研究の終了後に、盲検コードを破り、結果を表に纏めた。治療の成功または失敗と分類された被験者に関する二分IGAのデータが、表6に示されている。
【0082】
FDAが要求するように、成功は、IGAスコアにおける基線からの少なくとも2等級の改善および「異常なし」または「ほぼ異常なし」と同じであるIGAスコアと定義される。治療の成功を達成した被験者の割合に基づいて、他の治療群の各々と比べたIDP-118の統計分析も表7に示されている。確率値は、IDP-118をビヒクルと、IDP-118をHPと、そしてIDP-118をTazと比較する一対比較試験を使用した、コクラン・マンテル・ヘンツェル試験からのものである。12週目は、治療の終わりから4週間後の追跡評価時である。
【0083】
【0084】
【0085】
予測加法臨床的有効性と比べた実際の臨床的有効性(「治療成功」を達成した被験者の割合として)が表8に示されている。能動的治療群(IDP-118、HP、およびTaz)に関する「治療成功」の割合は、正味の治療成功が治療した被験者の数の割合として示されていると判定するために、各々から実際のビヒクル群の結果を除算することによって、ビヒクル効果について補正した。
【0086】
【0087】
IDP-118の相乗効果が、IDP-118からの臨床的有効性を、HPおよびTazの合計からの予測される有効性と比べることによって、示されている(表9参照)。IDP-118でうまく治療された患者の対照調整割合は、全ての評価時:2週間の治療、4週間の治療、8週間の治療、および8週間の治療の完了から4週間後(12週間)でHPおよびTazにより単独でうまく治療された患者の対照調整割合の合計より大きかった。
【0088】
【0089】
IDP-118の有効性を、紅斑、プラークの腫れ上がり、および皮剥けを解決する上での成功に関して、HP(0.01%のプロピオン酸ハロベタゾール)、Taz(0.045%のタザロテン)、およびプラセボ(IDP-118のビヒクル)の有効性と比べた。その結果が、表10~12に示されている。IDP-118の成功率は、HPのものより高く、Tazおよびプラセボのものよりもずっと高い。これらの比較は、治療を開始する前の基線で特定した標的の病変の評価について行った。
【0090】
痒み、ヒリヒリ、および痛みにより示されるように、有害事象を経験した患者の割合は、HPまたはTazで治療した患者よりも、IDP-118で治療した患者について、ずっと低い。結果が表13に示されている。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
基線でのIGAスコアの基線からの少なくとも2等級の改善および評価時での異常なしまたはほぼ異常なしのスコアとして定義される、治療成功の達成において、IDP-118は、0.01%のHP、0.045%のTaz、またはビヒクルよりも常により効果的であった。IDP-118は、治療の開始から2週間後ほど早いときに、ビヒクルよりも統計的に有意な優位性を示した。治療の8週目の終わりに、IDP-118群の被験者の52.5%が、HP群における33.3%、Taz群における18.6%、およびビヒクル群における9.7%と比べて治療の成功を有した(表5参照)。IDP-118をビヒクルおよび0.01%のHPまたは0.045%のタザロテンと比較する一対比較試験は、8週目(治療の終わり)および12週目(治療の4週間後の追跡調査)の両方で統計的に有意な治療群の差を示した。8週目で治療成功を達成したIDP-118群の被験者のうち、半分超が、試験物質の毎日の塗布の完了から4週間後の12週目で状態(治療成功)を維持し、コルチコステロイドのリバウンド効果の不在を示した。
【0100】
各訪問時での基線からのIGAスコアにおける平均絶対変化および百分率変化は、二分IGAの結果と一致した。8週目で、基線IGAスコアからの平均変化はHP群における-1.24、Taz群における-0.64、およびビヒクル群における-0.42と比べて、IDP-118群における-1.42であった。
【0101】
前記組成物の毎日の塗布の8週間の期間中、または4週間の薬物治療なしの追跡調査期間中に、IDP-118で治療した患者の誰にも、重大な副作用は報告されなかった。
【0102】
別の態様において、本発明は、乾癬を治療する方法を提供する。この方法は、乾癬を患う対象の体の病変部に、ここに開示されたような本発明の組成物のいずれか1つを、そのような乾癬を治療するのに十分な期間に亘り一日一回以上局所塗布する工程を有してなる。例えば、そのような期間は、1から30日または必要に応じてそれより長くてもよい。例えば、そのような期間は、1週間、2週間、4週間、8週間、12週間、または必要に応じてそれより長くてもよい。例えば、本発明の組成物は、7~14日間に亘り一日一回、体の病変部に局所塗布される。あるいは、その組成物は、7~14日間に亘り一日二回以上、塗布されてもよい。あるいは、その組成物は、1週間から6ヶ月間に亘り一日一回、塗布されてもよい。例えば、その組成物は、2週間、4週間、8週間、または12週間に亘り一日一回、塗布されてもよい。1つの実施の形態において、その治療は、延長治療期間後に1~7日間(例えば、2、3、4、5、6、または7日間)に亘り停止させてもよく、その後、別の延長治療期間のために治療が再開される。そのような延長期間は、追加の治療が必要とされるまたは所望である前に、7日間、7~14日間、7~21日間、7~30日間、またはそれより長くてもよい。
【0103】
さらに別の態様において、本発明は、(a)ハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)タザロテンまたはその薬学的に許容されるタザロテン酸塩またはエステルの組合せを含む医薬組成物で乾癬を局所的に治療する方法であって、(a)ハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)タザロテンまたはその薬学的に許容されるタザロテン酸塩またはエステルの各々が、組成物の質量に基づいて、0.05%未満の正濃度でその組成物中に存在し、その組合せの臨床的有効性が、単独で使用された場合の同じ濃度でのハロベタゾール成分およびタザロテン成分いずれかの臨床的有効性よりも大きい方法を提供する。
【0104】
さらに別の態様において、本発明は、(a)ハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)タザロテンまたはその薬学的に許容されるタザロテン酸塩またはエステルの組合せを含む医薬組成物で乾癬を局所的に治療する方法であって、(a)ハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)タザロテンまたはその薬学的に許容されるタザロテン酸塩またはエステルの各々が、組成物の質量に基づいて、0.05%未満の正濃度でその組成物中に存在し、その組合せの臨床的成功率が、同じ濃度で単独で使用されたタザロテン成分の臨床的成功率に加えた、単独で使用された同じ濃度でのハロベタゾール成分の臨床的成功率と比べて相乗的である、方法を提供する。
【0105】
さらに別の態様において、本発明は、乾癬を治療するための、(a)ハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)タザロテンまたはその薬学的に許容されるタザロテン酸塩またはエステルの組合せを含む局所用医薬組成物、およびそれを使用する方法であって、その医薬組成物が、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、シャンプー、懸濁液、ペースト、膏薬、フォーム、スプレー、または溶液である、局所用医薬組成物、および方法を提供する。これらのタイプのいくつかの製剤の予言例が、表14に示されている。
【0106】
さらに別の態様において、本発明は、(a)ハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)タザロテンまたはその薬学的に許容されるタザロテン酸塩またはエステルの組合せを含む医薬組成物で乾癬を局所的に治療する方法であって、その組成物が、6週間または8週間などの少なくとも4週間に亘り一日少なくとも一回塗布される、方法を提供する。
【0107】
さらに別の態様において、本発明は、(a)ハロベタゾールまたはその薬学的に許容される塩またはエステル、および(b)タザロテンまたはその薬学的に許容されるタザロテン酸塩またはエステルの組合せを含む医薬組成物で乾癬を局所的に治療する方法であって、その組成物が、どのような重大な有害事象(副作用)なく、4週間、6週間または8週間などの2週間超に亘り一日一回塗布される、方法を提供する。
【0108】
さらに別の態様において、ここに開示された方法のいずれかに使用できる本発明の組成物は、溶液、スプレー、乳液、フォーム、または軟膏の形態にあり得る。これらの組成物の非限定例が、表14に示されている。
【0109】
【0110】
さらに別の態様において、本発明の組成物は、光線療法(例えば、紫外線による)などの乾癬の別の治療方法と組み合わせて使用してもよい。
【0111】
さらに別の態様において、本発明の組成物は、乾癬を治療するための他の薬剤とともに使用してもよい。そのような他の薬剤は、抗-TNF-α剤(例えば、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、またはゴリムマブ)、Th17/IL-23軸を標的とする作用物質(例えば、ウステキヌマブまたはブリアキヌマブ)、タンパク質キナーゼC阻害薬(例えば、AEB071)、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ阻害薬(例えば、BMS-582949)、FMS様チロシンキナーゼ阻害薬(例えば、レスタウルチニブ)、ヤーヌスキナーゼ阻害薬(トファシチニブ、ASP-015K、またはINCB018424)、ホスホジエステラーゼ4阻害薬(例えば、アプレミラスト、AN2728、またはMK0873)、神経成長因子阻害薬(例えば、CF101)、抗葉酸剤(例えば、メトトレキサート、アミノプテリン、またはBCX-4208)、カルシニューリン阻害薬(例えば、シクロスポリン)、抗血管新生薬(例えば、抗-VEGF抗体または可溶性VEGFR)、またはビタミンD類似体または誘導体であってよい。そのような他の薬剤は、実質的に同じ時にまたは異なる時に、患者に投与されているよい。そのような他の薬剤は、局所、経口、もしくは注射または点滴によって、投与されてもよい。
【0112】
本開示は、多くの例示の実施の形態を示し記載しているが、様々なさらなる改変が、根本的な本発明の概念の精神および範囲から逸脱せずに、行って良いこと、また同じことが、ここに示され記載された特定の組成物、プロセス、方法、または構造に制限されないことが当業者に明白であろう。