(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】交通規制情報提供システム及び交通規制情報提供方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/056 20060101AFI20220107BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20220107BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G08G1/056
G08G1/09 F
G08G1/16 A
(21)【出願番号】P 2018010842
(22)【出願日】2018-01-25
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一久
(72)【発明者】
【氏名】須田 徹
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-276497(JP,A)
【文献】特開2009-163382(JP,A)
【文献】特開2017-107278(JP,A)
【文献】特開2000-215388(JP,A)
【文献】特開2005-229300(JP,A)
【文献】特開2010-146594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/056
G08G 1/09
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定車両走行帯の一方の沿道に配置され、電波の放射範囲を前記特定車両走行帯に向け、第1識別番号と、交通規制情報
、及び指定方位情報を重畳させた第1情報信号を発信する第1指向性アンテナを備えた第1発信機と、
前記特定車両走行帯の他方の沿道に配置され、電波の放射範囲を前記特定車両走行帯に向け、第2識別番号と、交通規制情報
、及び指定方位情報を重畳させた第2情報信号を発信する第2指向性アンテナを備えた第2発信機と、
車両に搭載され、前記第1情報信号と、前記第2情報信号とを受信した際に、
前記第1情報信号に重畳されている交通規制情報と前記第2情報信号に重畳されている交通規制情報とが一致するか否かを判定する第1ステップと、前記第1ステップにおいて前記第1情報信号と前記第2情報信号に重畳されている前記交通規制情報とが一致すると判定した場合に、前記指定方位情報を取得する第2ステップと、前記指定方位情報の取得をトリガとして自車の進行方向としての実測方位情報を取得する第3ステップと、前記指定方位情報と前記実測方位情報とを比較し、比較の結果に応じて前記交通規制情報を出力する第4ステップと、を実行する受信機と、を有することを特徴とする交通規制情報提供システム。
【請求項2】
前記第1発信機と前記第2発信機は、前記特定車両走行帯における車両の進行方向に沿って、離間距離を持って配置され、
前記受信機は、前記第1情報信号と前記第2情報信号の受信順序に基づいて、
前記実測方位情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の交通規制情報提供システム。
【請求項3】
特定車両走行帯の一方の沿道に、電波の放射範囲を前記特定車両走行帯に向け、第1識別番号と、交通規制情報、及び指定方位情報を重畳させた第1情報信号を発信する第1指向性アンテナを備えた第1発信機を配置すると共に、前記特定車両走行帯の他方の沿道に、電波の放射範囲を前記特定車両走行帯に向け、第2識別番号と、交通規制情報、及び指定方位情報を重畳させた第2情報信号を発信する第2指向性アンテナを備えた第2発信機を配置し、車両に搭載された受信機で前記第1情報信号と、前記第2情報信号とを受信した際に、
前記第1情報信号に重畳されている交通規制情報と前記第2情報信号に重畳されている交通規制情報とが一致するか否かを判定する第1ステップと、
前記第1ステップにおいて前記第1情報信号と前記第2情報信号に重畳されている前記交通規制情報とが一致すると判定した場合に、前記指定方位情報を取得する第2ステップと、
前記指定方位情報の取得をトリガとして自車の進行方向としての実測方位情報を取得する第3ステップと、
前記指定方位情報と前記実測方位情報とを比較し、比較の結果に応じて前記交通規制情報を出力する第4ステップと、を実行することを特徴とする交通規制情報提供方法。
【請求項4】
前記受信機は、前記第1情報信号と前記第2情報信号の受信順序に基づいて、前記実測方位情報を取得することを特徴とする請求項3に記載の交通規制情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に対して通行帯に応じた交通規制情報を提供するための交通規制情報提供システム、およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両に対して交通規制情報を提供するためのシステムとして、特許文献1に開示されているような技術が提案されている。特許文献1に開示されている技術は、走行帯の脇に配置され、車両の走行方向に関する情報を重畳させた電波を出力する無線機と、無線機からの電波を受信すると共に、自車の進行方向を判定し、電波に重畳された進行方向との比較を行い、判定結果に応じて記録情報を出力する車載器とを備えるシステムに関するものである。
【0003】
特許文献1においては主に、自車の進行方向と電波に重畳された進行方向が不一致であった場合に、進行方向が逆、すなわち逆走である旨の記録情報を出力するというものである。このような判定制御、および出力を行うシステムは、昨今問題が増加している、勘違いや思い込みによる高速道路などにおける逆走、及びこうした行為に起因した事故を防ぐ事に高い効果を得る事ができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているような構成のシステムでは、文献中にも記載があるように、電波の到達範囲が隣接する複数の走行帯に及ぶ場合が生じ得る。このような状態が生じると、隣接する走行帯の進行方向設定が異なる場合には、走行帯に定められた進行方向に従って走行しているにも関わらず、逆走であると判定され、これを出力される場合が生ずる。
【0006】
特許文献1においては、こうした問題点に関する解決策は講じられておらず、通行帯に関わらない情報を出力する事を説明するにとどめている。
【0007】
そこで本発明では、上記問題を解決し、隣接する複数の走行帯が存在する領域において、隣接する走行帯の進行方向設定が異なる場合でも、特定の走行帯を特定方向に向かって走行する車両に対して適切な交通規制情報を提供する事のできる交通規制情報提供システム及び交通規制情報提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る交通規制情報提供システムは、特定車両走行帯の一方の沿道に配置され、電波の放射範囲を前記特定車両走行帯に向け、第1識別番号と、交通規制情報を重畳させた第1情報信号を発信する第1指向性アンテナを備えた第1発信機と、前記特定車両走行帯の他方の沿道に配置され、電波の放射範囲を前記特定車両走行帯に向け、第2識別番号と、交通規制情報を重畳させた第2情報信号を発信する第2指向性アンテナを備えた第2発信機と、車両に搭載され、前記第1情報信号と、前記第2情報信号とを受信した際に、前記交通規制情報を出力する受信機と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記のような特徴を有する交通規制情報提供システムでは、前記第1情報信号と前記第2情報信号には、それぞれ指定方位情報が重畳され、前記受信機は、自車の進行方向としての実測方位情報と、前記指定方位情報とを比較し、比較の結果に応じて交通規制情報を出力する構成とすると良い。このような特徴を有する事によれば、第1発信機と第2発信機を配置する場所に応じて指定方位情報を変更し、交通規制情報を提供する条件を変えることができる。
【0010】
さらに、上記のような特徴を有する交通規制情報提供システムでは、前記第1発信機と前記第2発信機は、前記特定車両走行帯における車両の進行方向に沿って、離間距離を持って配置され、前記受信機は、前記第1情報信号と前記第2情報信号の受信順序に基づいて、前記交通規制情報の対象車両であるか否かの判定を行った上で交通規制情報を出力する構成としても良い。このような特徴を有する事によれば、トンネル内など、外部電波が到達しにくい場所であっても、自車の進行方向を取得することが可能となる。
【0011】
また、上記目的を達成するための交通規制情報提供方法は、特定車両走行帯に対して、対向する沿道から指向性アンテナを介して、共通する交通規制情報を発信し、双方の沿道から発信された交通規制情報を受信機で受信した際に、前記交通規制情報を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記のような特徴を有する交通規制情報提供システム、および方法によれば、隣接する複数の走行帯が存在する領域において、隣接する走行帯の進行方向設定が異なる場合でも、特定の走行帯を特定方向に向かって走行する車両に対して適切な交通規制情報を提供する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る交通規制情報提供システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る交通規制情報提供システムにおける発信機の基本的配置形態を示す図である。
【
図3】実施形態に係る交通規制情報提供システムにより交通規制情報を提供する際の制御フロー図である。
【
図4】実施形態に係る交通規制情報提供システムにおける発信機を分岐路に設置する場合の例を示す図である。
【
図5】交通規制情報が多岐に亙る場合における制御フロー図である。
【
図6】実施形態に係る交通規制情報提供システムにおける発信機配置形態の応用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の交通規制情報提供システム及び交通規制情報提供方法に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[基本形態]
まず、
図1から
図3を参照して、発明に係る交通規制情報提供システムの基本配置形態と、その構成について説明する。
【0016】
本実施形態に係る交通規制情報提供システム10は、
図1に示すように、第1発信機12aと、第2発信機12b、および受信機22を基本として構成されている。また、実施形態に係る交通規制情報提供システム10は、
図2に示すように、交通規制情報提供の対象とする特定車両走行帯50を挟み込むようにして、一方の沿道と他方の沿道に、それぞれ第1発信機12aと第2発信機12bが配置される。
【0017】
ここで、
図2に示す領域では、例えば特定車両走行帯50と、特定車両走行帯50に隣接する対向車両走行帯52が高速自動車道路(高速道)として存在すると共に、隣接車両走行帯54が一般道路として存在すると仮定している。そして、特定車両走行帯50に定められた車両の進行方向を矢印Aの方向(
図2中上側を北とした場合には西から東へ向かう方向)とした場合、逆走車両として交通規制情報の提供対象とする車両の指定進行方向(指定方位)は、東から西へ向かう方向(
図2中矢印Bで示す方向)と定められている。
【0018】
[発信機]
第1発信機12aと第2発信機12bは、それぞれ、領域毎に予め定められた特定情報と、発信機毎に定められた識別情報(第1識別情報、第2識別情報:具体例としてはシリアルID)を重畳させた電波を情報信号(第1情報信号、第2情報信号)として受信機22に発信するための要素である。このため、第1発信機12aと第2発信機12bは、その構成を同一とし、識別情報等の記録情報を異ならせることで、その識別を行うことができる。第1発信機12a、第2発信機12b(以下、第1発信機12aと第2発信機12bを総じて示す場合に発信機12と称す)の具体的構成の一例としては、例えば、データ格納部14と、制御部16、及び無線通信部18を有し、指向性アンテナ20(第1指向性アンテナ、第2指向性アンテナ)を備える構成とすることができる。
【0019】
データ格納部14は、メモリや、ハードディスクドライブ等の記憶手段である。データ格納部14には、固体毎に定められたシリアルIDや、発信機設置個所における走行帯の方位情報(指定方位情報)、及び当該走行帯における交通規制情報等が記録されている。
【0020】
制御部16は、データ格納部14に記録されているデータの発信制御を行うための手段である。具体的には、データ格納部14から読み出したデータを無線通信部18を介して発信するためのプログラムの実行と、制御信号の出力を行う。
【0021】
無線通信部18は、通信用の電波に対して送信用のデータを重畳させ、情報信号(第1情報信号、第2情報信号)を生成して出力する役割を担う手段である。無線通信部18では、制御部16により読み出されたデータ(指定方位情報や交通規制情報等)と、発信機12毎に定められた識別情報を通信用の電波に重畳させた情報信号を生成し、これを送信波に変調して出力する。
【0022】
指向性アンテナ20は、無線通信部18から出力された送信波を発信するアンテナである。指向性アンテナ20は、特定方向へのゲイン(利得)を高めたアンテナであり、電波の到達距離を高める一方で、その放射角度が狭くなるという特性がある。本実施形態では、こうした指向性アンテナ20の特性を利用して、電波の放射方向の限定を行う構成としている。具体的には、特定車両走行帯を挟み込むようにして配置した第1発信機12aと第2発信機12bのそれぞれから、特定車両走行帯に向けて情報信号が発信されるように、各指向性アンテナ20における電波の放射方向を定めている。
【0023】
第1発信機12aにおける指向性アンテナ20からの電波の放射範囲と、第2発信機12bにおける指向性アンテナ20からの電波の放射範囲とをそれぞれ上述のように定めた場合、
図2に示す領域中における第1情報信号の電波と第2情報信号の電波の到達範囲は、次のようになる。すなわち、第1情報信号の電波は、特定車両走行帯50と、対向車両走行帯52に到達する。一方、第2情報信号の電波は、特定車両走行帯50と、隣接車両走行帯54に到達する。このため、特定車両走行帯50には、第1情報信号の電波と第2情報信号の電波の重複領域が生じることとなる。よって、第1情報信号と第2情報信号の双方を受信することとなる受信機22を搭載した車両60aや車両60bは、特定車両走行帯50を走行していると特定することができる。
【0024】
[受信機]
受信機22は、走行帯を走行する車両60(60a~60d)に付帯されて、上述した第1発信機12aと第2発信機12bからの電波を受信し、運転者等に交通規制情報を通知するための役割を担う要素である。車両60に付帯させるという性質上、受信機22は、多岐に亙るものとなる。具体的には、装置単体で、その機能全てを備えるものや、車両60に付帯された別のシステム、例えばカーナビゲーションシステムとの連動により、その機能の一部を分担するもの、及び高機能携帯電話機等、他の機能性通信機器を利用して、各機能を得られるように制御が成されるソフトウェアのプログラムをインストールするものなどを挙げることができる。以下に示す実施形態では、装置単体で、その機能全てを持つ構成を例に挙げて説明する。
【0025】
受信機22は、例えば無線通信部24と、方位検出部26、制御部28、音声処理部30、音声出力部32、表示処理部34、および表示部36を有するものとする。このような構成の受信機22において無線通信部24とは、アンテナ38を介して受信した第1発信機12aと第2発信機12bからの電波(送信波)に重畳されたデータを制御部28へ出力する役割を担う手段である。具体的には、第1発信機12aおよび/または第2発信機12bから送信された電波をアンテナ38を介して受信し、これを復調する。復調された信号から電波に重畳されていたデータを分離して、制御部28へと出力する。
【0026】
方位検出部26は、車両60(受信機22が付帯されている車両)が向いている方向(進行方向)を検出するための手段である。方位検出部26は、GPS(Global Positioning System)や、磁気センサなどにより、自車の進行方向(受信機22の向き)を求めることができれば良く、その具体的構成を限定するものではない。
【0027】
ここで、装置単体で、方位検出部26の機能を発揮するためには、受信機22自体にGPSや磁気センサなどの検出手段を備える構成とすれば良い。一方で、車両に備えられたカーナビゲーションシステムや、高機能携帯電話等と連動する構成とした場合には、それらの連動機器から方位情報を提供される構成とすることもできる。方位検出部26は、検出された方位情報(実測方位情報)を制御部28へ出力する。
【0028】
制御部28は、無線通信部24と方位検出部26から入力された情報に基づく制御判断を行う役割を担う手段である。制御部28は、無線通信部24から入力された方位情報(指定方位情報)と、方位検出部26から入力された方位情報(実測方位情報)とを比較する。比較の結果、2つの方位の角度差が、予め定められた誤差の範囲内にある場合には、2つの方位が一致したと判定する。2つの方位が一致した旨の判定が成された後には、無線通信部24から入力された交通規制情報等の情報を音声処理部と表示処理部に出力する。一方、比較の結果、2つの方位の角度差が予め定めた誤差の範囲を超えている場合には、2つの方位は一致しないと判定が成され、交通規制情報の提供のためのデータ処理が終了する。
【0029】
音声処理部30は、制御部28から出力された交通規制情報等の情報を音声出力部へ出力するための変換等を行う役割を担う手段である。制御部28から出力される情報には、詳細を後述する表示処理部34への出力情報も含まれる。このため、音声処理部30により、例えば映像情報等の不要情報をフィルタリングし、音声データを音声出力部へと出力する。
【0030】
音声出力部32は、音声データを車両の運転者等が聴覚を通じて認識できるように出力するための手段である。音声出力部32は、音声処理部30から入力された音声データをアンプ等を介して増幅し、スピーカー等を介して出力する。
【0031】
表示処理部34は、制御部28から出力された交通規制情報等の情報を表示部へ出力するための変換等を行う役割を担う手段である。制御部28から出力される情報には、前述した音声処理部30への出力情報も含まれる。このため、表示処理部34により、例えば音声情報等の不要情報をフィルタリングし、信号、画像、及び映像情報等を表示部へと出力する。
【0032】
表示部36は、信号、画像、及び映像情報等を車両60の運転者が視覚を通じて認識できるように出力するための手段である。表示部36は、警告ランプや液晶表示などにより、表示処理部34から入力された信号、画像、及び映像情報等を各種機器に反映させるように出力する。例えば、信号により、警告ランプを点灯、点滅させたり、液晶表示により、交通規制情報に則した画像や、アニメーション等の映像を出力するものであれば良い。
【0033】
なお、音声出力部32や表示部36は、その機能を発揮することができる構成であれば、その形態を問うものでは無い。このため。車両60に装備されたスピーカーやカーナビゲーションシステム等の液晶モニタ等を利用する構成としても良い。また、高機能携帯電話が受信機の機能を果たす場合には、高機能携帯電話のスピーカーや液晶モニタを音声出力部や表示部として利用することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る交通規制情報提供システム10では、音声出力部32と表示部36の両方を備える形態としているが、本システムを構成するにあたっては、少なくとも音声出力部32と表示部36のいずれか一方を備える構成とすれば良い。なお、受信機22においては、音声出力部32のみを備える構成とした場合には、表示処理部34を備える必要がなくなり、表示部36のみを備える構成とした場合には、音声処理部30を備える必要がなくなる。
【0035】
[方法]
次に、上記のような構成の交通規制情報提供システムによる交通規制情報提供に関する流れについて、
図3を参照して説明する。
【0036】
まず、前提として、第1発信機12aおよび第2発信機12bは、常時、あるいは所定の間隔で送信波を発信し続けている。そして、走行する車両60に搭載された受信機22は、第1発信機12aおよび第2発信機12bが発信した電波を受信・検出する。
【0037】
特定走行帯50を車両60aが走行している場合、受信機22は、第1発信機12aの電波を受信(検出)すると共に(ステップ10)、第2発信機12bの電波を受信(検出)する(ステップ20)。第1発信機12aからの電波と第2発信機12bからの電波を受信した受信機22では、各電波に重畳された交通規制情報を取得し、第1発信機12aの電波に付された交通規制情報と、第2発信機12bの電波に付された交通規制情報とが等しく、かつ2つの電波が一定の時間内に受信されたか否かの判定が成される(ステップ30)。
【0038】
ステップ30において、2つの電波に重畳されていた交通規制情報が等しく、2つの電波が一定の時間内に受信されたと判定された場合、例えば車両60aが特定車両走行帯50を走行していると判定されることとなる。この判定に伴い受信機22では、方位情報(指定方位情報)が取得され、取得された指定方位情報は、ステップ30で取得された交通規制情報と共に、制御部28へと出力される(ステップ40)。
【0039】
次に、受信機22の内部では、所定のトリガ信号、例えば無線通信部24から制御部28への指定方位情報等の入力信号をトリガとして、方位検出部26を介して車両60aの進行方向としての方位情報(実測方位情報)が取得され、制御部28へと出力される(ステップ50)。
【0040】
一方、ステップ30の判定において、2つの電波に重畳されていた交通規制情報が異なる場合、あるいは2つの電波の取得タイムラグが、一定の時間の範囲を超えている場合には、車両60aは、特定車両走行帯50の交通規制帯域を走行していないと判定し、交通規制情報の提供処理を終了する。ここで、2つの電波を一定の時間の範囲内に受信しない場合とは、例えば
図2において、隣接車両走行帯54を走行する車両60dに受信機22が搭載されている場合や、対向車両走行帯52を走行する車両60cに受信機22が搭載されている場合である。このような場合には、各受信機22は、第1発信機12a、または第2発信機12bのいずれか一方の電波のみを受信することとなるからである。
【0041】
制御部28では、無線通信部24から入力された指定方位情報と、方位検出部26から入力された実測方位情報とが入力されると、指定方位情報と実測方位情報とを比較し、両者の角度差を算出する。算出された角度差が、予め定められた誤差角度の範囲内にある場合には、指定方位情報と、実測方位情報とが一致すると判定する(例えば車両60aの場合)。一方、算出された角度差が予め定められた誤差角度の範囲を超えている場合には、指定方位情報と、実測方位情報が不一致であると判定し(例えば車両60bの場合)、交通規制情報の提供処理を終了する(ステップ60)。
【0042】
ステップ60において、指定方位情報と、実測方位情報とが一致すると判定された場合、制御部28は、指定方位情報に付帯された交通規制情報(付帯されている交通規制情報をXとする)を読み出し(ステップ70)、読み出した交通規制情報Xを音声処理部30を介した音声出力部32、及び/または表示処理部34を介した表示部36により出力する。例えば
図2において、車両60aに搭載されている受信機22では、一方通行を逆走している旨の情報が出力されることとなる(ステップ80)。
【0043】
[効果]
上記のような特徴を有する交通規制情報提供システム10によれば、隣接する複数の走行帯が存在する領域において、隣接する走行帯の進行方向設定が異なる場合でも、特定車両走行帯50を指定方位(
図2に示す例では指定方位と指定進行方向とは逆)に向かって走行する車両60aに対して適切な交通規制情報を提供すると共に、対向車両走行帯52や隣接車両走行帯54を走行する車両に交通規制情報が提供されてしまうことを避けることができる。
【0044】
[その他の適用例]
このような構成の交通規制情報提供システム10は、特定車両走行帯50とする走行帯の幅や方向を問う事なく、特定の走行帯を通過する車両に対して交通規制情報を提供することができる。このため、例えば
図4に示すような、走行帯56からの分岐路を特定車両走行帯50とし、この特定車両走行帯50に沿うようにして第1発信機12aと第2発信機12bを配置することで、特定車両走行帯50としての分岐路を逆走する車両60aに対して、逆走である旨の交通規制情報を提供することができる。
【0045】
このように、実施形態に係る交通規制情報提供システム10は、その配置形態を保つ限りにおいて、様々な走行帯に対応した交通規制情報を提供することが可能となる。このため、発信機12のデータ格納部14に記録されている交通規制情報を変える事で、様々なシーンでの交通規制情報の提供に役立てることが可能となる。交通規制情報の変更を行う事によれば、例えば
図5に示すフローチャートのように、ステップ70において交通規制情報Xの取得を行う際、“一方通行逆走”という情報だけでなく、“一時停止”がある旨の情報や、“進入禁止”である情報、“最高速度が○○km/h”である情報、および“右、または左折禁止”である旨の情報などに切り替わることとなる。
【0046】
[信号処理の応用例]
上記実施形態に係る交通規制情報提供システム10では、制御部28による信号処理の方式として、指定方位情報と実方位情報との比較判定の結果が“一致”である場合に、交通規制情報を出力する処理が成されるように構成されている。このため、発信機12の設置場所を変えた際、データ格納部14に記録されている交通規制情報を変えるだけで、受信機22は、種々の交通規制に対応する汎用性を持つことができることとなるのである。
【0047】
一方で、実施形態に係る交通規制情報提供システム10を一方通行を逆走している車両60(
図2の場合には車両60a)に対する情報提供を行う専用品とする場合には、比較判定の結果が“不一致”である場合に、交通規制情報を出力する処理が成されるように構成しても良い。この場合には、データ格納部14に記録される指定方位情報を、走行帯に定められている進行方向(指定進行方向)と同一方向に設定することとなる。このような条件設定をした場合でも、上記実施形態と同様に、特定車両走行帯50を逆走している車両60aに対して、一方通行を逆走している旨の交通規制情報を提供することが可能となる。つまり、本発明に係る交通規制情報提供システム10では、少なくとも2つの発信機12(第1発信機12aと第2発信機12b)により、交通規制情報を提供する特定車両走行帯50を挟み込む構成とすることができれば、その信号の発信形式や判定形式については、情報提供を行う走行帯の交通事情などに応じて種々プログラムを変更して対応することもできる。
【0048】
[発信機の配置形態の変更]
また、本発明に係る交通規制情報提供システムは、
図6に示すように、特定車両走行帯50に対して、進行方向に直交する位置からずらした状態(離間した状態)で配置することもできる。受信機22による2つの電波の受信タイミングのズレが一定の時間範囲であれば、同様な処理を行う事が可能となるからである。
【0049】
また、第1発信機12aと第2発信機12bを
図6に示すような配置形態とした場合、
図3に示したフロー図において、自車進行方向の取得を行うステップ50では、電波を取得した発信機12の順序に基づいて実測方位情報を取得するようにしても良い。すなわち、第2発信機12bからの電波よりも第1発信機12aからの電波を先に受信した場合には、車両60の進行方向(実測方位情報)は、矢印Aで示す方向であると求めることができる。一方第1発信機12aからの電波よりも第2発信機12bからの電波を先に受信した場合には、車両60の進行方向(実測方位情報)は、矢印Bで示す方向であると求めることができる。
【0050】
また、このような方法により実測方位情報を取得することによれば、GPSなどの外部情報を得る事なく、自車の進行方向を判定することができる。よって、トンネル内などの外部電波が届きにくい場所であっても、実測方位情報を取得することができる。
【符号の説明】
【0051】
10………交通規制情報提供システム、12………発信機、12a………第1発信機、12b………第2発信機、14………データ格納部、16………制御部、18………無線通信部、20………指向性アンテナ、22………受信機、24………無線通信部、26………方位検出部、28………制御部、30………音声処理部、32………音声出力部、34………表示処理部、36………表示部、38………アンテナ、50………特定車両走行帯、52………対向車両走行帯、54………隣接車両走行帯、56………走行帯、60(60a,60b,60c,60d)………車両。