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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】バックル
(51)【国際特許分類】
   A44B 11/25 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A44B11/25
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018022203
(22)【出願日】2018-02-09
(65)【公開番号】P2019136299
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】中塚 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】花岡 佳世子
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-058442(JP,A)
【文献】登録実用新案第3196242(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B11/00-11/28
B60R22/00-22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌部材(2,2A,2B)とそれに対して着脱可能な雄部材(3,3A,3B)の2部品からなるバックル(1,1A,1B)であって、
前記雄部材(3)は、前部に係合突起(31)とガイド用突起(32,32A,32B)を有し、後部に前記前部を支持する基部(33)を有し、
前記係合突起(31)は、先端部(311)と、横方向に張り出している膨出部(312)と、この膨出部(312)の後端に設けられた段部(314)と、この段部(314)の背後に設けられた脚部(315)を有し、
前記雌部材(2)は、箱状部(20)と、この箱状部(20)と接続され、この箱状部(20)を支持する基部(21)を有し、
前記箱状部(20)は、先端に前記雄部材(3)と嵌り合う先端開口(22)を有し、側部に前記膨出部(312)が係合するロック用開口(24)と、前記段部(314)と係合する側壁(23)を各一対有し、さらに上面(25)及び下面(26)を有するものにおいて、
前記雌部材(2)の前記上面(25)及び前記下面(26)のいずれかが、
前記雄部材(3)の前記ガイド用突起(32,32A,32B)が縦方向に挿入される位置において、第1スリット(251,251A,251B)を有し、
前記雄部材(3)の前記脚部(315)が縦方向に挿入される位置において、第2スリット(255,255A,255B)を有し、
前記第1スリット(251,251A,251B)、前記第2スリット(255,255A,255B)及び前記ロック用開口(24)を通して、前記雌部材(2)を前記箱状部(20)に縦方向から挿入することができる
ことを特徴とするバックル(1,1A,1B)。
【請求項2】
記第1スリット(251A)の後端側上面(252A)の先端が前記雄部材(3)の通路側へ向かって突出部(253A)を形成するとともに、前記ガイド用突起(32A)の先端(323A)に小突起(324A)が形成されており、
前記突出部(253A)と前記小突起(324A)が係合可能である、請求項1記載のバックル(1A)。
【請求項3】
前記雄部材(3B)の前記ガイド用突起(32B)の最先端部分(325B)の横幅はそれ以外の部分の前記ガイド用突起(32B)の横幅より長く、前記雌部材の前記第1スリット(251B)の最先端部分(2511B)の横幅はそれ以外の部分の前記第1スリット(251B)の横幅より長い、請求項1記載のバックル(1B)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かばん、衣服、靴、安全ベルト、シートベルト、アクセサリー等において、分離可能な2つのバンドや紐を連結・分離するのに使用するバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
上記したようなバックルは我々の日常生活において広く使用されている。特に最近よく使用されているのは、箱状の雌部材に対して、カニの爪のような突起部を有する雄部材を差し込んで連結したり、そこから引き抜いて分離したりするタイプである。たとえば、本出願人の出願に係る下記のような発明がそれに該当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-79005
【文献】特開2001-346612(特許第3790094号)
【文献】WO2011/115267(特許第5763050号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記タイプのバックルは、片手に雌部材を、残りの手で雄部材を持ち、両者を連結・分離する。普通はそれで問題はないが、片手をなくしたり、負傷したりした人や、健常な人でも片手がふさがっていて使用できないときには、残ったもう一方の手だけで操作できれば好都合である。
【0005】
本発明は片手でも使用できるようなバックルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、雌部材2,2Aとそれに対して着脱可能な雄部材3,3Aの2部品からなるバックル1,1A,1Bであって、前記雄部材3は、前部に係合突起31とガイド用突起32を有し、後部に前記前部を支持する基部33を有し、前記係合突起31は、先端部311と、横方向に張り出している膨出部312と、この膨出部312の後端に設けられた段部314と、この段部314の背後に設けられた脚部315を有し、前記雌部材2は、箱状部20と、この箱状部20と接続され、この箱状部20を支持する基部21を有し、前記箱状部20は、先端に前記雄部材3と嵌り合う先端開口22を有し、側部に前記膨出部312が係合するロック用開口24と、前記段部314と係合する側壁23を各一対有し、さらに上面25及び下面26を有するものにおいて、前記雌部材2の前記上面25及び前記下面26のいずれかが、前記雄部材3の前記ガイド用突起32が縦方向に挿入される位置において、第1スリット251,251A,251Bを有し、前記雄部材3の前記脚部315が縦方向に挿入される位置において、第2スリット255,255A,255Bを有し、前記第1スリット251,251A,251B及び第2スリット255,255A,255Bを通して、前記雌部材2を前記箱状部20に縦方向から挿入することができることを特徴とする。
【0007】
本発明の別の態様によれば、前記切第1スリット251Aの後端側上面252Aの先端が通路側へ向かって突出部253Aを形成するとともに、前記ガイド用突起32Aの先端323Aに小突起324Aが形成されており、前記突出部253Aと前記小突起324Aが係合可能である(請求項2)。
【0008】
本発明のさらに別の態様によれば、前記雄部材3Bの前記ガイド用突起32Bの最先端部分325Bの横幅はそれ以外の部分の前記ガイド用突起32Bの横幅より長く、前記雌部材の前記第1スリット251Bの最先端部分2511Bの横幅はそれ以外の部分の前記第1スリット251Bの横幅より長い(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、雄部材3は、雌部材2の先端開口22に横方向から差し込むことができるだけでなく、第1スリット251及び第2スリットに対し上から縦方向に差し込むことができるようになる。換言すると、雄部材3を雌部材2に結合させる方法として、横方向からと縦方向から差し込む2つの方法が選択可能となる。
【0010】
請求項2の発明によれば、いったんガイド用突起32Aの先端323Aを第1スリット251Aに挿入し、突出部253Aと小突起324Aをかみ合わせたのち、そこを支点として雄部材3A後端側を下方に押し下げることにより、雄部材3A全体を雌部材2に挿入することができる。すなわち、最初に雄部材3Aの先端を固定し、後端側を下方に押し下げるだけで雌雄部材が結合されるので、結合が容易になる。
【0011】
請求項3の発明によれば、雄部材3Bの係合突起31Bが雌部材2Bのロック用開口24Bにおいて固定されるだけでなく、雄部材3Bのガイド用突起32Bも雌部材2Bの第1スリットの先端部分において固定されるため、雌雄部材の連結がきわめて強固なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1に係るバックルの斜視図である。
図2】同実施例の雄部材の(a)正面図、(b)左側面図、(c)下面図、(d)右側面図、(e)上面図、(f)横断面図である。
図3】同実施例の雌部材の(a)正面図、(b)左側面図、(c)下面図、(d)右側面図、(e)上面図、(f)横断面図である。
図4】(a)(b)は同実施例の雌雄部材の係合方法を示す横断面図であり、(c)は合体状態の正面図である。
図5】(a)(b)(c)は実施例2の雌雄部材の係合方法を示す横断面図であり、(d)は合体状態の下面図である。
図6】同実施例の雌部材の(a)下面図、(b)横断面図である。
図7】同実施例の雌部材の(a)左側面図、(b)正面図、(c)正面図、(d)横断面図である。
図8】実施例3の雄部材の(a)正面図、(b)中央横断面図である。
図9】同実施例の雌部材の(a)正面図、(b)側面図、(c)中央横断面図である。
図10】(a)(b)は同実施例の雌雄部材の係合方法を示す横断面図であり、(c)は合体状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1に示すように、このバックル1は雌部材2とそれに対して着脱可能な雄部材3の2部品からなる。両者はそれぞれ全体が合成樹脂により成型されている。
【0015】
<雄部材3>
雄部材3は、前部にカニの爪のような2本の係合突起31と1本のガイド用突起32を有し、後部に前部を支持する長方形状の基部33を有する。
【0016】
各係合突起31の先端には先細りとなった先端部311と、横方向に張り出している膨出部312が形成されている。先端部311及び膨出部312の内側には水平部313が形成され、膨出部312の後端には段部314が形成されている。段部314の背後は細幅の脚部315となって基部33につながっている。
【0017】
中央のガイド用突起32には、図2に示すように、上下から矩形の浅いくぼみ321,322が設けられている。これは装飾及び補強のためのものである。
【0018】
基部33にはストラップ(図示せず)と接続するための接続部34が設けられている。接続部34には、図2(f)に示すように、ストラップを固定するための固定棒341,342が設けられている。
【0019】
<雌部材2>
雌部材2は、前部の平たい箱状部20と、この箱状部20と接続され、これを支持する長方形状の基部21を有する。
【0020】
箱状部20は、先端に雄部材3と嵌り合う挿入用先端開口22を有し、側部に側壁23とロック用開口24を各一対有し、さらに上面25及び下面26を有する。ここで、「上面」と「下面」という用語は便宜上のもので、一方が上なら他方が下という相対的なものである。
【0021】
本発明にとって特徴的なのは、雄部材3のガイド用突起32が縦方向に挿入される位置において、雌部材2の上面25が第1スリット251を有すると共に、雄部材3の脚部315が縦方向に挿入される位置において雌部材2の上面25が第2スリット255を有することである。
【0022】
このような構成とすることにより、雄部材3は、雌部材2の先端開口22に横方向から差し込むことができるだけでなく、これらの第1スリット251、第2スリット255、ロック用開口24に対し上から縦方向に差し込むことができるようになる。換言すると、雄部材3を雌部材2に結合させる方法として、横方向からと縦方向から差し込む2つの方法が選択可能となる。
【0023】
基部21にはストラップ(図示せず)と接続するための接続部211が設けられている。
【0024】
<雌雄部材2,3の連結・分離>
雄部材3を雌部材2の先端開口22に差し込んで横方向から雌雄部材2,3を結合したとき、係合突起31の先端部311が進入することにより、膨出部312が側壁23によって内方へ押されて変形する。膨出部312がロック用開口24と係合したとき、内方へ押されていた膨出部312が復元し、ロック用開口24から露出するとともに、段部314が側壁23で止められるため、両者の結合が確かなものとなる。
【0025】
雌雄部材の結合を解除するには、いったん雌部材のロック用開口24から露出している雄部材の膨出部312を指で内方へ押して、係合突起31のバネ作用を抑制してから両者を引き離すことになる。
【0026】
雄部材3を雌部材2の上面第1スリット251、第2スリット255、ロック用開口24に押し込んで縦方向から雌雄部材を結合させるとき、ガイド用突起32は第1スリット251にそのまま入る。係合突起31の脚部315は、側壁23を押し広げながら沈下し(このとき反動で膨出部312はやや外側に開く)、第2スリットに入る。結合が完成したとき、図4に示すように、係合突起31の膨出部312が雌部材のロック用開口24と係合し、段部314が側壁23で止められるため両者の結合が確かなものとなる。
【0027】
雌雄部材の結合を解除するには、結合時と異なり、縦方向から雄部材3を縦方向に取り出すことは、指が雄部材3にかからないため、また、指で側壁23を押し広げることはできないため、極めて困難である。したがって、従来のバックルと同様に、いったん雌部材のロック用開口24から露出している雄部材の膨出部312を指で内方へ押して、係合突起31のバネ作用を抑制してから両者を引き離すことになる。
【実施例2】
【0028】
図5~7は実施例2のバックル1Aを表している。
【0029】
実施例2は全体的に実施例1と似ているので、実施例2において、実施例1と同じ部品には同じ符号に「A」の文字を付してその説明を省略する。両者が異なるのは次の点である。
【0030】
(A)図5に示すように、実施例2の第1スリット251Aの長さは実施例1の第1スリット251の長さよりも短い。すなわち、実施例2の第1スリット251Aの後端側上面252Aの長さが長い。さらに、後端側の上面252Aの先端が内方へ向かい、少し角が取れた突出部253Aを形成している。
(B)図5に示すように、ガイド用突起32Aの先端323Aに小突起324Aが形成されている。
【0031】
この実施例2では、実施例1のように雄部材3を水平状態に保ったまま雌部材2に縦方向に挿入するのではなく、図5に示すように、雄部材3Aを傾け、いったんガイド用突起32Aの先端323Aを第1スリット251Aに挿入し(図5(a))、突出部253Aと小突起324Aをかみ合わせたのち、そこを支点として雄部材3A後端側を下方に押し下げることにより(図5(b))、雄部材3A全体を雌部材2に挿入する(図5(c))。
【0032】
すなわち、最初に雄部材3Aの先端を固定し、後端側を下方に押し下げるだけで雌雄部材が結合されるので、結合が容易になる。
【実施例3】
【0033】
図8~10は実施例3のバックル1Bを表している。
【0034】
実施例3は全体的に実施例1と似ているので、実施例3において、実施例1と同じ部品には同じ符号に「B」の文字を付してその説明を省略する。両者が異なるのは次の点である。
【0035】
(A)図8に示すように、雄部3B材のガイド用突起32Bの先端幅が末広がりに拡大しており、最先端部分325Bは長手方向に対して垂直であり、その横幅はそれ以外の部分の横幅よりわずかに長い。
(B)図9に示すように、雌部材の第1スリット251Bの長さが実施例1のものよりも短く、最先端部分2511Bは長手方向に対して垂直であり、その横幅はそれ以外の部分の横幅よりわずかに長い。
【0036】
この実施例3では、主として縦方向から雌雄部材を結合させ、離脱させるときは横方向とする。すなわち、雄部材3Bを雌部材2Bの上面第1スリット251B、第2スリット255B、ロック用開口24Bに押し込んで縦方向から雌雄部材を結合させる。ガイド用突起32Bは第1スリット251Bにそのまま入り、脚部315Bが側壁23Bを押し広げながら、第2スリット255Bに入る。
【0037】
その際、ガイド用突起32Bの最先端部分325Bと第1スリット251Bの最先端部分2511Bの形状がほぼ一致する(図10(c)参照)ので挿入時の位置が安定し、最先端部分325Bを支点として、正確な位置に嵌入しやすいものとなる。また、この実施例3では、係合突起31Bの膨出部312だけでなく、ガイド用突起32Bの最先端部分2511Bにおいても固定されるため、雌雄部材の連結がきわめて強固なものとなる。
【0038】
なお、この実施例3においても、雄部材3Bを雌部材2Bの先端開口22Bに差し込んで横方向から雌雄部材2B,3Bを結合することは、ガイド用突起32Bの最先端部分325Bの幅次第では可能である。その場合、特に挿入開始時にやや困難を伴うが、結合を解くときには膨出部312Bを左右方向から押圧して引き抜くだけであるから簡単である。
【符号の説明】
【0039】
1,1A,1B バックル
2,2A,2B 雌部材
20 箱状部
21 基部
211 接続部
22 先端開口
23 側壁
24 ロック用開口
25 上面
251,251A,251B 第1スリット
2511B 最先端部分
252A 後端側上面
253A 突出部
255 第2スリット
26 下面
3,3A,3B雄部材
31 係合突起
311 先端部
312 膨出部
313 水平部
314 段部
315 脚部
32,32A,32B ガイド用突起
323A 先端
324A 小突起
325B 最先端部分
33 基部
34 接続部
341,342固定棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10