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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/18 20060101AFI20220128BHJP
   E06B 1/32 20060101ALI20220128BHJP
   E06B 7/14 20060101ALI20220128BHJP
   E06B 1/34 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
E06B1/18 K
E06B1/32
E06B7/14
E06B1/34 Z
E06B1/18 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018030970
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019143441
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鎌野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】末永 昇
(72)【発明者】
【氏名】白浜 朋彦
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00384931(EP,A1)
【文献】米国特許第03248822(US,A)
【文献】特開2002-161671(JP,A)
【文献】実開昭55-056872(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/18
E06B 1/32
E06B 7/14
E06B 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の室外側に固定面材が設けられ、かつ前記枠体の室内側に可動面材が設けられており、
前記固定面材は、下縁部が前記枠体の下枠に支持されたパネルを備え、
前記可動面材は、前記下枠に設けたレール部に沿って前記下枠の長手にスライド可能であり、
前記下枠は、前記レール部が設けられた内方下枠部と、前記パネルの室外に臨む表面を支持する外方下枠部と、これら内方下枠部及び外方下枠部の間に位置する中間下枠部とを備えたものであり、
前記下枠において前記可動面材よりも室外側となる部位には、前記外方下枠部と前記可動面材との間を覆う上面部と、前記上面部から下方に延在して前記中間下枠部に支持される脚部とを有したカバー部材が設けられ、
前記中間下枠部と前記内方下枠部とは互いに離隔し、かつ相互間に断熱性を有する内方連結材が介在されているとともに、前記中間下枠部と前記外方下枠部とは互いに離隔し、かつ相互間に断熱性を有する外方連結材が介在されていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記下枠において室内側に位置する上面には、化粧材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記化粧材と前記内方連結材との間には、断熱性を有する支持部材が介在され、前記支持部材は、前記中間下枠部と前記内方下枠部との上端部の間を連結するように配設してあり、前記内方連結材は、前記支持部材の下面に密接されていることを特徴とする請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記内方下枠部及び前記中間下枠部には、それぞれ係合受部が設けられ、
前記支持部材には、前記係合受部を介して前記内方下枠部及び前記中間下枠部のそれぞれに係合する係合部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記支持部材は、前記内方下枠部及び前記中間下枠部の間にわたって配置されるベース部と、前記ベース部の上面において互いに間隔を確保した位置から上方に向けて延在する複数のリブ部とを有し、
前記化粧材は、前記リブ部の上端部を介して前記支持部材に支持されていることを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項6】
前記ベース部の上面は、室外側が低くなるように構成され、
前記リブ部には、それぞれ排水用切欠が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の建具。
【請求項7】
前記カバー部材の脚部には排水用開口が設けられているとともに、前記排水用開口には排水弁が設けられ、さらに、前記脚部から前記外方下枠部までの間には前記排水弁を通過した水を外部に排出するための排水路が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の建具。
【請求項8】
前記カバー部材の脚部から前記外方下枠部までの間に構成される空間には、複数箇所に前記パネルの下面を支持するセッティングブロックが配設され、かつ前記セッティングブロックの相互間において前記中間下枠部と前記外方下枠部とに跨がる部位に、断熱性が前記外方連結材の断熱性以上となる挿入材が配設されており、前記排水路は、前記セッティングブロックに見込み方向に沿って切り欠きを貫通することにより構成された排水孔を含むことを特徴とする請求項7に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建具には、枠体を構成する枠材として、互いに離隔した状態で並設される室内側の内方枠構成部及び室外側の外方枠構成部を備え、これら2つの枠構成部の間に断熱性を有した連結材を介在させるようにしたものが提供されている。こうした建具によれば、連結材によって内方枠構成部と外方枠構成部との間が断熱されるため、例えば室内の温度に対して室外の温度が低い場合にも、内方枠構成部に結露が生じる事態を防止することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-161671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今においては意匠性の向上を図るため、枠材において室内側に位置する部分を化粧材によって覆うようにしたものも提供されている。しかしながら、片引き窓や引き違い窓のように、枠体に室外側の面材と室内側の面材とが配設される建具にあっては、化粧材に室外の温度の影響が及ぶおそれがある。
【0005】
例えば、室外側の面材と室内側の面材とが配設される下枠においては、室内側の面材をスライド可能に支持するレール部までが室内側に配置され、レール部よりも室外側に位置する部分が室外に晒されることになる。このため、この下枠では、室内側のレール部までが内方枠構成部となり、その室外側に連結材が設けられることになる。このため、室内側のレール部から室外側の面材までの間に配設された化粧材には、外方枠構成部に対向して配置される部分が生じることになり、室外に露出する外方枠構成部から温度の影響を受け易くなる。この結果、例えば室内の温度に対して室外の温度が低い場合には、化粧材において外方枠構成部に対向して配置される部分の温度も低下することになり、室内に露出した表面に結露が生じるおそれがある。さらに、化粧材に結露が生じた場合には、その下方に設けられた連結材に結露水が滴下するおそれもあり、連結材に早期の劣化が生じて断熱性に影響を与え得る。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、断熱性の向上を図ることのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、枠体の室外側に固定面材が設けられ、かつ前記枠体の室内側に可動面材が設けられており、前記固定面材は、下縁部が前記枠体の下枠に支持されたパネルを備え、前記可動面材は、前記下枠に設けたレール部に沿って前記下枠の長手にスライド可能であり、前記下枠は、前記レール部が設けられた内方下枠部と、前記パネルの室外に臨む表面を支持する外方下枠部と、これら内方下枠部及び外方下枠部の間に位置する中間下枠部とを備えたものであり、前記下枠において前記可動面材よりも室外側となる部位には、前記外方下枠部と前記可動面材との間を覆う上面部と、前記上面部から下方に延在して前記中間下枠部に支持される脚部とを有したカバー部材が設けられ、前記中間下枠部と前記内方下枠部とは互いに離隔し、かつ相互間に断熱性を有する内方連結材が介在されているとともに、前記中間下枠部と前記外方下枠部とは互いに離隔し、かつ相互間に断熱性を有する外方連結材が介在されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、下枠が互いに離隔した内方下枠部、外方下枠部及び中間下枠部を有し、かつ中間下枠部と内方下枠部との間及び中間下枠部と外方下枠部との間にそれぞれ断熱性を有した連結材を介在させるようにしている。従って、レール部から室外側の固定面材までの間を化粧材によって覆った場合にも、室内側に配置される中間下枠部を化粧材に対向させることができ、化粧材に結露が生じる事態を招来するおそれがない。
【0009】
また本発明は、上述した建具において、前記下枠において室内側に位置する上面には、化粧材が配設されていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、下枠において室内側に位置する上面が化粧材によって覆われるため、外観品質の向上を図ることが可能となる。
【0011】
また本発明は、上述した建具において、前記化粧材と前記内方連結材との間には、断熱性を有する支持部材が介在され、前記支持部材は、前記中間下枠部と前記内方下枠部との上端部の間を連結するように配設してあり、前記内方連結材は、前記支持部材の下面に密接されていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、化粧材と内方連結材との間には、中間下枠部と前記内方下枠部との上端部の間を連結するように支持部材が介在され、かつこの支持部材の下面に密接するように内方連結材が設けられているため、可動面材の室外に臨む表面に付着した雨水等の水が下枠に滴下した場合にも、この水が内方連結材に付着する事態を防止することができ、連結材が早期に劣化する事態を招来するおそれがない。
【0013】
また本発明は、上述した建具において、前記内方下枠部及び前記中間下枠部には、それぞれ係合受部が設けられ、前記支持部材には、前記係合受部を介して前記内方下枠部及び前記中間下枠部のそれぞれに係合する係合部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、係合部を係合受部に係合させることにより、内方下枠部及び中間下枠部に対して支持部材を確実に連結させることができる。
【0015】
また本発明は、上述した建具において、前記支持部材は、前記内方下枠部及び前記中間下枠部の間にわたって配置されるベース部と、前記ベース部の上面において互いに間隔を確保した位置から上方に向けて延在する複数のリブ部とを有し、前記化粧材は、前記リブ部の上端部を介して前記支持部材に支持されていることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、支持部材において化粧材に接触する部分がリブ部の上端部に限られるため、支持部材と化粧材との間に水が浸入した場合にも化粧材の下面全面が濡れる事態を防止することができ、水の付着による化粧材の劣化を防止することができる。
【0017】
また本発明は、上述した建具において、前記ベース部の上面は、室外側が低くなるように構成され、前記リブ部には、それぞれ排水用切欠が設けられていることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、リブ部に設けた排水用切欠により、支持部材と化粧材との間に浸入した水を効率良く排出することができ、水の付着による化粧材の劣化をより確実に防止することができる。ベース部の上面としては、単に傾斜していても良いし、傾斜面を階段状に構成してもよい。
【0019】
また本発明は、上述した建具において、前記カバー部材の脚部には排水用開口が設けられているとともに、前記排水用開口には排水弁が設けられ、さらに、前記脚部から前記外方下枠部までの間には前記排水弁を通過した水を外部に排出するための排水路が設けられていることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、カバー部材の脚部よりも室内側となる部分に浸入した水は、排水用開口及び排水路を介して外部に排出されるため、水が滞留することに起因した不具合を防止することができる。しかも、排水用開口に排水弁を配設しているため、排水用開口を通じて脚部よりも室内側に水が浸入することもない。
【0021】
また本発明は、上述した建具において、前記カバー部材の脚部から前記外方下枠部までの間に構成される空間には、複数箇所に前記パネルの下面を支持するセッティングブロックが配設され、かつ前記セッティングブロックの相互間において前記中間下枠部と前記外方下枠部とに跨がる部位に、断熱性が前記外方連結材の断熱性以上となる挿入材が配設されており、前記排水路は、前記セッティングブロックに見込み方向に沿って切り欠きを貫通することにより構成された排水孔を含むことを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、カバー部材の脚部から外方下枠部までの間の空間に挿入材を配設しているため、当該空間での滞留を抑制することができ、断熱性の点で有利となる。しかも、挿入材としては断熱性が外方連結材の断熱性以上となる断熱材を適用しているため、挿入材が外方下枠部と中間下枠部との間の熱橋となることがない。さらに、挿入材を分断するように排水路を有した複数のセッティングブロックが配設されるため、排水弁を通過した水が空間の内部に滞留する事態を招来することがない。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、下枠が互いに離隔した内方下枠部、外方下枠部及び中間下枠部を有し、かつ中間下枠部と内方下枠部との間及び中間下枠部と外方下枠部との間にそれぞれ断熱性を有した連結材を介在させるようにしている。従って、レール部から室外側の固定面材までの間を化粧材によって覆った場合にも、化粧材に対して室内側に配置される中間下枠部を対向させることができ、化粧材に結露が生じる事態を招来するおそれがない。
【0028】
また、本発明によれば、発泡性を有した樹脂の発泡が完了する以前の時点で支持部材によって注入溝の開口を塞ぐようにしているため、煩雑な加工を要することなく連結材を支持部材に密接させることが可能となり、互いの間に水が浸入する事態を容易に防止することができる。従って、雨水等の水が下枠に滴下した場合にも、この水が連結材に付着する事態を防止することができ、連結材が早期に劣化する事態を招来するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態である建具を室内側から見た斜視図である。
図2図1に示した建具を可動面材側で破断した縦断面図である。
図3図1に示した建具を固定面材側で破断した縦断面図である。
図4図1に示した建具の横断面図である。
図5図1に示した建具の下枠を室外側から見た要部斜視図である。
図6図1に示した建具の下枠を室内側から見た要部斜視図である。
図7図1に示した建具の下枠を構成する要素を分解して示す図である。
図8図1に示した建具の下枠を構成する際に適用する枠素材の縦断面図である。
図9図1に示した建具の枠材を製造する手順を示したもので、(a)は枠素材の注入溝に液状の発泡ポリウレタンを注入した状態の要部縦断面図、(b)は注入溝に注入した発泡ポリウレタンの発泡が完了する以前の時点で支持部材によって注入溝の開口を塞いだ状態の要部縦断面図、(c)は発泡ポリウレタンが硬化した後、連結壁部を切除した状態の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具及び枠材の製造方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1図6は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10に固定障子(固定面材)20及び可動障子(可動面材)30を配設することによって構成した片引き窓と称されるものである。枠体10は、上枠11、下枠12及び左右の縦枠13,14を四周枠組みするとともに、上枠11及び下枠12の間に上下方向に沿って方立枠15を配設することによって構成したものである。本実施の形態では特に、枠体10を構成する枠材のうち、上枠11、左右の縦枠13,14及び方立枠15としては、木材や木質材等の木製のものを適用している。下枠12については、アルミニウム合金と樹脂との複合材となっており、さらに室内側に配置される部分の上面を化粧材によって覆っている。
【0031】
固定障子20は、枠体10において上枠11、下枠12、一方の縦枠13及び方立枠15によって囲まれる部位に固定障子用パネル21を配設することによって構成したものである。本実施の形態では、室内側から見た場合に枠体10の左側で見込み方向において室外側となる部位に固定障子(外方面材)20が設けてある。固定障子用パネル21としては、透光性を有した3枚の板ガラスを積層して構成した複層ガラスを適用している。しかしながら、固定障子用パネル21としては、必ずしも透光性を有したガラスを適用する必要はなく、樹脂材から成る透光性のパネルや透光性を有していないパネルを適用しても構わない。
【0032】
ここで、見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。また、本実施の形態では見付け方向という用語も用いる。見付け方向とは、上枠11や下枠12等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠13,14や方立枠15等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。
【0033】
可動障子30は、矩形状を成す可動障子用パネル31の四周に上框32、下框33及び左右の縦框34を装着することによって構成したもので、枠体10の見込み方向において室内側となる部位に設けてある(内方面材)。可動障子30を構成するそれぞれの框材32,33,34としては、枠体10の上枠11等と同様、木製のものを適用している。可動障子用パネル31としても、固定障子20と同様、透光性を有した3枚の板ガラスを積層して構成した複層ガラスを適用している。図からも明らかなように、上枠11において可動障子30の上框32に対向する部位には、上枠11の長手に沿って上方レール部16が設けてあり、下枠12において可動障子30の下框33に対応する部分には、下枠12の長手に沿って下方レール部17が設けてある。可動障子30は、これら上方レール部16及び下方レール部17をガイドとして上枠11及び下枠12の長手に沿ってスライド可能である。この建具では、室内側から見た場合に、枠体10において上枠11、下枠12、他方の縦枠14及び方立枠15によって囲まれる右側の枠開口18が、可動障子30のスライドによって開閉可能となる。なお、図中の符号19は、下方レール部17をガイドとして転動する戸車である。図には明示していないが、この戸車19は、可動障子30の下框33に取り付けられたものである。また、可動障子用パネル31としても、透光性を有したガラスを適用する必要はなく、樹脂材から成る透光性のパネルや透光性を有していないパネルを適用しても構わない。
【0034】
以下、主に下枠12の詳細構成について説明し、併せて本願発明の特徴部分について詳述する。なお、以下においては便宜上、建物に取り付けた状態の姿勢でそれぞれの構成を説明することとする。
【0035】
図2図3図7に示すように、下枠12は、見込み方向に並設される内方下枠部40、外方下枠部50及び中間下枠部60を有している。内方下枠部40、外方下枠部50及び中間下枠部60は、アルミニウム合金によって成形した押し出し形材であり、それぞれが長手の全長にわたってほぼ一様の断面形状を有するように構成してある。内方下枠部40は室内側に配置される部分であり、外方下枠部50は室外側に配置される部分である。中間下枠部60は、これら内方下枠部40と外方下枠部50との間に配置される部分であり、内方下枠部40に対して離隔し、かつ外方下枠部50に対しても離隔している。
【0036】
内方下枠部40は、上下方向に延在される枠基板部41の上端部に、上述した下方レール部17が一体に構成されたものである。枠基板部41の下端部には、下方爪ヒレ部42及び下方外係合ヒレ部43が設けてあり、枠基板部41の中間部には、上方爪ヒレ部44及び上方外係合ヒレ部45が設けてある。下方爪ヒレ部42及び上方爪ヒレ部44は、それぞれ枠基板部41から室内側に向けてほぼ水平に延在したもので、個々の延在縁部に係合爪42a,44aが設けてある。係合爪42a,44aは、下方爪ヒレ部42及び上方爪ヒレ部44から互いに近接する方向に向けて屈曲したものである。下方外係合ヒレ部43及び上方外係合ヒレ部45は、それぞれ枠基板部41から室外側に向けてほぼ水平に延在したものである。下方外係合ヒレ部43の延在縁部には、上方に向けて突出した下外係合突条43aが設けてある。上方外係合ヒレ部45は、延在縁部が一旦下方に湾曲した後に、室外側に向けてほぼ水平となるように延在しており、その延在縁部に内方係合受部45aを有している。内方係合受部45aは、上方外係合ヒレ部45の延在縁部から下方に向けて突出した部分である。
【0037】
内方下枠部40には、枠基板部41よりも室内側となる部位に支持台部70が取り付けてある。支持台部70は、断熱性を有する樹脂、例えばポリ塩化ビニル(PVC)によって成形した中空の角筒状を成すものである。この支持台部70は、内方下枠部40の下方爪ヒレ部42及び上方爪ヒレ部44の間に装着してあり、それぞれの係合爪42a,44aによって内方下枠部40に脱落することなく保持されている。支持台部70の上面には、係着溝71が設けてある。係着溝71は、支持台部70の長手に沿って形成した凹溝である。係着溝71の開口縁部となる部位には、互いに近接する方向に向けて台部突条72が設けてある。
【0038】
外方下枠部50は、中空状を成す基底筒部51と、基底筒部51の室外側に位置する上面部分から上方に向けて延在するパネル保持ヒレ部52とが一体に設けられたものである。基底筒部51は、見込み方向に沿った寸法に対して上下に沿った寸法が短い略角筒状を成すもので、室内に臨む内方端面の上下両縁部にそれぞれ内方係合ヒレ部53,54を有している。内方係合ヒレ部53,54は、室内側に向けて互いにほぼ平行となるように水平に延在したものである。内方係合ヒレ部53,54の延在縁部には、互いに対向する部位に内方係合突条53a,54aが設けてある。パネル保持ヒレ部52には、上端部にタイト材装着溝55、カバー支持ヒレ部56及び水切りヒレ部57が設けられている。タイト材装着溝55は、室内側に向けて開口するもので、ほぼ水平方向に沿って延在している。このタイト材装着溝55には、固定障子用パネル21に対応する部位に、パネル保持ヒレ部52と固定障子用パネル21の室外に臨む表面との間をシールするための外方タイト材59が装着されている。カバー支持ヒレ部56は、パネル保持ヒレ部52の室内に臨む表面においてタイト材装着溝55よりも下方となる部位から室内側に向けてほぼ水平に突出したものである。水切りヒレ部57は、パネル保持ヒレ部52の上縁から室外側に向けて漸次低くなるように傾斜延在した後、ほぼ鉛直下方に向けて屈曲した部分である。
【0039】
中間下枠部60は、中空状を成す本体部61と、本体部61の室外に臨む外方端面から突出する上下2つの外方係合ヒレ部62,63と、本体部61の室内に臨む部位から突出する下方内係合ヒレ部64及び上方内係合ヒレ部65とが一体に設けられたものである。本体部61の上下に沿った寸法は、基底筒部51の上下に沿った寸法とほぼ等しくなるように構成してある。外方係合ヒレ部62,63は、室外側に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。外方係合ヒレ部62,63の延在縁部には、互いに対向する部位に外方係合突条62a,63aが設けてある。図からも明らかなように、外方係合ヒレ部62,63の相互間隔は、外方下枠部50に設けた内方係合ヒレ部53,54の相互間隔とほぼ等しくなるように形成してある。下方内係合ヒレ部64は、本体部61の室内に臨む部位の下縁部から室内に向けてほぼ水平となるように延在したものである。下方内係合ヒレ部64の延在縁部には、上方に向けて突出した下内係合突条64aが設けてある。上方内係合ヒレ部65は、本体部61の室内に臨む部位の上縁部から上方に向けて延在したものである。上方内係合ヒレ部65には、上内係合ヒレ部66及び上下2つの係止ヒレ部67が設けてある。上内係合ヒレ部66は、上方内係合ヒレ部65の上縁部から室内側に向けて延在したものである。上内係合ヒレ部66の延在縁部には、下方に向けて突出した上内係合突条66aが設けてある。上内係合ヒレ部66から下方内係合ヒレ部64までの距離は、外方下枠部50において上方外係合ヒレ部45から下方外係合ヒレ部43までの距離よりも短く構成してある。係止ヒレ部67は、上方内係合ヒレ部65の室外に臨む表面から室外に向けて互いにほぼ平行となるように延在したもので、互いの間に溝状の外方係合受部68を構成している。
【0040】
上記のように構成した内方下枠部40と中間下枠部60との間には支持部材80及び内方連結材90が介在し、かつ外方下枠部50と中間下枠部60との間には外方連結材100が介在している。支持部材80、内方連結材90及び外方連結材100は、それぞれが断熱性を有する樹脂によって成形したもので、内方下枠部40と中間下枠部60との間、及び外方下枠部50と中間下枠部60との間の断熱性を確保した状態で相互間を連結している。
【0041】
支持部材80は、内方下枠部40と中間下枠部60との間にわたって配置されるベース部81と、ベース部81の上面81aに設けた複数のリブ部82とを一体に成形したものである。本実施の形態では、ポリ塩化ビニル(PVC)によって支持部材80を形成するようにしている。
【0042】
ベース部81は、室外側に位置する部分に外方係合部83を有し、かつ室内側に位置する部分に内方係合部84を有したものである。外方係合部83は、ベース部81の下面81bから下方に延在した後、室内側に向けて屈曲したものである。内方係合部84は、ベース部81の上面81aから上方に向けて突出した部分である。このベース部81は、外方係合部83の屈曲した部分を中間下枠部60の外方係合受部68に係合させるとともに、内方係合部84を内方下枠部40の内方係合受部45aに係合させることにより、中間下枠部60と内方下枠部40との間の隙間を覆うように配置してある。図からも明らかなように、ベース部81の下面81bは、室外側に向けて段階的に低くなるように階段状を成し、かつ個々の下面が室外側に向けて漸次低くなるように傾斜している。
【0043】
リブ部82は、ベース部81の上面81aからそれぞれ互いに平行となるように上方に向けて延在した板状を成すものである。本実施の形態では、ベース部81の室外側に位置する縁部から室内側に向けてほぼ等間隔となるように3つのリブ部82が設けてある。3つのリブ部82の上端は、互いにほぼ同一の高さとなるように設定してある。図5及び図6に示すように、それぞれのリブ部82には、排水用切欠82a及びリブ突条82bが設けてある。排水用切欠82aは、ベース部81の上面81aに滴下したり、貯留した水を順次室外側に排出するための開口であり、それぞれのリブ部82の上端からベース部81の上面81aまでの間において互いに対向する部位に形成してある。図には明示していないが、それぞれのリブ部82には長手に沿った複数位置に排水用切欠82aが設けてある。リブ突条82bは、リブ部82の上面部に設けた突出部分である。室外側に配置されたリブ部82及び中間のリブ部82には、室内側に突出するようにリブ突条82bが設けてあり、室内側のリブ部82には、室外側に突出するようにリブ突条82bが設けてある。
【0044】
内方連結材90は、室内側の端部が内方下枠部40の上方外係合ヒレ部45と下方外係合ヒレ部43との間に配置され、室外側の端部が中間下枠部60の上内係合ヒレ部66と下方内係合ヒレ部64との間に配置されたものである。上方外係合ヒレ部45と下方外係合ヒレ部43との間においては、上方外係合ヒレ部45の段部及び下外係合突条43aによって内方連結材90の端部が挟持され、上内係合ヒレ部66と下方内係合ヒレ部64との間においては、上内係合突条66a及び下内係合突条64aによって内方連結材90の端部が挟持されている。つまり、内方下枠部40と中間下枠部60との間は、直接の接触はないが、内方連結材90を介して相互に連結された状態にある。図からも明らかなように、内方連結材90の上面90aは、ベース部81の下面81bに密接しており、ベース部81の下面81bに倣った形状となっている。つまり、ベース部81の下面81bは、室外側に向けて段階的に低くなるように階段状を成し、かつ個々の下面が室外側に向けて漸次低くなるように傾斜している。内方連結材90の下面90bは、内方下枠部40の下面及び中間下枠部60の下面よりも上方において平坦となっている。
【0045】
外方連結材100は、室内側の端部が中間下枠部60の外方係合ヒレ部62,63の相互間に配置され、かつ室外側の端部が外方下枠部50の内方係合ヒレ部53,54の相互間に配置されたもので、ほぼ一様の板厚を有するように構成してある。外方係合ヒレ部62,63の相互間においては、外方係合突条62a,63aによって外方連結材100の端部が挟持され、内方係合ヒレ部53,54の相互間においては、内方係合突条53a,54aによって外方連結材100の端部が挟持されている。つまり、中間下枠部60と外方下枠部50との間は、直接の接触はないが、外方連結材100を介して相互に連結された状態にある。図からも明らかなように、外方連結材100の上面100aは、基底筒部51の上面51a及び本体部61の上面61aとほぼ一致している。外方連結材100の下面100bは、基底筒部51の下面51b及び本体部61の下面61bよりも上方において平坦となっている。
【0046】
内方連結材90及び外方連結材100としては、それぞれ断熱性が支持部材80の断熱性以下で、発泡性を有した樹脂、例えば発泡ポリウレタンを適用している。本実施の形態では、内方下枠部40と中間下枠部60との間及び中間下枠部60と外方下枠部50との間にそれぞれ液状の発泡ポリウレタンを注入し、これらを発泡・硬化させることによって内方連結材90及び外方連結材100を成形するようにしている。
【0047】
図8は、支持部材80、内方連結材90及び外方連結材100を介して連結される内方下枠部40、中間下枠部60及び外方下枠部50を構成する際に適用する枠素材1を示したものである。枠素材1とは、アルミニウム合金によって成形した直後の押し出し形材に相当するものである。図示の例では、内方下枠部40の下方外係合ヒレ部43と中間下枠部60の下方内係合ヒレ部64との間が内方連結壁部2によって連結した枠素材1を適用している。同様に、この枠素材1では、中間下枠部60の下方に位置する外方係合ヒレ部63と外方下枠部50の下方に位置する内方係合ヒレ部54との間を外方連結壁部3によって連結してある。図からも明らかなように、枠素材1の段階では、内方下枠部40と中間下枠部60との間に内方連結壁部2を底壁として上方に開口する内方注入溝4が設けられ、中間下枠部60と外方下枠部50との間に外方連結壁部3を底壁として上方に開口する外方注入溝5が設けられている。
【0048】
上述の枠素材1に対しては、内方注入溝4及び外方注入溝5に内方連結材90及び外方連結材100の原材料としてそれぞれ液状の発泡ポリウレタンを注入する。その後、発泡することで発泡ポリウレタンが内方注入溝4及び外方注入溝5に充填されることになり、硬化した段階で所望形状の内方連結材90及び外方連結材100を得ることができる。発泡ポリウレタンが硬化した後においては、内方連結壁部2及び外方連結壁部3をそれぞれ切除すれば、中間下枠部60と内方下枠部40とが分断されるとともに、中間下枠部60と外方下枠部50とが分断された状態となる。つまり、中間下枠部60と内方下枠部40とが離隔した状態で並設し、かつ相互間に内方連結材90が介在されているとともに、中間下枠部60と外方下枠部50とが離隔した状態で並設し、かつ相互間に外方連結材100が介在されたものを得ることができる。
【0049】
ここで、本実施の形態では特に、図9に示す手順に従って、内方注入溝4において内方連結材90を成形するようにしている。すなわち、図9の(a)に示すように、内方注入溝4に液状の発泡ポリウレタン6を所望量だけ注入した後、図9の(b)に示すように、注入した発泡ポリウレタン6の発泡が完了する以前の時点で内方下枠部40と中間下枠部60との間に支持部材80を配置するようにしている。この状態においては、支持部材80によって内方注入溝4の開口が塞がれた状態となる。これにより、内方注入溝4に注入された発泡ポリウレタン6が発泡することにより、内方注入溝4と支持部材80とによって囲まれる空間に隙間無く充填されることになる。従って、上述の方法によれば、支持部材80のベース部81に沿った形状を有する内方連結材90を、容易、かつ正確に成形することが可能となる。その後においては、図9の(c)に示すように、内方連結壁部2を切除すれば良い。
【0050】
上記のように内方連結材90及び外方連結材100によって連結した内方下枠部40、中間下枠部60及び外方下枠部50に対しては、室内側に配置される部分の上面を化粧材110によって覆うようにしている。より具体的に説明すると、室内側から見た場合に方立枠15を境として右側となる部分(以下、単に右側部分という)では、図2に示すように、可動障子30の室外に臨む表面よりも室内側となる部位の上面に化粧材110を配設している。方立枠15を境として左側となる部分(以下、単に左側部分という)では、図3に示すように、固定障子用パネル21よりも室内側となる部位の上面に化粧材110を配設している。
【0051】
これらの化粧材110は、内方下枠部40の下方レール部17を避けて配設してある。すなわち、下方レール部17よりも室内側となる部分については、下枠12の全長にわたって同一の断面形状を有した一連の内方化粧材110Aを配設するようにしている。下方レール部17よりも室外側となる部分については、見込み方向の寸法が異なるため、右側部分と左側部分とで異なる形状の化粧材110B,110Cを配設するようにしている。本実施の形態では、化粧材として木材や木質材等の木製のものを適用している。しかしながら、化粧材としては、必ずしもこれに限らず、木材とプラスチックとの複合材料(例えばWPC(Wood Plastics Combination)、再生木、木粉入り樹脂)やMDF(medium density fiberboard)、メラミン化粧板等々、その他のものを適用しても良い。特に、本実施の形態の場合には、後述する理由により、水に弱い材質を含むものであっても構わない。
【0052】
内方化粧材110Aは、図3及び図2に示すように、平坦な下面110aに係着具111を備えたものである。この内方化粧材110Aは、下面110aを支持台部70の上面70aに当接させ、係着具111を係着溝71の台部突条72に係合させることにより、支持台部70に対して着脱可能に支持させてある。内方化粧材110Aの室外側に位置する部分は、支持台部70を超えて下方レール部17に近接するように室外側に突出しており、その下面110aが内方下枠部40に設けた上方爪ヒレ部44に支持されている。
【0053】
右側部分において下方レール部17よりも室外側となる部位に配設した化粧材(以下、単に右外方化粧材110Bという)は、図2及び図7に示すように、内方化粧材110Aと同様、平坦な下面110aに係着具111を備えたものである。この右外方化粧材110Bは、下面110aを支持部材80に設けたリブ部82の上端面に当接させ、係着具111を室内側のリブ部82と中間のリブ部82との間においてそれぞれのリブ突条82bに係合させることにより、支持部材80に対して着脱可能に支持させてある。右外方化粧材110Bの見込み方向に沿った寸法は、内方下枠部40の下方レール部17から支持部材80のもっとも室外側に位置するリブ部82までの距離とほぼ等しくなるように構成してある。これにより、右外方化粧材110Bの室外に臨む端面110bは、支持部材80の室外に臨む端面80aとほぼ同一の平面上に位置している。右外方化粧材110Bの室内側に位置する部分は、下方レール部17にほぼ接触する位置に達しており、その下面110aが内方下枠部40に設けた上方外係合ヒレ部45に支持されている。なお、右外方化粧材110Bの上部には、凹凸状の意匠が構成してある。
【0054】
左側部分において下方レール部17よりも室外側となる部位に配設した化粧材(以下、単に左外方化粧材110Cという)は、図3及び図7に示すように、右外方化粧材110Bと同様、平坦な下面に係着具111を備えたものである。この左外方化粧材110Cは、下面110aを支持部材80に設けたリブ部82の上端面に当接させ、係着具111を室内側のリブ部82と中間のリブ部82との間においてそれぞれのリブ突条82bに係合させることにより、支持部材80に対して着脱可能に支持させてある。左外方化粧材110Cの見込み方向に沿った寸法は、内方下枠部40の下方レール部17から外方連結材100の中間部までの距離とほぼ等しくなるように構成してある。左外方化粧材110Cの室内側に位置する部分は、下方レール部17にほぼ接触する位置に達しており、その下面110aが内方下枠部40に設けた上方外係合ヒレ部45に支持されている。左外方化粧材110Cの室外側に位置する部分は、外方下枠部50のパネル保持ヒレ部52との間に固定障子用パネル21を装着することのできる寸法を確保した位置にあり、その下面110aが後述するセッティングブロック120を介して外方下枠部50及び中間下枠部60に支持されている。図からも明らかなうように、左外方化粧材110Cと固定障子用パネル21の室内に臨む表面との間には、左外方化粧材110Cに装着した内方タイト材112が介在している。なお、左外方化粧材110Cの上部にも凹凸状の意匠が構成してある。
【0055】
また、外方連結材100によって連結した中間下枠部60及び外方下枠部50に対しては、図2図3図5図7に示すように、パネル保持ヒレ部52と支持部材80との間に位置する部位にセッティングブロック120及び挿入材130が配設してあり、さらに右側部分にのみカバー部材140が配設してある。
【0056】
セッティングブロック120は、固定障子用パネル21の下面を支持するための直方体状を成す部材であり、断熱性が外方連結材100の断熱性以上となる樹脂によって成形してある。図には明示していないが、この建具では、同一形状のセッティングブロック120が長手に沿った複数位置に配設してある。それぞれのセッティングブロック120は、パネル保持ヒレ部52に設けた排水用孔(排水路)52aに対向し、かつ室外側に位置する部分がパネル保持ヒレ部52に当接している。セッティングブロック120の室内側に位置する部分は、中間下枠部60の外方係合ヒレ部62にのみ載置された状態にある。それぞれのセッティングブロック120の下面には、見込み方向に沿って排水孔(排水路)121が形成してある。排水孔121は、セッティングブロック120の室内に臨む端面から室外に臨む端面までの間を貫通するように切り欠きを設けることによって構成してある。なお、図には明示していないが、セッティングブロック120の下面において外方連結材100に対応する部位には、外方連結材100との接触を避けるための凹部122が形成してある。
【0057】
挿入材130は、上下に沿った寸法がセッティングブロック120よりもわずかに小さく、かつ見込み方向に沿った寸法がセッティングブロック120よりも大きな直方体状を成すもので、断熱性が外方連結材100の断熱性以上となる樹脂によって成形してある。この挿入材130は、外方下枠部50、外方連結材100、中間下枠部60、支持部材80、左外方化粧材110C、固定障子用パネル21及び後述するカバー部材140によって囲まれる空間131の容積を減少させるためのもので、複数のセッティングブロック120の相互間となる部位に配設してある。
【0058】
カバー部材140は、脚部141と上面部142とが一体に成形されたものである。本実施の形態では、アルミニウム合金によって成形した押し出し形材から成るカバー部材140を適用している。
【0059】
脚部141は、上下に沿って延在する板状の脚基板141aと、脚基板141aの下端よりもわずかに上方となる部位から室内側に向けて延在した脚支持板141bとを有したものである。脚基板141aの上下に沿った寸法は、パネル保持ヒレ部52よりも高くなるように設定してある。脚基板141aの下端縁は、室外側に向けて屈曲している。脚基板141aにおいて脚支持板141bよりも上方となる部位には、排水用開口141cが設けてある。排水用開口141cは、脚基板141aを見込み方向に貫通するもので、図には明示していないが、長手に沿った複数位置に設けてある。それぞれの排水用開口141cには、排水弁143が装着してある。排水弁143は、室内側から室外側に向けてのみ水の通過を許容するものである。
【0060】
上面部142は、脚基板141aの上端部から室外側に向けて延在した中空の厚板状を成すものである。この上面部142は、脚部141に設けた脚支持板141bの延在端縁を中間下枠部60の上方内係合ヒレ部65に当接させた場合に、室外側に位置する部位が外方下枠部50のパネル保持ヒレ部52に当接することのできる寸法に構成してある。特に本実施の形態では、上面部142の上面142aが水切りヒレ部57の上面57aと同一の傾斜を有し、かつ水切りヒレ部57の上面57aから上面部142の上面142aが連続するようにそれぞれの寸法が設定してある。上面部142の室外側に位置する部分には、支持リブ142b及び係合突起142cが設けてある。支持リブ142bは、パネル保持ヒレ部52のカバー支持ヒレ部56に当接する部分であり、上面部142の室外側に位置する部分の下縁から鉛直下方に向けて延在している。係合突起142cは、パネル保持ヒレ部52のタイト材装着溝55に係合することにより、上面部142の上方への移動を制限するものであり、上面部142の室外に臨む端面から室外に向けて突出している。図からも明らかなように、上面部142の下面142dは、セッティングブロック120の上面120a及び挿入材130の上面のいずれにも接触していない。
【0061】
上述の構成を有するカバー部材140は、脚部141を介して本体部61の上面61aに当接させ、かつ上面部142の室外側に位置する部分をパネル保持ヒレ部52に係合させることによって、中間下枠部60及び外方下枠部50の間に配設されることになる。この状態においては、パネル保持ヒレ部52から可動障子30の下框33に近接する部位までの間においてセッティングブロック120や挿入材130、外方連結材100が覆われることになる。図5に示すように、本実施の形態では、支持部材80の排水用切欠82a、脚部141の排水弁143及びセッティングブロック120は、見込み方向において互いに対応する部位となるように互いに同一の数のものが同一のピッチで設けてある。
【0062】
上記のように構成した建具では、室内側に配置される内方下枠部40と室外側に配置される外方下枠部50との間が離隔した状態で並設され、互いの間に断熱性を有した連結材90,100が介在されている。従って、内方下枠部40に対する外気の影響を小さくすることができる。しかも、内方下枠部40と外方下枠部50との間に中間下枠部60を設け、かつ中間下枠部60と内方下枠部40との間及び中間下枠部60と外方下枠部50との間にそれぞれ断熱性を有した内方連結材90及び外方連結材100を介在させるようにしている。従って、外観品質の向上を図るべく、レール部17から室外側の固定障子20までの間を左外方化粧材110Cによって覆った場合にも、室内側に配置される中間下枠部60を左外方化粧材110Cに対向させることができる。従って、例えば室内の温度に対して室外の温度が低い場合にも、左外方化粧材110Cが外気の影響を受け難くなり、左外方化粧材110Cに結露が生じる事態を招来するおそれがない。特に本実施の形態では、外方下枠部50、外方連結材100、中間下枠部60、支持部材80、左外方化粧材110C、固定障子用パネル21及び後述するカバー部材140によって囲まれる空間131に挿入材130を配設しているため、当該空間131内の対流を抑えることができるため、上述した断熱効果が顕著となる。
【0063】
さらに、内方連結材90と化粧材110B,110Cとの間には、内方連結材90の上面に密接するように支持部材80を配設するようにしている。従って、可動障子30の室外に臨む表面に付着した雨水等の水が下枠12に滴下した場合にも、この水が内方連結材90に付着する事態を防止することができ、内方連結材90が早期に劣化する事態を招来するおそれがない。加えて、支持部材80において化粧材110B,110Cに接触する部分は、リブ部82の先端部に限られるため、支持部材80と化粧材110B,110Cとの間に水が浸入した場合にも化粧材110B,110Cの下面110a全面が濡れる事態を防止することができ、水の付着による化粧材110B,110Cの劣化を防止することができる。支持部材80の上面に浸入した水は、ベース部81の傾斜及びリブ部82に設けた排水用切欠82aの作用により、滞留することなく室外側に案内され、さらに排水弁143及びセッティングブロック120の排水孔121を通じて早期に室外に排出されることになる。
【0064】
なお、上述した実施の形態では、片引き窓を例示しているが、室外側の外方面材が可動するように構成した引き違い窓に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 枠素材、2 内方連結壁部、3 外方連結壁部、4 内方注入溝、5 外方注入溝、6 発泡ポリウレタン、10 枠体、11 上枠、12 下枠、13,14 縦枠、15 方立枠、17 下方レール部、20 固定障子、21 固定障子用パネル、30 可動障子、40 内方下枠部、45a 内方係合受部、50 外方下枠部、52a 排水用孔、60 中間下枠部、68 外方係合受部、80 支持部材、81 ベース部、81a 上面、82 リブ部、82a 排水用切欠、83 外方係合部、84 内方係合部、90 内方連結材、100 外方連結材、110 化粧材、110A 内方化粧材、110B 右外方化粧材、110C 左外方化粧材、120 セッティングブロック、121 排水孔、130 挿入材、131 空間、140 カバー部材、141 脚部、141c 排水用開口、142 上面部、143 排水弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9