(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】封止用シート
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20220107BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2018041969
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】飯野 智絵
(72)【発明者】
【氏名】土生 剛志
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐作
(72)【発明者】
【氏名】大原 康路
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/117093(WO,A1)
【文献】特開2014-112699(JP,A)
【文献】特開2016-102166(JP,A)
【文献】特開2015-179814(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208694(WO,A1)
【文献】特開2015-170754(JP,A)
【文献】特開2014-210880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/28-23/31
H01L 21/56
C08J 5/00- 5/02、 5/12- 5/22
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、ノボラック型フェノール樹脂と、カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂とを含有し、
以下の方法で測定されるはみ出し長さL1が、3mm以下であることを特徴とする、封止用シート。
厚み260μm、縦5cm、横5cmの寸法を有する前記封止用シートを、前記封止用シートと同一の縦横寸法を有する剥離シートに支持される状態で、縦6cm、横6cmのアルミナ板の前記厚み方向一方面に、前記アルミナ板、前記封止用シートおよび前記剥離シートが厚み方向一方側に順に並ぶように、配置し、70℃で、60秒間、360Nの力で、それらを前記厚み方向に熱プレスし、その後、前記封止用シートの前記剥離シートから前記厚み方向に直交する方向外側へのはみ出し長さL1を測定する。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂の酸価が、10mgKOH/g以上、40mgKOH/g以下であることを特徴とする、請求項1に記載の封止用シート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、-20℃以上、10℃以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の封止用シート。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂の前記エポキシ樹脂および前記ノボラック型フェノール樹脂の総量100質量部に対する配合部数が、10質量部以上、90質量部以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の封止用シート。
【請求項5】
さらに、第1無機粒子と、
前記第1無機粒子の平均粒子径より小さい平均粒子径を有する第2無機粒子とを含有し、
前記第2無機粒子の前記第1無機粒子100質量部に対する配合部数が、50質量部以上、100質量部未満であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の封止用シート。
【請求項6】
以下の方法で求められる反応率Rが、50%以上であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の封止用シート。
封止用シート1を、以下の条件で示差走査熱量を測定して、第1発熱量H1を得る。
測定温度範囲:0~300℃
昇温速度:10℃/分
測定質量:15mg
別途、前記封止用シートを、150℃で、10分加熱し、当該封止用シートを、前記の条件で示差走査熱量を測定して、第2発熱量H2を得る。
その後、前記第1発熱量H1から前記第2発熱量H2を差し引いた熱量[H1-H2]の、前記第1発熱量H1に対する百分率([H1-H2]/H1×100%)を前記反応率Rとして求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子封止用シートは、基板に実装されている半導体チップを封止して、半導体パッケージの製造に用いられることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
例えば、基板と半導体チップとの間に空隙を設けながら、ゲル状エポキシ系硬化性樹脂シートを熱プレスすることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1に記載の方法では、基板に実装されている半導体チップと、同一サイズを有する剥離シートに支持されたゲル状エポキシ系硬化性樹脂シートとを積層した状態で、それらを、プレスの下板に配置し、続いて、それらを上板を下板に対して熱プレスするが、ゲル状エポキシ系硬化性樹脂シートが、基板の周端縁を超えて、下板の表面に落ち込んで付着する場合がある。また、ゲル状エポキシ系硬化性樹脂シートが、剥離シートの周端縁を大きく超えて飛び超えて、上板に付着する場合もある。
【0006】
この場合には、都度、プレスの下板や上板を洗浄する必要があり、半導体パッケージの製造における歩留まりが低下するという不具合がある。
【0007】
本発明は、周囲の部材を汚染することを抑制しつつ、半導体素子を確実に封止して、半導体素子装置を効率よく製造することのできる封止用シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、エポキシ樹脂と、ノボラック型フェノール樹脂と、カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂とを含有し、以下の方法で測定されるはみ出し長さL1が、3mm以下である、封止用シートを含む。
【0009】
厚み260μm、縦5cm、横5cmの寸法を有する前記封止用シートを、前記封止用シートと同一の縦横寸法を有する剥離シートに支持される状態で、縦6cm、横6cmのアルミナ板7の前記厚み方向一方面に、前記アルミナ板、前記封止用シートおよび前記剥離シートが厚み方向一方側に順に並ぶように、配置し、70℃で、60秒間、360Nの力で、それらを前記厚み方向に熱プレスし、その後、前記封止用シートの前記剥離シートから前記厚み方向に直交する方向外側へのはみ出し長さL1を測定する。
【0010】
本発明(2)は、前記熱可塑性樹脂の酸価が、10mgKOH/g以上、40mgKOH/g以下である、(1)に記載の封止用シートを含む。
【0011】
本発明(3)は、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、-20℃以上、10℃以下である、(1)または(2)に記載の封止用シートを含む。
【0012】
本発明(4)は、前記熱可塑性樹脂の前記エポキシ樹脂および前記ノボラック型フェノール樹脂の総量100質量部に対する配合部数が、10質量部以上、90質量部以下である、(1)~(3)のいずれか一項に記載の封止用シートを含む。
【0013】
本発明(5)は、さらに、第1無機粒子と、前記第1無機粒子の平均粒子径より小さい平均粒子径を有する第2無機粒子とを含有し、前記第2無機粒子の前記第1無機粒子100質量部に対する配合部数が、50質量部以上、100質量部未満である、(1)~(4)のいずれか一項に記載の封止用シートを含む。
【0014】
本発明(6)は、以下の方法で求められる反応率Rが、50%以上である、(1)~(5)のいずれか一項に記載の封止用シートを含む。
【0015】
封止用シート1を、以下の条件で示差走査熱量を測定して、第1発熱量H1を得る。
【0016】
測定温度範囲:0~300℃
昇温速度:10℃/分
測定質量:15mg
別途、前記封止用シートを、150℃で、10分加熱し、当該封止用シートを、前記の条件で示差走査熱量を測定して、第2発熱量H2を得る。
【0017】
その後、前記第1発熱量H1から前記第2発熱量H2を差し引いた熱量[H1-H2]の、前記第1発熱量H1に対する百分率([H1-H2]/H1×100%)を前記反応率Rとして求める。
【発明の効果】
【0018】
本発明の封止用シートは、上記の方法で測定されるはみ出し長さL1が3mm以下であるので、周囲の部材を封止用シートによって汚染することを抑制しつつ、半導体素子を確実に封止して、半導体素子装置を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の封止用シートの一実施形態である半導体素子封止用シートの断面図を示す。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、
図1に示す半導体素子封止用シートのはみ出し長さを測定する方法を説明する図であり、
図2Aは、半導体素子封止用シートをアルミナ板に配置する工程、
図2Bは、半導体素子封止用シートを熱プレスして、はみ出し長さを測定する工程を示す。
【
図3】
図3A~
図3Bは、
図1に示す半導体素子封止用シートを用いて、半導体素子を封止して、半導体素子パッケージを製造する方法の工程図を示し、
図2Aが、半導体素子封止用シートを、半導体素子および基板に対して対向配置する工程、
図2Bが、半導体素子封止用シートによって、半導体素子を封止する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の封止用シートの一実施形態である半導体素子封止用シートを、
図1~
図3Bを参照して説明する。
【0021】
この半導体素子封止用シート1は、基板2に実装されている半導体素子3を封止するための封止用シートである。
【0022】
また、半導体素子封止用シート1は、後述する半導体素子パッケージ5(半導体素子装置の一例)を製造するための部品であって、半導体素子パッケージ5そのものではなく、半導体素子封止用シート1は、半導体素子3、および、半導体素子3を実装する基板2を含まず、具体的には、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
【0023】
なお、半導体素子封止用シート1は、半導体素子3を封止した後の硬化体シート20(
図3Bおよび
図3C)ではなく、つまり、半導体素子3を封止する前のシートである。
【0024】
半導体素子封止用シート1は、厚み方向に直交する方向(面方向)に延びる略板形状(フィルム形状)を有する。また、半導体素子封止用シート1は、平坦な厚み方向一方面(上面)16と、平坦な厚み方向他方面(下面)17と、それらの周端縁を連結する第1周面(連結面あるいは周側面)6とを備える。なお、第1周面6は、半導体素子封止用シート1の周端縁を含む周面である。
【0025】
半導体素子封止用シート1の材料は、加熱によって、一旦流動して軟化した後、硬化するエポキシ系封止組成物(エポキシ系熱硬化性組成物)である。エポキシ系封止組成物は、エポキシ樹脂と、ノボラック型フェノール樹脂と、カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂とを含む。
【0026】
エポキシ樹脂は、エポキシ系封止組成物における主剤であって、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などの3官能以上の多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。これらエポキシ樹脂は、単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0027】
好ましくは、2官能エポキシ樹脂の単独使用が挙げられ、具体的には、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の単独使用が挙げられる。
【0028】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、10g/eq.以上、好ましくは、100g/eq.以上であり、また、例えば、300g/eq.以下、好ましくは、250g/eq.以下である。
【0029】
エポキシ樹脂の軟化点は、例えば、50℃以上、好ましくは、70℃以上であり、また、例えば、110℃以下、好ましくは、90℃以下である。
【0030】
エポキシ樹脂の割合は、エポキシ系封止組成物において、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0031】
ノボラック型フェノール樹脂は、水酸基を有しており、エポキシ樹脂の硬化剤(エポキシ樹脂硬化剤)である。
【0032】
ノボラック型フェノール樹脂の軟化点は、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、また、例えば、90℃以下、好ましくは、70℃以下である。また、ノボラック型フェノール樹脂の軟化点と、エポキシ樹脂の軟化点との差は、比較的小さく、具体的には、例えば、40℃以下、好ましくは、30℃以下、より好ましくは、20℃以下である。
【0033】
ノボラック型フェノール樹脂の水酸基当量は、例えば、10g/eq.以上、好ましくは、50g/eq.以上であり、また、例えば、300g/eq.以下、好ましくは、150g/eq.以下である。
【0034】
ノボラック型フェノール樹脂の配合部数は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、ノボラック型フェノール樹脂中の水酸基の合計が、例えば、0.7当量以上、好ましくは、0.9当量以上、例えば、1.5当量以下、好ましくは、1.2当量以下となるように、調整される。具体的には、ノボラック型フェノール樹脂の配合部数は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、75質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0035】
カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂およびノボラック型フェノール樹脂と反応することができる反応性樹脂であり、具体的には、熱可塑性樹脂が含有するカルボキシル基が、エポキシ樹脂のエポキシ基、および、ノボラック型フェノール樹脂の水酸基と反応する。
カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂としては、カルボキシル基を含有するアクリル樹脂などが挙げられる。
【0036】
アクリル樹脂としては、例えば、直鎖または分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上と、カルボキシル基を含有するモノマーとをモノマー成分とし、それらのモノマー成分を重合することにより得られる、カルボキシル基を含有するアクリル系ポリマー(カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー)などが挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を表す。
【0037】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、へプチル、シクロヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ラウリル、トリデシル、テトラデシル、ステアリル、オクタデシル、ドデシルなどの炭素数1~20のアルキル基が挙げられる。好ましくは、炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
【0038】
カルボキシル基を含有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0039】
カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂の酸価は、例えば、1mgKOH/g以上、好ましくは、5mgKOH/g以上、より好ましくは、10mgKOH/g以上、さらに好ましくは、30mgKOH/g以上、とりわけ好ましくは、30mgKOH/g超過であり、また、例えば、100mgKOH/g以下、好ましくは、50mgKOH/g以下、より好ましくは、40mgKOH/g以下である。酸価は、JIS K 0070-1992に規定される中和滴定法により求められる。
【0040】
カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂の酸価が上記した下限以上であれば、後述する低温における反応率Rを高めることができる。一方、カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂の酸価が上記した上限以下であれば、樹脂の低温における高い流動性を持ちつつ、はみ出し長さL1を低減するのに必要な反応率Rを維持(確保)することができる。
【0041】
カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、例えば、10万以上、好ましくは、30万以上であり、また、例えば、100万以下、好ましくは、90万以下、より好ましくは、80万以下、さらに好ましくは、70万以下である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトフラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値に基づいて測定される。
【0042】
カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば、20℃以下、好ましくは、10℃以下、より好ましくは、5℃以下であり、また、例えば、-70℃以上、好ましくは、-50℃以上、より好ましくは、-25℃以上、さらに好ましくは、-20℃以上、とりわけ好ましくは、-10℃以上、最も好ましくは、-5℃以上である。カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば、Fox式により求められる理論値であって、その具体的な算出手法は、例えば、特開2016-175976号公報などに記載される。
【0043】
ガラス転移温度Tgが上記した下限以上であれば、半導体素子封止用シート1で半導体素子3を封止するときに、半導体素子封止用シート1が半導体素子3を実装する基板2からはみ出すことを有効に抑制することができる。ガラス転移温度Tgが上記した上限以下であれば、半導体素子封止用シート1が半導体素子3を確実に封止(埋設)することができる。
【0044】
カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂の、エポキシ樹脂およびノボラック型フェノール樹脂の総量100質量部に対する配合部数は、例えば、10質量部以上、好ましくは、25質量部以上、より好ましくは、40質量部以上であり、また、例えば、90質量部以下、好ましくは、75質量部以下、より好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、50質量部未満である。
【0045】
また、カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂のエポキシ系封止組成物(半導体素子封止用シート1)における割合は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1質量%超過であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、3質量%以下、さらに好ましくは、1.5質量%以下である。
【0046】
カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂の割合および/または配合部数が上記した下限以上であれば、後述する低温における反応率Rを高めて、半導体素子封止用シート1を熱プレスするときに、周囲の部材を半導体素子封止用シート1によって汚染することを抑制することができる。
【0047】
一方、カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂の割合および/または配合部数が上記した上限以下であれば、カルボキシル基が不足無く反応し、未反応のカルボキシル基が残留しない状態(あるいは可及的に少ない状態)にすることができる。
【0048】
なお、エポキシ系封止組成物は、例えば、硬化促進剤、無機粒子、顔料、シランカップリング剤なの添加剤を含有することもできる。
【0049】
硬化促進剤は、加熱によって、エポキシ樹脂の硬化を促進する触媒(熱硬化触媒)(エポキシ樹脂硬化促進剤)であって、例えば、有機リン系化合物、例えば、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ-PW)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)などのイミダゾール化合物などが挙げられる。好ましくは、イミダゾール化合物が挙げられる。硬化促進剤の配合部数は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下である。
【0050】
無機粒子は、半導体素子封止用シート1の強度を向上させるためのフィラーである。無機粒子の材料としては、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素などの無機化合物が挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、シリカが挙げられる。
【0051】
無機粒子の形状は、特に限定されず、例えば、略球形状、略板形状、略針形状、不定形状などが挙げられる。好ましくは、略球形状が挙げられる。
【0052】
無機粒子の最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径)Mは、例えば、50μm以下、好ましくは、20μm以下、より好ましくは、10μm以下であり、また、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上である。なお、平均粒子径Mは、例えば、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められた粒度分布に基づいて、D50値(累積50%メジアン径)として求められる。
【0053】
また、無機粒子は、第1無機粒子と、第1無機粒子の最大長さの平均値M1より小さい最大長さの平均値M2を有する第2無機粒子とを含むことができる。
【0054】
第1無機粒子の最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径)M1は、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0055】
第2無機粒子の最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径)M2は、例えば、1μm未満、好ましくは、0.8μm以下であり、また、例えば、0.01μm以上、好ましくは、0.1μm以上である。
【0056】
第1無機粒子の最大長さの平均値の、第2無機粒子の最大長さの平均値に対する比(M1/M2)は、例えば、2以上、好ましくは、5以上であり、また、例えば、50以下、好ましくは、40以下である。
【0057】
第1無機粒子および第2無機粒子の材料は、ともに同一あるいは相異っていてもよい。好ましくは、第1無機粒子および第2無機粒子の材料は、ともに同一、具体的には、シリカである。
【0058】
さらに、無機粒子は、その表面が、部分的あるは全体的に、シランカップリング剤などで表面処理されていてもよい。好ましくは、表面処理されていない第1無機粒子と、表面処理されている第2無機粒子との併用が挙げられる。
【0059】
無機粒子が、上記した第1無機粒子と第2無機粒子とを含めば、第1無機粒子と第2無機粒子とが、半導体素子封止用シート1において、エポキシ系封止組成物に対して効率的に分散して、半導体素子封止用シート1の靱性を向上させることができる。
【0060】
無機粒子(第1無機粒子および第2無機粒子の併用であれば、それらの総量)の含有割合は、半導体素子封止用シート1(エポキシ系封止組成物)中、例えば、50質量%超過、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、80質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、87質量%以下である。
【0061】
無機粒子が上記した第1無機粒子と第2無機粒子とを含む場合には、第1無機粒子の含有割合は、エポキシ系封止組成物中、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%超過であり、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
【0062】
無機粒子が上記した第1無機粒子と第2無機粒子とを含む場合には、第2無機粒子の配合部数は、第1無機粒子100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、50質量部超過であり、また、例えば、100質量部未満、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
【0063】
第2無機粒子の配合部数が上記した下限以上であれば、比較的大きな第1無機粒子間の隙間を、第2無機粒子によって効率的に充填して、半導体素子封止用シート1を熱プレスするときの流動性を低減させることができ、ひいては、周囲の部材を半導体素子封止用シート1によって汚染することを抑制することができる。
【0064】
一方、第2無機粒子の配合部数が上記した上限以下であれば、無機粒子の影響による過度な樹脂粘度上昇を抑えることができる。
【0065】
顔料としては、例えば、カーボンブラックなどの黒色顔料が挙げられる。顔料の平均粒子径は、例えば、0.001μm以上、例えば、1μm以下である。顔料の割合は、エポキシ系封止組成物に対して、例えば、0.1質量%以上、また、例えば、2質量%以下である。
【0066】
シランカップリング剤は、無機粒子の表面を処理(表面処理)するために配合される。シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基を含有するシランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどの3-グリシドキシジアルキルジアルコキシシラン、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどの3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。好ましくは、3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。シランカップリング剤の配合部数は、無機粒子100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0067】
エポキシ系封止組成物は、エポキシ樹脂と、ノボラック型フェノール樹脂と、カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂と、さらには、必要により、添加剤とを配合して、それらを混合する。
【0068】
次に、半導体素子封止用シート1の製造方法を説明する。
【0069】
半導体素子封止用シート1を製造するには、例えば、エポキシ系封止組成物を溶媒(例えば、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチルなど)に溶解および/または分散させて、ワニスを調製し、これを、第1剥離シート15に塗布し、乾燥させる。これによって、半導体素子封止用シート1を、第1剥離シート15に支持された状態で、製造する。
【0070】
第1剥離シート15は、例えば、面方向に延びるシート形状を有しており、周面を有する。周面は、第1剥離シート15の周端縁を含む周側面である。第1剥離シート15の材料は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、それらの共重合体などのポリオレフィン、例えば、ポリイミドなどのポリマー、さらには、例えば、金属、例えば、セラミックなどが挙げられる。好ましくは、ポリマー、より好ましくは、ポリオレフィンが挙げられる。また、第1剥離シート15は、その表面が、離型処理されていてもよい。第1剥離シート15の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0071】
その後、剥離シートの一例としての第2剥離シート25によって、半導体素子封止用シート1の厚み方向一方面16を被覆する。具体的には、第2剥離シート25を、半導体素子封止用シート1に対して第1剥離シート15の反対側に配置する。つまり、半導体素子封止用シート1を、第1剥離シート15および第2剥離シート25で厚み方向に挟み込んだ状態で、製造する。
【0072】
なお、第2剥離シート25は、第1剥離シート15と同一の形状、材料、厚みを有する。第2剥離シート25は、第2剥離シート25の周端縁を含む周側面である第2周面9を有する。第2周面9は、半導体素子封止用シート1の第1周面6と面一である。
【0073】
他方、ワニスを調製せず、混練押出によって、エポキシ系封止組成物から一度に半導体素子封止用シート1を製造することもできる。なお、混練押出における加熱条件は、エポキシ系封止組成物が完全硬化しない条件である。
【0074】
半導体素子封止用シート1におけるエポキシ系封止組成物は、例えば、Bステージ(完全硬化ではない半硬化)である。Bステージは、エポキシ系封止組成物が、液状であるAステージと、完全硬化したCステージとの間の状態であって、硬化およびゲル化がわずかに進行し、圧縮弾性率がCステージの弾性率よりも小さい状態である。
【0075】
これにより、半導体素子封止用シート1を製造する。
【0076】
半導体素子封止用シート1の厚みは、特に限定されず、例えば、100μm以上であり、また、例えば、2000μm以下である。
【0077】
そして、半導体素子封止用シート1は、以下の方法で測定されるはみ出し長さL1が、3mm以下である。また、はみ出し長さL1は、好ましくは、2.5mm以下以下、より好ましくは、2mm以下、さらに好ましくは、1.5mm以下であり、最も好ましくは、0mmである。
【0078】
はみ出し長さL1が上記した上限を上回れば、半導体素子3を封止するときに、周囲の部材が半導体素子封止用シート1によって汚染されることを抑制することができる。
【0079】
厚み260μm、縦5cm、横5cmの寸法を有する半導体素子封止用シート1を、半導体素子封止用シート1と同一の縦横寸法を有する第2剥離シート25に支持される状態で、縦6cm、横6cmのアルミナ板7の厚み方向一方面の一例である対向面8に、アルミナ板7、半導体素子封止用シート1および第2剥離シート25が厚み方向一方側に順に並ぶように、配置し、70℃で、60秒間、360Nの力で、それらを厚み方向に熱プレスし、その後、半導体素子封止用シート1の第2剥離シート25から外側へのはみ出し長さL1を測定する。
【0080】
具体的には、上記した第2剥離シート25および半導体素子封止用シート1を、それらがともに同一の縦横寸法を有するように、外形加工(例えば、切断)する。これにより、半導体素子封止用シート1の第1周面6と、第2剥離シート25の第2周面9とが、面一となる。
【0081】
次いで、第2剥離シート25が上側を向き、半導体素子封止用シート1が熱プレス23の下板21に向くように、下板21に配置し、続いて、上板22と下板21とによって、アルミナ板7、半導体素子封止用シート1および第2剥離シート25を挟み込みながら、それらをプレスする。
【0082】
なお、上板22の縦横寸法は、第2剥離シート25のそれよりも大きい。下板21の縦横寸法は、アルミナ板7のそれよりも大きい。
【0083】
また、熱プレス時の温度70℃は、半導体素子封止用シート1の軟化が許容されるが、半導体素子封止用シート1の完全硬化には至らない温度である。
【0084】
また、この半導体素子封止用シート1は、以下の方法で求められる反応率Rが、例えば、50%以上、好ましくは、60%以上、より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、80%以上、とりわけ好ましくは、80%超過、最も好ましくは、82%以上であり、また、例えば、95%以下である。
【0085】
半導体素子封止用シート1(次に説明する加熱前、つまり、未加熱の半導体素子封止用シート1)を、以下の条件で示差走査熱量を測定(DSC測定)して、第1発熱量H1を得る。
【0086】
測定温度範囲:0~300℃
昇温速度:10℃/分
測定質量:15mg
別途、半導体素子封止用シート1を、150℃で、10分加熱し、上記の当該半導体素子封止用シート(つまり、加熱後の半導体素子封止用シート1)を、上記の条件で示差走査熱量を測定(DSC測定)して、第2発熱量H2を得る。
【0087】
その後、第1発熱量H1から第2発熱量H2を差し引いた熱量[H1-H2]の、第1発熱量H1に対する百分率([H1-H2]/H1×100%)を反応率Rとして求める。
【0088】
この反応率Rは、所定温度(比較的低温)で加熱するときに発生する熱量[H1-H2]の割合を意味する。そのため、反応率Rが高い場合には、エポキシ系封止組成物の多くが所定温度(比較的低温)で反応したことを意味する一方、反応率Rが、低い場合には、エポキシ系封止組成物が所定温度(比較的低温)で少ししか反応していないことを意味する。
【0089】
反応率Rが上記した下限以上であれば、エポキシ系封止組成物が低温で反応する。そのため、上記したはみ出し長さL1を短くして、半導体素子封止用シート1を熱プレスするときに、周囲の部材を半導体素子封止用シート1によって汚染することを抑制することができる。
【0090】
次に、この半導体素子封止用シート1を用いて、半導体素子3を封止して、半導体素子パッケージ5を製造する方法を説明する。
【0091】
半導体素子パッケージ5を製造する方法は、半導体素子3を準備する工程、半導体素子封止用シート1を準備する工程、半導体素子封止用シート1によって半導体素子3を封止して、半導体素子封止用シート1から硬化体シート20を調製するとともに、半導体素子パッケージ5を得る工程を備える。
【0092】
この方法では、
図3Aに示すように、まず、半導体素子3および基板2を準備する。
【0093】
半導体素子3は、半導体チップであって、面方向に延びる略平板形状を有する。半導体素子3としては、特に限定されない。半導体素子3の厚み方向他方面(下面)には、端子が設けられている。
【0094】
半導体素子3は、基板2の厚み方向一方面(上面)に実装されている。具体的には、半導体素子3は、例えば、基板2に対してフリップチップ実装されている。
【0095】
また、半導体素子3は、基板2において、面方向に互いに間隔を隔てて複数配置されている。
【0096】
基板2は、面方向に延びる略平坦形状を有する。基板2は、平面視において、複数の半導体素子3を囲む大きさを有する。つまり、基板2は、厚み方向に投影したときに、複数の半導体素子3と重複する重複領域11と、複数の半導体素子3と重複せず、基板2から露出する露出領域12とを有する。また、基板2は、重複領域11に配置され、半導体素子3の端子と接触する基板端子(図示せず)と、露出領域12に配置され、基板端子に連続する基板配線と(図示せず)を有する。
【0097】
この方法では、次いで、半導体素子封止用シート1を準備する。第1剥離シート15を半導体素子封止用シート1から剥離する。
【0098】
その後、半導体素子封止用シート1が、半導体素子3の厚み方向一方面(上面)に接触するように、半導体素子3に配置する。
【0099】
図3Bに示すように、次いで、半導体素子封止用シート1によって半導体素子3を封止する。
【0100】
例えば、下板および上板を備える平板プレス(図示せず)を用いて、半導体素子封止用シート1を加熱および加圧して、半導体素子封止用シート1で複数の半導体素子3を封止する。つまり、半導体素子封止用シート1を第2剥離シート25を介して熱プレスする。
【0101】
また、上記した加熱によって、半導体素子封止用シート1は、熱硬化する。具体的には、一旦、軟化後、半導体素子封止用シート1のエポキシ系封止組成物が完全硬化する。
【0102】
加熱条件は、エポキシ系封止組成物が完全硬化する条件である。具体的には、加熱温度が、例えば、85℃以上、好ましくは、100℃以上であり、また、例えば、125℃以下、好ましくは、110℃以下である。加熱時間が、例えば、10分間以上、好ましくは、30分間以上であり、また、例えば、300分間以下、好ましくは、180分間以下である。圧力は、特に限定されず、例えば、0.1MPa以上、好ましくは0.5MPa以上であり、また、例えば、10MPa以下、好ましくは、5MPa以下である。
【0103】
半導体素子封止用シート1は、一旦流動して軟化して、半導体素子3を埋設する。換言すれば、半導体素子3が半導体素子封止用シート1に埋め込まれる。
【0104】
これとともに、半導体素子封止用シート1の第1周面6は、面方向外側に張り出す。第1周面6の張り出し長さL2は、上記したはみ出し長さL1Lより大きいことが許容され、具体的には、例えば、以下の式(1)、好ましくは、以下の式(2)、より好ましくは、以下の式(3)を満足する。
【0105】
1≦(張り出し長さL2)/(はみ出し長さL1)<2 (1)
1≦(張り出し長さL2)/(はみ出し長さL1)<1.5 (2)
1≦(張り出し長さL2)/(はみ出し長さL1)<1.25 (3)
なお、張り出し長さL2は、
図3Aに示す、封止前の半導体素子封止用シート1の第1周面6の位置を基準として、この基準から、
図3Bにおいて半導体素子封止用シート1において外側にはみ出した周端縁までの距離である。上記した基準は、通常、第2剥離シート25の第2周面9と同一位置にある。
【0106】
続いて、半導体素子封止用シート1は、半導体素子3の周側面を被覆するとともに、対向面における露出領域12に接触する。
【0107】
これによって、半導体素子3が半導体素子封止用シート1によって封止される。また、基板2における露出領域12は、半導体素子封止用シート1によって接触(密着)されている。
【0108】
その後、第2剥離シート25を半導体素子封止用シート1から剥離する。
【0109】
なお、半導体素子3を封止し、基板2の露出領域12に接触する半導体素子封止用シート1は、すでに加熱により熱硬化(完全硬化)(Cステージ)状態となっている。そのため、半導体素子封止用シート1が硬化体シート20となる。
【0110】
その後、半導体素子封止用シート1(あるいは硬化体シート20)は、熱硬化をより一層進行させたい場合には、平板プレスから下ろし、別の加熱炉に投入する。
【0111】
これにより、基板2、複数の半導体素子3および硬化体シート20を備える半導体素子パッケージ5を得ることができる。
【0112】
その後、必要により、半導体素子パッケージ5を、半導体素子3に対応して、例えば、ダイシングソーによる切断によって、個片化する。
【0113】
そして、この半導体素子封止用シート1は、上記の方法で測定されるはみ出し長さL1が3mm以下であるので、周囲の部材、具体的には、熱プレスが半導体素子封止用シート1(の第1周面6)によって汚染されることを抑制しつつ、半導体素子3を確実に封止して、半導体素子パッケージ5を効率よく製造することができる。
【0114】
また、はみ出し長さが上記した上限以下であるので、基板2の基板配線(図示せず)を検査(パターン検査)でき、さらに、基板2の厚み方向一方面(上面)における異物の有無を検査できる。
【0115】
<変形例>
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態および各変形例を適宜組み合わせることもできる。
【0116】
図1では、半導体素子封止用シート1を単層から形成しているが、例えば、図示しないが、複数層の積層体であってもよい。
【0117】
また、半導体素子封止用シート1により、単数の半導体素子3を封止することもできる。
【0118】
また、一実施形態では、封止用シートの一例として半導体素子封止用シート1を挙げて、半導体素子3を封止しているが、これに限定されず、例えば、図示しないが、他の電子素子を封止する電子素子封止用シートであってもよい。この場合には、電子素子封止用シートを用いて、電子素子を封止して、電子素子パッケージを製造することができる。
【実施例】
【0119】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0120】
実施例および比較例で使用した各成分を以下に示す。
【0121】
エポキシ樹脂:新日鐵化学社製のYSLV-80XY(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量200g/eq.軟化点80℃)
ノボラック型フェノール樹脂:群栄化学社製のLVR-8210DL(エポキシ樹脂硬化剤、水酸基当量:104g/eq.、軟化点:60℃)
カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂:根上工業社製のHME-2006M、カルボキシル基含有のアクリル酸エステル系ポリマー、重量平均分子量:約85万、固形分濃度20%(メチルエチルケトン溶液)、ガラス転移温度Tg=-30℃、酸価:30mgKOH/g
カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂:ナガセケムテックス社製のSG-70LN、カルボキシル基含有のアクリル酸エステル系ポリマー、重量平均分子量:約90万、固形分濃度12.5%(メチルエチルケトン溶液)、ガラス転移温度Tg=-13℃、酸価:5mgKOH/g
カルボキシル基を含有する熱可塑性樹脂:ナガセケムテックス社製のSG-N50、カルボキシル基含有のアクリル酸エステル系ポリマー、重量平均分子量:約40万、固形分濃度25%(メチルエチルケトン溶液)、ガラス転移温度Tg=0℃、酸価:35mgKOH/g
カルボキシル基を含有しない熱可塑性樹脂:根上工業社製のAC-019、カルボキシル基を含有しないアクリル酸エステル系ポリマー、重量平均分子量:約110万、固形分濃度20%(メチルエチルケトン溶液)、ガラス転移温度Tg=-15℃、酸価:0mgKOH/g
エポキシ樹脂硬化促進剤:四国化成工業社製の2PHZ-PW(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール)
第1無機粒子:デンカ社製のFB-8SM(球状溶融シリカ粉末(無機粒子)、平均粒子径15μm)
第2無機粒子:アドマテックス社製のSC220G-SMJ(平均粒径0.5μm)を3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製の製品名:KBM-503)で表面処理した無機粒子。SC220G-SMJ 100質量部に対して1質量部のシランカップリング剤で表面処理した無機粒子。
【0122】
顔料:三菱化学社製の#20(カーボンブラック)
シランカップリング剤:信越化学社製のKBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
実施例1~4および比較例1
表1に記載の配合処方に従い、各成分をメチルエチルケトンに溶解および分散させ、ワニスを得た。ワニスの固形分濃度は、80質量%であった。
【0123】
ワニスを第1剥離シート15の表面に塗布した後、90℃で、5分間乾燥させた。これにより、厚み260μmのBステージの半導体素子封止用シート1を製造した。その後、半導体素子封止用シート1の上面を、第2剥離シート25で被覆した。
【0124】
(評価)
半導体素子封止用シート1について、下記の項目を評価した。その結果を表1に記載する。
【0125】
(はみ出し長さL1の測定)
図2Aに示すように、第1剥離シート15および第2剥離シート25に支持され、厚み260μmの半導体素子封止用シート1を準備し、これを、縦5cm、横5cmの大きさに切断加工した。これにより、半導体素子封止用シート1の第1周面6と、第2剥離シート25の第2周面9とが、面一となった。
【0126】
続いて、第1剥離シート15を半導体素子封止用シート1から剥離し、半導体素子封止用シート1を、第2剥離シート25に支持された状態で、縦6cm、横6cmのアルミナ板7に、アルミナ板7、半導体素子封止用シート1および第2剥離シート25が上側に順に並ぶように、配置した。
【0127】
図2Bに示すように、その後、それらを熱プレス23(品番VS008-1515、真空熱プレス、ミカドテクノス社製)の下板21に設置に、続いて、熱プレス23内を、10秒間減圧にし、続いて、70℃、60秒間、360Nの力で、上板22と下板21とによって、アルミナ板7、第1周面6および第2剥離シート25を挟み込みながら、それらを熱プレスし、その後、半導体素子封止用シート1の第2剥離シート25から外側へのはみ出し長さL1を測定した。具体的には、半導体素子封止用シート1の第1周面6の、第2剥離シート25の第2周面9から外側へのはみ出し長さL1を測定した。
【0128】
なお、はみ出し長さL1は、半導体素子封止用シート1における4つの第1周面6の各値の平均値として算出した。
【0129】
(反応率Rの測定)
加熱前における(未加熱の)半導体素子封止用シート1を、以下の条件で示差走査熱量を測定(DSC測定)して、第1発熱量H1を得た。
【0130】
測定温度範囲:0~300℃
昇温速度:10℃/分
測定質量:15mg
DSC装置:DSC-Q2000、ティ・エイ・インスツルメンツ社製
別途、半導体素子封止用シート1を、150℃で、10分加熱し、かかる半導体素子封止用シート1(加熱後の半導体素子封止用シート1)を、上の条件で示差走査熱量を測定(DSC測定)して、第2発熱量H2を得た。
【0131】
その後、第1発熱量H1から第2発熱量H2を差し引いた熱量[H1-H2]の、第1発熱量H1に対する百分率([H1-H2]/H1×100%)を反応率Rとして求める。
【0132】
【0133】
表1中、特記しない場合には、数値は、配合部数(含有部数)である。
【符号の説明】
【0134】
1 半導体素子封止用シート(封止用シートの一例)
25 第2剥離シート
L1 はみ出し長さ
R 反応率