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特許6997657柱梁接合構造の構築工法および柱梁接合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】柱梁接合構造の構築工法および柱梁接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20220107BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20220107BHJP
   E04C 5/18 20060101ALI20220107BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
E04B1/58 508A
E04B1/21 B
E04C5/18 102
E04G21/12 105E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018054359
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019167689
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博幸
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-348664(JP,A)
【文献】特開2017-025506(JP,A)
【文献】特開2015-059314(JP,A)
【文献】特開2013-204343(JP,A)
【文献】特開2004-278257(JP,A)
【文献】特開2009-281102(JP,A)
【文献】特開2012-132201(JP,A)
【文献】特開2017-227029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38 - 1/61
E04B 1/21
E04C 5/00 - 5/20
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストによる梁同士をプレキャストによる柱梁接合部において接合することで柱梁接合構造を構築する工法であって、
前記柱梁接合部において水平方向の中央部分に機械式充填継ぎ手を予め埋め込むとともに、前記充填継ぎ手の両側に水平方向に延びるシース管を配置し予め埋め込むことで梁主筋の挿入孔を形成しておき、
梁の端部から突き出た梁主筋を前記シース管に挿入し、その先端部分を前記充填継ぎ手内に配置し、
他方の梁の端部から突き出た梁主筋をもう一方の前記シース管に挿入し、その先端部分を前記充填継ぎ手内に配置し、
次に、前記柱梁接合部の中央部分の前記充填継ぎ手内で前記梁主筋同士を接合するために前記充填継ぎ手内に充填材を注入して充填し、
次に、前記梁主筋を前記シース管内に定着させるために前記充填材を前記充填継ぎ手内にさらに注入して前記シース管内に充填する柱梁接合構造の構築工法。
【請求項2】
前記充填継ぎ手は前記充填材の注入口を有し、
前記充填材の注入管を前記柱梁接合部の外面から前記注入口まで延びるように前記柱梁接合部に予め埋め込んでおき、
前記注入管と前記注入口とを通して前記充填材を前記充填継ぎ手内に注入する請求項1に記載の柱梁接合構造の構築工法。
【請求項3】
前記充填材の前記充填継ぎ手内への充填後、前記注入管内に充填材を注入し、前記注入管内に前記充填材を充填する請求項2に記載の柱梁接合構造の構築工法。
【請求項4】
プレキャストによる梁とプレキャストによる柱梁接合部との柱梁接合構造であって、
前記柱梁接合部は、梁の端部から突き出た梁主筋と他方の梁の端部から突き出た梁主筋とを接合するために水平方向の中央部分に埋め込まれた機械式充填継ぎ手と、前記充填継ぎ手の両側に水平方向に延びるように埋め込まれて梁主筋の挿入孔を形成するシース管と、を備え、
前記梁主筋が前記充填継ぎ手の両側で水平方向に延びる前記シース管を通して前記充填継ぎ手内に位置し、前記他方の梁主筋がもう一方の前記シース管を通して前記充填継ぎ手内に位置し、前記充填継ぎ手内に充填された充填材により前記柱梁接合部の中央部分で前記梁主筋同士が接合されているとともに、前記シース管内に充填された前記充填材により前記梁主筋が定着されている柱梁接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁接合構造を構築する工法および柱梁接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造(RC造)の建物の柱、梁をプレキャスト(以下、「PCa」と略す場合がある。)部材とした場合、その柱梁接合部における梁主筋は、通し配筋となるか、または、柱梁接合部内で機械式継ぎ手となる場合が多い(たとえば、特許文献1参照)。一方、柱梁接合部もPCa化する構工法がいくつか提案されており、柱梁接合部を含むすべての部材がPCa化された構工法として、LRV工法とスクライム工法の2工法が実用化されている。
【0003】
(1)LRV工法
LRV工法(Left Right Vertical Method)の概要を図5に示す。同工法においては、図5(a)のように、PCa柱梁接合部から両方向に半スパン分延びるPCa梁(LRビーム)の梁主筋は、接合されるPCa梁に内蔵された機械式継ぎ手にグラウト接合される。PCa梁の接合後に、図5(b)(c)のように、PCa柱梁接合部の柱主筋貫通孔をPCa柱下端の柱主筋(余長≧接合部高さ+定着長さ)が貫通し、かつ、1層下のPCa柱(Vコラム)に内蔵された機械式継ぎ手にグラウト定着する機構が基本となっている。
【0004】
(2)スクライム-H工法
スクライム-H工法(Sumitomo Mitsui Quick RC Integration-Horizontal Method)の概要を図6に示す。図6(a)~(d)のように、同工法においては、PCa柱は、上部が柱梁接合部と一体となった形状で、PCa梁の梁主筋は、(柱せい+定着長さ)以上の余長を有し、片側からPCa柱梁接合部を貫通し、逆側のPCa梁の雌孔(機械式継ぎ手)にグラウト定着する機構が基本となっている。基本的に、片側端部より1方向に順次組み立てていく施工手順となる。
【0005】
(3)TT-JOINT工法
さらにTT-JOINT工法は、柱梁接合部の中央で定着金物を両方向より定着させて、柱梁接合部には繊維補強コンクリートを打設し、せん断補強筋は配筋しないという構工法となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-179997号公報
【文献】特開2017-222993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の構工法は、いずれもこれまで常識的に捉えられていた鉄筋の接合方法を、一方は部材全体を貫通し、なおかつ逆側の部材に定着させると言う、発想の転換を図り、他方は、部材中央で両方からの定着で、部材内で一体化を図ると言う、画期的な継ぎ手方法となっている。もっともせん断補強筋不要と繊維補強コンクリートの適用の組合せについては、都度、構造検証が必要となって来る。
【0008】
建築、土木ともに、生産性向上が叫ばれているが、部材のPCa化(工場生産化)が生産性向上に大きく寄与することは、論を待たないところである。その適用範囲が大きければ大きいほど、現場での施工労力が削減され、工期も大幅に短縮される。PCa化は、柱、梁の各部材については、様々な構工法が提案され、実用化されているが、柱梁接合部とスラブについては、まだ開発途上と言わざるを得ない。
【0009】
柱梁接合部については、柱主筋に加えて所要量のせん断補強筋が含まれ、さらに梁主筋がXY両方向から、また低層部においては上下2段筋として入り込んでくるため、柱・梁主筋とも接合部内で継ぎ手を構成することは至難と言わざるを得ない。たとえば、特許文献2は、プレキャストによる柱、梁、接合部にも適用可能な接合部構造を開示するが、その構造は、機械式継ぎ手が接合部の外側に配置されるものである(段落0037,図3図4)。
【0010】
LRV工法は、上層のPCa柱の下端に延伸した柱主筋が、スクライム-H工法は片方向から接合するPCa梁から接合部側に延伸した梁主筋が、それぞれ柱梁接合部を貫通し、多端の部材に収納された継ぎ手にグラウト定着する接合方法を基本としている。しかしながら、これらの工法は、片側から順次部材を接合しながらスパン間のフレームを構築していくため、X・Y方向とも建物の平面端部から他端に向かう施工手順となり、最終端は、いずれも最終部材にPCa梁部材の梁主筋を差し込んで定着させる納まりとなる。その場合、両方向から梁主筋を定着できる納まりのPCa柱梁接合部の構築工法があれば、最終端の部材として適用することが可能となるばかりでなく、建物平面の両端から中央に向けてPCa部材の組立て施工が可能となる。
【0011】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、プレキャストによる梁同士を2または4方向からプレキャストによる柱梁接合部で接合し定着させることのできる柱梁接合構造の構築工法および柱梁接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための柱梁接合構造の構築工法は、PCa梁同士をPCa柱梁接合部において接合することで柱梁接合構造を構築する工法であって、前記柱梁接合部において水平方向の中央部分に機械式充填継ぎ手を予め埋め込むとともに、前記充填継ぎ手の両側に水平方向に延びるシース管を配置し予め埋め込むことで梁主筋の挿入孔を形成しておき、梁の端部から突き出た梁主筋を前記シース管に挿入し、その先端部分を前記充填継ぎ手内に配置し、他方の梁の端部から突き出た梁主筋をもう一方の前記シース管に挿入し、その先端部分を前記充填継ぎ手内に配置し、次に、前記柱梁接合部の中央部分の前記充填継ぎ手内で前記梁主筋同士を接合するために前記充填継ぎ手内に充填材を注入して充填し、次に、前記梁主筋を前記シース管内に定着させるために前記充填材を前記充填継ぎ手内にさらに注入して前記シース管内に充填する。
【0013】
この柱梁接合構造の構築工法によれば、柱梁接合部をプレキャスト部材にするとき、水平方向の中央部分に機械式充填継ぎ手を予め埋め込み、充填継ぎ手の両側に水平方向に延びる挿入孔を形成しておき、一方のPCa梁の梁主筋を柱梁接合部の挿入孔に挿入し充填継ぎ手内に配置し、他方のPCa梁の梁主筋をもう一方の挿入孔に挿入し充填継ぎ手内に配置してから、柱梁接合部の中央部分の充填継ぎ手内に充填材を注入して充填することで、梁主筋同士を接合するとともに、充填継ぎ手内に充填材をさらに注入し挿入孔内に充填することで梁主筋を挿入孔内に定着させる。このようにして、PCa梁同士を2または4方向からPCa柱梁接合部に接合し定着させることができる。
【0014】
上記柱梁接合構造の構築工法において、前記充填継ぎ手は前記充填材の注入口を有し、前記充填材の注入管を前記柱梁接合部の外面から前記注入口まで延びるように前記柱梁接合部に予め埋め込んでおき、前記注入管と前記注入口とを通して前記充填材を前記充填継ぎ手内に注入することが好ましい。
【0015】
また、前記充填材の前記充填継ぎ手内への充填後、前記注入管内に充填材を注入し、前記注入管内に前記充填材を充填することが好ましい。
【0016】
また、前記挿入孔を前記柱梁接合部内に配置したシース管により形成することができる
【0017】
上記目的を達成するための柱梁接合構造は、PCa梁とPCa柱梁接合部との柱梁接合構造であって、前記柱梁接合部は、梁の端部から突き出た梁主筋と他方の梁の端部から突き出た梁主筋とを接合するために水平方向の中央部分に埋め込まれた機械式充填継ぎ手と、前記充填継ぎ手の両側に水平方向に延びるように埋め込まれて梁主筋の挿入孔を形成するシース管と、を備え、前記梁主筋が前記充填継ぎ手の両側で水平方向に延びる前記シース管を通して前記充填継ぎ手内に位置し、前記他方の梁主筋がもう一方の前記シース管を通して前記充填継ぎ手内に位置し、前記充填継ぎ手内に充填された充填材により前記柱梁接合部の中央部分で前記梁主筋同士が接合されているとともに、前記シース管内に充填された前記充填材により前記梁主筋が定着されている。
【0018】
この柱梁接合構造によれば、PCa柱梁接合部において水平方向の中央部分に埋め込まれた機械式充填継ぎ手内にPCa梁の梁主筋と他方のPCa梁の梁主筋とが位置し、充填継ぎ手内に充填された充填材により梁主筋同士が接合されているとともに、挿入孔内に充填された充填材により梁主筋が挿入孔内で定着されている。このように、PCa梁とPCa柱梁接合部とを柱梁接合部で接合し定着させることのできる柱梁接合構造を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、PCa梁同士を2または4方向からPCa柱梁接合部で接合し定着させることのできる柱梁接合構造の構築工法および柱梁接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態においてPCa梁同士をPCa柱梁接合部において接合し定着させた柱梁接合構造を示す断面図である。
図2図1の柱梁接合構造の接合定着前の状態を示す断面図である。
図3図1の充填継ぎ手内と挿入孔内に位置する梁主筋を示す要部断面図である。
図4】本実施形態による柱梁接合構造の構築工法の工程S01~S11を説明するためのフローチャートである。
図5】従来のLRV工法の主な工程(a)~(c)を示す図である。
図6】従来のスクライム-H工法の主な工程(a)~(d)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態においてPCa梁同士をPCa柱梁接合部において接合し定着させた柱梁接合構造を示す断面図である。図2は、図1の柱梁接合構造の接合定着前の状態を示す断面図である。図3は、図1の充填継ぎ手内と挿入孔内に位置する梁主筋を示す要部断面図である。
【0022】
図1図3のように、本実施形態による柱梁接合構造10は、PCa梁12,13をPCa柱梁接合部11内で接合し定着させたものである。
【0023】
PCa柱梁接合部11には、複数の柱主筋11dと、柱主筋11dに直交して接続する複数の柱内せん断補強筋11eとが配置されている。また、PCa梁12,13には、それぞれ、複数の梁主筋12a,13aと、梁主筋12a、13aに直交して接続する複数のせん断補強筋12b,13bとが配置されている。複数の梁主筋12a,13aは、上下二段に配置され、柱梁接合部11側に突き出ている。
【0024】
PCa柱梁接合部11には、プレキャストのとき、水平方向中央部に機械式充填継ぎ手15が配置され、充填継ぎ手15の両側に鋼管からなるシース管16,17が配置され、充填継ぎ手15とシース管16,17が埋め込まれる。充填継ぎ手15は、その両方向からシース管16,17を通して梁主筋12a,13aを挿入できるように、PCa柱梁接合部11の中央部両側に挿入口15c,15d(図3)が向くように配置される。また、シース管16,17により、PCa梁12,13の梁主筋12a、13aが挿入される挿入孔が形成される。充填継ぎ手15およびシース管16,17は、梁主筋12a、13aの数に対応して複数設置される。
【0025】
機械式充填継ぎ手15は、その水平方向の中央部に充填材の注入のための注入口15aを有し、注入口15aには充填材の注入管20が接続されている。注入管20は、鋼管等からなり、柱梁接合部11の上面11aから充填継ぎ手15の注入口15aまで延びるように柱梁接合部11に予め埋め込まれる。上面11aには注入管20の注入開口が形成され、この注入開口からグラウト材等の充填材が注入される。
【0026】
図3のように、充填継ぎ手15内に梁主筋12a,13aが位置することにより隙間からなる被充填空間15bが形成される。注入管20を通して注入口15aからグラウト材等の充填材を被充填空間15bに注入して充填することで、充填継ぎ手15内で梁主筋12a、13aが接合し定着する。
【0027】
また、シース管16,17内に梁主筋12a,13aが位置することにより隙間からなる被充填空間16a,17aが形成される。充填継ぎ手15内の被充填空間15bにさらに充填材を注入し、被充填空間16a,17aに充填材を充填することで、シース管16,17内に梁主筋12a,13aが定着する。
【0028】
なお、図3に示す機械式充填継ぎ手15のカプラ長Lc、充填継ぎ手15内の梁主筋12a,13aの挿入長さLi、充填継ぎ手15内およびシース管16,17内の梁主筋12a,13aの定着長Lについては、使用する機械式充填継ぎ手の仕様により決定される。
【0029】
次に、本実施形態による柱梁接合構造を構築する工法の主要な工程S05~S10について図1図4を参照して説明する。図4は、本実施形態による柱梁接合構造の構築工法の工程S01~S11を説明するためのフローチャートである。
【0030】
図4の工程S01~S04は、柱梁接合部11への柱部の据え付け、その据付け精度確認、必要に応じた柱梁接合部11のX・Y・Zの各方向での位置調整、および、柱主筋の定着用充填材の注入である。なお、柱梁接合部11および梁12,13は、予め工場でプレキャストされ、施工現場に搬入されている。
【0031】
次に、図1図3のように、柱梁接合部11に対し片側の梁12を据え付け(S05)、次に、逆側の梁13を据え付ける(S06)。これにより、梁主筋12a、13aが柱梁接合部11のシース管16,17内に挿入され、梁主筋12a、13aの先端部分が充填継ぎ手15内に位置する。
【0032】
次に、柱梁接合部11に対する梁12,梁13の据え付け精度を確認し(S07)、梁12,梁13が所定位置に納まるように必要に応じてX・Y・Zの各方向で梁12,梁13の位置の調整を行う(S08)。
【0033】
次に、柱梁接合部11の上面11aの注入開口から注入管20を通して充填継ぎ手15内に梁主筋定着用のグラウト材等の充填材を注入する(S09)。図3の充填継ぎ手15内の隙間からなる空間15bの容積に相当する量の充填材を注入することで、充填継ぎ手15内の空間15bが充填材で満たされ、片側の梁主筋12aが充填継ぎ手15に接合し、逆側の梁主筋13aも充填継ぎ手15に接合する。
【0034】
次に、充填材をさらに注入することで、シース管16,17内の空間16a,17aが充填材で満たされ、シース管16,17による挿入孔内に梁主筋12a,13aが定着する(S10)。なお、充填材をさらに注入し、注入管20内を充填材で充填し、これにより、柱梁接合部11の上面11aの注入開口が塞がれる。
【0035】
次に、必要に応じて、次の柱梁接合部まで移動し(S11)、同様の工程を繰り返す。
【0036】
以上のように、本実施形態の柱梁接合構造10およびその構築工法によれば、柱梁接合部11内に機械式充填継ぎ手15を水平方向中央部に配置し、PCa梁12,13の梁主筋12a,13aを、充填継ぎ手15内にその両側から挿入し、予め内蔵させた注入管20から充填材を充填継ぎ手15内に充填して接合し、さらに、内蔵された充填継ぎ手15までの挿入孔内に充填し定着させことにより、柱梁接合部11をプレキャスト部材としても、同一方向に延びるPCa梁12,13を2方向から柱梁接合部11に接合し定着させることができる。
【0037】
なお、本実施形態による柱梁接合構造を構築する工法については、各部材の寸法、配筋、設計基準強度を同一とした構造性能確認試験により所要の構造性能を検証した上で、実用に供することが好ましい。また、柱梁接合部11内のせん断補強筋比は、0.2%以上とするが、これも構造性能確認実験で検証した上で適用することが好ましい。
【0038】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、図1図2では、PCa梁を2方向からPCa柱梁接合部で接合し定着させる例を説明したが、PCa梁を4方向からPCa柱梁接合部で接合し定着させることも可能である。
【0039】
また、図1図2においては、複数の梁主筋は、上下二段に配置されているが、本発明は、これに限定されず、さらに多段に配置してもよく、また、配置位置や数を変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の柱梁接合構造の構築工法および柱梁接合構造によれば、PCa梁同士を2または4方向からPCa柱梁接合部で接合し定着させることができるので、建物の柱梁接合構造を工場生産可能なプレキャスト部材から構築でき、建物構築の際の現場施工部分を減らし、現場での施工労力が削減され、工期も大幅に短縮でき、このため、生産性向上に大きく寄与できる。
【符号の説明】
【0041】
10 柱梁接合構造
11 柱梁接合部
12,13 梁
12a,13a 梁主筋
15 機械式充填継ぎ手、充填継ぎ手
15a 注入口
15b 被充填空間
15c,15d 挿入口
16,17 シース管、挿入孔
16a,17a 被充填空間
20 注入管
図1
図2
図3
図4
図5
図6