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  • 特許-ペリクルを形成する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ペリクルを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/62 20120101AFI20220107BHJP
   G03F 1/24 20120101ALI20220107BHJP
【FI】
G03F1/62
G03F1/24
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018093596
(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公開番号】P2018194838
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】17171171.6
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(73)【特許権者】
【識別番号】518170044
【氏名又は名称】アイメック・ユーエスエイ・ナノエレクトロニクス・デザイン・センター
【氏名又は名称原語表記】Imec USA Nanoelectronics Design Center
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】マリーナ・ティンメルマンス
(72)【発明者】
【氏名】エミリー・ギャラガー
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン・ポランティエ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・クリストフ・アデルマン
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ハイヘバールト
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジェウク
【審査官】冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-234338(JP,A)
【文献】特開2017-056579(JP,A)
【文献】特開2012-171861(JP,A)
【文献】特開2015-018228(JP,A)
【文献】特開平05-323585(JP,A)
【文献】特表2015-523611(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0038676(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0152873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外線リソグラフィのためのペリクル(200)を形成する方法であって、
前記方法は、
カーボンナノチューブペリクル膜(102)の主表面(102a)の少なくとも周辺領域(102aa)上に、第の材料のコーティングを形成するステップを含み、前記膜はカーボンナノチューブフィルム(104)を含み、
ペリクルフレーム(202)上に、前記カーボンナノチューブペリクル膜(102)を配置するステップを含み、前記ペリクルフレーム(202)の支持面(202a)に前記周辺領域(102aa)が対向され、前記ペリクルフレーム(202)の前記支持面(202a)は第の材料によって形成されており、
前記カーボンナノチューブペリクル膜(102)と前記ペリクル支持面(202a)を互いに加圧することによって、前記カーボンナノチューブペリクル膜(102)のコーティングと前記ペリクル支持面(202a)とを共に結合するステップを含む方法。
【請求項2】
前記結合の行為は、1mbar未満の圧力を有する真空を、前記カーボンナノチューブペリクル膜(102)および前記ペリクルフレーム(202)に適用することを含む請求項1の方法。
【請求項3】
前記支持面は、第1の材料によって形成され、前記コーティングは、第2の材料によって形成され、
前記第1の材料が、金属または半導体であり、
前記第2の材料が、金属または半導体である、
請求項1または2の方法。
【請求項4】
前記第1の材料および前記第2の材料は、Zr、Mo、Ru、Pd、Nb、GeおよびSiからなる群から選択される請求項1ないし3のうちいずれか1項の方法。
【請求項5】
前記第1の材料および前記第2の材料は、同じ材料である請求項1の方法。
【請求項6】
前記方法は、圧力を印加しながら、前記カーボンナノチューブペリクル膜および前記ペリクルフレームを加熱するステップをさらに含む請求項1ないし5のうちいずれか1項の方法。
【請求項7】
前記結合の行為は、1mbar未満の圧力を有する真空を、前記カーボンナノチューブペリクル膜および前記ペリクルフレームに印加しながら、機械的圧力によって、前記カーボンナノチューブペリクル膜(102)および前記支持面(202a)を共に加圧するステップを含む請求項1ないし6のうちいずれか1項の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記カーボンナノチューブペリクル膜(102)を前記ペリクルフレーム(202)上に配置する前に、前記カーボンナノチューブペリクル膜(102)の引張応力を増加させるステップをさらに含む請求項1ないし7のうちいずれか1項の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記カーボンナノチューブペリクル膜(102)を前記ペリクルフレーム(202)上に配置する前に、前記カーボンナノチューブペリクル膜(102)を横方向に引き伸ばすステップをさらに含む請求項1ないし8のうちいずれか1項の方法。
【請求項10】
前記ペリクルフレーム(202)は、前記第2の材料とは異なる第3の材料のフレーム本体を含む請求項1ないし9のうちいずれか1項の方法。
【請求項11】
前記フレーム本体は、空気に対して透過性である請求項10の方法。
【請求項12】
前記コーティングは、前記カーボンナノチューブペリクル膜(102)の主表面(102a)全体を覆うように形成される請求項1ないし11のうちいずれか1項の方法。
【請求項13】
極端紫外線リソグラフィのためのレチクルシステム(212)を形成する方法であって、
前記方法は、
請求項1ないし12のうちいずれか1項のペリクル(200)を形成するステップと、
前記ペリクル(200)をレチクル(210)上に取り付けるステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の概念は、極端紫外線リソグラフィのためのペリクルを形成するための方法および極端紫外線リソグラフィのためのレチクルシステムを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造では、デバイスおよび回路パターンを画定する過程で、様々なリソグラフィプロセスが広く使用されている。画定される特徴のサイズに応じて、異なる光学リソグラフィプロセスを使用することができる。一般に、パターンが小さくなるにつれて、より短い波長が使用される。EUVLの極端紫外線リソグラフィでは、約13.5nmの波長が頻繁に使用される。EUVLにおいて、フォトマスクまたはレチクル上に存在するパターンは、EUV放射でレチクルを照明することによって、EUV放射に敏感な層に転写することができる。EUV光は、レチクルパターンによって変調され、フォトレジストがコーティングされたウエハ上に結像される。
【0003】
従来のリソグラフィでは、ペリクルが一般にレチクルの上に配置されて、ハンドリングおよび露光などの間、レチクルを汚染から保護する。したがって、ペリクルは、望ましくない粒子からレチクルを保護する(さもなければ、それらの粒子は、ウエハへのパターン転写の忠実度に影響を与える可能性がある)。露光中にペリクルがレチクルの上にとどまるので、吸収、耐久性および粒子遮蔽能力などの点でペリクルに厳しい要件がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2005/085130号
【文献】米国特許出願公開第2016/0083872号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、EUVLに関しては、適切なペリクル候補を見つけることは困難であることが判明している。従来の深紫外線(DUV)ペリクルは、典型的には、非常に薄い材料の厚さであっても、極端紫外線光の過吸収を呈する。さらに、スキャナ環境と組み合わされた極端紫外線の高いエネルギーは、ペリクル膜の材料を損傷する傾向がある。したがって、EUVLと適合するペリクル設計を特定することは困難であるとされてきた。
【0006】
上記を考慮して、本発明の一般的な目的は、EUVLでの使用に適したペリクルを形成する方法を提供することである。さらなる目的は、以下から理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、この目的および他の目的は、極端紫外線リソグラフィのためのペリクルを形成するための方法によって達成される。この方法は、カーボンナノチューブペリクル膜の主表面の少なくとも周辺領域に第1の材料のコーティングを形成するステップを含み、前記膜はカーボンナノチューブフィルムを含み、ペリクルフレーム上に、前記カーボンナノチューブペリクル膜を配置するステップを含み、前記ペリクルフレームの支持面に前記周辺領域が対向され、前記ペリクルフレームの支持面は第2の材料によって形成されており、前記カーボンナノチューブペリクル膜と前記ペリクル支持面とを互いに加圧することによって、前記カーボンナノチューブペリクル膜のコーティングと前記ペリクル支持面とを共に結合するステップを含む方法。
【0008】
本発明の方法により、ペリクルフレームの支持面にカーボンナノチューブペリクル膜を固定することによって、極端紫外線リソグラフィのためのペリクルを形成することができる。
【0009】
より具体的には、カーボンナノチューブフィルムまたはCNTフィルムを含むカーボンナノチューブペリクル膜の主表面の少なくとも周辺領域に第1の材料のコーティングを形成する。したがって、コーティングは、CNTペリクル膜の少なくとも周辺領域に形成され、これは、CNTペリクル膜の主表面全体であっても、コーティングがCNTペリクル膜の他の領域を覆うことができることを意味する。
【0010】
本出願の文脈内では、“共に結合する”という用語は、CNTペリクル膜のコーティングとペリクルフレームの支持面との間の任意のタイプの引力をもたらす任意のタイプの相互作用を指すことができ、それは、単にCNTペリクル膜を支持面の上に配置することに起因する引力より大きい。ここで得られる引力は、圧力が除去された後に残る力を指す。以下でさらに説明するように、結合は、CNTペリクル膜のコーティングと支持面との間の化学結合の結果であり得る。
【0011】
したがって、本発明の概念は、このように形成されたペリクルが比較的高い機械的強度および低いEUV光吸収を示す極端紫外線リソグラフィのためのペリクルを形成する方法を可能にする。EUV光は、1nm~40nmの範囲の波長を有することができる。より具体的には、本発明の概念に従って形成されたペリクルのCNTペリクル膜は、前記ペリクルのペリクルフレームに確実に固定され得る。さらに、CNTペリクル膜のコーティングとペリクル支持面とを共に結合することによって、時間の経過と共に強く残る耐久性のある結合が達成され得る。同時に、このように形成された結合は、従来のものの使用に依存する標準的な取り付け手順と比較して、例えば、EUVスキャナを汚染する可能性のある粒子、種および他の要素を放出しにくいという意味で清浄であると考えられる。
【0012】
本出願の文脈内で、“加圧する”という用語は、任意のタイプの機械的圧力の適用を意味することに留意されたい。言い換えれば、CNTペリクル膜とペリクルフレームの支持面とを互いに押し付けるために適用され得る機械的圧力が意図され得る。有利には、少なくとも0.1kPaの圧力が、少なくとも1つのCNTフィルムに加圧される。
【0013】
加圧には、0.1kPa~30kPaの圧力を加えることができ、CNTペリクル膜とペリクルフレームの支持面とを共に結合することができるという利点がある。結合は、有利には、真空条件下で行うことができる。十分低い圧力を加えることによって、CNTペリクル膜とペリクルフレームの支持面とを冷間圧接することができ、それにより、CNTペリクル膜とペリクルフレームの支持面との間に強い結合が形成される。
【0014】
一例として、CNTペリクル膜とペリクルフレームの支持面を一対の加圧面の間で加圧することによって加圧を行うことができる。したがって、“加圧面”という用語は、CNTペリクル膜とペリクルフレームの支持面に機械的圧力を加えるために使用され得る任意のタイプの表面を指し得る。このため、加圧面の一方または両方を機械的な圧力を加えるように作動または移動させることができる。一般に、加圧面の1つは、典型的には、移動して他方の加圧面に押し付けられ、これにより、CNTペリクル膜とペリクルフレームの支持面に圧力を加える。
【0015】
本出願の文脈内では、“CNTフィルム”という用語は、個々のCNTまたはCNTの束から形成されたメッシュ、ウェブ、グリッドなどのCNTの接続された配置を指すことができることに留意されたい。各CNTフィルムの個々のCNT(単層壁CNTまたは多層壁CNT、MWCNT)は、整列されて束を形成することができる。整列したCNTのこのような束は、CNTフィルムの製造中に自発的に形成される傾向がある。したがって、オーバーラップするCNT同士を結合することは、オーバーラップする個々のCNTまたはオーバーラップするCNT束を共に結合することを含むことができる。
【0016】
CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、CNTフィルム内にランダムに配置されることができる。しかしながら、CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、重要または主な方向に沿って、または複数の主方向に沿って配置または整列されてもよい。
【0017】
CNTフィルムのCNTは、単層CNT、SWCNTであることができる。したがって、少なくとも1つのCNTフィルムのそれぞれは、SWCNTまたはSWCNTの束によって形成されてもよい。SWCNTは、単一のグラフェンシートの円筒形または管状の分子として説明することができる。少なくとも1つのCNTフィルムは、0.5~2nmの範囲の直径を有するSWCNTから形成することができる。SWCNTは、典型的には、EUV放射の有利な低吸収を示すことができる。
【0018】
CNTフィルムのCNTは、多層CNT(MWCNT)であることもできる。したがって、少なくとも1つのCNTフィルムのそれぞれは、MWCNTまたはMWCNTの束によって形成されてもよい。MWCNTは、SWCNTまたはグラフェンシートのチューブの2つ以上の同心円筒として記述することができる。少なくとも1つのCNTフィルムは、5~30nmの範囲の直径を有するMWCNTによって形成することができる。
【0019】
CNTペリクル膜は、自立型CNTペリクル膜であることが好ましい。これは、例えば、ペリクルフレームのようなフレームによって懸架される時に、自重を支えることができるという意味で、自立型または自己支持型のCNT膜を指す場合がある。言い換えれば、自立型CNT膜は、感知できるほどの弛みなしに、EUVペリクルで使用するのに適したサイズを有する場合に、自重を支えることができる。
【0020】
自立型CNTペリクル膜を使用することによって、このように形成されたペリクルは、比較的高い機械的強度と低いEUV光吸収を示すことができる。また、ペリクルの粒子保持特性および耐薬品性を高めることができる。
【0021】
CNTペリクル膜は、積層された状態で互いの上に配置された複数のCNTフィルムを備えることができる。CNTペリクル膜は、例えば、少しの非限定的な例を与えるために、2、3または4枚のCNTフィルムを含むことができる。任意の数のCNTフィルムを使用することができる。CNTフィルムは、CNTペリクル膜を形成するように、共に結合されてもよい。
【0022】
CNTペリクル膜が2つ以上のCNTフィルムを含む場合に、CNTフィルムは、異なるフィルムのオーバーラップするCNTの間に形成される結合によって共に結合され得る。ペリクルフレーム上にCNTペリクル膜が配置される前に、CNTフィルムが共に結合されて、CNTペリクル膜を形成してもよい。
【0023】
コーティングは、個々のCNTまたは少なくとも1つのCNTフィルムの個々のCNT束の上にコーティングが形成されるように形成され得る。コーティングは、等角(conformal)なコーティングであってもよい。コーティングは、CNTまたはCNT束がコーティングによって部分的に封入または完全に囲まれるように、CNTの表面上に形成されてもよい。
【0024】
一実施形態によれば、結合の行為は、1mbar未満の圧力を有する真空をCNTペリクル膜およびペリクルフレームに適用することを含むことができる。低い周囲圧力および/または高い温度は、CNTペリクル膜のペリクルフレームへの固定または冷間圧接を容易にすることができる。1mbar未満の圧力を使用することができる。圧力をさらに低下させることにより、低温での冷間圧接が可能になる。有利には、10-10mbar~10-6mbarの範囲の周囲圧力を使用することができる。この範囲の圧力は、ペリクル膜とペリクルフレームとの確実な結合を可能にする。
【0025】
一実施形態によれば、支持面は第1の材料によって形成され、コーティングは第2の材料によって形成され得、第1の材料は半導体であり、第2の材料は金属または半導体である。支持面が第1の材料によって形成され、コーティングが第2の材料によって形成されることにより、CNTペリクル膜は、冷間圧接によってペリクルフレームに固定され得る。冷間圧接の間に共晶が形成されることがある。比較的低温で、材料間の界面に第1の材料および第2の材料によって共晶が形成されてもよい。
【0026】
典型的な材料の組み合わせまたは体系は、比較的低温で共晶を形成する可能性があるため、金属-半導体体系であり得る。しかしながら、金属-金属体系および半導体-半導体体系のための冷間圧接も採用することができる。共晶を形成するための有利な組み合わせには、RuおよびGe、PdおよびGe、RuおよびSi、NbおよびSiが含まれる。
【0027】
一実施形態によれば、第1の材料および第2の材料は、Zr、Mo、Ru、Pd、Nb、GeおよびSiからなる群から選択されてもよい。これは、CNTペリクル膜のコーティングとペリクルフレームの支持面との間の界面での好適な材料の組み合わせが実現され得る点で有利である。
【0028】
一実施形態によれば、第1の材料と第2の材料とは同じ材料であってもよい。これは、第1の材料と第2の材料の一方を共に結合する間に損傷する危険性を低減する点で有利である。言い換えれば、同じ材料が第1の材料と第2の材料のために使用された場合に、熱、圧力などの処理パラメータが材料特性の違いを考慮する必要がない場合がある。
【0029】
一実施形態によれば、この方法は、CNTペリクル膜およびペリクルフレームを加圧しながら加熱することをさらに含む。これは、結合が促進され得る点で有利である。さらに、熱および圧力は、組み合わせて、CNT膜の応力の量を制御することができる。CNTペリクル膜およびペリクルフレームは、例えば、加圧しながら100~500℃の範囲内の温度に加熱することができる。共晶が形成される場合に、CNTペリクル膜およびペリクルフレームは、好ましくは、加圧しながら600~900℃の範囲内の温度に加熱することができる。しかしながら、温度を600℃以下に保つと、CNTペリクル膜およびコーティングに応力がかかりにくくなる。
【0030】
一実施形態によれば、結合の行為は、CNTペリクル膜およびペリクルフレームに1mbar未満の圧力を有する真空を適用しながら、機械的圧力によって、CNTペリクル膜および支持面を共に押圧することを含むことができる。これは、結合がさらに容易になり、冷間圧接が起こり得る点で有利である。有利には、機械的圧力は、0.1kPa~30MPaの圧力であってもよい。
【0031】
一実施形態によれば、この方法は、CNTペリクル膜の引張応力を増加させるステップをさらに含むことができる。CNTペリクル膜をペリクルフレーム上に配置する前に、引張応力を増加させることができる。しかしながら、CNTペリクル膜をペリクルフレームに取り付けた後に引張応力を増加させることも可能である。引張応力は、CNTペリクル膜に熱処理プロセスを施すことによって増加させることができる。熱処理プロセスは、CNTペリクル膜を高温(すなわち、室温より高い)に加熱することを含むことができる。それに加えて、または、これに代えて、熱処理プロセスは、CNTペリクル膜を低温(すなわち、室温未満)に冷却することを含むことができる。
【0032】
引張応力は、機械的手段によっても増加させることができる。したがって、一実施形態によれば、この方法は、CNTペリクル膜をペリクルフレーム上に配置する前に、CNTペリクル膜を横方向に引き伸ばすステップをさらに含むことができる。CNTペリクル膜をペリクルフレーム上に配置する前に、CNTペリクル膜を横方向に引き伸ばすことによって、CNTペリクル膜の弛みが打ち消される可能性がある。言い換えれば、CNTペリクル膜は、ペリクルフレーム上に配置される前に、横方向に引き伸ばされると、弛みが減少することを示す。
【0033】
CNTペリクル膜は、単一の方向、すなわち、単一の横方向または表面方向に沿って引き伸ばすことができる。CNTペリクル膜は、いくつかの例を与えるために、その縁部の法線方向または膜の横の半径方向など、複数の横方向に引き伸ばされてもよい。
【0034】
一実施形態によれば、ペリクルフレームは、第2の材料と異なる第3の材料のフレーム本体を備えることができる。この配置により、ペリクルフレームのフレーム本体のための適切な材料が、ペリクルフレームの支持面の特性に影響を与えず選択され得る。したがって、ペリクルフレームの支持面の結合能力または特性に悪影響を及ぼすことなく、例えば、機械的強度、熱膨張または重量に関して所望の特性を有する材料によって、ペリクルフレームのフレーム本体を形成することが可能である。
【0035】
ペリクルフレームは、Si、SiN、SiOまたは石英で形成することができる。これらの材料は、CNTペリクル膜の熱膨張に適合する熱膨張を示す。
【0036】
ペリクルフレーム本体は、所望の特性を達成するために、複数の材料によって形成することができる。ペリクルフレーム本体は、例えば、互いの上部に配置された材料層のスタックによって、または、異なる材料の混合物によって形成されてもよい。
【0037】
ペリクルフレームの支持面は、ペリクルフレーム本体上のコーティングとして形成することができる。これは、ペリクルフレーム本体および支持面の特性を本質的に互いに独立して調整できる点で有利である。さらに、同じタイプのペリクルフレーム本体に、異なるニーズに適合する異なるタイプの支持面を設けることができる。言い換えれば、同じ種類のペリクルフレーム本体は、異なる種類のCNTペリクル膜または異なるコーティングを有するCNTペリクル膜と有利に組み合わせることができる。
【0038】
一実施形態によれば、空気に対して透過性であることができる。これは、ペリクルのCNTペリクル膜が、圧力変化にさらされたときに、より少ない機械的応力にさらされる可能性がる点で有利である。空気に対して透過性であるフレーム本体によって、空気は、例えば、真空ポンプや圧力上昇中にフレーム本体の材料を通って移動することができる。これは、フレーム本体が、ペリクルのCNTペリクル膜の片側で起こる圧力変化を平衡化するのを助け得ることを意味する。
【0039】
一実施形態によれば、コーティングは、CNTペリクル膜の主表面全体を覆うように形成することができ、これは、CNTペリクル膜の所望の特性を提供するためだけでなく、同じコーティングを結合に使用することができ有利である。さらに、コーティングは、例えば、水素プラズマ洗浄プロセスの間、EUVL中の潜在的な有害なプロセス環境から膜のCNTを保護することができる。さらに、自立型CNTペリクル膜上にコーティングを形成することによって、EUV用途に適した膜を与える、極端紫外線の低い吸収を示すことができる。
【0040】
本発明の概念の一態様によれば、極端紫外線リソグラフィのためのレチクルシステムを形成する方法が開示される。この方法は、上記に開示された内容に従ってペリクルを形成することと、ペリクルをレチクル上に取り付けることを含む。上述した種類のペリクルをレチクルに取り付けることによって、極端紫外線リソグラフィのためのレチクルシステムを形成することができる。このように形成されたレチクルシステムは、極端紫外線リソグラフィにおいて有利に使用することができる。そこでは、レチクルに取り付けられたペリクルが、物理的バリアとして作用することによって、レチクルを粒子から保護する。
【0041】
本発明の概念のさらなる態様によれば、極端紫外線リソグラフィのためのペリクルが提供され、ペリクルは、
支持面を有するペリクルフレームと、
少なくとも1つのカーボンナノチューブフィルムを含むカーボンナノチューブペリクル膜を備え、
前記カーボンナノチューブペリクル膜の少なくとも主表面の周辺領域に第1の材料のコーティングが設けられ、
前記ペリクルフレームの支持面は、第2の材料によって形成され、前記カーボンナノチューブペリクル膜の周辺領域は、ペリクルフレームの支持面に取り付けられる。
【0042】
カーボンナノチューブペリクル膜とフレームは、共に結合することができる。上記の説明に沿って、“共に結合する”という用語は、CNTペリクル膜のコーティングとペリクルフレームの支持面との間に、任意のタイプの引力を生じさせる任意のタイプの相互作用を指すことができる。これは、支持面の上に単にCNTペリクル膜を配置することによって生じる引力より大きい。ここで得られる吸引力は、圧力が除去された後に残る力を指す。以下でさらに説明するように、結合は、CNTペリクル膜のコーティングと支持面との間の化学結合の結果であり得る。
【0043】
一実施形態によれば、支持面は、第1の材料によって形成され、コーティングは、第2の材料によって形成され、第1の材料は、金属または半導体であり、第2の材料は、金属または半導体である。周辺領域上のコーティングは、支持面に冷間圧接することができる。したがって、CNTペリクル膜は、冷間圧接によってペリクルフレームに固定されてもよい。冷間圧接は、共晶によって形成されてもよい。比較的低温で、材料間の界面に第1の材料および第2の材料によって共晶が形成されてもよい。
【0044】
典型的な材料の組み合わせまたは体系は、比較的低温で共晶を形成する可能性があるため、金属-半導体体系であることができる。しかしながら、金属-金属体系および半導体-半導体体系のための冷間圧接も採用することができる。共晶を形成するための有利な組み合わせには、RuおよびGe、PdおよびGe、RuおよびSi、NbおよびSiが含まれる。
【0045】
一実施形態によれば、第1の材料および第2の材料は、Zr、Mo、Ru、Pd、Nb、GeおよびSiからなる群から選択されてもよく、これは、CNTペリクル膜のコーティングとペリクルフレームの支持面との間の界面での好適な材料の組み合わせが実現され得る点で有利である。
【0046】
一実施形態によれば、第1の材料と第2の材料とは同じ材料であってもよい。これは、第1の材料と第2の材料の一方を共に結合する間に損傷する危険性を低減する点で有利である。言い換えれば、同じ材料が第1の材料と第2の材料のために使用された場合に、熱、圧力などの処理パラメータが材料特性の違いを考慮する必要がない場合がある。
【0047】
本発明の概念の上記の目的、追加の目的、特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の例示的および非限定的な詳細な説明によってより詳しく理解されるであろう。図面において、特に断らない限り、類似の要素には同様の参照番号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】加圧面(複数)の間に配置されたCNTフィルムと、前記CNTフィルムを加圧して形成されたCNTペリクル膜との概略斜視図である。
図2】ペリクルフレームにカーボンナノチューブペリクル膜を結合してペリクルを形成する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図面に示されているように、特徴、層および領域のサイズは、説明のために誇張されており、したがって、本発明の実施形態の一般的な構造を示すために提供される。同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0050】
本発明の概念を、本発明の現在好ましい実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下でより完全に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、完璧性および完全性のために提供され、本発明の範囲を当業者に完全に伝える。
【0051】
以下、図面を参照して、EUVLのためのペリクルの形成方法について説明する。この方法によれば、CNT膜(少なくともこのCNT膜の主表面の周辺領域で被覆されている)がペリクルフレーム上に配置され、前記周辺領域がペリクルフレームの支持面に面している。カーボンナノチューブペリクル膜とペリクル支持面とを互いに押し付けることによって、支持面とCNT膜とが結合される。
【0052】
CNT膜は、少なくとも1つのCNTフィルムを含む。EUVLペリクルでの使用に適したCNTペリクル膜102を形成するための方法について、図1を参照しながら説明する。
【0053】
図1では、CNTフィルム104は、第1の加圧面106と第2の加圧面108との間に配置されている。CNTフィルム104は、予め製造されたCNTフィルムであってもよいし、加圧面106、108の間に配置されるように組み合わされて製作されてもよい。図1のCNTフィルム104は、いわゆる自立型CNTフィルム104であり、これは、CNTフィルム104が、例えば、ペリクルフレームまたは類似物などに懸架されたときに、自重を支えることができるという意味で自立している。代わりに、それ自体の重量を支えることができないより弱いCNTフィルムを使用してもよい。いずれの場合でも、CNTフィルム104は、例えば、セルロース系または紙フィルタのようなフィルタの形態の一時的なキャリア(図示せず)上に配置することができる。
【0054】
図1に概略的に示されているように、個々のCNT110がCNTフィルム104内で互いに交差するという意味で、CNTフィルム104の個々のCNT110は、互いにオーバーラップしている。CNTフィルム104のCNT110は、好ましくは単層CNT、SWCNTであることができる。しかしながら、二重または多層CNT、DWCNTまたはMWCNTを代替的に使用してもよい。
【0055】
図示されたCNTフィルム104の個々のCNTは、CNT110が主要な方向または優勢な方向に沿ってCNTフィルム104内に配置されていないという意味で、CNTフィルム104内にランダムに配置されている。しかしながら、CNTフィルム104のCNTは、規則的に設けられてもよい。CNT110は、例えば、主要な方向または複数の主要な方向に沿って設けられてもよい。
【0056】
複数の個々のCNTが束(すなわち、糸またはロープ様構造)を形成するという意味で、CNTは、CNTフィルム104内に束ねられることもできる。その場合、CNTフィルムが、整列した網を形成する複数の束、またはランダムに配向されたCNT束から形成される。したがって、図1に示す各要素110は、代替的に、CNT束を指してもよい。CNT束110は、例えば、2~20個の個々のCNTを含むことができる。CNT束110では、個々のCNTを整列させ、それらの長手方向に沿って結合することができる。束のCNTは、CNT束の長さが個々のCNTの長さよりも長くなるようにエンドツーエンドで結合されてもよい。CNTは、典型的には、ファンデルワールス力によって結合され得る。
【0057】
CNTフィルム104の個々のCNT110(または束110)は、図示されない、コーティングで被覆することができる。コーティングは、Moの金属コーティングであってもよい。コーティングは、図1に示すように、CNTフィルム104内に部分的に遊離したCNTのネットワークを形成しながら、個々のCNTまたは束がコーティングによって部分的にまたは完全に包囲されるという意味で、CNT110を少なくとも部分的に覆うことができる。CNT110上のコーティングの厚さは、使用中にプロセス条件からのCNTフィルム104のCNTの信頼できる保護を形成することができるので、好ましくは、1nm~30nmの範囲内であることができる。さらに、好ましくは、1~10nmの範囲のコーティングの厚さを使用して、信頼性の高い保護とEUV放射への十分な透過との両方を可能にすることができる。コーティングは、例えば、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)または原子層堆積(ALD)など、当技術分野で知られている任意の適切な技術を使用して形成することができる。
【0058】
適切なコーティングの他の例は、いくつかの例を与えるために、B、BC、ZrN、Ru、SiC、TiN、a-Cおよびグラフェンコーティングを含む。言い換えれば、上記材料のコーティングは、上記の例でも同様に良好に使用され得る。EVUの用途では、適切なコーティングは、一般に、極端紫外線の吸収が制限されたコーティングである。
【0059】
代替的に、コーティングは、個々のCNTまたは束110の周りに形成される代わりに、CNTフィルム104の一方または両方の主表面にコーティング層として形成されてもよい。
【0060】
CNTフィルム104のオーバーラップしたCNT110を互いに結合するために、CNTフィルム104は、第1の加圧面106と第2の加圧面108との間で加圧することができる。したがって、加圧面106,108は、CNTフィルム104に機械的に圧力を印加するために、共に加圧することができる。
【0061】
被覆されたCNT110の印加圧力は、約0.1kPa以上であり得る。印加圧力は、好ましくは、30MPaを超えなくすることができる。このような圧力は、CNT110がオーバーラップする位置でCNT110のコーティング間で結合が起こり、CNTがオーバーラップする位置で互いに接着するのに十分である。オーバーラップするすべての位置で結合が生じる必要はないことに留意されたい。上記圧力は、ここでは、CNTフィルム104の領域に亘って加えられる平均圧力を指してもよい。
【0062】
いわゆる冷間圧接は、CNTがオーバーラップする位置でCNT110のコーティング間に形成され得る。したがって、加圧中にオーバーラップする位置で起こる結合は、CNTフィルム104の強度および完全性を向上させ、それによって、自立型CNTペリクル膜102を形成する。理解されるように、CNT110がオーバーラップしている場所で局所的に圧力が上昇し、オーバーラップするCNT110同士の結合を容易にすることができる。明確にするために、結合が行われる位置112は、図1の下部のドットまたは結合112によって示される。
【0063】
より具体的には、図1の下部に、フィルム104を加圧することによって形成された自立型CNTペリクル膜102が、CNTまたはCNT束110が互いにオーバーラップする位置にどのように結合位置112を含むことができるかが示されている。結合位置112は、説明の便宜上、図1においてドットとして示された上記の通りである。
【0064】
結合の形成を容易にするために、CNTフィルム104を加圧中に1mbar未満の真空にさらすことができる。有利には、10-10mbar~10-6barの範囲の周囲圧力を使用することができる。CNTフィルム104は、結合112の形成をさらに容易にするために、加圧面106,108の間で加圧されながら加熱されてもよい。例えば、CNTフィルム104は、圧力を印加しながら、20~500℃の範囲内の温度に加熱することができる。好ましくは、CNTフィルム104は、圧力を印加しながら、300℃未満の温度に加熱することができる。
【0065】
代替的に、CNTペリクル膜102は、被覆されていないCNTまたはCNT束110のCNTフィルム104、すなわち、外面にコーティングを有しないCNTフィルム104を加圧することによって、形成することができる。この場合、CNTフィルム104のCNT110は、CNT110がオーバーラップする位置で直接接触する。この場合も、CNTフィルム104は、上記のように、加圧面106,108の間で加圧される。CNTフィルム104のCNT110が被覆されていない場合には、CNTフィルム104のオーバーラップするCNTの間で結合を起こさせるために、10~30GPaの範囲の圧力を印加することが好ましい。この場合、結合は、CNTフィルム104のCNT110の間で直接的に起こる。例えば、CNTフィルム104のオーバーラップしたCNTの炭素原子の間に、直接結合、例えば、共有結合が形成される。
【0066】
さらに、複数のCNTフィルム104は、第1加圧面106と第2加圧面108との間に積み重ねられて互いに重ね合されて配置されてもよく、この場合、結合は各フィルム内で、また複数のフィルム間でも起こり、これによって、自立型CNTペリクル膜102を形成する。
【0067】
次に、上記の方法に従って形成された自立型CNTペリクル膜102の好ましい実施形態について説明する。この実施形態によれば、膜102は、SWCNTを含むか、またはSWCNTから形成される。個々のCNT112は、0.5~2nmの直径を有することができる。あるいは、膜102は、MWCNTを含むか、またはMWCNTから形成される。個々のCNT112は、5~30nmの直径を有することができる。SWCNTおよびMWCNTの両方について、個々のCNT112は、平均長さ>100μmを有することができる。隣接するCNT112間の典型的な間隙は、≦30±100nmであることができる。この間隙は、細孔サイズとも呼ばれる。
【0068】
好ましいCNTペリクル膜102は、加圧中に積層された状態で互いに重ね合されて配置された2~3枚のCNTフィルム104で形成することができる。しかしながら、加圧中に積層された状態で互いに重ね合されて配置された4枚以上のCNTフィルム104についても同様の結果が得られる。
【0069】
好ましいCNTペリクル膜102の厚さは、5~50mmの範囲であり得る。しかしながら、CNTペリクル膜102の厚さは、CNTペリクル膜102の多孔度に応じて大きくなり得る。CNTペリクル膜102の重要なパラメータは原子/cmの量である。その理由は、原子がCNTペリクル膜102に影響を与えるEUV光を吸収または減衰させるからである。言い換えれば、原子/cmの数は、CNTペリクル膜102の透過効率に影響を及ぼす。90%の透過率を達成するためには、15nmのグラファイトまたは2.266g/cmの同等の厚さがCNTペリクル膜10に使用される。これらの値は、ペリクル膜102の約1.7・1017炭素原子/cmにほぼ対応する。この洞察を手にして、重要なことは、1.7・1017炭素原子/cm以下または2.266g/cm以下の炭素原子密度を有するが、CNT膜102が所望の粒子保持特性を有するコーティングを有するかまたは有しない強固なCNT膜102を形成または構築することであることが理解される。
【0070】
上記の特徴を有する膜は、上記の特性および膜が実際にEUVペリクル用途にどのように機能するかを決定することを目指して広範囲の測定に供されている。CNTペリクル膜102を形成するために使用されるCNTフィルム104を製造する過程で、CNTの直径および平均長が主に設定される。また、CNT膜104内にCNTがどれくらい密に配置されるかによって間隙または細孔サイズが影響される。しかしながら、形成されるCNTペリクル膜102の細孔サイズもまた、使用されるCNTフィルム104の数に影響を与える。CNTフィルム104の数が増えると、より密なCNTペリクル膜102、すなわち、より小さい細孔サイズを有するCNTペリクル膜102が得られる。一般に、より密度の高いまたはより多孔性でないCNTペリクル膜102は、より良好な粒子保持を示すが、極端紫外線のより大きな吸収を被るであろう。実際には、CNTの直径または平均長さも、CNTペリクル膜102の多孔度に影響を与える。SEMおよびTEMを用いて上記のパラメータを測定することができる。
【0071】
しかしながら、上記特性を有する膜は、極端紫外線に対して高い安定性を示すことが判明している。100枚のウエハ露光後のCNT膜の典型的な透過損失は、0.1%未満であると測定されている。極端紫外線の透過率は、典型的には、>90%であり、EUVペリクル用途にとって望ましい値である。SWCNTおよびMWCNTの合成方法の例には、アーク放電法、レーザーアブレーションおよび浮遊触媒(エアロゾル)CVD合成を含むCVD法に基づく技術が含まれる。エアロゾル合成技術の非限定的な例は、特許文献1に見出される。整列したCNTを形成するための例示的なプロセスは、特許文献2に見出される。
【0072】
図1に関連して上に開示したCNTペリクル膜102を形成する方法は、単にペリクルフレームに取り付けてEUVLペリクルを形成するのに適したCNTペリクル膜102を形成する1つの方法を表すにすぎないことに留意されたい。同様に、自立型CNTペリクル膜の好ましい実施形態は、単にCNTペリクル膜の可能な構造の1つを表すに過ぎない。しかしながら、好ましくは自立型のCNTペリクル膜102をもたらす任意の他の技術も使用することができる。
【0073】
図2を参照すると、CNTペリクル膜102などのCNTペリクル膜をペリクルフレーム202に結合することによって、ペリクル200を形成する方法が示されている。
【0074】
コーティングがCNTペリクル膜102上に形成される。コーティングは、上述のようにして、CNTペリクル膜102上に形成することができる。コーティングは、上述したように、CNTフィルム104の加圧の前または後に形成されてもよい。あるいは、フレーム202への取り付けを容易にする目的で、CNTペリクル膜102上に別個のまたは追加のコーティングを形成してもよい。どちらの場合も、コーティングは、CNTペリクル膜102の主表面102a全体に形成されてもよいし、または、CNTペリクル膜102の周辺領域102aaのみに形成されてもよい。周辺領域102aaによって、CNTペリクル膜102の領域がペリクルフレーム202に当接するように配置され、固定されることが意図されている。
【0075】
ペリクルフレーム202に固定される被覆されたCNTペリクル膜102は、ペリクルフレーム202の支持面202a上に配置される。ペリクルフレーム202の支持面202aは、典型的には、ペリクルフレーム202の上面である。ペリクルフレーム202は、2対の互いに対向する側壁のような、いくつかの側壁を含むことができる。
【0076】
取扱いの目的で、CNTペリクル膜102,202は、キャリアまたは一時的な基板101上に配置することができる。CNTペリクル膜102は、ペリクルフレーム202に移されてもよい。キャリア101から離れる方向に向くCNTペリクル膜102の主表面102aは、ペリクル支持面202aに当接させて配置してもよい。
【0077】
次いで、CNTペリクル膜102とペリクル支持面202aのコーティングは、CNTペリクル膜102とペリクル支持面202aとを互いに押し付けることによって共に結合される。これにより、CNTペリクル膜102は、十分な圧力が使用される場合には、ペリクルフレームの支持面202aに固定される。CNTペリクル膜102のCNT110が、上述のように被覆されている場合に、CNTペリクル膜102とペリクルフレーム202の支持面202aとの結合には、一般に0.1kPa~30MPaの圧力で十分である。キャリア101がCNTペリクル膜102を取り扱うために使用される場合に、CNTペリクル膜102のペリクル202への結合の前または後に、キャリア101をCNTペリクル膜102から除去することができる。
【0078】
被覆されたCNTペリクル膜102とペリクル支持面202aとを結合するために、支持面202aは、典型的には、第1の材料によって形成され、CNTコーティングは、典型的には、第2の材料によって形成される。いくつかの異なる材料の組み合わせまたは体系が、CNTペリクル膜102とペリクル支持面202aを共に結合するために働くであろう。
【0079】
第1の材料は、金属または半導体であることができ、第2の材料は、金属または半導体であることができる。典型的には、支持面202aの材料とコーティングの材料は異なる材料である。関連する材料の組み合わせまたは共に結合し得る体系の例は、RuおよびGe、PdおよびGe、RuおよびSi、NbおよびSiである。上記の例は、冷間圧接され、共晶を形成することによって共に結合されてもよい。当業者であれば、被覆されたCNTペリクル膜102とペリクル支持面202aとを互いに結合するために他の材料の組み合わせを使用することができ、使用される様々な材料の組み合わせによって必要な圧力が変わることを理解する。例えば、ペリクルフレーム202の支持面202aは、第1の金属によって形成されてもよく、CNTペリクル膜102のコーティングは、第2の金属によって形成されてもよい。これにより、共晶を形成することができる材料の組み合わせを選択することによって、加圧中に第1の金属と第2の金属との共晶を形成することが可能である。
【0080】
さらに、支持面202aの材料とコーティングの材料は、同じ材料であってもよい。
【0081】
結合の行為は、1mbar未満の圧力を有する真空をCNTペリクル膜102およびペリクルフレーム202に加えることを含むことができる。CNTペリクル膜102およびペリクルフレーム202は、結合の形成を容易にするために、加圧中に1mbar未満の真空にさらすことができる。有利には、10-10mbar~10-6barの範囲の周囲圧力を使用することができる。
【0082】
結合の形成をさらに促進するために、CNTペリクル膜102およびペリクルフレーム202は、互いに押し付けられながら加熱することができる。CNTペリクル膜102およびペリクルフレーム202は、例えば、圧力を印加しながら、20~500℃の範囲内の温度に加熱することができる。好ましくは、CNTペリクル膜102およびペリクルフレーム202は、圧力を印加しながら、300℃未満の温度に加熱することができる。
【0083】
ペリクルフレーム202は、支持面202aと同じ材料で形成され得、または異なる材料であることができる。言い換えれば、ペリクルフレーム202は、支持面202aを形成する材料がその上に適用されるフレーム本体を含むことができる。支持面202aは、例えば、ペリクルフレーム202の上面の上に薄い金属または半導体コーティングとして形成することができる。この構成によって、支持面202aおよびペリクルフレーム202の特性を、それぞれ独立して調整することができる。例えば、ペリクルフレーム202またはフレーム本体は、空気を透過することができ、ペリクル200が圧力変動にさらされたときに、CNTペリクル膜102に損傷を与えるリスクを低減する。ペリクルフレーム202は、例えば、Si、SiN、SiOまたは石英、または層スタックまたはそのような材料の組み合わせによって形成することができる。ペリクルフレーム202のための他の材料は、いくつかの例を与えるために、金属、プラスチックまたはセラミック材料を含む。
【0084】
この方法は、膜102をペリクルフレーム202に配置する前に、CNTペリクル膜102を横方向に引き伸ばすことをさらに含むことができる。CNTペリクル膜102を、事前に引き伸ばすことによって、膜102の弛みを打ち消すことができる。言い換えれば、ペリクルフレーム202上に配置する前に横方向に引き伸ばされると、弛みを減少させることができる。有利には、約100MPa以上の引っ張り応力がCNTペリクル膜102に導入される。これは、典型的な寸法のペリクルについて、0.5mm未満の膜の撓みに変換され得る。
【0085】
CNTペリクル膜102を事前に引き伸ばすことは、CNTペリクル膜102を中間の伸張可能な支持体に転移することを含むことができる。例えば、上述の仮基板101は、伸張可能な支持体として配置することができる。CNTペリクル膜102は、CNTペリクル膜102と伸張可能な支持体との間の表面界面における引力のために、伸張可能な支持体に接着することができる。伸張可能なまたは弾性膜などの任意の適切なタイプの伸張可能な支持体を使用することができる。伸張可能な支持体は、伸張可能な支持体を伸ばすように構成された伸張ツール内に配置され得、CNTペリクル膜102は、伸張され得る。続いて、CNTペリクル膜102をペリクルフレーム202に転写することができる。その後、伸張可能な支持体をCNTペリクル膜102から除去することができる。
【0086】
引張応力は、CNTペリクル膜に熱処理プロセスを施すなどの他の手段によって、CNTペリクル膜102に導入することもできる。熱処理プロセスは、CNTペリクル膜を高温(すなわち、室温より高い)に加熱することを含むことができる。それに加えて、またはこれに代えて、熱処理プロセスは、CNTペリクル膜を低温(すなわち、室温未満)に冷却することを含むことができる。また、CNTペリクル膜にコーティングを適用すると、CNTペリクル膜の引張応力が増加する可能性がある。
【0087】
さらに、図2を参照すると、ペリクル200がレチクル210に取り付けられて、レチクルシステム212を形成する様子が概念的に示されている。レチクルシステム212は、ペリクル200およびレチクル210を含む。ペリクル200は、レチクル210上に、例えば、接着剤を用いて、当技術分野で知られている任意の適切な手段を使用して取り付けることができる。ペリクルフレーム202は、レチクル210上の開口部またはアパーチャを画定する。ペリクル膜102は、アパーチャを覆う。ペリクル膜202は、ペリクルフレーム202によって、レチクル210の前面に懸架されている。ペリクルフレーム202の高さまたは厚さは、レチクル210の主面とペリクル膜102との間の距離が1mm~6mmの範囲であるようなものであってもよい。
【0088】
加えて、開示された実施形態に対する変形は、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の研究から、請求された発明を実施する際の当業者によって理解され、達成され得る。特許請求の範囲において、“含む”という単語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞“a”または“an”は、複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの測定された組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
図1
図2