特許 6997676 垂直軸風車およびこれを備えた風力発電装置と照明設備

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2021-12-21

(45)【発行日】2022-01-17

(54)【発明の名称】垂直軸風車およびこれを備えた風力発電装置と照明設備

(51)【国際特許分類】

   F03D 3/06 20060101AFI20220107BHJP

   F03D 9/11 20160101ALI20220107BHJP

   F03D 9/46 20160101ALI20220107BHJP

【ＦＩ】

F03D3/06 G

F03D9/11

F03D9/46

【請求項の数】 6

(21)【出願番号】P 2018101989

(22)【出願日】2018-05-29

(65)【公開番号】P2019206925

(43)【公開日】2019-12-05

【審査請求日】2021-03-09

(73)【特許権者】

【識別番号】000102692

【氏名又は名称】ＮＴＮ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100087941

【弁理士】

【氏名又は名称】杉本 修司

(74)【代理人】

【識別番号】100112829

【弁理士】

【氏名又は名称】堤 健郎

(74)【代理人】

【識別番号】100155963

【弁理士】

【氏名又は名称】金子 大輔

(74)【代理人】

【識別番号】100150566

【弁理士】

【氏名又は名称】谷口 洋樹

(74)【代理人】

【識別番号】100154771

【弁理士】

【氏名又は名称】中田 健一

(74)【代理人】

【識別番号】100142608

【弁理士】

【氏名又は名称】小林 由佳

(74)【代理人】

【識別番号】100213470

【弁理士】

【氏名又は名称】中尾 真二

(72)【発明者】

【氏名】伊藤 健

(72)【発明者】

【氏名】川瀬 達夫

(72)【発明者】

【氏名】林 達也

【審査官】北村 一

(56)【参考文献】

【文献】中国特許出願公開第１０２７４８２０７（ＣＮ，Ａ）

【文献】特開２００４－２０４８０１（ＪＰ，Ａ）

【文献】国際公開第２０１３／０２４５１５（ＷＯ，Ａ１）

【文献】特開２０１６－０７５２４１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００５－０６１３２８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１０－１１６９７１（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｆ０３Ｄ １／００－８０／８０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

垂直な回転軸の周囲に並ぶ複数枚の垂直な翼が、アームを介して前記回転軸に取付けられた垂直軸風車であって、
前記各翼が、主翼部と、この主翼部の上下端から前記主翼部の回転中心方向に対して傾斜してそれぞれ延びる一対の翼端傾斜部とを有し、前記各翼端傾斜部は、前記主翼部に対して段差を持って薄くなっており、前記翼端傾斜部の厚さが、基端から先端に渡って一定であることを特徴とする垂直軸風車。

【請求項2】

請求項１に記載の垂直軸風車において、前記翼端傾斜部が鋼板または樹脂材である垂直軸風車。

【請求項3】

請求項１または請求項２に記載の垂直軸風車において、前記主翼部が全長に渡って略同一の断面形状である垂直軸風車。

【請求項4】

請求項１ないし請求項３のいずれか１項に記載の垂直軸風車において、前記主翼部が風力により揚力を発生する揚力形の断面形状である垂直軸風車。

【請求項5】

請求項１ないし請求項４のいずれか１項に記載の垂直軸風車と、この垂直軸風車の回転が伝達されて発電を行う発電機とを有する風力発電装置。

【請求項6】

請求項５に記載の風力発電装置と、太陽光発電パネルと、これら風力発電装置および太陽光発電パネルで発電された電力を蓄電する蓄電池と、この蓄電池に蓄電された電力により照明を行う照明器具とが支柱に設置された発電機能付き照明設備。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明は、垂直な回転軸の周囲に複数枚の翼が並ぶ垂直軸風車、これを備えた風力発電装置、および風力発電装置によって発電して照明器具を点灯する街路灯等の照明設備に関する。

【背景技術】

【0002】

風力発電装置の風車として、プロペラ型風車が一般的であるが、プロペラ型風車を代表とする水平軸風車は、風向きに合わせて回転翼を対向させる風向き制御が必要となり、または風車の構造上、発電機等の重い機器が支柱の上部に設置されるため、支柱の強度面、風車の保守点検面で大きな課題を有している。
このため、比較的、小形の風力発電装置では、垂直軸風車が用いられることがある。また、垂直軸風車において、翼端渦の発生による回転翼の回転効率の低下を抑制すると共に、揚力を発生させる部分の増大や、翼から風が翼長さ方向に逃げることの防止等のために、翼端に翼端傾斜部を設けることが提案されている（例えば、特許文献１～３）。

【0003】

特許文献１に記載の発明は、回転体の周部に垂直に装着する受風羽根であって、受風部は、正面において左側面は縦中央部から上下方へ次第に薄く設定され、その状態で上下端縁部が左側方へ、それぞれ傾斜して傾斜部が形成されている。受風部は、平面において、傾斜部ともども左側前縁部が膨出形成されて、後部へかけて次第に薄く設定され、回転時に、受風部の左側（内側）面の前縁部域に負圧が生じて、回転推力が前方内向きにかかるように構成された風車の羽根である。
前記受風部の傾斜部は、正面において、受風部の中心を通る垂直線に対して、３５度～４６度の範囲で左方へ傾斜している。また、前記受風部は、側面略先尖りの三角形に形成され、傾斜部は、後部に形成されている。
この受風羽根は、繊維強化樹脂（ＦＲＰ）の中空体に形成されている。ただし必要に応じて、中空部に高率発泡の樹脂を詰装することができる。受風部の内側面後部が、回転方向に対して外方向へ傾斜しているので、風は後方へと流れる。それによって、受風部は前方へ押されることになり、回転推力が得られる。

【0004】

特許文献２に記載の発明は、縦主軸の周囲部に、所定の間隔をおいて縦長の羽根が配設される縦軸風車の発明であり、羽根は上下端部に、縦主軸方向へ傾斜する傾斜部が形成され、羽根の弦長は、羽根の回転半径の４０％～５５％相当範囲の寸法に設定されている。前記傾斜部の傾斜角度は、１０度以上、好ましくは３０度～４５度の範囲とし、傾斜部の高さは、羽根の高さの１０％程度である。

【0005】

特許文献３は、風車翼の発明であり、曲成部が主翼部の端部の断面形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して曲成されることで形成される。傾斜部は、曲成部の上側端部の断面形状のうち、外側に形成されている外側面の形状を、所定の曲率の曲線に沿って延出して曲成され、内側面の形状を、外側面に反映された曲線の曲率よりも小なる曲率の曲線に沿って延出して曲成されることで形成される。傾斜部の側面外郭稜線は、外側面と内側面とが交差して成る交差線で形成される。以上を特徴とする風車翼。翼端に設けられた傾斜部によって、翼端渦の発生による翼の回転効率の低下を抑制すると共に、主翼部だけでなく当該翼の傾斜部の領域からも、翼の回転力の元となる揚力を高効率に発生させる。

【0006】

これら特許文献１～３の発明は、いずれも、垂直軸風車の翼端に傾斜部を設けることで風車の回転速度を増大し、回転効率を改善でき、また微風でも回転し易く起動特性が向上する。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0007】

【文献】特開２００４－２０４８０１号公報

【文献】特開２００６－１１８３８４号公報

【文献】特開２０１６－２０５２０４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

特許文献１～３の発明は、垂直軸風車の翼端に傾斜部を設けて回転効率を向上させる技術であるが、これらの文献に記載の構成では、いずれも、翼端傾斜部の肉厚が厚くて翼の質量が大きくなり、またこれに加えて、翼端傾斜部の製造が困難で製造コストが増大するという問題がある。

【0009】

この発明は、前記課題を解消するものであり、その目的は、従来の厚肉の翼端傾斜部と同等の回転効率の向上、起動特性の向上を得ながら、軽量化および製造の簡易化が図れる垂直軸風車、風力発電装置、およびこれを備えた照明設備を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0010】

この発明の垂直軸風車は、垂直な回転軸の周囲に並ぶ複数枚の垂直な翼が、アームを介して前記回転軸に取付けられた垂直軸風車であって、
前記各翼が、主翼部と、この主翼部の上下端から前記主翼部の回転中心方向に対して傾斜してそれぞれ延びる一対の翼端傾斜部とを有し、前記各翼端傾斜部は、前記主翼部に対して段差を持って薄くなることを特徴とする。

【0011】

この構成によると、各翼が主翼部の上下端に、主翼部の回転中心方向に対して傾斜して延びる翼端傾斜部を有するため、従来の厚肉の翼端傾斜部を設けた垂直軸風車と同様に、翼端渦の発生による翼の回転効率の低下の抑制、翼総面積の増大による揚力または抗力の増大、風が翼から上下方向に逃げることの抑制による回転力の増大、および起動特性向上の各効果が得られる。また、前記翼端傾斜部が主翼部に対して段差を持って薄くなるため、従来の厚肉の翼端傾斜部に比べて質量が軽減されて微風での起動力がより向上し、かつ製造が容易になる。
このように、従来と同等の回転効率の向上作用、起動特性の向上を得ながら、軽量化および製造の簡易化が図れる。

【0012】

この発明の垂直軸風車において、前記翼端傾斜部の厚さが、基端から先端に渡って一定であってもよい。
翼端傾斜部の厚さが一定であると、翼端傾斜部を平板材で構成でき、製造がより一層簡単である。

【0013】

この発明の垂直軸風車において、前記翼端傾斜部の厚さが、基端から先端に近づくに従って次第に薄くなる形状であってもよい。
翼端傾斜部の厚さが、基端から先端に近づくに従って次第に薄くなる形状であると、風による力の負担が大きくなる翼端傾斜部の基端側ほど厚くなるため、強度的に優れる。

【0014】

この発明の垂直軸風車において、前記翼端傾斜部が鋼板または樹脂材であってもよい。 翼端傾斜部が鋼板または樹脂材であると、翼端傾斜部の製造がより一層簡単になる。また、翼端傾斜部を主翼部と別体に製造し、主翼部に取り付けるようにすることで、さらに製造が簡素化できる。

【0015】

この発明の垂直軸風車において、前記主翼部が全長に渡って略同一の断面形状であってもよい。
主翼部の断面形状が全長に渡って一定であると、主翼部の構成が簡単で製造が容易になる。

【0016】

この発明の垂直軸風車において、前記主翼部が風力により揚力を発生する揚力形の断面形状であってもよい。
主翼部が揚力形の断面形状であると、抗力型の断面形状とした場合に比べて効率に優れる。このような揚力形の主翼部に、主翼部に対して段差を持って薄くなる翼端傾斜部を設けることで、翼端傾斜部による前記各作用が効果的に発揮される。

【0017】

この発明の風力発電装置は、この発明の上記いずれかの構成の垂直軸風車と、この垂直軸風車の回転が伝達されて発電を行う発電機とを有する。
この構成の風力発電装置によると、この発明の垂直軸風車による上記各効果が得られ、従来の厚肉の翼端傾斜部を設けた場合と同等の回転効率の向上作用、起動特性の向上を得ながら、翼の軽量化および製造の簡易化が図れる。

【0018】

この発明の発電機能付き照明設備は、この発明の風力発電装置と、太陽光発電パネルと、これら風力発電装置および太陽光発電パネルで発電された電力を蓄電する蓄電池と、この蓄電池に蓄電された電力により照明を行う照明器具とが支柱に設置される。
この構成によると、風力発電装置および太陽光発電パネルで発電された電気を蓄電池に蓄電し、夜間等に照明器具を点灯させる。日中は太陽光発電パネルで発電される。風力発電装置は、翼端傾斜部が設けられていて回転の効率がよく、風速の小さい場合でも発電能力が高い。

【発明の効果】

【0019】

この発明の垂直軸風車は、垂直な回転軸の周囲に並ぶ複数枚の垂直な翼が、アームを介して前記回転軸に取付けられた垂直軸風車であって、前記各翼が、主翼部と、この主翼部の上下端から前記主翼部の回転中心方向に対して傾斜してそれぞれ延びる一対の翼端傾斜部とを有し、前記翼端傾斜部は、前記主翼部に対して段差を持って薄くなるため、従来の厚肉の翼端傾斜部と同等の回転効率の向上作用、起動特性の向上を得ながら、軽量化および製造の簡易化が図れる。

【0020】

この発明の風力発電装置は、この発明の垂直軸風車を備えるため、垂直軸風車に、従来の厚肉の翼端傾斜部を設けた場合と同等の回転効率の向上作用、起動特性の向上を得ながら、翼の軽量化および製造の簡易化が図れる。

【0021】

この発明の発電機能付き照明設備は、この発明の風力発電装置と、太陽光発電パネルと、これら風力発電装置および太陽光発電パネルで発電された電力を蓄電する蓄電池と、この蓄電池に蓄電された電力により照明を行う照明器具とが支柱に設置されため、風力と太陽光の両方で発電が行え、風力発電については、従来の厚肉の翼端傾斜部と同等の回転効率の向上、起動特性の作用の向上を得ながら、軽量化および製造の簡易化が図れる。

【図面の簡単な説明】

【0022】

【図1】この発明の第１の実施形態に係る風力発電装置を示す斜視図である。

【図2】同風力発電装置における垂直軸風車の翼の例を示す斜視図である。

【図3】同翼を図２とは異なる方向から見て示す斜視図である

【図4】同翼の回転軸側から見た正面図である。

【図5】同翼の反回転軸側から見た背面図である。

【図6】同翼の右側面図である。

【図7】同翼の左側面図である。

【図8】同翼を図４の上方から見た平面図である。

【図9】同翼の図４におけるＩＸ－ＩＸ線断面図である。

【図10】同翼を図４の下方から見た底面図である。

【図11】図６のＸＩ部の拡大図に相当する翼端傾斜部の寸法説明図である。

【図12】同翼の変形例を図１１と同様に示す説明図である。

【図13】図１１の翼端傾斜部の取付構造例を示す説明図である。

【図14】図１２の翼端傾斜部の取付構造例を示す説明図である。

【図15】この発明の一実施形態に係る発電機能付き照明設備の斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0023】

この発明の第１の実施形態を図１ないし図１１と共に説明する。図１は、風力発電装置を示す。この風力発電装置１は、垂直軸風車２と発電機３とを備える。
垂直軸風車２は、複数枚（図示の例では２枚）の垂直な翼５が、アーム６ａ，６ｂによって発電機３の回転軸３ａに取付けられている。前記複数枚の翼５と前記アーム６ａ，６ｂとで回転翼５Ａが構成される。支柱４は、それぞれ円筒状とされた下側の大径部４ａと上側の小径部４ｂとでなり、小径部４ｂの上端から突出した上端部に発電機３が取付けられている。前記アーム６ａ，６ｂとして、水平な中央の主アーム６ａと、主アーム６ａまたは前記発電機３から斜め上方および斜め下方にそれぞれ延びて先端が翼５に結合された上下の副アーム６ｂとが設けられている。
前記発電機３は、永久磁石同期発電機等からなり、そのロータ（図示せず）が前記支柱４の上端で支持されている。

【0024】

翼５は、図２ないし図１１に拡大して示すように、垂直方向に延びる主翼部５ａと、この主翼部５ａの上下端から主翼部５ａの回転中心方向に対して支柱４の中心線側に近づくように傾斜してそれぞれ延びる一対の翼端傾斜部５ｂ，５ｂとを有する。翼端傾斜部５ｂは、主翼部５ａに対して段差を持って薄くなる。上下の翼端傾斜部５ｂ，５ｂは、図示の例では互いに上下対称形状である。

【0025】

主翼部５ａの断面形状は、全長に渡って同一の形状である。主翼部５ａの断面形状は、この実施形態では図４のIX－IX断面を図９に示すように揚力形、詳しくは幅方向の中央よりも回転方向（矢印方向）の前縁側の膨らみが大きく、後縁側が次第に薄くなる略魚形とされている。翼５の回転方向は、揚力形の場合は定まっている。また、翼５の設置方向は、幅方向が発電機３の回転軸心回りの翼回転軌跡ａの接線に対して若干の迎角を持つ方向とされる。このため、左側面図（図７）では、図９の翼回転軌跡ａの接線方向に見た場合に、翼外側面を表す線ｂ（図７）と、主翼部５の前縁ｃと、主翼部５の回転中心側（内側）の線ｄとが見えている。
なお、主翼部５ａの断面形状は、平板状等の抗力形としてもよい。

【0026】

翼端傾斜部５ｂは、図１１に厚さ関係を示すように、厚さｔが、主翼部５ａの厚さＬに対して、十分に薄く、かつ翼端傾斜部５ｂに対して段差を持って薄くなるように設けられている。同図の例では、翼端傾斜部５ｂは、全体が同じ厚さの平板状に形成されている。 翼端傾斜部５ｂの厚さｔの、主翼部５ａの厚さＬに対する割合は、例えば１／１０以下とされる。翼端傾斜部５ｂの主翼部５ａに対する折れ曲り角度は、例えば、３０°～８０°とされる。各翼端傾斜部５ｂの長さは、例えば主翼部５ａの全長の５～３０％程度とされる。
翼端傾斜部５ｂの平面形状は、図２、図３や、図８～図１０に示すように、主翼部５ａの最も厚さが厚い幅方向位置が最も大きく突出し、前端および後端に近づくに従って突出量が小さくなる形状となっている。

【0027】

翼端傾斜部５ｂは、全体を同じ厚さとする代わりに、図１２に示すように、基端から先端に近づくに従って次第に薄くなる形状としてもよい。この場合も、翼端傾斜部５ｂの基端の厚さｔ′は、主翼部５ａの厚さＬに対して、十分に薄く、かつ翼端傾斜部５ｂに対して段差を持って薄くなる形状とされる。なお、この厚さが次第に薄くなる形状の場合、主翼部５ａの先端に、断面形状三角形状の繋ぎ部５ｃが設けられ、この繋ぎ部５ｃの断面の一辺５ｃａに翼端傾斜部５ｂの基端５ｂｂが繋がる。

【0028】

翼５の材質は、繊維強化プラスチック等の樹脂材料であっても、鋼板やアルミ材等の金属材であってもよい。また、複数の材料により構成されていても良い。主翼部５ａは、中実であっても、中空であってもよい。中空の場合、例えば、翼長さ方向の複数箇所に設けられた翼断面形状のリブと翼長さ方向に延びる複数本の桁材とでなる骨組（図示せず）に、翼表裏の表面板（図示せず）を張り付けた構成とされる。
翼端傾斜部５ｂは、主翼部５ａと一体に形成されたものであっても、主翼部５ａとは別の部材として製造されて主翼部５ａに取付けられたものであってもよい。翼端傾斜部５ｂを主翼部５ａと別体に製造する場合、例えば図１３に示すように、翼端傾斜部５ｂと取付部５ｄとを有する翼端傾斜部構成部品５ｂＡを、主翼部５ａにボルト等の固着具２１により、または接着剤により取付けてもよい。

【0029】

図１４は、図１２の例のように翼端傾斜部５ｂを基端から先端に近づくに従って次第に薄くなる形状とした場合に、翼端傾斜部５ｂを主翼部５ａと別部材として製造し、翼端傾斜部５ｂの基端面となる接合面２２で翼端傾斜部５ｂを主翼部５ａに接着剤で、またはボルト・ナット（図示せず）等の固着具で取付けた例である。

【0030】

この構成によると、各翼５が主翼部５ａの上下両端から主翼部５ａの回転中心方向に対して傾斜して延びる翼端傾斜部５ｂを有するため、従来の厚肉の翼端傾斜部を設けた垂直軸風車と同様に、翼端渦の発生による翼の回転効率の低下の抑制、翼総面積の増大による翼５の揚力の増大、風が翼５から上下方向に逃げることの抑制による回転力の増大、および起動特性向上の効果が得られる。また、前記翼端傾斜部５ｂが主翼部５ａに対して段差を持って薄くなるため、従来の厚肉の翼端傾斜部に比べて質量が軽減されて微風での起動力がより向上し、かつ製造が容易になる。
このように、従来と同等の回転効率の向上作用、起動特性の向上を得ながら、翼５の軽量化および製造の簡易化が図れる。

【0031】

前記翼端傾斜部５ｂの厚さが、図１１、図１３に示すように基端から先端に渡って一定である場合は、翼端傾斜部５ｂを板材で構成でき、製造がより一層簡単である。

【0032】

前記翼端傾斜部５ｂの厚さが、図１２、図１４の例のように基端から先端に近づくに従って次第に薄くなる形状である場合は、風による力の負担が大きくなる翼端傾斜部５ｂの基端側ほど厚くなるため、強度的に優れる。
また、前記翼端傾斜部５ｂの材質が、鋼板または樹脂材であると、翼端傾斜部５ｂの製造がより一層簡単になる。翼端傾斜部５ｂを、例えば図１３、図１４の例のように主翼部５ａと別体に製造し、主翼部５ａに取り付けるようにすることで、さらに製造が簡素化できる。

【0033】

主翼部５ａについては、全長に渡って略同一の断面形状であると、主翼部５ａの構成が簡単で製造が容易になる。揚力形の主翼部５ａに、主翼部５ａに対して段差を持って薄くなる翼端傾斜部５ｂを設けることで、翼端傾斜部５ｂによる前記各作用が効果的に発揮される。

【0034】

図１５は、風力発電装置１を備えた発電機能付き照明設備を示す。同図の発電機能付き照明設備は、道路や公園等に道路灯や街路灯として設置される照明設備であり、支柱４の上部に風力発電装置１の垂直軸風車２と、太陽光発電パネル１１と、照明器具１２が設けられ、かつ支柱４の大径部４ａの内部に複数の蓄電池１３が設けられている。太陽光発電パネル１１は、支柱４の小径部４ｂに取付けられ、照明器具１２は太陽光発電パネル１１の下方に位置して支柱４の小径部４ｂに取付けられている。照明器具１２は、ＬＥＤ等の光源を有し、直流で点灯する形式であっても、交流で点灯する形式であってもよい。
風力発電装置１は、図１～図１１に示した実施形態と同様であり、翼５の上下端には翼端傾斜部５ｂが設けられている。

【0035】

この照明設備は、風力発電装置１および太陽光発電パネル１１で発電された電気を蓄電池１３に蓄電し、その蓄電された電気を使って夜間等に照明器具１２を点灯させる。風力発電装置２は、上記のように翼５に翼端傾斜部５ｂが設けられていて回転の効率が良いため、風速の小さい場合でも発電能力が高いという効果が得られる。また、日中は太陽光発電パネル１１と風力発電装置１で発電される。

【0036】

なお、前記実施形態では、翼端傾斜部５ｂは主翼部５ａから折れ曲がって直線状に延びているが、翼端傾斜部５ｂの突出方向に沿う断面は、曲線状であってもよい。

【0037】

以上、実施形態に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【符号の説明】

【0038】

１…風力発電装置
２…垂直軸風車
３…発電機
３ａ…回転軸
４…支柱
５…翼
５ａ…主翼部
５ｂ…翼端傾斜部
６ａ，６ｂ…アーム
１１…太陽光発電パネル
１２…照明器具
１３…蓄電池

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】