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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】蛍光管処理装置および蛍光管処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
B09B5/00 Z ZAB
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018102021
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019205960
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】500570427
【氏名又は名称】J&T環境株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599165234
【氏名又は名称】東洋精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100195785
【弁理士】
【氏名又は名称】市枝 信之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真悟
(72)【発明者】
【氏名】坂西 弘之
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】白戸 裕介
(72)【発明者】
【氏名】河野 政美
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-158672(JP,A)
【文献】特開2005-022009(JP,A)
【文献】特開2005-132551(JP,A)
【文献】特開2001-269897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
B09B 5/00
B29B 17/02
B65B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管形の蛍光管の表面から、被除去物としての包装材およびフィルムの少なくとも一方を除去する蛍光管処理装置であって、
前記被除去物を前記蛍光管の長手方向に沿って切削する切削部と、
切削された前記被除去物を剥離する剥離部とを有し、
前記切削部が、前記被除去物に当接した状態で回転する切削用回転ブラシと、前記回転ブラシを前記蛍光管の長手方向に移動させる切削用回転ブラシ移動手段とを備え、
前記剥離部が、前記被除去物に当接した状態で回転する剥離用回転ブラシを備える、蛍光管処理装置。
【請求項2】
前記剥離用回転ブラシが、前記蛍光管の長手方向と平行な回転軸を有する、請求項1に記載の蛍光管処理装置。
【請求項3】
前記剥離用回転ブラシの長さが、前記蛍光管の長さ以上である、請求項1または2に記載の蛍光管処理装置。
【請求項4】
前記剥離部が、前記被除去物に当接した状態で回転する回転ローラーをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の蛍光管処理装置。
【請求項5】
直管形の蛍光管の表面から、被除去物としての包装材およびフィルムの少なくとも一方を除去する蛍光管処理方法であって、
前記被除去物を前記蛍光管の長手方向に沿って切削する切削工程と、
切削された前記被除去物を剥離する剥離工程とを有し、
前記切削工程では、前記被除去物に当接した状態で回転する切削用回転ブラシを、前記蛍光管の長手方向に移動させながら前記被除去物を切削し、
前記剥離工程では、前記被除去物に当接した状態で回転する剥離用回転ブラシにより前記被除去物を剥離する、蛍光管処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直管形の蛍光管の表面から、被除去物としての包装材およびフィルムの少なくとも一方を除去する蛍光管処理装置に関し、特に、被除去物の種類、状態、および蛍光管の径にかかわらず被除去物を効率的に除去することが可能な蛍光管処理装置に関する。また本発明は、直管形の蛍光管の表面から、被除去物としての包装材およびフィルムの少なくとも一方を除去する蛍光管処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光管は、一般的には、水銀を封入したガラス管からなる照明器具であり、水銀蒸気中での放電により発生させた紫外線がガラス管の内面に塗布されている蛍光体に当たることによって可視光線を発するように構成されている。
【0003】
蛍光管は有害な水銀を含んでいるため、不要となった蛍光管(廃蛍光管)は通常そのままの状態で回収され、リサイクル工場などにおいて水銀の分別回収が行われている。また、その際には、蛍光管を構成するガラス、金属、蛍光体なども分別回収され、再資源化される。
【0004】
ところで、一般的に新品の蛍光管は、破損防止のために紙製のケース(サヤ、スリーブともいう)などの包装材に収めた状態で販売されているが、使用済みの蛍光管についても、同様の包装材に収めた状態で廃棄されることが多い。したがって、そのような廃蛍光管をリサイクルするためには、まず、包装材と蛍光管本体とを分別する必要がある。
【0005】
また、蛍光管のなかには、破損した際のガラスの飛散防止や昆虫を誘引するUV光のカットを目的として、蛍光管本体の外周に有機樹脂などからなるフィルムを巻いたタイプのものがある。このようなフィルム付き蛍光管をリサイクルするためには、まず、フィルムと蛍光管本体とを分離する必要がある。
【0006】
従来、このような包装材やフィルムの分別は人手によって行われてきたが、作業の効率化のために自動化が進められている。
【0007】
例えば、特許文献1では、包装材を保持した状態で直管形の蛍光管を長手方向に押し出すことによって分離を行う装置が提案されている。
【0008】
また、特許文献2では、蛍光管の長手方向に沿ってレーザーを照射することによりガラス飛散防止フィルムを切断し、その後、フィルムの切削部に空気を吹き付けることで該フィルムを剥離する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-029428号公報
【文献】特開2012-192303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1で提案されている装置によれば、包装材と蛍光管との分離を自動化することができる。しかし、前記装置には次のような問題があることが分かった。
【0011】
まず、包装材に収容された状態で廃棄される蛍光管の中には、回収作業や運搬中に蛍光管が包装材から抜け落ちることを防ぐために、包装材と蛍光管の端部を粘着テープなどで固定されているものがある。このような場合、特許文献1に記載された装置では内部の蛍光管のみを押し出すことができないため、人手で分離を行う必要があった。
【0012】
また、包装材は一般的に段ボールなどの紙からなるため、廃蛍光管の回収過程において雨水などで濡れてしまった場合、強度が低下するとともに滑りにくくなる。その結果、特許文献1に記載された装置では内部の蛍光管のみを押し出すことができず、やはり人手で分離を行う必要があった。
【0013】
さらに、前記装置では、蛍光管を押し出す際に、押出を阻害したり蛍光管を破損したりすることがないように包装材のみを適切に保持する必要がある。そのため、一般的な蛍光管と高周波点灯方式の蛍光管(Hf管)のように径の異なる蛍光管の処理を同時に行うことは困難であった。
【0014】
また、特許文献2で提案されている装置によれば、フィルムと蛍光管との分離を自動化することができる。しかし、前記装置には次のような問題があることが分かった。
【0015】
一般的に、フィルムは蛍光管の外周に接着されているわけではなく、例えば、熱収縮させるといった方法で固定されているのみである。そのため、通常は特許文献2に記載の装置のように、フィルムの切削部に空気を吹き付ければ該フィルムを剥離することができるはずである。しかし、実際の廃蛍光管では、使用時の熱によってフィルムの一部が蛍光管のガラス表面に焼付いてしまっていることが多い。一部分でもフィルムが焼付いていると、フィルム全体が蛍光管から剥離できずに残ってしまうため、そのまま処理を進めてしまうと装置トラブルの原因となる。そのため、フィルムが焼付いた廃蛍光管については人手で処理する必要があり、したがって、空気を吹き付けてフィルムを剥離する方法ではフィルム付き蛍光管の処理を完全に自動化することは困難であった。
【0016】
また、一般的に、フィルムは蛍光管の両端部にある金属製の口金部分を含む蛍光管全体を被覆している。通常、前記口金部の径は蛍光管のガラス管部分の径よりも小さいため、特許文献2の装置のようにレーザー照射でフィルムを切断する場合、口金部ではレーザーの焦点がフィルム面からずれてしまい、切断不良が発生しやすいという問題があった。
【0017】
このように、包装材やフィルムの分離処理の完全な自動化は達成されているといえず、被除去物の状態や管径にかかわらず被除去物を除去することが可能な処理装置が求められている。加えて、特許文献1、2に記載された装置は、それぞれ包装材とフィルムの分離に特化したものであったが、作業効率や設置スペースの改善の観点からは、1台の装置で包装材の分離とフィルムの分離の両者に対応できることも求められる。
【0018】
本発明は、上記の実情に鑑み開発されたものであり、被除去物の種類、状態、および蛍光管の径にかかわらず、効率的に被除去物を除去することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その要旨構成は次のとおりである。
【0020】
1.直管形の蛍光管の表面から、被除去物としての包装材およびフィルムの少なくとも一方を除去する蛍光管処理装置であって、
前記被除去物を前記蛍光管の長手方向に沿って切削する切削部と、
切削された前記被除去物を剥離する剥離部とを有し、
前記切削部が、前記被除去物に当接した状態で回転する切削用回転ブラシと、前記回転ブラシを前記蛍光管の長手方向に移動させる切削用回転ブラシ移動手段とを備え、
前記剥離部が、前記被除去物に当接した状態で回転する剥離用回転ブラシを備える、蛍光管処理装置。
【0021】
2.前記剥離用回転ブラシが、前記蛍光管の長手方向と平行な回転軸を有する、上記1に記載の蛍光管処理装置。
【0022】
3.前記剥離用回転ブラシの長さが、前記蛍光管の長さ以上である、上記1または2に記載の蛍光管処理装置。
【0023】
4.前記剥離部が、前記被除去物に当接した状態で回転する回転ローラーをさらに備える、上記1~3のいずれか一項に記載の蛍光管処理装置。
【0024】
5.直管形の蛍光管の表面から、被除去物としての包装材およびフィルムの少なくとも一方を除去する蛍光管処理方法であって、
前記被除去物を前記蛍光管の長手方向に沿って切削する切削工程と、
切削された前記被除去物を剥離する剥離工程とを有し、
前記切削工程では、前記被除去物に当接した状態で回転する切削用回転ブラシを、前記蛍光管の長手方向に移動させながら前記被除去物を切削し、
前記剥離工程では、前記被除去物に当接した状態で回転する剥離用回転ブラシにより前記被除去物を剥離する、蛍光管処理方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、被除去物の種類、状態、および蛍光管の径にかかわらず被除去物を除去することができる。本発明によれば、人手によらず蛍光管を自動的に処理できるため、廃蛍光管のリサイクル処理の効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態における切削用回転ブラシの配置を示す、蛍光管の長手方向に垂直な断面での模式図である。
図2】本発明の一実施形態における切削用回転ブラシの配置を示す、該切削用回転ブラシの回転軸に垂直な断面での模式図である。
図3】本発明の一実施形態における剥離部の構造を示す、蛍光管の長手方向に垂直な断面での模式図である。
図4】本発明の他の実施形態における剥離部の構造を示す、蛍光管の長手方向に垂直な断面での模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施する方法について具体的に説明する。
【0028】
本発明の一実施形態における蛍光管処理装置は、直管形の蛍光管の表面から、被除去物としての包装材およびフィルムの少なくとも一方を除去する蛍光管処理装置であって、前記被除去物を前記蛍光管の長手方向に沿って切削する切削部と、切削された前記被除去物を剥離する剥離部とを有している。以下、各部の詳細について説明する。
【0029】
[蛍光管]
前記蛍光管としては、特に限定されることなく、表面に被除去物を有する直管形の蛍光管であれば、任意のものを処理対象とすることができる。
【0030】
[被除去物]
前記被除去物は、包装材およびフィルムの少なくとも一方である。すなわち、本発明は、包装材の除去と、フィルムの除去のいずれにも適用することができる。
【0031】
前記包装材としては、特に限定されないが、例えば、内部に蛍光管を収容することができる筒状のケース(サヤ)などが挙げられる。前記包装材の代表的な材質としては、段ボールなどの紙が挙げられるが、本発明は包装材の材質にかかわらず適用可能である。なお、一般的な包装材の、蛍光管長手方向に垂直な面における断面形状は正方形であるが、本発明がそれ以外の断面形状を有する包装材にも適用できることはいうまでもない。
【0032】
前記フィルムについても、特に限定されず、フィルム状のものであれば処理対象とすることができる。前記フィルムの材質は特に限定されないが、一般的には樹脂である。前記樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂が挙げられるが、本発明はフィルムの材質にかかわらず適用可能である。
【0033】
[切削部]
本発明では、まず切削部において、前記被除去物を前記蛍光管の長手方向に沿って切削する。前記切削により、蛍光管の表面に存在する被除去物に対して、該蛍光管の長手方向に延在する切れ目を設けることができる。その結果、剥離部において被除去物を容易に剥離することが可能となる。
【0034】
前記切削部は、前記被除去物に当接した状態で回転する切削用回転ブラシと、前記回転ブラシを前記蛍光管の長手方向に移動させる切削用回転ブラシ移動手段とを備えている。以下、これらについて説明する。
【0035】
(切削用回転ブラシ)
本発明では、切削用回転ブラシを被除去物に当接した状態で回転させることにより、該蛍光管の表面に存在する被除去物を切削する。上述したように、レーザー照射で被除去物を切断する従来技術では、ガラス管部分より径が小さい口金部や、蛍光管自体の径が異なる場合などではレーザーの焦点が合わず切断不良が発生することがあった。これに対して、回転ブラシを用いる本発明では、ブラシ自体に弾性があるため口金部の径が小さい場合や、径の違う蛍光管が混在している場合でも、適切に切削することができる。また、ブラシ自体に弾性があるため、回転ブラシを蛍光管に押し当てて切削を行ってもガラス管を破損することがない。加えて、ブラシで切削した被除去物のエッジは、レーザーで切断した場合に比べて凹凸が大きくなっているため、次の剥離工程において被除去物が剥離用回転ブラシに引っ掛かりやすくなるというメリットもある。
【0036】
図1、2は、本発明の一実施形態における切削用回転ブラシの配置を示す模式図であり、図1は蛍光管の長手方向に垂直な断面での模式図、図2は切削用回転ブラシの回転軸に垂直な断面での模式図である。
【0037】
図1に示したように、切削用回転ブラシ10は蛍光管1に当接した状態で回転し、被除去物2の一部を切削する。図1(a)は、被除去物2が包装材2aである場合の模式図であり、ここで包装材2aは、蛍光管の長手方向に垂直な面における断面が略正方形である筒状のケース(サヤ)である。図1(b)は、被除去物2がフィルム2bである場合の模式図であり、ここでフィルム2bは蛍光管の外周を覆っている。
【0038】
被除去物2は包装材2aであるかフィルム2bであるかにかかわらず、図1に示したように切削用回転ブラシ10を押し当てて切削することにより、切削用回転ブラシ10が当たった部分の被除去物2を削って除去することができる。
【0039】
切削用回転ブラシ10は、図2に示したように、図示されない切削用回転ブラシ移動手段により蛍光管1の長手方向(図中の矢印L)に移動される。このように移動しながらブラシを回転させることにより、蛍光管の長さ方向全体にわたって、効率的に切削を行うことができる。
【0040】
前記切削用回転ブラシの個数は、特に限定されることなく、1以上の任意の数とできる。しかし、過度に多くなると重量やサイズが増大するとともに、装置構造が複雑化してコストも増加するため、蛍光管1本あたりの切削用回転ブラシの数は1個とすることが好ましい。
【0041】
ただし、処理効率を向上させるという観点からは、複数の蛍光管を同時に処理できるようにすることが望ましい。したがって、切削部は、切削用回転ブラシと切削用回転ブラシ移動手段とを、2組またはそれ以上備えることが好ましい。
【0042】
前記切削用回転ブラシとしては、回転させつつ蛍光管表面と当接させることによって被除去物を切削することができるものであれば、任意のものを用いることができる。前記切削用回転ブラシとしては、略円盤形状のホイールブラシを用いることが好ましい。ホイールブラシは、回転中心軸から放射状に外方へ延びる多数のワイヤを備えている。前記ワイヤとしては、任意のものを使用することができるが、効率的に切削を行うという観点からは、金属製ワイヤを用いることが好ましく、中でも鋼線(スチールワイヤ)を用いることが好ましい。前記ワイヤの直径は特に限定されないが、過度に細いと押付け力が不足し、一方、過度に太いと押付け力が過大となるため、0.3mm~1.0mmとすることが好ましく、0.5mm~0.8mmとすることがより好ましい。
【0043】
なお、ブラシの種類としては、ストレート(単線)タイプのブラシと、ワイヤを一定の本数ごとに束ねて撚り加工する(ねじる)ことによって強度を向上させた撚り線タイプのブラシとがあり、いずれも使用できる。
【0044】
前記切削用回転ブラシの幅は特に限定されないが、確実に被除去物を切削するためには、切削用回転ブラシの幅は5mm以上とすることが好ましく、7mm以上とすることがより好ましく、10mm以上とすることがさらに好ましい。一方、切削用回転ブラシの幅を過度に広くしても、実際に被除去物に当接するのは図1に示したようにブラシ先端の一部であり、ブラシの幅全体を有効に利用することが難しくなる。そのため、切削用回転ブラシの幅は20mm以下とすることが好ましく、18mm以下とすることがより好ましく、15mm以下とすることがさらに好ましい。
【0045】
上記切削用回転ブラシの回転は任意の方法で行えばよい。例えば、切削部は、回転ブラシを直接回転駆動するモーターを備えていてもよく、また、モーターと該モーターの回転を切削用回転ブラシへ伝達する伝達手段とを備えることもできる。前記伝達手段としては、例えば、プーリーとベルトを用いることができる。
【0046】
(切削用回転ブラシ移動手段)
上記切削部は、前記切削用回転ブラシを前記蛍光管の長手方向に移動させる切削用回転ブラシ移動手段(以下、単に「移動手段」という場合がある)を備える。これにより、切削用回転ブラシを移動させて、蛍光管の長手方向全体にわたって被除去物を切削することができる。
【0047】
前記移動手段としては、前記切削用回転ブラシを移動させることができるものであれば任意のものを用いることができる。前記移動手段としては、例えば、移動用モーターと、前記移動用モーターの回転軸に連結されたピニオン、および蛍光管の長手方向と平行となるように設置されたラックを用いることができる。前記ピニオンを前記ラックにかみ合わせた状態で前記移動用モーターを回転させることにより、回転ブラシを蛍光管の長手方向に直線的に移動させることができる。また、ラックとピニオンに代えて、ボールねじなど、他の任意の直動部材を用いることもできる。なお、回転ブラシを回転させるための上記回転手段も、回転ブラシと共に前記移動手段によって移動させることが好ましい。また、前記移動手段は、移動方向を規制するためのレールを備えることが好ましい。
【0048】
前記移動手段による移動の態様は限定されず、任意の方法で移動させることができる。例えば、蛍光管の長手方向一端側から他端側へ移動させる片道1回の移動で切削を行ってもよいし、さらに前記他端側から一端側へ戻る復路を加えた往復1回の移動で切削を行ってもよく、また、2回以上の往復で切削を行ってもよい。
【0049】
本発明の一実施形態における蛍光管処理装置は、上記切削部において切削を行う際に処理対象の蛍光管を指示する支持手段を備えることができる。前記支持手段の構造は特に限定されず、蛍光管を支持できるものであれば任意の構造と出来る。例えば、略U字または略V字形状の受け部材によって蛍光管を支持するものとすることができる。前記支持手段は、蛍光管の長手方向全体にわたって支持してもよいが、両端部(例えば、口金部)のみを支持してもよい。ただし、蛍光管の両端のみを支持した場合、切削用回転ブラシの押しつけによって蛍光管がたわんでしまい、切削に支障が生じる場合がある。上記支持手段は、該蛍光管の両端部に加えて、長手方向中央部を支持することが好ましい。
【0050】
上記支持手段は、蛍光管に対して切削用回転ブラシが押し当てられる方向とは反対側から該蛍光管を支持することが好ましい。例えば、回転ブラシを上から押し当てる場合には、蛍光管の下方から支持手段によって支持することが好ましい。
【0051】
(押付け力調整手段)
上記切削部は、蛍光管の表面に対して切削用回転ブラシを押付ける力(押付け力)を調整するための押付け力調節手段を備えることが好ましい。押付け力調節手段を備えることにより、微細な押付け力の調整が可能となることに加え、ブラシの摩耗に伴う微調整が可能となるため、さらに安定して切削を行うことが可能となる。
【0052】
押付け力調節手段の構造は、特に限定されず、回転ブラシの押付け力を調整できるものであれば任意の構造とすることができる。例えば、蛍光管表面に対する回転ブラシの位置を調整することによって押付け力を変更できるようにすればよい。回転ブラシの位置の調整は、例えば、回転ブラシを支持する支持部材の位置を変更可能とし、ボルトなどを用いて任意の位置で前記支持部材を固定することで行うことができる。また、前記押付け力調整手段は、回転ブラシを蛍光管に向かって付勢し、押付け力を調整するための、バネやエアシリンダーなどの弾性部材を用いた付勢手段を備えることが好ましい。
【0053】
[剥離部]
上記切削部において前記被除去物を前記蛍光管の長手方向に沿って切削した後、剥離部において切削された前記被除去物を剥離する。ここで、切削された被除去物を剥離するとは、切削によって切れ目が設けられた状態の、残存している被除去物を蛍光管表面から剥離することを指すものとする。
【0054】
(剥離用回転ブラシ)
前記剥離部は、前記被除去物に当接した状態で回転する剥離用回転ブラシを備えており、前記剥離用回転ブラシの回転を利用して被除去物を剥離する。蛍光管にブラシを押し当てて回転させれば、ブラシの形状や配置にかかわらず、被除去物をブラシの回転に巻き込んで剥離できるため、ブラシの形状や配置は任意の物とすることができる。
【0055】
しかし、上記切削工程では、蛍光管の長手方向に沿って切削用回転ブラシを移動させながら切削を行っているため、切削による切れ目は蛍光管の長手方向に沿って設けられている。したがって、剥離工程では、被除去物に対して、前記切削による切れ目と略垂直方向に力を加えることにより、より効率的に剥離を行うことができる。そのため、前記剥離用回転ブラシは、前記蛍光管の長手方向と平行な回転軸を有することが好ましい。
【0056】
また、被除去物は一般的に蛍光管の全長を覆っているため、前記剥離用回転ブラシの長さは、前記蛍光管の長さ以上であることが好ましい。剥離用回転ブラシの長さが前記蛍光管の長さ以上であれば、蛍光管の全面を確実にブラシと当接させることができるため、例えば、フィルムが熱で蛍光管に融着しているような場合であっても、一層確実に被除去物を剥離することができる。より具体的には、市販の蛍光管の代表的なものの長さは1198mmであることから、前記剥離用回転ブラシの長さを1198mm以上とすることが好ましく、1200mm以上とすることがより好ましい。一方、剥離用回転ブラシの長さを必要以上に長くしても装置サイズが大型化するばかりで、処理効率は向上しない。そのため、前記剥離用回転ブラシの長さは、1500mm以下とすることが好ましい。
【0057】
図3は、本発明の一実施形態における剥離部の構造を示す、蛍光管の長手方向に垂直な断面での模式図である。この実施形態では2本の剥離用回転ブラシ20が使用されており、2本の剥離用回転ブラシ20は、回転軸が蛍光管1の長手方向と平行となるように配置されている。そして、包装材2aを表面に備える蛍光管1が、それら剥離用回転ブラシ20の上に載置されており、剥離用回転ブラシ20が包装材2aと当接している。包装材2aにはすでに切削工程において切れ目が入れられているので、この状態で剥離用回転ブラシ20を回転させることにより、包装材2aを剥離することができる。剥離された包装材2aは、ブラシの回転により蛍光管1から剥がされて、下方へ落下する。なお、図3では、被除去物が包装材2aである場合を示したが、被除去物がフィルムである場合にも、同様にフィルムを剥離することができる。
【0058】
また、図3では、蛍光管1本に対して、2つの剥離用回転ブラシ20を使用する例を示したが、剥離部は、少なくとも1つの剥離用回転ブラシを備えていれば、剥離を行うことができる。ただし、図3に示した実施形態のように剥離用回転ブラシが複数あれば、剥離用回転ブラシによって蛍光管を支持することができる。そのため、剥離用回転ブラシは、蛍光管1本に対して2つ以上設けることが好ましく、2つ設けることがより好ましい。また、同様の観点から、剥離用回転ブラシは蛍光管の下方に設けることが好ましい。
【0059】
剥離用回転ブラシの回転は任意の方法で行えばよい。例えば、剥離部は、剥離用回転ブラシを直接回転駆動するモーターを備えていてもよく、また、モーターと該モーターの回転を剥離用回転ブラシへ伝達する伝達手段とを備えることもできる。前記伝達手段としては、例えば、プーリーとベルトを用いることができる。
【0060】
また、剥離用回転ブラシの回転方向は特に限定されず、任意の方向とすることができる。なお、2つの剥離用回転ブラシを使用する場合には、図3、4に矢印で示した方向に回転させることが好ましい。すなわち、蛍光管の長手方向に垂直な断面で見たときに、蛍光管の左下(蛍光管の中心軸を原点としたときの第3象限)に位置する剥離用回転ブラシは時計回り、蛍光管の右下(蛍光管の中心軸を原点としたときの第4象限)に位置する剥離用回転ブラシは反時計回りに回転させることが好ましい。
【0061】
(回転ローラー)
図4は、本発明の他の実施形態における剥離部の構造を示す模式図である。この実施形態における剥離部は、2本の剥離用回転ブラシ20に加えて、さらに2つの回転ローラー30を備えている。2本の回転ローラー30は、剥離用回転ブラシ20と同様、回転軸が蛍光管1の長手方向と平行となるように配置されている。このように回転ローラー30を併用することにより、剥離時に蛍光管を押さえこみ、より確実に剥離を行うことができる。回転ローラー30の配置については特に限定されないが、前記効果を高めるためには、蛍光管1を挟んで剥離用回転ブラシ20とは反対側に、言い換えると、剥離用回転ブラシ20と回転ローラー30の間に蛍光管1が位置するように、回転ローラー30を配置することが好ましい。
【0062】
また、図4では、蛍光管1本に対して、2つ回転ローラー30を使用する例を示したが、回転ローラー30の個数は特に限定されない。回転ローラー30を設ける場合、1つの回転ローラー30でも蛍光管を押さえることができるため、その個数は1以上であればよい。ただし、図4に示した実施形態のように回転ローラー30が複数あれば、より安定して蛍光管を保持することができる。そのため、回転ローラー30は、蛍光管1本に対して2つ以上設けることが好ましく、2つ設けることがより好ましい。
【0063】
また、回転ローラーを用いる場合、回転ローラーは蛍光管の長手方向に少なくとも1箇所に設けることが好ましく、間隔を開けて複数箇所に設けることが好ましい。
【0064】
上記回転ローラーの材質は特に限定されないが、少なくとも表面(外周)部分は、摩擦力の観点から、ゴム製とすることが好ましい。
【0065】
上記回転ローラーの回転は任意の方法で行えばよい。例えば、剥離部は、回転ローラーを直接回転駆動するモーターを備えていてもよく、また、モーターと該モーターの回転を伝達する伝達手段とを備えることもできる。前記伝達手段としては、例えば、プーリーとベルトを用いることができる。
【0066】
また、回転ローラーの回転方向は特に限定されず、任意の方向とすることができる。なお、2つまたはそれ以上の回転ローラーを使用する場合には、全ての回転ローラーの回転方向を同じとすることが好ましい。
【0067】
[搬送手段]
本発明の蛍光管処理装置は、処理対象である蛍光管を搬送するための搬送手段を備えることが好ましい。搬送手段の形態は特に限定されないが、例えば、蛍光管を切削部へ搬送する第1の搬送手段と、切削部から剥離部へ搬送する第2搬送手段と、剥離が終わった後の蛍光管を排出する第3搬送手段を備えることがより好ましい。前記搬送手段としては、コンベア、ロボット、シュートなどを用いることができる。また、前記搬送手段は、上述した支持手段を兼ねることもできる。
【0068】
[蛍光管処理方法]
本発明の一実施形態における蛍光管処理方法は、被除去物を前記蛍光管の長手方向に沿って切削する切削工程と、切削された前記被除去物を剥離する剥離工程とを有する。そして、前記切削工程では、前記被除去物に当接した状態で回転する切削用回転ブラシを、前記蛍光管の長手方向に移動させながら前記被除去物を切削し、前記剥離工程では、前記被除去物に当接した状態で回転する剥離用回転ブラシにより前記被除去物を剥離する。上記蛍光管処理方法は、上述した蛍光管処理装置を用いて行うことができる。
【0069】
以上述べたように、本発明によれば、被除去物が包装材であるかフィルムであるかにかかわらず除去可能であり、また、包装材と蛍光管の端部を粘着テープなどで固定されている場合や包装材が濡れている場合であっても被除去物を除去することができる。さらに、管端の口金部や、管径の異なる蛍光管が混在するような場合であっても問題なく被除去物を除去することができる。
【0070】
加えて、本発明によれば、蛍光管を破損すること無く、被除去物のみを分離することができるため、分離後の被除去物の再資源化にも適している。
【符号の説明】
【0071】
1 蛍光管
2 被除去物
2a 包装材
2b フィルム
10 切削用回転ブラシ
20 剥離用回転ブラシ
30 回転ローラー
図1
図2
図3
図4