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特許6997685電流遮断装置、安全回路及び2次電池パック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】電流遮断装置、安全回路及び2次電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/54 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
H01H37/54 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018144090
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020021607
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】浪川 勝史
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-285834(JP,A)
【文献】実開昭51-5663(JP,U)
【文献】特開2003-223886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/00 - 37/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点を有する板状の端子片と、
板状に形成され弾性変形する弾性部及び該弾性部の一端部に可動接点を有し、前記可動接点を前記接点に押圧して接触させる可動片と、
温度変化に伴って変形することにより、前記可動片を付勢し、前記可動片の状態を前記可動接点が前記接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子とを備えた電流遮断装置であって、
前記可動片の状態が前記導通状態から前記遮断状態に移行する際に、前記可動接点が、前記接点を乗り越えて移動し、
前記可動片が前記可動接点を前記接点に押圧する方向と、前記熱応動素子が前記可動片を付勢する方向とが一致していることを特徴とする電流遮断装置。
【請求項2】
前記可動片の状態が前記導通状態から前記遮断状態に移行する際に、前記可動接点が、前記端子片の第1面の側から前記第1面とは反対側の第2面の側に移動する、請求項1記載の電流遮断装置。
【請求項3】
前記熱応動素子は、前記可動片の状態を前記導通状態から前記遮断状態に移行させる際に、前記可動片を押す方向に付勢する、請求項1又は2に記載の電流遮断装置。
【請求項4】
前記接点、前記弾性部、前記可動接点及び前記熱応動素子を収容するためのケースを備え、
前記端子片及び前記可動片は、前記ケースに埋設されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の電流遮断装置。
【請求項5】
前記ケースは、前記接点、前記弾性部、前記可動接点及び前記熱応動素子を収容するための穴部が設けられた第1ケースと、
前記穴部を閉鎖するために前記第1ケースに装着される第2ケースとを含む、
請求項4に記載の電流遮断装置。
【請求項6】
前記ケースに対して移動可能に設けられ、前記遮断状態にある前記可動片と当接し、該可動片の状態を前記導通状態に復帰させる移動体を有する、請求項4又は5に記載の電流遮断装置。
【請求項7】
前記ケースに対して移動可能に設けられ、前記遮断状態にある前記可動片と当接し、該可動片の状態を前記導通状態に復帰させる移動体を有し、
前記第2ケースには、前記移動体の一部を前記ケースの外側に突出させるための貫通孔が形成され、
前記移動体は、前記貫通孔から出没自在に設けられている、請求項5に記載の電流遮断装置。
【請求項8】
前記接点及び前記可動接点のうち少なくとも一方には、前記可動片の長手方向にのびるスリットが形成されている、請求項1乃至7のいずれかに記載の電流遮断装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電流遮断装置を備えたことを特徴とする電気機器用の安全回路。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電流遮断装置を備えたことを特徴とする2次電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の安全回路に用いて好適な小型の電流遮断装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電気機器の2次電池やモーター等の保護装置(安全回路)として電流遮断装置が使用されている。電流遮断装置は、充放電中の2次電池の温度が過度に上昇した場合、又は自動車、家電製品等の機器に装備されるモーター等に過電流が流れた場合等の異常が生じた際に、2次電池やモーター等を保護するために電流を遮断する。
【0003】
電流遮断装置には、温度変化に応じて作動し、電流を導通又は遮断する熱応動素子が備えられている。特許文献1には、熱応動素子としてバイメタルを適用した電流遮断装置が示されている。バイメタルとは、熱膨張率の異なる2種類の板状の金属材料が積層されてなり、温度変化に応じて形状を変えることにより、接点の導通状態を制御する素子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2011/105175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電流遮断装置の適用範囲が拡大されることに伴い、大電流に対応する、すなわち大きな電流容量(例えば、50A程度)を備えた電流遮断装置が要望されている。このような電流遮断装置を実現するためには、例えば、可動片が発生する弾性力を高め、固定接点に対する可動接点の接触圧力を高めて、両者間の接触抵抗を抑制することが必要となる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている電流遮断装置にあっては、可動片が発生する弾性力を高めた場合、可動片の状態を導通状態から遮断状態へと移行させる際に、熱応動素子は可動片の弾性力を上回る大きな応力を発生する必要がある。
【0007】
特許文献1に開示されている電流遮断装置においては、対角長さの大きい熱応動素子を適用することにより、熱応動素子が発生する応力を高めることが可能である。しかしながら、このような熱応動素子は、電流遮断装置の小型化を阻む一因となっている。
【0008】
また、上記特許文献1に記載されている電流遮断装置にあっては、遮断状態を維持するために、正特性サーミスターが実装されているため、装置の構成が複雑となり、製造コストの低減が困難である。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高電流容量化に容易に対応できる電流遮断装置を提供することを主たる目的とする。また、本発明は、正特性サーミスター等を用いることなく、小型で簡素かつ安価な構成で可動片の遮断状態を維持することができる電流遮断装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、接点を有する板状の端子片と、板状に形成され弾性変形する弾性部及び該弾性部の一端部に可動接点を有し、前記可動接点を前記接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより、前記可動片を付勢し、前記可動片の状態を前記可動接点が前記接点に接触する導通状態から前記可動接点が前記接点から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子とを備えた電流遮断装置であって、前記可動片の状態が前記導通状態から前記遮断状態に移行する際に、前記可動接点が、前記接点を乗り越えて移動する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る前記電流遮断装置において、前記可動片の状態が前記導通状態から前記遮断状態に移行する際に、前記可動接点が、前記端子片の第1面の側から前記第1面とは反対側の第2面の側に移動する、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記電流遮断装置において、前記可動片が前記可動接点を前記接点に押圧する方向と、前記熱応動素子が前記可動片を付勢する方向とが一致している、ことが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記電流遮断装置において、前記熱応動素子は、前記可動片の状態を前記導通状態から前記遮断状態に移行させる際に、前記可動片を押す方向に付勢する、ことが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記電流遮断装置において、前記接点、前記弾性部、前記可動接点及び前記熱応動素子を収容するためのケースを備え、前記端子片及び前記可動片は、前記ケースに埋設されている、ことが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記電流遮断装置において、前記ケースは、前記接点、前記弾性部、前記可動接点及び前記熱応動素子を収容するための穴部が設けられた第1ケースと、前記穴部を閉鎖するために前記第1ケースに装着される第2ケースとを含む、ことが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記電流遮断装置において、前記ケースに対して移動可能に設けられ、前記遮断状態にある前記可動片と当接し、該可動片の状態を前記導通状態に復帰させる移動体を有する、ことが望ましい。
【0017】
本発明に係る前記電流遮断装置において、前記ケースに対して移動可能に設けられ、前記遮断状態にある前記可動片と当接し、該可動片の状態を前記導通状態に復帰させる移動体を有し、前記第2ケースには、前記移動体の一部を前記ケースの外側に突出させるための貫通孔が形成され、前記移動体は、前記貫通孔から出没自在に設けられている、ことが望ましい。
【0018】
本発明に係る前記電流遮断装置において、前記接点及び前記可動接点のうち少なくとも一方には、前記可動片の長手方向にのびるスリットが形成されている、ことが望ましい。
【0019】
本発明の安全回路は、前記電流遮断装置を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明の2次電池パックは、電流遮断装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電流遮断装置によれば、可動片の状態が導通状態から遮断状態に移行する際に、可動接点が、端子片の接点を乗り越えて移動する。可動接点が、接点を乗り越えるための原動力は、弾性部の弾性力と熱応動素子が発生する応力との合力である。従って、熱応動素子が発生する応力が小さい場合であっても、可動片の状態を導通状態から遮断状態に移行させることが可能となる。これにより、熱応動素子の対角長さを大きくすることなく、端子片の接点に対する可動接点の接触圧力を高めることが可能となり、接点と可動接点との間の接触抵抗を抑制し、容易に電流遮断装置の高電流容量化を図ることができる。
【0022】
また、可動接点が端子片の接点を乗り越えて移動して遮断状態となった可動片は、熱応動素子が元の形状に復元した後も、弾性部の弾性力により遮断状態を維持する。これにより、正特性サーミスター等を用いることなく、簡素かつ安価な構成で可動片の遮断状態を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態による電流遮断装置の概略構成を示す組み立て前の斜視図。
図2】通常の充電又は放電状態における図1の電流遮断装置を示す断面図。
図3】過充電状態又は異常時などにおける図1の電流遮断装置を示す断面図。
図4図1の電流遮断装置の変形例の概略構成を示す組み立て前の斜視図。
図5】通常の充電又は放電状態における図4の電流遮断装置を示す断面図。
図6】過充電状態又は異常時などにおける図4の電流遮断装置を示す断面図。
図7図6の状態から熱応動素子が元の形状に復元したとき電流遮断装置を示す断面図。
図8図1の電流遮断装置の別の変形例を示す断面図。
図9図8の電流遮断装置の変形例を示す断面図。
図10図1の電流遮断装置のさらに別の変形例の端子片の構成を示す斜視図。
図11図1に示される電流遮断装置の変形例の端子片及び可動片の構成を示す断面図。
図12】本発明の上記電流遮断装置を備えた2次電池パックの構成を示す平面図。
図13】本発明の上記電流遮断装置を備えた安全回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態による電流遮断装置について図面を参照して説明する。図1乃至図3は、電流遮断装置1の構成を示している。図1及び図3に示されるように、電流遮断装置1は、一部がケース10から外部に露出する一対の端子22及び42を備える。端子22及び42が外部回路(図示せず)と電気的に接続されることにより、電流遮断装置1は、電気機器の安全回路の主要部を構成する。
【0025】
図1に示されるように、電流遮断装置1は、接点21及び端子22を有する端子片2と、先端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5等によって構成されている。
【0026】
端子片2、可動片4及び熱応動素子5は、ケース10に収容されている。ケース10は、ケース本体(第1ケース)7とケース本体7の上面に装着される蓋部材(第2ケース)8と、ケース本体7の下面に装着される底部材(第3ケース)9等によって構成されている。
【0027】
端子片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅-チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより板状に形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。
【0028】
接点21は、銀、ニッケル、ニッケル-銀合金の他、銅-銀合金、金-銀合金などの導電性の良い材料のメッキ又は塗布等により、形成されている。接点21は、端子片2の先端部すなわち可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体7の内部に形成されている穴部73による内部空間に露出されている。
【0029】
本実施形態では、端子片2の先端部は、断面が「J」字状に曲げられており、その曲げられた領域24の外表面に接点21が形成されている。
【0030】
端子片2の他端部には外部回路と電気的に接続される端子22が形成されている。端子22は、ケース本体7の側壁から露出し、回路基板のランド部とはんだ付け等の手法により接続される。
【0031】
端子片2は、接点21と端子22の間に埋設部23を有している。端子片2は、埋設部23においてケース本体7に埋め込まれている。
【0032】
可動片4は、銅等を主成分とする金属材料をプレス加工することにより板状に形成されている。可動片4は、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。
【0033】
可動片4の先端部には、可動接点41が形成されている。可動接点41は、接点21と同等の材料によってメッキ又は塗布等の手法によって形成されている。
【0034】
本実施形態では、可動片4の先端部は、断面が「J」字状に曲げられており、その曲げられた領域45の外表面に可動接点41が形成されている。
【0035】
可動片4の他端部には外部回路と電気的に接続される端子42が形成されている。端子42は、ケース本体7の側壁から露出し、回路基板のランド部とはんだ付け等の手法により接続される。
【0036】
可動片4は、可動接点41と端子42との間に、埋設部43及び弾性部44を有している。埋設部43は、端子42と弾性部44との間に形成されている。可動片4は、埋設部43においてケース本体7に埋め込まれている。
【0037】
弾性部44は、埋設部43から可動接点41の側に延出されている。弾性部44の先端部には可動接点41が形成されている。弾性部44及び可動接点41は、穴部73による内部空間に露出されている。
【0038】
埋設部43がケース本体7に埋め込まれることにより可動片4が固定され、弾性部44が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点41が接点21の側に押圧されて接触し、端子片2と可動片4とが通電可能となる。
【0039】
可動片4は、弾性部44において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、作動温度及び可動接点41の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。本実施形態では、自然状態の可動片4において、可動接点41が形成される一端部が端子42が形成される他端部よりも蓋部材8の側に位置するように、弾性部44にて屈曲されている(図3参照)。また、弾性部44には、熱応動素子5に向って突出する一対の突起(接触部)44a,44bが形成されている。突起44a,44bと熱応動素子5とは接触して、突起44a,44bを介して熱応動素子5の変形が弾性部44に伝達される(図1及び図3参照)。
【0040】
熱応動素子5は、可動片4の状態を可動接点41が接点21に接触する導通状態から可動接点41が接点21から離隔する遮断状態に移行させる。熱応動素子5は、円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより形成される。過熱により作動温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で逆反り変形する限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形状が望ましく、小型でありながら弾性部44を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅-ニッケル-マンガン合金又はニッケル-クロム-鉄合金、低膨脹側に鉄-ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼など各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
【0041】
本出願においては、特に断りのない限り、可動片4において、弾性部44が熱応動素子5に対向している側の面(すなわち図1乃至図3において下側の面)を第1面、その反対側の面を第2面として説明している。可動片4に沿って配された他の部品、例えば、端子片2、熱応動素子5、ケース10等についても同様である。
【0042】
ケース10を構成するケース本体7、蓋部材8及び底部材9は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の絶縁材料を適用してもよい。
【0043】
ケース本体7には、接点21、可動接点41、弾性部44及び熱応動素子5などを収容するための内部空間である穴部73が形成されている。穴部73は、ケース本体7の厚さ方向に貫通している。穴部73は、平面視で概略矩形状に形成されている。ケース本体7に穴部73が形成されていることにより、弾性部44が弾性変形可能となり、熱応動素子5が逆反り変形可能となる。
【0044】
図1に示されるように、端子片2、可動片4及び熱応動素子5等を収容したケース本体7の穴部73を閉鎖するために、蓋部材8及び底部材9がケース本体7に装着される。すなわち、ケース本体7は蓋部材8及び底部材9によってケース本体7の厚さ方向から挟み込まれ、例えば超音波溶着によって、ケース本体7と蓋部材8及びケース本体7と底部材9が接合される。このとき、ケース本体7と蓋部材8とは、それぞれの外縁部の全周にわたって連続的に接合され、ケース10の気密性が向上する。同様に、ケース本体7と底部材9とは、それぞれの外縁部の全周にわたって連続的に接合され、ケース10の気密性が向上する。
【0045】
蓋部材8又は底部材9には、カバー片がインサート成形によって埋め込まれていてもよい。カバー片は、例えば、上述した銅等を主成分とする金属又はステンレス鋼等の金属をプレス加工することにより板状に形成される。カバー片は、蓋部材8又は底部材9のひいては筐体としてのケース10の剛性・強度を高めつつ電流遮断装置1の小型化に貢献する。
【0046】
図2は、通常の充電又は放電状態、すなわち可動片4が導通状態にある電流遮断装置1の動作を示している。導通状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持(逆反り前)している。
【0047】
図2に示される導通状態において、可動接点41は、端子片2の第1面26の側に位置している。なお、「端子片2の第1面26」とは、図2において端子片2のうち、底部材9と対向している面を意味している(本実施形態のように、端子片2の先端部に「J」字状に曲げられた領域24を有する形態では、当該領域24を除く。以下、後述する第2面27においても同様とする)。この導通状態では、弾性部44の弾性力によって可動接点41は、接点21の側に付勢されている。これにより、可動接点41と接点21とが係合し、両者間で導通可能となる。また、弾性部44の弾性力を高めることにより、可動接点41と接点21との間の接触圧力が高められ、両者間の抵抗が抑制される。
【0048】
図3は、過充電状態又は異常時、すなわち可動片4が遮断状態にある電流遮断装置1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、作動温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部44が図中上方に押し上げられる。これに伴い、図2の導通状態において第1面26の側にあった可動接点41が、接点21を乗り越えて、端子片2の第2面27の側に移動する。「端子片2の第2面27」とは、端子片2のうち、第1面26とは反対側の面であり、端子片2が蓋部材8と対向している面を意味している。さらに、弾性部44の弾性力に加え、熱応動素子5が弾性部44を付勢することにより、可動接点41が接点21から離れ、可動片4が図3に示される遮断状態に移行する。
【0049】
図2及び図3に示されるように、本電流遮断装置1では、可動片4の状態が導通状態から遮断状態に移行する際に、可動接点41が、接点21を乗り越えて、端子片2の第1面26の側から第2面27の側に移動する。すなわち、可動接点41が、端子片2に対して、底部材9の側から蓋部材8の側に移動する。
【0050】
可動接点41が、接点21を乗り越えるための原動力は、弾性部44の弾性力と熱応動素子5が発生する応力との合力である。従って、熱応動素子5が逆反り変形時に発生する応力が小さい場合であっても、可動片4の状態を導通状態から遮断状態に移行させることが可能となる。これにより、熱応動素子5の対角長さを大きくすることなく、端子片2の接点21に対する可動接点41の接触圧力を高めることが可能となり、接点21と可動接点41との間の接触抵抗を抑制し、容易に電流遮断装置1の高電流容量化を図ることができる。
【0051】
また、可動接点41が端子片2の接点21を乗り越えて第2面27の側に移動して遮断状態となった可動片4は、熱応動素子5が元の形状に復元した後も、弾性部44の弾性力により第2面27の側に留まり遮断状態を維持する。これにより、特許文献1に示される正特性サーミスター等を用いることなく、簡素かつ安価な構成で可動片4の遮断状態を維持し、電流遮断装置1の自己保持機能を実現することが可能となる。
【0052】
本実施形態では、導通状態の可動片4が可動接点41を接点21に押圧する方向と、導通状態から遮断状態に移行する際に熱応動素子5が可動片4を付勢する方向は、共に矢印D1方向(端子片2の第1面26から端子片2の第2面27に向う方向)であり、一致している。従って、逆反り変形時に発生する応力が大きい熱応動素子5を用いることなく、可動片4の状態を導通状態から遮断状態へと移行させることが可能となり、熱応動素子5ひいては電流遮断装置1の小型化を図ることができる。
【0053】
熱応動素子5は、可動片4の状態を導通状態から遮断状態に移行させる際に、可動片4を押す方向に付勢する。
【0054】
本実施形態の端子片2は埋設部23において、可動片4は、埋設部43において、それぞれケース本体7に埋設されている。これにより、電流遮断装置1の組立が容易となる。より具体的には、例えば、特許文献1に示される電流遮断装置のように、可動片をケース本体に組み込む作業が省略され、生産性を高めることが可能となる。また、ケース本体7に対する可動片4の位置決め精度が高められる。
【0055】
また、ケース本体7に設けられている穴部73によって、可動片4及び熱応動素子5が変形可能な空間が容易に実現され、さらには、接点21と可動接点41との確実な開閉が容易に実現される。また、穴部73がケース本体7を貫通しているので、熱応動素子5の組み込みが容易となる。
【0056】
図4乃至図6は、図1乃至図3に示される電流遮断装置1の変形例である電流遮断装置1Aの構成を示している。電流遮断装置1Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電流遮断装置1の構成が採用されうる。
【0057】
電流遮断装置1Aでは、可動片4の状態を遮断状態から導通状態に復帰させる移動体11を有する点で、上記電流遮断装置1とは相違する。
【0058】
移動体11は、ケース10に対して、ケース10の厚さ方向に移動可能に設けられている。移動体11は、可動接点41の近傍で可動片4の第2面47と当接する。
【0059】
本実施形態では、蓋部材8に貫通孔81が形成されている。貫通孔81は、移動体に対応する位置に設けられ、移動体11の一部をケース10に対して出没自在とする。
【0060】
図5に示される導通状態及び図6に示される遮断状態での熱応動素子5及び可動片4の動作は、図2及び図3に示される電流遮断装置1と同様である。遮断状態での電流遮断装置1Aでは、可動接点41が端子片2の接点21を乗り越えて、端子片2の第1面26の側から第2面27の側に移動するのに伴い、移動体11は、可動片4と一体的に矢印D1方向に移動し、上部が貫通孔81から突出する。
【0061】
図7は、可動片4の状態が遮断状態に移行した電流遮断装置1Aであって、熱応動素子5が元の形状に復元したときの動作を示している。電流遮断装置1において既に述べたように、遮断状態となった可動片4は、熱応動素子5が元の形状に復元した後も、弾性部44の弾性力により遮断状態を維持し、可動接点41が端子片2の第2面27の側に留まっている。これに伴い、移動体11が貫通孔81から突出した状態も維持される。
【0062】
移動体11は、遮断状態に移行した可動片4を導通状態に復帰させる復帰ボタンとして機能する。すなわち、弾性部44が発生する弾性力を上回る力で、移動体11を蓋部材8から底部材9に向う矢印D2方向に押し下げることにより、移動体11及び可動接点41が矢印D2方向に移動し、可動接点41が接点21を乗り越えて、端子片2の第1面26の側に移動する。これにより、可動片4は導通状態に復帰する。
【0063】
本電流遮断装置1Aは、例えば、リフロー方式のはんだ付けを適用する実装形態において、好適に用いられる。このような実装形態では、リフロー時の熱によって熱応動素子5が逆反り変形し、可動片4の状態が導通状態から遮断状態に移行する。リフローの終了後、熱応動素子5の温度が低下した後においても、可動片4は遮断状態を維持するが、移動体11を矢印D2方向に押し込むことにより、可動片4を導通状態に容易に復帰させることが可能となる。
【0064】
図4に示されるように、ケース本体7には、移動体11を案内するための溝75が形成されているのが望ましい。溝75は、移動体11の両端部において、ケース本体の厚さ方向(図7における矢印D2方向)にのびて形成されている。移動体11の両端部には、溝75に収容される突出部11aが形成されている。溝75と突出部11aとの係合によって、移動体11が適切に案内され、円滑な移動が可能となる。
【0065】
図8は、図1に示される電流遮断装置1等の変形例である電流遮断装置1Bの構成を示している。電流遮断装置1Bのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電流遮断装置1又は1Aの構成が採用されうる。
【0066】
電流遮断装置1Bでは、接点21B及び可動接点41Bの形態が上記電流遮断装置1等の接点21及び可動接点41とは相違する。電流遮断装置1Bの端子片2Bの先端部は、「J」字状に曲げられた領域24Bが拡張されている。すなわち、領域24Bは略一周するように延長され、その延長された箇所に接点21Bが形成されている。同様に、電流遮断装置1Bの可動片4Bの先端部は、「J」字状に曲げられた領域45Bが拡張されている。すなわち、領域45Bは略一周するように延長され、その延長された箇所に可動接点41Bが形成されている。
【0067】
電流遮断装置1Bでは、可動片4Bの弾性部44Bは、可動接点41Bを接点21Bに押圧する方向、すなわち、底部材9から蓋部材8に向う矢印D1方向に押圧する。これにより、可動接点41Bと接点21Bとが当接し、可動接点41Bと接点21Bとの間の導通が維持される。そして、可動片4Bの状態が導通状態から遮断状態に移行する際に、可動接点41Bは、接点21Bを乗り越えて移動する。このとき、熱応動素子5は、可動片4Bを押す方向、すなわち矢印D1方向に付勢する。従って、可動片4Bが可動接点41を接点21に押圧する方向と、熱応動素子5が可動片4Bを付勢する方向とが一致している。
【0068】
電流遮断装置1Bにおいて、熱応動素子5は、可動片4Bと蓋部材8との間に配設されていてもよい。この場合、熱応動素子5は、例えば、その両端部で弾性部44Bと係合され、可動片4Bの状態が導通状態から遮断状態に移行する際に、可動片4Bを引く方向、すなわち矢印D1方向に付勢する。
【0069】
図9は、図8に示される電流遮断装置1Bの変形例である電流遮断装置1Cの構成を示している。電流遮断装置1Cのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電流遮断装置1Bの構成が採用されうる。
【0070】
電流遮断装置1Cでは、熱応動素子5が端子片2Cの側に配されている点で、上記電流遮断装置1Bとは相違する。そして、熱応動素子5の一方の端部は、可動片4Cの弾性部44C(例えば、可動接点41の近傍)に係合可能とされ、他方の端部は、ケース10(例えば、ケース本体7等)に係合可能とされている。
【0071】
図10は、図1に示される電流遮断装置1等の変形例である電流遮断装置1Dの構成を示している。電流遮断装置1Dのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電流遮断装置1乃至1C等の構成が採用されうる。
【0072】
電流遮断装置1Dでは、接点21Dにスリット28が形成されている点で、上記電流遮断装置1等とは相違する。スリット28は、可動片4の長手方向にのびて形成されている。接点21Dにスリット28が形成されていることにより、接点21Dの剛性が低減され、可動接点41の移動すなわち接点21Dの乗り越えが容易となる。これにより、逆反り変形時に発生する応力が大きい熱応動素子5を用いることなく、可動片4の状態を導通状態から遮断状態へと移行させることが可能となる。スリット28の形状、大きさ及び本数は任意であり、可動片4及び熱応動素子5の仕様に応じて適宜設定される。
【0073】
なお、電流遮断装置1Dでは、接点21Dのスリット28に加えて又は接点21Dのスリット28に替えて、可動片4の可動接点41にスリット(図示せず)が設けられていてもよい。
【0074】
図11は、図1に示される電流遮断装置1等の変形例である電流遮断装置1Eの端子片2E及び可動片4Eの構成を示している。電流遮断装置1Eのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電流遮断装置1乃至1D等の構成が採用されうる。
【0075】
電流遮断装置1Eでは、端子片2Eの先端部には、面取り部24Eが設けられ、可動片4Eの先端部には、面取り部45Eが設けられている点で、上記電流遮断装置1等とは相違する。
【0076】
接点21Eは面取り部24Eを含む領域に形成され、可動接点41Eは面取り部45Eを含む領域に形成されている。
【0077】
面取り部24E及び45Eによって、可動接点41Eの移動すなわち接点21Eの乗り越えが容易となる。これにより、逆反り変形時に発生する応力が大きい熱応動素子5を用いることなく、可動片4Eの状態を導通状態から遮断状態へと移行させることが可能となる。
【0078】
以上、本発明の電流遮断装置1等が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、電流遮断装置1等は、少なくとも、接点21を有する板状の端子片2と、板状に形成され弾性変形する弾性部44及び弾性部44の一端部に可動接点41を有し、可動接点41を接点に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより、可動片4を付勢し、可動片4の状態を可動接点41が接点21に接触する導通状態から可動接点41が接点21から離隔する遮断状態に移行させる熱応動素子5とを備え、可動片4の状態が導通状態から遮断状態に移行する際に、可動接点41が、接点21を乗り越えて移動する、ように構成されていればよい。
【0079】
例えば、ケース本体7と蓋部材8、底部材9との接合手法は、超音波溶着に限られることなく、両者が強固に接合され十分な気密性が得られる手法であれば、適宜適用することができる。例えば、液状又はゲル状の接着剤を塗布・充填し、硬化させることにより、両者が接着されてもよい。
【0080】
また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等の積層金属によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、電流遮断装置1等の構成が簡素化される。
【0081】
また、本発明の電流遮断装置1等は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。図12は2次電池パック500を示す。2次電池パック500は、2次電池501と、2次電池501の出力端回路中に設けた電流遮断装置1等とを備える。図13は電気機器用の安全回路502を示す。安全回路502は2次電池501の出力回路中に直列に電流遮断装置1等を備えている。電流遮断装置1等を備えたコネクタを含むケーブルによって安全回路502の一部が構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 :電流遮断装置
2 :端子片
4 :可動片
5 :熱応動素子
7 :ケース本体(第1ケース)
8 :蓋部材(第2ケース)
10 :ケース
11 :移動体
21 :接点
26 :第1面
27 :第2面
41 :可動接点
44 :弾性部
73 :穴部
81 :貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13