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  • 特許-検出ロータ芯出し位置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】検出ロータ芯出し位置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20220107BHJP
   G01D 5/12 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G01D5/20 110B
G01D5/12 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018144324
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020020651
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】松井 圭司
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-340507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/20
G01D 5/12
G12B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸部と、前記回転軸部の端部に設けられた検出ロータと、前記検出ロータの回転角度を検出するセンサ部と、を有する回転位置検出器の製造過程において、前記検出ロータの前記回転軸部に対する芯出しを行なう検出ロータ芯出し装置であって、
前記検出ロータが面方向に可動な状態で載置された前記回転軸部を支持する固定軸と、
前記検出ロータの偏心量を検出する中心検出センサと、
前記検出ロータの軸方向端面に押し付けられることで、当該検出ロータの軸方向端面に摩擦係合するドラムと、
前記ドラムの周囲に前記ドラムから離間して設けられる3以上の衝撃力付与機構であって、径方向に進出して前記ドラムに衝突することで前記ドラムとともに前記検出ロータを径方向に移動させる3以上の衝撃力付与機構と、
前記中心検出センサの検出結果に基づいて前記衝撃力付与機構の駆動を制御する演算器と、
を備え、
前記衝撃力付与機構は、前記ドラムから完全に離間した待機位置から、前記ドラムに衝突する位置まで進退可能な可動部を有したソレノイドまたはボイスコイルモータである、
ことを特徴とする検出ロータ芯出し装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検出ロータ芯出し装置であって、
前記演算器は、前記中心検出センサの検出結果に基づいて各衝撃力付与機構に対応する位相における前記検出ロータの偏心量を算出し、前記偏心量が、規定の下限値未満の場合には、対応する前記衝撃力付与機構に対して、前記ドラムが移動できる最低電圧を印加し、前記偏心量が前記下限値以上の場合には、対応する前記衝撃力付与機構に前記偏心量に比例した電圧を印加する、
ことを特徴とする検出ロータ芯出し装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検出ロータ芯出し装置であって、
前記検出ロータは、時間の経過とともに硬化する接着剤を介して前記回転軸部に載置されており、
前記演算器は、偏心量が同じであっても、時間が経過するほど、前記印加電圧を増加させる、
ことを特徴とする検出ロータ芯出し装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の検出ロータ芯出し装置であって、
さらに、前記中心検出センサを、前記回転軸部を中心として、回転させる回転テーブルを備え、
前記中心検出センサは、前記検出ロータの径方向端面までの距離に応じた信号を出力する4つの検出部が、90度間隔で設けられたレゾルバステータであり、
前記演算器は、前記中心検出センサを回転させた際の、前記4つの検出部からの出力信号に基づいて、各衝撃力付与機構に対応する位相における前記検出ロータの偏心量を算出する、
ことを特徴とする検出ロータ芯出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、回転軸部の端面に固定された検出ロータの凹凸を元に回転位置を検出するリラクタンス型レゾルバ式回転位置検出器の製造過程において、回転軸部に対して検出ロータの芯を出す検出ロータ芯出し装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
この種の検出ロータ芯出し装置としては、特許文献1が公知である。特許文献1では、製造過程の検出ロータと回転軸部との偏芯を、偏芯検出用レゾルバステータによって検出する。また、重りを検出ロータに押し付けて摩擦係合させ、さらに、衝撃力付与機構により重りを移動させることで、当該重りと摩擦係合した検出ロータを移動させて、偏芯を修正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-32487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の装置では、重りを移動させるために、圧電素子を使用した衝撃力付与機構を用いていた。しかし、芯出しに必要な重りの移動量が0.1mm程度であるのに対し、圧電素子のストロークは、通常、0.01mm程度であり、非常に小さかった。そのため、特許文献1の装置では、衝撃力付与機構で衝撃力を付与する前に、予め、エアーシリンダ等を用いた一軸アクチュエータで衝撃力付与機構を移動させ、当該衝撃力付与機構を重りに接触させておく必要があった。しかし、この場合、衝撃力付与機構で、所望の衝撃を付与する前に、一軸アクチュエータによる移動の影響で、重りが動いてしまう不具合があった。
【0005】
また、特許文献1では、衝突力付与機構は、一つしか設けられていなかった。そのため、特許文献1では、検出ロータの偏芯方向に応じて、衝突力付与機構の検出ロータに対する位相を変化させるべく、衝突力付与機構を回転させる必要があった。ここで、検出ロータは、通常、接着剤により回転軸部の端面に固着されるが、検出ロータの芯出しは、この接着剤を塗布した後、当該接着剤が硬化するまでの期間中に、完了する必要があり、検出ロータの芯出しに要する時間の短縮が求められている。しかし、特許文献1のように、衝突力付与機構を適宜、回転させると、その分、余計な時間がかかり、芯出しの作業時間が長期化する。さらに、検出ロータが芯出し中心を越して行き過ぎた場合は、一軸アクチュエータで衝撃力付与機構を重りから離間させたうえで、衝撃力付与機構を回転させ、一軸アクチュエータで衝撃力付与機構を再度、重りに接触させる動作が必要となり時間がかかる。
【0006】
そこで、芯出しの作業時間短縮のために、衝突力付与機構を、重りの周囲に複数、設けることも考えられる。しかし、上述したとおり、圧電素子を使用した衝撃力付与機構の場合、事前に、衝突力付与機構を重りに接触させておく必要がある。そのため、複数の衝突力付与機構の一つが、衝撃力を重りに付与しても、他の衝突力付与機構が、同じ重りに接触していると、衝撃力が上手く伝わらず、芯出しができない。
【0007】
つまり、圧電素子を利用して衝撃力を付与する従来技術の場合、芯出し作業の時間を短縮することは困難であった。そこで、本明細書では、短時間で、検出ロータの芯出しを行える検出ロータ芯出し装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する検出ロータ芯出し装置は、回転軸部と、前記回転軸部の端部に設けられた検出ロータと、前記検出ロータの回転角度を検出するセンサ部と、を有する回転位置検出器の製造過程において、前記検出ロータの前記回転軸部に対する芯出しを行なう検出ロータ芯出し装置であって、前記検出ロータが面方向に可動な状態で載置された前記回転軸部を支持する固定軸と、前記検出ロータの偏心量を検出する中心検出センサと、前記検出ロータの軸方向端面に押し付けられることで、当該検出ロータの軸方向端面に摩擦係合するドラムと、前記ドラムの周囲に前記ドラムから離間して設けられる3以上の衝撃力付与機構であって、径方向に進出して前記ドラムに衝突することで前記ドラムとともに前記検出ロータを径方向に移動させる3以上の衝撃力付与機構と、前記中心検出センサの検出結果に基づいて前記衝撃力付与機構の駆動を制御する演算器と、を備え、前記衝撃力付与機構は、前記ドラムから完全に離間した待機位置から、前記ドラムに衝突する位置まで進退可能な可動部を有したソレノイドまたはボイスコイルモータである、ことを特徴とする。
【0009】
この場合、前記演算器は、前記中心検出センサの検出結果に基づいて各衝撃力付与機構に対応する位相における前記検出ロータの偏心量を算出し、前記偏心量が、規定の下限値未満の場合には、対応する前記衝撃力付与機構に対して、前記ドラムが移動できる最低電圧を印加し、前記偏心量が前記下限値以上の場合には、対応する前記衝撃力付与機構に前記偏心量に比例した電圧を印加してもよい。
【0010】
この場合、前記検出ロータは、時間の経過とともに硬化する接着剤を介して前記回転軸部に載置されており、前記演算器は、偏心量が同じであっても、時間が経過するほど、前記印加電圧を増加させてもよい。
【0011】
また、さらに、前記中心検出センサを、前記回転軸部を中心として、回転させる回転テーブルを備え、前記中心検出センサは、前記検出ロータの径方向端面までの距離に応じた信号を出力する4つの検出部が、90度間隔で設けられたレゾルバステータであり、前記演算器は、前記中心検出センサを回転させた際の、前記4つの検出部からの出力信号に基づいて、各衝撃力付与機構に対応する位相における前記検出ロータの偏心量を算出してもよい。
【発明の効果】
【0012】
衝撃力付与機構としてストロークの大きいソレノイドまたはボイスコイルモータを利用することで、衝撃力付与機構をドラムから離間した位置に配置できる。そして、衝撃力付与機構とドラムを離間させることで、衝撃力付与機構を3以上、配置できるため、回転動作等も不要となり、短時間での芯出しが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ロータ芯出し装置の側面の断面図である。
図2】ロータ芯出し装置のA-A線での概略断面図である。
図3】ロータ芯出し装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係る回転位置検出器の検出ロータ芯出し装置を図1に示す。また、図2は、図1のA-A線での概略断面図である。この検出ロータ芯出し装置は、回転位置検出器の製造過程において、回転軸部W3に対する検出ロータW1の芯出しを行なう。回転位置検出器は、検出対象とともに回転する回転軸部W3と、当該回転軸部W3の端面に固定される検出ロータW1と、回転軸部W3に圧入された軸受W4,W5と、軸受W4,W5の外輪に接着剤で固定されたハウジングW2と、ハウジングW2に固定されたセンサ部(図示せず)と、を有している。本例の回転位置検出器は、リラクタンス型レゾルバ式である。そのため、検出ロータは、磁性体からなり、外周面に複数の歯(凹凸)が形成されている。また、センサ部は、いわゆる、レゾルバステータであり、内周部に複数の歯が形成されたコアと、当該コアに巻回された巻線と、を有している。
【0015】
製造過程では、検出ロータW1は、接着剤を介して回転軸部W3の上に置かれる。この接着剤は、例えば、粘性の高いエラストマー変性アクリレート系の接着剤であり、塗布してしばらくの間は、流動性を維持している。そして、この接着剤が硬化するまでは、検出ロータW1と回転軸部W3との間の摩擦抵抗が極めて低くなっており、検出ロータW1は、回転軸部W3に対して面方向に動くことができる。回転軸部W3は、固定軸8を介してベース7にネジ止め等で固定される。したがって、回転軸部W3および検出ロータW1は、固定軸8に対して回転不能となっている。
【0016】
ハウジングW2には、センサ部に替えて、芯出し中心検出センサ30がネジ等で固定されている。なお、回転位置検出器のレゾルバステータ(センサ部)を、芯出し中心検出センサ30として用いてもよい。ハウジングW2は、回転テーブル2に支持されている。回転テーブル2は、固定軸8(ひいては回転軸部W3)を中心として回転するテーブルである。この回転テーブル2が回転することで、ハウジングW2と当該ハウジングW2に固定された芯出し中心検出センサ30の検出ロータW1に対する位相が変化する。
【0017】
検出ロータW1の上方には、軸方向に進退(昇降)可能なエアーシリンダ51が設けられている。このエアーシリンダ51は、支柱28を介してベース7に固定される。また、エアーシリンダ51と検出ロータW1との間には、ドラム50が介在しており、エアーシリンダ51は、ドラム50を介して検出ロータW1を図示しないエアーの圧力により軸方向に加圧する。エアーシリンダ51とドラム50の接触面は、グリースを塗った鏡面加工面で接しており、摩擦力が十分に小さくなっている。そのため、ドラム50は、エアーシリンダ51に対して径方向に移動できるようになっている。その一方で、ドラム50の下面には、摩擦係数が大きな薄いゴム等が張り付けられており、ドラム50は、検出ロータW1の軸方向端面と摩擦係合されている。そのため、ドラム50が衝撃を受けて移動すると、検出ロータW1は、当該ドラム50と一緒に移動する。
【0018】
ドラム50の周囲には、4つのソレノイドアクチュエータ31,32,33,34が90度間隔で配置されている。各ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34は、径方向に進出してドラム50に衝突することで、ドラム50とともに検出ロータW1を径方向に移動させる衝撃力付与機構として機能する。また、各ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34は、後述する前進後退シリンダ61,62,63,64、支柱41,42,43,44を介して、ベース7に取り付けられており、検出ロータW1に対して回転不能である。
【0019】
ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34は、その可動部が径方向に進出(ドラム50に近づく方向に移動)した状態と、後退(ドラム50から離れる方向に移動)した待機状態と、をとることができるが、4つのソレノイドアクチュエータ31,32,33,34は、待機状態において、ドラム50との間に十分な隙間を開けた状態で配置される。この隙間は、検出ロータW1と芯出し中心検出センサ30との隙間以上となるように設定され、例えば2mm程度である。ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34のストロークは、この隙間以上、例えば7mm程度である。したがって、ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34は、ドラム50から完全に離間した待機位置から、ドラム50に衝突する位置まで進退可能といえる。
【0020】
ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34のソレノイドに電圧を印加すると、磁界中のコイル(ソレノイド)に電流が流れ、駆動トルクが発生する。このトルクにより、ソレノイドアクチュエータの駆動部が、径方向に進出(ドラム50に近づく方向に移動)する。この駆動部は、前記隙間の区間は加速した後にドラム50に衝突することで、ドラム50を動かす。ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34を径方向に後退(ドラム50から離れる方向に移動)させる際には、ソレノイドへの電圧印加を解除する。これにより、駆動部は、ソレノイドアクチュエータに設置されたバネにより、元の位置に戻る。
【0021】
上述したとおり、ドラム50は、エアーシリンダ51に対して水平方向に滑ることができる一方で、検出ロータW1と摩擦係合されている。したがって、ドラム50に衝撃力が付与されると、当該ドラム50は、検出ロータW1を引きずりながら水平方向に移動する。
【0022】
なお、当該検出ロータ芯出し装置から、回転位置検出器を着脱する際には、各ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34とドラム50との間により大きな隙間(例えば数十cm)が必要となる。そこで、回転位置検出器の着脱用のスペースを確保するために、本例では、ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34は、前進後退シリンダ61,62,63,64に載置されている。各前進後退シリンダ61,62,63,64は、回転テーブル2ではなく、固定部材であるベース7に支柱41,42,43,44を介してネジ等で固定されている。各前進後退シリンダ61,62,63,64は、回転位置検出器を着脱する際には、径方向に後退して、ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34全体を、ドラム50から大きく離れさせる。その一方、芯出し処理を行う際には、各前進後退シリンダ61,62,63,64は、径方向に進出して、ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34全体を、ドラム50に近接させる。
【0023】
ここで、従来の衝撃力付与機構は、圧電素子を利用していた。圧電素子は、比較的、高価であり、また、ストロークが小さい(例えば0.01mm程度)。そのため、圧電素子を利用した衝撃力付与機構の場合、当該衝撃力付与機構を、常に、ドラム50に接触させておく必要がある。かかる衝撃力付与機構を複数、設けた場合、一つの衝撃力付与機構から、ドラム50に衝撃力を付与する際にも、他の衝撃力付与機構がドラム50に接触してドラム50の移動を阻害する。そのため、圧電素子を利用した衝撃力付与機構は、一つだけ設けるのが現実的であり、ドラム50(ひいては検出ロータW1)を所望の方向に移動させるためには、衝撃力付与機構をドラム50に対して、適宜、回転させる必要があった。このように、衝撃力付与機構を回転させる従来技術では、芯出し処理に時間がかかっていた。
【0024】
一方、本例では、上述したとおり、衝撃力付与機構として、圧電素子ではなく、ソレノイドアクチュエータを利用している。ソレノイドアクチュエータは、圧電素子に比べて、大幅に安価であるため、コストを低減できる。また、ソレノイドアクチュエータのストロークは、圧電素子のストロークに比べて、十分に大きい。そのため、ソレノイドアクチュエータを用いた衝撃力付与機構は、圧電素子を用いた従来の衝撃力付与機構とは異なり、ドラム50から完全離間した位置で待機させることができる。そして、衝撃力付与機構(ソレノイドアクチュエータ)を、ドラム50から完全離間させることで、衝撃力付与機構を、複数、設けることが可能となる。そして、衝撃力付与機構が、ドラム50の周囲、3箇所以上に配されることで、衝撃力付与機構をドラム50に対して回転させる必要が無くなる。その結果、従来技術に比べてより短時間での芯出しが可能となる。
【0025】
図3は、検出ロータ芯出し装置の電気的構成を示す図である。芯出し中心検出センサ30は、検出ロータW1の偏心量を検出するセンサである。本例では、芯出し中心検出センサ30は、回転位置検出装置のレゾルバステータと同様の構成である。したがって、芯出し中心検出センサ30は、例えば、検出ロータW1の径方向端面までの距離に応じた信号を出力する検出部が、90度間隔で4つ設けられている。各検出部は、極歯に巻線を巻回することで構成される。以下では、4つの検出部のうち、180度対向する2つの検出部を「X方向検出部」と呼び、X方向検出部と90度位相がずれた2つの検出部を「Y方向検出部」と呼ぶ。また、以下では、回転テーブル2(ひいては、芯出し中心検出センサ30)の回転角度を「θ」とし、2つのX方向検出部とソレノイドアクチュエータ31,32の位相が一致する角度をθ=0°とする。
【0026】
演算器72には、この芯出し中心検出センサ30の検出値、すなわち、X方向検出部の出力値とY方向検出部の出力値と、が入力される。演算器72は、この検出値に基づいて、検出ロータW1の偏心量を算出し、算出された偏心量に基づいて、いずれのソレノイドアクチュエータ31,32,33,34に、どの程度の電圧を印加するかを算出する。また、演算器72は、必要に応じて、回転テーブル2の回転駆動も制御する。
【0027】
可変電源73は、演算器72から指令された電圧に従い、ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34に印加する電圧を出力する。絶縁アンプ74は、演算器72で特定されたソレノイドアクチュエータ31,32,33,34に、所定の時間だけ通電する。なお、図3では、絶縁アンプ74を一つのブロックとして図示しているが、実際には、一つのソレノイドアクチュエータに、一つの絶縁アンプ74が設けられている。また、複数のソレノイドアクチュエータのうち、通電するソレノイドアクチュエータを選択切り替えできるのであれば、絶縁アンプ74に替えて他の機器、例えば、リレーなどを用いてもよい。
【0028】
次に、検出ロータW1の芯出し処理の流れについて説明する。検出ロータW1を芯出しする際は、芯出し量の測定と、検出ロータW1の位置修正(移動)と、順次行う。芯出し量の測定では、検出ロータW1をどの方向にどれだけ移動させるかを測定する。この芯出し量を測定するために、演算器72は、回転テーブル2を回転させて、少なくとも3つのポイント(回転角度θ)における、芯出し中心検出センサ30の検出値を収集する。
【0029】
演算器72は、芯出し中心検出センサ30に設けられた2つのX方向検出部の出力信号の差分を、X方向変位として取得する。同様に、演算器72は、2つのY方向検出部の出力信号の差分を、Y方向変位として取得する。ここで、回転角度θにおけるX方向変位およびY方向変位をそれぞれ、X(θ)、Y(θ)とすると、X(θ)は、角度に応じて略正弦波状に変動し、Y(θ)は、X(θ)に対して90度の位相遅れを持って変動する。このX(θ)およびY(θ)が描く波形の振幅中心が、芯出し中心となる。また、振幅中心からX(θ)までの距離が、回転角度θにおけるX方向の偏心量であり、振幅中心からY(θ)までの距離が、回転角度θにおけるY方向の偏心量である。
【0030】
演算器72は、上記の理論に従って、少なくとも3以上のポイントで得られたX方向変位X(θ)、Y方向変位Y(θ)に基づいて、回転角度θ=0におけるX方向の偏心量、および、Y方向の偏心量を算出する。
【0031】
偏心量が算出できれば、続いて、検出ロータW1の位置修正処理を行う。具体的には、演算器72は、算出された偏心量に基づいて、各ソレノイドアクチュエータに印加する駆動電圧を算出し、その出力を可変電源73に指令する。ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34は、可変電源73の電圧で、絶縁アンプ74で指令される場所により駆動される。このように構成、制御することで、芯出し量に応じた大きな動きと素早い微小な動きが可能となり、早く正確に検出ロータの芯出しができ、安価な装置となる。
【0032】
なお、この検出ロータW1の位置修正の際、演算器72は、回転テーブル2をθ=0°に位置させておき、芯出し中心検出センサ30の4つの検出部と、4つのソレノイドアクチュエータとの位相を一致させる。そして、演算器72は、ソレノイドアクチュエータでドラム50に衝撃力を付与するたびに、X方向変位X(0)およびY方向変位Y(0)を検出し、この検出結果に基づいて、検出ロータW1の偏心量、ひいては、移動量を算出する。そして、演算器72は、算出された移動量に基づいて、次回、付与する衝撃力を決定する。
【0033】
位置修正処理において、演算器72は、ソレノイドアクチュエータに印加する駆動電圧を算出する。具体的には、例えば、演算器72は、偏心量Δに比例した駆動電圧Vを算出する。すなわち、駆動電圧V=Δ×k+aとして算出する。ここで、kは、比例係数であり、aは、オフセット値である。この比例係数k、オフセット値aは、実験などにより予め求めておく。また、比例係数k、オフセット値aは、固定値でもよいし、時間の経過などに応じて変動する変動値でもよい。すなわち、検出ロータW1と回転軸部W3との間には接着剤が介在しているが、この接着剤の特性により、時間の経過とともに、検出ロータW1と回転軸部W3との間の摩擦抵抗が大きくなる。そこで、比例係数kまたはオフセット値aを、時間の経過とともに徐々に大きくしてもよい。
【0034】
また、偏心量Δが、予め規定された下限値(例えば数μm)未満となった場合には、駆動電圧Vを、ドラム50が動き得る最低電圧Vminにしてもよい。この最低電圧Vminは、所定の時間だけ通電した時に、ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34が、2mm移動し、ドラム50に当たり検出ロータW1が動くことのできる最低の電圧である。この最低電圧Vminは、ソレノイドアクチュエータ31,32,33,34の個々の特性、例えば、ソレノイドアクチュエータの可動部が戻るときに必要なバネのバネ定数と移動距離の乗算で求められるバネ力や、各可動部の摩擦力や、通電時間と通電電圧とソレノイドアクチュエータの特性などで決まる。なお、この最低電圧Vminも、固定値でもよいし、変動値でもよい。例えば、最低電圧Vminは、時間の経過とともに、徐々に大きくしてもよい。また、別の形態として、最低電圧Vminで、衝撃力を付与した後、偏心量を測定した結果、ドラム50の動きが検出できなかった場合には、現在の最低電圧Vminに、規定の加算値を加算した値を、新たな最低電圧Vminとして順次、更新していってもよい。
【0035】
また、これまで説明した構成は、一例であり、順次、変更してもよい。例えば、衝撃力付与機構は、ソレノイドアクチュエータに替えて、ボイスコイルモータでもよい。また、衝撃力付与機構の個数は、3以上であれば、4つに限らない。ただし、各種演算を容易にするためには、衝撃力付与機構の個数および配置位相と、芯出し中心検出センサ30にも受けられる検出部の個数および配置位相は、一致させることが望ましい。
【符号の説明】
【0036】
W1 検出ロータ、W2 ハウジング、W3 回転軸、W4,W5 軸受、2 回転テーブル、7 ベース、8 固定軸、28 支柱、30 芯出し中心検出センサ、31,32,33,34 ソレノイドアクチュエータ、41,42,43,44 支柱、61,62,63,64 前進後退シリンダ、51 エアーシリンダ、50 ドラム、72 演算器、73 可変電源、74 絶縁アンプ。
図1
図2
図3